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トランプ氏会見、対日赤字に不満 雇用創出を強調

トランプ次期米大統領は 11 日(日本時間 12 日未明)、大統領選後初の記者会見をニューヨークで開いた。 日本との貿易赤字に触れながら、雇用創出に力を入れる意向を示した。 「我々は雇用を作る。 神が創造したなかで最も偉大な雇用を作る人間になる。」 トランプ氏は記者会見で、最重要課題の雇用について、そう強調した。

トランプ氏は大統領選後、トヨタ自動車や米自動車大手フォード・モーターなどによるメキシコへの工場建設計画を、ツイッターで名指しで再三にわたり批判。 フォードなど一部企業が計画の見直しを発表した。 トランプ氏は「いくつかの素晴らしいニュースがあった」と「指先介入」の成果を自賛。 「外国から(米国に)物を売るなら、とても高い国境税を払うことになる」と警告した。 さらに、製薬や軍需産業に対しても介入を強める姿勢を示した。

トランプ氏は米国の貿易赤字の問題にも触れ、「我々の貿易協定は災難だ。 中国、日本、メキシコなどとの貿易赤字は数千億ドルにのぼる」と語り、日本との貿易赤字も問題視した。 トランプ氏は、国務長官に指名された米石油大手エクソンモービル前会長兼最高経営責任者 (CEO) のレックス・ティラーソン氏らに触れ、「米国は良い取引ができておらず、賢くて成功した人物が必要だ」と強調。 ビジネス経験が多い閣僚らを通じ、貿易などで有利な協定を目指す考えを示した。 その上で、トランプ氏は「ロシア、中国、日本、メキシコ、すべての国が、過去の政権下よりずっと我々を尊敬するようになるだろう」と話した。

トランプ氏が手がける不動産事業などについては「2 人の息子にまかせる。 彼らは私と相談しない。」と説明した。 (asahi = 1-12-17)


ロシア、トランプ氏に不利な情報取得と主張 = 米当局者

[ワシントン] トランプ次期米大統領に対してクラッパー米国家情報長官ら情報機関幹部が先週に説明を行った機密文書に、ロシアの諜報員がトランプ氏に関する不利な情報を取得したと主張しているとの指摘が含まれていた。 米当局者 2 人が 10 日夜、明らかにした。 オバマ現大統領とトランプ氏は先週、クラッパー長官、米連邦捜査局 (FBI) のコミー長官、中央情報局 (CIA) のブレナン長官、国家安全保障局 (NSA) のロジャーズ局長から、ロシアによる米大統領選への干渉に関する報告書について説明を受けた。

当局者によると、トランプ氏に関する情報の取得については報告書に添付された 2 ページの文書で示された。 当局者の 1 人はこの主張について「裏付けがない」としている。 トランプ氏はこれについて 10 日、ツイッターへの投稿で「うそのニュースだ。 完全に政治的な魔女狩りだ。」と述べた。 同氏の政権移行チームは現時点でコメント要請に応じていない。 当局者の 1 人によると、FBI などの機関が主張の信頼性や正確さについて確認作業を続けている。

トランプ氏に関する情報の取得は、英国の元諜報員が昨年、民主党や米当局者に提示した報告書に含まれており、米当局者はこの人物が過去に提供した情報は大半が信用できるとしている。 当局者の 1 人は、ロシアの実業家や、米情報アナリストがロシアの諜報員もしくはその指示で活動していると判断した人物とトランプ氏との金銭的・個人的関わりを示す情報について、これまでの調査で真偽は確認できていないとした。 また、元英諜報員が報告書で示した情報の一部は誤りであることが判明したと述べた。 FBI はコメントを控えた。

米情報当局者はロシアによる米欧での情報活動について、コンピューターネットワークへのサイバー攻撃やプロパガンダ、虚偽ニュースの拡散にとどまらず、実業界・政界リーダーの育成や重要人物に関する不利な情報の入手なども行っていると警鐘を鳴らした。 6 日に公表された米情報当局の報告書では、ロシアがプーチン大統領の指示で米大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン氏の信用を落とし、トランプ氏の当選確率を高めようとしたと指摘されている。 (Reuters = 1-11-17)


トヨタ、メキシコ新工場は撤回せず 米経済への貢献強調

トヨタ自動車の豊田章男社長は米デトロイトでの北米国際自動車ショーに 9 日昼(日本時間 10 日未明)登壇し、米国に今後 5 年で 100 億ドル(約 1 兆 2 千億円)を投資する、と述べた。 トランプ米次期大統領に批判されたメキシコ新工場は撤回しない方針。 米経済への貢献を強調し、計画への理解を求めた格好だ。

米国向け主力セダン「カムリ」の新型車の発表イベントで語った。 豊田社長は米国では開発や生産、販売にあたっている約 13 万 6 千人を雇用していると紹介。 「トヨタは過去 60 年で米国に 220 億ドルを投資してきた。 今後 5 年で 100 億ドルを投じる予定だ。 理由の一つは、米国でベストセラーとなっているカムリだ」と話した。 新型車の PR に織り込む形で、米経済に引き続き貢献していく姿勢を強調した。 (asahi = 1-10-17)

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トランプ氏のトヨタ批判ツイート、神通力に限界

[ニューヨーク] トランプ次期米大統領はツイッターへの投稿でトヨタ自動車に脅しをかけたが、これがトランプ氏ツイートのピークとなるかもしれない。 トランプ氏は 5 日、トヨタに対して、メキシコで生産したカローラを米国で販売するならば関税をかけると警告した。 しかし、トヨタ株の下げ幅は、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ (GM) より小幅だった。 これは、トランプ氏がトヨタに関して事実を誤認していることがすぐに判明したからだ。 こうしたケースが繰り返されればトランプ氏のツイートの神通力が落ちることは必至だ。

トランプ氏がこれまでにオンライン上もしくは集会の場で行った企業批判は、一定の効果が上がっているようだ。 GM、ロッキード・マーティン、ボーイングはトランプ氏から受けた要求に早急に対応。 フォードは今週、メキシコでの新工場の建設計画を撤回した。 トヨタのケースでは、メキシコ新工場で生産する年 20 万台のカローラに 35% の輸入関税が課せられると、1 台当たりの販売価格を 2 万ドルと仮定した場合、14 億ドルのコスト増要因となる。 これは、今年の予想利益の 10% 程度に相当し、トヨタか顧客が負担を迫られる。

ただ、これが現実のものとなる可能性は低い。 それはある非常に簡単な理由のためだ。 それは、トヨタのメキシコ工場はカナダ工場の代替となるのであり、米工場の代わりになるわけではないということだ。 米国向けのカローラ生産は引き続き同社のミシシッピ工場で行われる。 それに、トランプ氏はメキシコ工場の建設地をバハとしていたが、実際にはグアナファトだ。 こうした基本的な事実の間違いは、トランプ氏の支持者は気にしないかもしれない。 しかし、株主は今後、トランプ氏のパフォーマンスを鵜呑みにはせず、より具体的な事実に目を向けるようになるだろう。

トヨタを米アルコール飲料大手コンステレーション・ブランズと比較してみよう。 決算が好調な内容だったにも関わらず、コンステレーションの株価は 5 日、7% 超下落した。 コンステレーションは、海外コストを巡る減税措置が撤廃された場合、コスト増大に直面する可能性がある。 これは、議会共和党とトランプ氏が目指している税制改革の中核だ。 通商協定違反となりかねない関税よりも実施しやすい。 ソーシャルメディアを通じたトランプ氏の企業いじめは、終わらないだろうが、攻撃が的を外れ続ければ投資家は無視するようになる。 (Reuters = 1-9-17)

背景となるニュース

* トランプ次期米大統領は 5 日、ツイッターで、トヨタのメキシコ工場建設計画を批判した。 同氏は「トヨタはメキシコのバハに米国向けカローラの新工場を建設するそうだが、とんでもない。 米国に工場を建設するか、さもなければ多額の国境税を支払ってもらう。」と表明した。

* トヨタは実際には、バハではなく、グアナファトに新工場を建設する。 これに伴い、カナダ工場から生産を移管する。工場ではない。

* トヨタは現在、米国市場で販売しているカローラのすべてを、ミシシッピ州の同社の工場において生産している。

* トヨタの広報担当者は「消費者や自動車業界にとって最善の利益となるよう、トランプ次期政権と協力していきたい」とコメントした。

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トランプ氏のトヨタ批判、コメント控える閣僚 自動車産業擁護も

[東京] トヨタのメキシコ工場建設をトランプ米次期大統領が批判したことに対し 6 日午前、閣僚らは直接的なコメントを控える一方、日本の自動車産業は米国経済に貢献してきたと擁護する声が聞かれた。 トランプ氏は 5 日、ツイッターへの投稿で、トヨタが米国市場向けの自動車をメキシコの工場で製造するなら多額の税金をかけると警告した。 この発信に対し、閣僚からは、大統領就任前であり「コメントするのを差し控える(石原伸晃経済再生相)」、「現時点で予断を持ってコメントすることは控えたい(菅義偉官房長官)」と、踏み込んだ発言はなかった。

ただ、菅官房長官は「トヨタは米国にとって良き企業市民であろうと心掛けて、今日まで来ている」と発言。 世耕弘成経済産業相も日本の自動車産業は米国での現地生産を拡大するなかで、雇用など米国経済に多大な貢献をしてきたと指摘、「こうした努力と実績、これから日本の自動車産業が米国でどういうビジネスを展開していくかについて、幅広く理解を得ていくことが重要だ」と述べた。

麻生太郎財務相も「(トヨタは米国でも)大きな雇用を抱えてやっている」と述べた。 一方で「北米自由貿易協定 (NAFTA) の合意の中での話。 それをどう言われても、こちらとしてはどうしようもない。」との見方を示した。 トランプ氏は 20 日、大統領に就任するが、「いずれにしろ就任後、どのような政策を打ち出してくるか(菅官房長官)」、政府として注視していく考えだ。 (石田仁志、宮崎亜巳、竹本能文、梅川崇、Reuters = 1-6-17)


FCA、米国で 2 千人追加雇用へ トランプ氏発言意識か

欧米自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ (FCA) は 8 日、米国の 2 工場に 10 億ドル(約 1,170 億円)を投じ、約 2 千人を 2,000 年までに追加雇用すると発表した。 自動車産業に対してはトランプ次期米大統領が米国での雇用創出を強く求めており、これに応じた可能性がある。 ミシガン州とオハイオ州の 2 工場に新たに設備を入れ、「ジープ」ブランドの大型車の生産を増強。 現在はメキシコでつくっているピックアップトラックを米国内で生産する余力も生じるとしている。

FCA 最高経営責任者のセルジオ・マルキオンネ氏は「大型車の需要が高まる米国市場の動きに呼応したものだ」などとコメントした。 トランプ氏にメキシコ投資を批判されたトヨタ自動車の豊田章男社長は米デトロイトで 9 日(日本時間の 10 日未明)、北米国際自動車ショーに登壇する予定。 その発言内容に注目が集まる。 (asahi = 1-9-17)


駐日米大使に投資会社創設者 日本で勤務、手腕は未知数

トランプ次期米大統領はケネディ駐日大使の後任に、投資会社創設者のウィリアム・ハガティ氏 (56) を起用する意向を固め、日本政府に伝達していたことが 4 日、わかった。 同氏はトランプ氏の政権移行チームで政治任用の人選を担当するなど、信任も厚いとみられ、日本での勤務経験もある。 ハガティ氏は、経営コンサルタント会社ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、1996 年に投資会社ハガティ・ピーターソンを創設。 G. H. W. ブッシュ元大統領時代にホワイトハウスのスタッフを務めたほか、2012 年の大統領選では共和党候補のミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事の政権移行チームに加わるなど、同党内に人脈がある。

昨年 7 月にトランプ政権移行チームに参加し、約 4 千人の政治任用ポストを割り振る人選の責任者を務めている。 同氏は、ボストン・コンサルティング・グループ時代に 3 年間、上級駐在員として東京に 3 年間勤務した経験がある。 トランプ氏は選挙期間中、「駐日大使は、非常に重要なポジションだ。 なぜなら我々は日本と交渉しなければならない。 米国は、ビジネスの能力のない連中ばかり使っている。」と主張し、ケネディ大使を批判してきた。 「交渉役」として貿易や経済に強いハガティ氏を起用したとみられる。

ただ、日本勤務の経験があるとはいえ、同氏のアジア外交や安全保障分野での知識・手腕はまったくの未知数だ。 駐日大使人事をめぐっては、プロ野球の千葉ロッテマリーンズなどで監督を務めたボビー・バレンタイン氏や、オバマ政権で中国大使を務めたジョン・ハンツマン氏の名前が取り沙汰されていた。 トランプ氏はすでに駐中国、イスラエル両大使の起用を発表しており、近く駐日大使についても発表するとみられる。 (ワシントン = 佐藤武嗣、asahi = 1-5-17)


米フォード、メキシコ工場新設を撤回 トランプ氏は歓迎

米自動車大手フォード・モーターは 3 日、メキシコに新工場を建設する計画を撤回すると発表した。 トランプ次期米大統領は海外に生産拠点を移す米製造業の動きを再三批判しており、フォードの判断には同氏の意向が影響したとみられる。 発表によると、当初はメキシコに小型車を生産する工場を 16 億ドル(約 1,900 億円)で建設する予定だったが、これを取りやめる。 かわりに米ミシガン州内の既存工場に 7 億ドルを投じ、700 人の新たな雇用を創出するという。 マーク・フィールズ最高経営責任者 (CEO) は記者会見で、「トランプ氏による企業の成長を促す政策に後押しされた」と語った。

昨年 4 月、フォードが新工場建設の計画を発表した際、大統領選で共和党の候補者指名争いをしていたトランプ氏が「恥知らずだ」と同社を名指しで批判した。 フォードは今回の判断の背景に、トランプ氏による批判があったのかどうかは明らかにしていない。 ただ、トランプ氏は米企業がメキシコなどに生産拠点を移すことで米国内の多くの雇用が減っていると主張。 フォードをその象徴として扱い、繰り返し批判を浴びせてきた。 こうした発言に、同社は一定の配慮をみせたといえそうだ。

トランプ氏はフォードの発表を伝える米メディアのニュースのリンクを自身のツイッターに投稿して、歓迎の意を示した。 トランプ氏は 3 日、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ (GM) についても言及し、「メキシコでつくって輸入する小型車には、高い関税を払うべきだ」などとツイッターに書き込み批判している。 (ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 1-4-17)


孫正義氏、アップルに助け舟? トランプ氏と会談に臆測

ソフトバンクグループの孫正義社長が、トランプ次期米大統領に米国への投資と新規雇用を提案したのは、米アップルなどシリコンバレーの企業とトランプ氏の冷え切った関係の修復を狙った動きとの見方が出ている。

孫氏は 6 日、ニューヨークのトランプ・タワーでトランプ氏と会談し、米国で今後 4 年間のうちに 500 億ドル(約 5 兆 7 千億円)を投資し、5 万人の新規雇用を生み出すと提案。 詰めかけた記者団に、トランプ氏への説明用に持参した資料を掲げてみせた。 資料には、ソフトバンクと並んで台湾のフォックスコン(鴻海精密工業)の社名があり、ソフトバンクの投資分に加える形で同社も 70 億ドル(約 8 千億円)を投資すると記されていた。 ソフトバンクはアップルの iPhone (アイフォーン)の国内販売によって、鴻海はその製造を引き受けることで、それぞれ大きく成長してきた。 (大鹿靖明、asahi = 12-16-16)

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米アップル、ソフトバンク基金に出資か 米紙報道

米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)は 12 日、米アップルが、ソフトバンクグループが設立する予定の「10 兆円ファンド」に最大で 10 億ドル(1,150 億円)を出資する方向で協議していると報じた。

同紙は、関係者の話として「最終的に決まったことは何もない」としたうえで、アップルはファンドへの出資により、人工知能や IoT (モノのインターネット)など新興技術の動向を探る狙いがあるとしている。 両社は、ソフトバンクが 2008 年に日本でアイフォーン (iPhone) の独占販売を始めるなど、関係が深い。 ソフトバンクの孫正義社長は今月、ニューヨークでトランプ次期米大統領と会談し、10 兆円ファンドを活用して米国で今後 4 年間で 500 億ドル(約 5.8 兆円)規模の投資をする意向を伝えていた。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 12-13-16)

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トランプ氏、孫正義氏を「マサ」 面識なく会談直後に

ソフトバンクグループの孫正義社長は 6 日午後(日本時間 7 日未明)、トランプ次期米大統領とニューヨークのトランプ・タワーで会談した。 孫氏は会談後、米国の新興企業などに総額 500 億ドル(約 5 兆 7 千億円)を投資し、約 5 万人の新しい雇用をつくると約束したことを明らかにした。 孫氏はトランプ氏と約 45 分間にわたって会談。 会談終了直後にトランプ氏は、ツイッターで孫氏が示した投資と雇用創出についての計画を紹介。 さらに孫氏をファーストネームで呼び、「マサはわれわれが選挙で勝たなかったら、この投資を決してしなかっただろうと言ってくれた」と連続でツイート。 自身の手腕が大規模な投資を呼び込んだとアピールした。

会談後、両氏はそろってトランプ・タワーのロビーに登場し、トランプ氏が孫氏を見送った。 孫氏は日米記者団に対し、「トランプ氏は積極的に規制緩和を推進すると話していた。 私はそれはすばらしいことだと思っており、もう一度ビジネスをする国として米国にチャンスがやってくると考えている。 米国は再び偉大になる。」と述べた。 孫氏はトランプ氏と面識はなく、共通の知人を介して、最近面会を申し込んだところ実現したという。 (ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 12-7-16)


トランプ氏「一つの中国なぜ?」 米中関係の原則に疑問

トランプ次期米大統領は 11 日放送の FOX テレビの番組で、中国大陸と台湾がともに「中国」に属するという「一つの中国」原則について「なぜ我々が縛られなければならないのか」と疑問を呈した。 37 年間、米中関係の基礎となってきた同原則の見直しの可能性を示唆した。 中国政府は台湾を国家として認めておらず、「一つの中国」の原則を守るように米側に求めている。 トランプ氏はこれを順守するかどうかは、中国の為替政策や南シナ海問題、貿易政策などの対立する分野を挙げて「中国側が我々と取引をするかどうかにかかっている」と述べ、来年 1 月の就任後、中国政府との外交交渉の手段として利用していく考えを示した。

トランプ氏は 2 日、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統と電話会談。 米中国交正常化に伴って米国と台湾が断交した 1979 年以来、米国の大統領や次期大統領が台湾総統と接触したことが公になるのは初めてで、中国が抗議していた。 これについてトランプ氏は「一つの中国」政策について「完全に理解している」と強調し、「会話は短時間で、祝辞を受けた。 電話を取らないのは失礼だ。」と述べた。 その上で、電話会談の報告を受けたのが「1、2 時間ほど前」だったと認め、側近の勧めで応じたことを明らかにした。

会談後、ペンス次期副大統領は米国の中台政策に変更はないと強調していたが、トランプ氏が再考を示唆したことで中国側がさらに反発するのは必至だ。 (ワシントン = 峯村健司、asahi = 12-12-16)


トランプ次期大統領 中国大使に習主席の知人を指名

アメリカのトランプ次期大統領は、新しい中国大使に習近平国家主席と長年にわたって個人的な関係を築いてきたブランスタド・アイオワ州知事を指名すると発表し、経済分野を中心に中国との関係を強化したい狙いです。

トランプ次期大統領は、7 日、新しい中国駐在の大使に中西部アイオワ州の知事を務める共和党のテリー・ブランスタド氏を指名すると発表しました。 ブランスタド氏は現在 70 歳。 アイオワ州の出身で、1983 年から 4 期 16 年、州知事を務めた後、2011 年に再び州知事に就任し現在、6 期目。 アメリカで最も任期の長い州知事として知られています。

アメリカメディアによりますと、ブランスタド氏は 30 年余り前の 1985 年に、当時、河北省の農村部の幹部としてアイオワ州を訪れた習近平氏と出会ったということです。 習主席は 4 年前に中国の最高指導者に就く直前に国家副主席として訪米した際にもアイオワ州を訪れています。 その際にはブランスタド氏が夕食会を行うなど、両者は交流を続けていて、ブランスタド氏は習主席を「古い友人」だとしています。

今回の指名についてトランプ氏は、「習主席をはじめ中国の指導者と長年にわたる関係があり、申し分のない人物だ」としています。 米中関係をめぐって、トランプ氏は先週、長年の慣例を破って、正式な外交関係のない台湾の蔡英文総統と電話で直接会談し、今後の中国との関係を懸念する声も出ています。 こうした中、トランプ氏は、中国の最高指導者と長年にわたって個人的な関係を築いてきた人物を中国大使に起用することで経済分野を中心に関係強化を目指す狙いがあるものと見られます。

「うれしく受け止めている」

中国外務省の陸慷報道官は 8 日の定例の記者会見で、「ブランスタド氏は古くからの中国国民の友人で、長年、米中間の交流や協力を推し進め、大きな貢献をしてきた。 今回のことは、もちろんうれしく受け止めている。」と述べ、歓迎しました。 一方で、中国にとってよいサインと受け止めているかという質問に対して、陸報道官は「トランプ次期大統領が、どのような考えで中国駐在大使などを選んで指名するのかは、トランプ氏と政権移行チームに聞いてほしい」と述べるにとどまりました。 (NHK = 12-8-16)


米カリフォルニア州、移民保護法案提出 トランプ氏に対抗

[サクラメント(米カリフォルニア州)] 米カリフォルニア州議会で多数派を占める民主党が 5 日、不法移民の強制送還などを掲げるトランプ次期米政権の取り組みから州内の移民を守る法案を提出した。 来年 1 月 20 日のトランプ新大統領就任を前に、同氏の政策に対抗する姿勢を早くも打ち出した。 法案は、強制送還に直面する移民の弁護士費用を賄う基金を設置するとともに、刑事訴訟を専門とする弁護士に移民法の教育を提供する内容となっている。

カリフォルニア州には人口の約 7% に当たる 270 万人以上の不法移民が居住する。 11 月 8 日の大統領選では民主党のヒラリー・クリントン候補の得票率がトランプ氏を 28% ポイント上回り、民主党支持が際立った。 州議会も民主党が上下両院で 3 分の 2 の議席を占めている。 (Reuters = 12-6-16)


トランプ氏、中国を批判 南シナ海・為替操作

【ワシントン = 吉野直也】 トランプ次期米大統領は 4 日、中国が南シナ海に人工島を造成し軍事複合施設を建設していることをツイッターで批判した。 「中国は我々に南シナ海の真ん中で大規模な軍事複合施設を建設していいかどうか了承を求めたのか。 私はそうは思わない。」と断じた。 大統領選勝利後、トランプ氏が南シナ海問題について考えを示すのは初めて。 国際法を無視し軍事的な影響力を拡大する中国を真っ向から非難したものだ。 オバマ政権は中国の南シナ海での海洋進出に「弱腰」で有効な手立てを打てず、同盟国などには不満がある。

トランプ氏に南シナ海での人工島造成を事実上否定された中国の出方が注目される。 トランプ氏は 2 日に台湾の蔡英文総統と電話で協議。 米大統領や次期大統領と台湾総統のやり取りが公表されたのは 1979 年の米台断交以来初だ。 中国は反発している。 「了承を求めたのか」とする今回の対中批判は意趣返しともみられる。

トランプ氏は中国の為替操作にも言及。 「通貨の価値を下げることや(米国が中国に課税していないのに)中国に入る我々の製品に重い税金をかけることも我々に了承を求めたのか」と非難した。 トランプ氏の対中国への強硬姿勢の背後には米国内の親台湾派の存在がささやかれ、トランプ次期政権と中国の関係が緊張する可能性がある。 (nikkei = 12-5-16)


「歴史的な均衡を破る挑発だ」 トランプ氏の電話外交、アメリカ政界を揺るがす

アメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏は 12 月 2 日、正式な外交関係がない台湾の蔡英文総統との電話会談を行った。 アメリカ大統領や次期大統領が台湾の総統と会談するのは、1979 年にアメリカが台湾と断交して以来、30 年以上の歴史で初めてのことだ。 トランプの政権移行作業チームが発表した電話会談の内容によると、蔡総統はトランプ氏の勝利を祝福し、2 人は「台湾とアメリカの間には緊密な経済的、政治的、安全保障関係がある」ことについて話した。

今回の電話会談は、その会話がアメリカとその最も重要な世界規模の貿易相手国である中国との 30 年に及ぶ関係を揺るがす可能性がある。 アメリカと国際社会のほとんどは、台湾に対して主権があるという中国の主張を認めている。 しかし台湾には自国の選出による政府、憲法、軍隊があり、自らを独立国家とみなしている人たちもいる。 トランプ氏の会談は中国を激怒させ、そしてトランプ氏の就任前にアメリカと中国との関係を損なう可能性がある。

ホワイトハウスのアメリカ国家安全保障会議 (NSC) の元アジア担当イヴァン・メデイロス氏は 2 日午後、フィナンシャル・タイムズに「中国の指導部はこの問題を、歴史的な均衡を破る挑発だという見方をしている」と語った。 「それが故意か偶発的かに関係なく、この会談はトランプ氏の戦略的意図に対する中国の見方をネガティブなものへと根本的に変えるだろう。 このような動きによって、トランプ氏は米中関係に不信と戦略的競争を促す長期的な土台を築いている。」

ニューヨークタイムズによると、ホワイトハウスや国務省には事前に会談の知らせはなかったという。 トランプ氏は 2 日夜、蔡氏が電話をしてきたとツイートした。 「台湾総統が今日私に電話をかけてきて、大統領選での勝利をおめでとうと祝福してくれた。 ありがとう!」 (Christina Wilkie、The Huffington Post = 12-4-16)


企業の海外移転には「報復」 トランプ流取引に戦々恐々

トランプ次期米大統領は 1 日、インディアナ州の空調機器大手キヤリアを訪れ、メキシコへの工場移転の計画見直しで合意したと発表した。 個別企業への異例の政治介入で、就任前から「成果」をアピールした。 海外に移転すれば高関税による報復措置を受けると警告しており、主要企業は戦々恐々としている。 「1,100 人の雇用を守ることができた。 とても素晴らしい。」 トランプ氏はキヤリアの従業員を前にそう自賛した。 減税や規制緩和を進めることで、「企業はもう米国を離れない」と強調した。

今回の合意は、「ディール(取引)」を好むトランプ氏流の手法がうかがえる。 同社は、ペンス次期副大統領が知事を務める同州から 10 年間で 700 万ドル(約 8 億円)の税優遇などを受ける見返りに移転計画を見直し、今後 1,600 万ドル(約 18 億円)を投資することになった。 同社は「千人以上の従業員の雇用を維持する」と説明する。 しかし、従業員が加盟する全米鉄鋼労働組合 (USW) 支部のチャック・ジョーンズ組合長は「実際に維持されるのはもっと少なく、600 人分の仕事はメキシコに移る。 親会社は軍にも納入しており、それも交渉材料に使われた。」と話す。

キヤリアは 2 月、この工場を閉鎖してメキシコに拠点を移す計画を発表。 これに対し、トランプ氏は選挙中、再三にわたり同社を名指しで批判した。 トランプ氏は 1 日の工場での演説で、キヤリアの親会社で航空・軍需などの複合企業ユナイテッド・テクノロジーズのグレッグ・ヘイズ最高経営責任者 (CEO) に約 1 週間前に電話をかけ、交渉したことを明らかにした。 (インディアナポリス = 五十嵐大介、ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 12-2-16)


トランプ氏、空調大手の国外移転阻止へツイート

【ニューヨーク = 中西豊紀】 米国の祝日にあたる感謝祭の 24 日、トランプ次期米大統領は「米キヤリア社が米国(インディアナ州)に残留するよう私はがんばって働いている。 進展はある。」との発言を朝からツイートした。 キヤリアは 2019 年にメキシコに空調機器の生産を移す計画だが、トランプ氏はこの阻止を米国民に改めて公約した。

エアコン大手のキヤリアは今年 2 月、インディアナ州の工場を閉鎖して労賃の安いメキシコに生産を移す方針を発表している。 約 1,400 人の雇用が犠牲になるため地元自治体や労組が反発。 国内雇用の重視を掲げるトランプ氏も選挙中から「私が大統領になったらキヤリアは計画撤回を電話で伝えてくる。 100% 保証する」と同社をやり玉にあげてきた。 具体的な結論についてはトランプ氏は同日「じきに分かる」とツイート。 キヤリアはその直後に「次期政権とは議論を続けている。 現時点で発表できることはない。」との声明をツイートした。 これまでのところキヤリアは 17 年から移転手続きを始めるとしている。

キヤリアの計画はフォード・モーターのメキシコ生産移管とあわせ「大企業の国外流出」の象徴としてトランプ氏が非難してきた。 だが、個別の民間投資への政治介入は自由主義を原則とする米国では異例といえる。 キヤリアを誘致したメキシコ政府にとっても想定外の事態だ。 インディアナ州はトヨタ自動車など製造業の集積で知られ、トランプ氏を支えるペンス次期副大統領は同州の知事をつとめている。 ペンス氏は 24 日、「この休日はインディアナ中の家族にとって特別なものだ。 皆さん、よき感謝祭を。」とする定例のツイートを流した。 トランプ氏は感謝祭の期間中、フロリダ州の別荘で家族らとともに過ごしているとされる。 (nikkei = 11-25-16)


日本、懸念募らせ駆け付けた? トランプ会談で米報道

トランプ次期米大統領と安倍晋三首相との 17 日の会談は、トランプ氏が当選を決めた後、初の外国首脳との面会とあって米国でも盛んに報じられた。 選挙戦で在日米軍基地への負担増や日本の核保有容認などに触れてきたトランプ氏のもとに、懸念を募らせた日本が駆け付けた、というトーンが目立つ。

ロイター通信は「日本の外交と安全保障の核である同盟の将来の強度に、日本の指導層が神経質になる中での会談」と伝えた。 同盟国への米軍経費の負担増要求、日本の核保有容認の示唆、環太平洋経済連携協定 (TPP) への反対姿勢などのトランプ氏の公約に対し、安倍首相や他のアジアの指導者は「恐れを抱いている」と指摘。 特に TPP は、安倍首相の経済改革の「大黒柱」だとした。

CNN は、渡米前に安倍首相が「他の世界の指導者に先駆けて次期大統領に会えることを光栄に思う」と記者団に語ったと紹介。 トランプ氏が核保有の容認を示唆したことは、日本にとって「開いた口が塞がらないほどの驚きだった」と指摘したうえで、就任前の早い時期に会談が設定された理由は、日米同盟の今後への日本側の懸念があるとの専門家の談話を伝えた。

ニューヨーク・タイムズ紙は、TPP などで強い姿勢で臨むべきだとの官僚からの助言を安倍首相が拒絶し、個人的な信頼構築を優先したとの見方を紹介。 9 月の訪米時に民主党候補のクリントン氏とだけ面会したことがトランプ氏との関係構築を難しくすると、安倍首相が心配したからではないかとの見方が専門家から出ている、と指摘した。 AP 通信は、自衛隊の役割拡大を模索する安倍首相の姿勢は、同盟国に負担増を求めるトランプ氏と一致すると指摘している。 (ニューヨーク = 金成隆一、asahi = 11-19-16)


「トランプ」ボイコット 衣料ブランドやマンション看板まで

【ニューヨーク = 高橋里奈】 トランプ次期米大統領に対し、デモ以外にも抗議運動が広がっている。 トランプ氏や長女のイバンカさんの衣料ブランドを販売したり、支持したりした約 50 社へのボイコットの呼びかけが交流サイト (SNS) で拡散している。 ニューヨークのマンション「トランプ・プレイス」は 16 日、住人の要請で「トランプ」の文字を取り除いた。 トランプ・プレイスは 1990 年代にトランプ氏が他の投資家と開発した高級物件。 数百人の住人から「トランプの名前を外して」との請願が集まり、16 日に看板を撤去した。

米メディアによると、建物に卵が投げつけられる事件もあった。 マンションを所有・運営するエクイティ・レジデンシャルのマーティ・マッケナー氏は「より中立的なビルにして、現在と未来のすべての住人にアピールすることを目指す」と語った。 トランプ氏は 2005 年に所有権を売り渡している。 「#グラブ・ユア・ウォレット(あなたの財布をつかんで)」という合言葉で、ツイッターでトランプ一家のビジネスに関係する企業のボイコット呼びかけも広がる。 合言葉はトランプ氏の女性に関する下品な過去の発言をもじったものだ。 (nikkei = 11-17-16)


中国、「トランプ氏が 45% の関税をかけるなら iPhone は売れなくなる」と機関誌で牽制

次期アメリカ大統領のトランプ氏は選挙中に、「中国からの輸入品に対して 45% の関税をかける」などの経済政策を掲げていました。 今後トランプ氏の中国に対する経済政策が実行されるかが注目されているわけですが、中国共産党の機関誌の国際版である「環球時報」で「トランプ氏が中国に対して貿易戦争を仕掛けるなら iPhone の販売台数は減少し、野菜などの輸入を停止する」と、トランプ氏に対する牽制とも取れる記事が投稿されました。

大統領選挙戦中にトランプ氏は「中国が人民元の対ドル市場を不正に低水準に保っている」として、中国を為替操作国として認定し、対抗措置として中国からの輸入品に 45% もの関税をかけるという経済政策を主張してきました。

トランプ氏が大統領就任後にこの政策を実行するかどうかは、中国の経済にも大きな影響を与える決定となるわけですが、中国当局の機関誌では「トランプ氏は中国に対して貿易戦争を仕掛けるのか?」という記事の中で、「もし経済政策が実行されれば、中国は報復的アプローチを取るでしょう。 飛行機の発注はアメリカのボーイングからヨーロッパのエアバスに置き換えられ、アメリカの自動車と iPhone の売上は転落し、大豆とトウモロコシの輸入は停止するでしょう。」と述べています。

また、「賢明なビジネスマンの経歴を持つトランプ氏はそこまで認識が甘い人物ではない」とトランプ氏に対しても触れています。 なお、2015 年末までの中国国内では 1 億 3,100 万台もの iPhone が使われていると試算されており、Apple は Samsung や Xiaomi などを押しのけて中国国内でトップレベルのシェアを維持しています。 (Gage Skidmore、Gigazine = 11-16-16)


トランプ氏、FRB 議長と「意外な蜜月」の可能性

[セントルイス/リッチモンド] 次期大統領に就任するドナルド・トランプ氏とイエレン米連邦準備理事会 (FRB) 議長が意外にも、少なくとも短期的には協調して経済政策を運営していく展開になりそうだ。 雇用と賃金を押し上げる「高圧経済」を支援する FRB の方針に沿った形で次期政権が動いているためだ。 トランプ氏は選挙運動期間中、イエレン議長が政策金利を低く目に据え置いて民主党政権に肩入れしていると批判していた。

だがトランプ次期米大統領の経済顧問を務めるデービッド・マルパス氏は 10 日、米医療保険改革法(オバマケア)の廃止や通商政策の修正、税制改革などの選挙公約を優先的に進めることになる新政権は、FRB 議長の人事には当面、手を付けないとの見解を示した。 パルマス氏は CNBC のインタビューで「FRB は独立している」と指摘、「FRB からは離れて、早期に変更する必要がある他の政策についてもっと協議すべきだと思う」と述べた。

一方で FRB 当局者からは、共和党の次期政権が一枚岩となって新たなインフラ支出や規制改革が実行されるとの見通しから、新政権を前向きに評価する発言が相次いでいる。 FRB 当局者はこれまで長い間、米政界のこう着状態により長期的な経済成長見通しを改善できる決定が妨げられてきたと不満を抱えていた。 だが連邦議会の上下両院で共和党が過半数を確保したことで、トランプ氏は任期中の時間を米経済を抜本的に立て直すために使う機会を確保したのだ。

セントルイス地区連銀のブラード総裁は 10 日、記者団に対し、大統領選と連邦議会選の結果により「経済の運営をめぐり主要な不満要因となっていたワシントンでのこう着状態が解消されることは確かだ」と述べた。 シカゴ地区連銀のエバンス総裁も「生産的な」インフラ投資が行われるとの見通しは「朗報だ」と語った。 イエレン議長は先月、2008 - 09 年の金融危機で受けた打撃により、FRB には投資や雇用、賃金を押し上げるために、インフレが加速するリスクを伴う「高圧経済」政策を推進することが求められる可能性があるとの見方を示した。

トランプ氏の大型減税やインフラ支出の計画は、米経済が深刻な停滞局面に突入したと FRB が判断した場合に必要となる可能性のある政策だ。 FRB のブレイナード理事が表明しているハト派的な見解とも一貫性がある。 また FRB 当局者は幅広く、米国と世界の経済は、特に長期的に生産性を押し上げるプロジェクトに重点を絞り込んだ公共投資の拡大により恩恵を受ける可能性があるとの見方を示している。 金融政策の効果には限界があり、景気を支援するには政府の取り組み強化が必要とも主張している。

こうした政府の取り組みは、インフレを押し上げるとともに政策金利を着実に引き上げていく余地をもたらすことで、FRB 自身が抱える問題を解決する支援となり得る。 FRB は将来、景気後退に量的緩和などの非伝統的な手段で対処するよりも伝統的な金融政策で対応できるようにするため、政策金利を是が非でも引き上げておきたい意向だ。 一方でトランプ氏としては、金融政策を緩やかに変更する FRB の方針により、賃金上昇と雇用拡大という効果を確保できる可能性がある。

だが、こうしたトランプ氏と FRB の蜜月関係や、共和党指導部間のまとまりさえも、短命に終わる可能性がある。 トランプ氏の経済政策の方針は、下院のライアン議長が好ましいと考えている保守的な財政運営とは相反する内容だ。 そして仮にトランプ氏の通商政策などが理由でインフレが急速に上昇すれば、FRB は予想よりも速いペースで利上げしなければならなくなり、トランプ氏が公約していた雇用の拡大と賃金の上昇を抑える可能性が出てくる。 リッチモンド地区連銀のラッカー総裁は、政府が財政刺激策を実施すれば利上げの「より急速な道筋が見えてくると思う」と述べた。 (Reuters = 11-13-16)

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