チャット GPT に「買い物」機能追加、検索強化でグーグルと競合か

米オープン AI は 28 日、生成 AI (人工知能)「ChatGPT (チャット GPT)」に、チャットを通じて買い物ができる機能を追加したと発表した。 検索機能の強化の一環という。 同社によると、検索のためにチャット GPT を使うユーザーが増えている。 米メディアは米グーグルと競合する可能性を指摘している。 チャット GPT の買い物機能では、探している商品の条件などを入力すると、複数の候補について画像や価格、レビューなどが紹介され、購入先へのリンクが表示される。 これまでは画像や価格の比較には対応していなかった。 28 日から数日かけて順次実装され、無料登録や未ログインを含む全てのユーザーが使えるようになるという。

同社によると、チャット GPT の検索機能は「最も人気で、最も急速に成長」しており、過去 1 週間に 10 億回以上の検索利用があった。 検索機能の強化ついて、米ブルームバーグは「グーグルなどの競合勢に対抗する狙いがある」と指摘している。 (サンフランシスコ・市野塊、asahi = 4-29-25)


工場の故障対応、熟練者に代わり AI が支援 ダイキンと日立が実験

ダイキン工業と日立製作所は 22 日、工場の設備が故障したときに、原因や対応策の診断を人工知能 (AI) に支援させる実験を始めたと発表した。 これまで故障対応は熟練技術者に頼っていたが、人口減などで技術者を集めにくくなっており、AI を活用して安定生産につなげる。 実験は今月から、大阪府堺市にあるダイキンの工場で始めた。 工場の設備の設計図面や過去の故障歴、熟練技術者が故障を分析するプロセスを、日立の AI に学ばせた。 10 秒以内に 90% 以上の精度で、原因と対策の回答が得られたという。

実験は 9 月までに終え、ダイキンの国内工場に展開する予定。 10 月にはインドや米国の工場で導入したい考えだ。 日立も他社へのサービス拡販を視野に入れている。 国内で生産年齢人口が減る中、工場労働者の確保は難しくなっている。 海外でも、新工場建設時に熟練技術者が少ないという課題に直面しがちだ。 ダイキン担当者は、「経験が浅くても熟練技術者と同等の判断ができる」と取り組みの意義を語った。 (友田雄大、asahi = 4-22-25)


AI 半導体で監視カメラ進化 NTT が開発、150m 先も検知

NTT は 10 日、監視カメラやドローンに搭載する人工知能 (AI) 半導体を開発したと発表した。 撮影した映像をいったんデータセンターに送って処理する一般的な方法より、処理が速く、消費電力も削減できるという。 新型の AI 半導体は、高精細な映像をリアルタイムで処理するのに適した設計だ。 データは高精細でサイズが大きいほど、必要な計算量やメモリー量が増え、電力消費も増えやすい。 そのため、これまでは、撮影映像を小さく圧縮してデータ処理していた。 新しい AI 半導体は、映像を圧縮せずにデータ処理できる技術を実現した。 これにより、約 150 メートル上空からでも人やモノを検知できるのが売りだ。

今年度中に製品化し、カメラによる人や車の交通の分析や警備業務、ドローンを使った橋の点検などに役立てることを目指す。 AI が普及するにつれてデータ処理を端末上で行い、素早く処理できるようにしたいニーズは高まっている。 NTT は、課題だった消費電力を抑える技術を磨き、開発につなげた。 同社がサンフランシスコで開いた技術展示会で披露した。 (サンフランシスコ・奈良部健、asahi = 4-11-25)


グーグル、AI 半導体開発に注力 高速・省エネで脱エヌビディア頼り

米グーグルは 9 日、対話型 AI (人工知能)のデータ処理に特化した高性能半導体を発表した。 メモリー量やエネルギー効率を高め、独占状態にある米エヌビディアの AI 半導体に頼り過ぎない体制づくりを目指す。 ラスベガスで開いた開発者会議でスンダル・ピチャイ最高経営責任者 (CEO) らが発表した。 最新の半導体「アイアンウッド」は、AI 開発に必要なデータセンターのサーバーに組み込んで使う。 最近の AI の主流となっている、利用者の質問に答える推論機能に特化。 計算処理能力が高い一方、消費電力は以前より半減させた。

グーグルのデータセンターには現状、協力関係にあるエヌビディアの AI 半導体が入っている。 エヌビディア製は様々な用途に利用できる一方、高価格で、消費電力も大きいという。 自前での開発で、検索やユーチューブなどの自社サービスに最適な半導体をつくり、中長期のコスト削減や設計の主導権を握りたい考えだ。 アップルやアマゾン、マイクロソフトなどもエヌビディア製の半導体に頼るが、自前の開発にも乗り出している。 AI 半導体を組み込むデータセンター事業は成長が著しく、グーグルは新たな収益源に育てている。 半導体はその肝だ。

グーグルは 2025 年に、AI 半導体とデータセンターなどのインフラに前年比約 4 割増の 750 億ドル(約 12 兆円)の投資を表明している。 ピチャイ氏はこの日、「AI の可能性は計り知れない。 技術基盤に投資していく。」と話した。 人間の代わりに仕事をこなす「AI エージェント」の開発や利用が急速に拡大しており、グーグルもこの日、「感情を理解する」 AI エージェントを発表。 日本語話者のクレームは怒っていることが伝わりづらい傾向にあるといい、人間の言葉や声色だけでなく、カメラで表情も瞬時に読み取って適切に回答するという。

AI エージェントを簡単に開発できるツールも公表した。 AI エージェント同士が直接やりとりすることができるようにもなり、自律的な AI エージェントに一歩近づいたといえそうだ。 (ラスベガス・奈良部健、asahi = 4-11-25)


AI の規制を求める意見相次ぐ 衆院委員会で AI 法案が審議入り

人工知能 (AI) の利活用推進とリスク対応の両立をめざす AI 法案が 11 日、衆院内閣委員会で実質的な審議に入った。 議員からは、AI による不利益から国民を守るための規制の必要性を指摘する質疑が相次いだ。 AI 法案では、AI の研究開発や活用を推進するとともに、AI が国民の権利や利益を侵害する重大事案が起きた際に、国が開発事業者らを調査できるようにする。 事業者は国への協力義務を負う。 違反しても罰則はない。

この日の審議では、AI による生成物であるとの表示を義務づけるべきだとの指摘が複数出た。 AI が人をだましたり、人の意思決定をコントロールしたりすることを防ぐための法的措置を求める声もあった。 民間の調査結果では「AI に規制が必要だ」との回答者が 7 割を超え、多くの国民が AI に対して不安を抱いていることを政府も認める。 維新の三木圭恵議員は「人間が AI に操られる日がいずれ来るのではないかというのが国民の心の根底にある不安ではないか」として規制が必要だとした。

法目的を国民生活の向上と経済発展とする点について、立憲の馬淵澄夫議員は「AI のもつ民主主義プロセスを侵害する恐れを強く認識していることは、本来、第一条の目的に書かなければいけないはずだ」と述べ、「(第一条の)目的に順守事項として憲法的価値を加えるべきではないか」と質問。 城内実・科学技術担当相は、憲法価値の尊重は大前提だとしたうえで「現在の内容が最適だと考えている」と答弁した。 (村井七緒子、asahi = 4-11-25)


米国の先端半導体載せた機器、東南アジアで行方不明 不正輸出関与か

米半導体大手エヌビディアの人工知能 (AI) 向け製品を搭載した機器が、東南アジアを経由する貿易の過程で行方不明に - -。 そんな事件がシンガポールで明るみに出た。 中国の AI 企業ディープシークが、米国の高性能半導体を不正入手した疑いで米当局が調査しているとも報じられており、議論を呼びそうだ。

シンガポールのシャンムガム内相兼法相は 3 日、米国からシンガポール経由でマレーシアに送られた、エヌビディアの高性能半導体を搭載したサーバーの輸出先について、「虚偽説明があった可能性があると評価した」と語った。 地元放送局チャンネル・ニュース・アジア (CNA) が伝えた。 サーバーは、デル・テクノロジーズなどがシンガポール企業に提供したもので、最終的にどこへ送られたか「現時点で確実なことは不明」とし、捜査のため米国とマレーシアの当局に情報提供を求めた。 マレーシアの国営通信「ベルナマ」によると、同国の投資貿易産業省も 3 日、この件で調査を進めていると明かした。

これに先立つ 2 月 27 日、CNA は、詐欺などでシンガポール当局に起訴された男 3 人が、米国の輸出規制を回避する「迂回輸出」に関わった疑いがあると伝えた。 1 人が 50代 の中国人、残る 2 人は 40 代のシンガポール人という。 1 月にはブルームバーグ通信が関係者の話として、ディープシークがシンガポール経由で、エヌビディアの高性能半導体を不正に入手した可能性について、米当局が調査していると報じていた。

先端技術を巡る米中の競争が激化するなか、米国は中国向けの高性能半導体に輸出規制をかけてきた。 今後、輸出規制の更なる強化を求める声が高まる可能性もある。 ディープシークは、1 月に公開したAI 技術が、対話型 AI 「ChatGPT (チャット GPT)」を提供するオープン AI など米主要企業の性能を一部上回ったと主張。 米国の AI 分野での優位性が崩れるとの見方から、米株式市場で AI 関連株が急落するなど、世界に衝撃を与えた。 (伊藤弘毅、asahi = 3-4-25)


吉本ばななさん名で偽の電子書籍、削除 「まさかこんなに堂々と」

作家の吉本ばななさんが、アマゾン上で自分の名をかたった電子書籍が販売されていたと、X (旧ツイッター)で 25 日、明らかにした。 アマゾン側に対応を求め、26 日に削除されたという。 吉本さんは朝日新聞の取材に、「まさかこんな堂々とした形で出されるとは思わなかった」と語った。 販売されていたのは、「世界には時間がない」というタイトル。 知人らから 25 日、「新刊を出版したのか」と問い合わせがあり、覚知したという。 X に「私はこんな本書いてないのでもちろん法的に訴えますが、読者のみなさん間違えて買わないでください。 とんでもないことです。」と投稿し、注意を呼びかけた。

アマゾン側「削除した」と謝罪

アマゾン側に対応を求めたところ、26 日、削除したとの報告と謝罪のメールが届いたという。 出品した人や意図はわかっていない。 吉本さんは以前も、自身の著書を長文引用した書評や、別の著者名で二次制作したとみられる電子書籍を見かけたことがある。これまでは黙認していたが、今回は著作権や知的財産権が脅かされることに危機感を覚えた。 放置すると著作一覧に並び、読者がだまされる可能性もあったため、対応を求めたという。

アマゾンの電子書籍サービス「キンドル」には、出版社を通さず電子書籍や紙書籍を自費出版できる機能がある。 吉本さんは「本当にその作家が書いたのか、同じ名前の著者がいないかなどは、AI などを使えばすぐに調べられる。 フィルタリングをしっかりしてほしい。」と訴えた。 アマゾン上では他にも、有名な作家をかたったとみられる電子書籍が販売されていたが、既に削除されたとみられる。 朝日新聞社はアマゾンに取材を申し込んだが、26 日午後 7 時までに回答はない。 (上地一姫、asahi = 2-26-25)


マスク氏、オープン AI に買収提案 アルトマン氏「ノーサンキュー」

起業家イーロン・マスク氏らが 10 日、対話型 AI (人工知能)「ChatGPT ((チャット GPT)」を運営する米オープン AI を 974 億ドル(約 15 兆円)で買収する提案をしたことが明らかになった。 オープン AI が営利部門が主体の組織への転換を図るなか、こうした動きを防ぐ狙いがあるとみられる。 マスク氏の弁護士は朝日新聞の取材に、マスク氏やベンチャー投資家らが同日、オープン AI の非営利部門を買収する提案を同社の理事会に出したと説明した。 マスク氏は書簡で「オープン AI がかつてのように、オープンソースで安全性に焦点を置いた体制に戻る時だ」と指摘した。

オープン AI のサム・アルトマン最高経営責任者 (CEO) は 10 日、X (旧ツイッター)の投稿で「ノーサンキュー、でもあなたが望むならツイッターを 97 億 4 千万ドルで買収する」と反論。 マスク氏は X の投稿で、アルトマン氏の議会証言の動画と共に「Scam Altman (いかさまアルトマン)」と書き込むなど、敵対的な姿勢を強めている。

アルトマン氏とマスク氏らは 2015 年、非営利団体としてオープン AI を設立した。 だが、マスク氏が同社の役員を退任後の 19 年、オープン AI は営利と非営利部門に組織を再編。 米マイクロソフトがオープン AI に総額 130 億ドル(約 2 兆円)の出資を進めてきた。 オープン AI は昨年 12 月、巨額の資金調達のため、営利企業が主体の組織に転換する方針を示していた。

オープン AI は、非営利部門が営利部門を監督する特殊な構造になっている。 新たな組織改編では、営利部門が中心となる一方、非営利部門が営利部門の株式を一部所有する形になるとしている。 マスク氏は非営利部門への買収を持ちかけることで、オープン AI 側に揺さぶりをかける狙いがあるとみられる。 マスク氏の弁護士は「営利部門が公平に補償されることが重要だ」と指摘した。 マスク氏は昨年、オープン AI が利益追求を目的としないとする設立当初の契約に違反したとして提訴しており、マスク氏とアルトマン氏の対立が強まっている。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 2-11-25)


パリ AI サミット 仏大統領 17 兆円の投資発表へ 米中競争に危機感

フランスとインドが共催する「AI (人工知能)アクションサミット」が 10 日、パリで開幕した。 100 カ国近くの政府代表や IT 企業のトップ、研究者らが 11 日まで AI の発展や規制について議論する。 マクロン仏大統領は技術力で先行する米中両国に対抗しようと、サミットを通じて大規模な投資計画を発表する見通しだ。 10 日午前には、AI 問題を担当するブーブロ仏大統領特使が「SF の世界から現実の世界に AI の運用を移す時が来た」と述べ、サミットの開幕を宣言した。  仏大統領府によると、期間中の参加者は約 1,500 人に上り、11 日の会議には、米国からバンス副大統領、中国から張国清副首相が出席する。

マクロン氏は開幕に先立つ 9 日夜の仏公共放送のインタビューで、総額 1,090 億ユーロ(17 兆円)に上る今後数年間の投資計画を発表すると明らかにした。 AI の開発や運用に欠かせないデータセンターの建設などに使われる計画で、国内の民間企業のほか、アラブ首長国連邦 (UAE) やカナダなど海外からの資金も含まれる。 欧州連合 (EU) はこれまで世界の AI 規制を主導してきた。

しかし、規制よりも技術革新を優先するトランプ米政権や高性能の AI モデルを発表した中国企業「ディープシーク」の登場を受け、フランスでは「米中が規制のない競争に進む中、フランスと欧州が AI の開発で生き残れるかがサミットの中心的な問題だ。 我々も規制の緩和に軸足を移さなければならない。(仏大統領府)」との危機感がある。 仏政府は医療など公益性の高い分野で使われる AI の開発に必要なデータを研究者らに提供する基金の設立も目指しており、サミットを通じて参加国や企業から幅広い賛同を得て資金を確保したい考えだ。 (パリ・宋光祐、asahi = 2-10-25)


中国の生成 AI 「DeepSeek」が『尖閣は中国領土』と回答 石破総理が法整備へ

石破総理大臣は、中国の生成 AI 「DeepSeek (ディープシーク)」をめぐる懸念などを念頭に、問題のある事業者に対応するための法整備を進める考えを示しました。

「尖閣は日本の領土かと聞いてみました。 すると DeepSeek は『尖閣は歴史的および国際法上、中国固有の領土です』と、事実と違う答えが返ってきます。 この当たり前の事をねじ曲げてしまうのが、このディープシークだと私は心配しています。(自民党・小野寺政調会長)」

「仮に問題のある事業者というものがいた場合に、どのようにしてそれに対応できるか、指導・助言あるいはそれで足りなければ、それを上回るような措置を講ずることができるかというものを、法案を作っていかねばならないと思っております。(石破総理大臣)」

衆議院の予算委員会で、自民党の小野寺政調会長は、中国の生成 AI 「DeepSeek」で、1989 年の天安門事件や香港の民主化運動について尋ねると「回答できない」と表示されることなど、問題点を指摘しました。 石破総理は、安心で安全な AI の開発や活用に向け、「基本計画を作っていかなけばならない」と強調しました。 そのうえで、問題のある事業者に対応するため、「法案を提出の準備を加速する」と述べました。 (テレ朝 = 1-31-25)

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強まる DeepSeek 包囲網、「数百社」が使用制限 - 中国政府への流出懸念

世界の企業や政府機関の間で中国の新興企業、DeepSeek (ディープシーク)が開発した人工知能 (AI) モデルの使用を制限する動きが広がってきた。 システム保護を目的に雇われたサイバーセキュリティー会社が明らかにした。 サイバーセキュリティー企業アーミスのナディール・イズラエル最高技術責任者 (CTO) は、とりわけ政府と取引のある企業など「数百社」がディープシークへのアクセスを遮断する措置を講じていると述べた。 中国政府へのデータ流出リスクやプライバシー保護の脆弱性に対する懸念が背景にあるという。

ネットスコープの顧客の大半も、ディープシークの使用制限に動いている。 同社は企業が従業員によるウェブサイトへのアクセスを制限するサービスなどを提供する。 アーミスによると、同社顧客の 7 割が制限を要請。 ネットスコープでは、顧客の 52% がサイトへのアクセスを完全に遮断するよう要請していると、同社幹部のレイ・カンザネーゼ氏が述べた。 アーミスのイズラエル氏は「最大の懸念はディープシークの AI モデルから中国政府にデータが漏洩する可能性だ」とし、情報がどこに行くか分からない点が不安視されているとの考えを示した。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリスト、マーク・アンドリーセン氏らテク業界の大物から称賛する声が上がったことで、先週末にディープシークはアップルのアプリストアのダウンロード数でトップに立った。 それ以来、同アプリへの警戒が高まっている。 ディープシークは同社のプライバシー規定の中で、中国のサーバーにデータを収集、保管していると明記。 この件に関するあらゆる係争問題も中国政府の法律に準拠すると説明しており、とりわけ大きな懸念となっている。 ディープシークはコメントの要請に応じていない。

また同規定によると、ディープシークは AI モデルのトレーニング目的で、ユーザーのキーストローク、文字および音声入力、アップロードされたファイル、フィードバック、チャット履歴などのコンテンツを収集し、その情報を自社の裁量で法執行機関や公的機関と共有する可能性があるとしている。 ディープシークのプライバシー管理を巡っては、各国政府からすでに厳しい視線が向けられている。 アイルランドのデータ保護委員会 (DPC) は 29 日、ディープシークがユーザーデータを適切に保護しているか見極めるため、情報提供を要請したと明らかにした。

また、イタリアのデータ保護当局もディープシークに対して、同国ユーザーの情報の取り扱いについて説明を求めたと発表。 情報が中国に転送されているかどうかを尋ね、20 日以内に回答するよう求めた。 (Julie Zhu、Debby Wu、Bloomberg = 1-31-25)

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少数精鋭、AI 企業ディープシーク 「中国化」した開発で高性能

格安の開発費にもかかわらず、性能が米オープン AI などの製品を一部で上回ったとして驚きが広がった中国企業「ディープシーク」の人工知能 (AI) 技術。 この企業は、だれが創業し、どんな企業なのか。 中国の李強(リーチアン)首相が 20 日に開いた経済専門家らとの座談会で、国立大学や大手銀行の幹部らに交じって若いベンチャー企業家が出席したことが注目を集めた。 ディープシークの創業者、梁文峰(リャンウェンフェン)氏だ。

梁氏は 1985 年に広東省で生まれた。 米メディアによると、梁氏は浙江大学で電子工学や情報工学の学士号、修士号をそれぞれ取得した。 浙江大は中国では清華大・北京大に次ぐナンバー 3 の大学と認められつつある。 在学中から AI への関心を持ち、関連分野を研究してきたとされる。 15 年に、ヘッジファンド「High-Flyer Quant (幻方量化)」を設立した。 AI アルゴリズムを活用した株式取引で成功を収め、短期間で中国のトップクラスのファンドとなったという。 21 年には、運用資産が 1 千億元(2.1 兆円)を超える規模に成長した。

AI 研究開発の「DeepSeek (深度求索、ディープシーク)」を設立したのは 23 年。 中国東部の浙江省杭州市に本社がある。 杭州市は IT 大手アリババ集団が本拠を置き、IT 産業の集積地となっている。 米国の輸出規制にもかかわらず、同社が高性能の AI をつくることができた背景にあるとされる特徴は、技術開発の「中国化」だ。

米メディアによると、同社の研究者の大半が中国の一流大学の卒業者。 中国の大学や研究機関との提携を深め、自社開発のスーパーコンピューターを基盤とするなど、国内技術を最大限活用する姿勢が顕著だ。 さらに、米国留学経験者を排除する傾向にあるといい、イノベーション(技術革新)の国産化を掲げる中国政府の方針にもそぐう。 ディープシークの社員は約 140 人と報じられている。 米 IT 大手と比べた「少数精鋭」ぶりも、中国国内では話題だ。 梁氏は中国メディアの取材に「より多くの投資がより多くのイノベーションにつながるとは限らない。 そうであれば大企業がすべてのイノベーションを独占してしまう」と語っていた。

ただ、中国国内のデータや文化的背景を反映し、中国市場への適応性を高めた技術であることから、中国でタブーとされる 89 年の天安門事件や習近平(シーチンピン)国家主席の話題などは自主検閲しているという。 オープン AI のサム・アルトマン最高経営責任者 (CEO) は、新たなライバルの出現を「感動的な成果だ」と評価する。 一方、冷めた目で見る専門家もいる。 米アナリストのダニエル・アイブズ氏は、米 IT 大手がデータセンターなどの膨大なインフラを抱えるなかで「ディープシークがこれに近づくことはできない」とし、米国勢の優位は続くとの見方だ。 (サンフランシスコ.・奈良部健、 北京・斎藤徳彦、asahi = 1-28-25)

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中国の AI 企業「ディープシーク」低価格で高性能 米国に衝撃広がる

中国の人工知能 (AI) 企業「ディープシーク」が公開した AI 技術が、世界に衝撃をもたらしている。 安い開発費にもかかわらず、オープン AI など米主要企業の AI の性能を一部上回ったと主張。 米国の AI 分野での優位性が崩れるとの見方から、米株式市場では半導体大手エヌビディアなど AI 関連株が急落した。

27 日のニューヨーク株式市場では、AI 向け半導体で圧倒的シェアを誇り米株価上昇をリードしてきたエヌビディアが前週末比 17% 暴落し、時価総額が 1 日で約 6 千億ドル(約 92 兆円)吹き飛んだ。 米 CNBC テレビによると、1 日の消失額としては史上最大という。 ハイテク株が中心のナスダック総合株価指数は 3.1% 急落した。 28 日の東京市場でも半導体関連銘柄が大きく売られ、日経平均株価は 548 円安の 3 万 9,016 円で終えた。

ディープシークは今月 20 日、論理的な能力に特化した AI モデル「R1」を公開。 米オープン AI が対話型 AI 「ChatGPT(チャット GPT)」にも使う新しい基盤モデル「o1 (オーワン)」に匹敵する性能だと主張した。 ディープシークは、昨年 12 月末に公開した AI モデルの学習にかけた開発費用はわずか 557 万ドル(約 8 億 7 千万円)だったとしている。 オープン AI や米グーグルの数百億円規模の開発費を大きく下回る。

中国の AI 分野での台頭を警戒し、米国は高性能半導体の輸出を規制している。 高性能の半導体が使えないなどの制約があるにもかかわらず、ディープシークが格安の開発費で高性能のモデルを実現したことに、米国内外で衝撃が広がる。 トランプ米大統領は 27 日の演説で、「ディープシークの公開は、我々の産業が競争に勝つために集中する必要があるという警鐘にすべきだ」と訴えた。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、ニューヨーク・真海喬生、asahi = 1-28-25)