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鮮魚の盛り合わせにしのばせた 16 億円 収賄の中国元高官がざんげ

中国国営中央テレビは 15 日夜、高官による巨額の腐敗事件の詳細や、当事者がざんげする様子などを伝える特別番組「零容忍(徹底的な非寛容)」の放映を始めた。 今秋の共産党大会を前に、政権が腐敗に厳しく向き合っているという姿勢を国民にアピールする狙いとみられる。 計 5 回のシリーズで、初回は収賄罪などで起訴された元公安次官の孫力軍被告の事件などを取り上げた。

番組によると、最年少で公安次官になるなど出世を重ねた孫被告は、2011 年の出張時に知り合った元江蘇省政法委員会書記の王立科被告(贈収賄罪などで起訴)から毎年 4 - 5 回訪問を受け、その都度、鮮魚を盛り合わせた贈り物にしのばせる形で 30 万米ドル(約 3,400 万円)を受け取るなどした。 王被告から受け取った賄賂の総額は 9千万元(約 16 億 2 千万円)に上ったという。

番組は孫被告が政治的野心を膨らませ、部下に昇進を約束するなどして取り込もうとしたなどと糾弾。 孫被告がカメラの前で「私が理想や信念を失ったことが一番の問題だ」などと語る姿を放映した。 12 年に党総書記に就任して以来、高官の腐敗を厳しく取り締まることで権力基盤を固めた習近平(シーチンピン)国家主席は、今秋の党大会を前に再び「反腐敗」への取り組みを強化する姿勢を示している。 (北京 = 林望、asahi = 1-16-22)


新疆ウイグル自治区のトップ交代へ 深セン市書記など歴任した 62 歳に

中国共産党は 25 日、新疆ウイグル自治区トップの陳全国・区党委員会書記 (66) に代わり、馬興瑞・広東省長 (62) を充てる人事を発表した。 来秋の党大会を前にした若返り人事の一環。 ウイグル族をめぐる人権問題が国際的な火種になるなか、トップ人事が新疆政策にどう影響をするか注目を集めそうだ。 宇宙工学が専門だった馬氏は国有企業、中国航天科技集団総経理や国家航天局長を経て、中国のイノベーションの中心地である広東省深セン市の書記、広東省副書記などを歴任した。 新疆のトップは党指導部の政治局員に上るケースが続いており、現在、中央委員の馬氏の指導部入りも焦点になる。

陳氏は新疆トップに就く前、チベット自治区の書記も務めた。 難しい民族問題を抱える地域で、党中央の指示に沿って厳しい統制を浸透させた人物としても知られる。 昨年 7 月にはウイグル族に対する人権侵害にかかわったとして米財務省の制裁対象となった一方、共産党指導部の評価は高いとみられ、次に担うポストにも注目が集まる。 (北京 = 林望、asahi = 12-25-21)


中国には中国流の民主主義  アメリカに抗議の大キャンペーン開始

米国が日欧などを招いて開く民主主義サミットを前に、中国共産党政権が「民主主義は一部の国の専売特許ではない」との大々的な宣伝キャンペーンを始めた。 「全過程人民民主」という概念を掲げ、中国には自国の実情に根ざした民主主義があると主張。 政治システムやイデオロギー領域でも米国の「覇権」に挑む姿勢を鮮明にしている。 「ある国が民主的か否かはその国の人民が判断すべきで、国際社会が一緒に判断すべきだ。 今、ある国が民主の旗を振って分裂をあおり緊張を高めている。」 4 日、中国政府が開いた記者会見で、国務院新聞弁公室トップの徐麟主任が米国を念頭に語気を強めた。

3 日には王毅(ワンイー)国務委員兼外相が、友好国パキスタンのクレシ外相と電話会談し「米国の目的は民主主義ではなく、覇権を守ることにある」、「民主主義を議論するなら国連で議論すべきではないか」などと対米批判を重ねた。 中国では外務省が 2 日に「何が民主で、誰が民主を定義するのか」と題する座談会を開いたほか、各地の大学やシンクタンクが同様の討論会を開催。 国営メディアも民主主義についての記事やインタビューを相次ぎ掲載しており、民主主義サミットに抗議する一大キャンペーンの様相だ。

記事後半には、4 日に発表された白書「中国の民主」の主な内容を掲載しています。

政府やメディアに加え大学なども動員した動きが、習近平(シーチンピン)指導部の強い意向を反映しているのは明らかだ。 米中首脳は先月のオンライン会談で緊張が衝突に発展しないよう対話の継続などで合意したが、不信と対立の根深さが早くも露呈した格好だ。

政治混乱の米国を尻目、自国制度の自信深める

しかし、習指導部の狙いは、民主主義サミットによる「対中包囲網」の打破だけではなさそうだ。 中国政府は 4 日、「中国の民主」と題する白書を発表した。 白書は「長い間、少数の国々によって民主主義の本来の意味はねじ曲げられてきた。 一人一票など西側の選挙制度が民主主義の唯一の基準とされてきた」と主張。 中国が自国の現実や歴史に根ざして実践する民主主義を「全過程人民民主」と呼び、ソ連崩壊後、信じられてきた欧米型の民主主義の優位を相対化しようとする習指導部の決意を強く打ち出した。

「全過程人民民主」は 2019 年に習氏が上海視察の際に口にしたのが始まりとされる。 体系としての全体像はまだはっきりしないが、地方レベルの直接選挙や人民代表大会など、中国では政策の立案から実施まで様々なプロセスで民主制度が機能しているとして、共産党の支配を支える現在の政治システムを正当化している。 体制に批判的な人権派弁護士らの摘発や、香港紙「リンゴ日報」への弾圧など、中国の権威主義的な統治に対する米欧の批判はやまない。 だが、連邦議会襲撃事件に象徴される政治分断で混乱する米国を尻目に、中国側は自国の制度への自信を深めている。 そうした意識が民主主義サミットを機に噴き出した形だ。

4 日の記者会見でも「米国ではコロナ禍でも政治の分断が深まって防疫に支障を来すなど、制度の弊害があらわになった(田培炎・党中央政策研究室副主任)」といった主張が続いた。 (北京 = 林望、asahi = 12-4-21)

白書「中国の民主」の主な内容

  • 各国の民主主義はそれぞれの歴史と文化、伝統に根付いており、道筋と形態は異なる
  • 民主主義は各国人民の権利であり、少数の国々の専売特許ではない。 ある国が民主的か否かはその国の人民が判断すべきであり、外部の人間がとやかく評価するものではない
  • 全過程人民民主は、中国共産党が人民を率いて民主を追求、発展、実現した偉大な創造である
  • 中国共産党の指導は全過程人民民主の根本的な保証である。 中国のような大国で 14 億人の願いを伝え、実現するには堅強な統一指導が必要だ。
  • 中国は民主主義と専政(強力な統治)の有機的な統一を堅持する。 専政は社会主義の破壊、国家政権転覆などの犯罪行為をくじき、国家と人民の利益を守ることである。 民主主義と専政は矛盾しない。 ごく少数の者を攻撃するのは大多数の人々を守るためであり、専政の実行は民主を守るためである。
  • 全過程人民民主は選挙による民主と協商(協議)による民主を結合させ、民主選挙、民主的な政策決定、民主的な(組織や政策)管理、民主的な(権力)監督をひとつなぎにし、各分野での人民の願いを実現し、人民の声を聞き取る。 選挙の時だけ軽々に口約束し、その後は無視される現象を防ぐ。
  • 中国において、権力の乱用はいわゆる政権交代や三権分立ではなく、科学的に有効な民主的(権力)監視によって解決する
  • メディアは(権力の)世論監視の役割を果たし、権力の乱用などの行為を速やかに社会に伝える
  • 民主主義は国家ガバナンスの現代化を促すものでなければならず、ガバナンスの消失や低下をもたらすものであってはならない
  • よい民主とは社会の共通意識を高めるもので、社会の分裂や衝突をもたらすものではない。 よい民主とは社会を安定させるものであり、混乱や動乱をもたらすものではない
  • 権力は両刃のつるぎであり、制約を失えば民主主義を破壊し人民に危害を与える。 権力の制約と監視を強める。
  • 共産党内の規律を守るシステムや体系をより強化し、幹部の任期制を実行して国家機関と指導層の秩序ある交代を実現する
  • 中国のような大国にとって、どのような民主主義の発展の道を選ぶかは極めて重要である。 中国は人類の政治文明に学びつつも、他国の民主主義のモデルをそのまままねることは絶対にしない。
  • 中国は自国の民主のモデルを他国に押しつけることはしないし、中国のモデルを変えようとする外国勢力のたくらみを絶対に受けいれない
  • 一人一票は民主主義の一形態であり、唯一の民主主義でも民主主義の全体でもない。 長い間、民主主義の本来の意味は少数の国々によってねじ曲げられ、一人一票や政党間競争などの西側の選挙制度が民主主義の唯一の基準になってきた。
  • 中国の民主主義は絶え間なく発展させねばならない。 共同富裕を推し進めるなかで民主主義の新たな発展を実現していく。

党紙が謎のトウ小平氏礼賛論文 習主席主導の新歴史決議に異論?

中国共産党の新しい歴史決議は、習近平党総書記(国家主席)が来年後半の第 20 回党大会で異例の 3 選を果たすための布石として、習氏がトップリーダーとしていかに優れているかを大々的に宣伝した。 しかし、その直後に党教育機関の新聞が毛沢東のワンマン極左路線を是正したトウ小平を礼賛する論文を掲載。 公式論文としてはタイミングや内容が不可解で、習氏の個人独裁志向に対する党内の異論を反映した可能性がある。(時事通信解説委員・西村哲也)

「核心」は毛・習だけ

中国共産党は 11 月 8 - 11 日、今年の最重要会議である第 19 期中央委員会第 6 回総会(6 中総会)を開き、40 年ぶりに歴史決議を採択した。 正式名称は「党の 100 年奮闘の重大成果と歴史的経験に関する決議」で、同 16 日に全文が公表された。 歴史決議を打ち出すことができた最高実力者は毛沢東、トウ小平に次いで 3 人目だ。 新しい歴史決議は党史を、(1) 結党から中華人民共和国成立までの新民主主義革命時期、(2) 建国後の社会主義革命・建設時期、(3) 改革・開放と社会主義現代化建設の新時期、(4) 中国の特色ある社会主義の新時代 - の 4 つに区分した。

新決議によると、各時期の「党の主要代表」は、(1) の後半と (2) が毛沢東、(3) がトウ小平、江沢民、胡錦濤の 3 氏、(4) が習氏。 この 5 人のうち、胡氏以外の 4 人は公式に党中央の「核心」とされてきたが、新決議は毛と習の 2 氏だけを「核心」と表現した。 トウと江の 2 氏は、もともと「核心」ではない胡氏と同格に下げられた形になった。 新決議で言及された回数は、習氏が 22 回で最多。 以下、毛 18 回、トウ 6 回、江と胡の両氏はわずか 1 回だった。 この結果、習氏がトウ・江・胡の 3 氏より格上で、毛と同格であるかのような記述になった。

実績は曖昧模糊

新決議は、改革・開放時代になってから生じた党のガバナンス弛緩、腐敗まん延、党の指導に対する認識不足、拝金主義といった問題を挙げた上で、習政権がこれらを是正したと主張した。 皆が金持ちになることを大いに奨励した経済発展重視のトウ路線(江・胡時代を含む)に対する批判とも受け取れる。 だが、毛、トウがまとめた決議がいずれも、自己の最高権力掌握を正当化するため、過去の指導者の誤りを名指しで厳しく批判したのに対し、新決議は名指しを避け、トウ路線と拝金主義など諸問題の関連性を指摘することもなかった。

「棚ぼた」で総書記になっただけの習氏の威信と政治力が、革命・建国で大きな功績があった毛やトウに及ぶはずもなく、決議を出すためには妥協せざるを得なかったのだろう。 このため、新決議は、毛に親近感を持つ左派(保守派)といわれる習氏個人のカラーがはっきり表れず、過去の決議のような政治的迫力を欠く内容となった。 トウの決議が指摘した文化大革命、大躍進運動など毛の誤りに関する記述もそのまま引き継いだ。

新決議は反腐敗闘争に関する記述で、江派の大幹部だった元党政治局常務委員の周永康氏、元政治局員の薄熙来氏ら大物の処分を習政権の功績であるかのような説明をしているが、実際には薄氏を打倒したのは総書記時代の胡氏。習政権下で失脚した周氏も弟分の薄氏とのつながりで粛清されており、事実上は胡政権から引き継いだ事案だった。

新決議が挙げた習氏の実績は「党中央の指導強化」など全体的に曖昧模糊としており、中国経済の規模を世界 2 位に引き上げたトウ路線の圧倒的成果と比べると、明らかに見劣りする。 その不足を補うため、前記のようなトウらの格下げにより、習氏を持ち上げる細工をしたのではないかと思われるが、かなり無理な記述であり、党内でどれほどの共感を得ているのか疑問だ。

「封建主義」批判呼び掛け

新決議全文が公表された翌日の 17 日、幹部養成機関である中央党校の機関紙・学習時報がトウに関する論文を掲載した。 1980 年 12 月にトウが経済政策の調整や党の安定団結について語った演説を紹介する内容なのだが、「トウ小平」が見出しも含めて 18 回登場するのに対し、「習近平」は 1 回だけ。 習氏を称賛する歴史決議全文が明らかにされた翌日の紙面とはとても思えない記述である。 しかも、論文はトウの考えを引用して、党内外の思想分野に残る封建主義の影響を批判し、それに反対する必要があると指摘した。 ここで言う封建主義は「家父長制」や「鶴の一声」を指す。 要するに前近代の皇帝のような個人独裁だ。

この演説は、トウが当時の華国鋒党主席を引きずり下ろす過程で行ったもので、「トウ小平文選」第 2 巻に収録。 トウは演説で集団指導の重要性に触れた上で「鶴の一声、ある個人が言えばそれで決まり、集団で決定したのに少数の人が執行しないといった欠点を断固として正さなければならない」、「権力が過度に集中する弊害を引き続き克服していく。 幹部指導職務の終身制を廃止する。」と述べている。

新決議はトウの決議で明記された個人崇拝禁止と集団指導実行に触れなかったが、学習時報の論文はまさにその二つを強調したトウの演説を基にして、封建主義反対を訴えた。 習氏による国家主席の任期撤廃が終身制を目的としているとの見方もある中で、意味深長な主張である。 習派の大幹部(陳希党中央組織部長)が校長を務める中央党校の新聞がこのタイミングでこのような論文を発表したのは驚きだ。 論文が今も党内に多いとみられるトウ路線支持者に対する習派の忖度なのか、非習派の異論表明なのかは分からないが、いずれにせよ、個人独裁を追求する習氏の政治姿勢が党内で完全な支持を得ていると言い難いのは間違いない。 (jiji = 11-24-21)


習氏を毛沢東・ケ小平に並ぶ指導者に 中国共産党、「歴史決議」採択

中国共産党の重要会議、中央委員会第 6 回全体会議(6 中全会)で 11 日、40 年ぶりとなる新たな「歴史決議」が採択された。 国営新華社通信が伝えた。 習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)を毛沢東、ケ小平の各時代を継ぐ「新時代」の指導者と位置づけており、習氏の長期政権実現に向けたプロセスは最終段階に入った。 新華社によると、採択されたのは「党の 100 年奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する決議」。 6 中全会が開幕した 8 日、習氏自らが草案を説明していた。 全文は公表されていないが、中国共産党のこれまでの実績や習指導部の成果を高く評価するものだ。

共産党がこれまで、歴史決議を採決したのは「建国の父」である毛沢東時代の 1945 年、「改革開放」政策を主導したケ小平時代の 81 年の 2 回だけ。 党の過去について評価を定める歴史決議には重大な意味があり、習氏は今回、毛とケに並ぶ歴史的指導者として自らを位置づけた形だ。 習氏は来年に控える 5 年に一度の党大会で、過去の不文律を破って 3 期目に挑むことが有力視されている。 歴史決議の採択は、党大会に向けて、自らの権威を盤石にする狙いがあるとみられている。 (北京 = 高田正幸、asahi = 11-11-21)

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中国共産党の習総書記、3 期目狙い「歴史決議」採択へ - 6 中総会開幕

→ 毛沢東、ケ小平両氏以来 3 度目となる「歴史決議」の採択が焦点
→ 習氏は歴史決議で経済改革強化や米国への対抗に向けて弾み付けるか

中国共産党は 8 日から北京で第 19 期中央委員会第 6 回総会(6 中総会)を開く。 毛沢東、ケ小平両氏以来 3 度目となる「歴史決議」の採択が焦点となる見通しで、習近平総書記(国家主席)にとっては来年の党大会で慣例を破り、党トップとして 3 期目続投に道筋を付ける重要会議となる。 毛、ケ両氏の歴史決議は中国の今後を左右する重大な岐路にあった際に採択され、両氏にとっては息を引き取るまで党内で権勢を振るうことが可能になった。

習総書記が自らの歴史決議の採択にこぎ着ければ、2 人に肩を並べるだけでなく、世界 2 位の経済大国で大きな変革が控えていることも示唆する可能性がある。 習総書記が党内から歴史や将来に関する自身の見解で支持を得ることができれば、就任から約 10 年にわたり政敵の排除や国家の威信強化を進めてきた習氏にとっては、終身統治も視野に入る権力基盤を整えていることを示す最大の兆候となる。

6 中総会とはどのような会議か

党大会を 5 年に一度開く共産党は、5 年間に計 7 回の中央委員会総会を開催する。 政府首脳や軍幹部、省トップ、有力な学識経験者ら約 400 人が北京市内で厳重に警備された軍関連施設に集まる。 議題は極秘扱いで、閉幕後のコミュニケでようやく明らかになる。 論争や内部の争いは編集の上で削除される。 6 中総会は 5 年の政治サイクルで最後に開かれる大きな会議であり、ある意味では他の総会より重要。 党大会での重大な決定を前にした駆け引きを巡る最後の機会でもある。

国営新華社通信によると、中央政治局は先月、6 中総会で「党 100 年の奮闘の重大成果と歴史経験」に関する決議案を審議すると決めた。 同通信によれば、6 中総会が北京で開幕し、習総書記が同決議案について説明した。 2016 年の 6 中総会では、習氏を党の「核心」と位置付けている。 (Jenni Marsh、Bloomberg = 11-8-21)


北京の「独立候補」 14 人が活動停止表明 当局圧力で「生命のため」

中国の地方議会にあたる人民代表大会(人代)の選挙をめぐり、共産党の後押しを受けない「独立候補」として立候補を表明していた北京の 14 人が 1 日、連名で声明を発表し、選挙活動の停止を表明した。 警察などから様々な脅迫や圧力があったと訴えており、「身体の自由と生命の安全のため」の決断だと説明した。 声明を出したのは、2015 年 7 月以降に人権派の弁護士らが一斉に拘束された「709 事件」で、夫らの拘束が違法であると訴えてきた王峭嶺さん (49) や李文足さん (36) ら 14 人。

声明によると、14 人は先月 15 日に立候補を表明して以降、▽ 当局者から立候補を取りやめるよう促された、▽ 自宅に軟禁された、▽ 深夜に旅行に連れて行かれた、▽ 自宅を取り壊すと脅された、▽ 候補者演説会への参加を妨害された、などといった圧力を受けたと訴えている。 今回の独立候補には、5 年前や 10 年前の選挙でも立候補表明し、圧力や妨害を経験したメンバーもいる。 今回の声明は「前々回や前回も暴力的弾圧を受けたが、それでも今回は恐怖を感じた」とつづり、圧力が過去よりも強まっていることをにじませた。

王さんや李さんによると、709 事件後、子どもの通う学校や自宅の大家に警察の圧力がかかり、何度も転校や引っ越しを余儀なくされ、パスポート申請も拒否された。 人代代表に相談しようとしたが連絡先がわからず、職場に手紙を送っても返事がなかったという。 14 人は王さんらの経験などから、「代表になったら連絡先を公表し、庶民のために活動する」と訴えていた。 メンバーの 1 人は朝日新聞の取材に「理由の説明もなく様々な圧力を受けた。 今の気持ちは一言では言い表せない。」と悔しさをにじませた。

中国では省や市から県や郷鎮まで様々な行政レベルに人代があり、県や郷鎮レベルの人代代表は直接選挙で選ばれる。 18 歳以上は立候補できるが、共産党の後押しを受けない候補が当選する例はほとんどない。 (北京 = 高田正幸、asahi = 11-2-21)


中国、ネットも報道統制 アプリで使用可のメディア指定 独立系除外

中国政府のネット管理部門が、ニュースアプリなどで使用できる記事の「公認提供元」を列挙したホワイトリストを公表した。 リストに載っていないメディアの記事を使うと罰せられる。 独立性の高い記事で知られるメディアが外れるなど、ネット空間でのメディア規制が強まっている。 20 日に公表されたリストは、新華社通信、人民日報など大手国営メディアのほか、地方レベルの党・政府系メディア、政府機関のホームページなど 1,358 のサイトや機関を列挙した。 「お墨付き」を得たメディア・機関は 5 年前の 4 倍近くに増えたが、独自の報道で知られる「財新網」や「経済観察網」などの独立系メディアは外された。

中国では政権の声を代弁するのが報道機関の役割との考えから、メディアは「党ののどと舌」とも言われてきた。 近年はニュースをスマホで読む人が圧倒的になり、数多くのニュースアプリやニュースサイトが競合している。 国家インターネット情報弁公室が 5 年ぶりにリストを見直したのは、ネット上でもメディアに「党ののどと舌」としての役割を徹底させる狙いだ。

同弁公室報道官は、リストの作成にあたり、各メディアが「政治的に正しい方向を保てるか」などの点を考慮したと説明。 今後も随時、情報源としての適否をチェックして、ネット空間で「正しいエネルギーが満ち、(政権の意向や社会の規範に沿った)主旋律が鳴り響くようにする。」と強調した。 (北京 = 林望、asahi = 10-21-21)

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中国、民営企業のメディア経営禁止検討 報道規制強化か

中国政府の国家発展改革委員会は 8 日、民営企業がニュースの取材や編集など報道業務に携わってはいけないとする規制案を公表し、14 日までパブリックコメントの募集を始めた。 どのような運用を想定しているかは不明だが、新たな報道規制強化につながる恐れがある。 規制案は、民営企業がテレビや新聞、出版社などの報道機関に出資したり、経営したりしてはいけないと規定。 海外で報道されたニュースを引用することや、世論に関わる分野のフォーラムや表彰イベントを開いてはいけないとも定めた。

中国では記者活動を行うには政府が発行する記者証が必要で、主要メディアは共産党の強い影響下にあるが、党の監督を受けつつも財源や人事、報道内容などの面で一定の独立性を保つメディアも一部存在する。 ただ、当局は新型コロナウイルスの流行が拡大した湖北省武漢市で取材にあたった市民記者を相次いで拘束するなど引き締めを強めてきた。

8 日に発表されたノーベル平和賞を、強権的な政府への批判的な報道を続けてきたロシアとフィリピンのジャーナリストが受賞したニュースも、中国の主流メディアは報じていない。 平和賞以外のノーベル賞の授賞は大きく報道されていただけに、中国当局の意向が反映された可能性がある。 (北京 = 高田正幸、asahi = 10-9-21)


中国、米メディアの「反中記者」通報を表彰 批判報道に警戒強める

中国貴州省畢節市の幹部が、貧困対策の成果に否定的な取材をしていた外国メディアの記者を通報したとして国家安全部門から表彰を受けた。 中国メディアが 12 日までに伝えた。 中国では対外関係の悪化などを背景に、外国メディアが中国の印象を悪化させようとしているとの警戒感が強まっている。 中国メディアによると、同市幹部が「市に潜入して違法に取材を行い、脱貧困政策の否定的な報道を行った海外の反中メディアを通報した」といい、この通報が「国家安全に危害を及ぼす活動を防止した」などとして、外国のスパイなどを取り締まる国家安全省から表彰を受けたという。 具体的にどんな行為を「違法」としているかは不明だ。

中国メディアは記者が米メディアに所属することや実名、顔写真、経歴などを報道した。 「住民の話の一部を切り抜き、中国全土の貧困攻略の成果に泥を塗った」と批判した。 中国共産党は昨年 12 月、中国の基準で、全国の農村が「貧困脱却」を達成したと宣言した。 畢節市もその一つで、今年 2 月には習近平(シーチンピン)国家主席が視察に訪れていた。 米メディアの報道は、同市の住民らが未だに十分な収入源に恵まれていないことを伝える内容だった。

中国では国際社会から批判を受ける新疆ウイグル自治区の人権問題などをめぐり、「うそで中国の顔に泥を塗っている(中国外務省)」として、海外メディアへの批判と警戒を強めている。 今年 3 月には英 BBC の北京特派員が、中国当局から威嚇を受けたことなどを理由に台湾に異動した。 (北京 = 高田正幸、asahi = 10-12-21)


習氏と党に「絶対的な忠誠尽くせ」 中国、司法・警察幹部の粛清進む

中国の習近平(シーチンピン)指導部が、司法機関や警察組織の幹部らの粛清を進めている。 表向きは腐敗や規律違反が理由だが、内部の会議では習氏と党指導部への忠誠が強調されており、1 年後に控える共産党大会に向け、体制引き締めの動きが活発化している模様だ。 共産党中央規律検査委員会などは 2 日、傅政華・前司法相 (66) を重大な規律違反などの疑いで調査していると発表。 司法省は同日夜、幹部会議を開き、全国の司法機関関係者に「習近平同志を核心とする党中央に自身の政治的立場を一致させ、絶対的な忠誠を尽くせ」と命じた。

北京市公安局も同様の会議を開き、「首都公安の政治的環境を全面的に浄化する」と強調した。 傅氏は北京市公安局長や公安次官などを経て司法相になった後、昨春から全国政治協商会議の社会・法制委員会幹部を務めていた。 2013 年ごろ、各地でウイグル族らの犯行とみられる襲撃事件が相次いだ際に北京のテロ対策の陣頭指揮をとり、2015 年の人権派弁護士の一斉検挙でも主導的役割を果たしたとされる。 現役時代は習指導部の意向を踏まえた派手なパフォーマンスが目立っただけに、傅氏の失脚は波紋を呼んでいる。

傅氏の具体的な容疑は不明だが、今回の伏線として注目されているのが、直前の 9 月 30 日に発表された孫力軍・元公安次官 (52) の党籍はく奪処分だ。 孫氏は昨年 4 月に規律違反による調査が発表されていたが、規律検査委員会などは 30 日、「政治的野心を極度に膨らませ、野心を実現するために手段を選ばず、党内に派閥を形成して利益集団を作り、党の団結を著しく乱した」と、極めて厳しい言葉で孫氏を断罪した。

孫氏と傅氏の容疑をつなぐ事実は明らかになっていない。 ただ、政法分野では昨年来、重慶市公安局、上海市公安局、江蘇省政法委員会のトップも相次ぎ失脚しており、規律検査委員会などの調査の標的になっているのは明らかだ。 警察や裁判所を束ねる共産党の政法委員会は、かつての習氏の政敵で「反腐敗」で摘発され無期懲役刑を受けた周永康元政治局常務委員の権力基盤だった。 趙克志・国務委員兼公安相は 5 月、視察先の雲南省で「周永康の残した毒と孫力軍らが流している毒の影響を断固取り除く」と述べ、派閥の形成など政治的に問題視される動きがあることを示唆した。 (北京 = 高田正幸、asahi = 10-3-21)

相次ぐ中国公安・司法部門幹部の失脚
2015年6月共産党中央政法委員会トップから党最高指導部に入り、引退後、収賄罪などに問われた周永康・元政治局常務委員に無期懲役判決
2020年1月中国人で初の国際刑事警察機構 (ICPO) 総裁に就いた後、収賄罪に問われた孟宏偉・元公安次官に懲役 13 年 6 カ月などの実刑判決
4月孫力軍・公安次官を重大な規律違反の疑いで調査
6月重慶市のケ恢林・公安局長を重大な規律違反の疑いで調査
8月上海市の●(= 龍の下に共)道安・公安局長を重大な規律違反の疑いで調査
10月江蘇省の王立科・政法委員会書記を重大な規律違反の疑いで調査
2021年10月傅政華・前司法相を重大な規律違反の疑いで調査

〈編者注〉 情報の透明度が極端に低い中国ですから、正直、真相は不明です。 だからこそ、単に習体制による対抗勢力の追い落としに過ぎないのではないか、と言われても、それに反論する明らかな証拠が出るとは思えません。


世界銀行、中国に配慮 国別ランキングを不正操作 調査結果公表

世界銀行は、過去に発行したビジネス環境を評価する国別ランキングの報告書をめぐり、中国の意向を受けた当時の総裁などが分析の担当者に圧力をかけ、中国の順位を本来よりも不正に引き上げていたとする調査結果を公表しました。 世界銀行は 16 日、各国のビジネス環境を毎年ランキング化する報告書「Doing Business」に関して、過去に数字が操作されていたと発表しました。

具体的には、2018 年版の報告書を作成する際、世界銀行の当時のキム総裁と、現在は IMF = 国際通貨基金のトップを務めるゲオルギエワ CEO が、中国の政府高官から、自国の順位が低いと何度も不満を示されていたことを受けて、分析の担当者に中国の順位を上げるよう圧力をかけていたとしています。 この結果、実際の報告書では、ランキングが本来の 85 位から、前年並みの 78 位に不正に引き上げられたということです。

理由については、世界銀行が各国に出資金の増額を求めていた時期に、有力な拠出国である中国に配慮した可能性を指摘しています。 これに対し、ゲオルギエワ氏は「調査結果に同意できない」とする声明を出しました。 世界銀行は別の年でも数字の操作があったとして、報告書の発行を取りやめることを決めましたが、国際機関の調査への信頼が問われる事態になりそうです。 (NHK = 9-17-21)


中国、広がる「文革再来」懸念 習氏 3 期目と関連か 官製メディア掲載文が発端

【北京】 中国の官製メディアが先月下旬、「深い変革が進んでいる」と訴える文章をインターネット上に一斉に掲載し、建国の父、毛沢東が発動した文化大革命(文革)のような激しい政治運動が始まるのではないかという観測が出ている。 習近平国家主席が慣例を破り来年の共産党大会で 3 期目入りすることが確実視される中、習氏を毛と並ぶ指導者に位置付けようとする動きと関連している可能性がある。

文章を書いたのはネット上で論説を発表している李光満氏。 共産党機関紙・人民日報や国営新華社通信、中央テレビを含む多くの主要メディアが 8 月 29 日、「誰もが感じられる深い変革が進んでいる」と題する李氏の文章をネットに転載した。 李氏は、習政権による経済や芸能界への統制強化を「経済、金融、文化、政治で深い変革が起きている。 深い革命と言ってもいい」と称賛。 「この深い変革は党の初心・社会主義の本質への回帰だ」と強調した。

さらに「今回の変革で、(中国の)市場は資本家が一晩で大金持ちになれる天国ではなくなる。 われわれは一切の文化の乱れを整理する必要がある。」と主張した。 これに対し、多くの知識人が「改革開放の否定と文革の再来を連想させる」と受け止めた。 人民日報系の環球時報編集長、胡錫進氏は 9 月 2 日、ネット上で李氏に反論。 「まるでこの国が改革開放に別れを告げるような言い回しだが、重大な誤りだ」と断じた。

胡氏は対外的に強硬な言動で知られ、習政権の立場を非公式に代弁しているとも言われる。 李氏の主張に強い警戒が広がったため、胡氏が「火消し」をした可能性がある。 また、2 人の論争は体制内の路線対立を反映しているとも考えられ、「来年の党大会に向けた駆け引きが始まった(知識人)」という見方もある。 李氏の主張が注目されたのは「毛路線への回帰」が全くの絵空事ではないように見えるためだ。 最近、学校で習氏の指導思想を必修化したり、未成年のオンラインゲームの利用時間を週 3 時間に制限したりするなど、思想や国民生活を厳しく統制する動きが拡大。 党の文書や博物館の展示で、習氏を毛と同様に別格の指導者として扱う傾向も強まっている。 (jiji = 9-6-21)


中国株や人民元急落、当局の締め付けによる影響 - 外国勢の売り観測も

→ 中国株の下げ拡大、投資資金が安全資産に - 米国債やドル買われる
→ 米国が中国や香港への投資を制限する可能性との未確認のうわさ

中国当局による規制上の締め付け対象となっている銘柄が 27 日も大きく値を下げた。米国のファンド勢が中国と香港の資産を圧縮しているとの観測が広がり、世界の債券や為替市場に影響が波及している。 ハンセンテック指数は一時 10% 近く下落。 公表を開始したちょうど 1 年前の水準を割り込んだ。 中国本土の CSI300 指数は 3.5% 安で取引を終了。 オフショア人民元はドルに対して一時 0.6% 安の 6.52 元と、今年 4 月以来の安値を付けた。

投資資金が安全資産に向かう中で、米国債は値上がり。 ドルと円も買われている。 一方、中国の債券は下げている。 トレーダーらによると、米国が中国や香港への投資を制限する可能性があるとの未確認のうわさでこうした動きに拍車が掛かった。

オーバーシー・チャイニーズ銀行の為替ストラテジスト、テレンス・ウー氏(シンガポール在勤)は「下げが中国株から人民元に広がっており、中国の規制リスクを巡る懸念が最も悪い方向に向かった可能性があることを示唆している」と話した。 テクノロジー株や教育銘柄の下げが続く一方、不動産株も値下がり。 テンセント・ホールディングス(騰訊)が一時 10% を超える下落。 傘下の音楽部門が独占的なストリーミング配信権の放棄と罰金支払いを余儀なくされた。

また、フードデリバリーを手掛ける美団は一時 17% 超安と上場後で最大の値下がり。 オンラインフードプラットフォームに関する新規制を織り込む動きが続いた。 招銀国際証券の蘇沛豊ストラテジストは「規制当局の措置がさらに続き、締め付けが他のセクターにも広がるのかが主な懸念材料だ」と指摘。 「こうした規制面の懸念が今年後半の市場の大きな足かせになるだろう」と述べた。 (Jeanny Yu、Bloomberg = 7-27-21)

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中国市場「統制」の必然 格差深刻、成長後回しに

中国市場が「統制」へと急速に傾斜している。 40 年超続けてきた改革開放路線からの歴史的な転換となる。 貧富の差拡大や機会不平等を受けた不満が国民に蓄積するなか、習近平(シー・ジンピン)最高指導部は市場に「公平と正義」を求めざるを得なくなっている。 アリババ集団や滴滴出行(ディディ)など巨大 IT (情報技術)企業の経営は急速に萎縮。 投資家も慎重姿勢に転じ、中国経済の先行きに暗い影を投げかけている。

「資本の無秩序な拡大を防ぐ。」 16 日、北京にある中国証券監督管理委員会(証監会)トップの易会満主席は、共産党のシンボルである「鎌とハンマー」の標章の下で声を張り上げた。 習氏の共産党創立 100 年記念演説を学ぶ勉強会でのことだ。 易氏の言葉は中国の市場行政の方針転換を象徴する。 証監会は 6 日に発表した「法に基づき証券違法行為を取り締まる意見」で中国企業による海外上場の規制強化と並んで、違法行為について一切の例外を認めない「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策で臨むとした。 この方針に基づき、16 日には 16 件の重大案件について調査を開始したと発表した。

背景には習最高指導部の意向がある。 「資本の無秩序な拡大を防ぐ」という言葉は、中国の経済方針を議論する 2020 年の政治局会議で初めて習氏が使ったものだ。 証監会元トップの肖鋼氏は 20 年 7 月のフォーラムで「党中央が今ほど資本市場を重視したことはない」と明らかにしている。 前出の「法に基づき証券違法行為を取り締まる意見」は、習最高指導部を事務局として支える共産党中央弁公庁と国務院(政府)が連名で発表したもの。 「中国の資本市場のなかで初めてのケース(易氏)」だった。

国民の経済的な不満が無視できなくなってきたからだ。 中国では一部の巨大な上場企業に富が集中し、貧富の差の拡大を助長する。 教育費の高騰など機会の不平等も深まり、成長の果実は十分に再分配されない。 住宅が買えないなどあきらめが広がり、懸命に働こうとはしない「寝そべり族」の増加が社会問題になっている。 「社会の公平と正義の維持」。 習氏の危機感は共産党創立 100 年記念式典で述べたこの発言に集約されている。 ベースにあるのは習氏の政治理念のひとつ、「公平正直(公明正大)が国を動かす道」という考えだ。

中国の唐の政治書「貞観政要」に由来し、中国の司法方針を決める 14 年の中央政法工作会議で言及した。 当初は党員や司法機関を対象にしていた公平正直の考えだが、国民の不満が強まるなか、資本市場や巨大企業にも求めるようになった。 実際、巨大資本への締め付けは強まる一方だ。 アリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が当局批判ともとれる発言をした後、傘下のネット金融大手、アント・グループは予定していた株式上場を延期し、経営者は退任した。

最近では滴滴が米市場に上場した直後に、「データが流出すれば国家の安全に関わる」として当局からの審査を受けた。 独占禁止法の厳格適用による罰金なども相次いでいる。 当局の介入リスクを見せつけられ、投資家は疑心暗鬼に陥っている。 「(中国企業の)バリュエーション(市場での評価)は下がっており、今後も下がり続けるだろう。」 米新興資産運用会社アーク・インベストメント・マネジメントのキャサリン・ウッド最高経営責任者 (CEO) は 7 月の投資家向けセミナーでこう述べた。

アリババ集団、美団、騰訊控股(テンセント)など中国の有力ハイテク企業の頭文字をつないだ造語「ATMX」を冠する株価指数、「中国 ATMX プラス指数」は不振が鮮明だ。 3 月 10 日の算出開始以来、低迷が続き、世界全体の株価動向を示す MSCI 世界株指数の動きを大幅に下回る。 米国上場の主要中国ハイテク企業 5 社の時価総額合計は昨年末比(滴滴は 6 月 30 日との比較)で約 1,900 億ドル(21 兆円)超減少した。 アリババ集団の時価総額は同期間に 830 億ドル(約 13%)減った。 ネット通販市場でアリババを猛追するピンドゥオドゥオも 891 億ドル(約 40%)落ち込んだ。

白猫でも黒猫でもネズミを捕る猫がよい猫だ - -。 かつてケ小平氏は資本の自由な活動を容認し、中国を経済大国に導いた。 この流れを逆転させる危うさを習指導部の市場締め付け路線は内包する。 中国経済が減速すれば世界全体も無傷ではいられない。 中国当局による市場統制の本当の影響はこれから徐々に見えてくる。 (上海 = 土居倫之、nikkei = 7-25-21)

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