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中国は経済を戦時体制に移行か コロナ禍がもたらすグローバル化の終焉

「1980 年から続いた世界のグローバル化の時代が終焉に近づいており、今後『混乱の世紀』を迎える可能性がある。」 このように主張するのはドイツ銀行である。 ドイツ銀行は 9 月 8 日、過去 200 年にわたる市場の動きを概観した分析を公表したが、その中で「グローバル化の反転は以前から指摘されていたが、コロナ禍でその動きが加速している」と述べている。 18 世紀後半に産業革命が始まって以来、世界経済は2つの大きなグローバル化の波を経験してきた。 グローバル化の最初の波は、19 世紀半ばから始まり、1914 年の第 1 次世界大戦勃発まで続いた。 鉄道、蒸気船、電信、電話などの革新的な技術により、人、資本、情報などが国境を越えて移動するコストが大幅に低下したからである。

1980 年頃から始まったグローバル化の第 2 の波の立役者は、飛躍的に発達した情報通信技術である。 モノ、サービスの国境を越えた移動がかつてないほど容易になったことに加え、中国の改革開放とソ連崩壊などもこの動きを加速した。 グローバル化により最も恩恵に浴してきたのは多国籍企業である。 通商条約を利用して政府や規制からの独立性を主張し、グローバル化がもたらす機動性を最大限に活用している。通商条約はたしかに保護主義を抑え込む効果があるが、「多国籍企業ばかりが儲かっている」との批判も高まっている。

が 40 年近く続いてきたグローバル化の第 2 の波は、新型コロナウイルスのパンデミックによって大打撃を受けている。 パンデミックがグローバル化によって構築されたサプライチェーン(世界的な供給網)の脆弱性を露呈させたからである。 米国と中国の間の緊張が高まる中、世界各国が戦略的に重要な製品などを優先的に確保しようとする動きも強まっており、グローバル化にとってマイナス材料が続いている。 多国籍企業は今までのところ、「米国と中国の対立が激化してもなんとか中立を保ち、これまでと同様グローバル化の恩恵に浴したい」と考えているようだが、その望みは叶えられるのだろうか。

トランプ大統領は 7 日、「米国が中国との取引をやめれば、多額の資金を失うことはない」と述べ、米中経済の「デカップリング(切り離し)」について改めて言及した。 民主党の大統領候補であるバイデン氏も 9 日、米企業の国内回帰を促すため、海外生産に「懲罰税」を課す新税制案を発表している。 米国はこれまで中国による技術窃取などを問題視してきたが、ここにきてイデオロギー面での非難を強めている。 サプライチェーンの脆弱性への懸念は、米国政府が発信する反中国の主張が示すとおり、国家安全保障に対する懸念へとヒートアップしているのである。

米中対立のおかげで台湾は「漁夫の利」を得ている。 中国通信設備企業ファーウェイに対する米国政府の制裁により、台湾の 8 月の輸出額は過去最高となり、中でも半導体など電子部品は前年比 19% 増の 125 億ドルとなった。 チェコの上院議長らの台湾訪問に合わせて米国が主催した 9 月 4 日のファーラムで、米国と台湾は、コロナ禍に伴うサプライチェーンの再構築に向け、自由や民主主義など価値観を共有する「同志国」に協力を呼びかけた。 参加したのはチェコ、日本、EU、カナダの代表らである。 台湾の蔡英文総統も 8 日、台北で行われたアジア太平洋地域の安全保障に関するフォーラムで演説し、「中国が周辺地域で示している拡張主義に対し、民主主義諸国は経済統合で立ち向かおう」と呼びかけた。

中国も負けてはいられない。 習近平国家主席は最近、中国への敵愾心に満ちた国際社会の動きに対抗するため、経済の自給自足を高めようと躍起になっているが、このような対応はデカップリングをさらに加速させてしまう可能性がある。 目につくのは中国がこのところ輸入に依存する戦略物資の備蓄を急いでいることである(9 月 6 日付日本経済新聞)。 原油輸入量を前年比 1 割以上も増加させ、小麦、コメ、トウモロコシなどの穀物在庫も記録的な高水準に引き上げている。 車載電池に使うコバルトや肥料原料のカリウムなどの調達も急ピッチで進めている。 中国の指導部は、米中対立の激化でドルで決裁される物資の調達に制約を受けることを危惧しており、経済を急速に戦時体制に移行させている可能性がある。

グローバル化の最初の波の後に 2 つの世界大戦が起きたが、第 2 の波の後にも恐ろしい結末が待っているのだろうか。 「経済的な相互依存が戦争を抑止する効果がある」との指摘があるが、2 度の世界大戦の主要参戦国の間には高い水準の経済的な相互依存関係が存在していた。 戦争と経済の関係に実証研究によれば、「『戦争をする』という決断は、現在の貿易の水準ではなく、将来の貿易の見通しによって左右される傾向が強い」ことがわかっている。

『グローバリゼーションの終焉 - 大恐慌からの教訓』の著者であり、経済史が専門のハロルド・ジェイムズは、「グローバル化がもたらすルールの体系が正当性を失うと必然的に国際的な対立が激化することから、過去のグローバル化は戦争とともに終わりを告げている」と結論づけている。 にわかには信じがたいことだが、まさかの備えを怠ってはならない。 「汝、平和を欲するなら、戦いに備えよ(4 世紀のローマ帝国の軍事学者ウェゲティウス)」である。 (藤和彦、デイリー新潮 = 9-17-20)

藤和彦 : 経済産業研究所上席研究員。 経歴は 1960 年名古屋生まれ、1984 年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003 年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、2016 年より現職。


米、華為技術などの締め出しを加速 中国排除迫る

【ワシントン = 塩原永久】 米国で 13 日に施行された華為技術(ファーウェイ)など中国 5 社に関する新規則で、トランプ米政権は中国ハイテク企業を締め出す動きを加速させた。 今回の新規則は民間企業に対しても中国製品の排除を迫る形で、米国による対中包囲網は強固さを増している。 新規則は内容のあいまいさも指摘されるが、香港情勢などをめぐっても中国への批判を強めるトランプ政権の中国への対決姿勢は鮮明で、国際的な包囲網を形成する狙いもうかがえる。

新規則は企業に対して「米国政府をとるか、中国企業をとるか」の判断を迫る内容だ。 新規則施行後、米政府は原則として 5 社の製品やサービスを利用する企業と新たな契約を結ばない。 このため企業側は下請けや孫請けの使用製品に 5 社の製品が入っていないかの点検を迫られ、米政府との契約を望む場合は 5 社の製品を排除する必要が出てくる。

トランプ政権はこれまでも中国企業への包囲網を強めてきた。 米商務省は 2018 年、米国企業による中国通信機器大手、中興通訊 (ZTE) への輸出禁止を発動。 中核部品の供給が途絶えた ZTE は経営危機に陥った。 19 年 5 月には同じ手法を華為にも適用した。 さらに今年 5 月には、米国製の半導体製造装置を使う台湾メーカーから華為への半導体輸出を困難にする禁輸強化を断行。 台湾メーカーから華為への輸出が包囲網の抜け穴になっていると判断したためで、中国企業への「兵糧攻め」は厳しさを増している。

一方、今回の新規則は「対象範囲が明確でなく機能しない(セキュリティー業界団体)」との指摘もあり、どこまで厳格に運用されるかは見通せない部分もある。 ただトランプ政権は中国による香港国家安全維持法(国安法)施行をめぐっても、香港政府トップや中国共産党幹部らを制裁対象に加えるなど、対決姿勢を鮮明にしている。 中国企業による動画投稿アプリ「TikTok (ティックトック)」については米国での使用禁止を打ち出し、米国事業の売却を迫っている。

米政権が対中姿勢を硬化させる背景には、他国に追随を促す率先垂範としての意味合いもあるとみられる。 日本をはじめ同盟国や友好国に中国製品排除を迫る圧力を強める可能性もある。 (sankei = 8-13-20)


米会計基準満たさない中国企業、来年末時点で上場廃止に = 財務長官

[ワシントン] ムニューシン米財務長官は 10 日、ホワイトハウスで会見し、来年末時点で会計基準を満たさない中国などの海外企業は米市場で上場廃止になると述べた。 ムニューシン長官を含む当局者でつくるグループは前週、米会計監査基準を満たさない中国企業を巡る措置について提言を行った。 同長官は、米証券取引委員会 (SEC) が提言を採択するとの見方を示し「来年末時点で、全ての企業は上場する場所の会計基準を満たしている必要がある。 満たしていなければ、取引所から上場廃止となる。」と述べた。

トランプ政権は米中の経済関係に著しい不均衡があるとして是正を進めており、今回の提言はそうした取り組みの一環だ。 米中間では中国の新型コロナウイルス対応や香港の人権問題を巡っても、対立が深まっている。 トランプ大統領は会見で、中国は 1 月に署名した「第 1 段階」の通商合意で約束した米製品の購入拡大も履行していないと指摘した。ただ、来年は購入が増加するとの見方を示した。 トランプ氏は「第 1 段階の合意は素晴らしい取引だったが、突如として輸入全体においてほとんど意味を持たなくなった」と述べた。

また、第 1 段階の合意で求められている米国製品の購入拡大を実行しても「米国と世界中で失われた命の償いには、決してならない」とした。 さらに、世界貿易機関 (WTO) が中国を発展途上国として扱っているために同国は米国などに対し不当に優位な立場にあると主張し、WTO に扱いを見直すようあらためて求めた。 (reuters = 8-11-20)


中国先端分野に「ガラパゴス化」の危機? 米排除戦略で

新型コロナウイルスが世界で最初に流行し、封鎖された中国の湖北省武漢市はコロナ対策でイノベーションのショールームとなっていた。最近スタートアップの創業者に取材していて、そんな話を相次いで聞いた。 人工知能 (AI) 企業のインファービジョンは CT 画像から肺炎を見つける AI 製品を武漢の病院に提供した。 膨大な量の画像を見る医師の判断を迅速にできた。AR (拡張現実)眼鏡の LL ビジョンも貢献した。 病室に入る医療従事者が外と視野を共有でき、指示を受けやすくなった。 患者と接触する人員を最小限にし、院内感染のリスクを減らした。

両社は当局の要請を受け、製品の提供を即決した。 社会貢献と同時に自らの技術を世に知らしめる絶好の機会だ。 「チャイナスピード」は中国イノベーションの特徴である。 3 年半前に北京に赴任してから、スタートアップの創業者にこつこつと話を聞いてきた。 彼らの背景はバラバラだ。 だが、@ 欧米への留学を経て技術に明るい、A 上昇志向が強い、B 思考が理性的、C 柔軟性がある、D 日米欧の動向に詳しい - - との共通点が浮かぶ。 競争は激烈だ。 米シリコンバレーのように先行者の模倣を「恥」とは考えない。 まねしても最後に消費者が支持すれば「勝ち」だ。 規制が不確実なグレーゾーンはすなわちビジネスチャンス。 ぼーっとしてはいられない。

中国イノベーションを語る時に最も重要なのはデータと AI だ。 データを学べば学ぶほど、AI の能力は高まり、競争力がつく。 人口が 14 億人もいて、個人情報に対する保護意識が強くない中国は、データを集めるのなら圧倒的に有利だ。 AI ビジネスの第一人者、李開復博士が 18 年の講演で、中国は「もしデータがオイルならば、中国は新たなサウジアラビアだ」と言ったのが印象深かった。

米国から「中国印」貼られる企業

中国のイノベーション企業は世界進出を進めている。 だが、いま誰もが米中経済の分離(デカップリング)を心配している。 対立の最前線はこのデータを巡る安全保障で、その背景には技術覇権を巡る争いがあるからだ。 改革開放が生み、世界企業に育った通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)について、米国はその通信機器がスパイ活動に使われると警戒する。 華為は今、米国の輸出制限によって高性能半導体が製造できなくなり、国外での競争力低下が懸念されている。

若者の支持を背景に、3 年で 20 億ダウンロードを記録した動画 SNS の TikTok も、米国事業を売却せざるを得ない状況に追い込まれた。米国は利用者データを中国政府と共有していると疑っている。 一方、愛国的な中国人は「肥やして太らして米国に送るのか。なんという屈辱だ」と非難を浴びせる。 どちらにも中国政府のためにスパイ活動をしたといった証拠はない。 だが、スパイ活動への協力を義務づける「国家情報法」があることなどが脅威の根拠とされる。 もはや個別企業の問題ではなく、中国問題だ。 米国はどこまでやるのか。 ポンペオ国務長官の 8 月 5 日の記者発表がわかりやすい。

米排除戦略、どこまで続く?

中国からデータを守る「クリーンなネットワーク」を築くため、@ 信頼できない中国の通信会社を米のネットワークに接続させない、A 中国の信頼できないアプリをアプリストアから取り除く、B 信頼できない中国のスマホメーカーが、信頼できるアプリを標準搭載できなくする、C 中国企業がクラウドを通じ、個人情報や知的財産にアクセスできなくする、D 中国に海底ケーブルの情報を取られないようにする - - とサイバースペースの徹底的な分断を表明している。 そのうえで「中国共産党の監視国家」からデータを守る活動に加わるよう世界各国に求めた。

米国の排除戦略で、中国で花開いたイノベーションは「ガラパゴス化」の危機にある。 米中関係は「新冷戦」の様相を急速に強めている。 背景は再選を見据えたトランプ大統領のアピールにとどまらない。 新型コロナの流行後、輪をかけて高まった反中感情が国民に広がる。 仮にバイデン大統領が誕生しても、この路線は変わらないかもしれない。 中国外務省は「国際社会の理性的な声を聞き、間違ったやり方を改めるべきだ(汪文斌副報道局長)」と強気だ。 だが、共産党関係者に聞くと「制裁はどうしようもない」と困惑気味だ。 その上で「日本は先端分野で中国と協力する気があるのか」と逆に問われた。

問われる日本の判断

日本は次世代通信規格 5G 網から華為を事実上締め出したが、華為は日本から年 1.1 兆円もの調達をしている。 ティックトックに規制はないが、自民党では議論が始まった。 米国の呼びかけは無視できない。 かたや中国イノベーションによるビジネスチャンスも無視できない。 双方に良い顔もできない。 国益を踏まえて、自主独立した判断が重要だ。 北京特派員としての任務が、もうすぐ終わる。 帰国後は、米中対立のなかでの日本経済の針路を取材していきたい。 (中国総局・福田直之、asahi = 8-11-20)


トランプ政権のファーウェイ封じ込めに勢い - 中国の強権に欧州も反発

1 カ月前、ファーウェイ製品回避促す米国の同盟国への説得は難航
ファーウェイは中国共産党の統制下、スパイ活動に関与 - 米国務省

米政府による中国の華為技術(ファーウェイ)封じ込め策が新たな勢いを得つつある。 トランプ政権が極めて重要なマイクロチップの供給を止めたことに加え、香港と新型コロナウイルス感染拡大を巡る中国政府の対応が米国のみならず欧州でも反発を招いている。 英国はファーウェイにいったん認めた第 5 世代 (5G) 移動通信ネットワーク市場参入を見直しており、デンマークやシンガポールの通信会社はファーウェイ以外のサプライヤーを選択した。 ドイツとフランスも、米国が盗用や制裁違反、情報流出に関与していると主張するファーウェイの役割をあらためて検証している。

わずか 1 カ月前、ファーウェイ製品を使わないよう求める米国の同盟国への説得工作は難航していた。 だが米商務省は 5 月、ファーウェイが米国の技術とソフトウエアを利用して同国外で半導体を設計・製造することを制限し、米国の国家安全保障を守る措置を産業安全保障局 (BIS) が講じたと発表。 これにより、今後数十年にわたり通信のバックボーンとなる最新鋭の 5G ネットワークをファーウェイが更新・維持することができなくなる可能性が浮上した。

同時に、野心的なファーウェイに不利に働いているのが、中国の強権政治だ。 欧米の当局者は新型コロナウイルス感染症 (COVID19) のパンデミック(世界的大流行)を巡る対応で、中国政府を非難。 中国が香港に国家安全法制を導入する準備を進めていることも、香港の高度な自治が損なわれると懸念する国際社会の対中批判が広がった。 米シンクタンク、戦略国際問題研究所 (CSIS) のテクノロジー政策プログラム担当ディレクター、ジェームズ・ルイス氏は「2 年前であればファーウェイ製品の購入に誰も心配はしなかったが、もはやそうではない」と指摘。 「全面禁止」には程遠いものの、米国がファーウェイ製品を排除するよう他国を動かすことに「一定の進展」は見られていると述べた。

米国務省によれば、ファーウェイは中国共産党の統制下にあるため、中国の安全保障機関への協力を強いられる可能性があり、すでにスパイ活動に巻き込まれている。 米国防総省は 24 日、ファーウェイや監視カメラメーカーの杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など 20 社を人民解放軍に所有ないし管理されている企業に指定した。 米国の追加制裁の可能性に道を開く動きだ。

米国に拠点を置くファーウェイ広報担当者ロブ・マンフレード氏はコメント要請に応じなかった。 ファーウェイはスパイ疑惑を否定している。 また、同社は中国政府の指示を受けない民間企業であり、中国を代表する民間企業をサイバー空間のスパイ活動に従事するよう義務付ける中国の法律はないと主張している。 (Todd Shields、Thomas Seal、Nick Wadhams、Bloomberg = 6-26-20)


米中、第 1 段階の貿易合意に署名 - 中国は 2 年で 22 兆円の追加購入

中国、企業機密窃取の取り締まり強化 - 強制的な技術移転禁止
中国の補助金など国家資本主義の中核を成す問題は今後の交渉に

米中両国は 15 日、包括的な貿易協定の第 1 段階と双方が位置付ける合意に署名した。 ただ対中経済関係の仕切り直しを図るトランプ政権の取り組みがこれ以上前進するかについては疑問視する見方が根強い。 合意文書には、中国の企業および政府機関による米国の技術と企業機密の窃取に対し中国側が取り締まりを強化するとの公約のほか、対米貿易黒字の縮小に向けた中国による今後 2 年間で 2,000 億ドル(約 22 兆円)相当の追加購入計画の概要などが盛り込まれた。 貿易上の優位性を得るための為替操作を中国が控えることや、合意を確実に履行させるための制度も合意文書に明記された。 過去の米政権が中国との間で行っていた経済対話も再開させる。

ホワイトハウスで行われた署名式にはトランプ大統領や米議員、中国の劉鶴副首相ら代表団のほか、米実業界代表が出席。 トランプ大統領は「非常に重要で特別な機会だ」とした上で、自身が不当と見なす過去の協定の是正が「おそらく自分の大統領選出馬の最大の理由」であり、米中両国は「過去の過ちを一緒に正しているところだ」と語った。 一方、中国の劉副首相は、両国が相違を埋めるため協力できることを合意は証明し、「中国と米国、世界全体にとって良いことだ」とする習近平国家主席から大統領に宛てた書簡を読み上げた。 劉副首相は通訳を通じ、「米国側が中国企業を公正に扱うよう期待する」とし、自身の発言として中国は合意を「厳密に履行」すると語った。

今回の合意では、中国の国家資本主義モデルの中核を成す補助金の改革などの問題は手つかずのままとされた。 こうした課題の多くは第 2 段階の交渉で取り上げるとトランプ政権は説明するが、協議開始の時期や合意取りまとめにかかる期間は不確定だ。 さらに、米国が中国からの輸入に課している関税の 3 分の 2 程度は維持され、トランプ大統領は 15 日、中国が一層の改革に応じるまで重要な取引材料として温存する考えを示した。

トランプ大統領は第 1 段階合意について、「これが発効し次第、われわれは第 2 段階を開始する」と発言。 「交渉材料を失わないよう、第 2 段階が可能になった場合のみ私は関税を撤廃することに合意するつもりだ。 われわれが第 2 段階を終えれば、関税は直ちに全て撤廃されるだろう。」と明言した。 合意署名に先立ち、ライトハイザー米通商代表部 (USTR) 代表は記者団に対し、トランプ政権として当面は第 1 段階合意の実行に重点を置いたと説明。 さらなる交渉はその後になるだろうと述べた。 初期段階の実行には春までかかる可能性があるとしている。 (Shawn Donnan、Josh Wingrove、Saleha Mohsin、Bloomberg = 1-16-20)


米中、制裁関税緩和で合意 通商会議、「第 1 段階」文書

米中両政府は日本時間 14 日未明、通商協議で「第 1 段階」の文書に合意したと発表した。 双方が 15 日に発動を予定していた追加関税「第 4 弾」の残り分の発動は見送り、米国が発動済みの追加関税の一部の税率を引き下げる。 昨年 7 月の追加関税「第 1 弾」発動で激化した貿易摩擦で、米中が文書をまとめたり、関税を引き下げたりすれば初めて。 世界経済の不安要因となってきた米中対立が、緩和に向かう道筋が示されることになる。

トランプ大統領は米東部時間 13 日朝、ツイッターで「中国と大きな『第 1 段階の合意』に達した。 中国は多くの構造変化を受け入れ、農産品、エネルギー、工業製品などを膨大に輸入すると合意した。」と表明。 9 月に 15% の追加関税をかけた「第 4 弾」の一部については、7.5% に半減する。 「第 1 - 3 弾」については現行の 25% を継続することを明らかにした。

一方、中国政府が出した声明は、米中間で経済貿易協定の文書に合意したとし、知的財産や技術移転、食料と農産物など 9 つの章が含まれる、と言及。 協定の締結は「中国と米国、世界の基本的な利益に有益だ」とした。 今後については「早急に法的なレビューや翻訳などの必要な手続きを完了し、正式な署名の取り決めを交渉することで同意した」としるすにとどめ、署名時期については言及しなかった。

これに先立ち、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、ライトハイザー米通商代表と崔天凱駐米大使が 13 日、合意文書に署名する見通しと報じていた。 中国問題でトランプ氏に助言してきたハドソン研究所のマイケル・ピルズベリー上級研究員は 12 日、米 FOX の番組で、トランプ氏に直接聞いた内容として「中国に農産物を年間最低 500 億ドル(約 5.5 兆円)分買わせることを確約させた、と言っていた」と明らかにした。

500 億ドルは、米中貿易摩擦で中国による米農産物の輸入が減った 2018 年の 5 倍、17 年以前と比べると 2 倍超の水準。ピルズベリー氏は、中国側が約束を果たさなければ制裁する仕組みを設けているとも語った。 米国が 15 日に発動を予定していたのは、スマートフォンやノートパソコンなど約 1,600 億ドル(約 18 兆円)分。中国からの輸入シェアが 75% 以上を占め、高額の消費財が多いことから米中や世界の経済への悪影響が懸念されていた。

協議をめぐっては、トランプ氏は 10 月、中国による農産物の輸入拡大や金融サービスの市場開放などを含む「第 1 段階の合意に達した」と表明。 その後、合意文書への署名を予定していたアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議が中止になったことなどから、交渉が難航していた。 (ワシントン = 青山直篤、北京 = 福田直之、asahi = 12-14-19)


中国、トランプ大統領との長期的貿易合意の実現性に疑念 - 関係者

中国当局者は最大の争点である問題については譲歩しないと警告
大統領が 12 月 15 日に発動を計画している関税について中国は撤回望む

米国との包括的かつ長期的な貿易合意に達することが可能かどうか、中国の当局者らは疑念を抱いている。 米中両国は「第 1 段階」の貿易協定調印に近づいているが、中国は最重要問題で譲歩する意向はないと、事情に詳しい関係者が述べている。 関係者によると、最近数週間に北京を訪れた人などとの個人的な対話で、中国当局者は最大の争点である問題については譲歩しないと警告した。 当局者らはトランプ米大統領の衝動的な性格および部分的な協定ですら同大統領が合意内容を撤回するリスクを依然として懸念しているという。 両国は数週間内に部分的な協定に署名したい考えを示してはいる。

中国は 10 月 31 日まで、北京で共産党第 19 期中央委員会第 4 回総会(4 中総会)を開いていた。 この会合に先立ち一部当局者は、米国がさらに関税を撤廃する意向でない限り、今後の米中交渉が意味のある結果を生むことはあまり期待できないとの考えを伝えていた。 米国からの訪問者に対しそのメッセージを米政権へと持ち帰るように促したケースもあったという。 中国の習近平国家主席とトランプ大統領が会談の機会と見込んでいた 11 月 16、17 両日のアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議の中止が 10 月 30 日に発表され、合意への新たな障害が生じた。

トランプ大統領は 31 日、米中首脳が協定に調印するための新たな場所探しが進められているとツイート。 第 1 段階は「全体的な合意の約 60%」に相当すると指摘した。 米政権はこの第 1 段階が、当初の提案よりも多くの重要な経済改革を含む包括的な合意につながるとしている。 一方で中国当局者は、そのためには米国が約 3,600 億ドル(約 39 兆円)相当の中国からの輸入に対する関税を撤回する必要があると論じる。 トランプ大統領がこれに応じる可能性は低いとみられている。

中国の立場を知る関係者によれば、直ちに全ての関税を取り下る必要はないが、これが次の段階に含まれることが要件。 中国はまた、トランプ大統領が 12 月 15 日に発動を計画している関税についても撤回を望んでいるという。 中国側は第 1 段階の後に交渉を継続する意思があるものの、米国側が求める根の深い構造問題についての合意は非常に難しいと双方ともが認識していると、交渉内容を知る中国当局者が述べた。

ホワイトハウスのジャド・ディア報道官は 31 日、この記事が最初に配信された後に取材に応じ、大統領が中国とのより公正な貿易につながるような「現実的かつ検証可能で強制力ある結果をもたらす本物の構造改革を求めている」と述べた。 中国商務省に貿易交渉に関してファクスでコメントを求めたが、現時点で返答はない。 (Shawn Donnan、Jenny Leonard、Steven Yang、Bloomberg = 11-1-19)


中国、米国産大豆 26 万 4,000 トン買付 = 米農務省

米農務省は 24 日、民間の輸出業者が中国に米国産大豆 26 万 4,000 トン買い付けたと発表した。 2019/20 年度(9 月 1 日開始)に出荷される。 米中が中国による最大 500 億ドル分の米農産品購入などを含む「第 1 段階」の通商合意に達した 11 日以降、米政府が中国に対する米国産大豆の販売を確認したのは初めて。

同日発表された週間報告によると、10 月 17 日終了週の米国産大豆の輸出販売高は 47 万 5,200 トンで、そのうち中国向けは 6 万 8,300 トンだった。 アナリスト予想は 80 万 - 160 万トンだった。 ブルームバーグによると、中国は米国と通商合意した場合、1 年目に 200 億ドル相当の米国産農産物を買い付ける用意があるという。 また関係筋はロイターに対し、中国が米国産大豆の輸入向けに 1,000 万トンの無関税枠を主要企業に割り当てたと明らかにした。 米農務省はこれまで、今年度中国に 600 万トン相当の大豆を販売したと確認している。 (Reuters = 10-25-19)


米、中国高官のビザ発給制限 ウイグル弾圧巡り

【ワシントン = 永沢毅】 米国務省は 8 日、中国政府による新疆ウイグル自治区でのウイグル族など少数民族への弾圧の責任を問うとして、中国政府高官や中国共産党幹部への査証(ビザ)発給を制限すると発表した。 弾圧に使われているとする中国の監視カメラ大手などへの制裁に続く措置で圧力をかけ、中国に是正を迫る。

国務省は発給制限の対象となる高官らの名前を明らかにしていない。 家族も対象に含まれる可能性があるとしている。 ポンペオ国務長官は声明で「弾圧キャンペーンを直ちにやめ、拘束した人々を解放するよう中国に求める」と表明した。 米商務省は 7 日に監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など計 28 団体・企業に輸出禁輸措置を科したばかり。 国務省は「商務省の発表を補完するものだ」と説明した。 (nikkei = 10-9-19)


米、中国監視カメラ 2 社などブラックリスト掲載 - 人権侵害で制裁

ハイクビジョンやダーファ、新疆ウイグル自治区の公安機関を追加
ワシントンで米中の実務協議が開始されるタイミングで発表された

トランプ米政権は 7 日、中国の監視カメラメーカー最大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など同国のテクノロジー企業 8 社と、新疆ウイグル自治区の公安機関などを禁輸措置の対象にすると発表した。 米企業との取引を禁止する「エンティティー・リスト」に掲載する。 同自治区のイスラム教徒少数派に対する人権侵害に関与したことを理由に挙げた。

ブラックリストに追加される企業には、ハイクビジョンと浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)の監視カメラメーカー大手 2 社のほか、顔認証技術で知られるセンスタイム・グループが含まれ、新疆ウイグル自治区の公安機関および警察大学校、他の 18 の自治体の公安機関も対象となる。 一部推計によれば、この 2 社で世界の監視カメラ市場シェアの最大 3 分の 1 を占める。 10 日からの米中の閣僚級貿易協議に先立ち、ワシントンで実務協議が開始されるタイミングで米商務省による今回の発表が行われた。 エンティティー・リストに掲載されれば、米政府の特別な許可がない限り、米企業との取引が事実上禁止される。

商務省は連邦公報の掲示で、「これらの企業・団体は、ウイグル族とカザフ族、他のイスラム教徒少数派グループに対する抑圧や恣意的な大量拘束、ハイテクを使った監視といった中国の人権侵害に関わってきた」と主張した。 商務省はこれまで中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)などをエンティティー・リストに掲載する際、国家安全保障上の脅威を根拠としていた。 トランプ政権が人権侵害を理由に中国企業をブラックリストに追加するのは、今回が初めてだ。

ハイクビジョンは「米政府の本日の決定に強く反対する」と反論。 センスタイムとダーファに通常の営業時間外に取材を試みたが、コメントは得られていない。 中国商務省にもファクスでコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。 (Shawn Donnan、Bloomberg = 10-8-19)


人民元はさらに下落へ、貿易協議のカードにも

[北京/香港] 中国人民銀行(中央銀行)は人民元が 1 ドル - 7 元の節目を突破するのを容認したのに続き、一段の下落を放置しそうだ。 市場関係者らによると、米国の怒りを買うリスクを冒して貿易協議のカードに使う可能性もある。 人民元は 8 月 5 日、2008 年以来初めて 7 元台となり、市場に緊張をもたらした。 元は 8 月全体で 3.8% 下落して過去 25 年間で最大の下げ率となり、トランプ米大統領が中国を「為替操作国」に認定する事態となった。

人民銀行は人民元を貿易交渉の武器に使っているとの説を否定するが、今月もなだらかな元安に誘導しようとしている様子は見える。 ただ、政策当局筋やアナリストによると、過去の人民元切り下げと異なり、当局が決まったレンジ内に元を縛り付けることはなさそうだ。 ウェストパック・バンキング・コーポレーション(シンガポール)のアジアストラテジスト、フランシス・チョン氏は、人民銀行は資本流出や市場の波乱を避けつつ 7 元突破を果たすのにやや苦心したため、「自ら新たな節目を設けるのは賢明ではないだろう」と言う。 チョン氏は年末の相場水準を 1 ドル = 7.3 元と予想した。 これは 26 日終値に比べ 2% 安く、6 月以来では 6.4% の下落となる。

人民元のノンデリバラブル・フォワード (NDF) 6 カ月物は 1 ドル = 7.15 元、1 年物は 7.19 元。 つまり他の市場参加者の多くは下落を予想しながらも、人民銀行が急激な元安を放置することには乗り気でないと考えているようだ。 人民銀行の元政策顧問、ユー・ユンディン氏は「一部の人々は、米中貿易戦争が激化すれば人民元は 7.2 - 7.3 元に下落すると予想しており、そうなる可能性は否定できない」とした上で、「1 つ確実なのは、急激な下落にはならないということだ」と述べた。

人民銀行の考え方に詳しい別の筋は「7 元の節目が破られた以上、中長期的に 7.1 元や 7.2 元が底値になると信じる者はいないが、7.3 元を突破する可能性は小さい」と話した。 中国当局は人民元は貿易戦争の武器ではなく、武器に使えば中国経済を不安定化させると強調している。 しかしエコノミストらは、景気減速、貿易高の減少に加え、ユーロ安やドル高といった外部要因も重なって人民元は自然に下落するとみる。

BNP パリバ・アセット・マネジメントのシニアエコノミスト、チー・ロー氏は、中国当局は人民元の切り下げを画策してはこなかったし、目標水準も設けていないが、貿易戦争が激化すれば 1 ドル = 7.5 元まで下がりかねないと予想した。 ロー氏は、そうした事態は中国に追い風になるかもしれないと言う。 「中国が米国の株式市場に痛みを負わせるのに成功すれば、トランプ大統領を交渉のテーブルに引き戻し、何らかの譲歩を引き出す力になるだろう。」 (Kevin Yao & Noah Sin、Reuters = 9-29-19)


中国、米国産大豆 20 万トン購入 米農務省発表

米農務省は 13 日、中国に輸出する米国産大豆 20 万 4 千トンの買い付けがあったと発表した。 中国政府が米農産品の輸入手続きを再開しており、10 月初旬の閣僚級貿易協議を前に、米政権に歩み寄る姿勢を示したとみられる。 ロイター通信は 12 日、複数の中国企業が 60 万トン以上の購入契約を結んだと伝えた。 最近では最も大きな取引量になるとしており、中国が本格的に購入を再開した可能性もある。

中国の国営通信新華社は 13 日に大豆など主要農産品を報復関税の対象から外すと報じた。 トランプ米大統領は「中国は農産品を大量購入するだろう」と期待感を示していた。 トランプ氏は 12 日、協議事項を絞り込む「暫定的な合意」を検討する可能性に言及。 ブルームバーグ通信によると、米政権内部では中国が知的財産権保護と米農産品購入を約束すれば、制裁関税の税率引き上げを再延期することなどを検討したという。 (kyodo = 9-14-19)


中国、対米貿易 13.9% 減 1 - 8 月、摩擦続き

【北京】 中国税関総署は 8 日、中国の 1 - 8 月の対米貿易総額が前年同期比 13.9% 減の 3,556 億 810 万ドル(約 38 兆 150 億円)だったと発表した。 米中貿易摩擦の影響による貿易の縮小が続いており、中国だけでなく世界経済への影響も懸念される。 輸入は 27.5% 減と大きく落ち込んだ。 中国が報復関税を課した大豆などが減ったとみられる。 輸出も 8.9% 減と振るわなかった。 対米貿易黒字は 1,954 億 5,020 万ドルで、1.5% 増加した。 中国の世界に対する輸出は、単月で見ると前年同月比 1.0% 減で、2 カ月ぶりのマイナスとなった。 (kyodo = 9-8-19)


米、対中関税「第 4 弾」 9 月 1 日に発動 正式に通知

【ワシントン = 鳳山太成】 トランプ米政権は 30 日、中国製品への制裁関税「第 4 弾」を 9 月 1 日に発動すると正式に通知した。 家電や衣料品など約 1,100 億ドル(約 12 兆円)分に 15% の関税を上乗せする。 中国も即座に米国の農産品や大豆などに報復措置を打つ構えだ。 二大経済大国による関税合戦は一段と激しくなり、世界経済の大きな重荷となる。 米税関・国境取締局 (CBP) が同日、米東部時間 1 日午前 0 時 1 分(日本時間同日午後 1 時 1 分)以降に通関した中国製品から 15% の追加関税を徴収すると表明した。 米通商代表部 (USTR) も 30 日付の官報に掲載した。

1 日に関税をかけるのは腕時計型端末「スマートウオッチ」や半導体メモリーなどデジタル家電関連のほか、衣服や靴などアパレル用品。 消費財を中心に 3,243 品目が対象となる。 中国も米国と同時刻に 5 - 10% の報復関税を米国製品にかける予定だ。 米国はスマートフォンやノートパソコンなど 1,600 億ドル分への発動を 12 月 15 日に先送りした。

トランプ大統領は関税で中国に圧力をかける強硬姿勢を崩していない。 30 日のツイッターで「我々に関税の問題はない。 問題は米連邦準備理事会 (FRB) だ。」と追加利下げを改めて要求した。 関税の撤回を求めてきた米企業を念頭に「自分たちのひどい経営を棚に上げ、(業績悪化を)ずる賢く『少量の関税』のせいにしている」と一方的に批判した。 (nikkei = 8-31-19)


トランプ氏が対中関税引き上げ、報復に対抗 米企業に中国撤退も

[ワシントン] 中国が米国製品に対する追加報復関税を発表したことを受け、トランプ米大統領は 23 日、対中関税の新たな引き上げを発表した。 さらに米企業に対し中国からの事業撤退も要求した。 通商問題を巡る米中の対立は深まる一方となっている。 中国商務省は同日、米国から輸入する 750 億ドル相当の製品に対し 5 - 10% の追加関税を課すと発表。 米国が 9 月 1 日から発動を予定する対中制裁関税「第 4 弾」に対する報復措置とみられる。 一部製品に対する追加関税は 9 月 1 日、残りは 12 月 15 日に発動する。 対象となるのは、米国から輸入する大豆や牛肉、豚肉を含む農産物や小型航空機など計 5,078 品目。 自動車・部品に対する関税も復活する。

中国商務省は声明で「米国の一国主義や保護主義により今回の決定を余儀なくされた」と表明。 ある中国外交筋は「通商合意は望ましいが、中国の国益にそぐわず、相互信頼が欠如した合意を求めているわけではない」と強調した。 これに対し、トランプ大統領は、これまでに課している 2,500 億ドル相当の中国製品に対する関税を現在の 25% から 30% に引き上げると表明。 10 月 1 日から適用する。 さらに中国製品 3,000 億ドルに課す追加関税第 4 弾の税率も 10% から 15% に引き上げるとした。 第 4 弾の発動時期は一部品目が 9 月 1 日からだが、全体の半分近くの品目は 9 月 1 日から 12 月 15 日に延期されている。

トランプ氏はツイッターへの投稿で「残念なことに、これまでの政権は中国が公正かつバランスの取れた貿易を出し抜くことを許し、これが米国の納税者の負担となってきた」と指摘。 「大統領としてもはや許すことはできない!」と述べた。 またこれに先立ち「偉大な米企業に対し、中国の代替先を即時に模索するよう命じる。 事業を米国に戻し、米国内で生産することも含まれる」とし、「われわれに中国は必要ない。 率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう。」とも投稿した。

トランプ大統領による中国からの撤退命令に法的拘束力はなく、実際にどのように米企業を中国から撤退させるかは不明。 専門家は、税制の変更や制裁などを通じ、中国における米事業を制限、縮小させることができるものの、プロセスは長期間を要する可能性があるほか、両国の経済に深刻な影響が及ぶ恐れもあるとした。 中国の締め出しについては、同国で事業を展開する米企業からの連邦政府調達を制限することが最も効果的な選択肢となり得る。 ただしボーイングやアップル、GM など、連邦政府の大型調達先で中国で幅広く事業を展開する企業が大きな痛手を被ることになるとみられる。

全米小売業協会 (NRF) は声明で、米国の小売業界が世界第 2 位の経済大国である中国から撤退することは現実的でないという見方を示した。 ホワイトハウスのナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)は、中国との貿易戦争が物価上昇や米国の景気減速を招くことはないとした上で、9 月の米中貿易交渉は予定通り実施されるという見方を示した。 トランプ氏は、米国で乱用が問題となっているオピオイド鎮痛薬「フェンタニル」についても、中国からの流入を阻止するため、宅配大手フェデックスやユナイテッド・パーセル・サービス (UPS)、ネット通販大手アマゾン・ドットコム、米郵政公社 (USPS) に対し配達を拒否するよう指示した。 (Reuters = 8-24-19)

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