日本の滑走路での衝突事故、米国で浮上する緊急避難の新たな疑問

飛行機の衝突事故に巻き込まれた乗客は、暗闇の中で赤の他人と肘がぶつかるほど接近した状況に置かれ、座席と残骸をかき分けながら出口を探すという生死を分ける事態に直面する。 今月 2 日、日本航空 516 便に乗っていた 400 人近い乗客はそうした状況から避難し、緊急脱出スライドを滑り降りて生還したが、それ以前から米政府内では航空機の避難手順の見直しを求める圧力が高まっていた。

死者を出した今回の事故では、東京羽田国際空港の滑走路に着陸した日本航空の機体が海上保安庁の航空機と衝突し、大炎上した。 ジェット旅客機の狭く薄暗い客室で、煙が充満して混乱した中、米国人は 2 日夜の搭乗客 379 人のように速やかに脱出できるだろうか。 問題はそれだけではない。 コンパクトになった座席や客室内の新たな危険要素が、安全な脱出の妨げになるのではないか。 乗務員 12 人と子ども 8 人を含む搭乗者は全員、機体が全焼する前に無事脱出した。 滑走路上での衝突事故で、被災地に向かっていた海上保安庁機の乗組員 5 人が死亡した。

「これが米国で起きていたら、手荷物やノートパソコン、携帯電話などを持ち出したいという執着心から、全く違う状況になっていただろう。」 米連邦航空局 (FAA) の元職員で、現在は CNN の航空アナリストを務めるデービッド・スーシー氏はこう語った。 「そのせいで全員を避難させることができないのではと時々心配になる。」 炎上する機体からの避難に実際どのぐらいの時間を要したのかはわかっていない。 日本の放送局 NHK の報道によると、機長が最後に避難した際には着陸から 18 分が経過しており、FAA が基準として設定する 90 秒の避難時間をはるかに超えていた。

機長が乗客の避難を見届けた後、緊急手順を完了するまでどのぐらい機内に留まっていたのか定かではない。 現在、国際チームが衝突事故の調査を行っている。 ここまでわかっている情報によると、日本航空のエアバス社製広胴型ジェット機が着陸を許可された滑走路に、海上保安庁の航空機が誤って進入したようだ。

乗客いわく、避難時間は約 5 分

大きな爆発音の後、機体が停止し、乗務員はどの緊急脱出口が安全かを確認した。 幼い乗客がフライトアテンダントに、早く降ろしてくださいと丁寧に頼む声が聞こえる。 乗客の 1 人は、「ほぼ全員が落ち着いて」避難ドアの開くのを待っていたと報道陣に語った。 別の乗客によると避難の所要時間は 5 分程度で、「パニック状態の乗客は見られなかった」そうだ。

CNN 航空アナリストのマイルズ・オブライエン氏は、「結局のところ、乗客自身が自らの命を救った。 手荷物を取ろうとせず、比較的整然と席を立ち、脱出スライドを滑り降りた。 その結果、全員が無事脱出できたのだ。」 衝突事故を受けて今後何らかの対策を講じるのかという CNN の質問に対し、FAA は「教訓として学べることはないか」つねに海外の調査を注視していると答えた。

FAA の客室基準では、出口の半分が使えなくなった状態でも 90 秒以内に脱出できなくてはならない - - 大惨事が起きた後の混乱状態では、決してたやすい作業ではない。 連邦規定でも、新型モデルや設定変更をした航空機は必ず避難試験を受けなければならないと定められている。  試験では「健康な状態の乗客の代わりとなる搭乗者」として、女性や 50 歳以上の乗客の他、2 歳未満の児童の代用としてダミー人形を一定数搭乗させることが義務付けられている。

2018 年、米議会は FAA にさらなる対策として、座席のサイズや足元のスペース、通路幅の他「乗客の年齢分布などに変化が生じた場合」、旅客機の避難手順に問題がないか調査するよう命じた。 FAA は 22 年に報告書を公表し、「今回の調査で使用した座席とほぼ同じ、または小さい座席の場合、現行の座席幅で 99% の米国人を避難させることが可能で、支障はない」と報告した。

だが報告書では、FAA の最新の試験が今日の客室の状況とは似ても似つかないことも判明した。 通路が 1 列の旅客機では搭乗客が 100 人を超えるのが常だが、試験では 60 人しか搭乗せず、子どもや高齢者、車いすや介助動物を必要とする乗客はいなかった。 この件について FAA が一般から意見を求めたところ、2 万 6,000 件ものコメントが寄せられた。

新たな試験を求める声

イリノイ州選出のタミー・ダックワース上院議員は、試験が実情を反映していないことが知れれば国民は衝撃を受けるだろうと語った。 同議員は新たな試験と座席サイズの基準を義務付ける法案を繰り返し提議しているが、議会は他の航空政策問題をめぐって膠着状態にあり、今のところ進展はない。 ダックワース議員は CNN に宛てた声明の中で、日本航空で明らかになったように、FAA は「可能な限り安全な空の旅の実現に向け、手荷物や子ども、高齢者、障害者の乗客の存在といった実情を踏まえた上で、今こそ緊急避難基準を定める」べきだと述べた。

FAA は報告書について、「繰り返し実施した避難訓練の結果と各種勧告が盛り込まれている」と CNN に語った。 かつて FAA で検査官と調査員を務めたスーシー氏いわく、FAA は徹底した避難試験を行っているという。 時には試験に参加した生身のボランティアが負傷することもあるそうだ。 だが、現実に起きた避難事例の検証に勝るものはない - - かつてないほど安全な空の旅が約束された時代においては貴重な機会だ。

今回の調査で収集される情報は「非常に役立つ」と同氏は語る。 調査員は今回日本で発生した事故を精査し、「避難に関するこれまでの想定が正しかったかどうか」判断する。 調査が進められる一方で、航空業界では乗務員の対応に対する称賛の声が広がっている。 米国の労働組合「客室乗務員協会」のサラ・ネルソン会長は、「我々はあらゆる業務を任され、適性を認められている」と語る。 また「客室乗務員の人数は、航空機の避難認証と直接関わってくる。 客室乗務員が機体に搭乗する根本的な理由もそこにある。」と付け加えた。

ネルソン氏は、この 70 年航空機の避難手順が十分に改訂されていないことにも懸念を抱いている。 離陸前の緊急時対策の説明で、命に係わる情報に注意を払う乗客は多くない。 516 便から脱出した乗客のイワマ・アルトさんは、飛行機に乗ると緊急脱出についてのビデオが流れると報道陣に語った。 今回の一件で、あのビデオをしっかり見て頭に入れておかなくてはと実感したという。 (CNN = 1-10-23)

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「90 秒ルール」もこの素材があってこそ可能だった … 羽田の奇跡を生んだもう一つの要因とは

東京・羽田空港で 2 日、日本海上保安庁の航空機と衝突した日本航空 (JAL) 旅客機の機体の半分以上は耐火性に優れた炭素繊維複合素材で作られていたことが分かった。 乗客・乗員全員(379 人)が「90 秒ルール(事故時 90 秒以内に脱出するという基準)」に従って脱出できたのは、この素材により火が機内に広がる速度を遅らせ、時間を稼いだおかげだったという分析だ。 炭素繊維複合材料でできた航空機が全焼するほどの大型事故が発生したのは今回が初めてで、素材の安全性が初めて実際に検証されたという見方もある。

英紙フィナンシャル・タイムズ (FT) などによると、今回の事故が発生した JAL 旅客機の機種はエアバス A350-900 で、翼を含む機体の 53% が炭素繊維複合材料でできているとのことだ。 これは宇宙船など航空宇宙産業に主に使われる先端素材で、エアバスやボーイングなどの航空宇宙機器メーカーでは最近、機体の重量を減らして燃料効率を高めようと、同材料の使用量を増やしている。 航空専門家らは「炭素繊維複合材料の燃焼点はこれまで航空機製造に多く使われてきたアルミニウムより低いが、これとは別に火災が広がる速度を落とす特性がある」と話す。

このため、機体外部で発生した火や熱の機内進入を抑え、乗客・乗員脱出の「ゴールデンタイム」を稼いだということだ。 ある航空エンジニア専門家は同紙に「(旅客機に使われた)炭素繊維が熱遮断機能を提供した」と語った。 また、航空宇宙設計専門家は、炭素繊維複合材料の航空機が燃料効率に優れているということから、「機体に残っていた燃料の量が比較的少なかったため、潜在的な爆発を防いだのだろう」とも言った。

ある航空ジャーナリストは英紙テレグラフに「今回の事故で炭素繊維複合材料が火災拡大を遅らせるということが実際に確認された」と述べた。 同紙によると、A350 は世界の航空機の中で炭素繊維複合材料の割合が最も高く、現在約 570機が運航されているという。 一方、読売新聞は「JAL は今回の事故で 150 億円の損害を被った」と伝えた。 事故で全焼した旅客機は 2021 年 11 月に JAL に引き渡された。 (キム・ドンヒョン、韓国・朝鮮日報 = 1-5-24)

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海保の機長「いきなり後ろが燃えた」 JAL 機に気付かずか 警視庁

東京都大田区の羽田空港の滑走路で 2 日、日本航空 (JAL) と海上保安庁の航空機同士が衝突、炎上し 5 人が死亡した事故で、海保の男性機長が事故直後、警視庁に対して「いきなり(海保機の)後ろが燃えた」と話していたことが、捜査関係者への取材で分かった。 衝突について認識していなかった可能性があり、警視庁などは滑走路上にいた理由を調べる。

事故は 2 日午後 5 時 47 分ごろ発生。JAL 機(エアバス A350 型機)が同空港の C 滑走路に着陸しようとしたところ、滑走路上の海保機(ボンバルディア DHC8 型機)と衝突し、双方が炎上した。 海保機の 5 人が死亡し、機長もやけどを負って入院している。 捜査関係者などによると、機長は入院前、事故について「分からない」と話し、「いきなり(海保機の)後ろが燃えた」とも説明したという。 事故直後には、持っていた携帯電話から羽田航空基地に「滑走路上で機体が爆発した。 自分は脱出した。 他の乗員については不明」という趣旨の通報をしていた。 同庁は JAL 機に気付いていなかったとみている。

海保機の残骸は、滑走路の中央付近に原形をとどめない状態で残されており、JAL 機はさらに約 1 キロ先の滑走路脇で止まり、焼け落ちた。 警視庁は 4 日午前から、業務上過失致死傷容疑で 3 日に続き現場検証をしており、海保機の状態について調べている。 3 日は滑走路や JAL 機の状態を検証していた。 海保機の機長や乗客への聴取も始めているという。

海保によると、海保機の機長は事故後の海保の聞き取りに対し、「滑走路への進入許可を得た上で、滑走路内に進入した」と説明したという。 一方で、国土交通省が 3 日に公表した航空管制官と両機との交信記録では、JAL 機には着陸許可が出ていた一方、海保機には滑走路への進入を許可した記録はなかった。 国交省は 3日、「記録を見る限り、海保機に対して滑走路への進入許可は出ていない」と説明した。 (増山祐史、遠藤美波、長妻昭明、asahi = 1-4-24)

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日本航空と全日空、3 日は約 100 便欠航へ 午前中の便を中心に

東京都大田区の羽田空港の滑走路で日本航空 (JAL) の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突した事故の影響で、3 日も同空港を発着する JAL と全日本空輸 (ANA) の約 100 便が欠航することが決まった。 JAL によると、3 日の国内線計 44 便を欠航することを決定。 ANA も同日、羽田空港以外を発着する 5 便を含む国内線計 54 便、国際線 1 便を欠航すると発表した。 JAL と ANA で計 1 万 9 千人の乗客に影響が出る見通し。 欠航が決まったのは午前中の便が中心で、今後の状況次第で欠航便はさらに増える可能性がある。

羽田空港の衝突事故は 2 日夕、着陸しようとした JAL 機と滑走路上にいた海保機が衝突し、双方が炎上。 海保機の 5 人が死亡した。 海保機は能登半島地震の救援のため、新潟航空基地に向かおうとしていた。 (asahi = 1-3-24)

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羽田空港で JAL 機炎上、乗客乗員 379 人全員が脱出 海保機と接触

2 日午後 5 時 50 分ごろ、東京都大田区の羽田空港 C 滑走路で、日本航空 (JAL) の 516 便が着陸しようとした際に発火し、炎上した。 警視庁などによると、JAL 機と海保の航空機が滑走路で接触。 海保機も炎上し、乗っていた 5 人が死亡した。 海保機は能登半島地震の救援に向かうところだったという。 海保機には男性 6 人が搭乗しており、機長 1 人は自力で脱出し、負傷したが意識はあるという。

JAL や東京消防庁によると、516 便の乗員は 12 人、乳児 8 人含め乗客は 367 人で、スライダーを使うなどして計 379 人全員が脱出したという。 うち 17 人が負傷し、他にもけが人がいないかなどを調べている。 2 日午後 9 時現在、東京消防庁などによる JAL 機の消火活動は続いており、滑走路は使用できなくなっている。 海保機は 2 日午後 8 時半に鎮火した。

JAL や国土交通省によると、516 便(エアバス A350)は 2 日午後 4 時 15 分に新千歳空港を出発し、約 1 時間半後に羽田空港に着陸しようとしたところだった。 海保によると、JAL 機と接触した航空機は羽田航空基地所属の MA722 で、長さ 25.68 メートル、幅 27.43 メートル、高さ 7.49メートル。 能登半島地震の対応で物資を搬送するために、新潟航空基地に向かおうとしていたという。 (本山秀樹、上地一姫、小早川遥平、asahi = 1-2-24)

過去に国内で起きた、主な航空機の事故
1971年7月30日岩手県雫石町の上空で、全日空機(ボーイング 727)と、航空自衛隊の戦闘機が接触。 墜落した全日空機の乗客乗員 162 人全員が死亡した。 パラシュートで脱出した自衛隊機の操縦士は訓練生だった。
1982年2月9日日本航空 350 便 (DC8) が羽田空港へ着陸しようとした際に海に墜落。 24 人が死亡。
1985年8月12日日本航空 123 便(ボーイング 747)が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落。 乗客乗員 520 人が死亡。
1994年4月26日中華航空機(エアバス A300)が名古屋空港で着陸に失敗、炎上。 乗客・乗員 264 人が死亡。
1996年6月13日ガルーダ・インドネシア航空機 (DC10) が福岡空港で離陸に失敗。 滑走路を外れてオーバーランした後に空港外で炎上し、乗客 3 人が死亡。
2003年6月7日日本航空機(ボーイング 767)が福岡空港で誘導路を走行中に急停止。 客室乗務員 1 人が重傷。
2005年8月12日JAL ウェイズ機 (DC10) が離陸直後にエンジンから炎を噴き、福岡空港に引き返す。 落下した部品で 2 人が軽いけが。
8月20日カンタス航空機(エアバス 333)が成田空港を離陸後、貨物室の火災発生を示す警告灯が点灯、関西空港に緊急着陸。
2007年3月13日全日空機(ボンバルディア DHC8-400)の前輪が出ず、高知空港に胴体着陸。
8月20日中華航空機(ボーイング 737-800)が那覇空港に到着後に出火し、炎上。 乗客 157 人と乗員 8 人は無事。
2009年3月23日米フェデックスの貨物機 (MD11) が成田空港に着陸した際、滑走路で横転、炎上。 乗員 2 人が死亡。
2015年4月14日アシアナ航空機(エアバス A320)が広島空港に着陸した際、滑走路からそれて機体が損傷。 28 人がけが。
2019年12月19日全日空機(ボーイング 767)が福岡空港から羽田空港に向け離陸後、エンジントラブルで福岡空港に緊急着陸。

米当局、飛行中に「穴」のボーイング機運航停止 171 機が検査対象

飛行中だった米アラスカ航空の旅客機胴体の一部が吹き飛んだ問題で、米連邦航空局 (FAA) は 6 日、同型機の一部を運航停止にし、検査を命じたと発表した。 機体は米ボーイング製の小型機「737MAX」シリーズの 9 型。 FAA によると、客室の壁の「ドアプラグ」と呼ばれる部分が脱落した。 FAA は「乗員や乗客のけが、機体の制御不能を引き起こす可能性があった」と指摘した。 検査対象は米航空会社などが運航する計 171 機。 検査には 1 機あたり 4 - 8 時間かかるという。

魔のショートカット 連続事故の 737MAX はこうして生まれた

アラスカ航空の旅客機は 5 日、米オレゴン州のポートランド国際空港を離陸し、カリフォルニア州オンタリオに向かった。 だが、上昇途中で約 1 万 6 千フィート(約 4,900 メートル)を飛行中に壁の一部が吹き飛んで穴があいた状態になり、客室内の気圧が低下。 同空港に緊急着陸した。 乗客 171 人と乗務員 6 人に大きなけがはなかった。

米メディアによると、穴があいた部分は航空会社のオプションとして非常口を設置できる構造で、今回のアラスカ航空のように非常口を必要としない場合は、ドアプラグでふさがれたままになっているという。 機体は昨年 11 月に FAA に承認され、運航が始まった新しいものだった。 米国家運輸安全委員会 (NTSB) が穴があいた原因などの調査を始めている。

同型機を 79 機保有する米ユナイテッド航空は 6 日、33 機については必要な検査を終えたが、この影響で 6 日の約 60 便を欠航にしたと明らかにした。 米メディアによると同型機は世界に約 200 機あり、ユナイテッド航空とアラスカ航空の 2 社で過半数を保有しているという。 日本の航空会社は保有していない。 ボーイングの 737MAX シリーズをめぐっては、8 型機が 2018 年にインドネシアで、19 年にエチオピアで連続して墜落する事故が起きている。 ボーイングは 6 日、今回の問題について、「安全は当社の最優先事項」として、米当局や航空会社の調査に協力すると声明を発表した。(ニューヨーク = 真海喬生、asahi = 1-7-24)

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アラスカ航空の旅客機が緊急着陸 機体の一部、飛行中に吹き飛んだか

米アラスカ航空の旅客機が 5 日夜、米オレゴン州のポートランド国際空港に緊急着陸した。 飛行中に機体の一部が吹き飛んだとみられる。 米 CNN などが報じた。 同機には乗客 171 人と乗務員 6 人が乗っていたが、アラスカ航空によると安全に着陸したという。 旅客機はアラスカ航空 1282 便。 米連邦航空局 (FFAA) によると、離陸後まもなく「乗務員が与圧の問題を報告」したため、緊急着陸したという。

CNN によると、同機の乗客は取材に「離陸直後に窓が吹き飛んだ」と語った。 CNN が報じた X (旧ツイッター)の写真によると、航空機の小窓だけではなく、座席横の壁のうち頭上の荷物置き場から下の部分が吹き飛んでいる。 別の写真では、非常ドアがなくなっているのがわかる。 動画には、機体が大きな穴を開けたまま上空で風を切って飛行し、乗客が穴から数メートル離れた座席に座っている様子が映っている。 酸素マスクが頭上から垂れ下がっているのも見える。

米メディアによれば、同機は約 4,800 メートル上空で緊急事態となり、時速 440 マイル(約 70 0キロ)に達していたという。 飛行状況を追跡するサイト「FlightAware」によると、現地時間の 5 日午後 5 時 7 分にポートランド国際空港を離陸し、カリフォルニア州オンタリオに向かった。 約 20 分後の同 5 時 27 分に同空港に緊急着陸した。 報道によると、機体は「ボーイング 737MAX9」で、昨年 10 月に耐空証明を取得した。 FAA と米国家運輸安全委員会が事故原因の調査を開始したという。 (浪間新太、asahi = 1-6-24)


成田空港でエチオピア航空機が逆走、ジェットスター機と向かい合わせになるトラブル

28 日午後 9 時 10 分頃、成田空港の誘導路で韓国・仁川行きのエチオピア航空機が誘導路を逆走し、オーストラリア・ブリスベン行きのジェットスター機と対面するトラブルが起きた。 接触はなく、両機の乗客にけがはなかった。 エチオピア航空機はトラブルの後、牽引車で後進して誘導路から外れ、ジェットスター機は 27 分後にこの誘導路での走行を再開した。 国土交通省成田空港事務所などが誤った原因を調べる。 (yomiuri = 12-29-23)


台湾から高松空港に向かっていた中華航空機が関西空港に着陸 ウインドシールドにヒビ

関西エアポートによりますと、台湾の高雄から高松空港に向かっていた中華航空 7760 便は 11 日、機材不具合の為、関西空港に目的地を変更して午前 11 時ごろに着陸しました。 航空機のウインドシールドにヒビが入ったということです。 中華航空によると、午前 7 時 20 分ごろに台湾・高雄空港を出発した同便には 153 人の乗客が乗っていて、午前 11 時 10 分に高松空港に到着する予定でした。 乗客や乗務員にけがなどはありませんでした。 乗客は全員が高松空港から貸し切りのツアーバスで移動する予定でしたが、このバスを高松空港から関西空港に移動して対応するということです。 (読売テレビ = 12-11-23)


オスプレイ生産終了へ 米国、事故多発で調達伸びず 2026年に製造ライン閉鎖予定

【平安名純代・米国特約記者】 米国防総省が輸送機 V22 オスプレイの新規調達を終了することが 8 日までに分かった。 2026 年予定で生産ラインを閉鎖する。 同省によると、米海兵隊の当初の調達予定数に変更はなく、飛行訓練計画には影響しない見通し。 米軍は 2050 年代までオスプレイを運用する方針だ。 複数の関係者によると、生産終了は調達数を満たしたためだが、機体の不具合や事故の多発などで米国外からの調達数が伸びなかったことなどが影響した。

同省によると、米軍全体のオスプレイ調達数は計 464 機で、そのうち海兵隊 MV22 が 360 機、空軍 CV22 が 56 機、海軍 CMV22 が 48 機。 空軍用は、当初の予定数を 2 機下回る形で機体の生産を終え、海兵隊用と海軍用もすでに発注分の約 30 機の生産を 26 年までに終え、オスプレイの生産を終了する。 24 米会計年度(23 年 10 月 - 24 年 9 月)以降は関連費のみの計上となり、墜落事故などで損出した機体数は補填しない。 米下院は 24 年度予算案に海軍用のオスプレイの新規調達費を盛り込んでいるが、米上院の複数の有力議員らは 7 日、本紙の取材に対し、死者を伴う墜落事故が頻発していることから否定的な見方を示した。

米国防総省は当初、米国外から 400 - 600 機の受注を見込み、1 機当たりのコストを抑えられると予想していた。 しかし実際には日本が 17 機購入したのみで、イスラエルなどオスプレイ導入に高い関心を示していた国々は次々と導入を見送り、最終的な単価は 1 機当たり約 9 千万ドル(約 130 億円)となっていた。 玉城デニー知事は 8 日、本紙の取材に「重大事故が相次ぐ中、先行きを見通せない部分もある。 今後の動きに注目していきたい。」と述べた。 (沖縄タイムス = 12-9-23)

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米軍、オスプレイ飛行一時停止 屋久島沖事故は機材不具合の疑い

【ワシントン】 鹿児島県・屋久島沖の米空軍輸送機 CV22 オスプレイ墜落事故で、米軍は 6 日、空軍のほか海軍や海兵隊を含め全てのオスプレイの飛行を一時停止すると発表した。 予備調査の結果、機材の不具合により事故が起きた可能性があるとしている。 現段階で詳細は不明で、飛行の一時停止により徹底的な調査を実施するとした。

日本政府は米側に安全性が確認されるまで飛行を停止するよう求めていた。 オスプレイはこれまでたびたび機体の問題が指摘され、米国やオーストラリアなどでも死亡事故が発生。 米軍は今回の事故直後も運用を続けていたが、安全性に改めて疑問符が付き、飛行停止を迫られた。 米軍は発表で「飛行停止により原因究明に向けた十分な時間を確保し、運用再開を確実にするための勧告に結び付ける」とした。 米兵の安全確保に向けた追加措置を実施すると表明したが、具体的な内容には言及しなかった。 同盟国と緊密に連携を図るとも強調した。 事故後、米国防総省は「整備と点検を終えた後にのみ飛行している」などと説明した。 (kyodo = 12-7-23)

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米軍オスプレイ墜落か、目撃した漁師が通報 「左のエンジンから炎」

29 日午後 2 時半ごろ、「屋久島沖にオスプレイが墜落した」と 118 番通報があった。 海上保安庁によると、オスプレイは米軍所属といい、8 人が搭乗していた可能性があるという。 屋久島空港管理事務所によると、落ちたのは空港から 2 - 4 キロ沖の海上という。 空港近くに住む男性 (50) は午後 2 時 40 分ごろ、普段とは違う飛行機のような音を聞き、窓の外に目を向けた。 「普通の飛行機とは違うエンジン音で、何かなと思ったら、オスプレイだった。」

その瞬間、左のエンジンから炎が出ているのが見えた。 機体は一度旋回した。 「すとんと落ちた。 ドーンという音と振動、黒煙が一瞬見えた。」 男性は急いで 110 番通報したという。 その後、自宅から海岸近くへ向かった。 海上にオレンジ色の救命ボートのようなものや、飛行機の破片と見られるものが四つ見えたという。 「乗組員が脱出したのかもしれない。 助かる命があれば。」と 118 番通報したという。

別のオスプレイがもう一機飛んできて、屋久島空港に降りた。 航空自衛隊の飛行機も 3 回旋回するなど、物々しい光景がしばらく続いたという。 「オスプレイを見たこともなければ、黒煙を見たこともないので驚いた」と話す。 空港近くのレンタカー店の店員の 30 代男性は、午後 2 時 50 分ごろに父 (68) から電話があり、墜落事故を知った。 男性の父は漁師で、事故当時は空港沖の海上で漁に出ていた。 父が男性に語ったところでは、午後 2 時 40 分ごろ、オスプレイ 1 機が煙を上げて高度を下げ、海面に落ちて水柱が上がったという。 すぐ後に炎が上がり、爆発した。

海上に救命ボートのようなものが浮かんでいたため、父は漁協と海上保安庁に連絡し、近くにいた仲間の漁師と共に救助に向かったという。 屋久島漁協の事務所にいた男性 (58) によると午後 3 時ごろ、漁に出ていた漁師の男性から「オスプレイが海に落ちた。 見に行ってくる。」との電話を事務所で受けた。 事務所にいた男性は、海上保安庁に事故を通報したほか、近隣にいた数隻の漁船が救助に向かっているという。 漁船や漁師らへの被害の情報はないという。 男性は「オスプレイが落ちたと聞いてびっくりしている。 乗組員の命に別条がなければいいが。」と語った。 (江戸川夏樹、後藤僚太、根岸拓朗、asahi = 11-29-23)


エアバス用エンジンに亀裂の恐れ、日本メーカーにも巨額負担の可能性

【ニューヨーク = 小林泰裕】 米航空防衛大手 RTX (旧レイセオン・テクノロジーズ)は、欧州エアバス機向けエンジンに不具合が見つかり、大規模点検を行うと発表した。 米メディアによると、点検のため 2026 年まで年平均約 350 機のエアバス機が運航停止になる可能性がある。 対象は傘下企業が製造した航空機エンジン 600 - 700 基で、エアバス製「A320neo」に搭載されている。 欧米メディアによると、部品に亀裂が生じる恐れがあるという。

ANA ホールディングスは運航する機体の 1 割強にあたる 33 機が点検対象になると明らかにしたが、当面の運航に影響はないと説明している。 日本航空には対象の機体はないという。 エンジンの開発に参画する IHI は業績に影響が出るとの見通しを発表した。 金額は算定次第としたが、SMBC 日興証券は、IHI の関連費用は 8.8 億ドル(約 1,300 億円)に達する可能性があると指摘した。 開発に関わる川崎重工業や三菱重工業にも負担が発生する恐れがある。 (yomiuri = 9-13-23)


中国国際航空、機体の左エンジンから火 煙を吸うなど 9 人が軽いけが

10 日午後、中国の成都からシンガポールに向かっていた中国国際航空の旅客機のエンジンから火が出ました。 旅客機はシンガポールの空港に緊急着陸し、乗客と乗員は全員無事ということです。 中国メディアによりますと、中国国際航空 403 便のエアバス機が午前 11 時すぎに成都天府国際空港を出発し、シンガポールのチャンギ国際空港に向かっていたところ、到着前に貨物室とトイレで煙が確認されました。 さらに、旅客機の左エンジンからも出火しました。

旅客機は午後 4 時 15 分ごろにチャンギ国際空港に緊急着陸し、乗客 146 人と乗務員 9 人は全員、ただちに避難したということです。 このうち 9 人が煙を吸ったり、擦り傷を負ったりして軽いけがをしました。 エンジンの火はすでに消し止められていて、火が出た原因については現在、調査中ということです。 (TBS = 9-10-23)


ボーイング、737MAX に新たな不具合 - 納入目標に狂い生じる恐れ

→ 737 の後部圧力隔壁に仕様に適合しないファスナー穴を確認
→ 年内の納入範囲に「重大な影響はない」 - スピリット

米ボーイングは、同社の最大サプライヤーであるスピリット・エアロシステムズ・ホールディングスが供給する部品に不具合が見つかったと明らかにした。 この部品は 737MAX の機内圧力を維持するためのもので、仕様に合わない穴が開けられていたという。 同機の納入目標に狂いが生じる恐れがある。 米連邦航空局 (FAA) は 23 日、737MAX を巡る今回の問題について、安全を脅かすものではないと発表。 だが、スピリットの労働組合員によるストライキに伴う影響やサプライチェーン制約に対処する中で 737 ファミリーの製造ペースを加速させているボーイングにとっては、新たな痛手だ。 ボーイングは 23 日の電子メールで、「工場での検査中に一部の 737 の後部圧力隔壁に当社の仕様に適合しないファスナー穴を確認した」と説明した。

ボーイングによると、今回の製造上の不具合により当面、737 の納入の一部に遅れが生じる見込みだ。 同社が検査を実施し、影響を受けた機種の数や必要な作業について判断しているためだという。 737 ファミリーを 400 - 450 機納入するという今年の目標が達成可能かどうかについて判断していくことになる。 一方スピリットは、今回の問題に対処するために製造工程を変更しており、ボーイングのシアトル工場に 737MAX 向けフレーム納入を継続していくと説明。 「現在判明している情報に基づくと、この問題に関連して当社の今年の納入範囲への重大な影響はないと考えている」と発表文で明らかにした。 (Julie Johnson、Bloomberg = 8-24-23)


海面突入寸前のユナイテッド機急降下、操縦士のミスが原因 米運輸安全当局

太平洋上空を飛行していた米ユナイテッド航空の旅客機が急降下して海面まで約 230 メートルに迫った 2022 年のトラブルをめぐり、米運輸安全委員会 (NTSB) がこのほど最終報告書をまとめ、トラブルは操縦士のミスが原因だったと断定した。 NTSB の報告書によると、同機の翼のフラップの位置をめぐって 2 人の操縦士の間で「コミュニケーションの行き違い」があったと思われ、「乗員が同機の垂直飛行経路を管理できなかった」ために、機体が急降下した。

乗客 271 人を乗せたユナイテッド航空 1722 便(ボーイング 777 型機)は 22 年 12 月 18 日、大雨と乱気流の中でハワイのカフルイ空港を出発した。 同機はその後、無事に目的地のサンフランシスコに到着した。 乗員の証言からは、同機のフラップの設定に関する混乱が起きていたことが判明した。 フラップは通常、離陸の際に展開され、上昇する間に徐々に格納される。 NTSB によると、同機が加速高度に達した時点で機長はピッチ姿勢をわずかに下げ、フラップ設定を「フラップ 5」に下げるよう求めた。しかし副操縦士は、機長が「フラップ15」をアナウンスするのを聞いたと思ったと証言した。

この時同機は高度 640 メートルを飛行中で、操縦を担当していた機長が展開したままのフラップの破損を心配して降下・減速を開始したところ、操縦室の警報が鳴った。 操縦士は 2 人とも、対地接近警報装置 (GPWS) の早期警報が聞こえたと証言。 副操縦士は、早期警報とともに「プルアップ、プルアップ(機首を上げろ)」の警報を聞いたと証言している。 報告書によれば、ユナイテッド航空は訓練手順を変更し、訓練所では飛行経路管理に関する周知を徹底させた。 同航空は 10 日、「このフライトから学んだ教訓を、ユナイテッドの操縦士全員の訓練に活用する」とする声明を発表した。

操縦士は 2 人とも追加的な訓練を受け、乗務を継続しているという。 同機に搭乗していた乗客は 2 月に CNN の取材に応じ、最初は正常に飛行していた同機が異常な急上昇を始めたと証言。 「ジェットコースターの最上部に上がっていくような感覚だった」、「機内のあちこちから悲鳴が上がった。 みんなが異常に気付いていた。」と振り返った。 その後同機は機首を下げて急降下に転じ、8 - 10 秒ほど降下した後、再び急上昇して正常な飛行に戻ったという。 (CNN = 8-11-24)


羽田発函館行き JAL 機、着陸時に予備燃料不足 重大インシデント認定

日本航空 (JAL) は、7 月 12 日の東京/羽田発函館行き JL585 便(ボーイング 767-300ER型機)で、着陸時の予備燃料が社内規程量を下回った。 国土交通省は重大インシデントに認定した。 同便は、午前 7 時 43 分に、乗員 9 名と乗客 249 名の計 258 名を乗せて羽田空港を出発。 函館空港と代替空港である新千歳空港の天候を考慮し、法定燃料を満たした飛行計画を決定した。 午前 9 時と午前 9 時 19 分に函館空港で視界不良により着陸をやり直した後、目的地を新千歳空港へ変更した。

午前 9 時 35 分には、着陸時に残存させる予備燃料が社内規定となる 30 分間の飛行可能な燃料を下回る可能性を考慮し、管制官に優先的取り扱いを要求し、新千歳空港には午前 9 時 49 分に着陸した。 着陸時には社内規程の 30 分間飛行が可能な量である 4,200 ポンドを下回り、25 分間の飛行が可能な量に相当する 3,400 ポンドだった。 その後、新千歳空港で燃料を搭載し、午前 11 時 2 分に再出発。 函館空港には午前 11 時 41 分に到着した。 (Traicy = 7-13-23)


福岡発プロペラ機の機内で発煙か 宮崎空港に緊急着陸、けが人なし

1 日午後 1 時半ごろ、長崎空港が拠点の航空会社オリエンタルエアブリッジの福岡発宮崎行きプロペラ機が、操縦席で煙を感知したとして緊急事態を宣言し、宮崎空港に緊急着陸した。 乗客 35 人と乗員 4 人にけがはなかった。 同社によると、午後 1 時 5 分ごろ、機内で霧状のものが発生した。 大阪航空局宮崎空港事務所によると、同機は着陸後、滑走路とターミナルを結ぶ誘導路に停止し、乗客は 300 メートルほど歩いてターミナルへ向かったという。 消防車 3台と救急車 1 台が出動したが、救急搬送などはなく消火活動もなかった。 この影響で同空港は午後 2 時 30 分ごろまで滑走路が閉鎖された。 (森田博志、asahi = 7-1-23)


羽田空港でタイ航空機とエバー航空機が接触か A 滑走路を閉鎖

羽田空港で午前 11 時ごろ、台湾のエバー航空とタイ国際航空の旅客機が接触したとの情報があり A 滑走路を閉鎖して確認作業をしている。 これまでに、けが人の情報は入っていないという。 機体の一部が破損したとの情報もある。 (FNN = 6-10-23)


関西空港にエールフランス機引き返す 機首がへこむ 負傷者はなし

関西空港を 28 日午前 11 時 15 分ごろに離陸したパリ行きのエールフランス 291 便(エアバス A350)がトラブルで引き返し、同日午後 2 時 25 分ごろに関空に着陸した。 国土交通省関西空港事務所によると、機首がへこんでおり、同事務所などが原因を調べている。 同事務所によると、同機は気象レーダーと速度計器にトラブルを示す表示が出たため、宮城県沖で引き返した。 乗員と乗客計 324 人にけが人はいないという。 滑走路が約 50 分間閉鎖され、関空を使う計 11 便に影響が出た。 (松岡大将、asahi = 5-28-23)


飛行中にドア開いたアシアナ機、搭乗客の多様な証言

5 月 26 日午後、済州(チェジュ)空港を離陸し大邱(テグ)空港に向かっていたアシアナ航空機が、乗客の突発行動によりドアが開いたまま飛行した事故と関連し、搭乗客の多様な証言が出ている。 26 日に事故が起きたアシアナ航空 8124 便に搭乗した A さんは大邱 MBC とのインタビューで「死んだかと思った。 (ドアが開いた瞬間)大きな音がしたのでエンジンか尾翼側が爆発したかと思った。」と話した。

事故は機体中央部にあるドアで起きた。 進行方向で機体の左側に位置するドアだった。 ユーチューブに上げられた現場映像によると、機内では座席の位置によってドアが開いてからの状況は大きく違った。 開いたドアの近くではシートカバーがはためくほど激しい風が吹き荒れる。 開放されたドアのそばの席の乗客は外に投げ出されないよう死力を尽くす姿だ。 しかしこの場面を撮っている機体前部は平穏な姿だ。 シートカバーもはためいていない。 また、映像に写る機内前方の乗客はきょろきょろ見回して状況を確認するほど余裕がある。

A さんは「知り合い一行が前に乗った。 一番前では後の乗客が暴れて騷ぎが起こったと思ったという。 何かと思い行こうとしたが乗務員が制止したという」と状況を伝えた。 最前方ではしばらくは後部で起きていた状況を知るのが難しく、移動できると考えるほど危険を大きく認知できていなかったということだ。 A さんの座席がどちら側なのかははっきりしないが、インタビュー内容を根拠に推定すれば、開かれれたドアとはやや離れた機体後方とみられる。

A さんは「(乗務員の)措置がなかった。 ドアを閉めなければ着陸は難しいと思い、私が閉めなければならないと思った。 (乗務員は)おびえて静かに座っていた。 自暴自棄状態だった」と話した。 すでにドアが開いた状況で安全を考慮して席に座って状況を注視し心配している乗務員の姿を A さんは「措置をしなかった」と受け止めた可能性がある。 A さんはその上で「私たちの方は完全に悲鳴が上がり大騒ぎだった。 無事に着陸した時は拍手したり祈ったりした。 完全にパニック映画だった。」と付け加えた。

こうした A さんの証言に対し、同じ便に搭乗していたまた別の乗客という B さんはコメントで異なる状況を伝えた。 B さんは自身を事故当時の機内映像撮影者でありドアを開けた乗客を制圧した男性乗客 3 人のうちの 1 人だとして、「インタビューを受けた人は本当にその時動いたのか。 被疑者を制圧する時に女性乗務員と男性乗客 3 人、通路で待機した 2 人を除いてみんな席に座っていた。 嘘をつくな。 着陸して手を叩いて大騷ぎになったというが驚いてみんな静かに降りた。」と話した。

命が危険な瞬間だったため各自が置かれた状況と位置により異なる経験と記憶を持っている可能性もある。 アシアナ航空関係者は「飛行中には安全ベルトをして座っていることが最大の安全措置だ。 無理にドアを閉めようとするのはもっと大きな人命被害につながりかねない。 乗務員は安全放送をして各自の担当区域でも乗客に安全ベルトをして座っているよう持続して案内した」と話した。 この日飛行機のドアを突発的に開いて危機を招いた 30 代の男は航空保安法違反容疑で警察に緊急逮捕された。

乗務員は着陸直後に乗客 3 人とともにドアを開けた男を制圧したという。 この事故により 9 人が過呼吸などの症状を見せ近くの病院に搬送され治療を受けた。 幸い着陸前ですべての乗客が安全ベルトを着用していたため機外に落下した乗客はなかった。 (韓国・中央日報 = 5-28-23)