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ケンブリッジ大学出版局が中国検閲受け入れを撤回

ケンブリッジ大学出版局が習近平政権の圧力に屈服したニュースは、全世界の多くの学者からの激しい非難を招いた。 耐えられなくなったのか、大学側は検閲受け入れを一転して撤回した。 自由と尊厳、未だ死なず。 日本は?

ケンブリッジ大学出版局が一転して撤回

筆者は 8 月 21 日のコラム「ケンブリッジ大学がチャイナ・マネーに負けた! - - 世界の未来像への警鐘」で、ケンブリッジ大学出版局 (CUP) が、習近平政権の要望を受けて、天安門事件などの中国政府に不利な論文へのアクセスをブロックした事実を書いた。 しかしその後、中国などの独裁国家を除いた全世界の多くの学者からの激しい失望の声と批判および非難署名文までが寄せられ、CUP は遂に前言を翻して、中国の検閲受け入れを撤廃した。

言論の自由が許されている国家では、「言論の自由」と「人間の尊厳」の方が、チャイナ・マネーを凌駕することを証明してくれた意味で、この一連の出来事は実に大きい。 まず、どの新聞社が、どのようなタイトルでこの新情報を報道したかを見てみよう。 たとえばイギリスの「ガーディアン」は、CUP は中国の検閲を撤回した、というタイトルで報道し、BBC は、CUP は中国の検閲への対応を覆した、という見出しで報道した。 アメリカではワシントンポストが、一転して、CUP は中国の検閲を受けた論文を復帰させた、という記事を、USA TODAYが、CUP が大衆の批判を受けて、中国の検閲に屈服したことを覆した、という批判記事を公開した。

「検閲の輸出」は要らない

それら多くの批判の中で注目されるのは「検閲の輸出」という概念だ。 中国はトランプ大統領の誕生によりアメリカの時代は終わったとして、「中国こそがグローバル経済のリーダーである」という顔をしているが、警戒する諸外国に習近平国家主席はたびたび「中国は政治を輸出しない」という言葉を使って、「中国は政治的圧力を、経済交流をする相手国に決してかけない」と宣言してきた。 それに対して研究者たちは「検閲を輸出しようとしているではないか」と声を上げたのである。 その通りだ。 拍手喝さいを送りたい。

大学側の弁明

CUP は多くの出版物を中国国内で販売している。 中国当局は「もし中国にとっての有害情報を遮断しないのなら、中国での販売を禁止する」という趣旨の脅迫をケンブリッジ側にしてきたと CUP は説明し、その協議をするための会合があるので、それまでの「一時的な措置だった」などと弁明している。 しかし、「学術研究の自由は、ケンブリッジ大学の根幹を成す最優先の原則なので、ブロックした論文をもとに戻しアクセスできるようにした」とのこと。 実際は、多くの識者が「中国の検閲への屈服」という言葉を使って批判しているために、さすがに権威が失墜すると反省し、撤回したものと判断される。

習近平時代になってから言論弾圧が強化された理由

習近平政権になってから中国が言論弾圧を強化した理由は明確だ。 それは、共産党幹部の腐敗により中国共産党による一党支配体制が危機に瀕しているため、共産党の負の側面に触れてほしくないからである。 その何よりの証拠に、習近平政権が発足した 2013 年前半(習近平が国家主席になったのは 2013 年 3 月 14 日)、中国当局は俗称「七不講(チー・ブージャーン)」という通知を出した。 「七つの語ってはならないこと」という意味だ。 その中の最も重要な一項目に「共産党の過去の歴史の過ちに関して語ってはならない」というのがある。 教育現場で教師が教えてもいけなければ、キャンパスで「語り合ってもいけない」のである。

特に習近平は、既に終身刑を受けている元重慶市の書記・薄熙来の「紅い歌を唄おう」運動により、いかに人民が「毛沢東を慕っているか」を実感した。 それは文化大革命につながるとして薄熙来を逮捕したというのに、今度は自分が国家主席になってみると、一党支配の脆弱さを痛感したのだろう。 腐敗が蔓延し、人民が毛沢東を慕うのは、「その時代は貧乏だったけど平等で、腐敗はなかった」と思っているからだということを思い知ったにちがいない。 毛沢東へのノスタルジーは現在の中国政府への批判なのである。

そこで、自らが「第二の毛沢東」になるために、習近平は毛沢東賛美を開始し、虎の威を借りて一党支配体制を盤石なものとしようとしているのである。 日本の中国研究者やジャーナリストは、習近平に関しても「権力闘争」と言いさえすれば問題は片付くと勘違いし、間違った分析をメディアもまき散らしている。 そのようなことをしていたら、必ず中国に制圧されてしまう日が日本にやってくる。 こういった視点が、どれほど日本の国益を損ねているか、猛省を求める。

日本は毅然と戦えるのか?

今回の事件は、日本を含めた関係国が、中国に対して毅然と振舞えるのか否かという、これからの根本的課題を人類に突き付けている。 筆者が『毛沢東 日本軍と共謀した男』を出版して以来、日本の一部の大手メディアは中国の顔色を窺い、このことに触れないようにビクビクしている。 大局的視点に立たず、「習近平さま」の怒りに触れないよう、筆者を避けるのである(そうでないメディアもあり、心からの敬意を表する)。 いま人類は大きな分岐点に差し掛かっている。 中国がチャイナ・マネーでどこまで人心を買うことができるのか、民主主義国家と中国との、「人間の尊厳」を軸にした地球レベルの戦いが展開されることになるだろう。

今般のケンブリッジ事件は、そのことを如実に突き付けている。 拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(の中国語版)を最も喜んでくれたのは、ワシントンで中国の民主化のために闘っている華人華僑たちだった。 VOA や FRA の中国セクションは、競って筆者を取材し、その番組を習近平に見せるのだと張り切ってくれた。 多くの民主活動家たちは「毛沢東が日本軍と共謀した事実」と「中国が真実を隠蔽し、歴史を捏造している事実」を世に知らせてくれたことこそが、民主運動家たちに力を与え勇気づけてくれると、数多くの感謝の言葉を送ってくれた。

トランプ政権誕生により、アメリカのプレゼンスが低まるいま、中国の制覇が目前に迫っている。 それに抵抗できるのは人類の良心だ。 習近平が最も恐れる「毛沢東が日中戦争時代、日本軍と共謀していた」という事実こそが、「独裁国家に言論弾圧の輸出をさせないための強烈な武器」なのである。 この真相を中国に突き付ける勇気が日本にあるか? 中国の顔色を窺う日本と決別する勇気と良心を持っているか? それともチャイナ・マネーの魅力が優先されるのか?

もし戦争への贖罪意識というのなら、なぜ韓国ヘは堂々とものを言い、中国には言えないのか? それは即ち、チャイナ・マネーの威力に気を遣っているせいではないのか? 日本はその分岐点に立っていることを自覚してほしいと祈る。 (遠藤誉、東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士、Yahoo! = 8-23-17)

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中国からの論文アクセス遮断 英ケンブリッジ大

天安門事件やチベット関連の論文

【ロンドン】 英ケンブリッジ大出版局は 20 日までに、同出版局の中国研究誌「チャイナ・クオータリー」のサイトに掲載された天安門事件やチベット関連の論文などについて、中国当局の要請を受けて中国国内からのアクセスを遮断する措置をとったと声明で明らかにした。 英メディアによると、対象は 300 点以上に上るという。 中国の言論統制が海外にも波及、英国の有名大学が中国の圧力に屈した形だ。

同誌の編集長は「深い懸念と失望」を表明。 欧州の中国研究者らからは「要求に屈した決定に衝撃を受けた。 出版局は方針を変更し、学問の自由を守るべきだ。(オスロ大教授)」などの批判の声が上がっている。 英メディアによると、中国にとって敏感な問題に関連した論文などが対象で、50 年以上前に発表されたものもある。 同出版局の声明は、他の論文などが中国国内で利用し続けられるようにするためと説明した。 英紙フィナンシャル・タイムズによると、同出版局は中国での英語教材の販売が好調で、5 年連続で売り上げが前年比 2 桁の伸びを記録している。 (kyodo = 8-21-17)


中国人の貯蓄、収入上位の 5% が全体の 50% を占める 所得移転が急務

減速したとはいえ中国経済は成長を続け、中国人はますます豊かになったはずだ。 中国人の貯蓄率は高いとされているが、実際にどのくらいもっていて、それは何に貢献しているのだろうか。 このほど中国人の貯蓄に関する研究レポートが発表された。 官製メディアの「人民網」がその内容を伝えている。

西南財経大学(四川省・成都市)の中国家庭金融調査研究センターでは、2011 年から大掛かりなサンプル調査を行っている。 2015 年のそれは、サンプル家庭 4 万戸、全国 29 の省、特別市、自治区に及んだ。

調査によると全国の家庭のうち 60% は貯蓄を持っていたが、40% は何も持っていなかった。 そして家庭貯蓄の主要部分は高所得層によるものだ。 収入上位 5% の家庭平均貯蓄率は 72.2% で、総貯蓄の 50.6% を占めている。 同様に上位 10% では、平均貯蓄率 45.2% で、総貯蓄の 62.4%、上位 25% になると、平均貯蓄率 42.9%、総貯蓄の 77.1% までを占める。 さらに GDP に占める貯蓄の割合は上昇し、2015 年では 31.8% に及ぶ。 これに対し米国の家庭貯蓄率統計では、収入上位 5% の貯蓄率は 37.2%、上位 10% では 27.5%、上位 25% では 21.3% である。 中国人の貯蓄性向ははるかに高い。

所得移転政策が急務

西南財経大のの甘主任は、中国におけるさえない個人消費の根本原因は、消費マインドの不足ではなく、収入分布の偏りにある。 現状では消費刺激政策を打っても高所得層への効果は限定的だ。 貧困、低収入家庭に所得移転することで、経済成長を図らなければならないと述べている。 そこでジニ係数(所得分配の平等・不平等を計る指標、0 に近いほど平等)を見てみよう。 まずブラジルの例である。 ブラジルでは 1990 年のジニ係数は 0.61 で、所得移転支出は GDP の 8.5% だった。 2008 年には所得移転支出を 13.4% に上げたところ、ジニ係数は 0.55 に下降した。 なお 0.5 - 0.6 は暴動が起きやすいレベルとされる。

中国のジニ係数は、2012 年 - 2016 年まで、0.474、0.473、0.469、0.462、0.465、とほとんと横ばいである。 これは所得移転の少なさに関係している。 2015 年、中国政府の社会保険を含まない "住民転移性支出" の財政支出に占める割合は 14.5% である。 しかし直接低所得層への移転に関わる支出は 3.8% だけだった。 当年の GDP に占める割合は 0.97% に過ぎない。極めて不十分である。

社会実験の成果

西南財経大では地元の四川省・楽山市で、所得転移のフィールドワーク調査を行っている。 所得移転のスタイルには、一定条件下における現金給付型と、米国を源流とする "労働収入奨励計画" 型がある。 これは奨励金や減税、公的年金、公的扶助制度活用など、制度の総動員だろう。 現金給付は福利依存を生むため、米国型を採用した。

実験によると奨励金などで月 400 元(約 6,600 円)の収入増となった家庭は、給与性収入も月 125 元増加した。 就業率もモニター家庭全体で 13% 近く増加した。 さらに食品消費も月平均 202 元増加し、生活水準は逐次上昇していった。 最初の収入増が呼び水となって経済成長を実現したのだ。 中国が資本主義の牙城である米国の経験を参照しながら、所得移転の研究を進める時代が来るとは思わなかった。 かつて対極にあった経済体が、今では似たような悩みを抱えている。 時代の変化は急である。 更なる変化を探るには、こうした国家統計局以外のデータに注目するべきだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント、ZUU = 7-31-17)


中国で農村の模範だった「金持ち村」はなぜ凋落したのか

江蘇省江陰市には「金持ち村」と呼ばれる村がある。 華西村だ。 1990 年代に私が数度取材したところだ。 華西村は、早い段階から豊かな村として知られており、「中国第一村」と呼ばれるほど集団化経営に成功したと言われた存在である。 80 世帯、1,520 人、面積がわずか 0.96km2 という小さな村だ。

1997 年にこの村を訪ねたとき、すでに多くの農民の家に自家用車として軽自動車が配給されていた。 村営製鉄所や村営衣料品工場などが、村民たちの豊かな生活を保証していた。 村のリーダーである呉仁宝氏は、毛沢東の人民公社時代に、朽ち倒れんばかりのぼろ家に豆腐工場をひそかに設けて、現金収入を確保していた。

豆腐工場から身を起こし 工業化に成功した村

党の上層部が検査に来ると、豆腐工場であるぼろ家に藁などをかけて、ばれないように偽装してごまかした。 のちに人民公社が解散して、農業経営が自由になったとき、他の村の農民は農業に専念することしか知らなかったが、呉氏率いる華西村は郷鎮企業の雛型を形成し、工業化の道を先に踏み出していた。

当時、私のインタビューに対して、呉氏は次のように強調した。 「先に踏み出したその一歩は、非常に大きな意味をもっていた。 販路、市場、経験など市場経済の分野ですべて私たちがリードする形で走り出すことができたからだ。 それが今になって他の農村を大きく引き離し、私たちに大きな成功をもたらした。」という言葉が印象的だった。

2004 年、同村の村民はすでに1人当たり所得が 12 万 2,600 人民元になっていた。 これは、普通の農民の年収の 42 倍近くに相当する。 その成功を武器に、周辺の村をどんどん合併すると同時に、貧困で有名な寧夏回族自治区に「寧夏華西村」を、ロシアと隣接する黒竜江省に「黒竜江華西村」を作るなどして、勢力を拡大していた。 そうした華西村の成功を見習って、多くの村も自発的に合作社を作り、集団化経営の道を歩み始めた。 私は、中国の農村のなかで改革の先頭を走ってきた村としてメディアで何度も華西村を紹介し、上記のような内容を日本の読者に伝えた。

村民のカネを乱用し 成金趣味のホテルを建設

しかし、実際、香港返還の年に当たる 1997 年のその取材で私は華西村に対する印象をかなり悪くした。 村の象徴的存在とされた「金塔」というホテルを案内されたとき、そのダサさと成金ぶりにあきれた。 私は、案内係に「こんな建物を作る必要は果たしてあるのか。 必要だとすれば、もっとましなデザイナーに頼んだ方がいいのでは。」と率直な印象を口にした。 案内係が慌てて私の口を塞いで、「案内の責任者は呉氏の息子さんで、その批判めいた発言がもし彼の耳に入ったら、あんた村から追い出されてしまう。 この村では、批判的な発言は控えた方がいい。」と私に忠告した。

好意的とは言え、その忠告という行為、そしてその内容に私は驚きを覚えた。 文革時代への逆行を感じたからだ。 村中に点在していた大きな動物と、歴史上または文学上の聖人たちの彫刻がアンバランス的な雰囲気を醸し出している村の一角に、万里の長城の巨大なミニチュアが配されている。 そこを案内された私は、「この長城のミニチュアの長さは 1,997m で、香港返還の 1997 年を記念するものだ」と呉氏の息子から説明を聞いた。

「なぜこんなものを作るのか。 村民のお金を乱用しているのでは。」と心の中ではそのように不満をぶつけていた私は、できるだけ軟らかい表現で疑問を伝え、その真意を確かめてみた。 そこでまた不思議な思いに見舞われた。 「どうして疑問を持つのか? 香港返還は私たち中国人の一人ひとりにとっては非常に大事な出来事ではないのか。」と息子から逆に聞かれたからだ。

それ以上、質問しても意味がないと悟った私は、それ以降、何も聞かなくなってしまった。 そして、心の中で「この村にはもう来ないだろう」とつぶやいた。 村営企業で村の発展と村民の福祉を支えるビジネスモデルと集団化経営を貫く村の成功経験は、中国の農業経営の問題を解決していない、と認識したからだ。 だから、私は日本のメディアで、「経済が発展し、競争が激しくなった今の中国では、技術レベルが低い製鉄所と、衣料品やインスタントラーメンを加工する町工場的な企業で、集団化の成功村の躍進を引き続き支えていけると思うか」と聞かれると、「強く疑問に思う」と答えている。

コア技術と研究開発力を持たない 金持ち村は窮地に立たされている

最近の中国メディアの報道によれば、2016 年 3 月末現在、鉄鋼、紡績、資材、商業など 5 つの分野で、傘下企業 208 社を抱える華西集団は、総資産 541.93 億元(約 8,670 億円)である。 しかし、同集団の負債総額は 389 億元超、資産負債率は約 69% だという。 7 割近い負債率は、従来の産業モデルが日ごとに衰えるのに伴って、かつて中国農村経済の模範だった華西村が岐路に立たされ、モデルチェンジが避けられないことを物語っている。

現在、華西集団は博豊鋼鉄、華西北鋼、華西南鋼などを擁している。 鉄鋼加工では、華西集団は華西村に型材工場、フランジ工場、帯鋼板工場、溶接管工場、曲がり管工場などを相次いで建設し、鉄鋼加工の産業チェーンを構築した。 だが鉄鋼業の不景気で華西集団の 3 大鉄鋼企業は全面的な赤字となった。

2008 年の金融危機後、海運企業の大多数が赤字となり、船舶を売りに出す形で損失を埋めた。 当時、華西村はむしろこれを海運業界に参入する千載一遇のチャンスだと踏んで、5 隻の船を中古で安く購入し、海運業に足を踏み入れた。  その海運業も大きな赤字を作っている。 コア技術と研究開発力をもっていない華西村のような中国の「金持ち村」はこのところ、相次いで窮地に立たされている。 突破口がどこにあるのかという基本的な課題さえもまだクリアしていない。 村の経営は、今後、ますます凋落していくだろう。 (莫邦富、Diamond = 4-13-17)



中国の弁護士、当局が締め付け 資格停止や事務所に圧力

習近平(シーチンピン)指導部が「依法治国(法に基づく統治)」のスローガンを叫ぶ中国。 その一方で、法治や人権を人々の身近で支えるはずの弁護士への締め付けが強まっている。 当局に拘束されたり、弁護士活動ができないようにされたり。 それでも、民主社会の実現のためにと声を上げ続けている。

裁判官に抗議して退廷、すると …

「裁判官にたてついた仕返しでしょう。」 北京の程海弁護士 (62) は昨年 9 月、「法廷の秩序を乱した」として資格停止 1 年の通知を受け取った。 昨年 1 月、北京で開かれた人権派弁護士らの裁判で、裁判官に抗議して退廷したことが原因だった。 公開の法廷以外で被告に会えないはずの裁判官が、こっそり会っていたと知ったからだ。 「明らかに違法」と告発した後、司法局から 3 度調査を受けた。

この 1 年は一職員として裏方の仕事をするだけ。 収入は以前の 3 割に減った。 それでも後悔はしていないという。 「30 年、50 年先なのか分からないが、中国の法治も必ず世界に追いつく日が来る。 多くの人が行動を起こすためには、まず知識と能力を持つ弁護士が行動しないといけない。」 中国では、弁護士は法律事務所に属さなければ事実上活動ができない。 半年間無所属だと、いったん資格が停止される。 このため、最近は事務所に圧力をかけるケースも出ている。

上司に圧力も

「事務所を変えてもらえないか。」 広東省深セン市の範標文弁護士 (43) が事務所の上司から言われたのは昨年 5 月。 上司が公安(警察)や司法当局から何度も面会を求められ、「範弁護士を別の事務所で働かせろ」と言われていたと知った。 2 年ほど前から宗教迫害や労働者の権利に関する案件を扱っていた。 香港の民主派デモを支援して拘束された市民の弁護もしている。 「自分を訪ねてくるのは仕方ないが、上司にまでやられては。 事務所も耐えられなかったんでしょう。」

やりたいことができないならと、別の事務所を探すことにした。 採用されかけた事務所もあったが、2 度断られた。 1 カ所は「敏感な案件」を引き受けないとの契約まで結んだのに、だめだった。 「司法当局が難色を示していた」と関係者から聞いた。 前の事務所と契約が切れたのは昨年 10 月中旬。 人権活動に理解のある広州の事務所と契約できる見通しがようやく立ったのは、資格停止となる 4 月中旬の直前だった。

香港の NPO 「中国人権弁護士関注組」によると、2014 年に中国で人権問題に取り組む弁護士が拘束中だったり、資格を停止されたりした事例は少なくとも 13 3件あり、前年の 4 倍以上。 特に首都の北京と、人権活動家が活発な広東省で多いという。 今年も状況が変わる気配はない。 4 月 21 日朝には湖南省衡陽市の裁判所前で、人権派弁護士ら 3 人が正体不明の集団に襲われて服を裂かれ、けがをした。 弁護士らは被告の取り調べに自白の強要があったとして、公安を告訴していた。 弁護士の 1 人は「証拠はないが、公安がやらせた可能性も否定できないと思う」と話す。

弁護士は「ネット配信」で対抗

人権、民主化、宗教など当局ににらまれがちなテーマに取り組む弁護士にとって、最大の武器はネットを使った発信だ。 中国版のツイッターと LINE にあたる微博(ウェイボー)と微信(ウィーチャット)が活用されている。 「たった今、電話を受けた。 ネットに漫画を転載したら、警察から『習近平国家主席に似ている。 社会の秩序を乱した。』と処罰されそうな人がいる。 そもそも漫画の人物は特定できないし、できたとしても社会を乱すことにはならない。」 広東省の隋牧青弁護士 (46) は 3 月、微博と微信にそう書き込んだ。 警察の電話番号も添えた。 おかしいと思う人が抗議の電話をかけられるようにだ。

フォロワーは 7 千人以上。 市民の自由や人権が不当に脅かされた事態があれば、すぐに発信する。 警察や検察、裁判所、拘置所、刑務所で暴力や虐待、違法行為があれば、職員の実名も書き込む。 中国ではネットも当局に監視・規制されており、内容が削除されることもある。 それでも隋弁護士は「当局も外の目は気にしている。 暴力や虐待を暴露することで、おさまった例がたくさんある。 多くの人の怒りが世論の圧力になり、改善につながる。」と話す。 (広州 = 延与光貞、asahi = 5-5-15)

法治の実態は「市民の管理」だ

中国人権弁護士団の初期からのメンバーで、広東省を中心に活動する葛文秀弁護士 (54) に聞いた。

- - 「依法治国」のスローガンをどう思いますか。

大きな期待はしていない。 本来は公権力を法で拘束し、市民の権利を保障する概念のはずだ。 だが、法治の名の下に市民を管理しているのが実態。 公開の法廷を傍聴させず、好き勝手に監視・拘束している。 実は中国でも、法治の概念は 1990 年代から言われていた。 20 年たっても実現しない。 官僚の腐敗はひどくなっている。

- - 弁護士への締め付けが強まっていますね。

今の状況は改革開放後の 1980、90 年代よりも後退している。 以前は弁護士が尊重されていたし、裁判官に抗議すれば謝罪してくれることもあった。 今は法廷から追い出され、法廷の外では何者かに殴られる。 公然と拘束されることもある。 何でもありだ。

- - こんな状況では、弁護士も尻込みするのでは。

確かに弁護士が支払う代償は大きい。 けがをしたり、体を壊したりする人もいる。 それでも人権派弁護士は増え続けている。 社会の不公平や当局の腐敗、横暴にこれ以上、我慢できないからだ。 中国人だって、腹いっぱい食べて寝れば満足という豚にはなりたくない。 権利を持った人間になりたいということだ。

- - 当局の姿勢を激しく批判していますが、問題ありませんか。

だって全部事実だから。 中国は常に「実事求是(事実に基づき、真理を追究する)」と強調している。 市民が事実を語れなければ、どうやって社会は進歩できるのか。

《中国の刑事司法制度と弁護士》 共産党一党独裁の中国は三権分立制を採用せず、司法機関のトップにも共産党員がつく。 警察にあたる公安が捜査をした上で、検察官が起訴し、裁判で有罪を立証する検察官と、被告を弁護する弁護士が対抗する点では日本と似ている。 裁判は二審制。 以前は裁判官・検察官と、弁護士の試験は別に行われていたが、2002 年からは司法試験として一本化された。 14 年末時点で、弁護士は約 27 万人。 日本は「弁護士自治」の原則から懲戒などの処分を弁護士会が担うが、中国の弁護士は司法当局の監督下にあり、資格取り消しも当局の判断だ。

《騒動挑発罪》 公共の場で故意に騒動を引き起こすような行為に適用される。 中国刑法 293 条によると、@ むやみに人を殴る、A 人をつけ回したり、行く手をふさいだり、ののしったり、脅したりする、B 公共・私有財産をむやみに壊したり、占用したりする、C 公共の場で騒ぎを起こしたり、秩序をひどく乱したりする - - の 4 類型がある。 法定刑は懲役 5 年以下。 弁護士らから「言論の自由を制限したり、市民を不当に拘束したりする手段に使われている」との批判があり、何でも詰め込む「口袋(ポケット)罪」ともやゆされる。



中国政府によるアップル製品購入禁止の報道は誤り - 中国とアップルが主張

中国が政府機関による一部 Apple デバイスの購入を禁止したとの報道があったが、中国も Apple もその報道は事実に反すると主張している。 Bloomberg は米国時間 8 月 6 日、中国がセキュリティ上の懸念から、政府機関による「iPad」および「Mac」の購入を禁止したと報じた。 しかし、中国のニュースサイトは 7 日、Apple は問題となっている政府の調達リストへの掲載を申請しなかっただけだと報じた。 今回、中国政府と Apple はいずれもその説明が正しいことを認めた。

このような混乱が生じたのは、Bloomberg の記事で紹介されたリストが省エネ製品を対象としたものであり、政府によるあらゆる製品の購入を認めるリストではなかったことが原因のようだ。

Apple は 8 日、Reuters に送信した電子メールの中で、省エネ製品のリストへの掲載を申請したことはないと述べた。 中国の中央政府物品調達部局と財政部も同様の発言をしている。 財政部は 7 日、Reuters に対して、「Apple は省エネ製品の認定を取得しているが、必要な確認材料と同意を規制に従って提供していない」と述べた。 その後、物品調達部局も 7 日に同様の声明を出した。 (Lance Whitney, Cnet = 8-11-14)

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中国政府、アップル製品を「セキュリティ上の問題」で公共調達リストから除外

中国政府が使用する最新の公共調達リストから、「iPad」、「MacBook Air」、「MacBook Pro」などのアップル製品が除外されたと「Bloomberg」が 8 月 6 日付けで報じている。 中国では今後、公的資金をアップルのハードウェア製品に使うことは、「セキュリティ上の問題」からできなくなるという。 公共調達リストは、中国の国家発展改革委員会と財政部がまとめているもので、中国内のすべての政府機関、省庁、地方自治体が購入できる物品に制限を課している。

中国の国営放送である CCTV は 7 月 11 日、「iPhone」のセキュリティ問題についてとりあげ、「Frequent Locations」機能によって、アップルはユーザーの追跡や情報の収集が可能であり、中国の国家安全保障にとって問題であると指摘した。 一方、アップルは中国語サイトにおいて、この位置情報はユーザーの iOS デヴァイス上でのみ暗号化して保存され、アップルサーヴァーにバックアップされることはないと反論した。

前回のリスト草案では、シマンテックとカスペルスキーのウイルス対策ソフトウェアが除外された。 マイクロソフトの「Windows 8」も、「エネルギー効率」上の懸念を理由に除外されている。 さらに中国では、マイクロソフトとクアルコム等の外国企業各社(自動車メーカーも含む)が、独占禁止法違反の疑いで調査を受けている。 (Wired = 8-8-14)

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中国紙、iPhone 使用禁止を 安全面で問題、党・政府・軍人ら

【北京】 28 日付の中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は、党員や政府職員、軍人らに対し、米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」などの製品の使用を禁止するよう呼び掛ける論評を掲載した。 米当局による盗聴や通信データの監視を受ける危険性を指摘し、安全面に問題があるためとしている。

米国内では、スパイ行為につながる懸念から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などの製品を排除する動きがある。 中国政府は「偏見だ」と反発しており、今後、"対抗措置" としてアップルに圧力をかけていく可能性もある。 (kyodo = 7-28-14)

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iPhone は安全保障脅かす、中国国営テレビが批判

[北京] 中国国営テレビは 11 日、米アップルのスマートフォン「iPhone」の位置情報機能は、国家の安全保障に対する脅威だと批判した。 中国中央テレビ局 (CCTV) は、持ち主が移動する際の時間と場所を追跡する「フリークエント・ロケーションズ」機能について、「極めて慎重に扱うべきデータだ」とする専門家の発言を伝えた。 この専門家は、データがアクセスされた場合、国全体の経済状況と国家機密さえも暴露されてしまうと警告した。

アップルはこれまでも頻繁に中国国営メディアから非難を浴びてきた。 国営メディアはアップルが利用者データを米情報機関に提供したとし、厳格な処罰を求めたこともある。 (asahi = 7-11-14)

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中国紙、iPhone 使用禁止を 安全面で問題、党・政府・軍人ら

【北京】 28 日付の中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は、党員や政府職員、軍人らに対し、米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」などの製品の使用を禁止するよう呼び掛ける論評を掲載した。 米当局による盗聴や通信データの監視を受ける危険性を指摘し、安全面に問題があるためとしている。

米国内では、スパイ行為につながる懸念から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などの製品を排除する動きがある。 中国政府は「偏見だ」と反発しており、今後、"対抗措置" としてアップルに圧力をかけていく可能性もある。 (kyodo = 7-28-14)

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iPhone は安全保障脅かす、中国国営テレビが批判

[北京] 中国国営テレビは 11 日、米アップルのスマートフォン「iPhone」の位置情報機能は、国家の安全保障に対する脅威だと批判した。 中国中央テレビ局 (CCTV) は、持ち主が移動する際の時間と場所を追跡する「フリークエント・ロケーションズ」機能について、「極めて慎重に扱うべきデータだ」とする専門家の発言を伝えた。 この専門家は、データがアクセスされた場合、国全体の経済状況と国家機密さえも暴露されてしまうと警告した。

アップルはこれまでも頻繁に中国国営メディアから非難を浴びてきた。 国営メディアはアップルが利用者データを米情報機関に提供したとし、厳格な処罰を求めたこともある。 (asahi = 7-11-14)


独禁法違反で米マイクロソフトを調査中 = 中国規制当局

[北京] 中国の規制当局は 29 日、独占禁止法違反で米ソフトウエア大手マイクロソフト)を調査していると明らかにした。 国家工商行政管理局 (SAIC) は、マイクロソフトが基本ソフト (OS) ウィンドウズとオフィスアプリケーションに関する情報を十分に開示していないため調査を行っているとした。

SAIC は、同社のバイスプレジデントとシニアマネージャーを調査しているほか、同社の財務諸表や契約関連書類のコピーを入手した。 同社のコンピュータやサーバー上の電子メールや他のデータも入手したという。 マイクロソフトは主要職員の一部が中国国内にいないと主張しており、そのため調査を終了できないという。 (Reuters = 7-29-14)

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中国政府、ウィンドウズ 8 「導入禁止」 安全上の理由か

中国政府は、政府部門で使うコンピューターに米マイクロソフト (MS) の基本ソフト (OS) 「ウィンドウズ 8」の導入を制限する方針を決めた。 サイバー攻撃を巡って米国との緊張が高まっており、米企業の方針に情報の安全性が左右される事態を警戒したと見られる。 中国政府の物品調達を担う中央国家機関政府購買センターが 16 日に出した機器の追加購入についての通知で「コンピューターへのウィンドウズ 8 の導入を禁止する」とした。 今後、政府が買うすべてのコンピューターに及ぶ可能性がある。

理由は公表していないが、「安全上の理由によるもの(中国のネットセキュリティー大手)」との見方が強い。 中国政府で使うコンピューター OS はこれまで、「ウィンドウズ XP」が多く、MS が今年 4 月に XP 向けのサポートを打ち切ったため、ウイルスなどの危険にさらされやすくなることが問題になった。 (北京 = 斎藤徳彦、asahi = 5-21-14)

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