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MSCI、中国企業 5 社を世界株価指数から除外へ

指数算出会社の MSCI は 27 日の引け時点で中国企業 5 社を世界の株式を対象とした株価指数から除外すると発表した。 中国軍の支配下にあると見なされた企業への投資を禁じる米大統領令について、追加情報が得られなかったためと説明した。 中国広核電力(CGN パワー)、中国化学工程、中国核能電力、中国船舶重工、浪潮国際(インスプール・インターナショナル)を MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) とこれに関連する指数から除外する。

MSCI は 25 日、米財務省外国資産管理室 (OFAC) から米東部時間 26 日午後 12 時(日本時間 27 日午前 2 時)までに新たなガイダンスが得られなければ、これら 5 社を指数から除外すると発表していた。 大統領令はトランプ前大統領が出したもので、バイデン新大統領はこれについて対応を明らかにしていないが、簡単に取り消すことができる。 (Reuters = 1-26-21)


米政府・NY 証取 中国通信 3 社の上場廃止めぐり迷走

【ニューヨーク = 宮本岳則】 ニューヨーク証券取引所 (NYSE) は 6 日、中国移動(チャイナモバイル)など中国国有通信 3 社の上場廃止を再決定した。 2020 年 12 月末に上場廃止方針を公表したが、1 月 4 日に撤回し上場維持を認めると発表していた。 方針が二転三転したことで市場に混乱を招いている。 NYSE は中国移動と中国電信(チャイナテレコム)、中国聯通(チャイナユニコム)香港の上場廃止手続きを再開する。 11 日から売買ができなくなる見通しだ。 米財務省の外国資産管理局 (OFAC) の新たなガイダンスに沿って、上場廃止を決めたとしている。 OFAC は外交・安全保障上の目的で、米国が指定した国・地域や特定個人・団体について、取引禁止や資産凍結などの措置を講じる部局だ。

NYSE は中国人民解放軍と関係が深い企業への投資を禁止する米大統領令に照らして、通信 3 社の上場継続の可否を判断している。 米ブルームバーグ通信によると、4 日に公表した上場維持方針についてムニューシン米財務長官が異議を唱え、NYSE は再考を迫られていた。 米株式市場では上場廃止の再決定を受けて、中国移動など 3 社の米預託証券 (ADR) の価格が大幅反落した。

上場廃止を巡るドタバタは、政官民の調整不足を露呈した。 米国防総省が 20 年 6 月以降、「中国人民解放軍と関係が深い」企業のリストを公表し、現時点で 35 社が認定された。 トランプ米大統領は同 11 月、米投資家によるリスト入り企業の売買を禁止する大統領令に署名した。 売買禁止措置は 11 日から始まり、すでに保有している銘柄は 11 月までに売却が必要となる。 ただ大統領令の適用範囲が曖昧で、当初から市場関係者の混乱を招いていた。 (nikkei = 1-7-21)


米、SMIC を輸出規制リストに 中国半導体産業に打撃

米、トランプ米政権は 18 日、安全保障上の懸念から輸出を規制する企業を指定する「エンティティー・リスト」に、ドローン世界最大手の DJI や半導体受託メーカーの中国最大手、中芯国際集成電路製造 (SMIC) など約 60 の中国企業を含む 77 社を加えた。 DJI は、ドローンを使った中国の少数民族の監視などの人権侵害に関与しているとされる。 米中の経済・軍事競争のカギを握る半導体分野での技術の移転をさらに厳しく規制し、対中圧力を強める狙いだ。 「エンティティー・リスト」は、米国から輸出する部品や技術が軍事転用されることを厳格に封じるための枠組み。

制裁リストの企業に対しては、米国製品を一定の割合で含む製品を、日本など別の国から再輸出することも認めない。 DJI は民生用ドローンの世界シェアで 7 割を占めるとされる。 日本でも広く利用されており、影響が懸念される。 同様に、SMIC と取引する日本企業も対応を迫られる。 これまでも通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など多くの有力中国企業がリストに入れられている。 今回の SMIC への規制では、回路線幅が 10 ナノ(ナノは 10 億分の 1)メートル以下の高性能半導体をつくるのに必要な装置の輸出を禁じる。 半導体は回路線幅が細かいほど性能が高く、世界トップ企業の台湾積体電路製造 (TSMC) は 5 ナノメートル級を手がける。

記者会見した米商務省高官は「10 ナノ以下をつくるには米国の技術が不可欠。 それをさせないことが、我々の『レッドライン』だ。」と語った。 半導体の製造装置は日米やオランダの企業が強い。 リスト入りに伴い、SMIC は、こうした企業の手がける製造装置の導入が難しくなり、大きな打撃が見込まれる。 米商務省の高官は「統一的な取り組みを実現するため、同志の国々と緊密に協力する」と強調。 輸出の規制をめぐって、日本などにも連携を求めていく姿勢を改めて示した。 SMIC については、米国防総省がすでに中国の人民解放軍の影響下にあると認定しており、商務省も今秋、一部の製品を SMIC に輸出する際には事前の許可を必要とするという運用を始めていた。 (ワシントン = 青山直篤、asahi = 12-19-20)


米、中国共産党員のビザ大幅に制限 9 千万人対象の意図

米国務省は、中国共産党の党員に対し、米国への旅行ビザや商用ビザの有効期間を短縮するなどの制限措置を導入したことを 3 日明らかにした。 国務省によると、これまでは最長 10 年間有効だった旅行ビザや商用ビザを、中国共産党員とその家族に対しては、有効期間を 1 カ月に短縮した。ニューヨーク・タイムズによると、ビザの有効期間中は複数回可能だった入国も 1 回に制限するという。 中国共産党員は 2019 年末時点で 9,191 万人いる。

国務省報道官は朝日新聞の取材に対して「国務省には、米国の価値に対して敵対的な組織や個人へのビザ発給を制限する権限がある」と述べたうえで、中国共産党の米国内での活動を「宣伝活動をして影響力を拡大しようとしている」などと批判した。 トランプ政権は中国軍との関係が疑われる留学生や研究者にビザを発給しない方針を打ち出すなど、これまでも中国からの入国を制限する措置を取ってきた。

11 月の大統領選でトランプ大統領が敗れたことを受け、来年 1 月下旬からはバイデン新政権に移行するが、トランプ政権は移行期間の間も、対中政策で新たな措置を次々と打ち出している。 中国外務省の華春瑩報道局長は 4 日の定例会見で「同意できるわけがない。 中国共産党を攻撃し、党員を迫害すればするほど、14 億の中国人民を敵に回すことになる。 米国自身の利益にも合致せず、開かれたイメージを損ねるだけだ。」と語った。 (ワシントン = 大島隆、北京 = 冨名腰隆、asahi = 12-7-20)


米上場の中国企業、続く不正会計疑惑

米国市場に上場する中国企業の不正会計疑惑が相次いでいる。 11 月にはライブ配信大手や電気自動車 (EV) メーカーで新たな疑惑が浮上した。 カフェチェーン大手、瑞幸●●(= 口偏に加と口偏に非、ラッキンコーヒー)も不正会計が発覚し、6 月にナスダック市場の上場廃止に追い込まれている。 米当局は新たな規制を導入し、中国企業に対する監視を強める方針を決めた。

「売上高の約 55% を占める最大顧客の連絡先がグループ会社と共通だ。」 米調査会社のヒンデンブルグ・リサーチは 11 月 30 日、中国の EV メーカー、康迪科技集団についてリポートでこう指摘した。 最高財務責任者 (CFO) や監査人らが頻繁に交代していることなども偽装の兆候とし、「売上高を偽っている」と記した。 中国や米国での EV の販売実績・計画にも疑いの目を向けている。

ヒンデンブルグは 9 月にも米新興 EV メーカー、ニコラが「技術力を偽って宣伝している」と指摘した。 その後、ニコラと資本・業務提携で合意していた米ゼネラル・モーターズ (GM) は出資計画を撤回するに至った。 ナスダックに上場する康迪科技の株価は 30 日に 3 割近く下落。 康迪科技は「指摘には多くの間違いや不正確な結論が含まれている」と反論する。

買収見直しも

中国のインターネット検索最大手、百度(バイドゥ)が 36 億ドル(約 3,800 億円)の巨額を投じて買収すると発表してから、わずか数日後。 中国ライブ配信サービス大手、歓聚集団 (JOYY) にも 11 月 18 日、不正会計疑惑が持ち上がった。 米投資会社のマディー・ウォーターズはリポートで「中国の主要ライブ配信事業の 90% に詐欺行為の不正があり、蜃気楼だ」と断じた。 JOYY は否定するが、ラッキンコーヒーやネット教育大手の北京世紀好未来教育科技 (TAL) はマディーの指摘の後、不正会計の事実を公表した経緯がある。

百度はアリババ集団、騰訊控股(テンセント)と並ぶ中国ネット 3 強「BAT」と評されてきたが、時価総額は今やライバル 2 社の 10 分の 1 以下にとどまる。 ネット業界の関係者は「詐欺的な不正が確認されれば買収はストップするだろう」と予測する。 ライバルに再び挑戦するための成長戦略が見直しを迫られる可能性がある。 こうした状況に米当局も対応を急いでいる。 政権内や議会で中国企業への不信感が高まっており、米証券取引委員会 (SEC) は新たな規制導入の準備を進めている。

米上場の中国企業は自国の監査法人に加え、米国の上場企業会計監視委員会 (PCAOB) に登録する監査法人による監査も義務付けることが柱だ。 中国の法律が立ちはだかり、現在は PCAOB は監査状況を検査することができない。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) によると、年内にも新規制案が公表される見通しだ。

規制強化へ

中国企業の監査問題は長年の懸案になっている。 有力企業の米株式市場誘致を優先し、検査ができない状態でも上場を認める「二重基準」が続いたが、ラッキンコーヒーの不正会計発覚などで、米当局も問題を放置できなくなった。 米議会の対中強硬姿勢も SEC の背中を押している。 「中国は米国の労働者や家族を搾取するために米証券取引所を使っている。」 共和党のジョン・ケネディ上院議員は 2 日、声明でこう強調した。 民主党議員と共同で提案した「外国企業説明責任法案」は上院に続いて下院でも同日、全会一致で可決した。

米上場の中国企業に当局による監査状況の検査を義務付ける内容で、3 年連続で検査を拒んだ場合は上場廃止となる。 外国企業説明責任法案はトランプ大統領の署名を経て成立する。 法案は SEC に具体的なルールづくりを委ねており、現在策定中の規制案に法案の内容も盛り込まれるとみられている。 米中の証券当局は問題の解決に向けて断続的に協議を続けており、上場廃止措置を免れる可能性もある。 市場関係者からは混乱回避を求める声もあり、ギリギリの調整が続く。 (上海 = 松田直樹、北京 = 多部田俊輔、ニューヨーク = 宮本岳則)

SEC、中国法人監査に疑問

米国市場に上場する中国企業の会計監査を巡っては、米証券取引委員会 (SEC) と中国側の応酬が続いてきた。 ニューヨーク証券取引所 (NYSE) とナスダック市場には 200 社以上の中国企業が上場し、大半はアーンスト・アンド・ヤング (E & Y) やデロイト・トウシュ・トーマツなど世界大手の四大会計事務所と監査契約を結ぶ。 SEC は長年、四大事務所の中国法人が監査を担当する点を問題視してきた。 2011 年 6 月、カナダに上場していた中国の木材事業会社、シノフォレストの資産水増しが疑惑が浮上したのをきっかけに中国企業の不正会計が相次ぎ表面化し、SEC が調査に乗り出した。 ところが、中国側は「重要書類を国外に持ち出すことは中国の法律で禁止されている」という理由を盾に、SEC への協力を拒んだ。

SEC は仮に中国企業の監査に疑いを持っても、それを裏付ける詳細な情報を入手できない。 中国企業の監査情報の提供を拒否したとして、SEC は 12 年に四大事務所を告発する強硬姿勢に出た。 14 年には中国法人での監査業務を半年間、禁止すべきだとの判断を公表した。 これに四大事務所が猛反発するなど、根深い問題となってきた。 SEC が新たな規制を導入すれば、NYSE に上場しているアリババ集団など中国企業は難しい選択を迫られることになる。 企業法務に詳しい錦天城弁護士事務所(上海市)の于炳光・弁護士は「中国企業は米当局の監査を受け入れるか、香港やロンドンの取引所に移るなどの対応が求められるだろう。 影響は避けられない。」と指摘する。 (上海 = 松田直樹、nikkei = 12-5-20)


中国「手の内」明かさぬ禁輸リスト 米に対抗「輸出管理法」施行へ

【北京 = 三塚聖平】 中国が、国家安全に関わる戦略物資や技術の輸出を規制する「輸出管理法」を 12 月 1 日に施行する。 中国の安全保障に害を及ぼすとみなした企業をリスト化して禁輸措置をとるなど、対中圧力を強める米国への対抗手段を整える狙いがある。 レアアース(希土類)が対象品目入りするとの見方が出ているものの、いまだに管理対象の品目が明らかにされていないなど運用に関して不透明な部分が多く、日本など各国企業に与える影響が懸念される。

中国の輸出管理法は、安全保障に関わると判断した物資や技術などを当局がリスト化して輸出を制限することが柱だ。 管理対象の品目を輸出する際には、事前に輸出先や使い道を中国当局に申請し、許可を得ることが必要になる。 また、特定の外国企業を「安全保障を害する恐れがある」といった面でリスト化し、管理対象品目の輸出を禁止することも可能とする。

中国商務省は 10 月下旬、対象品目のリストについて「適切な時期に発表する」と表明したがいまだに公表されていない。 対象品目が判然としないまま施行に踏み切る可能性が高まっているが、一部ではレアアースが対象になるとの見方がある。 中国はレアアースの生産で世界シェアの 6 割強を占め、2010 年の尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で起きた中国漁船衝突事件で事実上の対日輸出規制を実施した経緯もあるからだ。

同法は、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が 10 月中旬に開いた会議で可決したが、スピード施行の背景にはトランプ米政権の存在がある。 華為技術(ファーウェイ)への半導体輸出を全面的に禁じる新規制を 9 月に施行するなど中国企業への圧力を強めており、有力な対抗措置を打ち出すための法整備が急務だったからだ。 実際、同法は輸出管理措置を乱用して中国の安全や利益を損ねる国や地域に対等な措置を講じることを可能とした。 ただ、米次期大統領に就任する見通しとなったバイデン前副大統領の対中政策を見極めるため、当面は制裁発動に踏み切らないという見方もある。

日中外交筋は「現時点では米国を念頭に置いたものだが、仮に日中関係が再び悪化すれば日系企業が対象になり得る」と警戒する。 尖閣諸島に関する緊張が増した際に、自衛隊に製品を納入している日本企業がリスト掲載されるといった事態があり得そうだ。 (sankei = 11-28-20)

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中国「主権侵害」の外国企業の活動禁じる新制度を即日施行 米への対抗措置か

【北京 = 三塚聖平】 中国商務省は 19 日、中国の主権や中国企業の利益を損なうと判断した外国企業をリスト化し、輸出入や投資を禁止・制限する新たな制度を発表した。 トランプ米政権が中国企業への圧力を強める中で、中国政府による対抗措置の一環とみられる。 商務省が発表した規定によると、中国の国家主権や安全に危害を及ぼすほか、中国企業の合法的な権益を損なったと判断した外国の企業や組織、個人をリストに載せる。 指定された企業などに対して、中国に関わる輸出入や投資の制限や禁止といった措置をとる。 同規定は即日施行した。

新制度は、米国が行っている安全保障上の利益に反することなどを理由に輸出を規制する「エンティティーリスト」の中国版の位置づけ。 中国は昨年 5 月、同制度を策定する方針を示しており、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への圧力をトランプ政権が強めていることへの対抗措置とみられていた。 現在、中国発の動画投稿アプリ「TikTok (ティックトック)」などをめぐり米中両政府が水面下で駆け引きを続けており、新制度には米側を牽制する狙いがあるとみられる。 (sankei = 9-19-20)


トランプ氏、華為などへの投資禁じる大統領令に署名

トランプ米大統領は 12 日、米国政府が中国軍の影響下にあると認定している中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など 30 超の中国企業に対し、株式や投資信託などの購入を通じて米国人が投資するのを禁じる大統領令に署名した。 米政府は半導体などの輸出規制を進めてきたが、資金の流れも封じて制裁をより強める。 投資の禁止措置は来年 1 月 11 日から実施する。 米国防総省は 6 月と 8 月、ファーウェイに加え通信大手の中国移動や中国電信、監視カメラ大手ハイクビジョンなど計 31 社を「共産中国軍需企業」と認定していた。

これらの企業の株式は中国などの株式市場で取引されているほか、投資信託などを介して米投資家の資金が流れ込んでいる。 オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、「米投資家が、知らないうちに中国の人民解放軍や情報機関の能力を高めるための資金を提供してしまうのを防ぐ措置だ」と説明した。 (ワシントン = 青山直篤、asahi = 11-13-20)


中国の半導体生産に暗雲 米、対 SMIC 輸出を許可制に

【北京=多部田俊輔】 米商務省の輸出規制は中国の半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造 (SMIC) の生産に打撃を与える可能性がある。 米国企業から製造設備などを輸入できなくなる恐れがあるためだ。 生産が滞れば中国のハイテク産業に加え、半導体の自給率を引き上げ、米国依存の脱却を図ってきた中国政府の戦略にも影響が及びそうだ。

米国の輸出規制に関して SMIC は 27 日、「米国当局から通知を得ていない」と発表。 さらに「民生ビジネス向けの製品だけを供給している。 中国軍とは全く関係がなく、軍事向けは生産していない」との声明を出した。 SMIC は 2000 年に設立した半導体受託生産の中国最大手。 19 年の売上高は 31 億ドル(約 3,300 億円)で、純利益は 2 億ドルに達する。 中国国有通信機器大手や国策ファンドなどが大株主に名を連ねる。 中国の半導体産業のけん引役となってきただけに輸出規制が実現すれば影響は大きい。

最も深刻な影響を受けるのは最大の顧客のファーウェイとの見方がある。 SMIC はファーウェイ傘下の半導体設計会社、海思半導体(ハイシリコン)から受託し、ファーウェイのスマートフォンや通信機器に半導体を供給しているとされる。 米政府のファーウェイ制裁を受けて、SMIC は米当局に同社との取引継続を申請していたようだ。 ファーウェイは技術力の高い台湾積体電路製造 (TSMC) に委託ができなくなった場合、SMIC との取引拡大が見込まれていただけに、SMIC が輸出規制の対象になると別の取引先を探す必要が出てくる。

習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げるハイテク産業振興策「中国製造 2025」の先行きにも暗雲が垂れこめる。 同振興策は半導体を重点産業に位置づける。 米国企業に依存する半導体の自給率を足元の 20% 未満から 25 年には 70% まで高める目標を掲げており、SMIC は半導体産業のリード役になるとみられてきた。 SMIC は 7 月に上海のハイテク企業向け市場「科創板」に株式を上場した。 5 月には上海工場の運営会社が中国政府系ファンドから出資を受け入れており、今年に入って調達した資金は 1 兆円規模に達する。 半導体の生産能力の拡大と研究開発の強化でアクセルを踏んだばかりだ。

足元では回路線幅 55 - 65 ナノ(ナノは 10 億分の 1)メートルの技術を使った半導体が多く、同社で最も微細な半導体は 140 ナノメートルにとどまる。TSMC の最先端品は 5 ナノメートルで、「2 世代以上遅れている」との評価が多いため、SMIC は最先端設備の導入で TSMC や韓国サムスン電子などを追い上げる構えだった。 当面は米国依存の脱却が優先課題となりそうだ。 まずは 20 年中に米国製の製造装置を使わないでも 40 ナノメートルの技術のラインを構築する方針で、3 年内に 28 ナノメートルの半導体も自前で生産できる体制作りを目指すとされる。 ただ、SMIC に対する警戒が米国以外にも広がれば、さらに困難になるとの見方もある。

習指導部の半導体の自給率目標の達成はますます困難になるが、米国企業にとってもろ刃の剣となる可能性もある。 中国メディアなどによると、SMIC の主要顧客のトップ 5 には米クアルコムと米ブロードコムも含まれるためだ。 両社は TSMC などよりも低コストで生産できる一部の半導体の生産を SMIC に委託しており、米中対立が激しくなれば、短期的に半導体の委託が難しくなる可能性もある。 ただ、半導体受託生産では TSMC とサムスン電子が先行し、SMIC のシェアは約 5% にとどまるだけに、影響は限定的との見方もある。

日本企業にも余波

SMIC への輸出規制は日本勢が強みを持つ半導体製造装置などへ影響を与える恐れがある。 これまで米中ハイテク摩擦の日本勢への影響は華為技術(ファーウェイ)と直接取引するソニーなどが中心だったが、広がる懸念が出てきた。 日本勢はエッチング装置や成膜装置大手の東京エレクトロンと、洗浄装置大手の SCREEN ホールディングスが SMIC と取引している。 さらにニコンやキヤノンが中国で半導体の回路パターンを転写する露光装置の受注に力を入れている。

今回の米商務省の規制は米企業の技術を活用した外国企業の製品の輸出に適用される可能性がある。 現時点で日本企業が対象かは不明だが、米国の意向に反して取引を続けるにはリスクもある。 ニコンは「個別の取引に関してはコメントを控える」としている。 中国の通関統計によると、半導体製造装置の 2020 年 1 - 8 月の日本からの輸入額は約 26 億 7 千万ドル(約 2,800 億円)と全体の約 3 割を占め、オランダや米国を上回り首位だった。

英調査会社オムディアの南川明シニアディレクターによると、SMIC は半導体製造装置に年数千億円を投じているといい、「近年は脱米国で日本製装置の割合が高まってきていたもようで、日本の製造装置メーカーにも短期的に影響しそうだ」と分析する。 東京エレクトロンの 20 年 4 - 6 月期の半導体向け製造装置の売上高で、中国向けは前四半期比 46% 増の 739 億円と急増した。 中国のメモリーメーカーの設備投資が活発だったためで、同社は「20 年後半に向けてファウンドリー(半導体受託生産)の投資が増える」と期待していた。 (nikkei = 9-27-20)


中国の生産拠点、奪うベトナム コロナともう一つの理由

新型コロナウイルスによる逆境を、商機に変えている国があります。 ベトナムです。 生産拠点を中国から移す流れが加速しているといいます。 一方で、課題も明らかになってきました。 ベトナムの現状をハノイ支局の宋光祐記者が報告します。 主な内容は以下の通りです。,/p.

・ ベトナムにある「中国にない最新のもの」
・ ビジネスチャンス、コロナ対策に影響
・ 10 年で関税 99% 撤廃へ、EU の思惑

Q : 新型コロナでどの国も大変な中、ベトナムは中国の代わりとして台頭してきているという興味深い話を聞きます。 日本や欧米の企業が、生産の拠点を中国からベトナムに移す動きがあるんですね。

A : まず、ベトナムはほかの国に先駆けてコロナをうまく抑え込みました。 感染者数が少ない、死者が出ていない状況を、発生から半年以上続けた。 コロナ対策に成功した優等生という評価につながりました。 GDP の伸び率は下がっています。 昨年は 7% の成長だったのが、今年は世界銀行の予想で約 2.8% という予測。 ただ、プラス成長からマイナス成長に落ちている国もある。 2.8% のプラスは世界で 5 番目の高さと言われています。

Q : どんな工場が中国からベトナムに移転したんですか?

A : たとえばワイヤレスで音を聞けるアイフォーンのイヤホン、AirPods (エアポッズ)の工場です。 企業は取材を受けませんが、工場まで行き、仕事を終えて出てきた従業員にこっそり、どんなものを作っているのか聞きました。 アップルは発注をどの会社にしているのかは公開しています。 ただ、それぞれの企業が何を作っているかは秘密。 「うちがアップルの○○を作っています」と大々的に言うことはないです。

Q : 従業員はどんな言い方をしていたんですか?

A : 「中国でまだ作っていない最新のもの」という言い方で伝えてくれました。 他にも、アマゾンが色々な製品の部品を作ろうとしていると聞きました。 ネット通販のイメージが大きいかもしれませんが、最近はスマートスピーカーや家庭用の無線 LAN ルーターを設置できる製品を自社で作っています。 そういう製品の部品をベトナムで作るべく、企業関係者と交渉しているという話を聞きます。

Q : ベトナムはコロナの抑え込みに成功し、中国から生産拠点が移ってきた。 でも、中国もコロナの封じ込めには成功しつつある。 それでも生産拠点が移るのはなぜでしょうか。

A : そこにはもう一つ理由があります。 2 年前からトランプ政権のアメリカと中国の間で貿易摩擦が激しくなり、昨年には中国からサプライチェーン(供給網)を分散させる動きが出ていました。 そのなかでベトナムが選ばれ、コロナで動きが加速した。 そう多くの人がみています。

Q : どの国でも、ビジネスとコロナの封じ込めをどう両立するかが、大きな課題です。 ベトナムの場合はどうですか。

A : 最初の感染者が出たのは 1 月 23 日でした。 そこから 4 月ごろまでのやり方を見ていると、とにかく隔離する。 「コロナと共生する」というより「コロナをつぶす」という感じでした。 ただ、世界でコロナが収まらず、経済的な影響が長引き、だいぶ対応が変わってきました。 たとえば先日、国のコロナの対策委員会で、ベトナムに入国する短期出張者の隔離を免除しようという提案が出されました。 14 日未満の滞在なら、2 週間の隔離はしないと。国際線は 9 月 15 日から、日本・韓国・台湾などと再開させようと提案も出てきました。 ビジネス目的の高度な技術を持った方や、現地の支社長は特別に入国を認めることも、すでに続けています。

Q : 一方、ビジネスの話では、EU との FTA (自由貿易協定)も発効されました。 どんな内容ですか。

A : 8 月 1 日の発効と同時に、全品目の 6 割くらいの関税が撤廃されました。 さらに最長で 10 年をかけ、EU に輸出する時の関税が 99% 撤廃されることになります。 世界銀行の予想では、ベトナムの GDP を 10 年で 2.4% 押し上げる計算になっています。 ASEAN で EU と FTA を結んだのは、シンガポールに次いで 2 番目。 ASEAN での経済的存在感がここ数年ですごく上がっていることを示しています。 EU の「成長の勢いがあるから押さえておきたい」という意思の表れでしょう。

Q : ASEAN では他にも潜在性の高い国が多くありますが、それだけベトナムには期待が表れているんですね。

A : インドネシアは大統領が「ベトナムにサプライチェーンの受け皿を全部持って行かれないよう頑張れ」と発破をかけたそうです。 タイでも「ベトナムに負けるな」という話があるようですね。

Q : 順風満帆なベトナムに、課題はありますか。

A : ベトナムも国内の旅行は停滞していて、ハノイやホーチミンを歩くと、シャッターが目立つようになってきているんですね。 スマホなどの電子機器の製造業は、米中摩擦やコロナの恩恵を受けているんですけど、それ以外の部分でなかなか厳しい部分もあり、そこをどうするかが大きな課題です。

Q : これまで「世界の工場」と呼ばれてきた中国と比べて、ベトナムがまだ脆弱だという部分はありますか。

A : 今回サプライチェーンの取材で、ベトナム人が経営する企業 5 社に話を聞いたんですが、全員が口をそろえて言うのは「中国はすごく強い国だ」ということです。 アパレル企業の工場の人は、「中国では高級な糸から安い糸まで、ありとあらゆる糸が手に入る。 しかも輸送料も安く早く入ってくる。 ベトナムはそこまではなく、むしろ中国から輸入しないといけない。」 機械を作る会社の人も「鉄やアルミは中国から輸入しないといけない。 自分たちでは基礎的な材料を作れない。」と言っていました。 中国の強さは認めざるを得ない。 企業の経営者は冷静に見ているイメージです。 (聞き手・神田大介、asahi = 9-23-20)

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