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地方に広がる訪日客の波 3 大都市圏の 1.4 倍にも 日本を訪れた外国人旅行客のうち、3 大都市圏以外を訪問する人が年々増え、スキーや温泉などを楽しんでいることが、2018 年度の観光白書でわかった。 訪日客の関心が多様化し、買い物目的だけにとどまらずに各地を巡っていることがうかがえる。 白書は観光庁がまとめ、21 日に閣議決定された。 12 年に 3 大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の 8 都府県)のみを訪れた外国人客は 453 万人、それ以外の地域(地方部)は 385 万人だった。 これが 18 年には、地方部を訪れた人が 1,800 万人に増加。 3 大都市圏のみを訪れた人(1,319 万人)の 1.4 倍となった。 訪日の目的にも変化がみられる。 観光庁の訪日消費動向調査で「訪日前に最も期待していたこと」を尋ねたところ、日本食を食べることと買い物をあわせた割合が、14 年は 48% を占めていた。 これが 18 年には 40% に低下した。 18 年の調査で、地方を訪れた外国人客に「今回の旅行でしたこと」を尋ねた質問では、スキー・スノーボードや温泉入浴、自然体験ツアー、花見などが上位だった。 観光庁の担当者は「訪日客の関心が多様化し、『コト消費』への関心が高まっている」とみる。 18 年は豪雨や地震など自然災害が相次いだ。 外国人客だけでなく、日本人を含めて災害が旅行にどう影響したかも調べた。 08 年 4 月から 17 年末までに発生した大規模な地震 6 件の発生直後、日本人、外国人とも被災地でののべ宿泊者数は前年の同じ時期に比べ大きく減少した。 ただ、日本人は 1 - 2 カ月後には回復したが、外国人は発災後 1 年ほど減少傾向が続いた。 (田中美保、asahi = 6-21-19) 訪日客に人気のスポット、ツイート分析してみてわかった 訪日外国人客が足を運んで高評価を下した日本の観光地は? 東京海上日動火災保険は、訪日客がツイッターなどでつぶやいた声を分析し、人気の観光地をまとめた。 つぶやきの数だけでなく、どれだけその場所を気に入ったかの「ポジティブ度」も調べてみると、日本人にも定番のあの名所に加え、外国人ならではの意外な場所も。 果たしてその場所は - -。 東京海上日動が、2017 年秋から 1 年間のツイッターや微博(ウェイボー)など英語、中国語、韓国語のつぶやき約 170 万件を分析した。 投稿のうち好意的な内容を「ポジティブ度」として点数化。 話題量とともに調べた。 つぶやきの数が圧倒的に多かったのは、伏見稲荷大社(京都府)。 つぶやきの数、ポジティブ度がともに中央値より高かったのは、金閣寺(同)、浅草寺(東京都)、広島平和記念資料館(広島県)など。 つぶやきの数は少なかったものの、ポジティブ度が高かったのは、宮島(広島県)や兼六園(石川県)、姫路城(兵庫県)といった日本人にもおなじみのスポットのほか、サムライミュージアム(東京都)なども。 つぶやきが多かったが、ポジティブ度は低かったのは、東京タワー、大阪城、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪府)など。 テーマパークや展望台などはポジティブ度が低い傾向だったという。 都道府県別に、「話題量が多いスポット」と「ポジティブ度が高いスポット」もまとめた。 たとえば北海道では小樽運河のつぶやきが多いが、実際に評価が高いのは宗谷岬だった。 鹿児島・屋久島の白谷雲水峡や、熊本・阿蘇の大観峰など自然を楽しめる場所や、富山の五箇山、兵庫の書写山円教寺など歴史的な観光スポットもそれぞれの県で最もポジティブ度が高かった。 東京海上はリポートで「全体的な訪日評価は横ばい傾向だが、各地域でツアーや専門博物館などの体験型観光の評価が非常に高い。 昨年は東京、大阪、京都で体験型の発言が目立ったが、今年度は地方都市でも目立っており、体験型観光が地方に波及している様子がうかがえる。」と分析している。 調査は今年で 3 回目。 今回はアニメやその作者にゆかりのある場所をめぐる「アニメツーリズム」についてもテーマに掲げた。 作品別では「ポケットモンスター(東京都)」の件数が 200 万件を超え、2 位に 2 倍以上の差をつけた。 2 位は忍者によるアクション漫画「NARUTO (徳島県)」、3 位はヒーローを夢見る少年の物語「僕のヒーローアカデミア(静岡県)」だった。 「ガンダムシリーズ(東京都)」、「美少女戦士セーラームーン(同)」なども上位に並んだ。 ただ、「アニメの話題は多いものの、日本の地名がタイトルと一緒に連想されるケースは少ない。 特に地方ではアニメツーリズムの誘客効果を活用しきれていないように見受けられる(東京海上)」という。 東京海上は、地方自治体や観光協会などにデータを提供し、誘客に生かしてもらう考えだ。 (新宅あゆみ、asahi = 6-14-19) 「無人ホテル」じわり増加中 福岡だけで 143 カ所も 宿泊場所にフロントがなく、常駐スタッフもいない「無人ホテル」がじわりと増えている。 複数のホテルのフロント業務を 1 カ所に集約するなどして人件費を抑えて低価格にし、訪日外国人客の取り込みを狙う。 福岡市の歓楽街、中洲にある商業ビル。 この最上階にホテルのフロントがある。 ここでチェックインした客の一部が泊まるのは、別のビルにある部屋だ。 フロントで入室するためのパスワードを受け取り、荷物はスタッフが届けてくれる。 手がけるのは、ホスティ(福岡市)。 中洲と天神の 2bカ所に共通フロントを構え、客は周辺の 12 カ所の系列ホテルに宿泊する。 天神近くの系列ホテルは飲食店などが入るビルの最上階にある。 常駐スタッフはおらず、入り口のカメラで宿泊客以外が立ち入らないように監視。 部屋にはタブレット端末があり、スタッフへの問い合わせやチェックアウトができる。 常駐スタッフを置かないため、小規模でもホテルを開業できる。 1 人あたりの客単価は平均 3,500 - 5 千円程度と安い。 山口博生社長は「不動産価格の高騰や人手不足で難しくなるホテル開発の課題を解決できる」と話す。 4 月に KDDI と資本業務提携を結び、年内に東京進出をめざす。 ホテル不足 法改正も後押し 訪日客の増加に伴う宿泊施設不足への懸念を受け、昨年 6 月に改正旅館業法が施行された。 違法な民泊の取り締まりを強化する一方、フロント設置が義務付けられていたホテルや旅館では、ビデオカメラなどによる本人確認やトラブル時にスタッフがすぐに駆けつけられる態勢整備などを条件に、フロントをなくした無人運営が可能となった。 福岡市には、無人ホテル・旅館が今年 3 月末時点で 143 カ所ある。 2017 年に市内に宿泊した外国人客は 337 万人で、この 5 年で 5 倍近くに増えた。 客室の稼働率は 8 割超と高水準が続く。 マンションの一室でもホテルが営業できるようになっており、客室不足の解消に期待がかかる。 札幌市では、玄関のタブレット端末でチェックインできるホテルなど無人ホテルが増加傾向にあるという。 大阪市でも 34 カ所のホテル・旅館がスタッフなしで営業している。 名古屋市は 5 カ所、横浜市は 1 カ所という。 旅館業法を運用するためのルールは地域の実情に応じて条例で定めており、厳格な規制を設けている自治体もある。 多くの訪日客が訪れる京都市や東京都台東区は条例でスタッフの常駐を義務付けた。 民泊が広がり、騒音やゴミ出しなどで住民とのトラブルが起きたことで、緊急時に連絡が取れない事態を避けるためだという。 (北川慧一、asahi = 6-3-19) 日本人そっぽの峠越え、外国人に大人気 英テレビで注目 江戸時代の宿場町の雰囲気が残る長野県南木曽町の妻籠(つまご)宿と、岐阜県中津川市の馬籠(まごめ)宿。 両宿を結ぶ旧中山道の馬籠峠を歩く外国人ハイカーが、近年増加している。 英国のテレビ放送などで知名度が上昇。 2018 年度は 65 の国・地域の人が訪れ、初めて 3 万人を突破した。 日本人より多い 6 割超を占めており、まだまだ増えそうな勢いだ。 二つの宿場の距離は約 9 キロあり、徒歩で約 3 時間の道のり。 外国人ハイカーは、交通の便の良い JR 中津川駅から馬籠宿に入り、妻籠宿まで歩く人が多いという。 江戸時代の旅が体験できるとして広まり、急な坂道はあるものの、荷物を有料で運んでもらえるため、身軽に歩けることも人気につながっている。 妻籠宿の住民らでつくる公益財団法人「妻籠を愛する会」は、両宿のほぼ中間地点にある「一石栃立場(いちこくとちたてば)茶屋」を整備。 無料でお茶を振る舞いながら、通過する人数と国籍を調べている。 茶屋は江戸時代後期の民家を改装したもので、いろりや畳の休憩場がある。古い日本の雰囲気が楽しめることから、多くの人が立ち寄っている。 4月、英国から来たマッチ・ルーヘンさん (31) は「とても美しい宿場町と峠道だ。 昔に戻ったよう。」と満喫した様子。 茶屋で出迎える勝野富紀人さん (78) は、今年の秋で 10 年を迎える。 やかんでお湯を沸かしながら、忙しそうに茶わんを洗う。 ヒノキの笠をかぶり、簡単な会話で対応する。 「単語で通じるんですよ。 多くなった外国人に、行き届かないこともあるけど、笑顔で迎え、笑顔で送り出しています。」 外国人の峠越えは、09 年度は約 5,850 人だった。 それが 18 年度は約 3 万 1,400 人に増え、5 倍を超えた。 外国人の増加は、英国の BBC 放送の番組で取り上げられた数年前から顕著になったという。 一方、峠を歩く日本人は年々減っていて、18 年度は全体の 4 割を切った。 18 年度の 65 の国・地域のうち、33 カ国は英国のほか、フランス、スペイン、ドイツなどのヨーロッパからだった。 妻籠を愛する会の調査では、目的は山や風景などの自然を楽しむ人が多く、宿場風景、ウォーキング、と続いている。 同会は今年 3 月、より魅力を高めようと、馬籠峠に近い標高 777 メートルに「中山道ラッキーポイント」と名づけた鐘を設けた。 鐘を鳴らすことで、クマの被害防止とともに、幸せのパワースポットにつながればとの願いが込められている。 南木曽町は 14 年の豪雨災害に加え、同じ年の御嶽山噴火災害の影響もあって、妻籠宿を訪れる観光客は全体では減少傾向にある。 外国人客の増加はうれしいことだが、宿泊施設の数には限りがある。 妻籠を愛する会の藤原義則理事長 (71) は「県境の過疎地だけに、宿泊施設の問題は少しずつ良くしていくしかない。 いまは地元の住民も、外国の人と簡単な会話やあいさつをしてくれる。 もっと訪れてもらえるよう、こうした活動を続けていきたい」と話す。 (佐藤靖、asahi = 5-19-19) 1 月の訪日客 268 万人 中国 19% 増、個人旅行好調 観光庁は 20 日、1 月に日本を訪れた外国人旅行者は前年同月比 7.5% 増の推計 268 万 9,400 人だったと発表した。 1 月としては過去最多。 国・地域別で 2 位の中国が 19.3% 増の 75 万 4,400 人と好調で、全体を押し上げた。 政府が 1 月からビザ(査証)の発行要件を緩和した中国で、個人旅行の増加傾向が続いているため。 今月 4 - 10 日の春節(旧正月)の大型連休直前の 1 月末から日本を訪れる人が増え始めたことも要因。 3 位の台湾も 10.5% 増の 38 万 7,500 人だった。 一方、1 位の韓国は 3.0% 減(77 万 9,400 人)、4 位の香港は 3.9% 減(15 万 4,300 人)となっている。 (kyodo = 2-20-19) 外国人旅行者向け「スイカ」 … 事前預かり金なし ![]() JR 東日本は 15 日、訪日外国人旅行者向け IC カード「Welcome Suica (ウェルカム スイカ)」を、今年 9 月 1 日から販売すると発表した。 価格は 1 枚 1,000 円から 1 万円までで、白地に日の丸や桜の花をあしらったデザイン。 通常のスイカと違い、入金(チャージ)額の払い戻しができないが、購入時に 500 円の預かり金(デポジット)は徴収しない。 通常のスイカと同様、交通機関の運賃支払いや、商業施設で電子マネーとして利用できる。 外国人のスイカ利用を巡っては、羽田空港や成田空港の同社の窓口で、出国前に残額やデポジットを払い戻そうとする観光客の混雑が目立つといい、解消につなげる狙いもある。 同社は「日本訪問の記念品として持ち帰ってほしい」としている。 (yomiuri = 2-15-19) とんこつラーメン一蘭」、売上高 2 割増 訪日客人気後押し 九州・沖縄に本社を置く外食産業の 2017 年度の売上高ランキングを、帝国データバンク福岡支店がまとめた。 上位 50 社の売上高合計は前年度より約 2% 多い 4,926 億円。 前年度の 6 位から 3 位へ順位を上げたラーメン店の一蘭など、増える訪日外国人を取り込んだ企業も多く、比較可能な 04 年度以降では最高になった。 濃厚なとんこつラーメンを売りに、隣席と間仕切りを作ってラーメンに集中できる空間も外国人客に好評な一蘭。 関西など外国人客の多い地域に戦略的に出店し、土産物用商品の販売場所も駅や空港に広げるなどした結果、売上高が前年度から約 2 割増えた。 17 年に九州から入国した外国人は計約 494 万人と過去最高で、全体の売上高の押し上げにつながったとみられる。 帝国データの担当者は「訪日客の増加の恩恵を得た企業は多いとみられる」と分析する。 (田幸香純、asahi = 2-6-19) 訪韓日本人「2 割増」のなぜ 日韓関係冷え込む中 … 日韓関係が冷え込む中で、両国を往来する観光客は増加している。 特に韓国人より日本人の方が高い伸び率を記録している。 円高を背景に割安感が増しているためだとみられ、免税店の売り上げも急増。 「政冷経熱」ぶりが際立つ形になっている。 ビートルでは日本人利用者が韓国人を上回る 2019 年 1 月 22 日に韓国観光公社が発表した観光統計によると、18 年 12 月に韓国を訪れた日本人観光客は前年同期比 33.5% 増の 25 万 8,521 人。 18 年全体では前年比 27.6% 増の 294 万 8,527 人だった。 日本人観光客は、韓国を訪れる外国人観光客の 2 割近くを占めている。 同公社では、年末のプロモーションが奏功したほか、訪日韓国人の需要が減少して飛行機の予約に余裕ができた分、週末の観光客が増えたとみている。 一方、日本政府観光局 (JINTO) が 1 月 16 日に発表した訪日外客数の推計値によると、18 年 12 月に韓国から日本を訪れた観光客は前年同期比 0.4% 増の 68 万 1,600 人だった。 通年では 5.6% 増の 753 万 9,000 人で、過去最高を記録した。 上半期は好調だったが、夏から秋にかけての台風などの災害がブレーキをかけた。 韓国から日本に来る人よりも、日本から韓国を訪れる人の方が、伸び率が高くなっている。 この傾向は、福岡 - 釜山間の高速船「ビートル」でも反映されているようだ。 同路線は国籍別の利用者数を公表しており、18 年 12 月 28 日 - 19 年 1 月 6 日の日本人利用者数は前年同期比 20.8% 増の 3,511 人で、韓国人利用者数は 16.5% 減の 3,232 人。 日本人と韓国人の数が逆転した。 明洞の免税店では日本人向けの売り上げ 5 割増 この背景として韓国メディアが指摘しているのが、円高ウォン安だ。 18 年 1 月初頭には 100 円 = 940 ウォン程度で推移していたが、19 年 1 月には 100 円 = 1,030 ウォン程度で推移。 1 年で 10% 近くウォンに対する円の価値が上昇し、日本人の購買意欲を後押ししたとの見方だ。 韓国免税店協会のまとめによると、18 年に韓国の免税店を訪れた外国人は前年比 20.4% 増の 1,819 万 9,448 人で、売上高は 40.8% 増の約 15 兆ウォン(約 1 兆 5,000 億円)。 国別の内訳は明らかではないが、中国と日本がけん引しているとみられる。 年をまたいでも、この勢いは続きそうだ。 聯合ニュースやヘラルド経済によると、ロッテ免税店明洞店の 19 年 1 月 1 - 20 日の日本人に対する売上高は前年同期比 31% 増を記録。 レーダー照射をめぐる問題が先鋭化してからも売り上げが伸びていることになる。 店全体の売上高の伸び率が 15%、中国人客に対するものが 20% だったことを踏まえると、日本人の伸びが際立っている。 新世界免税店の明洞店では同じ期間で店舗全体の売り上げと中国人観光客に対する売り上げがそれぞれ 1% 減ったが、日本人に対する売り上げは 53% 増加したという。 聯合ニュースは、これまではターゲットが中高年女性に絞られていた「韓流」の人気が、幅広い層に広がったことも、日本人観光客増加の背景にあると分析。 TWICE (トワイス)や IZ*ONE (アイズワン)といった、韓国を拠点にするアイドルグループが若い女性の間で人気を広げていることなどを念頭に置いているとみられる。 (工藤博司、J-cast = 2-2-19) 「第一ホテル」、「レム」など全客室を禁煙へ 五輪見据え 阪急阪神ホテルズは 23 日、直営する 15 ホテルの全客室を 8 月末までに禁煙にすると発表した。 東京五輪・パラリンピックや大阪万博など世界的なイベントを見すえた対応だという。 新たに開業するホテルの客室も禁煙にする方針だ。 同社は「第一ホテル」や「レム」などのブランドでホテルを各地で展開し、直営ホテルは東京や大阪などに 18 ある。 このうち、オーナーがいたり、移転開業を控えたりする 3 ホテルを除いた 15 ホテルの全客室(4,380 室)を禁煙化する。 改装工事を順次進め、喫煙者には館内外に喫煙スペースを設ける予定だ。 また、大阪・梅田で来年オープンする「ヨドバシ梅田タワー(仮称)」など、今後開業が予定される六つの直営ホテル(約 2,200 室)についても、すべて全室禁煙にするという。 (中島嘉克、asahi = 1-23-19) 外国人訪日客、初の年間 3 千万人超え ビザ緩和など奏功 日本を訪れた外国人旅行者が初めて年間 3 千万人を超えた。 国土交通省が 18 日発表し、関西空港で式典を開いた。 石井啓一国交相は「受け入れ環境の整備や観光資源の磨き上げを進め、『2020 年 4 千万人』の目標達成に向けて全力で取り組む」などと話した。 関西空港に同日到着し、3 千万人目となったのは台湾からきた女性、王劭予さん (39)。 12 歳で初めて日本を訪れ、今回が 12 回目というリピーター。 「光栄です。 日本は一生涯旅行し続ける国。」などと語った。 政府が観光立国を掲げ、年間 500 万人余だった訪日客数を倍増させる「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を始めたのは 03 年。 ビザの緩和などを進め、増加する世界の旅行需要を取り込んだ。 アジア各国・地域の所得水準の上昇や格安航空会社 (LCC) の路線拡大などで直近 5 年は約 3 倍に急増。 今年は関空を冠水させた台風 21 号や北海道地震などの災害も多かったが、3 千万人を達成した。 (久保田侑暉、asahi = 12-18-18) 海渡る「TAMAGO」 卵かけご飯、訪日客から浸透中 近年「TKG」とも呼ばれ、シンプルにして各年代に愛される「卵かけご飯」が、「生卵は食べない」はずの外国人に浸透し始めている。 日本を旅行中、開眼するケースもあるようだ。 「おいしくて安全」を売りに、鶏卵の輸出も過去最高を更新し続ける。 TKG が海を渡る日も近い? 木々が色づき始めた京都・嵯峨野。 「こだわり卵専門店たまごや(右京区)」には、散策途中の外国人客が数多く訪れる。 シンガポール在住でインド国籍の会社員ピージー・パティルさん (50) はベンチに腰掛け、黄色に染まったご飯を見つめていた。 生まれて初めての、卵かけご飯。 慎重な箸づかいでゆっくり口に入れた。 「おいしい。」 ペースは早まり、3 分ほどで完食。 2 回目の来日だが肉や魚は食べない主義で、食事に苦労している。 「日本の卵は新鮮と聞いたから試してみた。 これからは、卵かけご飯も選択肢になる。 シンガポールにも日本の卵があるなら試したい。」 台湾から訪れた飲食店員のシャオ・ヤインさん (25) はインターネットで卵かけご飯を知り、興味を持った。 「台湾では生では食べない。 初めてだけどおいしかった。」と完食した。 英国から訪れたプログラマーのベン・ワットさん (26) は「問題ないね」と感想こそ少なかったが、残さず食べた。 「たまごや」オーナーの松岡弘樹さん (52) によると、外国人が卵かけご飯を注文し始めたのは 2、3 年前から。現在は客の 7 - 8 割が外国人。 平日でも外国人だけで卵 1 個入りの並盛り 20 - 30 食、2 個入りの大盛り 10 食近くが出る。 注文をさばく母の美千子さん (73) は「外国の方が卵かけご飯を食べるのは、ここでは当たり前の風景。 リピーターになって大盛りを頼む人もいます。」と話す。 大阪市浪速区の卵かけご飯専門店「美味卯(びみう)」にも、外国人が訪れる。 オーナーによると「若い子だと、TKG という言葉も知っている。」 ユーチューブや中国の動画サイトに外国人の日本体験を配信する映像制作会社「P-CUBE (大阪市福島区)」は 7 月に同店を取材。 台湾出身の女性スタッフが提案した企画で、配信後は「参考に店に行ってみます」などのコメントが寄せられた。 東京都新宿区の「かどやホテル」は京都丹波産の卵を使った「こだわりの卵かけご飯」を和食モーニングの売りにしている。 土地柄、外国人客が多く、「卵かけご飯を召し上がる方も増えています」という。 (中川竜児、asahi = 11-18-18) 「観光公害」市民と摩擦 京都・やむを得ず外国人制限の店も それは、悪夢のような光景だった。 丹精込めて作った料理が散らかり、高級な箸が床に転がる。 たばこの吸い殻を大きな足が踏みつける。 清水寺に近い京都市東山区の居酒屋「森ん家ょ」。 外国人観光客の目に余る行為は数年前から繰り返された。 食器や灰皿を持ち帰ったり、ほとんど注文せずに長時間居座ったりするケースも目立つ。 「腹が立つ。 なじみの客を大切にしたいのに。」 店主の森田秀樹さん (44) は悩み、1 年前から外国人の入店を制限している。 やむを得ず「予約でいっぱい」と言って入店を断ることもある。 市内の年間観光消費額は 1 兆円を超え、京都の消費をけん引しているが、森田さんには全く実感がない。 むしろ、外国人が増えすぎて日本人が遠ざかるようになり、売り上げが落ちた。 生まれ育った東山区の街並みもすっかり変わった。 店の窓から見える歩行者は大半が外国人。 一方で地域の少子高齢化は加速する。 森田さんは「市はこれ以上ホテルや簡易宿所を作る許可を出さないでほしい」と思うようになった。 観光客の急増に市民も悲鳴を上げる。 ホテルや簡易宿所などの宿泊施設が乱立する「お宿バブル」が地価高騰を招き、不動産業者による「地上げ」も発生している。 宿泊施設に転用された長屋は経営者が分からず、キャリーバッグを抱えた外国人が早朝、深夜も出入りする。 多くの市民が「ここは本当に私たちのまちなのか」と自問自答する。 古都を襲う「観光公害」は、日本の文化やマナーに対する外国人観光客の無理解や誤解にも起因し、市民との摩擦を生んでいる。 観光客が増えすぎ、安全のため 2 年連続で中止された東山区祇園での「祇園白川さくらライトアップ」。 世話人の秋山敏郎さん (71) は「行政や旅行会社が事前に文化やマナーをしっかりと教えるべきだ」と訴える。 市はごみのポイ捨てや飲食店への持ち込みといったマナー違反の事例をまとめたリーフレットを配っているが、外国人観光客に浸透しているとは言いにくい。 京都外国語大が外国人観光客を対象に実施したアンケート調査の結果でも、マナーが知られていないことが判明した。 オーストラリアの男性 (24) は「日本のマナーを知らず、ごみのポイ捨てなどで迷惑を掛けるケースもあると思うので、マナーを学べる機会を作ってほしい」と要望する。 市は今月 1 日に導入した宿泊税の本年度税収を 19 億円と見込み、観光客分散化や市バス混雑対策、違法民泊対策などに充てる。 それでも観光公害解消は遠く、市幹部は「来年度はもっと予算をかけないといけない」と危機感を募らせる。 観光公害は「オーバーツーリズム」とも呼ばれ、世界共通の課題だ。 スペイン・バルセロナ市では 2015 年、市長選でホテル建設凍結を訴えた市長が当選した。 昨年には、観光客が集中する地域で宿泊施設の新規立地を認めない制度も導入した。 現地で都市計画を研究する龍谷大の阿部大輔教授は「京都市も都市政策と統合した新たな観光戦略が必要。 学区単位での宿泊施設のベッド数の総量規制も検討すべきだ。」と提起する。 観光公害を減らし、持続可能な観光に導くため、政策の総動員が求められている。 (京都新聞 = 10-28-18) 交通混雑、民泊トラブル … 「観光公害」初の実態調査 訪日外国人旅行者の急増などに伴い地域の生活環境が悪化する「観光公害」と呼ばれる現象について、観光庁が初の実態調査に乗り出した。 各地で交通混雑や民泊を巡るトラブルなどが起きており対策を強化する。 詳しい状況と有効な対策事例を把握し、平穏な住民生活との共存に向けて本年度中に報告をまとめる。 既に有名観光地がある全国約 50 自治体にアンケートを実施、月内に新たに約 150 自治体への調査を始める。 併せて、自治体担当者や有識者を交えた勉強会を 11 月にも発足させる。 実態調査の結果を踏まえ、国や自治体への政策提言を行う。 目標とする観光立国に向け「住んでよし、訪れてよしの地域づくり(観光庁)」を進める狙いだ。 今後調査する約 150 自治体は、県庁所在市や政令指定都市のほか、日本版 DMO と呼ばれる組織をつくり観光振興に取り組む自治体などが中心。 公共交通の混雑や生活マナー違反、環境破壊といった問題の類型ごとに、現状や課題を明らかにする方針だ。 観光公害は「オーバーツーリズム」とも呼ばれ、京都や鎌倉などでは観光シーズンに電車や路線バスが混み合い、住民の通勤通学に支障が出ている。 世界遺産の白川郷がある岐阜県白川村では空き地への無断駐車、観光名所「哲学の木」があった北海道美瑛町は周辺の畑への立ち入りなどが問題となった。 一戸建て住宅やマンションの空き部屋を有料で提供する民泊物件でも、利用者の騒音やごみ放置などのトラブルが相次いでいる。 今年 1 - 8 月の訪日客は前年同期比 12.6% 増の 2,131 万人で、通年では初めて 3 千万人に達する見通し。 政府は 2020 年に 4,000 万人、30 年に 6 千万人に増やす目標を掲げているが、住民の反発が強まれば旅行者の満足度も低下し、目標達成の足かせになりかねないとみている。 (東京新聞 = 10-15-18) 新宿に都内最大級のゲストハウス「アンプラン・新宿」 2019 年初頭開業予定 都内最大級となるホステル&ラウンジ「UNPLAN Shinjuku (アンプラン・新宿、新宿区新宿 5)」が 2019 年初頭、新宿に開業を予定している。 地上 6 階、地下 1 階で客室は 21 部屋。 運営は FIKA (新宿区)。 2016 年にグランドオープンした「UNPLAN Kagurazaka (神楽坂)」、「hostel DEN (小伝馬町)」に続く 3 軒目。 ベッド数は約 200 で、男女混合ドミトリー、女性専用ドミトリー、2 段ベッド、ダブルベッド、和室タイプの個室など宿泊客がニーズに合わせて選べるさまざまなタイプの部屋を用意する。 担当者は新宿に出店するきっかけについて「今後ホステルを起点としたツアーなどを開催していきたいと考えている当社にとって、新宿はターミナルとなる立地。 外国人が東京と聞いて思い浮かべる場所の一つに新宿が入っていたり、バスタ新宿の開業により日本の新たな観光拠点ともなっていたりと、アピール力もあると考えた。」と話す。 最寄り駅は地下鉄丸の内線、副都心線「新宿三丁目駅」で、同ホステル近くには飲食店が多数集まる新宿ゴールデン街や、新宿御苑などがある。 既存 2 店舗の主な客層は「男女比は半々くらい。 年齢は 20 - 30 代が多く、外国人ゲストが 80%」で、「新宿店もインバウンドをはじめ、同じような客層を狙っていけたら。 夜遅くまでにぎやかな場所で街歩きも楽しんでいただけるのでは。」と担当者。 「心も体も休まるひと時を提供できれば」とベネツィアビエンナーレに出店したベッドを備えるほか、日英 2 カ国語対応のスタッフを配置。 地下 1 階には、宿泊していなくても利用できるバーカウンターを併設の予定。 「ホステル内で宿泊客同士が交流できるようなイベントも企画できれば」と意気込みを見せる。 (新宿経済新聞 = 9-7-18) ◇ ◇ ◇ 泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」、大阪・心斎橋に今秋オープン アールストアは、泊まれる本屋をコンセプトに訪日外国人観光客や国内旅行者をターゲットとしたホステル「BOOK AND BED TOKYO」を大阪・心斎橋に今秋オープンする。 内装を INTENTIONALLIES、ブックセレクトを SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS、併設するカフェのメニューの共同開発を sour、グラフィックデザインを Soda design が担当する。 池袋本店の利用者の 85% は 20 代から 30 代で、女性は 7 割を占める。営業時間と価格は未定。 2015 年の池袋本店を皮切りに、京都店、福岡店、浅草店、新宿店が開業しており、心斎橋店は 6 店舗目となる。 (石橋正規、Traicy = 9-7-18) 訪日客、過去最速で 2 千万人突破 20 年に 4 千万人狙う 2018 年の訪日外国人旅行者数が今月 15 日に推計で 2 千万人を突破した。 昨年よりも 1 カ月早く、過去最速。 菅義偉官房長官が 20 日、訪問先の北海道弟子屈(てしかが)町で記者団に明らかにした。 菅氏は環境省の「国立公園満喫プロジェクト」の対象に指定されている北海道東部の阿寒摩周国立公園などを視察。 「安倍政権は観光を地方創生の切り札、成長戦略の柱として推進してきた」と述べ、20 年の訪日外国人旅行者を 4 千万人にする目標に向けて取り組みを強化する考えを示した。 (asahi = 8-20-18) 訪日客倍増に「空」の壁 操縦士不足・成田拡張も限界 順調に増え続ける訪日客の受け入れに「空のインフラ不足」の問題が立ちはだかっている。 航空機のパイロットが足りず、空港施設は大混雑。 空は航空機で渋滞し、それをさばく管制業務が追いつかない。 政府は 2030 年に今の 2 倍となる 6 千万人の受け入れを目指している。 効率良い受け入れ態勢を整えられるかどうかは訪日消費が支える日本経済の成長すら左右する。 「パイロットが枯渇している。 確保が大きな問題だ。」 日本航空の小田卓也人財本部長は 5 月、労働組合の幹部にこう持ちかけた。 同社はこの日、格安航空会社 (LCC) への参入を表明。 10 年の経営破綻後、整理解雇などで日航を離れた人を採用対象とする考えを組合に伝えた。 日航は経営破綻後に職を離れた人をグループ企業で再雇用せず、経営のスリム化に努めてきた。 方針転換の背景にはパイロットの逼迫がある。 国際民間航空機関の予測では 30 年にアジア太平洋地域で 23 万人のパイロットが必要になる。 これは 10 年の 4.6 倍だ。 訪日客の取り込みに運賃の安い LCC が果たす役割は大きいが、パイロットがいなければ運航できない。 17 年には AIRDO がパイロット不足による運休を決めた。 17 年 1 月時点の国内主要航空会社のパイロット数は約 6,400 人。 定年退職による自然減も考慮すると、国土交通省は 20 年に年 380 人、30 年に年 430 人の新規確保が必要と推計している。 足元では年 300 人強しか確保できておらず、ハードルは高い。 業界では中国系航空による高額報酬での引き抜きが噂になる。 中堅航空や LCC は中途採用だけではパイロットを確保できず、育成に取り組み始めた。 国交省も航空大学校の養成人数を増やし、自衛隊経験者の活用を進める。 足りないのはパイロットだけではない。 成田国際空港では LCC 専用の第 3 ターミナルを利用した人が 17 年度に 764 万人と、対応可能数の年 750 万人を突破した。 新棟を建て 22 年春をめどに年 1,500 万人に対応する計画だが、訪日客が 6 千万人に増えれば再び限界が見えてくる。 空も混み合っている。 日本上空を飛ぶ航空機の交通整理をする管制は年間 180 万機程度しか対応できない。 管制対応した航空機は 16 年度までの 3 年間で 20 万機以上増え、すでに約 175 万機に達している。 同じ空域内に飛行機が過密になった際、空港では出発を遅らせるケースが出ているという。 国交省は管制業務を再編し 25 年度には 200 万機に能力を上げる方針だが、今のペースで伸びれば十分とは言い切れない。 大勢の訪日客をどう円滑に受け入れるか。 パイロットは育てるしかなさそうだが、訪日客の増加に合わせて人員を確保するのも簡単ではない。 ポイントは人手をかけない省力化の投資。海外のハブ空港は一足早く取り組んでいる。 17 年 10 月末に開業したシンガポールのチャンギ空港第 4 ターミナルでは、航空券の発券から手荷物の預け入れ、出国審査、搭乗までの手続きをすべて機械でできる。 手荷物は航空券の発券時に出力されるタグを荷物につけ、パスポートや航空券を専用の機械に読み取らせると、自動的に搭乗機まで運ばれていく。 最新の顔認証や指紋認証技術が使われ、出国審査の待ち時間はほとんどない。 機械の手続きが定着すれば空港の職員数を 20% 減らせるという。 新ターミナルの開業で空港の受け入れ能力は年間 8,200 万人と約 24% 増えた。 日本も手をこまねいているわけではない。 法務省は昨秋から、全国の主要な空港に機械で顔を識別するシステムを導入し始めた。日本人の出入国審査を少ない人数で対応できるようにし、余裕ができた人員を訪日客の審査に配置する方針だ。 今秋には国交省が主要空港の制限区域内で乗客や乗員の輸送を想定した自動運転車の実証実験も始める。 国内総生産 (GDP) 統計によると、17 年度の訪日客消費は前年度比 18% 増の 3 兆 6,674 億円。 これが 2 倍になれば 17 年度の個人消費の 2.4% に相当し、全国 21 位にあたる岡山県の年間総生産に近い規模になる。 人口減が逆風となる日本経済で、観光立国にかかる期待は大きい。 利用目的がはっきりしている空港は、新たな技術を試しやすい格好の実験場でもある。 新たな技術が芽吹く場にして、人口減が進む日本の成長を支える。 訪日客の 30 年問題は 30 年に向けて日本が取り組むべき課題を映している。 (杉原淳一、志賀優一、nikkei = 8-4-18) 日本版「混雑課金」、訪日客増で渋滞緩和の秘策か 訪日外国人客(インバウンド)需要の拡大により地域経済が潤う一方で、交通渋滞や混雑に悩む都市が出てきた。 交通インフラを整備すれば解消するが、古い街並みの都市では道路の新設が難しいうえ、財政的な余裕の乏しい自治体も多く、容易ではない。 そこで観光地に流入する車ごとに料金を徴収するアイデアが浮上している。 お金をとることで、車の利用を抑制する効果が期待できるからだ。 英ロンドンやシンガポールなど海外で導入されており、「混雑課金」といわれる。 観光立国を目指す日本でも検討の動きが本格化しそうだ。 英国では 1,600 円超 国土交通省は昨年 9 月、人工知能 (AI) や情報通信技術 (ICT) といった先端技術を活用して観光地の渋滞緩和を図る「観光交通イノベーション地域」として神奈川県鎌倉市と京都市、長野県軽井沢町、神戸市の 4 地域を選定した。 高速道路の料金支払いで普及した自動料金収受システム (ETC) を使った双方向通信ができる次世代交通システムや街頭カメラで、交通状況のデータを収集。 混雑するエリアや時間帯などの予測を AI にさせ、渋滞を緩和するなどの実験に取り組んでいく計画だ。 発表資料で目を引いたのは、一定の区域内に入ってくる自動車から料金を徴収する「エリアプライシング」という混雑課金を観光渋滞対策実験の検討対象に入れたことだ。 日本ではまだなじみがないが、1975 年にシンガポールで始まり、英国でも 2003 年にロンドン中心部で導入した実績がある。 アジア太平洋研究所(大阪市)が 3 月に公表した報告書によると、ロンドン中心部の課金エリア(22 キロ平方メートル)の各所に「Congestion Charging (混雑課金)」と書かれた道路標識が設置されている。 平日午前 7 - 午後 6 時にエリア内を通行する自動車に課金。 前払いと当日払いは 11.50 ポンド(約 1,670 円)、翌日払いなら 14 ポンドを支払わなくてはならない。 市内の数百カ所に設置したカメラで、エリア内に入った車のナンバーを読み取り、課金対象を補足する仕組みで、滞納すると罰金が加わる。 この課金によって自動車交通量が 2 割、二酸化炭素排出量が 16% 減少したとの結果もあるという。 ICT で導入ハードル低く 日本では鎌倉市が、国交省のデータを活用しながら、全国で先駆けて混雑課金の実験を平成 32 年度にも始める構えだ。 具体的な制度設計は検討中だが、26 年度に市の専門委員会がまとめた素案では、土日・祝日の交通渋滞の著しい時間帯を想定。 課金で得られた資金は、公共交通の充実やパーク & ライド駐車場の拡充、商業や観光振興に役立てる。 同市は三方を山に囲まれ、市内に入れる道路が限られ、もともと渋滞が起きやすい地形。 そこに訪日外国人ら観光客が増え、最近では延べ年間 2 千万人超が訪れる。 鎌倉大仏殿など観光名所に通じる道で交通渋滞が深刻化している。 一方、関西では、観光交通イノベーション地域に選ばれた京都市と国交省、学識経験者らが加わる協議会が 2 月に発足した。 まずは ICT の活用で人や車の流れをより正確に把握し、どんな渋滞対策が可能かの検討を行う。 京都市の場合は、鎌倉市と異なり、市内に入ってこれる道路が多いという事情もあり、課金は将来的な課題に位置付けている。 2000 年ごろに延べ約 4 千万人だった京都市への年間観光客数は、現在は 5,500 万人にのぼる。 外国人宿泊客は 300 万人を超えるほどだ。 観光シーズンは公共交通のバスがいっぱいになり、通勤や通学の際に乗り切れないといった日常生活上の不便も生じ、臨時バスの運行などで対処している。 京都観光での不満の声でも「交通渋滞」が目立ち、潜在的な経済損失は大きいとみられる。 中央大の後藤孝夫准教授(交通経済学)は「ロンドンでは混雑緩和には、課金の手段しか考えられないという状況になって導入された経緯がある。 日本でも観光客数が急増していけば、従来の渋滞緩和対策では限界が出てくる。」と指摘。 そのうえで、「今後は ICT の進歩によって、課金の徴収コストも下げられ、導入のためのハードルは低くなるだろう。 交通マネジメントの手段の一つとして考えておく意義はある。」と話す。 ただ課金は、車の所有者だけでなく、観光バスを運行する事業者を通じて利用者に転嫁される可能性があり、増税と同じような痛手を被る。 大規模な交通インフラの整備が難しい中で、増加する訪日外国人をいかに受け入れていくのか。 観光を成長産業に位置付けた日本の大きな課題でもある。 (sankei = 6-6-18)>/p>
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