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有人月探査に向け 8 カ国署名へ 独自開発の中国に対抗か

米国が主導する有人月探査計画に向け、日米英など 8 カ国が、国や民間企業が月や小惑星、火星などの宇宙資源を利用したり、緊急時に助け合ったりすることを確認する国際合意に近く署名することが 13 日わかった。 合意は「国家間の平和的な関係を強化することを目的」とし、独自の月探査や宇宙ステーション建設を進める中国を牽制する狙いもあるとみられる。 合意案は、宇宙の平和利用をうたって 1967 年に発効した宇宙条約の考え方を再確認するほか、民間による宇宙開発が加速していることや、月の水資源を飛行士の飲料水などに使う計画があることを受け、国や民間が宇宙資源を利用できることを明記するもの。 日米英豪やカナダ、イタリア、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦の 8 カ国が署名する見通し。

このほか、ロケットや宇宙船などの共同運用や緊急時の相互支援、宇宙ゴミを増やさない対策や科学データの公開なども規定する。 さらに、アポロ計画の着陸地点など歴史的価値のある遺産の保護もうたう。 米国は当初、計画に参加するそれぞれの国と法的拘束力のある二国間協定を結ぼうとしていたが、時間がかかったため、11 月の大統領選前に成果を出せる法的拘束力のない合意に方針を変えたとみられる。 中国が昨年、史上初めて月の裏側へ探査機を着陸させるなど独自の宇宙開発を進めており、国際的な合意を得て対抗する思惑もありそうだ。

月探査計画では、早ければ 2024 年にも米国人飛行士が月に降り立ち、将来的には月面基地も建設する予定。 日本も探査車や無人補給船などを開発し、日本人飛行士の月着陸を目指している。 (小川詩織、石倉徹也、asahi = 10-13-20)


宇宙基地にゴミ接近、あわや衝突 日本のロケット破片か

米航空宇宙局 (NASA) は 22 日、国際宇宙ステーション (ISS) に宇宙ごみ(デブリ)が接近し、衝突を避けるため軌道を修正する操作を行ったと発表した。 飛行士 3 人は衝突に備え、ISS にドッキングしているソユーズ宇宙船の近くに退避したという。 専門家はデブリは 2018 年に打ち上げられた日本の H2A ロケットの第 2 段部分の破片だと解析している。 NASA によると、22 日午後に正体不明のデブリが高度約 400 キロを周回する ISS に接近することが判明。 最接近する約 1 時間前に、ドッキングしている宇宙船の推進剤を噴射して、軌道を微修正した。 デブリは ISS から 1.39 キロのところを通過した。 飛行士は念のため退避したが、危険はなかったという。

宇宙船の軌道を追っている米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクダウェル氏はツイッターで、デブリは 18 年 10 月に種子島から打ち上げられた H2A ロケット 40 号機の第 2 段の破片だとみられると投稿した。 H2A の第 2 段部分は、全長 11 メートル、外径 4 メートル。19 年 2 月に分裂し、70 以上の破片になっていた。 ほかのデブリと衝突して、多くのデブリを生む懸念がある。 余った燃料や電池の爆発で自壊することもある。

宇宙開発に民間が参入し、ロケットの打ち上げが増えるにつれ、デブリ問題は喫緊の課題になっている。 NASA のブライデンスタイン長官は 22 日、ツイッターで、「2020 年だけで ISS は 3 回のデブリ回避をしている。 デブリ問題は悪化している!」と述べた。 この日、NASA は米軍に新たに発足した宇宙軍と、デブリの監視などを含む新たな協力の覚書に署名した。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 9-24-20)


こうのとり、成功率 100% のまま勇退 新型機が継承へ

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は、国際宇宙ステーション (ISS) に物資を輸送した無人補給船「こうのとり (HTV)」 9 号機が任務を完了し、20 日に大気圏に突入して燃え尽きたと発表した。 HTV は今回で退役し、次回からは有人月探査計画にも参加する新型機が任務を引き継ぐ。 計 9 機で 50 トンの物資を運び、試料を持ち帰る実験にも成功するなど、すべての任務を成功させた。

9 号機は 19 日、約 3 カ月間係留されていた ISS からゆっくりと離脱した。 最後の任務では飲料水や生鮮食品、大型バッテリーを運んだほか、将来の自動ドッキングを見据え、カメラの映像を無線通信で ISS に送る実験も成功させた。 米ヒューストンから離脱を見守った金井宣茂(のりしげ)飛行士は、離れていく HTV に「ありがとう。 さようなら、こうのとり。」と語りかけた。 20 日、南太平洋の上空で大気圏に再突入した。

HTV は 2009 年に初飛行。 米スペースシャトルの退役後は ISS へ大型貨物を運べる唯一の船で、米ロの船が失敗しても成功率 100% で ISS の運用を支えた。 JAXA の佐々木宏理事は「開発当初は米航空宇宙局 (NASA) からも『ロケットを打ち上げただけで、ランデブーもしていない国が』との(低い)評価だった。 安定した輸送で日本の宇宙開発の信頼性を高めてくれた。」と語った。

初号機では重要な物資を運ばせてもらえず、代えが利く食品や実験装置だけだった。 実績を重ね、シャトルの退役もあって、少しずつ有力な輸送船としての地位を固めた。 7 号機では、ISS で実験した試料を地球に持ち帰る挑戦にも成功した。 この時の再突入でカプセルにかかった加速度は重力の 4 倍以下で、人が乗って帰還できるレベルだった。 植松洋彦・HTV 技術センター長は「将来の有人飛行にも適用できる安全設計だと証明できた」と胸を張った。

後継の HTV-X は、輸送能力が 5 割増しとなり、月を回る宇宙ステーションへの物資輸送も可能な設計となる。 佐々木理事は「月でも火星でも、必要な所に必要なものを届けられるようにしたい」と話した。 (小川詩織、asahi = 6-22-20)


H2A ロケット打ち上げ成功 UAE の探査機を軌道投入

三菱重工業は20日午前6時58分、H2Aロケット42号機を鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げた。約1時間後、アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「HOPE(ホープ)」を高度約400キロで予定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。HOPEは来年2月に火星を回る軌道に入り、火星大気の温度や水蒸気、ちりなどを観測する予定だ。 打ち上げは当初15日の予定だったが、悪天候で延期されていた。(小川詩織)

UAE、国を挙げて祝福

アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機が載せられたH2Aロケットの日本での打ち上げ成功を、UAEの人々は国を挙げて祝福した。 地元テレビは、アラブの国々にとって初の火星探査機が打ち上げられる 1 時間以上前から特集番組を放映し、日本と中継を結んだ。 種子島で打ち上げに立ち会ったUAEの技術者らは、「たくさんの困難があったが打ち勝ってきた」などと興奮した様子で語った。 地元紙も打ち上げ前から1面に記事を据え、「アラブの歴史の転換点だ」などと伝えていた。

世界一高いビルや砂漠のリゾートホテルで日本人にもなじみの深いUAE。中東で最大の約4千人の日本人が住む。潤沢なオイルマネーや地域のビジネスハブとしての役割を背景に成長を続けてきたが、原油価格の下落や需要低迷を見据え、産業の多角化を目指す。人工知能(AI)などと並んで、力を入れるのが宇宙産業だ。 UAEは2014年に宇宙庁を設立。昨年9月にはUAE初の宇宙飛行士が誕生した。応募には4千人以上が殺到する人気ぶりだった。地元メディアなどによると、宇宙事業に投じた額はこれまでに200億ディルハム(約5800億円)以上にのぼるという。

自国での開発を進めることは、若い技術者の育成と科学立国への足がかりにもなる。「希望」と名付けられた今回の探査機は、米国の大学などと協力して数年かけて開発。UAE首相を務めるドバイのムハンマド首長は、「(探査機は)科学的な成果だけでなく、不可能はないという未来の世代へのメッセージになる」と訴える。 今回の火星探査機が軌道に入るのは、UAE建国50周年となる来年の2月の予定だ。新型コロナウイルスの影響で来年への延期が決まっているドバイの万博とともに、国の威信を高める機会になるとみられている。 (ドバイ = 高野裕介、asahi = 7-20-20)

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UAE 火星探査機「HOPE」 7 月 20 日朝に種子島宇宙センターから打ち上げ

三菱重工業は、アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「HOPE」を搭載した H-2A ロケット 42 号機の打ち上げを 7 月 20 日朝に決定したことを発表しました。 同機は当初、15 日に打ち上げを実施する予定でしたが、前日に「天候悪化が予想」されたため、延期されていました。 17 日時点では 20 日の天候状態は問題ないと見られています。

打ち上げ日時は現在のところ日本時間 2020 年 7 月 20 日(月) 6 時 58 分 14 秒とされており、火星にはアラブ首長国連邦の建国 50 周年となる来年 2021 の年 2 月に到着の予定。 天候不順等に備えた打ち上げ予備期間は 8 月 13 日までが確保されています。 なお、打ち上げ前後の様子は三菱重工によって当日朝 6 時 40 分からライブ配信される予定です。 (Sorae = 7-19-20)


早くて安い? 国産ロケット「H3」 飛躍なるか

三菱重工業が、次期主力ロケット「H3」の、来春までの初打ち上げをめざしている。 人工衛星などを運ぶビジネスとして自立させたい考えだが、海外のライバルは先を行く。 勝機はあるのか。

5 月 21 日未明、鹿児島県にある種子島宇宙センターから、先代にあたる「H2B ロケット」の 9 号機を打ち上げた。 国際宇宙ステーションに食料や実験機器を運ぶ無人の補給船「こうのとり」を軌道に乗せ、打ち上げは成功した。 2009 年にデビューした H2B は、この 9 号機が最後の打ち上げ。 公的な仕事が中心で、この間、海外や民間から一件も受注できなかった。 ひと回り小さく、01 年から運用している兄弟機「H2A ロケット」も、海外や民間からの受注は、わずか 3 件。 年に 15 - 25 件とされる世界市場で存在感は薄い。

一番の理由は価格だ。 「H2A」の基本的なモデルの 1 回の打ち上げ額は、おおよそ 100 億円だ。 20 年前から変わっていない。 三菱重工の防衛・宇宙事業代表の阿部直彦執行役員は「H3 でコストを下げないと大きく取り残される」と危機感を隠さない。 「H3」の開発は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と二人三脚で 14 年から始めた。 自動車の部品を転用したり、3D プリンターを使ったり。 ほぼ手作業だった製造現場を機械化するなどし、従来の半額にあたる 50 億円をめざす。

年に 6 機の量産が欠かせず

50 億円で売るには、年 6 機の量産が欠かせないが、安定して受注が見込めるのは 3 機ほど。 位置情報の解析に使う準天頂衛星「みちびき」など日本政府系のミッションだ。 残る 3 機は、国内外から自力で受注しなければならない。 50 億円の実現にはさらに「製造現場での技術的な改善がもうふた押しほど必要」と、H3 プロジェクト責任者の奈良登喜雄氏は話している。 世界を見渡すと、「50 億円」が劇的に安いわけではない。

市場をリードしてきた欧州アリアンスペースが年内にも打ち上げる「アリアン 6」は、その 50 億円を予定する。 打ち上げる場所は、南米のフランス領ギアナ。 赤道のほぼ直下にあり、人工衛星の主な運び先である「静止軌道」に近い。 地球の自転も後押しとなり、打ち上げやすい。 手ごわいライバルは、欧州アリアンだけでなない。

米スペース X、価格破壊で先行

米スペース X は、10 年から運用する「ファルコン 9」で 50 億円での打ち上げをすでに実現している。 電気自動車の米大手、テスラの最高経営責任者でもあるイーロン・マスク氏が率いる。 三菱重工が取り組もうとしている汎用部品の転用で先行。 エンジンの設計も思い切って簡素化した。 使い捨てが常識だったロケットの再利用も進めつつある。 「スペース X は、将来的には 1 ケタ億円での打ち上げを見据えている。」 宇宙ビジネスのコンサルタント、大貫美鈴氏はそう話す。

打ち上げ、もはやサービス事業

成功率を向上させつつあるロシア、打ち上げ回数が多い中国、低価格を売りにするインド勢とも競う。 宇宙ビジネスに詳しい日本総研の斉田興哉氏は「ロケットの打ち上げは、すでにできて当たり前のサービス事業」と指摘。 「H3 がビジネスとして軌道に乗るかどうかは三菱重工の営業力にかかっている」と話す。 「H3」は、何をウリにしていくのか。 22 年以降の打ち上げ契約を結んでくれた英衛星通信サービス大手インマルサットからは「H2A や H2B の成功率と定刻打ち上げを評価いただいた」と、三菱重工の広報担当者は話す。

H2A と H2B を合わせた打ち上げ成功率は 98%。 世界平均とされる 95% を上回る。 三菱重工のパートナー、JAXA の山川宏理事長は「信頼性を担保するため、まずは初号機を(来春までに)着実に打ち上げられるよう総力を結集する」と話す。 人気の米スペース X は、数年分の受注を抱える。 H3 は、早く打ち上げたい事業者をまずは狙っていくという。 (小出大貴、asahi =6-15-20)


宇宙へ物資届ける「こうのとり」、最後の任務

国際宇宙ステーション (ISS) に物資を運ぶ無人補給船「HTV (こうのとり)」が 21 日、種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げられた。 9 回目となる HTV の打ち上げは、今回で最後。 ISS をめぐる国際協力でひときわ大きな存在感を示してきた輸送任務は、次世代機に引き継がれることになる。

輸送能力世界一 成功率は 100%

HTV は全長約 10 メートル、直径約 4.5 メートルの円筒形をした補給船だ。 宇宙飛行士がISSで長い期間過ごすために必要な食料や水などを届ける役割を担ってきた。 輸送能力は世界一で、米露補給船の 2 - 3.5 トンに対し、HTV は 6 トンに上る。 6 - 8 号機では、大型リチウムイオンバッテリーを搭載するなど、高い輸送能力を生かし、ISS の長期運用に不可欠な物資を運んできた。 今回の 9 号機でも、バッテリー 6 台と生鮮食品、飲料水など約 6.2 トンを届ける。

HTV は、ISS から 10 メートルほど離れたところまで近づいて並走。 飛行士が操作するロボットアームで機体をつかみ、ドッキングする。 この方法は、HTV で初めて導入され、後発の米補給船も採用するなど、先駆的な取り組みとなった。 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の植松洋彦・HTV 技術センター長 (57) は「日本発のシステムが世界標準となっている。 技術が国際的に認められた証しだ。」と話す。

HTV の開発は 1990 年代後半から始まり、2009 年 9 月に初号機が打ち上げられた。 特に 11 年の米スペースシャトル引退以降は、大型の機器を運べる唯一の補給船として、存在価値が高まった。 運用中の補給船の中で失敗がないのは HTV だけで、安定感は際立っている。

15 年、米露の補給船がロケットの爆発や通信障害のトラブルで補給に相次いで失敗した。 同年 8 月に打ち上げられた 5 号機は、米補給船で運ぶ予定だった水の浄化フィルターなどが急きょ搭載され、油井亀美也(ゆいきみや)飛行士 (50) がアーム操作を担当した。 打ち上げからドッキングまで問題なく成功し、日本の技術力が他国から称賛された。 (松田俊輔、稲村雄輝、yomiuri = 5-21-20)


はやぶさ 2、主力エンジン再噴射開始 … 地球へ「ラストスパート」

小惑星リュウグウを離れて地球へ向かっている探査機はやぶさ 2 が 12 日朝、主力のイオンエンジンの噴射を始めた。 はやぶさ 2 を運用する宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が明らかにした。 エンジンの運転期間は 9 月頃までで、地球への「ラストスパート」となる。

イオンエンジンの噴射は、約 8 億キロ・メートルに及ぶ帰路では、リュウグウ出発後の昨年 12 月 - 今年 2 月に続き 2 回目。 JAXA によると、同日午前 7 時にエンジンを点火し、同 7 時 25 分に安定して動作していることを確認した。 搭載されているエンジン 4 台のうち 1 台を運転しているという。 はやぶさ 2 は、10 月から別のエンジンを用いた精密誘導により地球に接近。 11 - 12 月に、リュウグウの石や砂が入っているとみられるカプセルを地球に投下する予定だ。 (yomiuri = 5-12-20)

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はやぶさ 2 がリュウグウ出発「乙姫様、また逢う日まで」

小惑星の砂や石を地球に持ち帰るため、探査機「はやぶさ 2」が 13 日午前 10 時 5 分、「リュウグウ」を出発した。 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が発表した。 遠ざかりながらの「お別れ観測」では、約 1 年半にわたり探査した最後の姿をとらえた。

はやぶさ 2 は、姿勢を制御する小型エンジンを噴き、リュウグウの高度 20 キロの探査拠点からゆっくり離れ始めた。 津田雄一・プロジェクトマネージャは「貴重なお土産と、時を忘れるほど夢中なひとときをくれたリュウグウをついに出発します。 これより一路地球を目指します。 ありがとう乙姫様、また逢う日まで」などとコメントし、別れを惜しんだ。

はやぶさ 2 は約 5 日後にリュウグウの重力圏を脱出。 主エンジンであるイオンエンジンの点検を始め、12 月 3 日以降、本格的に稼働させて地球へ向かう軌道に入る。 約 1 年かけて地球近くに戻り、2 度の着陸で採取したとみられる砂や石を入れたカプセルを、来年末に豪州上空へ放出する。 はやぶさ 2 はその後、軌道を変え、別の小惑星へ向け、新たな探査の旅に出る見込み。 (石倉徹也、asahi = 11-13-19)

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はやぶさ 2 「最後の実験」探査ロボット投下 … 重力を調査

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 3 日、探査機はやぶさ 2 が小惑星リュウグウの地表面に向けて小型探査ロボットを投下したと発表した。 8 日までロボットを使って重力を調べる。 はやぶさ 2 にとって今回が最後の実験で、11 - 12 月にリュウグウを出発し、地球を目指す。

はやぶさ 2 は、これまで国産ロボット 2 台と独仏共同開発の着陸機を使い、地表面を撮影したり、鉱物の組成を探ったりした。 今回投下されたのは 3 台目の国産ロボットで、はやぶさ 2 から千葉工大などが開発したカメラで地表面に近付く様子を観測し、リュウグウ周辺の重力を推定する。当初、地表面を移動する実験を予定していたが、ロボットが故障したため、内容を変更した。

2014 年 12 月に打ち上げられたはやぶさ 2 はリュウグウに到着後、2 度の着地で地表に金属の弾丸を撃ち込み、舞い上がった岩の破片などを機体内のカプセルに採取したとみられる。 持ち帰って分析すれば、地球の水や生命の起源に迫ることができると期待される。 今回の実験終了後、はやぶさ 2 はイオンエンジンの動作確認など、出発に向けた準備を始める。 予定では 20 年末頃に地球に接近し、オーストラリア大陸にカプセルを放出する。 (yomiuri = 10-3-19)

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はやぶさ 2 着陸地点は「うちでのこづち」 画像公開

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 25 日、小惑星探査機「はやぶさ 2」が再着陸に成功した際の写真や動画を公開した。 多くの科学的成果が生まれることを期待して、着陸地点を「うちでのこづち」と名付けたという。 1 回目の着陸地点は「たまてばこ」だった。 はやぶさ 2 は 11 日に小惑星「リュウグウ」に再着陸した。 発表によると、機体の一部が接地した瞬間に石や砂を採取するための弾丸が発射され、数秒後には離陸した。 写真には地表の詳しい様子がはっきり写っていた。

はやぶさ 2 は、太陽系ができた 46 億年前のままの砂や石を採取するため、史上初めて小惑星に人工クレーターをつくった。 地下に眠っていた砂が降り積もった付近に着陸し、採取に挑んでいた。 今後、今秋まで追加の調査を続け、年末に 7 億キロの帰途につく。 来年末ごろ、砂や石が入ったカプセルを地球に送り届ける予定だ。 (杉本崇、asahi = 7-25-19)

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「りゅうぐう」に 2 回目着陸 = 世界初の地下物質採取 - 「はやぶさ 2」・JAXA

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の探査機「はやぶさ 2」は 11 日午前 10 時すぎ、小惑星「りゅうぐう」に 2 回目の着陸を行い、成功した。 試料採取のための弾丸が発射されたことも確認された。 着陸場所は 4 月に作った人工クレーターの周辺で、JAXA は世界初となる小惑星地下からの物質採取にも成功したとみている。 JAXA によると、津田雄一プロジェクトマネジャーが管制室で、「タッチダウン(着陸・試料採取)は成功です。 また新たな歴史をつくった。」と成功を宣言した。

りゅうぐうには約 46 億年前の太陽系誕生当時の水や有機物が存在するとみられる。 地下の物質は太陽熱や放射線による影響が少なく、地表よりも当初の姿をとどめている可能性が高い。 試料を回収することで、太陽系の成り立ちや地球の生命の起源を探る手掛かりになると期待される。 今回の着陸目標は、りゅうぐうの赤道付近にあり、人工クレーターの中心から約 20 メートル離れた半径 3.5 メートルの領域。 人工クレーターを作った際に噴出した地下物質が堆積し、採取できる可能性が高いという。 (jiji = 7-11-19)

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はやぶさ 2 のカメラ、飛び散る岩石撮影 衝突装置が成功

小惑星「リュウグウ」に人工クレーターができた可能性が高い - -。 探査機「はやぶさ 2」が 5 日、リュウグウに金属の塊を撃ち込むことに成功した。 2 月の着陸に続く快挙で、世界初となる地中の岩や砂の採取に一歩近づいた。

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) によると、はやぶさ 2 は午前 10 時 56 分、リュウグウの高度約 500 メートルで銅の塊を地表にぶつける衝突装置を分離。 爆発によって飛び散る岩石などの破片で機体が損傷することを避けるため、はやぶさ 2 はリュウグウの裏側へ退避した。 分離から 40 分後、装置は高度約 200 メートルで爆発し、その力で重さ 2 キロの銅の塊を秒速 2 2キロでリュウグウの地表に撃ち込んだ。

事前に分離したカメラが捉えた爆発 1 - 2 秒後の画像には、地表から岩や砂が噴出している様子が確認できた。 さらに高精度の画質でも記録しており、今後詳細を解析するという。 吉川真ミッションマネージャは「地表に大きな変化が生まれた可能性がある。 どんなクレーターができたのか早くみたい。」と話した。 爆発によって、リュウグウの周辺には岩石の破片が漂っている可能性が高いため、はやぶさ 2 は今後、2 週間かけて高度 20 キロまで移動。 4 月下旬に降下してクレーターの状態を詳しく調べる。

着陸に支障がないことを確認できれば、5 月下旬以降に 2 回目の着陸と試料採取を試みる予定。 津田雄一プロジェクトマネージャは「はやぶさ 2 オリジナルの世界を開けた。 大変興奮している。 衝突は成功した。」としている。 (asahi = 4-5-19)

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はやぶさ 2 「最も危険な」爆発実験へ 直撃なら帰還困難

小惑星探査機「はやぶさ 2」が 5 日、地球から約 3.1 億キロ離れた「リュウグウ」の地表に、金属弾を撃ち込んで人工クレーターを作る世界初の実験に挑戦する。 小惑星内部の砂や石の採取が目的だが、前例のない試みはリスクも高い。 2 月の着陸に続き、プロジェクトの山場を迎える。

はやぶさ 2 は 4 日午後 1 時、高度約 20 キロの「探査拠点」から降下を開始した。 5 日午前 10 時 56 分、高度約 500 メートルで、クレーターを作るための「衝突装置」が分離される。衝突装置は直径 30 センチ、高さ約 20 センチの円筒形で、内部のプラスチック爆薬約 5 キロが上空で爆発し、2 キロの銅の塊が秒速 2 キロで地表に衝突してクレーターを作る。 一方で装置の破片や小惑星の岩石も四方に飛び散る。 「直撃すれば地球帰還が困難となるような最も危険なミッション」と宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の佐伯孝尚プロジェクトエンジニアは言う。

爆発は分離の 40 分後。 最大の課題は、その間にリュウグウの裏側まで素早く退避できるかだ。 L 字のような経路約 5.5 キロを最大で秒速約 3 メートルの「駆け足」で逃げる計画だが、秒速 1 メートルを超える速さは、リュウグウに到着して以降は試していない。 エンジンを噴く時間が長く回数も多いため、大きな誤差が出たり、姿勢がずれたりして、リュウグウに衝突する恐れもある。

自身の位置や向き、速度など正確な移動に必要な観測器も、リュウグウとの位置関係などから使えない。 「目隠し」の状態で、あらかじめ決めた道順に従って高精度に速度や姿勢を制御する必要がある。 地上とは、交信に往復 35 分かかり、指示は受けられない。 退避の難しさを人間で例えると「地図を頭に入れ、目や耳を塞いだ状態で 5 キロ以上先の目的地へ走っていくようなもの」という。 衝突装置を正確な向きで分離できるかも重要だ。大きくずれれば、飛び出す銅の塊が地表に当たらない。 衝突装置は一つだけ。 打ち上げから 4 年以上たつ中、爆薬が点火するかなど確認もできない中での一発勝負になる。

リスクがある一方、成功すれば得られる成果は大きい。 地中の岩石には太陽光などで風化していない水や有機物が多く含まれているとされる。 5 月下旬以降の着陸で採取できれば、地球の水や有機物の起源の謎に迫れる。 事前に分離したカメラでクレーターが作られる様子の撮影に成功すれば、世界初の成果だ。 吉川真ミッションマネージャは 2 日の会見で「初代はやぶさでも試さなかった新しい運用だ。 ぜひ成功させ、新たな探査の領域を切り開きたい。」と話した。 (石倉徹也、asahi = 4-4-19)

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小惑星リュウグウに太古の「水」 はやぶさ 2 が発見

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) などは、地球から約 3 億キロ離れた小惑星「リュウグウ」の地表から、太古の水成分を発見した。 探査機「はやぶさ 2」による成果で、生命に欠かせない水の起源の解明につながるという。 論文は 20 日、米科学誌サイエンスに掲載される。 JAXA によると、はやぶさ 2 がリュウグウに到着した昨年 6 月以降、地表からの赤外線を観測したところ、酸素と水素の原子が結びついた水酸基 (OH) の存在を示す波長を捉えた。 リュウグウの「親」にあたる 46 億年前に生まれた大きな天体にあった液体の水の「名残」だ。 その大部分は太陽光や内部の熱などで失われたとみられる。

リュウグウの軌道や構成する岩石の特徴から、「親」の天体は、火星と木星の間にある小惑星「ポラナ(直径 55 キロ)」か「オイラリア(直径 37 キロ)」のどちらかと判明。 14 億年前か 8 億年前、ほかの天体と衝突して飛び散った岩石が再び集まるなど、衝突を繰り返して、現在のリュウグウの姿になったと考えられるという。 衝突の影響で、軌道が現在の地球寄りに近づいたらしい。 (石倉徹也、asahi = 3-20-19)

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はやぶさ 2、着陸成功 小惑星探査で偉業

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 22 日、探査機「はやぶさ 2」が地球から約 3 億キロメートル離れた小惑星「りゅうぐう」に午前 7 時 29 分着陸したと発表した。 岩だらけの地表で半径わずか 3 メートルの場所を狙って着地した。 小惑星への着陸は世界でも 2005 年の初代「はやぶさ」以来、2 例目。 極めて高い精度の着陸をなし遂げ、日本の技術力を証明するとともに小惑星探査で世界に存在感を示した。

JAXA 相模原キャンパス(相模原市)で記者会見した吉川真ミッションマネージャは「着陸に成功し、すぐに上昇した。 地表の岩石を採取するための弾丸を発射した信号も確認した」と語った。 成功の要因としてりゅうぐうの地形を画像で詳細に解析できたことなどを挙げた。 はやぶさ 2 は 22 日午前 6 時すぎから最終の降下を始めた。 地球からの指示が届きにくい最終盤はカメラや高度計を駆使した自動運転に入り着陸した。

岩石を採取するため地表に弾丸を発射したが、採取できたかわかるのは回収カプセルが地球に戻ってからになる。 小惑星の岩石は太陽系が 46 億年前に生まれたころの痕跡を残す「タイムカプセル」。 今後は 19 年夏までに再び着陸に挑み、20 年末までに地球へ帰還する。 宇宙の成り立ちや生命誕生の謎を探る今後に期待が膨らむ。 はやぶさ 2 は 10 年に小惑星「イトカワ」の微粒子を地球に持ち帰った初代はやぶさの後継機。 14 年 12 月に種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げ、18 年 6 月にりゅうぐう周辺に到着した。 地球帰還までの総事業費は約 289 億円を見込む。

小惑星探査の狙いの一つは「地球の生命はどこからきたのか」という人類の根源的な問いに答えることだ。 りゅうぐうは直径約 900 メートル。 生命の元となる有機物や水分を含む岩石が豊富とされる。 かつて地球に衝突した小惑星が有機物などをもたらし生命誕生を促したとの仮説がある。 小惑星は火星と木星の間に多いが、火星と地球の間にあるりゅうぐうは岩石を地球に持ち帰って調べやすく、目的地に決まった。

月や火星、その先の天体に向かう技術力を世界に示す思惑もある。 はるか遠くの小惑星に搭載カメラの画像や星の位置を頼りに近づき、ピンポイントで降りる。 こうした手順や経験は強みになる。 米航空宇宙局 (NASA) も「米国版はやぶさ」と呼ばれる小惑星探査機「オシリス・レックス」を小惑星「ベンヌ」周辺に到着させた。 20 年に岩石を採取し、23 年に地球に運ぶ予定だ。 はやぶさ 2 の成否に関心を寄せているという。 (nikkei = 2-22-19)

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はやぶさ 2、リュウグウ着陸は 22 日に

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 2 月 6 日、探査機「はやぶさ 2」を小惑星「リュウグウ」へ 22 日午前 8 時ごろにタッチダウン(最初の着陸)させると発表した。 当初は昨年 10 月下旬に着陸を予定していたが、リュウグウの表面が想定以上にでこぼこしていたため、安全に着陸できるポイントの検討に時間を要していた。 はやぶさ 2 は昨年 10 月、着陸の目印になる「ターゲットマーカー」をリュウグウに投下。 ターゲットマーカーが反射する光をカメラで捉え、位置を把握しながら降下する計画だ。 着陸するポイントは、このターゲットマーカーに近く、大きな岩がない直径 6 メートルほどの狭いエリアを選んだ。 (ITmedia = 2-6-19)

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はやぶさ 2 着陸候補地の選定大詰め = 岩だらけ「りゅうぐう」 - 難度高く、1 月末にも

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 1 月末にも、探査機「はやぶさ 2」による小惑星りゅうぐうへの着陸・試料採取(タッチダウン)に挑む。りゅうぐう表面は、着陸の障害となる大きな岩が点在していることが判明。 JAXA は昨年 10 月末に予定していた最初のタッチダウンを延期し、着陸先の選定を慎重に進めている。

JAXA は昨年 9 - 10 月、りゅうぐう赤道付近の候補エリアに向け、計 3 回の着陸リハーサルを実施。 レーザーセンサーを使って高度や姿勢を自律制御する方法で、高さ 12 メートルまで降下に成功した。 津田雄一プロジェクトマネジャーは「あとは降りるだけという状態まで行けたので技術的には完璧」と自信をのぞかせる。

問題は予想以上に多かった岩だ。 はやぶさ 2 の太陽電池パネルは幅が約 6 メートルあり、タッチダウン時には長さ約 1 メートルの筒状の試料採取装置(サンプラーホーン)を接地させる。 着陸時は余裕を考慮し、高さ 50 - 70 センチ以上の岩が周囲にないことが必須となる。 現状では目標とした着陸地点と実際に降りる場所との間に最大で 15 メートルの誤差があり、「確実に降りられるとは言えない」(津田さん)という。

運用チームは、リハーサル時の動きなどを参考に、自律制御のプログラムを改良するなどして 10 メートル以内の誤差を目指す。 候補エリアの中から比較的岩が少ない直径 20 メートルの場所を中心に検討。 100 個近い岩の高さを、一つずつ影の長さなどから推定し、安全な場所の絞り込み作業を続けている。 津田さんは「着陸地点に立っている夢まで見たことがある。 表面の様子を正確に知った上で、すき間を狙って安全、確実に降りたい。」と話している。 (jiji = 1-5-19)


三菱電機、火星衛星探査機の開発担当 2024 年度打ち上げ、29 年度に地球に帰還

三菱電機が、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) から火星衛星探査計画 (MMX) 探査機システムの開発担当メーカーに選定された。 JAXA の計画では、火星衛星のうち「フォボス」にターゲットを絞っており、2024 年度に H3 ロケットで打ち上げ、翌 2025 年度には火星近傍に到着して、フォボスへの着陸を目指すことになっている。 JAXA からの選定を受けて三菱電機は、MMX の本格的な開発に着手する。

JAXA の火星衛星探査計画は、原始太陽系における「有機物・水の移動、天体への供給」過程の解明に貢献するため、火星衛星に含まれる含水鉱物・水・有機物などを解析することにより、水や有機物の存在を明らかにする。 さらに、火星衛星の由来を解明する世界初の火星衛星サンプルリターンミッションとして、開発を進めるもの。 (WING = 2-25-20)


H2A ロケット打ち上げ成功 地上撮影の偵察衛星載せる

三菱重工業は 9 日午前 10 時半過ぎ、情報収集衛星「光学 7 号機」を載せた H2A ロケット 41 号機を鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げた。 約 20 分後、衛星を予定の軌道に投入したと発表した。 H2A の打ち上げ成功は 35 回連続で、成功率は 97.6% となった。 新年度には後継となる H3 ロケットが登場する。

光学 7 号機は、望遠カメラで地上を撮影するいわゆる偵察衛星。 設計寿命を迎える 5 号機の後継機となる。 内閣衛星情報センターによると、開発費は約 300 億円。 電波で観測するレーダー衛星とあわせ、計 4 機で特定の場所を 1 日 1 回は撮影できるとされる。 情報収集衛星は、1998 年に北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン」を発射したのを受けて導入された。 台風で大きな被害が相次いだ昨秋には、被災地の様子も撮影した。 (小林舞子、asahi = 2-9-20)


「こうのとり」、ISS に到着 8 回連続の輸送成功

日本の無人補給船「こうのとり (HTV)」 8 号機が 28 日午後 8 時 13 分、国際宇宙ステーション (ISS) に到着し、ISS のロボットアームに捉えられた。 食料や水、実験装置など 5.3 トンの荷物を載せている。 HTV は 25 日未明、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。 当初は 11 日の打ち上げ予定だったが、ロケット発射台の火災などで延期されていた。 ISS への輸送成功は 8 回連続。 (asahi = 9-28-19)

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こうのとり 8 号機打ち上げ成功、三菱重「延期では心配おかけした」

国際宇宙ステーション (ISS) へ物資を運ぶ無人補給船「こうのとり」 8 号機が 25 日午前 1 時 5 分、種子島宇宙センター(鹿児島県)から、H2B ロケット 8 号機で打ち上げられた。 15 分後、打ち上げを担った三菱重工業は、こうのとりがロケットから正常に切り離され、予定の軌道へ投入されたと発表した。 H2B ロケットの打ち上げは 8 回連続の成功となった。 昨年 11 月に全面施行された宇宙活動法で、衛星や補給船を搭載したロケットの打ち上げについて、国が許可すれば民間企業も出来るようになった。 今回、同法に基づき、企業が打ち上げを実施した初の例となった。

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) によると、こうのとり 8 号機は水や食料をはじめ、ISS の日本実験棟「きぼう」と地上との通信試験に使う光通信実験装置、きぼうから放出する予定の小型衛星 3 基など、約 5 トンの荷物を運ぶ。 順調に飛行を続ければ、28 日に ISS へ到着する見通しだ。 開発中の後継機「HTV-X」で使う新しい姿勢制御用のセンサーも搭載しており、その運用試験を行う。 打ち上げは当初、今月 11 日の予定だったが、ロケットの発射台で火災が発生するなどしたため、2 度延期されていた。 打ち上げ後の記者会見で、三菱重工業の宇宙部門責任者、阿部直彦執行役員は「延期では心配をおかけした。 無事に打ち上げることができ、安堵あんどしている。」と話した。 (yomiuri = 9-25-19)

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なぜ出火? 首かしげる関係者 H2B ロケット発射中止

種子島宇宙センター(鹿児島県)の発射台で 11 日未明、前代未聞の火災が起きた。 厳しい防火対策がとられているはずの打ち上げ設備で、鋼鉄製の発射台がなぜ燃え上がったのか。 関係者は首をかしげる。 火災は 11 日午前 3 時 5 分ごろに発生した。 H2B ロケットは、午前 6 時半過ぎの打ち上げに備えてすでに液体燃料の注入を終えていた。 その機体の真下の付近で突然、火が上がった。

約 3 キロ離れたプレスセンターでは、記者やカメラマンらが取材の準備を進めていた。 遠いため、音などはわからなかったが、炎や黒煙が上がったことに何人かが気づき、慌ててシャッターを切ったり、会社に連絡したりした。 しばらくして、遠隔で放水が始まる様子も確認できた。 打ち上げを担う三菱重工業が午前 6 時過ぎから開いた会見によると、火災は、エンジンと補助ロケットの噴煙を下部に逃がす移動発射台の穴の付近で起きたらしい。 ビデオ映像で確認しながら遠隔で放水を続けたが、炎は 2 時間ほど見え続けたという。

周辺のガス検知器に反応はなく、ロケットの液体水素や酸素が漏れて引火したとは考えにくいという。 何が燃えていたのかはまだ確認できていない。 三菱重工はまた、テロなど人為的な火災ではないとの見方も示した。 田村篤俊・打上執行責任者は「ビデオ映像を通して確認した限り、人為的な理由で火災が起きたのではないと確認している。 まだ原因は見えておらず、これから調査して確認していきたい。」と答えるにとどまった。 (合田禄、asahi = 9-11-19)

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