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中国、通貨防衛へ介入か 景気の鈍化懸念や対米緊張、相場大揺れ

中国人民銀行(中央銀行)は 20 日、人民元の中心レートを 2 年ぶりの大きさで引き下げた。 これを受け、元の対ドル相場は一時前日比 0.7% 安まで下げたものの、その後、人民銀が元の防衛に向け市場介入に動いたとの観測が強まり、同 0.1% 高まで値を戻す荒い展開となった。 米中貿易摩擦をめぐる両国の緊張の高まりや中国の景気鈍化への懸念が背景にある。 例年、夏場の金融市場は取引が閑散化する傾向にあるが、今夏は元の値動きをめぐり波乱含みの展開が続きそうだ。

2 年ぶり下げ幅

人民銀は 20 日、毎営業日発表する元の中心レートを 1 ドル = 6.7671 元と、前日に比べ 0.9% 元安方向に設定。 この下げ幅は 2016 年 6 月以来の大きさだ。 ブルームバーグがまとめた市場関係者の予想に沿った水準だったが、海外市場で元は下げを強め一時 0.7% 安の 6.8367 元となった。 その後、人民銀による市場介入観測が浮上し「中国当局が相場下落に歯止めをかけようとしている」との見方を背景に元は持ち直した。

ファースト・グレード・ファイナンスのマネジングディレクター、アストロ・デルカスティーリョ氏は「元の持ち直しが市場の神経質な地合いを和らげた。 元下落が止まらなければ、アジアで通貨切り下げ競争につながる可能性があるとの懸念を招いていた。」と指摘した。 一方、みずほ銀行のアジア外国為替担当シニアストラテジスト、張建泰氏(香港在勤)は元安の動きについて「こうした急速かつ急激な元安は資本流出を引き起こし金融の安定を損ねかねない」と述べた。

20 日の本土株市場では、上海総合指数も一時 0.7% 安まで下げたが、その後は戻し 2.1% 高で終了した。 前日までは 5 業日続落となっていた。 同日のアジア主要株式相場も、中国株上昇を受けて持ち直し、MSCI アジア太平洋指数は一時前日比 0.5% 高を記録した。

米大統領は激怒

元は前日 19 日には 0.9% 安と、終値ベースで 2015 年以来の下落率を記録。 元安は資源価格にも波及し、銅は 1 年ぶりに 6,000 ドルを下回り、他の工業用金属の価格や鉱業株も下落していた。 この動きは、トランプ米大統領の怒りを買った。 大統領は同日、米経済専門局 CNBC とのインタビューで「元は石のように落ちている」と発言。 元が下落し、ドルが上昇していることで、米国は不利な立場に置かれているとの見解を示した。

この発言を受け、米国がドル高阻止に動くとの観測が高まった。 FPG 証券の深谷幸司社長は「当初は貿易摩擦をめぐる緊張の高まりと元下落が幅広くドルを押し上げたが 19 日の米大統領発言で、市場はそれ以上のドル高に慎重になった。 ドル相場についての直接的な大統領発言に市場は大きな心理的重圧を受け、神経質になった。」と話す。

ソニーフィナンシャルホールディングスの石川久美子為替アナリストも、「米中貿易戦争だけではなく、米中通貨安戦争も絡んできている感じ」と説明。 「中国が元安誘導を止めなければ、米大統領もドル安が必要だと言い続けると思う。 中国に向けてということが分かっていても、ドルが全面安になる可能性もある」と語った。 くすぶり続ける米中貿易摩擦は元を一段安にする動機を中国側に与えかねず、市場の不安定な動きは今後も続くことになりそうだ。 (Tian Chen、Anooja Debnath、Bloomberg = 7-21-18)


中国の対米黒字、過去最高に 1 - 6 月

米経済好調で輸出拡大 駆け込みも影響

【北京 = 原田逸策】 中国の米国に対する貿易黒字が膨らんでいる。 中国税関総署の 13 日の発表によると、2018 年 1 - 6 月は前年同期比 14% 増の 1,337 億ドル(約 15 兆円)と上半期として過去最高だった。 中国も輸入を増やしたが、米国経済が好調で携帯電話などの輸出が輸入を上回るペースで拡大した。 米トランプ政権は対米黒字圧縮を中国に求めており、批判を強める可能性がある。

輸出は前年同期比 14% 増の 2,177 億ドル、輸入は同 12% 増の 840 億ドルだった。 6 月単月では輸出は前年同月比 13% 増の 426 億ドル、輸入は同 10% 増の 136 億ドルで黒字は同 14% 増の 289 億ドル。 6 月の黒字額も単月として過去最高だった。

米国は中国との貿易協議で対米黒字を年 2 千億ドル圧縮するよう求めている。 中国も黒字圧縮の努力はした。 天然ガスや原油の輸入を大幅に増やしたほか、米企業が強みを持つ航空機や半導体の輸入も拡大したようだ。 ただ、それを打ち消すほど米国向けの輸出は好調。 旺盛な個人消費を背景にパソコンや携帯電話、おもちゃなどの輸出が拡大した。

中国商務省は 12 日夜に公表した声明で、黒字額の高止まりについて「米国の低い貯蓄率、ドルの国際通貨機能、米中の産業競争力の差と国際分業、ハイテク製品の対中輸出制限」といった要因を並べ立てた。 両国の経済構造の違いに根ざした問題で、一朝一夕には解決できない点を強調した。 米中の貿易戦争も影響したようだ。 米国は 4 月に 500 億ドル相当の中国製品への追加関税案を公表したが、これに含まれていた鉄道車両は 1 - 5 月の実績で前年同期比で 5 割増えた。 関税発動前の駆け込み輸出だった可能性がある。

駆け込みがあれば、下期にはその反動減が出る恐れがある。 中国商務省の高峰報道官は 12 日に「貿易戦争は米中協力にとって厳しい挑戦で、影響は下半期に出てくるだろう」と語った。 貿易戦争の影響が及ぶ下期の米中貿易の行方は見通しにくい。 米トランプ政権は 7 月 6 日に 340 億ドル相当を対象に 25% の追加関税を発動。 月内にも 160 億ドル相当の物品を対象に加える。 さらには 2 千億ドル相当と幅広い中国製品に 10% の追加関税を上乗せする構えだ。 中国からの輸入全体の半分に追加関税をかける異例の事態で、実行すれば貿易の落ち込みは避けられない。

一方、税関総署によると米国以外も含めた 1 - 6 月の輸出は前年同期比 13% 増の 1 兆 1,727 億ドル、輸入は同 20% 増の 1 兆 331 億ドルだった。 貿易黒字は同 25% 減の 1,396 億ドルだった。 (nikkei = 7-13-18)


貿易戦争より「手強い脅威」、中国で米企業が直面

[上海] 米中両国が全面的な貿易戦争へと向かう中、中国で販売されている米国ブランドは、より手ごわい脅威に直面しているのかもしれない - -。 それは政府の後押しを受け、革新的製品で武装したチャイナブランドだ。 アップルやスターバックス、プロクター・アンド・ギャンブル (P & G) の「パンパース」といった人気ブランドが市場で享受してきた支配的地位が脅かされており、数千億ドルを稼ぐ米国企業の中国ビジネスに長い影を落としている。

中国の清涼飲料やシャンプーといった総額 6,390 億元(約 10.6 兆円)規模の日用品市場では昨年、中国ブランドが約 75% のシェアを獲得。 2013 年の約 67% からさらに数字を伸ばしたと、ベイン・アンド・カンパニーとカンター・ワールドパネルが中国都市部の 4 万世帯を対象に行った調査に基づく分析は示している。 パンパースやコルゲートの歯磨き粉、ミード・ジョンソンの粉ミルクなどアメリカ製品の市場シェアは、過去 5 年間で約 10 ポイント低下。 その一方で、人気のノンシリコンシャンプーを販売する滋源や、地元原料にこだわったスキンケア商品を製造する百雀羚といった中国ブランドは急速にシェアを伸ばしているという。

「地元での競争は、外資にとって極めて重要な課題だ」と、同調査を共同で行ったコンサルタント会社ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで、香港に拠点を置くブルーノ・ラネス氏は言う。 「中国で成功するには、いまや従来の企業だけでなく、これまで思っていた以上に行動が早く、革新的な地元企業に勝たなくてはならない」 (Adam Jourdan、Reuters = 6-29-18)


ハーレー、米国外に生産移管へ 高関税に「我慢できず」

世界的に知られる老舗高級バイクメーカーの米ハーレーダビッドソンは 25 日、欧州連合 (EU) による高関税を避けるため、欧州向けの生産を米国外に移すと表明した。 米国製バイクに対する EU の関税は、米トランプ政権による鉄鋼・アルミ関税への仕返し。 国内雇用の維持をうたう保護主義的政策が、皮肉にも生産の海外流出を招くことになった。 トランプ大統領は「我慢しろ!」などと不快感をあらわにした。

ハーレーが 25 日、米証券取引委員会 (SEC) に提出した文書で明らかになった。EUへの米国製バイク輸出にかかる関税が 6% から 31% に上がったことで、1 台あたり約 2,200 ドル(約 24 万円)のコスト増になるという。 この悪影響を避けるため、ハーレーは EU 向け製品の生産を米国外の工場に徐々に移す考え。 ブラジルやタイ、インドにも組み立て拠点を持つが、生産移管先は明らかにしていない。 移管には 9 - 18 カ月以上かかりそうだという。

顧客への価格転嫁はしない方針で、ハーレーは損益に年間 9 千万 - 1 億ドル(100 億 - 110 億円)程度の打撃が出ると見込む。 25 日の米株式市場でハーレー株は 6% 急落した。 ハーレーは欧州で 2017 年に約 4 万台の新車を売っており、米国に次ぐ重要市場だ。 ハーレーは文書で「世界のライダーが価値を認める『米国製』へのこだわりは持ち続けている」と強調。 そのうえで「関税を避けるための米国外での生産増は望むところではないが、欧州でビジネスを続けるための唯一の持続可能な選択肢だった」と理解を求めた。

これに対し、トランプ氏は 25 日、ツイッターに「あらゆる企業の中で、ハーレーが最初に白旗を揚げようとは驚きだ。 関税はただの言い訳だ。 我慢しろ!」と不満をぶちまけた。 それでも収まらなかったらしく、翌 26 日朝には「決して他の国でつくってはならない、決してだ! 従業員も客も、とても怒っている。」と投稿。 「もし移せば、見ていろ、終わりの始まりになる。 これまでありえなかったような税を課されるだろう。」などとハーレーを脅した。 ハーレーのバイクは「メイド・イン・アメリカ」を象徴する存在で、トランプ氏はこれまで、ホワイトハウスで開いたイベントなどでハーレーをたたえていた。

トランプ政権が打ち出した鉄鋼・アルミへの高関税に対し、EU は 22 日に米国製品への報復関税を発動していた。 ハーレーが本拠を置く米中西部ウィスコンシン州は、米共和党指導部のライアン下院議長の地元で、EU 側が狙い撃ちしたとの見方もある。 リーバイスのジーンズやバーボンウイスキーなども対象とされ、それぞれの業界や産地から困惑の声が上がっている。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 6-27-18)


米中貿易摩擦が独自動車大手を直撃、全世界巻き込む可能性も

[ワシントン/フランクフルト/北京] 米中貿易摩擦の激化は、高関税の標的となった米農業生産者や中国の太陽光パネル、鉄鋼などの製造業者だけでなく、米国に生産拠点を持つドイツの自動車大手も直撃、世界的な貿易戦争に発展する様相を示している。

独自動車大手ダイムラーは 20 日、2018 年の業績見通しを下方修正し、BMW は米中貿易摩擦を踏まえて「戦略的選択肢」を検討していると明らかにした。 ダイムラーは米アラバマ州の工場でメルセデス・ベンツ車を生産し、中国を含めた世界各地に輸出しており、BMW の米サウスカロライナ州の工場は米国内の工場としては輸出台数が最も多い。 エコノミストの多くは米中間の高関税の報復について、世界経済の成長を阻害する事態にはならないと見込んでいるが、農業、自動車、ハイテクなど個別の業界は悪影響を免れないとみられる。

トランプ米大統領は知的財産権侵害を巡り、総額 500 億ドルの中国製品に対する輸入関税を計画しており、7 月 6 日に予定通り第 1 弾を発動するかどうかが注目されている。 大統領は中国の報復関税に対抗して追加関税を課す意向も示しており、これまでに総額 4,500 億ドル規模の中国製品に対して関税適用を警告、中国の対米輸出額 5,000 億ドルの大部分がターゲットになった。 米中双方がこれまで警告した通りに関税を導入すれば、全世界が巻き込まれ、1930 年代以来の大規模な貿易戦争に発展する公算は大きい。

中国商務省の高峰報道官は 21 日、「米国が気まぐれに振る舞い、緊張を高め、貿易戦争を引き起こしたことは非常に遺憾」と非難。 「米国は『強硬措置』を掲げて交渉に臨むのが常とう手段のようだが、中国には通用しない。」と強調した。 一方、中国の習近平国家主席はこの日、北京で海外企業の幹部らと会合を開き、4 月に約束した関税削減方針を推進すると言明した。 「私は約束を実行してきた」と語った。

ただ、米中間の非難の応酬はエスカレートするばかりだ。 ロス米商務長官は CNBC に対し「関税、非関税双方を含む大規模な障壁を設ける貿易相手国が一段と苦痛を味わう環境を整える必要がある」とし、「障壁を撤廃するよりも維持するほうが難しくなるようにすることが必要だ」と述べた。 貿易の緊張の高まりは株式市場にも波及。 21 日の米国株式市場では自動車大手が売られた。 フォード・モーターが約 1.4%、ゼネラル・モーターズが 2% 近く、それぞれ下落。 テスラは 4% 安となった。

中国の報復関税は米農業生産者に打撃を与えることになる。 2016 年の米大統領選でトランプ氏を支持した人たちも多く含まれる。  中国は 4 月 2 日に米国の鉄鋼・アルミニウム輸入関税に対抗し、米国産豚肉の大半の部位に 25% の関税を発動、果物などには 15% を課した。 知財権侵害を巡り米国が導入する関税に対しては、7 月 6 日に報復関税を発動する計画で、ここでも米国産豚肉が対象となる。 2 回にわたり対象品目リストに入ったのは豚肉のみで、中国財政省が前週ウェブサイトで公表した計算式によると、累計関税率(付加価値税含まず)は 71% に上る。

中国は米製品659品目に対し 25% の輸入関税を課す計画を明らかにしており、このうち 545 品目は 7 月 6 日から適用する。 残る 114 品目には米国産原油などのエネルギーが含まれているが、中国はこれまで、発動時期を明らかにしていない。 (Reuters = 6-22-18)


中国が対米報復 7 月、500 億ドル分に 25% の追加関税

まず大豆や牛肉、自動車など 340 億ドル分

【北京 = 原田逸策】 中国国務院(政府)は 16 日、米国産の農産物や自動車、エネルギーなど 659 品目に 25% の追加関税をかけると発表した。 対象は約 500 億ドル(約 5 兆 5 千億円)で 7 月 6 日にまず約 340 億ドル分に発動する。 中国の知的財産権侵害を理由にした米国の制裁関税への報復措置。 実際に発動すれば米中は高関税をかけあう「貿易戦争」に突入する。

米トランプ政権は 15 日、中国の産業ロボット、電子部品など計 1,102 品目(500 億ドル相当)に 25% の追加関税をかけると公表。 中国商務省は直後に「同じ規模、同じ強さの追加関税措置を出す」と発表していた。 中国の関税措置は 2 段階。 まず 7 月 6 日に 545 品目(340 億ドル相当)を対象に発動、残りの 114 品目(160 億ドル相当)の発動時期は今後決める。 追加関税の税率、対象規模、発動方式などすべて米国と同じ。 中国は 4 月、25% の追加関税をかける計 106 品目(500 億ドル相当)の候補を公表していた。 今回の関税措置も 4 月の案が軸になっているが、農産品を手厚くした。

第 1 段階の対象品目には大豆、牛肉や豚肉、マグロやフカヒレ、オレンジやリンゴ、ウイスキー、自動車などを含む。 農畜産物、水産物が中心。 とくに米国産大豆は輸出先の 6 割を中国が占めており、金額も大きい。 第 2 段階は原油、天然ガス、石炭などエネルギーが目立つ。 エチレンなど化学物質、米国が得意とする医療器具も含む。 4 月の案にあった航空機は対象から外れた。 米国製の比率が高く、高関税をかければ国内の航空会社の経営に打撃を与えると判断したようだ。

報復関税とは別に、中国商務省は 16 日、米国と日本から輸入したヨウ化水素酸、米国やサウジアラビア、マレーシアなどから輸入したエタノールアミンに不当廉売(ダンピング)の疑いで高関税をかけると発表した。 米国と欧州連合 (EU) から輸入した継ぎ目のない鋼管への反ダンピング課税を延長するかどうかの調査も始めた。 いずれの製品も米国産が対象に含まれており、報復措置の一環とみられる。

米中は貿易摩擦を巡って 5 月から正式協議を始めた。 5 月中旬の 2 回目の協議では、米中が当面は高関税をかけ合わないことでいったん合意し、米中それぞれの交渉トップを務めたムニューシン財務長官と劉鶴副首相がテレビの前で発表した。 ただ、5 月末にトランプ大統領が突如として「6 月 15 日までに制裁関税品目を公表する」と公表し、中国は二転三転する米国の交渉姿勢に不信感を募らせている。 中国は制裁関税をかけないよう再三にわたり米国に自制を促したが、トランプ氏は聞き入れなかった。 (nikkei = 6-16-18)


トランプ大統領、500 億ドル相当の中国製品に対する関税発表

⇒ 関税第1弾は 340 億ドル相当、7 月 6 日に発動
⇒ 技術と知的財産を盗まれることを米国は容認できないと大統領

米トランプ政権は 15 日、中国からの輸入品 500 億ドル(約 5 兆 5,300 億円)相当に対する関税賦課を正式に発表した。 追加の投資制限についても発表。 これに対して中国は直ちに、報復措置を取ると表明した。 米中貿易摩擦が急速にエスカレートした。 中国は米国からの輸入品に対して米側と「同等の規模および強度」の関税を課すとともに、通商に関するこれまでのコミットメントを白紙撤回すると、商務省がウェブサイトに声明を掲載した。

トランプ大統領は中国が実際に報復措置を取れば追加の関税で課すと表明したが、金額は明言しなかった。 大統領は 4 月に、追加で 1,000 億ドル相当の輸入品に対する関税の検討を関係当局に要請していた。 また、中国に関する米投資制限を 2 週間以内に発表するとライトハイザー米通商代表部 (USTR) 代表が述べた。 同代表はフォックス・ビジネス・ネットワークとのインタビューで「中国からの拙速な反応につながらないことを望む。 さらなる交渉につながり、中国が少なくとも米国に対する政策を変更し市場を開放することを望む。」と述べた。

USTR によると、対中関税の第 1 弾が対象とする輸入品は総額 340 億ドルで 7 月 6 日に発動する。 残りの 160 億ドル相当についてはこれから見直すという。 USTR のリストには 1,102 品目が挙げられている。 ハイテク産業の育成を目指す中国の行動計画「中国製造 2025 (メイド・イン・チャイナ 2025)」で取り上げられた産業が主な標的となっている。

米産業界は直ちに政権の行動を批判。 米商業会議所のトーマス・ドナヒュー会頭は「関税賦課は中国の不公平な通商慣行で生じるコストを全て、米国の消費者や製造業者、農家、畜産業者に負わせるものだ。 これは正しいやり方ではない。」との声明を出した。 中国は報復措置として大豆や豚肉などの米国からの輸入品に関税を課すとしている。 米政府の統計によると、昨年の対中貿易赤字は約 3,760 億ドル。 USTR は通商法 301 条に基づく今年の調査で、中国が米国の知的財産を盗んでいると結論付け、政権の行動につながった。 (Andrew Mayeda、Jenny Leonard、Bloomberg = 6-15-18)


米中協議、中国が輸入拡大示す 貿易黒字削減には難色か

ワシントンで開かれていた米中の閣僚級通商協議が 18 日、2 日間の日程を終えた。 米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、中国側は米国からの輸入を増やす方針を示したが、米側が求める規模での貿易黒字削減には難色を示した模様だ。 協議に参加したカドロー国家経済会議議長は、米メディアの取材に「取引がまとまるにはまだ時間がかかるかもしれない」と指摘。 ただ、同氏はフォックスビジネステレビで「トランプ大統領はこれまでになかったような熱意と前向きな見通しを示している」とも述べ、歩み寄りへの期待感も示した。

中国メディアも 19 日、協議に参加した関係者が「話し合いは積極的で、建設的で、豊富な成果がある」と述べた、と報じた。 前回の北京での閣僚級協議で、米国側は 2020 年までに 18 年比で少なくとも年間 2 千億ドル(約 22 兆円)の対米貿易黒字を減らすよう要求。 しかし、17 年に米国が中国に輸出した物品の規模は約 1,300 億ドルで、実現のハードルは高い。 中国外務省は 18 日、「2 千億ドル」の削減を中国側から提案することについて公式に否定した。

ただ、中国側は 18 日、米国産コーリャンの不当廉売の調査で相殺関税を課さないと発表し、歩み寄りの姿勢も示している。 習近平(シーチンピン)国家主席も貿易黒字の拡大にこだわらない意向をかねて表明していた。

カドロー氏は今回の協議で「中国側が多くの点について我々の要求に応じつつある」と主張。 米側からの輸出拡大が望める分野としてエネルギーや農産物、金融サービスなどを挙げた。 また、協議の焦点の一つだった中国通信機器大手・中興通訊 (ZTE) について、米政権が進めている制裁に代わる要求として経営陣の交代なども含まれると説明。 「依然として厳しい対応になる」との認識を示した。 (ワシントン = 青山直篤、北京 = 福田直之、asahi = 5-19-18)


トランプ氏、中国への追加関税検討を指示 10.7 兆円規模

ニューヨーク : トランプ米大統領は 5 日、中国製品に対する 1,000 億ドル(約 10 兆 7,000 億円)規模の追加関税を検討するよう米通商代表部 (USTR) に指示したことを明らかにした。 中国の「不公正な報復」を踏まえた措置としている。 米国は今週、中国による知的財産権侵害を理由に、テレビや食器洗い機など 500 億ドル相当の中国製品に新たに関税を課す方針を表明。 これに対し、中国は大豆などの米国製品に対する 500 億ドル相当の関税を発表した。

米国はこれに先立ち、中国の鉄やアルミニウムに関税を課しており、やはり中国の対抗措置を招いていた。 トランプ氏が提案した新たな関税について、在ワシントン中国大使館は現時点では反応を示していない。 トランプ氏の 5 日の発表を受け、ダウ工業株平均の先物は時間外取引で約 400 ポイント下落した。 前日の株式市場は上昇していたが、これは米中間の応酬は言葉上のものに過ぎないと投資家が判断したためだった模様だ。

USTR のライトハイザー代表の声明で、トランプ氏の今回の要請を「適切」と形容。 「中国はこれまで、数十億ドル相当の米国製品に不当な関税を課すとする脅しの対応を取ってきた」とし、こうした措置が米国の労働者や農家、企業に対する損害を増大させることは疑いの余地がないと主張した。 (CNN = 4-6-18)


中国、米を WTO 提訴へ 追加関税めぐり同規模の報復も

米国の措置について、中国政府は 4 日、世界貿易機関 (WTO) に提訴する方針を明らかにした。 また、追加関税の対象とされた製品の総額ベースで同規模の報復措置をとることを決め、近く発表する。

中国外務省の陸慷報道局長は声明で「いささかの根拠となる事実もなしに、関税の上乗せ案を発表したのは、典型的な一国主義、貿易保護主義的なやり方だ」と米を批判。 そのうえで「米国側の措置は、40 年来の中米経済貿易協力で(双方が利益を得る)ウィンウィンの本質と、両国の業界の声と消費者の利益を顧みず、中米両国の国益だけでなく、世界の経済利益にも不利だ」と述べた。 (北京 = 福田直之、asahi = 4-4-18)


米、中国製品へ制裁関税 1,300 項目 500 億ドル規模

米通商代表部 (USTR) は 3 日、知的財産の侵害などを理由に新たな関税をかける中国製品の約 1,300 項目を発表した。 総額 500 億ドル(約 5.3 兆円)分にあたり、25% の関税率を上乗せする案を提示。 実際の発動までに約 2 カ月の猶予を設けており、この間に米中間で激しい駆け引きが続くことになる。 トランプ大統領は 3 月 22 日、不公正な貿易慣行に対して制裁する「通商法 301 条」に基づき、関税などの措置をとることを命じる大統領令に署名。 15 日以内に対象のリストが公表される見通しだった。

米政権は、中国政府が自国内に進出する米国企業に技術移転を強いたり、高度な知的財産を持つ米国企業を中国企業が買収できるよう不正に促したりしていると認定し、制裁措置の正当性を強調した。 こうした中国の政策によって利益を得たとする品目から、対象を絞り込んだと説明。 電子機器類や半導体装置、航空機部品などのハイテク分野を中心に幅広く対象とした。 特に USTR は、中国政府が 2015 年、最先端技術を育てるために打ち出した「中国製造 2025」を狙い撃ちにした。 中国が IT、ロボット、航空宇宙、電気自動車などの発展に向け、10 年計画で産業構造を転換しようとするものだ。

米政権は、中国がこうした政策の陰で米国の技術を不正に入手し、ハイテク分野で覇権を奪おうとしているとの危機感を強めた。 関税を「武器」として、中国の動向を牽制しようとの狙いがある。 トランプ氏は 3 日の記者会見で「中国には知的財産を盗まれている」と重ねて強調していた。 USTR は 5 月下旬まで公聴会やパブリックコメントの機会を設け、「関税が中国の行動や政策、慣行を止めさせるのに現実的、効果的な策かどうか」といった点について意見を募る。

米政権は今回の制裁措置とは別に、中国などに対し、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミ製品への関税も発動している。 中国はこれに対し、2 日から米国産ワインや豚肉などに高関税をかける報復措置をとった。 制裁と報復の応酬で、世界経済を大きく混乱させることが懸念されている。 (ワシントン = 青山直篤、asahi = 4-4-18)

米国が 25% の関税率上乗せを検討する 1,300 項目のおもな内訳

▽ 金属類、▽ 半導体装置、▽ 輸送機器類、▽ 電子機器類、▽ エンジン、▽ モーター、▽ 船舶、▽ 航空機部品、▽ 電池、▽ 薬剤、▽ 人工歯。▽ ペースメーカーなど


中国、米産豚肉に関税 25% 報復合戦へ高まる懸念

中国政府は、米国からの輸入品 128 項目に 2 日から最高 25% の高関税をかけると発表した。 米トランプ政権が、中国産の鉄鋼とアルミニウム製品に新たな関税をかける措置を発動したため、報復に踏み切った。 本格的な米中貿易戦争への懸念が強まりそうだ。 中国財務省が 1 日付の通知で公表した。 中国は米国から輸入する果物やワイン、シームレス(継ぎ目なし)鋼管など 120 項目に 15%、豚肉など 8 項目に 25% の税率を上乗せする。 高関税の対象になる米国産 128 項目の 2017 年の総額は、3 月下旬の発表時点で約 30 億ドル(約 3,100 億円)にのぼるとされる。

米国は、鉄鋼とアルミ製品の自国への輸入で安全保障が脅かされているとして、3 月 23 日から、中国や日本からの輸入品に高関税をかけている。 中国財務省と商務省の説明によると、中国政府は米国のこの措置が「実質的なセーフガード」にあたり、「中国の利益にひどい損害をもたらす」と結論づけた。 3 月 26 日、世界貿易機関 (WTO) の場で、損害を補償するよう米国に求めたが回答を拒まれたため、報復に踏み切ったとしている。

また、商務省が報復措置について、中国国内で 3 月末までパブリックコメントを募ったところ、報復措置と 128 項目を対象としたリストを支持する意見が大量に集まり、さらに強い措置をとるよう求める提案もあったという。 商務省の報道官は 2 日に出した談話で、今回の報復措置は WTO のメンバーとして正当な権利であると強調した上で、米国側に鉄鋼関税の撤回を要求。 「双方は対話と協議で関心事項を解決し、中米協力の大局にさらなる損害をもたらさないようにするべきだ」と求めている。

米国は、知的財産権の侵害があったとして中国に対してさらなる制裁を発動する方針。 中国はこれに対しても報復措置を示唆しており、報復合戦がエスカレートする恐れがある。 (北京 = 福田直之、asahi = 4-2-18)

対米国の報復関税の主な対象
項目税率
果物15%
ドライフルーツ15%
ワイン15%
セイヨウニンジン15%
シームレス鋼管15%
豚肉25%

中国、化学工業原料の不当廉売を調査 米国などから輸入

中国商務省は 26 日、防腐剤などに使われる化学工業原料「フェノール」が米国などから不当に安く輸入されている疑いがあるとして、ダンピング(不当廉売)の調査を始めたと発表した。 米国は先週、知的財産権の侵害を理由に、中国からの輸入品に対して新たな関税を課す方針を決めたばかりで、中国側による報復という面もありそうだ。 2 月に中国国内の化学業界から調査の要請が出ていた。 対象は米国だけでなく欧州連合 (EU)、韓国、日本、タイからの輸入品も含む。 調査は通常、1 1年以内に結論が出るという。 (北京 = 福田直之、asahi = 3-26-18)


中国、米の 128 産品に追加関税計画 米鉄鋼関税に報復

中国商務省は 23 日、米国の鉄鋼関税が中国側の利益を損ねるとして、128 の米国産品計約 30 億ドル(約 3,100 億円)分の輸入に追加の関税をかける報復措置の計画を発表した。 米国の鉄鋼関税による中国側の損失を補償する両国の協議がうまくいかない場合、第 1 弾として、果物やワイン、シームレス鋼管など 120 産品約 10 億ドル分に 15% の追加の関税をかける。 その後、さらに米国の措置が中国に与える影響を見極めて、第 2 弾として、豚肉製品など 8 産品約 20 億ドル分に 25% の追加の関税をかける。 リストは世界貿易機関 (WTO) の規定に基づいて作成したという。

一方、知的財産侵害に制裁を命じる米大統領令に対して中国商務省は同日、「中国側は自身の合法的権益が損害を受けるのを座視しない。 十分準備はできており、断固として自身の合法的利益を守る」との声明を出し、さらなる報復を示唆した。 声明では「米国側は中国側が知的財産権の保護を強めているという事実を無視し、ひたすら自分の意思を通そうとしている」と批判。 「中国は貿易戦争を望まないが、決して恐れない。 いかなる挑戦にも対応する自信も能力もある。」と主張した。 (北京 = 福田直之、asahi = 3-23-18)

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米、中国製品に年 3 兆 2,000 億円相当の関税か

【ワシントン = 山本貴徳、深セン = 鎌田秀男】 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は 20 日、トランプ米政権が、知的財産権の侵害を理由に、中国製品に少なくとも年 300 億ドル(約 3 兆 2,000 億円)相当の関税を課す方針を 22 日に公表する予定だと報じた。 別の米メディアによると、関税は最大で 600 億ドルに達する可能性もある。 米国の圧力強化に反発する中国は対抗措置を示唆している。 関税は米通商法 301 条に基づく措置で、トランプ米大統領は昨年 8 月、中国に進出した米企業が不当な技術移転を求められていないかどうかなど、知的財産権の侵害の実態を調査するよう、米通商代表部 (USTR) に命じていた。 (yomiuri = 3-21-18)

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米、対中国で最大 600 億ドル関税検討か 知財侵害で

ロイター通信は 13 日、米トランプ政権が中国のテクノロジーや通信分野を標的に、最大 600 億ドル(約 6.4 兆円)分の輸入品に関税を課すことを検討していると報じた。 トランプ政権は昨年来、中国が知的財産権を侵害しているとして、一方的な制裁措置が可能な「通商法 301 条」に基づく調査をしており、近く結論を出す可能性がある。 ロイターによると、中国に対する関税措置は「かなり近い将来」に出る可能性があるという。 関税は知的財産権侵害の疑いがある製品を対象としているが、より幅広いものにもなり得るとしている。

米政治メディア「ポリティコ」によると、トランプ氏は先週のホワイトハウスでの会議で、中国による知的財産権侵害への対抗策として、高関税や投資規制などを近く課すよう求めた。 米通商代表部 (USTR) のライトハイザー代表が 300 億ドル(約 3.2 兆円)相当の輸入品を対象とする関税案を示したところ、トランプ氏はさらに大きな数字を要求。 数週間以内に発表できるよう指示したという。 ムニューシン財務長官は 9 日、米国が中国に対し、今後 1 年間で貿易赤字額を 1 千億ドル(約 11 兆円)分減らすよう要請したことを明らかにしており、通商分野で中国への圧力を強めている。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 3-14-18)

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「米国債の売り浴びせ」で大ダメージ? 米経済に不利益な「対中強固策」

米商務省は 2 月 16 日、通商拡大法 232 条に基づく報告書を発表した。 中国など複数の国・地域から鉄鋼、アルミ製品がアメリカに輸入されているが、その輸入量の増加が「国家安全保障上の脅威になる」として、トランプ大統領に輸入制限の発動を勧告。 鉄鋼、アルミニウムについて、すべての国を対象に関税をかけるよう要請した。 現在の設備稼働率は鉄鋼が 76%、アルミニウムが 48% であるが、ロス商務長官は、これらの稼働率を 80% 付近まで引き上げることを目標としていると説明している。

この勧告を受けて、トランプ大統領は鉄鋼に関しては 4 月 11 日まで、アルミニウムに関しては 4 月 20 日までに輸入制限を実施するかどうかの決定を迫られていたが、鉄鋼には 25%、アルミには 10% の関税をかける方針を 3 月 1 日に表明した。 トランプ大統領は今年の秋に行われる中間選挙に向けてアメリカ第一主義、貿易保護主義を強めるのではないかとみる市場関係者は多い。 貿易戦争が勃発、世界経済は混乱に陥るのではないかといった悲観的な見方をする関係者すらいるようだ。

本土株、米輸入制限に反応せず

アメリカのこうした一方的な政策方針の発表に対する本土市場の反応をみると、比較的落ち着いたものであった。 影響が表れた 3 月 2 日、5 日の 2 日間の動きをみると、32 社で構成される鉄鋼セクター指数(同花順)は順に、▲ 2.71% 安、▲ 1.82% 安であった。

アルミ関連企業は多くないのでセクター指数はない。 売上高、総資産などで競合他社を圧倒する中国アルミは 2 月 26 日に約 5 ヵ月ぶりに取引再開されたばかりで、企業リストラの影響で株価は急落過程にある。 売上高は中国アルミの 10 分の 1 強だが、A 株上場企業としては業界第 2 位である雲南アルミの株価は順に、▲ 1.30% 安、▲ 5.85% 安と売られている。 しかし、両セクターの下げが市場全体に影響を及ぼしたわけではない。 上海総合指数は順に▲ 0.59% 安、0.07% 高となっている。

本土のマスコミ報道を見ても、株式関係者が日常的にチェックしている情報媒体上では輸入関税追加に関する記事は全くと言っていいほど見当たらない。 少なくともマスコミも含め多くの市場関係者は、この問題が重大な貿易摩擦を引き起こすとまでは考えていないと言えそうだ。

中国の輸出依存度は世界 116 位

そもそも、中国経済の成長は、設備投資と消費に依存しており、今や輸出は経済の主要エンジンとは言えない。 2017 年こそ輸出(人民元ベース)は 10.8% 増となったが、2016 年は ▲ 1.9% 減、2015 年は ▲ 1.9% 減、2014 年は 4.9% 増に過ぎない。 2017 年については二桁の伸びではあるが、名目 GDP はそれを上回る 11.2% 増加している。 また、中国の輸出依存度(輸出/名目 GDP)は 2016 年、17.48% で世界第 116 位(GLOBAL NOTE より、以下同様)である。 ちなみに、日本は 12.90% で第 142 位、アメリカは 7.82% で第 168 位である。 一方、台湾は 59.07% で第 12 位、ドイツは 38.52% で第 34 位、韓国は 36.74% で第 41 位である。

日本やアメリカほどではないが、中国も輸出依存度は十分低い方である。 さらに、中国は主要原材料を輸入して、それを加工して輸出するといった加工貿易(来料加工装配 + 進料)輸出の割合は 33.5% を占め、他国と比べ相対的に高いことを考え合わせれば、輸出減が経済に与える影響はそれなりである。 2017 年の中国における品目別の輸出額(人民元ベース)をみると、鉄鋼、鉄鋼製品は全体の 4.4%、アルミ、アルミ製品は 1.0% に過ぎない。 これらの品目の輸出量が多少減ったところで、輸出全体への影響は軽微である。 それに、鉄鋼、アルミニウムがアメリカに売れなければ、ほかに売るだけだ。

それに、鉄鋼、アルミニウムは政治的に、国家の戦略輸出製品ではない。 共産党が現在、最も力を入れて行っている改革は供給側改革である。 その対象となるセクターは、鉄鋼、石炭、非鉄金属などである。 鉄鋼、アルミ産業に対しては、遅れた設備の淘汰を進め、供給力を削減しようとしている。

外交戦略に関しては、習近平国家主席が自ら提唱している一帯一路戦略が最重要視されている。 これは海のシルクロード、陸のシルクロードの開発を各国と共に協力して行うといった大戦略である。 この戦略実行による鉄鋼需要、アルミ需要の長期的な拡大については期待しているだろうが、敏感な貿易摩擦問題が存在するアメリカに対して輸出を増やそうとは考えていない。 鉄鋼も、アルミニウムもアメリカに大量に売りたいなどとは考えていない。

対中強固策はアメリカに不利益

鉄鋼、アルミニウムのアメリカ向け輸出が減ったところで、中国は実体経済の面でも、政治的な面でも大した影響はない。 だから、本土の市場関係者はこの問題に関して興味がないのだろう。 もし、中国がアメリカから農産物の輸入を制限したり、アメリカへのスマホの輸出を制限したり、或いはアメリカ国債を売り浴びせたりすれば、アメリカ経済が受ける影響は大きい。 アメリカ国内でも、保護貿易でデメリットを受ける産業は少なくない。

今後も、アメリカの保護貿易政策が重ねて打ち出される可能性はないとは言えないが、そうだとしても、見た目ほどには中国への影響は大きくないはずだ。 それこそ、アメリカ第一主義に反するからだ。 世界経済全体がブロック貿易に向かうなどということを心配する必要は全くないだろう。 (田代尚機・TS・チャイナ・リサーチ 代表取締役、ZUU = 3-11-18)

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