「革新的」な固体燃料ロケット、弾道飛行試験に成功 - 北海道の宇宙港で打ち上げ
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の宇宙科学研究所 (ISAS) 専任教授である森田泰弘氏は、「LTP」ロケット 3 号機 (LPT-135s) の弾道飛行試験を宇宙港「北海道スペースポート (HOSPO)」で成功させた。 HOSPO がある北海道大樹町と HOSPO を運営する SPACE COTAN (北海道大樹町)が 3 月 21 日に発表した。
LTP-135s は固体燃料ロケットの量産化技術の確立を目指して開発している「低融点熱可塑性推進薬 (Low melting temperature Thermo-plastic Propellant : LTP)」を使用した小型の固体燃料ロケット。 今回の試験は 3 回目の弾道飛行試験。 森田氏が HOSPO で試験するのは今回が初めて。 LTP がロケット打ち上げの加速度環境下で正常に燃焼することを確認している。
LTP-135s は全長 1,783mm、外径 135.4mm。 重量は 24.5kg。 HOSPO の滑走路から東南東の方向に打ち上げられ、予定通り最大高度 5,000m 付近でパラシュートを開いて、機体データを送信した。 今回の試験は、森田氏が植松電機(北海道赤平市)に打ち上げ業務を委託。 IHI エアロスペースと IHI エアロスペースエンジニアリングが協力した。
現在の固体燃料は、粒子を混ぜた樹脂に熱を固める。 一度固めるとやり直しがきかない。 作り置きもできないために、大きな設備で一気に作る必要がある。 加えて、その設備はたまにしか使わないために効率が悪いと指摘されている。 これらが固体燃料ロケットを作る難しさや高コストの一因と指摘されている。 森田氏が開発する LTP は「熱を加えると溶けて、冷ますと固まる」を何度も繰り返せるという固体燃料。 この「熱を加えると溶けて、冷ますと固まる」性質を利用すれば、小さな単位で連続生産して貯蔵しておくことができるという。 従来の固体燃料より融点が低いことから、LTP は「低融点」とされている。
従来の固体燃料は製造するのに数週間が必要。 LTP は「製造開始から約 4 時間」で打ち上げられることから「革新的」と期待されている。 (UchuBiz = 3-22-24)
H3 ロケット 2 号機、軌道到達 小型衛星の分離に成功
新型ロケット「H3」 2 号機が 17 日午前 9 時 22 分 55 秒ごろ、種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられた。 機体は予定の軌道に到達し、載せている 2 機の小型衛星のうち 1 機の分離に成功した。 初号機で失敗した第 2 段エンジンの燃焼もできたという。 機体はエンジンを燃焼させて高度 675 キロ付近へ上昇し、2 機の小型衛星を予定の軌道に投入する。 ロケットの性能を確認するために載せているダミー衛星の分離動作の実証もする。
H3 は基幹ロケット「H2A」の後継。 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と三菱重工業が共同で開発してきた。 世界で拡大する衛星打ち上げ需要をねらい、高性能かつ低コスト化をめざして開発してきた。 打ち上げ費用を H2A の半額の 50 億円に抑える目標を掲げる。 初号機は昨年 3 月、第 2 段エンジンが着火せず打ち上げに失敗した。 原因究明の結果、第 2 段エンジンの点火装置の部品の改良など必要な対策を取った。
H2A は 50 号機までで引退し、H3 が引き継ぐ計画。 1 月に 48 号機の打ち上げを終えた H2A は、残り 2 機となっている。 H3 は今後、火星衛星探査計画 (MMX)、国際宇宙ステーションなどに物資を運ぶ新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」など世界的にも重要な打ち上げを控える。 2 号機は当初、15 日に打ち上げる予定だったが、悪天候が予想されたため延期されていた。 (玉木祥子、asahi = 2-17-24)
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新型ロケット「H3」 2 号機 15 日の打ち上げは延期、悪天候予想で
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 13 日、種子島宇宙センター(鹿児島県)で 15 日に予定していた新型ロケット「H3」 2 号機の打ち上げについて、悪天候が予想されるため延期すると発表した。 新たな打ち上げ日は今後の天候をみて判断するという。
JAXA によると、発射場周辺での雷や強風が予想され、打ち上げの準備作業やロケットの飛行が安全にできない可能性があるという。 H3は、JAXA と三菱重工業が基幹ロケット「H2A」の後継機として共同開発してきた液体燃料ロケット。 初号機は昨年 3 月に打ち上げに失敗。 問題があった可能性のある第 2 段エンジン点火装置の部品などに対策を施し、打ち上げに向けて準備を進めていた。 (玉木祥子、asahi = 2-13-24)
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今度こそ成功を! 打ち上げ間近の「H3 ロケット」 2 号機
再挑戦への思いが刻まれた "RTF" 担当者の決意に迫る
日本の新たな大型ロケット「H3」の初号機失敗から約 1 年。 2024 年 2 月 15 日に 2 号機の打ち上げが予定されている。 このロケットに搭載される 2 つの小型衛星が、1 月 23 日に射場のある鹿児島・種子島宇宙センターで公開された。
H3 ロケット初号機 打ち上げ失敗
今回搭載される衛星の 1 つ目は「CE-SAT-IE」だ。 市販のカメラを使い、地上や天体を静止画や 8K 動画で鮮明に撮影できる。 もう 1 つは、感染症拡大の影響で世界の工場に影響がないか、工場の稼働状況を赤外線センサーを使って分析する機能を持つ「TIRSAT」である。 実はもう 1 つ、H3 ロケット 2 号機には高さ約 3.5 メートル、重さ約 2.5 トンのアルミ製の円柱が搭載される。 2023 年に失敗に終わった H3 初号機に搭載されていた地球観測衛星「だいち 3 号」とほぼ同じ重さで、重心の位置もほぼ同じだ。
2023 年 3 月 7 日、H3 ロケット初号機は種子島宇宙センターから打ち上げられた。 ロケットは上昇を続け、順調に飛行を続けていると思われたが、約 5 分後に第 2 段エンジンへの着火が確認されなかったとして指令破壊信号が出され、打ち上げは失敗した。 搭載していた「だいち 3 号」を軌道に投入することはできなかった。 その後、JAXA と打ち上げを担当する三菱重工が検証し、考えられる失敗の原因について「打ち上げの衝撃で部品が破損するなどしてショートした可能性」、「使用する部品の容量を超える電圧が流れた可能性」、「本来の回路での電気トラブルがバックアップの回路にも影響する部品が使用されていたこと」の大きく分けて 3 つに絞り込んだ。
点火の役割担う「エキサイタ」を改修
2024 年 1 月 23 日、JAXA と三菱重工の関係者が鹿児島市で会見した。 JAXA の岡田匡史・H3 プロジェクトマネージャは、失敗の原因絞り込みまでの苦しみを「7 月ぐらいまでは闇の中を歩いているような状況だった」と振り返った。 初号機失敗の原因と考えられる「部品の破損」は、「エキサイタ」と呼ばれる第 2 段エンジンの点火装置に関連している。 改修されたエキサイタは、2023 年 8 月に H2A ロケット 47 号機に採用され、打ち上げに成功。 岡田プロジェクトマネージャはこの成功に大きく後押しされたという。
メンバーの気持ちをまとめていくのもかなり難しい状況になったこともありますし、そういう中で(H2A)47号機の成功というのが非常に大きかったです。ちょうど同じくらいの時期に原因究明にも光が差してきたので、そこから一気に2号機に向かっての準備を進め始めました。 (JAXA・岡田匡史 H3 プロジェクトマネージャ)
H3 ロケット 2 号機の最大のミッションは、予定の軌道を飛行することである。 仕様を初号機に少しでも近づけ、ロケットの性能を確認するために搭載されるのが先述のアルミ製円柱だ。 この円柱を軌道に投入する(実際には宇宙空間に放出されないが)までの 2 号機の飛行経路は、初号機と同じになっている。 改修されたエキサイタの信頼性について、岡田プロジェクトマネージャは次のように胸を張った。
エキサイタについては三菱重工、JAXA のメンバーが連携して取り組んできました。 徹底的に、200 回使ったコンポーネントをここまで知り尽くすかというぐらいやったので、もう大丈夫だと思っています。 (FNN = 1-27-24)
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H3 ロケット 2 号機、来年 2 月 15 日打ち上げへ 失敗踏まえ対策も
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 28 日、新型の大型ロケット H3 の 2 号機を来年 2 月 15 日に種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げると発表した。 予備期間は 3 月 31 日まで。 今年 3 月の初号機の打ち上げ失敗を踏まえた対策を講じて打ち上げるという。 2 号機には当初、国の地球観測衛星「だいち 4 号」を載せる予定だったが、ロケットの性能を調べるためのダミーの衛星を載せる。 このほか、2 機の超小型衛星も搭載される。
初号機は 3 月 7 日に打ち上げられたが、第 2 段エンジンの着火が確認できず、破壊した。 載せていた「だいち 3 号」も失った。 JAXA の調査では、原因は打ち上げの振動や衝撃で一部の部品がショートしたことなど三つのケースが考えられるという。 2 号機では、こうした問題が起きないような対策を施すとしている。 (玉木祥子、asahi = 12-28-23)
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H3 ロケットの原因は過電流か H2A との共通機器に異常の可能性も
H3 ロケット初号機の第 2 段エンジンに着火せず打ち上げが失敗した問題で、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 16 日、第 2 段エンジンの内部で過電流が発生したため、電源供給を遮断して着火しなかったとみられると文部科学省の有識者会合で報告した。 過電流は、現在の主力の H2A ロケットでも使われている機器で起きた可能性もあり、JAXA は H2A への影響についても調べる。
JAXA によると、過電流が発生したのは、エンジンを駆動させる機器やそれにつながる電気系統。 これを異常として検知した機器が着火に必要な電源の供給を遮断したという。 異常を検知した機器は H3 で新たに搭載されたものだが、エンジンを駆動させる機器は H2A と共通しているという。 H2A は、2024 年度の 50 号機の打ち上げまで予定されている。 (玉木祥子、asahi = 3-16-23)
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H3 ロケット、打ち上げ失敗 = 2 段エンジン着火確認できず - 新主力機、日本の宇宙開発に痛手・JAXA
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 7 日午前 10 時 37 分、新型の液体燃料ロケット「H3」 1 号機を鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げた。 しかし、第 2 段エンジンの着火が確認できず、ミッション達成の見込みがなくなったとして、同 51 分に機体を破壊する指令破壊信号を送信し、機体は予定の海域に落下した。 打ち上げは失敗した。 文部科学省は同日、原因の調査などを行う対策本部を設置。 JAXA が詳しい状況を調べている。
JAXA のロケット打ち上げ失敗は、昨年 10 月の固体燃料ロケット「イプシロン」 6 号機以来。 H3 は、現行の H2A の後継となる新基幹ロケットで、失敗は日本の宇宙開発にとって大きな痛手となった。 全長約 57 メートル、2 段式の 1 号機は、先進光学衛星「だいち 3 号」を搭載。 約 17 分後に軌道に投入する予定だった。 1 号機は打ち上げから約 5 分後、新開発の主エンジンを搭載した第 1 段は正常に燃焼を終了し、分離。 その後、第 2 段エンジンが燃焼を開始するはずだったが、着火が確認できなかった。 (jiji = 3-7-23)
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H3 ロケット、打ち上げを 6 日午前 10 時 37 分に設定 対策取り挑戦
発射直前に異常を検知し、打ち上げが中止になった新型ロケット「H3」初号機について、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 3 日、鹿児島県の種子島宇宙センターから 6 日午前 10 時 37 分に打ち上げると発表した。 地上設備との電気的な接続を切る際に発生したノイズが影響して、電圧が一時的にゼロになる異常が検知されたという。 ノイズの抑制対策を取り、改めて地球観測衛星「だいち 3 号」の打ち上げに挑む。
JAXA によると、2 月 17 日の打ち上げ直前、主エンジン「LE9」に着火後、ロケットの第 1 段にある機体制御用の機器と地上設備をつなぐ電気的な 5 本のラインを一括して遮断したことで、ノイズが発生。 このノイズによって誤作動が起こり、LE9 に電源を送る半導体スイッチがオフになった。 電圧が一時的にゼロになったため異常と検知したという。
発射 0.4 秒前に着火予定だった 2 本の固体ロケットブースターに着火の信号が送られなかった。 発端となったノイズを抑える対策として、5 本のラインの遮断するタイミングをずらすようプログラムを書き換えたという。 JAXA の岡田匡史プロジェクトマネージャは「(原因の)しっぽをつかむまで時間がかかり、焦りもあった。 今度こそ打ち上げたいと思う。」と話した。 (玉木祥子、asahi = 3-3-23)
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次世代の日本の大型ロケット「H3」打ち上がらず 主エンジン点火も
新型ロケット「H3」の初号機が、17 日午前 10 時 40 分ごろの予定時間に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上がらなかった。 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) によると、主エンジンは着火したものの、固体補助ロケットブースターが着火しなかった模様。 H3 には地球観測衛星「だいち 3 号」を搭載していた。
H3 は現在の基幹ロケット「H2A」の後継機として、JAXA と三菱重工業が共同開発した液体燃料ロケットで、新規の大型ロケットの打ち上げは約 30 年ぶりだった。 従来の 1.4 倍の推力で打ち上げる主エンジン「LE9」を開発。 国際競争力を高めるため打ち上げ費用は H2A の半額の50億円をめざしていた。 だいち 3 号は、2011 年に運用終了した初代「だいち」の後継機の衛星。 地上の物体を見分ける能力を初代の約 3 倍に向上させ、災害時の状況把握に活用する計画だった。 (玉木祥子、asahi = 2-17-23)
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H3 ロケット開発ほぼ完了 JAXA、1 号機発射に向け準備
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 20 日、日本の新たな主力機として期待されている H3 ロケットの開発作業がほぼ完了したと明らかにした。 本年度内の 1 号機発射を目指しており、本番に向けた準備に入る。 担当する岡田匡史 JAXA プロジェクトマネジャーは記者会見し、年度内の実施に支障はなく、日程はできるだけ早く決定したいと説明。 「今まで以上に JAXA とメーカーが力を合わせて頑張っていく」と述べた。 11 月までにメインエンジンの燃焼試験などを行い、計画通りデータを取得することに成功した。 改善が必要な点も複数見つかったが、多くは年内にも対応を終えられるとしている。 (kyodo = 12-20-22)
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新型ロケット「H3」 発射地点でメインエンジン燃焼試験 鹿児島
今年度中の打ち上げを目指して開発中の新型ロケット「H3」について、JAXA = 宇宙航空研究開発機構などは 7 日、鹿児島県の種子島宇宙センターで、初号機を実際の発射地点に据え付けて、メインエンジンを燃焼させる試験を行いました。 「H3」は、現在の主力ロケット「H2A」の後継機として、JAXA と三菱重工業が 8 年前、開発に着手しました。 初号機の打ち上げは、当初 2020 年度の計画でしたが、メインエンジンの不具合による 2 度の延期を経て、JAXA はことし 9 月、開発の見通しが立ったなどとして、今年度中の打ち上げを目指すと発表しました。
「H3」は、開発の終盤に入っていて、初号機の打ち上げに向けた最終試験のため、6 日夜、実際の発射地点に移されました。 試験は、当初の予定よりも 9 時間遅れて 7 日午後 4 時半に始まり、メインエンジン 2 基は、ごう音とともに白い煙を出しながら、およそ 25 秒間燃焼しました。 JAXA では、メインエンジンが計画どおり燃焼したかや、振動や音が機体に与える影響などを検証し、今後、初号機の打ち上げ予定日を決めたい考えです。
現在、主力ロケットとして 20 年以上運用している「H2A」は、打ち上げの成功率が高い一方、1 回の打ち上げ費用は、およそ 100 億円かかっています。 「H3」は、この半分の費用で運べる重量をおよそ 1.3 倍に増強する計画で、世界で激化するロケットの打ち上げビジネスで、海外に対抗できるか注目されます。 (NHK = 11-7-22)
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新型ロケット H3 を公開「やっと形に」 一回り大きく
三菱重工業は 23 日、新型の H3 ロケットを愛知県の飛島工場で公開した。 現在の主力である H2A より一回り大きく、より重い衛星を打ち上げられるほか、ほとんどの電子部品を汎用品にするなどして打ち上げコストを H2A の半分の約 50 億円に抑える。H3 初号機は新年度に打ち上げられる予定で、1 月末にも発射場のある鹿児島県の種子島に運ばれる。
H3 は直径 5.2 メートルで、初号機は全長 57 メートル。これまでは側面に「NIPPON」と書いていたが、海外からの受注を視野に「JAPAN」と表記することにした。 当初は今年度内の打ち上げを目指していたが、開発中のエンジンに不具合が見つかり延期していた。 三菱重工宇宙事業部の奈良登喜雄・主席プロジェクト統括は「やっと形になり感慨深い。 種子島の確認でも課題が出ると思うが、確実に完成を目指したい。」と話した。 (小川詩織、asahi = 1-23-21)
H2A ロケット打ち上げ成功 情報収集衛星を予定の軌道に投入
H2A ロケット 48 号機が 12日午後1時45分ごろ、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。 政府の情報収集衛星「光学 8 号機」が予定の軌道に投入され、打ち上げは成功した。 H2A の打ち上げ成功は、42 機連続。 情報収集衛星は、安全保障に関する情報収集や、大規模災害時の状況把握をする。 カラーで地上を撮影できる光学衛星と、夜間や曇天でも地上を撮影できるレーダー衛星がある。
内閣衛星情報センターによると、データを高い解像度で地上に高速送信する「データ中継衛星」を含めて、5 機が設計寿命内で運用中だという。 政府は将来、これまでとは異なる時間帯に撮影できる新たな衛星も含めた 10 機体制の確立をめざす。 光学 8 号機は 2018 年に打ち上げた光学 6 号機の後継機。 H2A の打ち上げは 50 号機までの計画で、残り 2 機となった。 国の大型ロケットの運用は、後継機の新型ロケット「H3」に移行する。
ただ、H3 の初号機の打ち上げは昨年 3 月に失敗。 2 号機の打ち上げは今年 2 月 15 日に予定されている。 H2A ロケット 48 号機の打ち上げは、当初 11 日を予定していたが、天候悪化のため、1 日延期されていた。 (玉木祥子、asahi = 1-12-24)
昨年打ち上げ X 線天文衛星の初画像 「超ド級で予想裏切る」その能力
昨年 9 月に打ち上げた X 線天文衛星「XRISM (クリズム)」が初めて観測した画像 2 枚を、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が 5 日に公開した。 XRISM には、広い視野をもつ望遠鏡と、天体からの光の波長を高精度で分光観測する望遠鏡が搭載されている。 この二つの望遠鏡でそれぞれ観測した最初の画像という。 一つは、昨年 10 月 14 - 24 日に広い視野の望遠鏡で観測した約 7 億 7 千万光年の距離にある「Abell (エイベル) 2319」と呼ばれる銀河団。 もう一つは、約 16 万光年の距離にある大マゼラン雲の中にある天体で、昨年 12 月 4 - 11 日に高精度の分光能力を持つ望遠鏡で観測した。
銀河団の中には高温ガス「プラズマ」が漂っている。 このガスから出ている X 線を捉えることで、銀河団の構造を読み解く。 捉えた X 線を紫色で表現した。 この銀河団は非常に大きく、従来の X 線天文衛星では 1 回の観測で全体を捉えることは難しかった。 広い視野をもつ XRISM によって、銀河団のまわりの空間を含んだ広い範囲を観測できた。 分解能も上がり、二つの銀河団が衝突している様子を明瞭に捉えることもできたという。 ダークマター(暗黒物質)の重力によって銀河団同士が引き寄せられ、衝突や合体を繰り返して大きな銀河団に成長していく。 観測データを詳しく分析し、どのようにダークマターが働いて大きな銀河団が形成されていくのかを探るという。
公開されたもう 1 枚は、大マゼラン雲で捉えた、星が寿命を終えるときの爆発「超新星爆発」の残骸。 爆発によって宇宙空間に広がる元素の種類や量、高温ガスの温度や流れる速さを正確に求めることができたという。 XRISM は昨年 9 月、大型ロケット「H2A」の 47 号機で打ち上げられた。 日本はこれまで、1979 年の「はくちょう」に始まり、2016 年の「ひとみ」まで 6 機の X 線天文衛星を打ち上げ、数多くの成果を出してきた。 だが、ひとみは姿勢制御のシステムの不具合と運用ミスが重なり、打ち上げから約 2 カ月で運用停止。それ以降、日本の X 線天文衛星による観測は空白期間が続いていた。
JAXA の前島弘則・XRISM プロジェクトマネージャは「科学者たちが画像を見て議論が尽きない状況」と話す。 プロジェクトの研究主宰者である田代信(まこと)・特任教授は「これまでも新しい装置による観測で宇宙を見てきたが、今回は超ド級で予想を大きく裏切るもの。 これから詳しい分析で科学成果にたどり着きたい。」と話した。 XRISM は大きな問題なく運用中という。 設計寿命は 3 年。 今後、ほかの天体も観測していく。 (玉木祥子、asahi = 1-5-24)
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H2A ロケット 47 号機、打ち上げ成功 X 線天文衛星と月探査機投入
大型ロケット「H2A」の 47 号機が 7 日午前 8 時 42 分ごろ、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上がった。 打ち上げから約 14 分後に X 線天文衛星「XRISM (クリズム)」、その約 33 分後に月探査機「SLIM (スリム)」をそれぞれ予定の軌道に投入し、打ち上げに成功した。 XRISM は、2016 年に打ち上げから約 2 カ月で運用停止した X 線天文衛星「ひとみ」の後継機。 高度約 550 キロメートルで地球のまわりを飛び、天体や高温ガスが出す X 線をとらえて星や銀河の成り立ちを探る。
SLIM は来年 1 - 2 月ごろ、日本初の月面着陸に挑む。狙った場所から誤差 100 メートルの高精度の着陸技術で「降りたい場所に降りられる」ピンポイント着陸をめざす。 月面着陸に成功すれば、旧ソ連、米国、中国、インドに次いで世界で 5 カ国目となる。 H2A は、2001 年に初号機が打ち上げられてから今年 1 月まで、46 機中 45 機の打ち上げに成功。 成功率の高さが評価されている。 50 号機までで運用を終えて、後継機の新型ロケット「H3」に移行する。 国産ロケットの開発は正念場に立たされている。 昨年 10 月には小型ロケット「イプシロン」 6 号機、今年 3 月には H3 の初号機の打ち上げに失敗。 さらに、7 月には開発中の「イプシロン S」のモーターの燃焼試験中に爆発が発生した。 昨年からトラブルが相次いでいる。 (玉木祥子、asahi = 9-7-23)
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H2A ロケット 47 号機、天候悪化の見通しで打ち上げは 28 日に
鹿児島県の種子島宇宙センターで 27 日午前に予定していた基幹ロケット「H2A」 47 号機の打ち上げについて、三菱重工業は 25 日、天候悪化が予想されるため、1 日延期して 28 日午前 9 時 26 分に設定すると発表した。 27 日にかけて上空で雷が発生しやすくなる可能性があり、打ち上げに向けた準備作業や正常な飛行ができないおそれがあると判断したという。 H2A ロケット 47 号機打ち上げは当初、5 月を予定していた。 だが、3 月に打ち上げに失敗した新型ロケット「H3」初号機が、H2A と共通する部品に問題がある可能性があったため、8 月に延期していた。 47 号機には、月探査機「SLIM (スリム)」と X 線天文衛星「XRISM (クリズム)」を搭載する。 SLIM は、旧ソ連、米国、中国、インドに続く 5 カ国目の月面着陸をめざしている。 (玉木祥子、asahi = 8-25-23)
大学生が作った超小型衛星、宇宙へ 考案した「音」のミッションとは
1辺 10 センチ、重さ 1 キロの超小型衛星が、来春、宇宙へ打ち上げられる。 作ったのは、千葉工業大学(千葉県習志野市)の学生だ。 宇宙でのミッション考案、衛星を動かすプログラム作成、そして米航空宇宙局 (NASA) との交渉まで、学生が担った。 計画では 2030 年までに 9 機が、次々と宇宙へ飛び立つ予定だ。 衛星は「KASHIWA」と名付けられた。 製作したのは、同大の惑星探査研究センターの学生チーム「GARDENs (ガーデンズ)」の 4 年生約 10 人。 チームは授業の単位とは関係ない、サークルのような集まりで、大学の支援を受けて衛星作りに取り組む。
ミッションの一つは地球の定点観測、残り二つは …
超小型衛星は、世界で毎年数百機が打ち上げられており、今回作られたキューブサットと呼ばれる超小型衛星は、基本設計部分がすでに確立されている。 そこに、それぞれが独自のミッションを加えていく。 「KASHIWA」には、学生が考えた三つのミッションが載せられた。 一つはカメラでの地球の定点撮影。 関東地方の夜間の都市光、太平洋のゴミベルト、アフリカの自然公園の写真を撮り、その動きや変化、光の量などを観察する。 二つ目は、2 個搭載しているレンズを使った、国際宇宙ステーション (ISS) との距離の測定。 もう一つは、地磁気をとらえて音声データに変換し、音として楽しんでもらう、というものだ。
作業は昨年 2 月にスタート。 当時は、新型コロナの感染拡大で外出自粛などもあった時期。 チームは「娯楽が少ない時だったので、みんなが楽しめる『音』のミッションも加えた」という。 そして、衛星の部品を調達して組み立て、宇宙での運用に耐えるか試験を繰り返した。 衛星は今月には宇宙航空研究開発機構 (JAXA) へ引き渡され、来春、アメリカからスペース X 社のファルコン 9 で打ち上げられる予定だ。 そして ISS から宇宙空間に投入される。 JAXA や NASA との交渉、内閣府や総務省への申請手続きも必要だが、それらを学生がすべて担い、惑星探査研究センターのスタッフがアドバイスした。
同大はこれまで、クジラや流星、宇宙塵を調査する衛星を製作・運用するなど、実績を重ねてきたが、学生が主体となって衛星を作るのは初めての試みという。 21 年からこの「高度技術者育成プログラム」を始めており、不足する宇宙産業の中核技術者の育成を狙う。 そのため、大学が衛星の製作費や ISS への運搬費などを負担する。 衛星は、1 学年が 1 機作るペースで進められている。 2 号機にあたる KASHIWA のほか、1、3 号機も打ち上げの準備を進める。 1 - 3 号機の成果を踏まえ、30 年までに最大 9 機を打ち上げる計画だ。
KASHIWA でカメラミッションを担当した高橋悦子さん (24) は、先端材料工学科の 4 年生。 「宇宙から地球を撮影することには夢があるが、このチームに所属しなければ、一生、宇宙に関わることはなかった。 貴重な経験を積むことができた。」という。 機械工学科 4 年でプロジェクトマネジャーの関口智則さん (22) は「小さな衛星に様々な機能を積み込み、それをきちんと動かすための調整が大変だった。 このミッションを通し、人類に貢献できる人材になりたい、と考えるようになった。」と話している。 衛星は、地上約 400 キロの軌道に投入され、地球を 90 分で 1 周。 約 1 年後には大気圏に突入し、その役目を終える予定だ。 (本田大次郎、asahi = 11-26-23)
木でつくった人工衛星を打ち上げへ 宇宙環境に配慮、選ばれた木材は
木でつくった人工衛星を打ち上げる - -。 そんな世界初のプロジェクトに、京都大などの研究チームが取り組んでいる。 将来的には宇宙での木材の活用を目指し、2024 年度にも木造人工衛星を米国のロケットで打ち上げる予定だ。 木造人工衛星は京都大と住友林業が共同で開発を進めている。 大きさは 10 センチ四方ほどの超小型衛星。 半導体の基板はシリコンや金属やプラスチックなどでできているが、機体は木材で作る。
京都大などは昨年、ホオノキ、ダケカンバ、ヤマザクラの 3 種類の木材を国際宇宙ステーション (ISS) の船外で約 10 カ月さらし、劣化の状態を調べた。 その結果、強い宇宙線や激しい温度変化のある過酷な宇宙環境でも、ほとんど劣化しなかったという。 その中で、軽くて割れにくいホオノキを選んだ。 ホオノキは材質も均一で湿度変化にも強く、日本刀のさやにも使われている木材だ。 ただ、木材自体は金属に比べ強度が一様ではないため、設計変更するなど試行錯誤を繰り返しながら開発を続けている。
木造人工衛星を打ち上げる背景には、宇宙の環境問題がある。 近年、通信衛星など、多くの人工衛星が打ち上げられているが、こういった従来の人工衛星はアルミや鉄といった金属で機体が作られている。 運用後には大気圏に突入して燃焼させるが、燃えた後も数マイクロメートルほどの極めて小さい酸化アルミニウムの粒子が残り、大気汚染につながる。 また、粒子が太陽光を反射し、地球の気候に影響する恐れがあるという。 木材であれば燃え尽きるため、粒子の放出は減るという。 宇宙飛行士で、研究チームの土井隆雄・京都大特定教授は「ゆくゆくは宇宙で木材の活用ができればと思っている。 まずはしっかりと打ち上げて、木の人工衛星が実現できると証明したい。」と話している。 (小川詩織、asahi = 10-3-23)
燃焼試験で爆発のイプシロン S モーター 「圧力上昇は原因ではない」
開発中の小型ロケット「イプシロン S」のモーターの燃焼試験中に起きた爆発について、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 17 日、これまでに明らかになった試験時の状況を発表した。 JAXA によると、秋田県能代市の能代ロケット実験場で 14 日午前 9 時から、ロケット 2 段目のモーターの燃焼試験を始めた。 これまでのデータの分析から、モーターに点火して約 20 秒後、燃焼時にモーターケースにかかる圧力が予測より高くなったという。 爆発が起きた約 57 秒後には、その圧力は大気圧の約 75 倍にあたる約 7.5 メガパスカルだった。
ただ、モーターケースに推進薬を入れて燃焼させたときの最大圧力は 8.0 メガパスカルの想定で、モーターケース自体は 10.0 メガパスカルまで耐えられる設計という。 JAXA は、現時点では圧力の上昇が原因とは言えないと説明。 「爆発までノズル駆動は正常だった」といい、爆発の原因の調査を進めている。 爆発によって、燃焼試験をしていた試験棟は全焼した。 JAXA によるとモーターの大部分は試験棟の外に飛び散った。一部は回収したものの、実験場が近接している日本海にも落ちたという。 (玉木祥子、asahi = 7-17-23)
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JAXA ロケット実験場で爆発 イプシロン S 燃焼試験の開始 57 秒後
秋田県警によると、14 日午前 9 時すぎ、秋田県能代市にある宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の能代ロケット実験場で「大きな音と煙が上がっている」と、近くの女性から 110 番通報があった。 JAXA によると、実験場内でイプシロン S ロケットの 2 段目のモーターの燃焼試験中 に爆発が起きた。 人的被害の情報は入っていないという。 秋田県警能代署や能代消防署によると、この実験場では、午前 9 時からロケットモーターの燃焼試験が予定されていた。 消防などによると、実験場の建屋 1 棟で火災が発生したため、消防車など計 10 台を出動させ、午前 11 時すぎに鎮火したという。けが人の情報はないという。
JAXA によると、14 日午前 9 時から実験場内の真空燃焼試験棟でイプシロン S ロケットの 2 段目のモーターの燃焼試験をしていた。 燃焼時間は約 2 分間の予定で、燃焼開始から約 57 秒後に爆発が起きたという。 燃焼試験時、半径約 600 メートル以内に立ち入り規制をしていた。 今のところ、人的被害の情報は入っていないという。 JAXA の能代ロケット実験場は、1962 年に開設された。 現在は、小型固体燃料ロケット「イプシロン」の改良型「イプシロン S」の燃焼試験や、繰り返し打ち上げることができる「再使用ロケット」の実験などをしているという。 (asahi = 7-14-23)
〈編者注〉 衛星打ち上げのコスト低減と取り扱いの簡素化という大義名分はありますが、可動型長距離ミサイルの発射エンジンとして必要不可欠なものです。 ミサイル大国への道でもあります。
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