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2 月の訪日客、58% 減の 108 万人 新型コロナの影響

日本政府観光局が 19 日発表した 2 月の訪日客数は前年同月比 58.3% 減の 108 万 5,100 人だった。 新型コロナウイルスの感染拡大で、人数は 2014 年 9 月以来 5 年 5 カ月ぶりの低水準となった。 減少幅は東日本大震災直後に記録した 11 年 4 月(62.5% 減)に並ぶ規模だ。 観光庁は「3 月はより厳しい状況になっている(田端浩長官)」としており、一段と減少する可能性が高い。

2 月の減少幅が特に大きかったのは中国と韓国だ。 中国人客は 87.9% 減の 8 万 7,200 人に激減した。 10 万人を割るのは 13 年 12 月以来約 6 年ぶりだ。 日韓関係悪化の影響で昨年後半から客足に急ブレーキがかかっていた韓国は 79.9% 減の 14 万 3,900 人で、マイナス幅はさらに広がった。 訪日客の半分を占めていた両国と日本の間を往復する航空便は運休が相次いでいる。 入国制限も強化されており、一段の減少が見込まれる。

訪日を控える動きは中韓以外の国や地域にも広がっている。 台湾は 44.9% 減の 22 万 400 人、香港も 35.5% 減の 11 万 5,600 人だった。 感染が広がりつつある欧米との往来も減少している。 米国は 20.8% 減の 7 万 3,400 人、英国やドイツ、イタリアも 2 割前後の減少となった。 政府は 20 年に訪日客 4 千万人の受け入れを目指しているが、達成は極めて困難な情勢になっている。 政府は感染拡大が終息した後の反転攻勢につなげるため、旅行費用の補助など需要喚起策を検討している。 (nikkei = 3-19-20)


1 月の中国人客、22.6% 増 新型コロナ以降は激減

1 月に日本を訪れた中国人旅行者は、前年同月より 22.6% 増の 92 万 4,800 人だった。 観光庁が 19 日発表した。 昨年は 2 月だった旧正月の春節の大型連休が、今年は 1 月になって需要が前倒しになったことに加え、日中間を結ぶ航空便が増えたためだ。 だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国政府が団体旅行を禁止した 1 月 27 日以降は激減しているという。

全体の外国人旅行者数は、前年同月より 1.1% 減少して 266 万 1 千人だった。 減少は 4 カ月連続。 日韓関係の悪化の影響で、韓国からの旅行者が引き続き大きく減ったためだ。 韓国人客は前年同月より 59.4% 減の 31 万 6,800 人だった。 減少は 7 カ月連続だが、下げ幅は昨年 12 月の 63.6% 減より縮小した。 (田中美保、asahi = 2-19-20)


禁輸のソーセージ、10 キロ持ち込んだ疑い タイ人逮捕

タイから輸入が禁止されているソーセージを成田空港に持ち込んだとして、千葉県警は同国の自称寺院職員の男、アティット・セーソー容疑者 (32) を家畜伝染病予防法と関税法違反容疑で逮捕し、6 日、農林水産省動物検疫所成田支所、東京税関成田税関支署とともに発表した。 発表によると、セーソー容疑者は昨年 11 月 25 日、タイから成田空港に到着した際、豚・鶏肉混合の市販のソーセージ 52 本計 10.45 キロをリュックサックに入れて違法に日本国内に持ち込んだ疑いがある。 同容疑者は「知人に頼まれ、売るために持って来た」と話しているという。

家畜伝染病予防法によって、日本にはほとんどの国から肉や肉製品を個人で持ち込むことはできない。 アフリカ豚熱 (ASF) の感染拡大などを受け、動検は昨年 4 月 22 日から全国の空港などで肉類の違法持ち込みへの対応を厳格化。 違反者に刑事処罰の対象にする可能性を文書で警告するとともに、旅券情報などをデータベース化している。

同容疑者は昨年 11 月 10 日にタイから中部空港に来日した際にも、ソーセージやミートボール計 92.5 キロを持ち込んで動検に摘発、警告されていた。 動検成田支所は「短期間に再び違反し、悪質性が高く看過できない」として県警に通報。 1 月 21 日にタイから中部空港に来日したところを逮捕された。 県警によると、同容疑者は 2016 年 6 月から昨年 11 月までの間に約 70 回来日していたという。 同支所によると、対応の厳格化以降、各地の空港で違法に肉類を持ち込もうとして逮捕されたのは今回で 8 人目。 成田空港では初。 (福田祥史、asahi = 2-7-20)


19 年の訪日客、中国が 15% 増の 959 万人 韓国は 26% 減

日本政府観光局 (JNTO) は 17 日、2019 年の主要国・地域別の訪日客数を発表した。 中国が 18 年と比べて 14.5% 増の 959 万 4,300 人と過去最高を更新し、全体の 3 割を占めた。 日韓関係が悪化した影響で、韓国は 25.9% 減の 558 万 4,600 人だった。 観光庁が同時に公表した訪日消費額は 6.5% 増の 4 兆 8,113 億円で、過去最高だった。 19 年の日本人の海外旅行者数は 2,008 万人と、初めて 2 千万人の大台を超えた。 政府は 20 年の達成を掲げており、1 年前倒しで実現した。

訪日客数は 10 日に全体の数字(3,188 万人)だけを公表していた。 中韓以外では 3 位の台湾が 489 万 600 人、4 位の香港が 229 万 700 人で約 3 - 4% 増の堅調な伸びだった。 フィリピンやベトナムは増加率が 2 割を超えており、韓国以外の地域は好調を維持している。 韓国は 12 月も前年実績の 4 割弱の水準にとどまっている。 訪日消費は 1 位の中国が 1 兆 7,718 億円と全体の 36.8% を占めた。 18 年に消費額で 2 位だった韓国は 28.4% 減の 4,209 億円で、5,506 億円だった台湾と入れ替わる形で 3 位に落ち込んだ。 4 位以下は香港、米国が 3 千億円超で続いており、上位 5 カ国・地域で全体の 7 割に及ぶ。

政府は 20 年に訪日客数 4 千万人、訪日消費 8 兆円の目標を掲げている。 達成は難しい情勢だ。 (nikkei = 1-17-20)


「夜観光」受け入れ準備着々 五輪訪日外国人ターゲット

東京五輪を半年後に控え、日本を訪れる外国人旅行者が夜も楽しめる観光コンテンツを充実させる取り組みが進んでいる。 観光庁が 2018 年度に外国人 1 万人を対象に行ったアンケートでは、夜の観光を楽しみたいとの回答が多い一方、体験者の割合や満足度が海外に比べて低い結果となった。 このため同庁のほか、自治体も夜の観光コンテンツの拡充支援に乗り出している。

同庁のモデル事業に選定され、19 年夏に始まった神田明神(東京都千代田区)の「江戸東京夜市」。 境内に金魚すくいや焼きそばなどの屋台が並び、阿波おどりなど地方の祭りの実演もある。 毎月開催することで、祭り以外の時期でも日本文化に触れられるようにした。 運営に携わる「CoCoRo (同区)」の岩田雅治事業開発部長 (54) は「多くの外国人が訪れる秋葉原に近く、日本三大祭りの神田祭で知られる神田明神で縁日文化を体験してもらい、日本各地の祭りにも興味を持ってもらえれば」と期待を込める。

東京都品川区では 19 年 10 月から、区の助成を受けて屋形船業者約 10 社が連携し、毎週火曜日にナイトクルーズを運航している。 屋形船は花見や忘年会など団体での貸し切りが中心で、旅行者らが少人数で利用できる機会は限られていたが、気軽に楽しめるよう乗り合い形式にした。

海上からの夜景を眺めながら揚げたての天ぷらを味わい、鏡開きなどの日本文化も体験できる。 これまで対応が遅れていた英語でのルート解説なども導入した。 事業は3月末までの予定だが、その後も継続していく方針だ。  主催する天王洲・キャナルサイド活性化協会の三宅康之理事長 (48) は「多くの外国人にナイトクルーズを体験してもらい、屋形船の魅力を広めてもらうことで、五輪後も観光の目玉になるよう継続していきたい」と語った。 (jiji = 1-4-20)

前 報 (12-11-18)


「医療ツーリズム」もっと ビザ手続き緩和へ 政府方針

国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)は 18 日、訪日外国人客に対する「医療滞在ビザ」の発給手続きを来年 3 月末をめどに緩和する方針を決めた。 観光目的のビザで来日した場合でも、医師の診断などの条件を満たせば滞在を延長したり、在留資格を変更したりしやすくする。 健康診断や治療を目的に訪日、消費する「医療ツーリズム」の促進などが狙いだ。 愛知県が 2016 年に規制緩和を提案していた。

現行の制度では、訪日客が滞在中に病気や事故で治療が必要になっても、帰国できない状態だとする医師の判断がなければ、原則、滞在延長を認めていない。治療に必要な滞在日数が足りず、帰国を余儀なくされているケースもあった。 医療滞在ビザは、一時帰国後に申請する必要があるなど要件が厳しく、18 年の実績は 1,650 件にとどまる。 申請から 1 週間程度かかるビザ発給までの日数も短くする方針だ。

医療ツーリズムでは、タイやシンガポール、韓国などが国家戦略として位置づけており、手続きの緩和や受け入れ態勢を強化して、日本の先を走っている。 この日の会議では、千葉市で都市部で初となるテレビ電話でのオンライン服薬指導など 5 区域の 10 事業を認定したほか、来年度早期にデジタルマネーでの賃金支払いを認める方針が決まった。 (野平悠一、asahi = 12-18-19)


関西で相次ぐコインロッカー値上げ、その訳
進む「荷物難民」への対策

街中で大きなスーツケースを引いて歩く外国人観光客らが増える関西で、駅にあるコインロッカーの利用料金の値上げが相次いでいる。 背景にはコインロッカーの不足の問題がある。 一方、「手ぶら観光」を推進しようと、関西国際空港とホテル間をつなぐ荷物の即日配送サービスも増えており、かばんの預け場所がなかなか見つからない「荷物難民」への対策も進んでいる。

阪急梅田駅では 400 円

訪日外国人客(インバウンド)の増加が著しい大阪を中心にロッカー料金の値上げが続き、京都や奈良などへと広がっている。 近畿日本鉄道の各駅では 3 月以降、大阪府内や奈良、京都両県の主要駅を中心に約 40 駅で 100 円値上げし、400 - 800 円にした。 京阪電鉄でも昨年 10 月 - 今年 3 月に全駅で一部のサイズを除いて 100 円アップし、料金の幅は 400 - 1,000 円になった。 JR 西日本では 2 月に大阪駅と京都駅で小型の料金を 100 円値上げし、400 円に。 阪神電鉄と阪急電鉄の大阪梅田駅でも 6 月、7 月にそれぞれ小型を 100 円値上げし、400 円にした。

一般的に、料金の値上げは需要を抑制することにつながるが、強気の姿勢のようだ。 大阪府によると、府内を訪れたインバウンドは平成 25 年の 263 万人から昨年は 1,141 万人(速報値)と約 4 倍に増加し、コインロッカーの需要は底堅い。 鉄道各社は、値上げをして得た収益を設備投資に振り向け、ロッカーの増設に大型化、電子マネー対応機種への更新などを急ぐ考えだ。

「荷物難民」解消へ手ぶら推奨

空港や観光地でスーツケースの預け先が見つからない「荷物難民」。 宿泊先などへの持ち運びは避けられず、通勤時間帯などの混雑時に重なればトラブルにもなりかねない。 そうした問題を解消し、手ぶら観光を可能にするサービスも始まった。 南海電鉄のグループ会社「サザントランスポートサービス」は昨年 12 月から、南海・関西空港駅の改札口近くに、荷物の即日配送を受け付ける「n・e・s・t 関西空港店」を運営している。 現在は同店の窓口と大阪・京都両市内のホテル間での相互の即日配送が可能で、利用料金は税込み 1,800 - 2,500 円。

同店は国土交通省・観光庁が手ぶら観光を支援する民間事業者への補助事業でサービス拠点の認定を受けた。 政府は今年の補助事業の応募締め切りを 10 月末から 12 月 20 日まで延長して推進を図る。 ホテル間での荷物の即日配送を手掛ける「ギガラビット(大阪市)」では、即日配送が大阪市内約 500 件、京都市内約 350 件のホテル間で可能。 フロントで午前 11 時までに荷物を預ければ、遅くとも当日午後 8 時までに次の宿泊先で荷物を受け取ることができる。 料金はスーツケース 1 個で税別 2 千円。

手続きはホテルを介さず、同社のホームページ上で前日までに予約すれば利用でき、ホテルから関西国際空港までの配送も可能。 荷物の現在地は衛星利用測位システム (GPS) で確認できるため、安心して観光を楽しむことができる。 今月中には南海難波駅近くの窓口に荷物を預ければ、大阪市内のホテルに即日配送するサービスなども始める予定で、同社の金田仁二郎社長は「即日配送は子連れの家族らに喜ばれ、リピーターも多い。 サービスを拡充し、日本での旅行をより快適にしていきたい。」と意気込む。

スマートフォンからの予約で飲食店などに荷物を預けられるサービス「ecbo cloak (エクボ・クローク)」も普及。 スマホアプリ運営の「ecbo (東京)」が平成 29 年 1 月に始めたサービスで、関西でも預かり先の施設が急増しており、同社の広報担当者は「大阪を中心とした荷物預け先の需要はまだまだ伸びる余地がある」とみている。 (山本考志、sankei = 12-1-19)


訪日外国人、10 月は 5.5% 減 減便や台風で韓国の減少幅さらに拡大

[東京] 日本政府観光局が 20 日に発表した 10 月の訪日外国人客数は、前年同月比 5.5% 減の 249 万人だった。 減少は 2 カ月ぶりで、2019 年になってから 2 回目のマイナスだった。 韓国からの旅行者は前年比 65.5% 減の 19 万 7,300 人で、9 月からさらに減少幅が拡大した。 東日本大震災後の 2011 年 4 月に記録した 66.4% 減以来の大幅な落ち込みとなった。 日韓間の航空便の減少や台風による運休などが影響したという。

田端浩観光庁長官は会見で「日韓問題はいろいろあるが、人的交流は相互理解の基盤なので、しっかりとしたプロモーションをしていきたい」と述べ、訪日客回復に向け引き続き取り組む考えを示した。 一方、韓国以外からの訪日客数の推移はおおむね順調だと指摘。 1 - 10 月の累計では、訪日外国人客数全体では前年比 3.1% 増加した。  9 月から開催されたラグビーワールドカップ 2019 日本大会の影響については、出場国からの訪日客数が 9 月と 10 月で 29.4% 増加するなど、大幅増につながったという。 田端長官は「国際交流が行われ、いい機会となった。 特に、地方での長期滞在が促進されたことを喜ばしく思っている。」と語った。 (Reuters = 11-20-19)


舞妓を無断で撮らないで … 祇園ルール、訪日客のスマホに

「許可なく芸妓(げいこ)や舞妓(まいこ)の写真を撮らないで」、「提灯(ちょうちん)に触らないで」。 急増する訪日観光客らによる迷惑行為がオーバーツーリズム(観光公害)として問題になっている京都市東山区の花街・祇園。 スマートフォンを使ってマナー順守を呼びかける実証実験を、国土交通省などが続けている。 「このままでは祇園町の風情が消えてしまう」といった地元の声を受けた。

"Follow Gion manners (祇園ではマナーを守ってください)"

祇園の半径約 1 キロに近づいた観光客のスマホに、自動的にこんなメッセージが届く。 クリックすると、英語と中国語の 2 言語で詳細な注意事項が書かれたウェブサイトに飛ぶ仕組みだ。 私有地に無断で立ち入ったり軒下の「犬矢来(いぬやらい)」に腰を掛けたりするなどの迷惑行為は、罰金が科される可能性があることを伝える。 対応するアプリがインストールされたスマホや、京都市内の宿泊施設で無料で貸し出されている約 5,800 台のスマホを持つ人に届く。 国交省近畿運輸局が主体となり、秋の観光シーズンを迎えた 9 月 30 日に始め、12 月 8 日までの結果をもとに効果を検証する。

祇園の中心部を南北に貫く花見小路通は、芸舞妓がお座敷で客をもてなす「一見(いちげん)さんお断り」のお茶屋や、古くからの飲食店が数多く立ち並ぶ。 地元の要望を受けた京都市や市観光協会などが対策を検討する中で、今回の試みが生まれた。 独特の情緒を守ってきたこの地域では、数年前から外国人客が急増。 歩きたばこやごみのポイ捨て、道幅いっぱいに団体で歩いて車の通行を妨げるなどの行為が目立ち、地元は手を焼いてきた。

住民らでつくる祇園町南側地区協議会が昨夏、地域のお茶屋や飲食店など約 300 軒に聞いたアンケートでも、「写真を撮るため(店の)ちょうちんを引っ張られ、破られた」、「芸舞妓さんが乗るタクシーを囲んで発車できず大変危険」といった被害や苦情が多く寄せられた。 同協議会はこの実証実験に合わせて今月 25 日、英語や中国語でマナーの注意事項が書かれたしおりやステッカーを、デザインに協力した京都女子大や龍谷大の学生らと道行く観光客に配った。

また、「私道での撮影禁止」、「許可のない撮影は 1 万円申し受けます」と書かれた高札を、花見小路通との境目付近にある私道の入り口に掲げた。 強制力はないが、強いメッセージを打ち出すことで芸舞妓を追いかけ回したり、断りなく敷地に立ち入ったりといったマナー違反の撮影を抑える狙いがある。 幹事を務める地元の中華料理店主、太田磯一(いそかず)さん (56) は「花見小路は市道なので強制はできないが、私道エリアで撮影を禁じることで、実質的にこのかいわいは撮影お断りというローカルルールを知ってもらいたい」と話す。

実験期間中の平日は、英語や中国語を話せる巡視員が周辺を巡回し、悪質な行為を見かけたら注意している。 7 つの伝統芸能を観光客向けに上演する弥栄(やさか)会館(同市東山区)内のギオンコーナーでも、開演前にマナー啓発動画を流すことにした。 京都市観光 MICE 推進室の担当者も「効果的な対策を探りたい」と話している。 (佐藤秀男、asahi = 10-26-19),/p>

守って! 祇園のルール
1. 道路の真ん中を歩かない / 道路の真ん中で立ち止まらない
2. 提灯に触ったり犬矢来などに腰掛けない
3. 私有地へは立ち入らない
4. 許可なく芸妓や舞妓の写真を撮らない
5. 路上喫煙をしない


韓国人客減に長期化の気配 各地で広がる「リスク分散」

9 月に日本を訪れた韓国人旅行者数は、前年同月より 58.1% 減って 20 万 1,200 人だった。 減少は 3 カ月連続で、下げ幅は急減した 8 月の 48.0% からさらに拡大した。 観光庁が 16 日、発表した。 日韓の対立で、韓国人が訪日旅行を控える動きが長期化する気配が、濃くなっている。

訪日客全体では、前年同月より 5.2% 増の 227 万 2,900 人となり、2 カ月ぶりに増加に転じた。 各地でラグビー・ワールドカップ(W 杯)の試合が行われ、出場国・地域が含まれる欧米などからの訪日客が大幅に増えたことが大きかった。 特に英国は同 84.4% 増となった。 フランスは同 31.6% 増、豪州は同 24.4% 増、カナダは同 23.4% 増だった。 昨年 9 月の訪日客数が台風や北海道での地震の影響で同 5.3% 減だった反動の面もある。 昨年 9 月の韓国人客は前年同月より 13.9% 減と、全体より落ち込みが大きかった。 その中での大幅な下げだけに、韓国人客の低迷ぶりが際立つ形となった。

観光庁の田端浩長官は 16 日の会見で、落ち込みの理由について「訪日旅行が控えられ、航空路線が運休、減便したこと」と説明。 今後の動向は「今の時点では見通せない」とした。 ただ、延期していた訪日を呼びかける韓国での共同広告を 9 月下旬から再開したものの、日韓の航空会社の 10 月第 1 週の、両国を結ぶ航空便数は前年の同時期より 28% 減り、9 月第 1 週の 13% より拡大しているという。

日本政府観光局によると、韓国からの訪日客は昨年半ばから、ベトナム旅行の人気が高まるなど渡航先の多様化や、韓国経済の低迷の影響などで前年割れの傾向が出ていた。 加えて日本政府が 7 月、半導体関連 3 品目の対韓輸出規制を強化したことをきっかけに、韓国で訪日旅行を取りやめる動きが広がりだした。 一方、田端長官は、台風 19 号によって宿泊施設や鉄道・道路など交通網に広範囲に被害が出ていることから、「まずは交通機関など復旧を急ぐが、復旧後は官民をあげて観光地に訪れていただけるよう、旅行需要の喚起に取り組みたい」と語った。 (高橋尚之、田中美保)

商談会の前倒しも …

昨年の韓国からの訪日客は約 750 万人で、全体の 4 分の 1 を占めた。 総消費額は約 5,900 億円に上り、地域経済を支えてきたが、韓国人旅行者の落ち込みが長期化することを見据え、特定の国や地域に偏らずに訪日客を誘致しようという動きが出始めている。 韓国から距離が近く、特に影響が深刻な九州。 鹿児島県は SNS などの発信力がある台湾人を旅行に招待するなど、9 月の補正予算で 300 万円を計上した。 2017 年秋に鹿児島と韓国を結ぶ格安航空会社 (LCC) が就航して韓国人客が急増し、18 年は前年の 2 倍超が訪れた。 その LCC は今年 8 月以降に運休や減便に追い込まれた。 担当者は「韓国人客が多くなる冬への影響が心配だ。 多くの観光客に足を運んで欲しい。」と話す。

佐賀県も補正予算を組み、東南アジアの旅行会社に佐賀を訪れる旅行プランを作ってもらえるよう呼びかける。 大分県は中国・上海で開く現地の旅行会社などとの商談会を当初より前倒しして今月に行う。 11 月に英国、12 月に豪州でも実施する。 9 月には中国のオンライン旅行会社「Ctrip (シートリップ)」と協定を結び、新たな客層の取り込みを期待する。 単独で海外に PR するのは難しいとみて、国内に改めて目を向ける自治体もある。 人口 3 万人の長崎県対馬市には昨年、41 万人の韓国人客が訪れた。 市によると、今年 6 月末までは前年比 1 割増だった客足は急減、9 月は前年同月比で 9 割減の約 3 千人まで落ち込んだ。

韓国・釜山とを結ぶ船の玄関口・比田勝港国際ターミナル前にあるカフェの女性店長 (44) は「ついこの前まで、出国手続きの行列が入り口の外まであったのに」と話す。 カフェの来客は 1 日 3 桁があったが、今は 2 桁まで減った。 県と対馬市は 11 月から国内客に 3 千円割り引く宿泊クーポンを売り出す。 「韓国以外の外国人客を新たに誘致するのは難しい。 まずは日本のお客様に来てもらいたい」と担当者は話す。 砂風呂で有名な鹿児島県指宿市でも、12 月から使える商品券付き宿泊パックを売り出す。 市が商品券分を支援する。

一方、免税売り上げの 9 割を中国人が占める近鉄百貨店(大阪市)では、昨年から東南アジアに焦点をあて、現地で開く旅行博に出て旅行会社に営業も行う。 特定の国・地域の動向で突然客が急減するリスクを減らすためだ。 また、日本政府観光局は今年、ラグビー W 杯に合わせ、ラグビーにゆかりのある英国の旅行会社などで作る旅行業協会の年次総会を日本に誘致した。 総会はこれまで欧州で開かれてきたが、初めて日本で開催された。 (田幸香純、及川綾子、asahi = 10-6-19)


「お願い、逮捕されないで」 W 杯訪日客向けに呼びかけ

ハグもタトゥーも一般的ではないですよ - -。 20 日に開幕するラグビー・ワールドカップ(W 杯)日本大会を前に、英外務省が訪日客に対し、そんな注意喚起を行っている。 何げない振る舞いが、文化の異なる日本ではトラブルに発展する可能性もあり、同省はコメディアンを起用して動画を制作。 「お願いだから逮捕や強制送還をされないで」と呼びかけている。

今大会には、英国を構成するイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド(アイルランド共和国との統一チーム)の 4 地域全てが出場する。 同省は 8 月時点で、W 杯関連で日本に 5 万人以上が旅行すると予測。 11 月 2 日の決勝まで約 1 カ月半に及ぶ大会で、4 チームとも上位進出が有力視され、ファンの滞在も長期間に及びそうだ。 そこで懸念されるのが、訪日客によるトラブル。 国外で問題を起こし、同省の助けを借りた英国人は過去 1 年間で 2 万人以上いたという。同省は、 英国で活躍する日本出身のタレント、コタニ・ユリコさんを起用し、注意を促す 1 分前後の動画を複数用意した。

「日本人は友好的だが控えめでもある。 公共の場で騒ぐのは問題。」 「現金中心の社会。 カードが使えない場所も。」 「タトゥーは伝統的に組織犯罪、『やくざ』を連想させる。 温泉で断られるかも。」 「日本でハグは一般的ではない。」 「コデインなど、英国の市販薬で日本では違法の物がある。」 多岐にわたる呼びかけの効果はいかに。 コタニさんが出演する動画は サイト で視聴できる。 (遠田寛生、asahi = 9-17-19)


7 月の訪日外国人客、韓国は 7.6% 減 全体では過去最高

日本政府観光局 (JNTO) が 21 日発表した 7 月の訪日外国人客数(推計値)は、前年同月比 5.6% 増の 299 万 1,200 人だった。 単月としての過去最高を更新した。 訪日客数が 1 カ月間で初めて 100 万人を超えた中国訪日客の大幅増が、全体の訪日客数増のけん引役となった。 一方、日韓関係悪化の影響で、韓国からの訪日客数は前年同月比 7.6% 減と大幅に減少した。

中国からの訪日客数は 19.5% 増の 105 万 500 人と、単月としての過去最高を更新した。 夏季休暇シーズンで旅行需要が高まったことが背景にある。 JNTO は、新規就航や増便により航空座席供給量が増加したことや 1 月から開始した個人査証の発給要件緩和の効果もあったとみている。 一方、韓国からの訪日客数は、7.6% 減の 56 万 1,700 人だった。 JNTO は、韓国経済の低迷に加え「最近の日韓情勢もあり、訪日旅行を控える動きが発生した」との見方を示した。

その他の国・地域をみると、ベトナムが 21.8% 増(4 万 800 人)、米国が 6.9% 増(15 万 6,900 人)、英国が 9% 増(2 万 8,900 人)などと堅調だった国・地域が多かった。 一方、台湾の 0.3% 減(45 万 9,200 人)や香港の 4.4% 減(21 万 6,800 人)など、アジアの一部の国・地域からの訪日客は減少した。 (nikkei = 8-21-19)


訪日外国人の利便性追求より国際化の戦略を打ち出せ

羽田空港への新ルートが 2020 年 3 月から運用されることが発表されました。 これにより国際線のアクセス数は年間で実に 65% も増える 9 万 9 千回、一日当たり北米便を中心に 50 便の増便となります。 この対策のもともとの事由は訪日外国人客の更なる増大を見込んでいるからであります。 (話は反れますが、カナダの経済の中心地トロントに日系の航空会社が日本から飛ばさないのがなぜなのか不思議であります。 主要先進国ではカナダとイタリアだけでしょう。 羽田に限って言えば ANA はバンクーバー便があるので枠からすれば JAL が飛ばすべきだと思うのですが、何故なんでしょうね?)

日経に茨城空港の記事が出ていました。 私も知らなかったのですが、東京駅から茨城空港までワンコインバスが出ているそうです。 時間は 1 時間 40 分かかりますが、片道 500 円なら文句は言えないでしょう。 また、茨城空港の駐車場の駐車料金が無料というのも驚きであります。 交通の便が悪いことをカバーする必死の努力ということでしょう。 これが実って旅客数は年間 70 万人、空港の満足度は羽田に迫る 4 位であります。

成田は東京都心から概ね 40 分から 1 時間強ですが、JR にしろ京成にしろ高い特急料金を払わねばならないこと、また、LLC が入る第三ターミナルは空港駅からひたすら遠いのであります。 (そのうえ、チェックインしてから乗り場までがまた遠い!) バス便は格安で東京駅まで 1,000 円というのがあるようですが、圧倒的シェアのリムジンバスは片道 2,800 円と結構な値段であります。 こう見ると関東地区は羽田第一主義で、巨漢の成田に対して小回りの良さで茨城空港がポイントゲットしているという感じでしょうか? 私は茨城発着の LLC をもっと増やしてもいいのではないかと思います。

さて、政府の訪日外国人目標は 2020 年が 4,000 万人、30 年には 6,000 万人を掲げており、私から見れば超強気だと思うのですが、一方で何か違うような気もするのです。 それは日本を「大人のディズニーランド化」にしているのだとしたらまだ人気があるうちにビジネス投資を増やすことや留学生を通じて日本文化を教えるなどアカデミックな部分の強化こそが求められるのではないかと思います。

最近外国人が持つ日本のイメージは? と聞けばラーメン、たこ焼き、食べ歩きと B 級グルメバンザイになっています。 それはそれで否定しませんが、これでは日本をラスベガス化してしまいます。 ラスベガスはご存知の通り砂漠の中に人工的に作った街でこれこそ私は究極の「大人のディズニーランド」ならぬ「出銭ランド」だと思っています。 ただ、カジノで盛り上がったのは昔の話で今時はカジノはジジババ天国でどう見ても盛り上がりに欠けています。 そこでコンベンションやらコンサート、ショッピングを通じて集客をする努力をしていますが、もともと「地元民」が少ないうえ、根付くものが何もないところがラスベガスの最大の弱点であります。

日本に頻繁に来るというアジア客のリピーターは概ね温泉、ショッピング、食事が目的でしょうか? これだけでは長期的戦略としては不十分でラスベガスと同じでお金を落とすだけになってしまいます。 日本が政策的に必要なのは、訪日客が自国に戻った時、日本を宣伝し、日本をもっと理解し、アライアンスを作り、投資をしたり、勉強したり人材交流をしながらアジアの国際化に貢献することだろうと思っています。

例えば茨城空港と成田空港からさほど遠くないところにつくば学園都市があります。 もう古くなりましたが、この学園都市は近未来型の設計になっていてまるで外国に来たような区画、敷地の広さ、道路の整備といったインフラがそろっています。 こういうところに産学協同の研究所を設けたり留学生を収容できる施設やプログラムをもっと盛んにするなど手の打ちようはいくらでもあると思うのです。

つまり政府もなぜか訪日外国人客の数だけに目を奪われてその質を見ようとしていないのです。 これは完全な片手落ちではないでしょうか? 歌舞伎を見せて、伝統工芸を一緒に作る、窯焼き体験をする、といった体験型日本文化の一大アミューズメントパークがあってもいいでしょう。 アミューズメントパークは 80 年代に大流行し、そのあとほぼ全部ずっこけたという痛い思い出があります。 地方自治体や地方の主要企業は二の足を踏むでしょう。 ならば、あちらこちらにバラバラ作るのではなく、競合を許さないようなデカい施設をドーンと作るというのは一案だと思います。

また小池都知事が主張している東京の国際化。 特に目立った動きはないですね。 本気度を見せてもらいたいものです。 アッと驚くような仕組みとプログラムで世界で最も進化した国際都市東京を生み出すことが訪日外国人の人数追求よりもっと重要だと気が付いてくれる政治家と役人はいるのでしょうか? (ヒロ、BLOGOS = 8-12-19)


訪日客は西へ、消費は東で 3 人に 1 人は大阪・中央区へ

空前のインバウンド(訪日外国人)ブームに沸く日本列島。 政府統計では見えない市区町村別の訪問数や消費額をひもとくと、訪日客は東西に分散する一方、消費は東京に一極集中しているいびつな構図が浮かぶ。 日本政府観光局 (JNTO) によると、2019 年 1 - 6 月の訪日外国人数は前年同期比 4.6% 増の 1,663 万人だ。 訪日客はどこを訪れているのか。 市区町村ごとの訪問人数を推計する NTT ドコモ子会社のデータを分析し、18 年の延べ訪問客数を 16 年と比べた。

伸び率が 20% 台の東日本・中日本に対し、西日本は 41% だった。 訪日客数のシェアは東西ともに 40% 台と拮抗しつつある。 18 年の訪問客数の首位は大阪市中央区で、同年の訪日客全体(3,119 万人)の 3 人に 1 人が訪れた計算だ。 では、訪日客はどこで消費しているのか。 買い物意欲が旺盛な中国人客のデータを多く持つジェーシービー (JCB) のデータで探った。

買い物や飲食、渋谷区が 1 強

JCB ブランドのクレジットカードを持つ中国人を中心とした延べ約 370 万人(銀聯カードとの共同ブランドを一部含む)の消費額(18 年)を都道府県別に集計すると、東京都のシェアが 53.4% に上った。 市区町村別の首位は東京都渋谷区で全国の 1 割を占めた。

「みんな忍者の訓練を受けているのか。」 イランから来たレザン・カザンファリーさん (33) は、渋谷駅前のスクランブル交差点に興奮した。 一度に約 3 千人ともいわれる人がぶつからずに行き交う印象的な光景に集う訪日客が、ネット上に積み重なった口コミ情報をもとに財布のひもを緩める。 米国のシャフィーク・カッサンさん (38) はディスカウント店「ドン・キホーテ」で買い物を満喫。 東急百貨店東横店も中国人客が「ブランド名でまとめ買いする姿がよく見られる。」

一方の大阪市中央区。 心斎橋筋商店街は中国人観光客でにぎわうが「18 年後半くらいから爆買いが減った。(ドラッグストア店員)」 市内は住宅宿泊事業法に基づく民泊の届け出が市区町村で最多だ。 格安航空会社で訪れて民泊で宿泊費を抑え、たこ焼きなど B 級グルメで食費も浮かす。 そんな様子を連想させる。 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングの塚田裕昭主任研究員は「買い物目的の訪日客は最後の訪問地でお金を使う」と指摘する。 法務省の資料で中国人の出入国数を空港別にみると、羽田空港・成田空港の合計は入国者より出国者が多いが、関西国際空港は入国者の方が多い。 西から入り、東京で買い物後に出国する人の流れが浮かぶ。

客数が伸びても消費が伴わなければ地域は潤わない。 ヒントになるのが山梨県山中湖村だ。 JCB のデータで市区町村別の 1 人あたり消費単価を算出すると同村が全国で最高だった。 中国系を中心とした外資系ホテルが相次ぎ参入し、現地で食事や買い物をする個人・団体の訪日客を呼び込む。 カード決済に対応する中小店舗も増え、消費に結びつけている。 (北爪匡、秋山文人)

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外国人目線で魅力 創出

外国人観光客はどこを訪れ、どこでおカネを使っているのか - -。 非公式の「オルタナティブ(代替)データ」から集計したインバウンド(訪日外国人)ランキングで上位に入った市区町村を探ると、地域の特性を外国人から見て魅力的な観光資源に生かしている様子が読み取れる。

大阪の訪日客の増加を支えるのは大阪市中央区だけではない。 例えば、2018 年と 16 年を比べた訪日客増加率 4 位の大阪市西成区だ。 「日雇い労働者の街」として知られたあいりん地区周辺は旅慣れた外国人バックパッカー向けのゲストハウスや民泊施設が目立つ。 同地区に近い JR・南海の新今宮駅に隣接する「ホテル新今宮」の呂哲旭支配人は「鉄道の利便性が高く、観光プランを組みやすい」と指摘する。 同ホテルの客室稼働率は常に 8 割超になる。 「安くて便利」にひかれる訪日客が街のイメージを変えつつある。

地元の観光資源を生かし、客数や消費単価を伸ばしている例もある。 富士山周辺では静岡県小山町の訪問客数の伸びが目立つ。 御殿場プレミアム・アウトレットに比較的近く、緑が豊かなことで知られる登山道もある。 買い物と富士山観光に便利な地の利を生かそうと、18 年に 2 つのホテルが相次ぎ開業。 太鼓のショーを開催するなどして外国人観光客を呼び込んでいる。

1 人あたり消費単価で 7 位の北海道倶知安町は世界的なスノーリゾートとなったニセコを抱え、パウダースノー目当ての訪日客向けに外資系コンドミニアムやホテルの建設が相次ぐ。 18 年 12 月に開業した高級分譲コンドミニアム「スカイニセコ」は所有者の不在時にはホテルとして貸し出され、冬季の宿泊料は 1 泊 10 万 - 72 万円に達する。

東京や大阪など、外国人観光客に根強い人気の「ゴールデンルート」以外の地域に足を延ばす動きも広がっている。 NTT ドコモ子会社が算出した訪日客数データで 1 人あたり訪問地数を分析すると 16 年の平均 6.9 カ所から、18 年は平均 7.1 カ所に微増。 全国を 9 ブロックに分けて 16 年から 18 年の訪問客数の伸びを比べると、最も伸び率が高いのは東北の 61.9% で、九州・沖縄 (49.1%) が続いた。

消費額の東京一極集中はあるものの、人口減少が進む地域でインバウンドは有望な成長分野だ。 ただ、足元の日韓関係の悪化の影もちらつく。 訪日客増加率が全国 2 位の北九州市小倉北区は、16 年に北九州空港へ就航した韓国の定期便で個人ツアー客を集めている。 小倉城の天守閣と隣接の神社が 1 枚の画像に撮影できる「インスタ映え」スポットとして人気が高まった。 日本政府が 7 月に一部の半導体材料の韓国向け輸出管理を厳しくした頃から逆風に。 ある観光業者は「足元の韓国人観光客数は 2 割以上減っている」と打ち明ける。

インバウンド 18 年の消費額は 4.5 兆円超す

「インバウンド」と呼ばれる訪日外国人旅行者は 2012 年以降、急速に拡大している。 18 年は 3,119 万人で、3,000 万人の大台を初めて突破した。 中国経済の減速や日韓関係の悪化で、先行きに不透明感が増しつつある状況でも伸びは続いており、19 年 1 - 6 月も、半期として過去最高の 1,663 万人を記録した。 人口減少などで国内の個人消費は伸び悩んでおり、インバウンド需要は地域経済のけん引役となっている。 旅行消費額も訪日客の増加に伴い拡大しており、18 年は 4 兆 5,189 億円となった。 国籍・地域別では中国が全体の 34.2% を占めトップ。 次いで韓国が 13.0%、台湾 (12.9%)、香港 (7.4%) が続き、上位はアジア勢が独占する。

政府は東京五輪・パラリンピックが開催される 20 年にインバウンド 4,000 万人、旅行消費額 8 兆円を目標に掲げている。 一方、外国人観光客が押し寄せる地域では、街中のごみや交通混雑などの観光公害が社会問題となってきた。 インバウンドを地域活性化につなげるため、住民生活との両立が課題となっている。 (nikkei = 8-4-19)

▼ インバウンドデータ : 外国人訪日客数はドコモ・インサイトマーケティングの「モバイル空間統計」を分析した。 年間 900 万人規模の訪日客の携帯電話の基地局の位置情報から一定時間滞在した場所を割り出し、地域ごとの客数を推定した。 1 人が複数の地域を訪れた場合もそれぞれ数えるため、2018 年の全国実績は 2 億人強と政府統計よりも大きい。 消費データはジェーシービー (JCB) のブランドで主に中国で発行されたクレジットカードの日本での利用実績。 18 年の履歴で利用者は延べ約 370 万人で、消費総額は約 600 億円。 中国人客の影響が出やすいが、他社の過去データと比べても傾向に大きな違いはみられなかった。

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