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人民元、11 年 5 カ月ぶり安値更新 基準値は 8 日続落 一時 7.07 元台

【香港 = 木原雄士】 中国の通貨・人民元は 12 日の上海外国為替市場で一時 1 ドル = 7.0707 元まで元安・ドル高が進み、2008 年 3 月以来、11 年 5 カ月ぶりの安値を更新した。 中国人民銀行(中央銀行)は 12 日朝、取引の目安となる基準値を 7.0211 元に設定した。 基準値としては 8 営業日続けての元安。 当局が緩やかな元安を容認しているとの見方が一段と強まった。

中国本土市場の元相場は 1 日あたり基準値から上下 2% の範囲で変動する仕組み。 上海市場では基準値よりも元安水準の取引が続いており、人民銀も市場実勢にあわせて基準値を徐々に元安にしてきた。 上海市場の 12 日の終値は 1 ドル = 7.0679 元だった。 中国本土以外のオフショア人民元は 12 日、一時 7.1 元台まで元安・ドル高が進んだ。 (nikkei = 8-12-19)


中国、米農産品の購入停止 = 人民元安でも反撃 - トランプ氏「重大違反」

【北京、ワシントン】 中国商務省は 6 日未明、中国企業が米農産品の購入を一時停止したと発表した。 トランプ米大統領が中国からの輸入品ほぼすべてに制裁関税を拡大する「第 4 弾」を 9 月に発動すると表明したことへの対抗措置。 中国当局が 11 年ぶりの人民元安水準を容認したことと合わせて、トランプ氏は強く反発し、新たな制裁として中国を「為替操作国」に認定した。

米中双方が制裁と報復を繰り返す「貿易戦争」の泥沼化に歯止めがかからず、輸出促進のため自国通貨を切り下げる「通貨安競争」に発展するとの懸念も広がり、5 日のニューヨーク株式市場の下げ幅は今年最大となった。 トランプ氏は 1 日、中国政府が 6 月末の米中首脳会談で米農産品の大量購入を約束したのに対応が不十分だとして、9 月 1 日から対中追加関税を拡大する方針を示した。 これに対して中国国営新華社通信は 6 日、貿易戦争の「一時休戦」を決めた首脳会談での合意に「著しく違反している」と批判。 8 月 3 日以降に買い付けた米農産品に報復関税を課す可能性を排除しないとも伝えた。

中国による米農産品の購入停止は、来年の米大統領選を前に農家の支持獲得を狙う与党・共和党にとって打撃となる。 トランプ氏は、5 日の外国為替市場で人民元の対ドル相場が 11 年ぶりの安値を付けたことを「為替操作だ」とツイッターで非難。 中国当局が輸出に有利な元安を容認しているとして、「重大な違反行為で、中国をいずれ著しく弱体化させることになる」と警告した。 (jiji = 8-6-19)


米、中国を為替操作国に指定 圧力を強化

【ワシントン = 鳳山太成】 米財務省は 5 日、経済制裁の対象となる「為替操作国」に中国を指定したと発表した。 中国の通貨・人民元の対ドル相場が 1 ドル = 7 元台に下落したことでトランプ大統領が「為替操作だ」と批判を強めていた。 貿易問題で行き詰まるなか、圧力を強める新たな交渉カードを切った形だ。 中国の反発は必至で米中対立の激化は避けられない。 ムニューシン財務長官は声明で「ここ数日、通貨切り下げのための具体的な措置を取った」と指摘。 「中国の目的は国際貿易で不公正な競争優位を得るためだ」と断じた。 20 カ国・地域首脳会議(G20 サミット)参加国による「競争的な通貨切り下げの自制」の約束にも反していると批判した。

米国が中国を為替操作国に認定するのはクリントン政権以来となる。 今後は「中国の為替レートなどの透明性を高めるよう促す」方針だ。 国際通貨基金 (IMF) とともに対処するとしている。 具体的な制裁には言及していない。 為替操作国への指定は、米政権が温存してきた強力な交渉カードの 1 つだ。 トランプ氏は 2016 年の選挙戦で「中国を為替操作国に指定して 45% の関税を課す」との公約を掲げたが、実行は見送ってきた。 財務省は 19 年 5 月下旬に発表した半期ごとの為替報告書でも、中国を操作国に含めなかった。

ここに来て為替操作国の指定に踏み切ったのは、中国との貿易交渉が暗礁に乗り上げたためだ。 1 日には、ほぼすべての中国製品に制裁関税の対象を広げる「第 4 弾」を 9 月 1 日に発動すると表明した。 立て続けに強硬策を打ち出すことで、中国から譲歩を引き出す狙いがあるとみられる。 トランプ氏は 2018 年 7 月以降に課した米国の制裁関税の影響を和らげるため、中国が人民元安を容認して輸出を支えてきたとみなす。 5 日の人民元安を受けて「中国は不公正な貿易慣行や為替操作で米国から巨額のお金を受け取り続けるつもりだ」との認識を示し、中国への不満をあらわにしていた。 (nikkei = 8-6-19)


米大統領、対中追加関税第 4 弾を発表 : 識者はこうみる

トランプ米大統領は 1 日、3,000 億ドル相当の中国製品に対し 10% の制裁関税を課すと発表した。 9 月 1 日に発動する。 閣僚級の米中通商協議が 7 月末に再開したものの、進展が見られないことが背景にあり、貿易摩擦が再び悪化する恐れがある。 市場関係者のコメントは以下の通り。

  • 三井住友 DS アセットマネジメント シニアストラテジスト 市川雅浩氏

    9 月の米中会合に向けて、貿易協議は順調に進んでいるという認識があった。 マーケットにもあまり緊張感がないなかでの対中追加関税第 4 弾の発表は、サプライズだった。 しかし、強硬姿勢は自国の経済が好調のときに強まりやすい。 トランプ大統領の頭のなかには大統領選があるなか、7 月の米国株は最高値を更新した。 選挙を視野に入れた通商政策と考えると、サプライズではないのかもしれない。

    日本株への影響は大きい。 前回 5 月のゴールデンウィーク中の関税率引き上げを受けたあと、日経平均の低迷が続いている。 4 月 24 日の年初来高値 2 万 2,362 円 92 銭への回復に時間がかかっているなか、9 月に対中追加関税率の引き上げが実施されれば、さらに株価の低迷期が長引いてしまうおそれがある。 日経平均 2 万 1,000 円台に踏み留まればと思うが、106 円台まで円高が進行していると、2 万 1,000 円割れのリスクを視野にいれておく必要がある。 前週から半導体市況の回復が期待され、明るい兆しが見えていた分、半導体、製造装置、電子部品、工作機械への影響が大きいと考えられる。

  • 三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏

    過去 2 日の株式市場では、31 日に米連邦準備理事会 (FRB) のパウエル議長が今後の緩和措置に距離を置く発言をしたことや、1 日にトランプ大統領が対中関税第 4 弾を 9 月に発動すると表明したことで、株売りとなった。 しかし、より長い目でみれば、対中関税発動が決まったことで、米国が金融緩和サイクルを開始せざるを得なくなるとの見方が市場に根付いていくことが予想され、利下げ織り込みに伴う株価維持、もしくは上昇という経路は保たれるとみている。

    外為市場では、緩和継続がもたらす株価下支え効果により、金利低下に伴うドル売りは打ち消される。 実際、主要 6 通貨に対するドル指数 .DXY は現在 98 前半と 2 年 3 カ月ぶりの高水準にある。 米国の金融政策が株価維持のためにあり、米政権が「株高」と同時に通商上有利な「弱いドル」を望むのだとすれば、後者は金融政策以外のツールで達成を目指すべきだろう。 ドルの下落を促すには、ドル売り介入の実現性を考慮することのほうが重要となってくる。

    FRB は 31 日の米連邦公開市場委員会 (FOMC) で、トランプ大統領からの大幅利下げの圧力を最低限に留めたものの、圧力に屈して利下げを行った。 今後もこの構図が継続することは明らかだ。 来年の大統領選まで、大統領の要請に応え続けるために FRB が利下げの理由を探すとすれば、それは本末転倒であり、後々振り返ったとき、今回の利下げは中立性を重んじる FRB の歴史に汚点を残すことになるだろう。

  • みずほ証券のチーフ債券ストラテジスト、丹治倫敦氏

    トランプ大統領の過去の傾向をみると、株価が高値水準に維持されているときは対中姿勢を硬化させやすく、株価が崩れると軟化しやすい。 今回の米連邦公開市場委員会 (FOMC) 後の株価はそれなりに値持ちがよかったので、強硬姿勢に打って出たのではないか。 ただ、昨年末や今年 5 月に市場がリスクオフになった際は、米連邦準備理事会 (FRB) がハト派化し株安を金利低下で抑制することができたが、今回は難しいだろう。 すでに FRB は利下げを開始しており、これ以上のハト派化は容易でないためだ。 本格的な利下げサイクルに入ってしまえば、副作用も大きくなりかねない。

    このため、過去のリスクオフ局面に比べ今回は金利低下しにくく、株は下がりやすいと予想している。 株価が急落し、景気後退の可能性が高まればトランプ大統領の対中姿勢が和らぐ可能性もあるが、いずれにせよ不透明感が強まったことに変わりはないだろう。

  • インバーネス・カウンセル(ニューヨーク市)の首席投資ストラテジスト、ティム・グリスキー氏

    米連邦準備理事会 (FRB) は通商問題の解決を望んでいたが、全く進展がないことが確実に示された。 関税措置は経済のためにならない。 消費者のためにもならないし、企業のためにもならない。 FRB は対中追加関税発動が経済に及ぼすマイナスの影響を相殺するために、次回 9 月の連邦公開市場委員会 (FOMC) で追加利下げを決定する公算が大きい。

  • ジョーンズトレーディング(コネティカット州)の主任市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏

    追加関税が貿易や世界経済に良くないのは当たり前だが、どうもこれはトランプ米大統領による貿易戦争という名のパウエル米連邦準備理事会 (FRB) 議長いじめのように思える。 市場は好感しないだろう。 いずれにしても、状況がさらに悪化したことは間違いない。

    5 月初めの時点で、われわれは米中が 5 月 10 日までに妥結すると見込んでいた。 それから時間が経ち 8 月に入ったが、今やほぼすべての中国製品に関税がかけられようとしている。 今回の関税対象にはアップルの iPhone なども含まれる。 関税の影響は小売業界も直撃しており、追加関税は世界経済にとって摩擦の拡大でしかない。 市場は事態の好転を期待していたのに、実際の状況は悪化の一途をたどっている。 今後リスクオフ取引が広がると予想される。

  • メリル・アンド・バンク・オブ・アメリカ・プライベートバンク(ニューヨーク)の投資部門責任者、ジョーセフ・キンラン氏

    米中貿易戦争の停戦が引っ込められたとみられることが最大の問題で、これが市場に対する衝撃となった。 この問題はシステミックなものであるとの認識が市場に広がった。 先行き見通しが悪かった中で、さらに先行き不透明感が高まった。 市場は先行き不透明感を好まず、不確実性という点では寝耳に水だった。

  • アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏

    関税を巡る激化はさほど驚きではない。 経済と国家安全保障の両面を考慮すると、今週の通商協議で期待された最も良い展開は停戦であり、緊張が高まる可能性は十分にあった。 来年の米大統領選が近づくにつれ、中国が現在の時間稼ぎ姿勢を強める可能性は高い。 一方、これにより追加関税のほか、他の経済・投資面における規制の可能性は高くなるだろう。 また米連邦準備理事会 (FRB) に一段のプレッシャーを与え、政権や市場の圧力に屈することも想定される。 (Reuters = 8-2-19)


「米は追加関税課さず」新華社が報道

米国のトランプ大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は 29 日の首脳会談で、2019 年 5 月に事実上決裂した貿易協議を再開することで一致した。 国営新華社が伝えた。 新華社によると、米中は公平かつ相互尊重の基礎の上に貿易協議を再開する。 「米国は中国製品に新たな追加関税をかけない方針を表明した」と報じた。 中国国営中央テレビも 29 日、同日の米中首脳会談で米中が貿易協議を再開することで合意したと報じた。 トランプ氏も米中首脳会談に続いて開いたトルコとの首脳会談の冒頭で、「(両国関係は)再び軌道に戻った」と語った。

米中首脳は 29 日、大阪市内で会談した。 両首脳は昼前から約 1 時間にわたって会談。通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への米商務省による制裁や、北朝鮮の核開発問題を巡っても意見を交わしたとみられる。 会談終了後、トランプ氏は「すばらしい会談だった。 予想を上回る結果だった。」と記者団に語った。 会談は 2018 年 12 月にアルゼンチンのブエノスアイレスで会談して以来、約 7 カ月ぶりとなった。

会談の冒頭でトランプ氏は「公正な貿易を実現できれば、米中は歴史をつくることができる」と述べた。 習氏は「中国と米国は協力すれば共に利益を得られ、戦えば共に傷つく」とし、「両国関係を発展させる根本的な問題について意見を交わしたい」と語った。 会談には、米国側からライトハイザー米通商代表部 (USTR) 代表、ムニューシン財務長官、ポンペオ国務長官、ナバロ大統領補佐官(通商担当)らが出席した。 中国側は貿易協議の責任者を務める劉鶴副首相のほか、外交担当トップの楊潔チー共産党政治局員、何立峰国家発展改革委員会主任、鍾山商務相らが出席した。 (nikkei = 6-29-19)


米政府、中国の監視関連企業 5 社のブラックリスト掲載を検討

→ 曠視科技、杭州海康威視数字技術、浙江大華技術などを掲載の可能性
→ リストに掲載されれば許可なしでの米国製部品の調達が禁止される

米政府は大手ビデオ監視機器メーカーの曠視科技(メグビー)、杭州海康威視数字技術など中国企業 5 社について、米国の重要技術利用を事実上禁じることを検討している。 事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 華為技術(ファーウェイ)に加え、ブラックリスト掲載企業を監視機器大手まで広げる構えだ。 米商務省の「エンティティー・リスト」に追加されると、許可なしでの米国製部品やソフトウエアの調達が禁止される。 これら関係者によれば、同リスト掲載が検討されているのは曠視科技と杭州海康威視数字技術、浙江大華技術のほか 2 社。 関係者の 1 人は、残る 2 社は美亜柏科信息と科大訊飛だとした。

関係者らが匿名を条件に語ったところでは、トランプ政権はこれら企業が新疆ウイグル自治区でのウイグル族抑圧に果たしている役割を懸念している。 また、顔認証機能を持つ杭州海康威視数字技術と浙江大華技術の監視カメラがスパイ活動で使われる可能性についても憂慮しているという。

実際にブラックリストに掲載されれば、米中間の緊張が高まることは避けられない。 また、米国が中国の他の有力企業をターゲットにするのではないかとの疑念も生じている。 トランプ政権が先週、ファーウェイによる米技術の利用を事実上禁じる措置を発動すると、クアルコムやインテルなど米半導体メーカーの株価は急落。 世界経済成長の抑制や、次世代通信規格である 5G ネットワークの展開の遅れが懸念されている。

ブルームバーグの報道を受け、オフショア人民元は上げ幅を縮小した。 これより先に米紙ニューヨーク・タイムズ (NYT) がブラックリスト掲載の可能性を報じると、深セン市場で杭州海康威視数字技術と浙江大華技術の株価は急落。 両社は人権団体から、新疆ウイグル自治区での中国政府によるウイグル族迫害に手を貸していると批判されている。 ウイグル族はイスラム教徒の少数民族。

これら関係者によれば、トランプ政権は今年の早い時期に両社などへの措置発動を検討したが、対中通商協議に配慮して先延ばししていたという。 関係者らは、5 社のほかにもエンティティー・リストに追加される可能性があると語った。 (Jenny Leonard、Nick Wadhams、Bloomberg = 5-23-19)

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米、中国監視カメラ企業への禁輸検討か 「人道への罪」加担の恐れ

21 日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、トランプ米政権が中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)への禁輸措置を検討していると伝えた。 同紙によると、ハイクビジョンは、米商務省が安全保障上の懸念がある外国企業を列挙したリストに加わる可能性があり、そうなれば米企業は政府の許可なしに同社に部品などを輸出できなくなる。 ホワイトハウスは同紙のコメントに応じていない。

ハイクビジョンの幹部は「われわれが使う部品は大量生産されている。 一部のサプライヤーは米国にあるが、大半は中国にある」とコメント。 米国が輸出を禁止しても他のサプライヤーから調達が可能との見方を示した。 こうした中、ブルームバーグは、米政府がハイクビジョンや同業の浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)など数社を禁輸措置対象リストに加えることを検討中と報じた。 ダーファ側はコメントを控えた。

40 人を超える米与野党議員らは先月、政府宛ての書簡の中で、新疆ウイグル自治区における中国政府の統治が「人道に対する罪に相当する恐れがある」と指摘。 政府の監視にハイクビジョンやダーファの技術が利用されている可能性があると名指しで指摘した上で、そうした中国の違法行為に加担しないよう輸出規制を求めていた。

ジェフリーズのアナリスト、Rex Wu 氏は、ハイクビジョンに禁輸措置が適用されても、影響は小さいと指摘。 同社の米国での売上高は、全体の 5% 程度という。 同氏は「大半の AI (人工知能)ソリューションは、中国の政府・公的部門・企業に販売されている。 ハイクビジョンは、地元の業者を通じて GPU (グラフィックス処理装置)を調達できるかもしれない」と述べた。 (Reuters = 5-22-19)


貿易摩擦で中国は利下げへ、FRB 続けば米国の勝利 = トランプ氏

トランプ米大統領は 14 日、米中貿易摩擦に関するツイッターへの投稿で、中国は国内システムに資金を供給し、恐らく利下げを行うだろうとの見方を示し、米連邦準備理事会 (FRB) も同様に金融緩和に動けば「ゲームオーバーで、われわれが勝利する」と述べた。

トランプ氏は、中国は国内企業を支援するためにいつものように資金供給を行い、恐らく利下げをすると指摘し「FRB も同様に動けばゲームオーバーだ。 我々の勝利だ。 いずれにせよ、中国は(貿易協議で)合意を望む、」と説明した。 また、それより以前の投稿では「中国の米国からの輸入は米国の中国からの輸入を大きく下回っており、5,000 億ドル近くの差がある。 そのため、われわれは素晴らしい状況にある。 米国で製造すれば関税はない。 中国製品の代わりに、関税がない他国製品を買うことができる。 多くの企業が中国から離れている。」と主張した。

さらに「しかるべき時が来たらわれわれは中国と合意する。 習近平国家主席への尊敬と友情は限りがない。 ただ、これまでも習氏に重ねて伝えているように、米国にとって素晴らしい合意である必要があり、そうでなければ意味がない。」と説明した。 トランプ氏はこの日記者団に対して、米中貿易摩擦は「ささいな口げんか」で、中国との通商協議は決裂していないと述べた。 (Reuters = 5-15-19)

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米、中国 3,805 品目に追加関税 = 残る 33 兆円分、最大 25% - スマホやテレビ

【ワシントン】 トランプ米政権は 13 日、中国からの輸入品ほぼすべてに制裁関税を拡大する「第 4 弾」の詳細案を公表した。 現在対象から外れている 3,000 億ドル(約 33 兆円)分の製品 3,805 品目に最大 25% の関税を上乗せする。 発動の可否の判断は 6 月末にも下される見通しだが、スマートフォンなど新たに多くの生活必需品が標的となり、米国の消費者にも大きな影響が及びそうだ。

トランプ大統領は 13 日、大阪市で 6 月下旬に開催される 20 カ国・地域 (G20) 首脳会議に合わせて、米中首脳会談を行う意向を示した。 発動をちらつかせ、難航する貿易協議で譲歩を迫る構えだが、中国側の反発は必至だ。 米通商代表部 (USTR) が公表した品目案によると、スマホやテレビ、パソコン関連、おもちゃ、布製品、履物などが含まれる。 米アップルの iPhone (アイフォーン)も対象。 全品目に占める消費財の割合は 4 割に達するとされる。 医薬品、レアアース(希土類)関連は除外される。

USTR は産業界から意見を聞く公聴会を来月 17 日に開いた上で、最終案を固める。 実際の発動まで 2 カ月以上かかるのが通例だ。 発動されれば、知的財産権の侵害を理由とした対中制裁の対象は計 5,500 億ドルに達し、中国からの年間輸入実績にほぼ匹敵する。 昨年、このうち 2,500 億ドル分への追加関税を 3 回に分けて発動した。 (jiji = 5-14-19)

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中国、米製品に報復関税 = 最大 25%、来月 1 日発動 - 貿易戦争激化で世界に悪影響も

【北京、ワシントン】 中国政府は 13 日、米国が 10 日に実施した対中制裁関税拡大への報復措置を 6 月 1 日に発動すると発表した。 約 600 億ドル(約 6 兆 6,000 億円)相当の米国製品に課している追加関税を最大 25% に引き上げる。 トランプ米政権も 13 日、中国からの輸入品すべてに追加関税を課す手続きを公表する。 知的財産権の侵害を理由とした制裁措置の第 4 弾で、現在対象から外れている 3,000 億ドル(約 33 兆円)相当の製品に関税を上乗せする。

米中双方が制裁と報復を繰り返す「貿易戦争」が一層エスカレートし、日本を含む世界経済に悪影響を与えることが懸念される。 同日の米株式市場では、優良株で構成するダウ工業株 30 種平均が一時、前週末終値比で 600 ドル以上下落した。 中国政府によると、追加関税は 6 月 1 日午前 0 時(日本時間同日午前 1 時)に発動。 報復措置の対象品目は 4 項目に分けられ、5% から 25% までの追加関税を課す。 米政権は 10 日、中国からの輸入品 2,000 億ドル相当に課している追加関税を 10% から 25% へ引き上げたが、中国は即座の報復を留保。 劉鶴副首相は「対抗措置を講じざるを得ない。」と警告していた。

先週行われた閣僚級の米中貿易協議は不調に終わり、米国は中国からの輸入品すべてに制裁関税を拡大する準備にも着手。 通商代表部 (USTR) が 13 日に対象品目案や税率、意見公募の日程を公表する。 (jiji = 5-14-19)

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トランプ氏「長期化なら中国に不利」 貿易交渉

【ワシントン = 永沢毅】 トランプ米大統領は 11 日、中国との貿易交渉について「私の大統領としての 2 期目に交渉しないといけないなら、中国にとってはるかに悪い合意になるだろう」とツイッターに投稿した。 「いま行動するくらい彼らが賢明ならいいのだが」と呼びかけ、中国に早期の妥結を促した。

さらに「中国はこのところの貿易再協議でひどくやられたと考え、2020 年の次期大統領選まで待ったほうがいいと思っているかもしれない」と表明。 野党の民主党が大統領選で勝てば「米国からぼったくりを続けられるからだ」との見方を示した。 自らの再選について堅調な経済や雇用を誇示し「彼らは私が再選すると分かっている」とも強調した。

トランプ氏は 8 日に「中国が立場を後退させたのは、バイデン(前副大統領)や弱腰の民主党と交渉したいと切実に願っているからだ」とツイート。 貿易協議の最終盤で中国が態度を翻した一因は民主にあるとの見方を示している。 バイデン氏は 1 日の選挙集会で「中国は競争相手ではない」と述べ、党内外から対中融和的な発言との批判を浴びていた。 (nikkei = 5-12-19)

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米、追加関税を発動 高官協議で回避できず 中国報復か

米政府は米東部時間 10 日午前 0 時 1 分(日本時間同午後 1 時 1 分)、中国からの 2 千億ドル(約 22 兆円)分の輸入品にかける追加関税を 10% から 25% に引き上げる制裁措置を発動した。 米中高官が 9 日にワシントンで協議したが、回避には至らなかった。 中国側は 10 日、重ねて報復を予告。 制裁関税の応酬になれば世界経済への悪影響は避けられない。 対象品目は 5,700 以上で、日用雑貨や農産物、家具など一般の消費財を幅広く含む。 米政府が昨年 9 月、追加関税の「第 3 弾」として 10% の関税をかけており、今年 1 月に 25% へ引き上げられる予定だったが、延期されていた。

制裁発動を受け、中国商務省は 10 日、「非常に残念に思う。 必要な報復措置をとらざるを得ない。」との談話を発表した。 協議は発動時刻を数時間後に控えた 9 日夕、ライトハイザー米通商代表とムニューシン財務長官が通商代表部 (USTR) に中国の劉鶴(リウホー)副首相を迎えて始まった。 ホワイトハウスの声明によると、ライトハイザー氏らはトランプ大統領に状況を報告した後、劉氏と夕食をとりながら話し合いを続けた。 10 日朝から再開するとしている。 トランプ氏は 9 日、協議に先立ち、ホワイトハウスで記者団に「何が起こるかわからない。 すごい 1 日になるぞ。」と話した。

8 日夜には、習近平(シーチンピン)国家主席から「美しい手紙」を受け取ったといい、「(習氏と)たぶん電話でも話すことになるだろう」と述べていた。 中国と今週中に合意する可能性を問われると「あるかもしれない」と否定はしない一方、まだ追加関税をかけていない「3,250 億ドル(約 36 兆円)」分の輸入品についても、「第 4 弾」として発動する準備を進めている、と牽制した。

中国国営新華社通信によると、劉氏はワシントン到着後、メディアに対し、「目下の特殊な状況のもと、理性を持ち、誠実に米国側と意見を交換したい。 追加関税は問題を解決する方法ではなく、中米双方にも、世界にも不利益だと考える」と述べていた。 ただ、米国の輸入時に即座に新たな関税率が適用された前回までと異なり、今回は 10 日以降に中国から輸出された商品が対象となった。 大半の商品は海路で運ばれるため、実際に追加関税が適用されるまで 2 - 4 週間程度はかかる。 この「猶予期間」に歩み寄りの余地を探る可能性もある。

追加関税をめぐっては、今月 1 日までの北京での通商協議が不調に終わった後の 5 日、トランプ氏がツイッターで突然、10 日の引き上げを予告。 USTR が 8 日に官報で、実務を担う米税関・国境警備局も 9 日に発動を通知していた。 (ワシントン = 青山直篤、北京 = 福田直之、asahi = 5-10-19)

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報道を禁じた中国 トランプ氏の強硬姿勢転換「想定外」

新たな制裁関税の発動など米国の攻勢を受け、中国の習近平(シーチンピン)国家主席は厳しい状況に追い込まれている。 昨年 12 月のアルゼンチンでの首脳会談でトランプ氏との歩み寄りに手応えを感じた習指導部は、その後も「外商投資法」を成立させるなど米国の要求に応えてきた。 「合意近し」との希望観測が広がる中で、米国が強硬姿勢に転じたことを、中国外交筋も「想定外」と認める。

関係筋によると、共産党宣伝部や国家インターネット情報弁公室は、5 日に制裁関税発動を予告するトランプ氏のツイートが出た後、ほぼ 1 日、中国メディアがその内容を報じることを禁じた。 翌 8 日には米国へ発つ予定だった劉鶴氏の出張も延期。 この間に、指導部で交渉打ち切りも含めた検討が行われたという。 しかし、中国が先に席を立てば、巨大経済圏構想「一帯一路」の見直しなど、国際社会の信用を得るために続けてきた協調路線に水を差す。 一方、米国への譲歩は国内での「弱腰」批判につながりかねない。

結局、劉氏の訪米期間を短縮させ、協議の「継続」に持ち込むしか選択肢はなかった。 中国外務省の耿爽副報道局長は 10 日の会見で「健全で安定した中米関係が両国の利益であり、国際社会の期待だ。」と、従来の姿勢に終始。 外交筋は「打開策があるわけではない。 しばらくは持久戦だ。」と語った。 (北京 = 冨名腰隆、asahi =5-10-19)

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米、対中関税 25% 引き上げ通知 中国「実行なら報復」

米通商代表部 (USTR) が 8 日、中国からの 2 千億ドル(約 22 兆円)分の輸入品に対する追加関税の税率を 10 日から 25% に引き上げる予定を官報で通知しことを受け、中国商務省は同日、「米国側の関税措置が実行されれば、中国側は必要な報復をせざるを得ない」との声明を発表した。 中国側も追加関税による措置を強化するのか、関税以外の手段で報復するのか、具体的内容は明らかにしていない。 商務省は声明で「貿易摩擦のエスカレートは両国と世界人民の利益にそぐわず、中国側はこれを非常に残念に思う」として、追加関税の税率引き上げを持ち出した米国の姿勢を批判した。 (北京 = 福田直之、asahi = 5-9-19)

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トランプ氏、対中関税 25% に上げ表明 最終盤で威嚇か

【ワシントン = 河浪武史】 トランプ米大統領は 5 日、中国の知的財産権侵害などを理由に 2,000 億ドル分の同国製品に課す関税を、10 日から現在の 10% から 25% に引き上げると表明した。 米中は 2018 年 12 月から貿易協議を開いて打開策を探ってきたが「交渉が遅すぎる」として制裁強化に転じる構えだ。 最終協議を前にした威嚇との見方もあるが、米中の貿易戦争が一段と激化する懸念がある。

トランプ氏はツイッターで「中国は 2,000 億ドル分の製品に 10% の関税を支払っているが、金曜日(10 日)に 25% に上がる。 中国の協議は遅すぎる!」と表明した。 関税を課していない 3,250 億ドル分の中国製品にも「速やかに 25% の関税を課す」と主張した。

米中は 18 年 12 月以降、閣僚級協議を開いて関税引き下げなどの条件を交渉しており、8 日から中国の劉鶴副首相がワシントン入りして再会談する予定になっている。 トランプ氏が制裁強化を突如表明したのは、中国に一段の譲歩を求める「脅し」との見方がある。 クドロー国家経済会議 (NEC) 委員長は 5 日のテレビ番組で、トランプ氏の表明を受けて「大統領は警告を発している」と述べた。 ただ、中国が態度を硬化させて早期打開が遠のく可能性がある。

トランプ氏はこれまで「対中交渉は順調に進展しており、素晴らしい合意ができる」と繰り返し主張してきた。 そのため金融市場はダウ工業株 30 種平均が史上最高値に近づくなど、米中の貿易戦争が早期に打開に向かうとの期待を強めていた。 トランプ氏の対中関税の引き上げ表明は、金融資本市場の世界的な失望を招く可能性がある。

米中は 18 年 12 月の首脳会談で貿易協議の開始を決定し、19 年 3 月 1 日を期限に打開策を探った。 トランプ氏は 2 月末に「合意に近づいた」として関税引き上げの先延ばしを表明。 両国は再び 4 月中の最終決着を目指して詰めの協議を続けてきた。 中国は液化天然ガス (LNG) など米国製品の輸入拡大策をトランプ政権に示し、3 月の全国人民代表大会(全人代)では外資の技術移転強要を禁じる「外商取引法」も成立させた。 中国の産業政策の抜本転換を求めてきた米国も「大きな進展があった(米通商代表部のライトハイザー代表)」と評価してきた。

ただ、トランプ氏は 3 月下旬に「関税をかなりの期間、据え置く」と述べ、計 2,500 億ドル分の中国製品に課す制裁関税の全面解除を否定した。 「中国は産業補助金の撤廃策を小出しにし始めた(米経済団体幹部)」ほか、中国が合意に違反したと判断すれば制裁関税を再発動する「罰則条項」などでも対立が残り、交渉は当初の期限から 2 カ月も延びていた。 両国はトランプ氏と習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談を開いて最終決着を目指すとしてきた。 早期打開のメドが立たなくなれば、国際的なサプライチェーン(供給網)や金融資本市場の混乱が強まり、世界景気の大きな下押し要因になる。 (nikkei = 5-6-19)


米中貿易戦争は中国経済低迷の主因ではない

岡崎研究所

トランプ大統領の貿易・通商政策が経済学のイロハでは推し量れないことが多いことは、エコノミストたちから指摘されてきたことである。 1 月 28 日付のニューヨーク・タイムズ紙には、アラン・ラップポート記者の記事で、『トランプ大統領は、最近の 中国経済の景気が悪いのは自分(トランプ)が仕掛けた対中貿易戦争によるも のであると認識している』、と書かれている。

中国専門家の中にも、同様に、米中対立によって中国経済は減速している、と考える人がいる。 このような見方に対して、米国経済政策研究センターのシニア・エコノミストであるディーン・ベーカー氏は、1 月 29 日付の同センターのサイトで、反論している。 彼が強調したのは、最近の中国の景気低迷の主因はトランプが仕掛けた貿易戦争にあるのではないという点である。 その根拠として次の 4 点を挙げている。

第 1 は、中国の対米輸出が減っていない事実である。 例えば、米国の対中国貿易収支赤字は 2018 年(10 月まで)は前年同期比で 350 憶ドル増加している。  第 2 は、仮に減ったとしても中国の対米輸出は、対 GDP 比率で高々 4% 弱であることである。 第 3 に、付加価値連鎖を考えれば、対米輸出の増加は輸入となって漏れる割合が大きいから、GDP を低下させる効果は小さいことが挙げられている。

例えば、中国の対米輸出の主な品目は「電話機(携帯電話等)」、「自動データ処理機械(PC 等)」、「TV、モニタ ー等」であり、これら製品はサプライチェーンによって外国から輸入した集積回路などの基幹部品を基に 中国で組み立てた完成品である。 ちなみに、iPhone の部品サプライヤー 200 社の中で中国企業はわずか 36 社であり、ほとんどは米国企業、台湾企業、日本企業となっているとの報道もある。

そして、第 4 に、米国からみると対中国輸入が減少した場合には、対第三国からの輸入が増えるという貿易転換効果が働く結果、中国から第三国への輸出は増加するという面もあること等である。 常日頃のマスコミ報道をみても、中国経済低迷の主因は米中貿易戦争にあるというのが主流になっているようであるが、こうした報道に違和感を抱いていた者にとって、今回のベーカーの主張は納得の行くものである。

それでは、中国経済低迷の主因は何か。 ここでは 3 つだけ指摘しておこう。 第 1 に、現在の中国経済は過大債務、過大資本ストックによって資本の収益率は極めて低くなっている。 あるいはマイナスになっている。 第 2 に、それ故に設備投資の大きな下方屈折は避けらない。 既に、そのことは、日本との貿易にも表れている。 第 3 に、こうした設備投資の下方屈折を最小限にするためには、消費の持続的な上昇、すなわち家計の貯蓄率の低下が必須条件であるが、それが実現していない。

要するに、(a) 投資から消費へのバトンタッチがスムーズに行われていないこと、(b) このバトンタッチには時間がかかること、(c) そしてその間は中国経済の走行速度は減速するということである。 事実、乗用車、工作機械、スマホ、工業用ロボットなど主要工業品の昨年第 4 四半期の出荷は前年比で約 2 割前後低下している。 さらに言うと、国有企業優先路線への回帰や資本集約産業の保護に繋がる「一帯一路」戦略も最近の中国経済の低迷の根底にあると見る向きもある。

ところで、関税の影響に関してのトランプ大統領のもう一つの誤解は、米国の追加関税を負担しているのは中国などの外国であるという認識である。 なるほど米国の最近の関税収入は急増している。 例えば、2018 年 11 月の関税収入は前年同月比で 2 倍増の 63 億ドルである。 ただ、これを負担しているのは中国人ではなく、米国人である。

例えば、米国が輸入鉄鋼にかかる関税を引き上げた場合についてみておこう。 教科書的にいえば次のとおりである。まず、(a) 輸入鉄鋼の関税引き上げによって、この鉄鋼を生産する鉄鋼部門は得をする(生産者余剰の増大)。 (b) 次に鉄鋼を使用している自動車等の産業は必ず損をする(使用者余剰の減少)。 (c) ここで重要なことは使用者余剰の減少分は生産者余剰の増加分より必ず大きくなることである。 より厳密に言うと、政府の関税収入は増加するが、このプラス分を加えても、国の全体の余剰は必ず減少するのである。

以上の点は経済学の教科書に登場する架空の話ではない。 ここではトランプ政権によって昨年 3 月に発動された鉄鋼への 25% の関税による影響を計算したピーターソン国際経済研究所 (PIIE) の分析結果をみておこう。 昨年 12 月 20 日付の同報告によると、(a) まず国内の鉄鋼価格は追加関税によってこの 10 月までに 9% 上昇した。 (b) その結果、鉄鋼産業の 2018 年の利潤は 24 億ドル増加し、雇用は 8,700 人増加すると見込まれる。 すなわち、新規雇用者一人当たりの企業利潤増加額は 27 万ドルとなる。 (c) 一方、自動車などの鉄鋼使用産業のコストは 56 億ドル増加する。

すなわち、鉄鋼業の一人当たり新規雇用者のために鉄鋼使用産業は 65 万ドルの追加負担をしていることになる。 しばしば言われていることではあるが、川上産業での輸入関税は川下産業のコストアップを通じて、国全体としては便益よりも大きなコストをもたらす。 その典型例が今回の鉄鋼への関税である。 また、昨年 11 月に発表された GM 社のリストラ計画や建設機械大手企業の決算が振わないのは、今回の鉄鋼の追加関税措置と無縁ではあるまい。

いずれにしても、以上述べたような関税を巡る「誤解」に基づいて貿易相手国の輸入政策と産業政策の大きな転換を迫るトランプ政権のディールはどのような「勝利」を得られるのか、いましばらく注目したい。 (Wedge Infinity = 3-4-19)

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