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アリババ、独禁法違反で罰金 3 千億円 中国で史上最高

中国の規制当局は 10 日、ネット通販大手アリババ集団が独占禁止法に違反していたとして、182 億 2,800 万元(約 3 千億円)の罰金を科すと発表した。 中国での独禁法違反による罰金額としては過去最大となる。 急成長を続けてきたアリババは苦境に立っている。 中国の独禁法当局である国家市場監督管理総局が発表した。 発表文によると、アリババは 2015 年以降、中国のネット通販市場で半分以上のシェアを持つ支配的な地位を乱用。 自社の通販サイトに出店する企業に、競争相手である他の通販サイトと取引しないよう求めていたと認定した。

当局は昨年 12 月に独禁法違反の疑いでアリババ本社を家宅捜索するなど、調査を進めていた。 アリババは 10 日、「我々は今回の処罰を誠意をもって受け入れ、しっかりと従う」との声明を発表。 中国での独禁法違反の罰金額は、15 年に米半導体大手クアルコムに科せられた 60 億 8,800 万元(約 1 千億円)が過去最大だった。

昨年 3 月末時点で、アリババの筆頭株主はソフトバンクとなっている。 アリババを巡っては、傘下の金融会社アント・グループについても、中国政府が圧力を強めている。 アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が昨年 10 月に金融当局を批判した後、予定されていた新規株式の 上場が延期に追い込まれた。 「企業統治体制に問題があり、順法意識に欠けている(中国人民銀行の潘功勝副総裁)」と、金融当局は組織改革を要求。 3 月には最高経営責任者 (CEO) の胡暁明氏が辞任した。

習近平(シーチンピン)政権はアリババのようなプラットフォーマーと呼ばれる巨大 IT 企業への規制を強める方針で、今年の重大任務の一つとして「反独占」を掲げている。 イノベーションを生み出してきた中国の IT 企業への締め付けが続けば、これまでの急成長にブレーキがかかる可能性がある。 (北京 = 西山明宏、asahi = 4-10-21)

前 報 (12-2-20)


中国、暗号化メッセージアプリ「Signal」をブロックか

人気の高い暗号化メッセージアプリの Signal が、中国の一部ユーザーの間で利用できなくなっていると、The Wall Street Journal (WSJ) が米国時間 3 月 16 日に報じた。 世界一の人口を持つ中国で同アプリがブロックされている可能性があるという。

WSJ によると、中国の Signal ユーザーらがメッセージの送受信の問題を報告したのは 15 日夜のことだ。 その問題は、VPN (仮想プライベートネットワーク)を使って現在地をマスクし、中国のフィルターを回避すると解消されたと報じられている。 中国では、Facebook、WhatsApp、Telegram、Twitter、Clubhouse などのメッセージサービスやソーシャルメディアサービスが禁止されており、Signal もブロックされているならば、これらのサービスに加わったことになる。

中国が Signal を禁止したとすれば、この数カ月で Signal を禁止した 2 番目の国ということになる。 Signal の公式 Twitter アカウントは 1 月下旬、同アプリがイランの「Google Play」ストアで首位を獲得した後、同国で禁止されたと投稿していた。 同社はその後、イランの検閲を迂回するための TLS プロキシーの設定手順を公式ブログに掲載している。 米 CNET は Signal とワシントン DC にある中国大使館にコメントを求めたが、回答は得られていない。 (Eli Blumenthal、CNET = 3-17-21)


中国半導体「重要プロジェクト」、全社員を解雇
「武漢弘芯」、工場が未完成のまま事実上頓挫

中国湖北省の武漢市が半導体産業の育成を目指し、鳴り物入りで推進していた「武漢弘芯プロジェクト」。 その事業主体が、社員の全員解雇に踏み切ったことが明らかになった。 2 月 26 日午前、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)を利用した社員向けチャットグループに解雇通知が送信された。 財新記者の取材に応じた社員によれば、解雇通知には「会社は生産を再開する計画がない」ことが明記され、全社員に対して 2 月 28 日までに退職届を提出し、3 月 5 日までに手続きを完了するよう求めたという。

「解雇に伴う補償の提示は一切なく、経営陣から経緯の説明もまったくない」と、この社員は不満を隠さない。 財新記者が武漢市の所管部門である東西湖区政府に問い合わせたところ、「すべて法律に基づいて対処している」との形式的な回答しか得られなかった。 事業主体は正式社名を武漢弘芯半導体製造 (HSMC) といい、2017 年 11 月に発足。 当初の触れ込みでは総額 1,280 億元(約 2 兆 1,043 億円)を投じ、回路線幅 14nm (ナノメートル)および 7nm 以下の最先端の半導体製造工場と、完成したチップを検査・封入するパッケージング工場を建設する計画だった。

創業者は半導体業界で無名の人物

武漢市政府は過去の宣伝で、武漢弘芯を 2017 年および 2018 年の同市最大の投資プロジェクトだとアピールしていた。 また、湖北省政府も 2018 年と 2019 年の重要建設プロジェクトとして位置づけていた。 しかし半導体業界では、その計画に当初から疑念を抱く向きが少なくなかった。 というのも、HSMC の 2 人の創業者は業界内ではまったく無名の人物で、バックグラウンドが謎に包まれていたからだ。 14nm と 7nm のプロセス技術をどこから導入し、エンジニアのチームをどう確保するのかも不透明だった。

それから 3 年余り。武漢弘芯プロジェクトは第 1 期工事の途中で資金ショートに陥り、工場が未完成のまま事実上頓挫した。 HSMC の法人登記簿によれば、同社の株主は数回にわたって変更され、東西湖区政府の保有比率が当初の 10% から現在は 100% になっている。 経営陣も、創業者を含むかつてのメンバーはすべて退任。 区政府の国有資産監督管理部門が派遣したチームが取って代わった。 全社員を解雇した後、区政府はプロジェクトの後始末をどのように図るのか、次の一手が注目される。 (劉沛林、羅国平/財新/東洋経済 = 3-10-21)


中国、国産半導体に逆風 米制裁で打撃、目標達成困難

【北京】 中国が育成を急ぐ国産半導体に逆風が吹いている。 2025 年の「製造強国」入りを視野に半導体の自給率向上を掲げるが、米国による制裁の影響で目標達成は困難な状況。 補助金や優遇税制を柱とする支援策は過剰な参入を招くなど、弊害も目立つ。 中国政府は 15 年公表のハイテク産業育成戦略「中国製造 2025」で、半導体自給率を 20 年に 40%、25 年に 70% まで高める目標を設定。 ただ、米調査会社 IC インサイツによると、20 年は 15.9% にとどまった。 25 年も 19.4% と目標に遠く及ばない見込みだ。

背景には米中のハイテク覇権争いがある。 半導体の中核技術を握る米国は 19 年以降、半導体設計をリードしてきた華為技術(ファーウェイ)や製造最大手の中芯国際集成電路製造 (SMIC) を狙い撃ちにした制裁を実施、中国の半導体産業は大きな痛手を受けた。 半導体の生産工程は設計、製造、組み立て・検査に大別され、中国は特に製造が弱いとされる。 税関総署の統計では、20 年の半導体貿易額は過去最大となる 2,334 億ドル(約 24 兆 6,000 億円)の赤字を記録した。

中国の半導体産業は「いまだに強い国際競争力を獲得できていない(邦銀アナリスト)」と指摘される。 政府系シンクタンクも主要国より 3 - 5 年は遅れていると認める。 政府は外圧をチャンスに変えるべく、サプライチェーン(部品供給網)を含めた業界全体の底上げを目指す。 20 年夏には企業所得税(法人税)の最長 10 年間免除などの支援策を公表。 香港紙によれば、同年 1 - 8 月に前年同期の 2.2 倍に当たる約 9,300 社が新規参入した。

ただ、大半は専門外からの進出で、実力は未知数だ。 巨額の補助金を受けていた紫光集団が経営難に陥るなど、実績のある大手にとっても競争は激しい。 香港紙は、約 60 年前に大失敗に終わった農・工業の大増産政策「大躍進」の二の舞いになりかねないと警鐘を鳴らす。 (jiji = 2-8-21)


中国のネットユーザー数が 10 億人に迫る、ネット普及率は 70.4% に

中国インターネット情報センター (CNNIC) がこのほど北京で発表した最新統計によりますと、2020 年 12 月時点の中国のネットユーザー数 9 億 8,900 万人で、2020 年 3 月より 8,540 万人増え、インターネット普及率は 70.4% となりました。 農村部のネットユーザー数は 3 億 900 万人で、2020 年 3 月より 5,471 万人増えました。 農村部のインターネット普及率は 55.9% で、2020 年 3 月より 9.7 ポイント上昇しました。 (中国・CGTN = 2-7-21)


馬さんの「神隠し」 IT 企業が侵した中国の聖域

なにはともあれ、ほっとした。 中国の IT 大手アリババ集団の創業者で最高実力者、馬雲(ジャック・マー)さんが 20 日、88 日ぶりに公の場に現れた。 農村の教師への慈善イベントにオンラインで参加する姿が確認されたのだ。 中国の金融監督行政を批判した昨年 10 月の講演の後、消息が途絶えた。 傘下の企業の上場も、予定の 2 日前に突如、延期になっていた。

馬さんの「神隠し」 - -。

習近平(シーチンピン)国家主席の名前に触れながらの批判が激怒されたとして、当局による拘束までささやかれた。 隠されたか、隠れたか。 真相は闇の中。 ただ、この「88 日間」に中国当局から発せられたのは、大きくなりすぎたアリババに対して増長を許さないという強いメッセージだ。 デジタルが経済の中枢を担うようになり、事業の質が中国共産党の権力の聖域を侵し始めたのだ。

私にとって馬さんは特別な存在である。 上海特派員として赴任した 2003 年、初めて単独で取材した中国大企業のトップだからだ。 いや、当時は創業 4 年の新興企業。 本社がある浙江省杭州だったと思う。 緊張して会話が深まらず、記事にはならなかった。 その年に流行した新型肺炎 SARS による「巣ごもり需要」でネット通販に弾みがつき、アリババも日本企業との取引に期待を高めていた時期である。

馬さんは共産党員だが、当局のいいなりだったわけではない。 たとえば、スマホを使った QR コード決済は、IC カードにこだわる政府の方針の隙間を縫うように広まった。 その決済の余資をスマホのアプリで運用する金融商品も、国有の金融機関に牽制されながら普及した。 便利だったからだ。 新しい分野ゆえの規制の緩さや中国独特のあいまいさの隙を泳いで、アイデアと技術でせりあがった。 グーグルなど競合しうる外資排除の政策も追い風となった。

今や中国ネット市場で 5 割超のシェア。 10 億人以上が使うネット決済「支付宝(アリペイ)」の顧客データを握る。 中国のネット決済は首位のアリババと続くテンセントの 2 社で市場占有率は 9 割を超す。 中国共産党は、デジタル分野を未来の経済を生む種とみなす。 寡占にもとづく一部の強引な手法やリスクの高い事業も見逃してきた。 時の権力者によって伸縮自在とはいえ、共産党の「掌(たなごころ)」の上に収まっている限りは、持ちつ持たれつなのだ。 馬さんも習氏ら首脳外交に連れ添ってきた。

だが、許容範囲を超えた。 中国共産党・政府は昨年 12 月、「独占禁止を強化し、無秩序な資本拡張を防ぐ(中央経済工作会議)」と宣言。 アリババにも独禁法違反で調査と指導が入った。 周到に用意されたものだった。 国有金融機関を脅かすほどに膨らんだ市場への支配力は抑えるべき対象だ。 その構図で言えば、国家の命脈につながる通貨への侵食は許される領域ではない。

馬さんの 10 月の講演録を読み返した。 「デジタル通貨は通貨の定義を変える。」 方向性を決めるのは「市場の論理、需要、将来の視点」と述べている。 馬さんは承知のはずだが、中国では、その定義を決めるのは共産党だ。 当局がデジタル人民元の開発を急ぐのは当面、基軸通貨米ドルへの挑戦ではない。 アリババなど民間企業のネット決済機能の融通無碍(むげ)な拡張に、国家が発行する通貨の役割を奪われないためだ。

各国の中央銀行を恐れさせた暗号資産(仮想通貨)を提案した、米フェイスブックなど「GAFA」と呼ばれる巨大 IT 企業と世界の政府の攻防にも似る。 米中の技術覇権をめぐる戦いの裏側で繰り広げられる、もう一つの攻防。 馬さんらは共産党の指の隙間を狙ってまた、新しい事業の種をまこうとするだろう。 この成長の動力まで、習政権は握りつぶせるのか。 ならば、その先にあるのは - -。 (吉岡桂子、asahi = 1-30-21)


中国、ネット統制強化 摘発 2 割増、デマに罰金 規則改正で世論安定狙う

【北京 = 多部田俊輔】 中国政府はネット情報の統制を強化する。 約 20 年ぶりに違法の内容や罰金を定めた規制を全面改正し、デマ発信に最高 100 万元(約 1,600 万円)の罰金を科すなどの内容を盛り込む。 昨年のネット摘発件数は前年比で 2 割近く増えており、新型コロナウイルスの感染再拡大などを受けて世論の安定を狙う。 中国当局は 8 日、ネット情報の法律責任などを定めた規則「インターネット情報サービス管理弁法」の改正草案を公開した。 同規則は 2000 年に施行されており、本格的な改正は初めてとなる。 2 月上旬まで専門家らの意見を募り、年内に改正する見通し。

改正草案では、全体の条文数を 27 条から 2 倍の 54 条に増やした。 スマートフォンの普及や交流サイトや動画投稿サイトの利用拡大に対応して、規制違反とする行為や罰金などの詳細を大幅に増やした。 具体的には、新型コロナなどの感染情報など社会秩序を乱すデマや、国家安全に危害を与える情報の発信や拡散などに、最高で 100 万元を科す。 有償で交流サイトの書き込みを削除したり、アカウントを不正に取引したりすることも禁じた。

交流サイトなどネットサービスを利用する際に必要な個人情報は自身の正しい情報を登録し、虚偽内容を登録することや他人の名義での利用を禁じた。 スマホに挿入して使う SIM カードなどの闇取引も規制し、他人に貸す際も適切な手続きを求める。 企業側にも利用者に新しい規制に順守させることを求めた。 ニュース情報を扱うサービスは許可制とした。ブラックリスト制度も創設し、当局から情報発信を禁じられた組織や個人は 3 年間は解禁されないことなども盛り込んだ。

今回の規制改正は習近平(シー・ジンピン)指導部のネット世論の統制強化の一環とみられ、ネット情報の摘発を増やしている。 中国当局がこのほど発表したネットの違法・不適切情報の摘発件数の統計によると、20 年には 1 億 6,300 万件を摘発し、19 年に比べ 2 割近く増えた。 交流サイトの利用拡大に加え、ライブ配信などの利用者も増えていることに対応し、当局は昨年 11 月にライブ配信に関する規制案を公表した。 ライブ配信を手掛ける企業を登録制とし、未成年がお金を払って応援する「投げ銭」を禁止する内容だ。

習指導部は 12 年に発足すると、ネット空間の統制に着手。 17 年にインターネット安全法(サイバーセキュリティー法)を施行し、20 年には企業が扱うデータ管理を厳しくするデータ安全法(データセキュリティー法)の草案も公表するなど法整備を進める。 (nikkei = 1-13-21)



アリババ、テンセントが独禁法違反 中国のプラットフォーマー規制が本格化

中国当局は 12 月 14 日、中国 EC (電子商取引)大手アリババグループ、メッセージアプリ大手テンセントの系列会社、ネット小説配信サイトの閲文集団、物流大手 SF エクスプレスの系列会社、スマート宅配ロッカー運営企業の豊巣ネットワークの 3 社に対して、独占禁止法違反での行政処罰を発表した。

問題視されたのは、

・ 2016 年のアリババグループによる小売企業「銀泰百貨」の買収
・ 2020 年の閲文集団による新麗伝媒の買収
・ 2020年の豊巣ネットワークによる郵智●(= 弟にしんにゅう)科技の買収

の 3 件。

いずれも業界内で大きなシェアを持つ企業同士の買収だったため、事前申請が必要だったと指摘した。 ただし、重大な過失ではないという判断からいずれも罰金 50 万元(約 800 万円)という軽微な処罰にとどまった。 もっともこの処罰はいわば見せしめであり、今後の規制強化の号砲とみるべきだろう。 最近、中国政府は IT プラットフォーマーに対する強化しており、優越的地位の濫用を禁止する「反独占ガイドライン」、IT 企業によるデータ取得を規制する「個人情報保護法」、さらにスマートフォンアプリによる情報収集の規制などの草案を矢継ぎ早に発表している。

日米欧の先進国では GAFA に対するプラットフォーマー規制が強化されつつあるが、中国当局もこの世界的なトレンドに追随した格好だ。 世界的に見ても、中国の巨大 IT 企業による業界支配、データ支配は突出しているが、2021 年は規制強化によって、中国 IT 業界には強い嵐が吹くことになりそうだ。 (高口康太、Yaahoo! = 12-14-20)


中国アントの上場中止、習近平氏が決定 WSJ 報道

【ニューヨーク】 中国の電子決済サービス「アリペイ」運営のアント・グループが上海と香港の両証券取引所での新規上場を延期したことを巡り、中国の習近平国家主席が直接、上場中止を決めたことが 12 日、明らかになった。 米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版が政府関係者の話として伝えた。 アントを傘下に持つ中国の電子商取引最大手アリババグループの創業者で、中国最大の資産家の馬雲氏が中国の金融当局を批判する発言をしたことが引き金となった。

同紙は「資本と影響力を持つ大規模な民間企業に対し、習氏の許容度が低くなってきたことを示している」と指摘。 習氏による支配と中国共産党の一派が求める安定性に対する挑戦とみなしたという。 馬氏は 10 月 24日に上海で開かれたイベントで講演。 技術革新を通じ、中国の金融問題の解決を支援する考えを示し、政府による規制の厳格化が技術開発を抑えていると批判した。 習氏は、これに関する報告書を読み激怒。当局にアントの上場を調査して中止させるよう命じた。 アントは今月 5 日に新規上場し、史上最高額の 3 兆 6 千億円相当を調達する見込みだったが、直前の 2 日に中国当局が馬氏らを呼び出し、新たな規制案を公表。 アントは翌 3 日に上場延期となった。 (kyodo = 11-13-20)

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アントの上海・香港上場延期、中国当局がジャック・マー氏を指導

→ 馬雲氏が「規制監督を巡る面談」に呼び出されたためだと上海証取
→ アントの IPO は半年程度ずれ込む見込み - QQ ドットコム

中国のフィンテック企業アント・グループによる上海と香港での上場が延期された。 アリババグループ傘下のアントは 350 億ドル(約 3 兆 6,600 億円)規模の新規株式公開 (IPO) 計画を進めていた。 上海証券取引所は 3 日の声明で、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が関係当局による「規制監督を巡る面談」に呼び出されたことを挙げ、アントの新規上場を一時停止すると発表した。 声明はまた、規制を巡る環境に「大きな変化」があったとし、「こうした重大な問題により、アントは上場や情報開示に関する要件をもはや満たさなくなる可能性がある」と説明している。

上海証取の発表後間もなく、アントは当局への届け出で香港上場も一時停止されることを明らかにした。 上海、香港両市場での上場はいずれも 5 日を予定していた。 両市場での IPO は実現すれば史上最大規模となるはずだった。 アントは投資家宛てのメッセージで謝罪を表明。 上海、香港両証取の「規則に従い、今後の手続きを適切に処理していく」とコメントした。 ニュースサイトの QQ ドットコムは匿名の関係者 1 人を引用し、アントの IPO は半年程度ずれ込む見込みで、同社は応募した投資家に資金を返還する方針だと伝えた。

中国 4 当局、馬雲氏とアント・グループ経営首脳を指導

中国人民銀行(中央銀行)など 4 つの金融監督当局は 2 日に開いた異例の合同会議に馬氏を呼び出していた。事情に詳しい複数の関係者によれば、当局はアントに対する監視強化や同社が資本やレバレッジに関して銀行と同様の規制を受けることになると伝えた。 馬氏は中国内外の規制当局がイノベーションを阻害し、発展や若者の機会を十分に大切にしていないとの批判を展開していた。 先月の上海での会議では、銀行の資本要件を定めたバーゼル合意を高齢者クラブになぞらえた。 これを受け、中国国営メディアはこのところ、アントに対して厳しい目を向けていた。 (Lulu Chen、Richard Frost、Bloomberg = 11-4-20)

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中国当局、アリババ創業者ら聴取 アント上場でけん制

【上海 = 張勇祥】 中国人民銀行(中央銀行)など中国の金融当局が 2 日、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏を聴取した。 マー氏は株式上場を控えるアリババ傘下の金融会社、アント・グループの経営権を実質的に握る。 マー氏は講演で金融当局の監督姿勢に不満を述べており、当局がマー氏をけん制したとの見方が出ている。 マー氏のほかアントの井賢棟・董事長、胡暁明・最高経営責任者も聴取に応じた。 やり取りの内容は明らかにしていないが、アント側は「引き続き(当局の)指導方針に沿っていく」とする。

聴取の引き金はマー氏の発言のほか、新規株式公開 (IPO) を巡るアントの姿勢にあるとされる。 マー氏は 10 月下旬の上海市の講演で「良いイノベーションは(当局の)監督を恐れない。 ただ、古い方式の監督を恐れる。」などと発言した。 アントは銀行への融資先の紹介や信用評価の提供を収益源にしている。 従来にない経営モデルで高成長を遂げた背景があり、マー氏の発言は金融当局の監督手法の遅れを示唆したとの受け止めが多い。 また、アントは上場後の自社株を組み込む投信をスマホ決済アプリ「支付宝(アリペイ)」で販売している。 こうした手法も当局の不興を買ったとみられる。

国務院(政府)は 10 月末に開いた金融安定に関する会議で、イノベーションを奨励すると同時に、フィンテック企業なども「全面的に監督に組み込む」と表明していた。 また銀行、保険の監督当局幹部はメディアへの寄稿で、アントのサービスを名指ししたうえで「銀行が提供する金融サービスと本質的な差はない」と指摘した。 今後、アントをはじめ中国のフィンテック企業への当局の監視が強まるのは避けられない。 ただ、5 日に控える IPO については「影響はなく、現時点では予定通りではないか(地場証券)」との見方が大勢だ。 (nikkei = 11-3-20)



アリババ、「独身の日」セールで 4.2 兆円達成 また記録更新

中国の小売大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)が「独身の日」の流通総額 10 億ドル(約 1,100 億円)をわずか 1 分 8 秒で突破した。 同社は現地時間 11 月 11 日、中国で毎年この日に 24 時間にわたって開催している「11.11 Global Shopping Festival」の流通総額が 2,684 億元(約 4 兆 2,000 億円)に達したと発表した。 これは、感謝祭、ブラックフライデー、サイバーマンデーを合わせた 2019 年の予想売上高を上回る額だ。

毎年 11 月 11 日は、日付が 1 並びになることから「独身の日」という中国の非公式な祝日となっている。 中国のオンライン小売大手アリババや JD.com (京東商城)などのセール効果もあって、近年その商戦は過熱しており、アリババは今回 Taylor Swift の大規模コンサートでセールの幕を開けた。

そして独身の日はまたしても記録を更新した。 アリババによると、今回は 2018 年の流通総額 2,135 億元(約 3 兆 3,000 憶円)を 17 時間足らずで超えたという。 米国のブラックフライデーやサイバーマンデーとよく比較されるが、実際のところ、独身の日はそれらの売り上げをはるかにしのぐ。 分析ソリューション「Adobe Analytics」のデータによると、2019 年の米国ホリデー商戦の売り上げは 290 億ドル(約 3 兆 2,000 万円)と予想されている。 (Carrie Mihalcik、CNET = 11-12-19)

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中国の「独身の日」セール、早くも新記録 日本製も好調

中国で「独身の日」とされる 11 日、ネット通販最大手のアリババ集団が始めたセールが、過去の記録を塗り替えている。 米中貿易摩擦の影響で高額消費が控えられているが、セール時に発揮される中国の消費の力はなお健在だ。 アリババのセールは 11 日の 24 時間。 昨年の流通総額は 2,135 億元(約 3 兆 3,300 億円)だった。 今回、100 億元(約 1,560 億円)の大台に到達するのにかかった時間は 1 分 36 秒。 昨年の記録を 29 秒更新し、過去最速だった。

日本からの輸入品も好調で、開始 1 時間での国別統計では首位だった。 ブランド別の統計では、花王やムーニー、ヤーマン、資生堂が上位 10 位に食い込んだ。 独身の日セールは 2009 年にアリババが始めた。 他のネット通販もこれに追随し、いまや中国を代表する国民的行事になっている。 アリババで独身の日セールを始めたとされるのは会長の張勇(ダニエル・チャン)氏。 張氏は創業者の馬雲(ジャック・マー)氏から 9 月に会長を受け継いだばかりで、トップとして初めてセールに臨んだ。

10 日夜に上海市で催した前夜祭には、有名歌手や人気芸能人を内外から集めた。 日本からは声優の花澤香菜さんが参加し、ハローキティと並んで歌った。 東京五輪のマスコットも登場し、深夜 0 時にセールが始まった。 (北京 = 福田直之、asahi = 11-11-19)


中国に 4,000 以上の「淘宝村」 ネット小売りで農村経済が激変

中国最大の e コマース「淘宝(タオバオ)」が産業の中心となっている農村、通称「淘宝村」が急増している。 このほど発表された「中国淘宝村研究報告(2009 - 2019)」によれば、この 10 年で 3 村から現在は 4,310 村に増加している。 e コマースが農村経済の在り方を目まぐるしく変えている。 淘宝村・淘宝鎮と呼ばれる農村は、約 2 億 5,000 万の人口をカバー。 2018 年の全国農村のネット小売り売上総額は 1 兆 3,700 億元(約 21 兆円)で、前年比 30.4% 増。 全国の淘宝村・淘宝鎮のネットショップの売り上げは、農村ネット小売りの売り上げの 50% 近くを占め、就業機会を 683 万以上増やしているという。

ラン栽培で知られる福建省●(= さんずいに章)州市は、淘宝の恩恵を受けた「淘宝鎮」の筆頭だ。 同市に属する龍海市百花村は花卉産業の e コマースで年商 5,000 万元(約 7 億 6,000 万円)以上を誇る。 村民の花卉園芸経営者は「淘宝サイトの店だけで年商 200 万元(約 3,030 万円)稼いでいる」と胸をはる。

大学卒業生の就職難が問題になっている昨今、「淘宝モデル」は大卒生の農村創業の「優良土壌」としても注目されている。 ●(= さんずいに章)州市南靖県山城鎮出身の劉順理さんは大学卒業後、故郷に帰り、父親や地元の花卉栽培業をまとめて、今や 27 人の従業員を抱え広大な花畑を経営するランの e コマース企業「青軒花卉」を起業。 淘宝だけでなく、天猫、京東といった人気 e コマースサイトに多くのネットショップを開設し、地元 300 世帯の農家に e コマース収入の道を開いた。

農家と都会の消費者を e コマースによって直接つなぐことで、ウェブデザイン設計から宅配業を含む付随の産業も活性化し、新しい郷鎮村の発展の形を示している。 山城鎮のネットのラン店はすでに 2,500 店以上、2018 年の売上総額の 8 億元(約 122 億円)のうち、ネット小売りは 5 億元(約 76 億円)に上るという。 ネット小売りは宣伝動画や SNS ともリンク、顧客に直接製造現場や商品を見せて品質をアピールできるのも強みだ。 先にふれた「青軒花卉」のネット動画アカウントにはすでに 10 万人のフォロワーがつき、毎日 1 万回再生され、顧客のリピート購入率は 57% という。

福建省だけでも 300 以上の「淘宝村」があり、その数は全国第 6 位。 同省竜岩市の黄屋村では、この村の出身者で著名作家・北村さんが 3 年前にネットショップ「北村自然生活館」を開き、地元でおいしいと知られる「河田鶏」のほか、福建西部伝統の特産品のネット販売を開始した。 北村さんは突然ネットショップを開いた理由を「郷愁」というが、「知名度のある人たちや知識のある青年たちが e コマースを使って、もっと農民にビジネス参入の道を開き、故郷を発展させる手伝いをすればいい」と語っている。 (東方新報 = AFP = 9-22-19)


データ集中の究極形態「WeChat」アプリが抱える大問題とは?

中国で広く使われるメッセンジャーアプリ「WeChat」は今やコミュニケーションツール以上の存在となっており、配車や宅配サービスの利用、公共料金の支払いなど、日常のあらゆる行動を WeChat 上で行う人も多く存在します。 そんな WeChat は Google や Amazon 以上に個人情報が集中する、いわばデータ一元化の最終形態となっており、そこから発生する大問題をフォトジャーナリストの Barclay Bram さんが論じています。

「WeChat」は「中国版 LINE」として 2011 年に中国でスタートしたメッセンジャーアプリ。 もともと中国でもメッセンジャーアプリとして LINE が使われることが多かったのですが、Google と同様に規制によって中国国内での使用ができなくなり、WeChat が台頭してきたという流れです。 2019 年時点で WeChat は単なるメッセンジャーアプリの枠を越えて、生活のあらゆる部分に関わるアプリとなっているとのこと。

フォトジャーナリストの Barclay Bram さんも WeChat ユーザーの一人。 Bram さんが 1 日の中で WeChat をどのように使っているのかは以下の通りです。

◆ 09:07
朝起きてすぐに WeChat をチェックし、その日最初のメッセージを送る。
◆ 09:27
WeChat を通じてコーヒーを注文。 WeChat アプリから支払いを行う方法のほかに、別のアプリを WeChat 上で開いて使うことも可能。 Bram さんは配達サービスを提供する Meituan を開いてアメリカンコーヒーを注文します。 アプリは iPhone の顔認識機能と結び付いているので、カメラの前に顔をかざすだけで支払いが完了し、9 時 53 分には手元にコーヒーが到着するとのこと。
◆ 10:44
携帯キャリアから WeChat に請求書が届く。
◆ 11:04
WeChat 上で携帯電話の使用料を払う。
◆ 11:15
ヨガクラスの先生と WeChat 上でメッセージをやり取りし、WeChat を使ってジムにチェクインする。
◆ 13:30
運動を終え、知人から送られてきた記事を WeChat 上で読む(WeChat に外部リンクは存在しない)。
◆ 16:00
送金に問題があったため銀行に電話で確認したところ、Bram さんは大学に所属しているため、学生としての資格証明を行う必要があることが判明。 その後、WeChat 上で必要な資料を銀行スタッフに提出。

上記に加え、Bram さんは家賃や公共料金、地下鉄システムの支払いを WeChat 上で行っているほか、街の共有自転車を使うために WeChat で QR コードを読み込み、WeChat でタクシーを呼び、映画の予約と支払い、心理学のオンラインコースの支払いを WeChat で行うなど、とにかく日常のあらゆる行動で WeChat を使っています。 つまり、Bram さんの毎日の行動のほぼ全てを WeChat は知っているわけです。

一方で Bram さんが使っていない WeChat の機能としては、融資を受けること、病院の予約をすること、離婚手続きを行うこと、などがあります。 これらのことを WeChat で行うようになれば、WeChat は Bram さんがどのような点で困難を抱いているかをさらに一層理解することになります。

日常行動のあらゆる点で WeChat が関わるという状況は Bram さんに限ったことではありません。 デジタルメディアとコミュニケーションについて研究する Yujie Chen 氏はこの状況を「super-sticky(超粘着)」と呼んでいます。 事実、2017 年に WeChat が中国経済に生み出した金額は 500 億ドル(約 5 兆 4,000 億円)といわれています。 しかしデジタル経済の性質として、より効率的になるにはより多くのデータを必要とするので、データの集中化は免れません。

もちろんデータの集中が起こっているのは WeChat に限らず、多くの人が Google・Amazon・Uber・Twitter・Instagram とデータを共有しています。 一方、WeChat が特殊なのは、欧米で Google や Amazon、Uber などがそれぞれ別々で持っている機能を全て一元化しているという点。 さまざまな中国企業のアプリの機能を取り入れることによって、他のアプリから生まれたデータも全て飲み込む、究極の集中化を実現しているのです。

このような WeChat が成功を歩み出したきっかけは、皮肉なことにライバルである Weibo に比べてインターフェースでの「プライバシー」が保たれていた点にあります。 Weibo は Twitter のように誰でも任意のユーザーの投稿を見たり、フォロワーを確認したり、その人の影響力をチェックすることができます。 一方で WeChat はもともと WhatsApp のようなプライベートメッセンジャーでした。 その後、フレンドサークル機能やフォロワー向け投稿機能も加わりましたが、いずれも「友だちとして認められた人」にだけ公開されるという点でプライバシーが保たれたものでした。

しかしアムネスティー・インターナショナルの 2016 年の報告において WeChat は「言論の自由の保護が欠ける」、「エンドツーエンドの暗号化がない」ということからプライバシーについてのスコアが 100 点中 0 点と評価されました。 なお、同評価における Facebook は 73 点です。 WeChat では「プライベートなグループチャット」ができるはずですが、実際には WeChat のグループチャットで発信したメッセージを理由にたびたび人が逮捕されています。

WeChat はインターフェースにおいて Weibo よりも非公開の要素が強いにも関わらず、実際には強い検閲の対象となっています。 トロント大学の Citizen Lab によると、WeChat で国内の電話番号を登録している人々はより強い検閲に合う傾向があるとのこと。

WeChat は位置情報に基づく「ユーザーがどのように WeChat を使っているか」という情報をリアルタイムで見ることができる「ヒートマップ」を政府に提供しています。 つまり、政府は WeChat のデータをもとに人々がどこで抗議行動を行うのかなどを予測することが可能です。 データ保護法により企業に対してデータの保護が義務づけられていますが、こと政府に関しては免除規定があるため、WeChat のデータ暗号化は政府の行動を妨げるものではありません。

またデータが超集中化している WeChat において、ハッキング被害も大きな問題です。 WeChat でどのくらいのハッキングが発生しているかは不明ですが、中国インターネット協会のデータでは、国内のインターネットリーダーを含む 1,200 人を対象に調査を行ったところ、うち 84% が何らかのデータ盗難被害にあったと答えています。 中国ではハッキングが広範囲で行われており、2016 年にはハッキングで学費を騙し取られた学生が心労から倒れ、18 歳という若さで死に至りました。

また中国国民は病院や電車の予約、銀行での送金などで ID カードを必要としますが、一部の地域では「WeChat ID カード」などがスタートしているとのこと。 これは非常にリスクの高いもので、WeChat が乗っ取られてしまえばハッカーは政府が承認した ID カードの個人情報を全て引き出すことが可能になってしまいます。 今後実施されていく社会信用システムとの兼ね合いを考えても、大きなリスクを伴うものといえます。

WeChat 自体は問題のあるアプリではありません。 WeChat は Bram さんの 1 日の行動に事細かく関わっていますが、その行動が意図することを理解し解釈するには「知恵」が必要です。 この点、WeChat に知恵はなく、WeChat に対して隠さなければならない事実はないに等しいのですが、問題は WeChat の脆弱性です。 ユーザーは WeChat を通し、自分自身も把握していない、恐ろしく詳細な自分自身の無限のアンソロジーを作っていること、そしてそれを誰かが意図的に利用できるという恐ろしさを Bram さんは述べました。 (Gigazine = 6-17-19)

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