HAKUTO-R、月探査へリベンジ 着陸船、米国から打ち上げ成功 月探査計画「HAKUTO-R」を進める宇宙企業 ispace (アイスペース)の月着陸船が 15 日、打ち上げられた。 予定の軌道に投入され、打ち上げは成功した。月には 5 月末にも着く予定で、日本の民間企業初の着陸をめざす。 前回は 2023 年に着陸を試みたが、高度測定がうまくできず、月面に衝突して失敗。 今回は再挑戦となる。 着陸船は日本時間 15 日午後 3 時 11 分に米フロリダ州のケネディ宇宙センターから、米スペース X のロケット「ファルコン 9」で打ち上げられ、午後 4 時 44 分に、予定の軌道で分離された。 失敗しても前向きだったチーム ispace が月へ再挑戦するまで ispace の計画では、着陸船は少ない燃料で月まで行ける「遠回り」の軌道を飛び、5 月末から 6 月に着陸する予定だ。 民間企業では、米宇宙企業インテュイティブ・マシーンズが 24 年 2 月に世界で初めて月面に着陸させている。 24 年 1 月には日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の探査機 SLIM が着陸に成功しており、ispace が成功すれば日本の民間企業で初となる。 ispace の月着陸船には月面用の水電解装置や、宇宙での食料生産に向けた実験装置などが載っている。 着陸後は、同社が開発した小型月面探査車も走らせ、「レゴリス」と呼ばれる月の土を採取する。 袴田武史代表は打ち上げ後の報道陣の取材に「ようやくここまでこれてほっとしている。 前回の経験を生かして、気を引き締め、着陸、探査車の運用までこなせるようにしたい。 月の資源の活用は地球の人類の持続可能性にも必要で、今回のミッションはそのための大きな一歩になる」と話した。 同じロケットには、米宇宙企業ファイアフライ・エアロスペースの月着陸船も搭載。 別の軌道で 3 月上旬の月着陸をめざす。 ispace によると、月をめざす複数の民間着陸船が一緒に打ち上げられたのは初めてという。 さらに、米インテュイティブ・マシーンズの 2 回目の着陸船も年内に打ち上げられる。 日本の宇宙ベンチャー「ダイモン」の小型月面探査車が月に運ばれる予定だ。 ispace は 10 年に設立し、23 年には東京証券取引所グロース市場に株式を上場。 「月までの宅配便」ビジネスを実現し、地球と月の間の空間に経済圏をつくることをめざしている。 東京都内では、ispace が社員やその家族、株主や政府関係者ら約 300 人を招き、「打ち上げ応援会」を開いた。 「HAKUTO-R」や着陸船名の「RESILIENCE」と書かれたタオルを掲げ、打ち上げ中継を見つめた。 カウントダウン後にロケットが打ち上がると、会場は大歓声に包まれた。 分離される様子が画面に映し出されると、大きな拍手がわいた。 (佐々木凌、asahi = 1-15-24) ◇ ◇ ◇ 「HAKUTO-R」 15 日打ち上げ 「失敗できない国にしない」 民間の月探査計画「HAKUTO-R」を進める日本企業 ispace (アイスペース)は 9 日、再挑戦となる「ミッション 2」の月着陸船を 15 日に打ち上げると発表した。 日本の民間初の月着陸をめざす。 月着陸船は日本時間の 15 日午後 3 時 11 分に米フロリダ州のケネディ宇宙センターから、米スペース X のロケット「ファルコン 9」で打ち上げる。 米ファイアフライ・エアロスペース社の月着陸船も同じロケットに搭載される。 ispace の計画では、着陸船は遠回りでも少ない燃料で月に向かえる軌道を飛び、5 月末から 6 月にかけて月に到着する予定だ。 「興奮を届ける 1 年に」 着陸後、同社が開発した小型月面探査車を走らせ、「レゴリス」と呼ばれる月の土を採取。 その一部の所有権を米航空宇宙局 (NASA) に売却する。 水電解装置や、宇宙での食料生産をめざした実験装置なども月面に運ぶ計画だ。 同社は 2022 年 12 月にも同型の月着陸船を打ち上げ、23 年 4 月に着陸を試みたが、月面に衝突して失敗した。 今回のミッション 2 では「日本を、失敗できない国にしない。」をスローガンに掲げる。 袴田武史代表は 9 日の会見で「ミッション1で悔しい思いをしたからこそ、失敗から学び、もう一度挑戦することの大切さを、再挑戦を通じて伝えられれば。 世界に興奮を届ける 1 年にしたい」と意気込みを語った。 (佐々木凌、asahi = 1-9-25) H3 ロケット年 7 回以上打ち上げへ 種子島など設備強化に約 19 億円 基幹ロケット「H3」の打ち上げを年 7 回以上に増やすため、文部科学省と宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は発射場の設備強化に乗り出す。 関連の費用として、政府は 2025 年度当初予算案と 24 年度の補正予算に計 18 億 8 千万円を盛り込んだ。 H3 は初号機が打ち上げに失敗したが、その後の 2 号機から 4 号機までは成功している。 文科省は H3 による人工衛星の打ち上げ受注を増やしたい考えだが、現状では年 6 回が精いっぱいだ。 発射場がある種子島宇宙センター(鹿児島県)の設備が不十分なことが要因だ。 ロケット燃料のうち、液体酸素の貯蔵タンクの容量が 1 回分しかなく、発射の間隔を短くできないため、今回の整備方針でタンクを 3 基から 4 基に増やす。 また、衛星をロケットに搭載するための作業をする「組み立て棟」を 2 棟から 3 棟に増やし、作業を 3 機同時にできるようにする。 次の 50 号機で退役する「H2A」用を H3 用に改修する予定だ。 整備に使う液体窒素のタンクや固体ロケットブースターの保管場所を増やすことも検討している。 ロケットの製造にかかる期間を短くするため、三菱重工業の飛島工場(愛知県)には、配管内部を X 線で検査できる機器などを導入する。 1 カ月おきの発射が可能に H3 と内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)の「イプシロン」は同時期に打ち上げられない。 ロケットの飛行状況を監視するシステムの一部が共通しているためだ。 設備を増やしたり訓練施設を追加して担える人員を増やしたりして、同時期に打ち上げられるようにする。 JAXA は 27 年度前半までに整備を終える計画。 1 カ月おきに発射できるようにし、少なくとも年 7 回以上の打ち上げを実現させたい考えだ。 文科省宇宙開発利用課は「打ち上げ間隔が短縮化できれば、回数が増えるだけでなく、日程が柔軟に決められて受注に有利になる。 国際競争力の強化のためにも重要だ。」と話す。 (佐々木凌<、asahi = 1-10-25) 弾丸より速く飛ぶ宇宙ゴミに最接近 宇宙で存在感示す日本の技術力 世界の宇宙開発の分野で、すでに存在感を示している日本企業もある。 東京都墨田区のベンチャー企業、アストロスケールが得意とするのは宇宙ゴミ(デブリ)の除去だ。 宇宙ゴミは、宇宙に浮遊する人工衛星や打ち上げロケットなどの残骸。 年々増えていて、新たに打ち上げる衛星やロケットに衝突する懸念が高まっている。 そんななか、アストロスケールが世界を驚かせてみせた。 2024 年 11月 30 日、開発した衛星「アドラスジェイ」が、2009 年に打ち上げられた日本のH2A ロケットの上段の残骸(全長約 11 メートル、直径 4 メートル)に 15 メートルの距離まで接近。 秒速 7 - 8 キロメートルという弾丸より速いスピードで宇宙区間を飛び回る残骸の撮影に成功した。 この距離まで宇宙ゴミに接近した民間の衛星は、世界で初めてだった。 同社広報の伊藤聡志さんは「ついに宇宙ゴミに誤差の範囲まで近づいた」と喜ぶ。 アストロスケールが今後、宇宙ゴミの問題をどのように解決するのでしょうか。 さらに記事後半では、アストロスケールとは別に、宇宙開発をリードする日本発の技術を紹介しています。 アストロスケールは、衛星のアームでゴミを捕らえ、地球の大気圏に突入させて燃やすことも目指している。 燃料切れのまま宇宙をただよう人工衛星に燃料を補給し、再利用することも考えているという。 欧州宇宙機関 (ESA) によると、10 センチ以上の宇宙ゴミは 4 万 500 個(9 月 20 日時点)、1 - 10 センチは 110 万個(同)、1 センチ以下のゴミは 1 億 3 千万個(同)と推定される。 1 センチを超えるゴミは、衝突した際の深刻な事故を引き起こすリスクがあるという。 各国が宇宙開発でしのぎを削る中、宇宙ゴミは今後さらに増えることが見込まれる。 アストロスケールは米国、英国、イスラエルなどに子会社を持ち、事業を展開。 技術は宇宙航空研究開発機構 (JAXA) や米国宇宙軍、英国宇宙庁で採用されていて、すでに世界の宇宙開発になくてはならない企業となっている。 伊藤さんは「宇宙の持続可能性を高めていきたい」と話す。 月面探査ロボットの小ささで世界をリードしているのが、大手玩具メーカーのタカラトミー(東京都葛飾区)だ。 おもちゃのアイデアで宇宙技術をリード 同社が、JAXA やソニー、同志社大学と開発した「LEV-2(愛称 SORA-Q)」は 24 年 1 月、日本初、世界で 5 カ国目となる月着陸のミッションで活躍。 月面で活動した世界最小・最軽量のロボットになった。 宇宙開発において小さいこと、軽いことはすなわち、コストの削減、性能の向上につながる。 SORA-Q は直径約 8 センチ(変形前)、重さ約 250 グラム。 JAXA の月探査機「SLIM (スリム)」から球体の形で放出されて月面に着くと、車輪部分を左右に開いて走行。 月面上で「逆立ち」状態となった SLIM などの画像を撮影した。 SORA-Q には、おもちゃ作りで培った日本の技術が詰まっている。 軽量化で大きな役割を果たしたのは変形だ。 一つの部品に複数の役割を持たせることで部品の数を減らし、軽さを追求した 着想を得たのはアニメ「トランスフォーマー」のおもちゃの変形。開発に携わったタカラトミーの米田陽亮・技術開発部フェローは「部品を少しでも減らしておもちゃの値段を安くする工夫がいきた」と話す。 月面探査ロボット「SORA―Q」の実物大のおもちゃを持つ米田さん。野球ボールほどの大きさだ=2024年12月16日午後5時26分、東京都葛飾区、木佐貫将司撮影 月面での走り方も工夫した。 月には砂状の「レゴリス」がゆるく積もり、軽量級の探査機では力不足で坂道を上がれない。 アニメ「ゾイド」のおもちゃの技術をもとに、タイヤの中心を固定せずに上下に動かし、バタフライやクロールのような走行ができるようにしたという。米田さんは「動物のようにうねるような動作を入れて、月でも動かせるようにした」と話す。 現在は、SORA-Q の活躍を伝えるワークショップを全国で開いていて、その技術を子どもらに伝えている。 宇宙空間や月で、躍動し始めた日本企業の衛星やロボット。 日本人技術者の夢は今も膨らみ続けている。 米田さんは「38 万キロメートル離れた月を見上げると達成感を感じる。 今後も宇宙開発に挑戦したい。」 (木佐貫将司、asahi = 1-5-25) 固体ロケットは大丈夫か イプシロンにカイロス、官民で爆発 5 回続く 新型の固体燃料ロケットの開発に、官も民も難航している。 ここ 2 年、国の基幹ロケット「イプシロン」と、民間ロケット「カイロス」が計 5 回爆発した。 日本の小型ロケットは 3 年以上、人工衛星を宇宙に運べていない事態に陥っている。 12 月 18 日、和歌山県串本町から打ち上がったカイロス 2 号機。 宇宙には達したものの、打ち上げ約 3 分後、異常検知システムが働き、衛星 5 基もろとも爆破された。 「期待に応えられず残念。」 豊田正和社長は会見でそう陳謝した。 原因は、ロケット末端にある「ノズル」の異常。 燃焼ガスを噴出し、進行方向や姿勢を整えるノズルが向きを大きく振らし、機体が飛行経路から外れた。 機体が円を描くように不自然に回転する姿が地上カメラに映っていた。 ノズルが破損したのか、ノズルを動かすソフトウェアの問題なのか。 試験や点検で異常は見つかっていないといい、原因をどこまで解明できるかが今後の焦点となる。 2024 年 3 月の初号機も同様に爆破され失敗したが、原因は打ち上げ速度の予測手法の誤りと判明し、ソフトウェアを修正して 9 カ月の短期間で再挑戦にこぎ着けたばかりだった。 今回の失敗により、ロケット側に設計変更が生じると、時間が相当かかる恐れもある。 受難続きの小型ロケット 固体燃料ロケットは、「H3」のような大型の液体燃料ロケットと比べ、小型で運べる荷物は少ないが低コストで扱いやすく、高頻度の打ち上げに適している。 足りないロケットの受け皿と期待されているものの、カイロスに加え、イプシロンも受難続きだ。 イプシロンは、「世界最高性能」だが高額と言われた先代「M (ミュー) 5」から改良し、コスト削減を狙ってつくられた主力ロケットだ。 13 - 21 年、5 回連続で打ち上げに成功したが、22 年の 6 号機は打ち上げ 6 分半後に爆破された。 燃料タンクのゴム製の膜が破れていたことが原因で姿勢制御が不能になった。 23 年 7 月には、改良型「イプシロン S」の第 2 段エンジンの燃焼試験で爆発。 再挑戦した 24 年 11 月の試験でも爆発した。 開発を主導する宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が原因を調べているが、燃焼ガスが後方から漏れたことが影響した可能性があるという。 7 回分、打ち上げ予定キャンセル 次の 7 号機の打ち上げの見通しはなく、今後予定していた 9 回の打ち上げは 7 回が白紙となった。 背水の陣のイプシロン。 JAXA の井元隆行プロジェクトマネージャは「3 度目(の失敗)はない。 原因を徹底的に洗い出し、全ての対策を打つ。」と話す。 一方、イプシロンとカイロスは、いずれもロケットメーカーのIHI エアロスペース(群馬県富岡市)が開発に加わっている。 爆発の原因について、共通点があるかどうかは明らかになっていない。 ロケット打ち上げ、日本は出遅れ気味 宇宙ビジネスは今、2040 年までに現在の 3 倍の 150 兆円規模になると言われ、急成長中だ。 23 年の世界のロケット打ち上げは 212 回あり、米国が 109 回、中国が 67 回だが、日本は 2 回。 宇宙への「足」が脆弱な日本は出遅れ気味だ。 巻き返しを図るため、政府は 30 年代前半までに打ち上げ回数を年 30 回に引き上げる目標を描く。 ただ、短期間での発射が可能なイプシロンとカイロスがどちらも足踏み状態で、衛星を宇宙に運ぶ小型ロケットは日本にはない。 このままでは、衛星の打ち上げ受注を海外に奪われ、政府の目標達成は厳しくなる可能性もある。 ロケットの初号機で、失敗はつきものだ。 今では年 100 回以上打ち上げる米スペース X も、最初の打ち上げは 3 回連続失敗した。 欠陥をあぶり出し、徐々に洗練させていくことも多い。 4 年の空白、技術継承の問題か とは言え、再打ち上げが大幅に遅れれば、世界の打ち上げ競争に乗り遅れる恐れもある。 宇宙政策に詳しい東京大の鈴木一人教授は、「ロケットは信頼性を武器に闘う人気商売。 原因が異なったとしても、失敗が続くことのダメージは大きい。」と話す。 日本には固体燃料ロケット開発の長い歴史があるが、「M (ミュー) 5」の廃止決定からイプシロンの開発開始まで 4 年ほど空いたことで、「技術継承がうまくいかなかった可能性がある」と指摘。 「固体ロケットは衛星が壊れたときにすぐに代替機を打ち上げられるという即応性が強みだが、打ち上げ能力に限界があるという弱みもある。 国費を投入する上で、どこに優先順位をおくべきか、いま一度議論する必要がある。」と話す。 (石倉徹也、佐々木凌、asahi = 12-28-24) SLIM はなぜ逆立ちに? 越夜ができた理由は? JAXA が成果発表 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 26 日、日本初となる月面着陸に成功した探査機 SLIM (スリム)の成果を発表した。 着陸が「逆立ち」となった原因や極寒の夜を越える「越夜」について説明した。 SLIM は 1 月、目標地点から誤差 100 メートル以内に降りる「ピンポイント着陸」に世界で初めて成功した。 これまでは、平らな場所で目標から数キロ、十数キロ単位で「降りられる場所に降りる」のが一般的だった。 SLIM は、自ら撮影した画像と別の探査機が撮った写真を比べることで自分の位置を特定し、目標から東に約 60 メートルの地点に軟着陸した。 ただ、SLIM の着陸はメインエンジンが上を向いた「逆立ち」だった。 JAXA によると、月面に向けて降下中に圧力の低下で二つある主エンジンの片方に燃料がたまり、これに着火。 その衝撃でガスを噴出するノズルが取れて、姿勢が制御できなくなったという。 越夜に 3 度成功 長い夜を越えて活動する「越夜」にも成功した。 月面は、気温が 110 度の昼と、零下 170 度の夜が 14 日ごとに繰り返す厳しい環境だ。 SLIM は着陸から数日で運用を終える予定で、越夜を想定した設計ではなかったが、4 月まで 3 回にわたり成功。 ただ、それ以降は通信が再開せず、8 月に運用を終えた。 越夜できた理由が分かれば宇宙開発に生かせるが、不明だという。 坂井真一郎プロジェクトマネージャは 26 日の記者会見で「部品やはんだ付けなど、メーカーが丁寧に仕上げてくれたことが功を奏したのではないか」と見解を語った。 科学的な成果として、特殊なカメラで月の岩石の観測に成功した。 月の深部由来と考えられるカンラン石が含まれており、月の起源や歴史の解明に役立つかもしれないという。 後日論文が掲載される予定だ。 坂井さんは「地球から 38 万キロ先に旅をした SLIM は、本当によく頑張って大きな成果を上げてくれた。 感謝している。」と話した。 月着陸は、旧ソ連、米国、中国、インドに次いで世界で 5 カ国目。 SLIM は探査機としては最軽量とみられるという。 資源があるとされる場所や月面基地の近くなど「降りたい場所に降りる」ことは、将来の月開発には必須の技術だ。 今後、SLIM の技術や知見を日本の民間で月着陸をめざす「ispace」に提供する方針だという。 (佐々木凌、asahi = 12-26-24) 前 報 (3-28-24) カイロス、打ち上げ失敗の原因は「ノズルに異常」 3 分後に爆破 宇宙ベンチャー「スペースワン(東京都)」は 18 日、小型ロケット「カイロス」 2 号機の打ち上げが失敗した原因について「燃焼ガスを噴出するノズルに異常が起き、飛行経路を逸脱した」と発表した。 打ち上げ 3 分 7 秒後に爆破し、飛行を中断した。 カイロス 2 号機、打ち上げ後に飛行中断 民間初の人工衛星投入ならず 打ち上げ失敗は、今年 3 月の初号機の爆発に続き、2 回連続。 人工衛星打ち上げ市場への参入をめざすスペースワンにとって、ロケット開発の難しさが突きつけられた形だ。 今回搭載した衛星 5 基は喪失した。 同社は 18 日午後に会見を開き、豊田正和社長は「失敗とは捉えていない。 得られたデータや経験は非常に貴重だ。 今後もスペースワンは失速することなく邁進したい」と述べ、原因究明をした上で、3 号機の打ち上げに挑むとした。 80 秒後に異変、ふらふらと回転 カイロスは、全長約 18 メートルの固体燃料ロケット(3 段式)。 午前 11 時、和歌山県串本町の発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げられた。 異変が起きたのは、1 段目が燃焼中の 80 秒後だった。 燃焼ガスを噴出するノズルの駆動制御に異常が発生。 姿勢を整えるためのノズルが当初の予定よりも偏ってしまい、機体の姿勢が崩れ始めたという。 地上からの映像でロケットがふらふらと回転しているように見えたのは、これが原因だった。 機体の経路は当初予定した南方ではなく、西方へ。 問題が起きた 1 段目が分離後、2 段目エンジンは正常に点火したが、飛行経路が戻ることはなく、3 分 7 秒後に破壊された。 「なるべく早く打ち上げめざす」 これまでノズルは、試験や点検で異常は確認されていなかったという。 今回のノズル異常の原因については分かっていない。 遠藤守取締役は、14、15 日の延期の原因となった高層の強風について「影響はない」と説明した。 打ち上げに失敗はしたが、衛星を覆うカバーの分離はでき、最高高度 110.7 キロの宇宙空間に到達した。 破壊された機体や衛星は海上に落下した。 3 機以降の打ち上げについて、阿部耕三執行役員は「まずは原因究明に注力したい。 なるべく早く打ち上げをめざす。」と話した。 「失敗、珍しいことではない」、「悔しいが、これが宇宙」 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の的川泰宣名誉教授は「来年に向けて日本の宇宙開発のいい流れになると思っていただけに、失敗したのはたいへん残念だ。 ソフトウェアの異常というより、ハード的な不具合が起きたのではないか。 だとすれば、飛行データを検証して原因を突き止め、改善するのはそう難しくないだろう。 次の打ち上げでは、今回より先の段階に進めることができるはずだ。」と説明した。 宇宙政策に詳しい秋山演亮・和歌山大教授は「新しいロケットが初期の段階で何度か失敗するのは珍しいことではない。 ただ、これから成功したとしても、年間 20 回ほど打ち上げられるのかはまた別の問題だ。 2 - 3 週間に 1 回くらい頻繁に打ち上げるには、乗り越えなければならない壁がある。 何が必要なのかをしっかり議論しないといけない。」と語った。 今回、開発した衛星が搭載され、打ち上げを見守っていた広尾学園高校(東京都)の生徒たち。 リーダーの矢尾海心さん(3 年)は「観測できるまでがミッションだったので、達成できなかったことは非常に悔しいが、『これが宇宙だな』と痛感した」と話した。 (石倉徹也、asahi = 12-18-24) ◇ ◇ ◇ 民間ロケット、強風で打ち上げ中止 カイロス 2 号機、15 日再挑戦 - スペースワン 宇宙開発ベンチャーのスペースワン(東京)は 14 日、人工衛星を搭載した小型ロケット「カイロス」 2 号機の打ち上げを中止した。 自社の発射場「スペースポート紀伊(和歌山県串本町)」から同日午前に発射する予定だったが、強風で急きょ延期を決めた。 15 日午前、打ち上げに再挑戦し、民間では国内初となる衛星の軌道投入を目指す。 (jiji = 12-14-24) ◇ ◇ ◇ カイロス 2 号機、12 月打ち上げ 民間ロケット、失敗原因特定 - スペースワン 同社によると、上空の高度 10 キロ以上で強風が吹いており、打ち上げ条件を満たさなかった。 機体や発射場の設備に問題はないという。 阿部耕三執行役員は記者会見で、「ロケットは非常に細長く、強い横風が当たると機体が壊れる恐れがある」と説明した。 カイロス 2 号機は全長約 18 メートル、重さ約 23 トンで、3 段式固体燃料と液体燃料エンジンなどで構成。 小型衛星 5 基を搭載し、このうち宇宙企業テラスペース(京都府京田辺市)の衛星には世界平和を祈願する仏像も設置されている。 初号機は 3 月 13 日、発射直後に爆発。 予測よりロケットの推力が足りず自律飛行安全システムが作動したためで、スペースワンはシステムの基準を見直すなどして準備を進めていた。 同社はキヤノン電子、IHI エアロスペース(群馬県富岡市)などの共同出資で 2018 年に設立。 小型衛星をロケットで宇宙に運ぶサービスの展開を目指し、30 年代には年間 30 機の打ち上げを目標にしている。 カイロスきょう打ち上げ 年 20 回の発射計画でねらう世界2番手の座 宇宙ベンチャー「スペースワン」は 14 日、和歌山県串本町のスペースポート紀伊から、小型ロケット「カイロス」 2 号機の打ち上げに挑む。 狙うのは「宇宙宅配便」ビジネスへの参入。 2020 年代中に年間 20 機、30 年代初めに年間 30 機を打ち上げる計画を掲げる。 ただ、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) でも最近は年 6 回が最高だ。はたして、本当に実現するのだろうか。 スペースワンが強みとしてあげるのは、ロケットの「使いやすさ」だ。 開発したカイロスは、日本の主力ロケット「H3」の 3 分の 1 から 4 分の 1 の大きさで重さ 23 トンと軽い。固体燃料ロケットのため部品点数が少なく、低コスト。 直前に燃料を注入する液体燃料ロケットと異なり、すぐ点火できる状態でいくつも保管できるメリットがある。 この特徴を生かし、契約から発射までの準備期間を通常の半分の 1 年以内と掲げる。 人工衛星の受け渡しから最短 4 日での打ち上げも可能とうたう。 「契約して打ち上げまで 2 年待つのはビジネスとして遅れる。 短期間で打ち上げるメリットは大きい。」 内閣府の宇宙政策委員などを歴任した東京大の中須賀真一教授(宇宙工学)はそう話す。 打ち上げは十数人、管制手順も自動化 自社の専用発射場を串本町に整備したのも、いつでも打ち上げられる柔軟性を確保するためだった。 固体燃料ロケットは一般的に打ち上げの振動が液体燃料ロケットより大きい。 衛星には負荷になるが、利便性でニーズを得られるとみている。 省エネも図る。 人的ミスを減らすため管制手順を自動化。 ロケットが自らの飛行を監視し、異常があれば自爆するシステムを日本で初めて採用した。 打ち上げも十数人の少人数で実施する。 「(ロケットの)体は小さいが、望みは大きい」と豊田正和社長は語る。<\/p> 大量打ち上げの課題は何か。 JAXA の的川泰宣名誉教授(宇宙工学)は、ロケット部品の供給企業などを中心に量産体制を築けるかがカギとみる。 ロケットと衛星を保管する施設や打ち上げ射点の増設が必要と指摘。打ち上げ時に海域の立ち入り制限があることから、漁業者側との調整も今後課題になるとみる。 「日本では大量にロケットをつくった経験はない。乗り越えないといけない課題は多いでしょう。」 衛星 2 千基が宇宙へ、足りないロケット ただ、市場からの期待は大きい。 今、小型ロケットの開発競争は世界中で進む。 背景にあるのは、小型衛星の打ち上げ需要の拡大だ。 通信や観測に使う衛星を使った宇宙ビジネスが活況となり、22 年に打ち上げられた衛星などは 2,368 基、10 年ほどで約 11 倍に増えた。 宇宙産業の市場規模はいま、世界で 58 兆円(3,840 億ドル)と言われ、40 年までに約 3 倍の 150 兆円規模になるとの予測もある。 だが、ロケットは足りていない。 世界で年約 200 回打ち上げがあるが、衛星側は年単位の「待ち」が生じている。 大型ロケットと小型ロケットの違い 米スペース X の「ファルコン 9」のような大型ロケットもあるが、複数衛星との相乗りの不自由さがある。 カイロスのように小回りがきき高頻度に発射できる小型ロケットが今、熱望されている。 出遅れる日本、民間ロケットの登場がカギ 日本の宇宙ビジネスは市場規模 4 兆円と言われ、出遅れ気味だ。 理由の一つが、民間ロケットがないこと。 豊田社長は「日本はまだ宇宙産業が発達しておらず、利便の高いロケットが必要。 カイロスが使いやすいインフラになる。」と未来を描く。 ただ、ロケット開発は容易ではない。 開発が遅れ、姿を消すベンチャーも相次ぐ。 JAXAなどが開発する小型ロケット「イプシロン S」も昨年 7 月と今年 11 月、燃焼試験中に相次ぎ爆発し、難航している。 成功を続けても 1 度の失敗で信頼性が崩れることもあるのがロケットの怖さ。 的川さんも「(JAXA では)常に『初号機』の気持ちで緊張感を持って打ち上げに臨んでいた」と言う。 日本が長年培ってきた固体燃料ロケットの信頼性を、カイロスが引き継げるかもポイントだ。 激しい価格競争、ロケット 1 機いくら? カイロスの打ち上げ価格は非公表だが、小型ロケットは 1 機 10 億円前後が基準とされる。 一方、ライバルの「インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)」は、開発中の小型ロケット「ZERO」の価格を「量産段階で 8 億円以下」としている。 競争力のある価格を出せるかも、今後のポイントになりそうだ。 小型ロケットは、世界で 100 社近くのベンチャーが開発に躍起だが、ビジネス展開できているのは米ロケットラボの 1 社のみとされる。 2 番手以降は空白で、チャンスでもある。 「ロケットラボに追いつけ追い越せの気持ちでやっている」と豊田社長も話す。 (石倉徹也、asahi = 12-14-24) 前 報 (8-25-24) ISS への新型補給機「HTV-X」が初公開 実験も担う「二刀流」 三菱電機は 10 日、国際宇宙ステーション (ISS) に物資を運ぶ新型の補給機「HTV-X」を、人工衛星を製造する神奈川県鎌倉市の工場で初公開した。 15 年にわたり役割を担ってきた「こうのとり」の後継で、2025 年度に H3 ロケットでの打ち上げをめざす。 同社が手がけたのは、HTV-X の「頭脳」と呼ばれる機体の根幹部分。 電力や制御、通信など飛行に必要なすべての機能が集約されている。 同社が公開した部分とは別に、ISS の宇宙飛行士に届ける食料や生活物資、実験機材を載せる部分は三菱重工業が造っている。 HTV-X は全長約 8 メートル、重さは約 16 トン。 「こうのとり」の約 1.5 倍の物資を搭載でき、通信能力も強化される。 将来的には、月面を有人探査する「アルテミス計画」で米国が建造中の月周回拠点への補給もできるよう改良が検討されている。 運用期間は「こうのとり」の 2、3 カ月から 2 年間に延びる。 補給を終えて ISS を離脱した後も、小型衛星を放出するなどの実験ができる。 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) でプロジェクトマネジャーを務める伊藤徳政氏は「諸外国の補給機にはない特徴で、単に輸送するだけではなく技術実証ができるので『二刀流』と呼べる」と話した。 (高橋豪、asahi = 12-10-24) 小型ロケット「イプシロン S」燃焼試験で異常 火災発生 26 日、鹿児島県の種子島宇宙センターで行われた固体燃料式の小型ロケット「イプシロン S」の燃焼試験で、燃焼中に異常が起きて火災が発生しました。 試験を行った JAXA = 宇宙航空研究開発機構が詳しい状況を調べています。 けが人など情報なし 26 日午前 8 時半ごろ、種子島宇宙センターで行われた固体燃料式の小型ロケット「イプシロン S」の 2 段目の燃焼試験で、燃焼中に異常が発生しました。 試験は 120 秒間ほど行われる計画でしたが、JAXA によりますと、試験場で火災が発生し消火活動が行われたということです。 JAXA が詳しい状況を調べています。 地元の警察や消防によりますと、火災によるけが人などの情報は入っていないということです。 「イプシロン S」は、JAXA などが開発中の日本の主力ロケットの 1 つで、2023 年 7 月に秋田県の試験場で行われた同じ 2 段目の燃焼試験では、異常な燃焼による爆発事故が発生しました。 前回の試験での爆発の原因について、JAXA は点火装置の一部が熱で溶けて飛び散り、圧力容器内の断熱材が損傷して異常な燃焼が発生したためだと結論づけ、対策をとった上で、今回、種子島宇宙センターでの再試験に臨んでいました。 「イプシロン S」の燃焼試験は午前 8 時半から、種子島宇宙センター内にある地上燃焼試験場で始まり、報道関係者は、試験場からおよそ 900 メートル離れた高台から撮影が許可されていました。 開始直後、大量の白い煙が上空へと上がっていきましたが、およそ 30 秒後、ボンという爆発音が発生し、炎のかたまりのようなものが海の方へ飛んでいく様子が確認できました。 JAXA が試験場のそばに設置したカメラの画像からは、燃焼試験が始まったあと、白煙とともに炎が広がっていくのが確認され、最初に炎が確認されてからおよそ 50 秒後に白煙が黒煙に変わった様子も確認できます。 今後の打ち上げ計画への影響も 政府の宇宙基本計画の工程表によりますと、小型ロケット「イプシロン S」は、今回の燃焼試験のあと、発射場のある鹿児島県肝付町の内之浦宇宙観測所から今年度中に打ち上げられる計画となっていて、ベトナムの地球観測衛星が搭載される予定です。 また、来年度以降も「イプシロン S」での衛星の打ち上げが予定されていて、今回の燃焼試験を受けて今後の打ち上げ計画への影響が懸念されています。 (NHK = 11-26-24) 前 報 (7-17-23) ロケットの将来を変える? デトネーションエンジン あす実証打ち上げ 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の観測ロケットが 14 日、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられる。 衝撃波を利用した「デトネーションエンジン」の性能の実験が目的で、成功すれば世界初となる。 日本が開発で先行するこのエンジンは、ロケットの将来を一変させる可能性を秘めている。 デトネーションは日本語で「爆轟(ばくごう)」。 音速を超える衝撃波を伴った爆発を意味する。 衝撃波によって燃料を圧縮させ、急激に化学反応させるのがこのエンジンの原理だ。 20 年以上開発に携わり、今回の打ち上げ実験のエンジン班チーフを務める名古屋大の笠原次郎教授(デトネーション推進工学)は、「これまでのロケットエンジンとは考え方を根本的に変えた」と説明する。 従来型も、大量の燃料を短時間で燃やしているが、むしろ衝撃波でエンジン自体が壊れないよう、ゆっくり反応させるという思想で設計されているという。 それに対し、デトネーションエンジンは、燃料を急速に反応させて圧力に変えることで、燃料効率を高めようという発想だ。 だが、そのままでは衝撃波がエンジンの外に出て行ってしまうので、反応にムラができ、推力が安定しない。 そこで、笠原さんらが開発しているのが「回転デトネーションエンジンシステム」だ。 片側が閉じた筒状の構造にし、閉じ込めた衝撃波が円を描きながら進むことで、連続的に反応が起きる。 発生したガスを開いた側から排出させることで、推力を生み出し続ける仕組みだ。 このエンジンは、2021 年 7 月に観測用ロケットの第 2 段エンジンとして搭載され、世界で初めて宇宙空間での飛行実証に成功した。 このときの燃料は気体の酸素とメタンだったが、今回新たに、液体のエタノールと亜酸化窒素を使うエンジンを開発した。 長時間の推力を得るには気体燃料よりも密度の高い液体燃料を使う必要があるからだ。 液体にすれば、気体に比べて数百 - 1 千倍ほどの燃料を搭載できる。 だが、液体燃料は気体燃料に比べてエンジン内での制御が難しく、完成までは約 3 年を要した。 このエンジンが、14 日の観測用ロケットに搭載される。 宇宙空間で実証できれば、液体燃料を用いたものとしても世界初飛行となる。 デトネーションエンジンは、従来型よりも構造が単純で燃料効率が高いため、エンジンの小型化につながる。 笠原さんによると、同じ推力なら従来型の 3 分の 1 から 10 分の 1 程度(全長が 30 センチのエンジンであれば、3 - 10 センチ程度)にできる。 さらに、小型化すれば、最小で直径数ミリ程度にもできるとも考えられている。 このエンジンを例えば 100 万個ほどロケットに敷き詰められれば、大型ロケットのエンジンとしての使えそうだという。 大量生産ができれば、100 万個であっても、一つの大型エンジンよりもはるかに安くつくれ、「ゲームチェンジャー」になる可能性がある。 笠原さんは「テレビがブラウン管から液晶に置き換わったように、将来的にはすべてのロケットエンジンがデトネーションに置き換わると考えている。 木星や土星への有人探査も可能になるかもしれない」と期待する。 米航空宇宙局 (NASA) など各国で開発競争が進んでいる。 笠原さんは「基礎的な技術力では優位性があり、負けたくない。 まずは今回の飛行実証を成功させ、少しでも早い実用化をめざしたい」と話す。 (佐々木凌、asahi = 11-13-24) 世界初の「木造」衛星、宇宙へ旅立つ ホオノキ、強すぎる 国際宇宙ステーション (ISS) に向かってホオノキでできた小さな立方体が飛び立ちました。 ISS に到着後、その立方体は宇宙空間に放出され、その過酷な環境にどれだけ耐えられるかをテストされます。 京都大学の研究者たちは、この実験が宇宙建設においてより持続可能な素材への道を開くことを望んでいます。 世界初の木造人工衛星、宇宙へ 京都大学の研究チーム(京都大学宇宙木材プロジェクト)と住友林業が共同開発した木造人工衛星「LignoSat (リグノサット。 木を意味する Ligno と Satellite を組み合わせた造語)」が現地の 11 月 5 日、国際宇宙ステーション (ISS) への補給ミッションの一環として、アメリカのフロリダ州にあるケネディ宇宙センターから宇宙企業スペース X のロケットによって打ち上げられました。 木造人工衛星は世界初なのだとか。 京都大学宇宙木材プロジェクトが X (旧 Twitter)に打ち上げを報告していましたね。 LignoSat は約 1 カ月後に ISS から放出され、宇宙空間における耐久性と、地球低軌道に散乱する宇宙ごみの量を減らすための代替品になり得るかどうかの実験を行ないます。 想像を超える木の強さ 宇宙で耐えられる素材と聞いて、木材はなかなか思い浮かびませんよね。 しかし、木材は大気圏外でも驚くほど耐久性が高く、人工衛星に使用される従来の素材よりも利点があるかもしれません。 LignoSat の研究チームは 2022 年 3 月、ISS の外の過酷な環境に 3 種類の木材を 10 カ月間暴露させました。 その結果、地球低軌道に 1 年近く放置されても、木材からはひび割れ、剥がれ、反り、表面の損傷は確認されませんでした。 最も耐久性が高かったのはホオノキ材だったそうです。 この軌道実験が今回の LignoSat 打ち上げにつながりました。 木造人工衛星の大きさは一辺約 10cm ほどで、重さは 0.9kg 強。 すべてが木製というわけではなく、通常はアルミニウムが使用される部分を木に置き換えてあるそうです。 LignoSat は地球低軌道で 6 カ月間テストされ、ホオノキ材が過酷な宇宙空間でどのように機能するかについてデータを収集します。 持続可能な宇宙開発の主役を目指して 宇宙ごみを増やさない低コストの宇宙船を製造するための方法として、LignoSat 構想はスタートしました。 木材が大部分を占めるこの衛星は、従来のものとは異なり、地球の大気圏に再突入する際に完全に燃え尽きます。 金属製の衛星は、大気圏で燃え尽きるときに細かく砕けたり、有害なアルミニウムを大気中に放出したりして、環境に悪影響を与えてしまいます。 木造人工衛星のもうひとつの利点は、木は電磁波や地磁気を遮断しないので、衛星のアンテナや姿勢制御装置を衛星内部に格納できることです。 そして、その可能性は人工衛星だけにとどまりません。 プロジェクトチームは、月や火星においても、木材は人間の住居など宇宙での構造物の建設にも使用可能と考えているそうです。 また、地球環境下においても木造建築向け超高耐候性木質建材の開発など、木材の利用推進につなげたいといいます。 木の可能性、どこまでも広がりそうですね。 ひとまずはホオノキ材が 6 カ月間の宇宙滞在に耐えることを祈りましょう。 (Kenji P. Miyajima、Gizmodo = 11-10-24) |