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AI 検索、報道機関と「共存」模索 米新興企業幹部「75 社と協議」 生成 AI (人工知能)を使った検索サービスを提供する企業が、報道機関との提携を広げている。 AI 訓練などに無断で記事を使うことへの「ただ乗り」批判が広がるなか、報道機関との「共存」を探ろうとしている。 AI 検索で進む「ただ乗り」、報道機関の記事にも 社会への影響は AI 検索では、調べたい内容を文章で問いかけると、従来の検索のようなリンクの表示でなく、関連するサイトの内容の要約が文章で表示される。 これが広がれば、自社のサイトを訪れる人が減るとの懸念が報道機関側にはある。 ソフトバンクと提携する米新興企業パープレキシティは 7 月、検索内容と関連する広告の提供を始めると発表した。 報道機関の記事を使う対価として、検索結果に提携先の記事が引用された場合、広告収入の一部を報道機関に支払う。 第 1 弾として、米タイム誌や米フォーチュン誌など複数の大手メディアとの提携を公表した。 日本の報道機関とも協議 パープレキシティのデミトリ・シェベレンコ最高事業責任者 (CBO) は取材に、提携の発表後、日本を含む世界の報道機関 75 社と協議していると明かした。報道機関側が受け取る広告収入の割合は、「2 けた(パーセント)」になるという。 シェベレンコ氏は「ジャーナリズムは世界についての新たな事実を生み出している。 多くの質問に答えるには事実が必要で、活力あるジャーナリズムから我々は恩恵を受けられる」と話した。 対話型 AI 「ChatGPT (チャット GPT)」を運営する米オープン AI も、タイム誌などの主要メディアとの提携を発表。 新たな検索機能「サーチ GPT」では、提携先の企業の元記事を検索結果から見られるようにする。米グーグルは先月、AI 検索「AI オーバービュー」の日本での提供を発表した。 同社はこれまで、従来の検索広告での報道機関への対価支払いを進めてきたが、AI 検索での個別の提携の公表予定はないとしている。 提携の背景には、報道機関の記事への「ただ乗り」批判と、事実に基づいたコンテンツの価値の高まりがある。 米フォーブス誌の幹部は 6 月、自社の記事と極めて似た内容の記事をパープレキシティが公開し、「盗用した」と指摘。 米ワイヤード誌も 6 月、パープレキシティが「ボット」と呼ばれる自動プログラムを使い、同誌などの記事を内密に収集していたと報じた。 パープレキシティは「報道の一部には不正確な部分がある」と反論している。 AI 運営企業は、ボットを使って報道機関などのサイトの情報を収集する「スクレイピング」をしている。 こうして集めたデータを、AI の訓練や AI 検索に使っている。 生成 AI は間違った答えを出すことがあり、回答の正確性を高めるには、事実に基づいたリアルタイムの情報へのアクセスが不可欠だからだ。 AI 企業と報道機関の提携を支援するサービスも出始めた。 パープレキシティと報道機関の「橋渡し役」をつとめた米新興企業スケールポストは、サイトを訪れるボットを検出するツールを提供する。 AI 開発企業がボットを使ってどのぐらい自社のサイトにアクセスしているかなどを測定し、報道機関側が提携する際の金額交渉などに役立てる。 共同創業者のアフメド・マリク氏は取材に「AI 企業と報道機関が直接協議するのは難しい。 我々が市場のような役割を果たし、問題を解決する」と話した。 それでも、AI 検索への報道機関側の警戒感は強い。 ある米大手メディア幹部は「AI 企業によるスクレイピングが止められるとは思わない。 AI 企業との提携も、それに見合う金額が受け取れるのかという疑問もある。」と話す。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 9-16-24) エヌビディアに急ブレーキ、株価急落の要因とは 時価総額で一時世界首位に立っていた AI (人工知能)半導体大手エヌビディアが突如、慣れない立場に置かれることになった。 株価の大不振だ。 エヌビディアは 3 日の株式市場で、時価総額の減少幅でみて過去最悪の下げを記録した。 同社の株価は 9.5% 下落し、時価総額のうち 2,790 億ドル(約 40 兆円)が消失。 これは 2022 年にメタが記録した従来の最高額 2,400 億ドルを大幅に上回る数字となった。 衝撃の株価下落を俯瞰的に見ると、エヌビディアが 3 日に失った価値に匹敵する企業は世界に 27 社しかない。 2,790 億ドルという消失額は、マクドナルドやシェブロン、ペプシを含む米国の一部大手企業の合計株価を上回る。 エヌビディアの最大の個人株主(ブラックロックなどの機関投資家を含めると全体で第 5 位の株主)であるジェンスン・フアン最高経営責任者 (CEO) は 3 日、株価急落で 100 億ドル相当の個人資産を失った。 エヌビディアは 6 月 8 日に上場企業として過去最高となる時価総額 3 兆 3,000 億ドルを突破して以降、株価の低迷が続く。 米国経済にひずみの兆候が見え始める中、投資家はエヌビディアなどの AI 銘柄の高騰に懐疑姿勢を強めている状況だ。 トレーダーの間では、経済の弱含みを踏まえ、企業は有望だがリスクも高く、有効性が証明されていない技術への投資に二の足を踏むのではないかとの懸念が出ている。 エヌビディアが先週発表した決算は破格の好業績だったが、見通しがやや控え目だったことから、さらなる好材料を探していた投資家の失望を誘い、株価は下落した。 エヌビディア株の下げ幅は 6 月 18 日のピークから 20% を超える。 AI 技術に大きく賭けているマイクロソフトは、直近のピークから 12% 下落。 エヌビディアのチップ製造を手掛ける台湾積体電路製造 (TSMC) の株価も、7 月中旬以降に 18% 下落した。 一方、かつて世界最大の半導体メーカーだったインテルも年初から 59% の下落を記録している。 インテルは会社を生まれ変わらせ、AI 市場に参入するという独自の課題に直面している。 潜在的な法的問題 ただ、エヌビディアは別の問題に直面する可能性もある。 米政府が反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで調査を進めているとの情報が浮上したためだ。 3 日の株価急落の要因としては、米司法省が反トラスト調査の一環でエヌビディアに召喚状を送付したとの報道が大きい。 これはブルームバーグ通信が報じたもので、CNN は召喚状について独自に確認できておらず、司法省は反トラスト調査に直接言及することを控えている。 エヌビディアは 4 日午後の時点で、司法省から召喚状は受け取っていないと明らかにした。 エヌビディアの広報は「米司法省に問い合わせているが、召喚状は受け取っていない」と説明。 「ただ、当社の事業に関する規制当局の質問があれば、喜んで答える」としている。 バイデン政権は IT 大手への追及を強めており、アップルやグーグル、アマゾンなどの企業に対する調査や訴訟に踏み切った。 米大統領選に出馬しているハリス副大統領やトランプ前大統領が当選後、こうした訴訟を継続するかは不明だが、選挙戦では両氏とも様々な理由から IT 企業に批判の矛先を向けている。 エヌビディア株は 4 日にも 1.7% 下落した。 ナスダック総合指数は 3 日に 3% 以上、4 日に 0.3% の下げを記録している。 ただ、AI 株の強気筋の間でエヌビディアへの信頼は揺らいでない。 エヌビディア株は今年 118% 上昇しており、時価総額は 2 兆 7,000 億ドルと、アップルとマイクロソフトを僅差で追う世界 3 位の水準にある。 フアン氏は先週、同社の最新 AI 半導体「ブラックウェル」は需要が「供給を大幅に上回る」状況だと説明。 競争が激化する中でも、エヌビディアの半導体への需要は伸びている。 少なくとも今のところ、エヌビディアへの投資は実を結んでいる。 それがフアン氏の主張だ。 「エヌビディアのインフラに投資する人々はすぐさまリターンを手にしている。」 フアン氏は先週そう述べ、同社の新しいAI 向け画像処理半導体 (GPU) は非常に効率的にデータを処理できることから、すぐに顧客の資金節約につながるだろうと指摘した。 こうした理由から、ウェドブッシュ証券のダン・アイブス氏のような強気筋は、エヌビディア株の下落は押し目買いの好機だとの見方を示す。 アイブス氏は 3 日、投資家向けのメモで「エヌビディアは IT や世界の状況を変えた。 この IT 勢力図において、同社の GPU は新たな石油となり、金となっている」と指摘している。 (David Goldman、CNN = 9-6-24) ◇ ◇ ◇ 米エヌビディア、売上高 2 倍 AI 向け半導体が好調、5 - 7 月期決算 米半導体大手エヌビディアが 28 日発表した 5 - 7 月期決算は、売上高、純利益とも前年同期より 2 倍以上となった。 人工知能 (AI) ブームを追い風に、その情報処理を担うデータセンター向けの高性能半導体が好調で、AI 向け需要の強さを改めて示した。 米 IT 大手、AI 投資を加速 収益性の懸念から「バブル」との声も 売上高は前年同期比 2.2 倍の 300 億ドル(約 4.3 兆円)、純利益は約 2.7 倍の 166 億ドル(約 2.4 兆円)だった。 8 - 10 月期の売上高は 325 億ドルを予想しており、前期を上回ると見込む。 ジェンスン・フアン最高経営責任者 (CEO) は電話会見で「世界中のデータセンターが設備の刷新を急速に進めている。 需要は引き続き強い」と話した。 出荷の遅れが報じられていた次世代の AI 半導体「ブラックウェル」については、今年の第 4 四半期に生産を始める方針を示した。 好決算にもかかわらず、同社の株価は同日の時間外取引で終値から約 7% 下落した。 同社は、AI の開発や運営に必要なデータセンター向けの画像処理装置 (GPU) を開発し、世界シェアは約 8 割にのぼる。 AI 半導体では「1 強」状態で、AI ブームの先行きを占う企業となっている。 6 月には時価総額で米マイクロソフトや米アップルを抜き、初めて世界首位となった。 米 IT 大手の 4 - 6 月期の決算発表では、各社とも最新の AI 開発に向けたデータセンターへの投資を拡大する姿勢を強調。 投資家からは「AI バブル」の懸念も出ていた。 一方、米政府による輸出規制がかかっている中国市場では伸び悩んでいる。 エヌビディア全体の売り上げが倍増した一方、中国は約 3 割増にとどまる。 売り上げ全体に占める中国の割合は前年同期の 20% から 12% に下がった。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 8-29-24) ◇ ◇ ◇ エヌビディアの CEO が台湾は半導体に加え「生成 AI の中心地になる」と明言する理由
最近の台湾で一身に注目を集めるのが、台湾系アメリカ人のジェンスン・フアン。 一時マイクロソフトを抜き時価総額トップとなった米半導体大手エヌビディアの CEO だ。 トレードマークの革ジャンと巨額の個人資産、そして人当たりの良さから「三兆元革ジャン兄貴」と親しまれているフアンは、コンピューター見本市「コンピュテックス台北」に合わせて来台し、こう明言した - 生成 AI 産業の中心地は「台湾」になる! 今回エヌビディアは、最新の AI 技術をこなせるスーパーコンピューターを台湾に寄贈。 さらに、同じく来台中だった半導体製造 AMD のリサ・スー CEO (フアンと親戚で同じく台湾系アメリカ人)も、高雄に研究開発センターを設置すると発表した。 蔡英文(ツァイ・インウェン)前政権下で水環境の整備、電力、人材育成など生成 AI 産業の誘致準備を進めてきた台湾は、急な変化やトラブルに柔軟に対応できる「変化対応力」にたけているのが強みだ。 対中制裁による輸出規制や中国企業との価格競争のなか、次々と事業戦略の練り直しを迫られる半導体部門に加えて、AI 分野においても、台湾は西側陣営における「対中国」の最前線となるかもしれない。 (NewsWeek = 7-19-24) 富士通、新興「コーヒア」に出資 生成 AI の基盤モデルを共同開発へ 富士通は 16 日、生成 AI (人工知能)を手がけるカナダのスタートアップ「Cohere (コーヒア)」と、生成 AI の基盤となる大規模言語モデル (LLM) を共同開発すると発表した。 コーヒアがつくった LLM を土台に、日本語能力を強化した LLM 「Takane (高嶺、仮称)」を新たに開発し、企業などに提供する。 コーヒアは LLM の開発を手がける企業の中でも世界的に有力な 1 社とされ、「ChatGPT (チャット GPT)」を運営する米オープン AI のライバル企業として注目されている。 共同開発に合わせて富士通はコーヒアに出資する。 出資額は非公表という。 両社が開発する LLM に、業種や業務に特化した情報を学習させ、富士通のデジタル化支援のサービスと組み合わせて企業などに提供する。 セキュリティー性能の高さが強みといい、金融や官公庁、研究開発などの分野を想定する。 9 月から提供を開始し、2027 年までに「特化型 LLM」の国内市場で 35% 以上のトップシェアを目指す。 (田中奏子、asahi = 7-16-24) ソフトバンク、シャープ堺工場に AI データセンター設置へ ソフトバンクとシャープは 7 日、堺市にあるシャープの液晶パネル工場の土地や建物を活用し、AI (人工知能)向けデータセンターを設置することで合意した。 ソフトバンクが土地や建物、設備を買い取り、2025 年中の稼働を目指す。 買い取るのは、堺工場の敷地面積の約 6 割にあたる約 44 万平方メートルと、敷地内にあるパネル工場や冷却設備など。 米半導体大手エヌビディア製の最新の画像処理装置 (GPU) を調達し、計算基盤を構築する。 生成 AI を開発・運用する企業や大学などにも貸し出す。 電力容量は約 150 メガワット規模。 将来的に 400 メガワット超に拡大する見込みという。 シャープは今月、KDDI などと AI データセンターの設置に向けた協議を進めると発表。 シャープによると、ソフトバンクが取得する土地との重複はないという。 シャープは新日本製鉄(当時)から土地を取得し、09 年に堺工場を稼働。 2000 年代、「世界の亀山モデル」を冠した液晶テレビで一世を風靡したが、中国勢や韓国勢との価格競争で敗れ、大型液晶パネルの生産を 9 月末までに停止する。 (奈良部健、asahi = 6-7-24) 「AI なら何でもできる」、「楽して稼ごうと」 ウイルス作成容疑の男 対話型生成 AI (人工知能)を使ってコンピューターウイルスをつくったとして、警視庁は無職の林琉輝(りゅうき)容疑者 (25) = 川崎市幸区 = を不正指令電磁的記録作成容疑で逮捕し、28 日に発表した。 林容疑者は 2 年ほど前に生成 AI に興味を持ったと説明し、「AI なら何でもできる。 (身代金を要求する)ランサムウェアを作って楽して稼ごうと思った」と容疑を認めているという。 生成 AI を使ったウイルス作成の摘発は異例。 サイバー犯罪対策課によると、逮捕容疑は昨年 3 月 31 日、自宅のパソコンやスマートフォンを使い、ネット上で無料公開されている複数の対話型生成 AI にアクセス。 不正プログラムの設計図となる「ソースコード」を作り、企業が持つデータを破壊するウイルスを作成したというもの。 企業への送信・被害は確認されず 作られたウイルスには、企業などが持つデータを暗号化し、身代金を要求するためのプログラムの設計図が含まれていた。 他のプログラムと組み合わせるなどすれば、企業や団体の持つデータに損害を与えられた可能性があるという。 現時点で企業などへ送信された形跡はなく、被害は確認されていない。 林容疑者は今年 3 月、別人をかたってスマホの SIM カードを不正に契約したとして警視庁に詐欺容疑などで逮捕され、起訴された。 この際の自宅の捜索で押収されたパソコンやスマホから、自作のウイルスがみつかったという。 対策不十分な AI 使ったか 生成 AI を巡っては、米企業「オープン AI」が 2022 年 11 月、対話型 AI 「ChatGPT(チャット GPT)」を公開。 以降、同様の生成 AI がネット上に多数公開され、急速に社会に浸透した。 チャット GPT のような主要な生成 AI は、犯罪に悪用されかねない悪質な指示に回答しないよう対策が強化されているが、ネット上には悪用対策が不十分な生成 AI もある。 同課は、林容疑者はこうした悪用対策が不十分な AI を使ったとみている。 生成 AI に詳しい国立情報学研究所の黒橋禎夫所長は「生成 AI は多くの人が利用できるのが利点だが、負の部分が表面化した事件だ。 遅かれ早かれ起こりうると想定できた」と話す。 黒橋所長によると、チャット GPT など、学習の計算量が極端に大きなモデルは、犯罪に悪用される可能性のある質問に答えないなど、安全対策が施されているものが多い。一方、それよりも計算量が小さなモデルは次々と開発されていて、安全対策が遅れているものも少なからずあると指摘する。 専門家「法整備速やかに進めて」 そのため「安全対策が遅れているモデルを複数使って、ある程度強力なウイルスを作成することが可能ではないか」と話す。 その上で、「新しい技術には常に功罪がある。 生成 AI の急速な進歩と普及で、開発と法規制のバランスは難しい」としつつ、「法整備を含め、開発者への対応などの対策を速やかに進めるべきだ」と話す。 (三井新、御船紗子、asahi = 5-28-24) バイデン大統領の AI 「なりすまし音声」、男を起訴 罰金 9 億円も 今年 1 月、米大統領選の予備選前に、バイデン大統領に似せて人工知能 (AI) で生成された音声の自動電話がかかり、投票をしないように呼びかけた事件で、米北東部ニューハンプシャー州の司法当局は 23 日、政治コンサルタントの男を投票抑圧などの罪で起訴した。 また、米連邦通信委員会 (FCC) も 23 日、電話の発信者番号の偽造を禁止する法律に違反したとして、この男に 600 万ドル(約 9.4 億円)の罰金を科すと発表した。 被告の男を取材すると … 起訴されたのは、南部ニューオーリンズに住むスティーブン・クレイマー被告 (54)。 ニューハンプシャー州の予備選 2 日前の 1 月 21 日、バイデン氏をまねた音声の自動電話が有権者にかけられ、予備選に投票しないよう呼びかけたとして、州当局が捜査を進めていた。 起訴状などによると、クレイマー被告は人工的に作られた候補者の声で有権者をだまし、投票させないように促した。 自動電話では、バイデン氏のような声の録音で「11 月の(大統領)選挙のために、あなたの投票を取っておくことが重要だ」と、予備選の投票を控えるよう促していた。 ニューハンプシャー州のフォーメラ司法長官は 23 日の声明で「我々の法執行が、AI を使う使わないにかかわらず、選挙への介入を考えるあらゆる者への強い抑止のメッセージになることを望む.。」と述べた。 クレイマー被告は起訴前の 3 月、朝日新聞の取材に「政治の世界でも AI が普及しており、何かしなければ悪い方向で使われ続けると思った」として、AI のリスクに警鐘を鳴らす意図があったと説明。 「私は提訴されても構わない。 何も心配していない。」と話していた。 最新の AI 技術をめぐっては、米オープン AI が 5 月、対話型 AI 「ChatGPT (チャット GPT)」で人間と同じ速度で会話できる機能を発表。 急速に技術が進化するなか、AI が生成したディープフェイク画像などの選挙への影響が懸念されており、なかでも音声は対策が難しいとされる。 今回のバイデン氏のなりすまし音声の事件は、大統領選で生成 AI が悪用された初の本格的な事例として注目されていた。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 5-24-24) AI 戦略会議、法規制の検討着手 人権侵害や犯罪のリスクに対応へ 政府は 22 日、「AI 戦略会議(座長・松尾豊東大教授)」を開き、AI (人工知能)の安全性確保に向けた法規制の検討を始めた。 人間に代わって作業を担う AI は、活用への期待がある一方、人権侵害や犯罪などにつながる恐れも指摘されている。 世界各国では法整備に着手しており、日本も足並みをそろえる必要性に迫られている。 日本政府は 4 月に、法的拘束力のない、事業者向けのガイドラインを公表したばかり。 これまで AI の開発促進を重視し、運用については開発や利用する企業の自主的な取り組みに委ねてきた。 だが、生成 AI などによるリスクへの対応が不十分といった指摘もあり、法規制にむけた議論に踏み切った。 会議では、AI を利用したリスクを列挙。 AI 兵器の開発やプライバシーなどの人権侵害、犯罪増加も挙げた。 そのうえで「リスクの高い AI に対して法的規制のあり方を検討する必要がある」と指摘した。 規制の対象は、規模の小さいモデルやスタートアップ企業ではなく、社会的影響力が大きく、リスクの高いAIを開発する企業を念頭に置く。 「ChatGPT(チャット GPT)」を開発した米オープンAIなどが該当する。 制度を守らない事業者への「実効的な対応のあり方についても検討が必要」とし、罰則についても検討することを示唆した。 ただ、細かい点まで法律で縛ることは想定していない。 特定の企業のモデルをすぐに禁止したり、開発自体に規制をかけたりすることもせず、民間事業者や業界団体の自主的な取り組みに極力委ねる方向だ。 欧州連合 (EU) では 21 日、世界で初めてAI を包括的に規制する「AI 法」が成立。 危険度に応じた義務を課し、違反者には制裁金を科す内容だ。 米国でもバイデン大統領が昨年 10 月、開発企業に情報開示を義務づける大統領令を出すなど、主要国では法規制の議論が進んでいる。 欧米など主要国の規制内容を精査し、どのような法規制が日本にとって適切かを議論する。 来年の通常国会への法案提出を視野に入れている。 高市早苗・科学技術担当相は会議の冒頭、「AI では世界で様々な動きがある。 国内外の AI 政策を振り返りつつ、今後の AI 戦略の課題と対応について議論し、政府の戦略に反映していきたい」と述べた。 松本剛明総務相も「AI の制度については、チャンスの拡大とリスクの抑制の両面で検討が必要だ」と語った。 AI 戦略会議は、政府が昨年 5 月に立ち上げた国内の AI 政策の司令塔。 国際的な議論を円滑に進めるためにも、この会議が国内のルールづくりを主導している。 (奈良部健、黒田健朗、asahi = 5-22-24) EU、世界初の AI 包括規制法が成立 「世界基準」化の可能性 世界で初めて人工知能 (AI) を包括的に規制する欧州連合(EU、本部・ブリュッセル)の「AI 法」が 21 日、加盟国の閣僚らでつくる EU 理事会で承認され、成立した。 日本を始め多くの国がルールづくりを模索するなか、4.5 億の域内人口を抱える EU の新たなルールは今後、「世界標準」になる可能性もある。 AI 法は、民主主義や基本的人権、法の支配を守りながら、人間を中心にして信頼できる AI の普及を目的とする。 技術そのものではなく AI の使い方による影響のリスクを分類。 市民の権利を守るために規制し、事業者に説明責任などの義務を課す。 リスクは 4 分類され、高いほど規制は厳しくなる。 たとえば、▽ 犯罪行為を促すために潜在意識を操作するようなサブリミナル技術、▽ 高度な監視カメラなどを用いて、顔認証などの生体認証技術をリアルタイムで犯罪捜査に使うこと、などは最もリスクが高いとして、「禁止」される。 2 番目の「高リスク」は、プロファイリングによる犯罪予測や、入試や採用試験での評価での利用などを想定。 人間が使用履歴の記録や管理をし、利用そのものの適合性を評価することを、事業者側に義務づける。 また、「特定の透明性が必要なリスク」の項目では、チャットボットなどの自動応答システムが AI によるものである場合に、それを利用者らに明示する必要がある。 ただ、今夏に開かれるパリ五輪など、テロ対策での用途は対象外とされ、安全保障と個人の権利のバランスを取った。 研究目的や開発段階の AI についても規制対象から外された。 進化が著しい生成 AI については、一部がこれらの分類に組み込まれたほか、別枠でも規定が設けられ、著作権の順守、AI を開発するための学習に使ったデータの詳細な概要を公開することなどを義務づけた。 また、将来的に、より高い処理能力を持つなど、さらに進化したAIが登場した際には、追加でリスクの管理や重大インシデントの監視などの義務が課せられる。 今回の AI 法では実効性を高めるため、「禁止」分野に違反すれば、3,500 万ユーロ(約 59 億円)または全世界年間売上高の 7% のうち、高い方の金額が制裁金として科される。 その他の分類での義務を履行しなかった場合は、事業規模などに応じて 1,500 万ユーロ(約 25 億円)または全世界年間総売上高の 3% を上限とした制裁金が設けられた。 AI 法には「域外適用規定」があり、影響は EU 外にも及ぶ。 情報法が専門の一橋大学大学院の生貝直人教授は、「広範な域外適用により、日本を含め、欧州で事業を展開する各国の企業が AI 法に従わざるを得なくなる。 それにより、域内ルールを世界のルールにする『ブリュッセル効果』はより大きくなる」と説明する。 AI 法は 2026 年中の全面適用を目指すが、最もリスクが高いとした「禁止」は、先行して 24 年末にも適用が始まる見込みだ。 別枠で規定した生成 AI などについては、来年 6 月ごろにも適用されるという。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 5-21-24) スパコン「富岳」で純国産の生成 AI モデル 東工大・富士通など開発 世界最高峰の計算能力を持つスーパーコンピューター「富岳」を使った生成 AI (人工知能)の大規模言語モデル (LLM) 開発に東京工業大などが成功した。 10 日発表された「Fugaku-LLM」は学習データから開発の要となる半導体まで、全てを国内で調達した「初の純粋な国産モデル(同大の横田理央教授)」という。 東北大や富士通、理化学研究所などと共同開発した。 サイバーエージェントが提供した学習データの約 6 割は日本語で、日本語や日本文化に根ざした対話を得意とする。 モデルの規模を示す「パラメーター」の数は 130 億。 開発を率いた横田教授は、純国産モデルの意義について、「一からデータセットを集め、外国製のものに一切頼らずにつくったので、透明性と安全性を担保できる」と話した。 AI 開発には一般的に GPU (画像処理装置)と呼ばれる半導体を用いるが、富岳は CPU (中央演算装置)で動くスパコンだ。 開発陣は GPU ベースの AI 開発手法を富岳に最適化し、演算速度や通信速度を高めて LLM 開発に結びつけた。 理化学研究所の松岡聡・計算科学研究センター長は、「国内に AI を内製できる技術力が十分にあると示せた。 この技術を対話型 AI だけでなく、さまざまなサイエンスに応用していくことが重要だ」と話した。 Fugaku-LLM は一般公開されており、同モデルを使った対話型サービスは富士通のウェブサイトから無料で使える。 (村井七緒子、asahi = 5-11-24) グーグルの不適切広告削除、昨年 55 億件 生成 AI で取り締まり効果 米グーグルは 26 日、広告の安全性についての年次報告書を発表した。 同社が昨年、規約違反を理由に掲載を阻止、または削除した広告は世界で 55 億件で、前年(52 億件)から増えた。 生成 AI (人工知能)の普及で不正な広告が増えている一方、AI を使った取り締まりの効果も上がったとしている。 グーグルはこれまでも規約違反の広告の取り締まりに AI を使ってきたが、最新の AI の大規模言語モデル (LLM) は、広告の文脈がより正確に理解できるようになり、取り締まりの向上につながっているという。 一方で、生成 AI で作られた「ディープフェイク」と呼ばれる画像などの精度も上がっており、AI による取り締まりは「完璧ではない」としている。 今年は米大統領選などの重要選挙を控え、ディープフェイクによる選挙への影響が懸念されている。 同社は昨年、選挙広告に AI が生成したコンテンツが含まれる場合、その旨を開示するよう義務付ける方針を示しており、広告の透明性を高める取り組みを進めていくという。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 3-27-24) 「日本は独自の AI モデルを」 米半導体大手エヌビディア CEO 米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者 (CEO) は 19 日の記者会見で、日本は独自の人工知能 (AI) の基盤モデルを作るべきだとの考えを示した。 フアン氏は昨年 12 月に訪日した際、岸田文雄首相と面会したほか、日本に研究開発拠点をつくる方針を示していた。 会見で日本市場について問われたフアン氏は、日本の人々は生産性向上の重要性を理解しているとしたうえで、「AI がその最良の手段になる」と指摘。 日本の言語や文化は独特であり、「(外国の)第三者が日本のデータを収集して AI をつくり、日本が国内市場に輸入するのは理にかなっていない」と話した。 エヌビディアは、AI 向けの画像処理装置 (CPU) で世界シェアの 8 割を持つ。 AI ブームが続くなかで需要が急増しており、同社は日立製作所と協業するなど日本企業との連携も進めている。 (サンノゼ・五十嵐大介、asahi = 3-20-24) 公的機関の AI 活用例、世界で共有 G7 デジタル相会合が閉幕 イタリアで開かれた主要 7 カ国 (G7) 産業・技術・デジタル相会合が 15 日、閉幕した。 採択された閣僚宣言には、急速に進化する人工知能 (AI) を公的機関でも安全に活用できるよう、実践例を共有する新たな枠組みが盛り込まれた。 新たな枠組み「ツールキット」は、膨大な個人データを扱う公的機関がAIを使う際、市民へのプライバシー侵害などがないよう、実践例とともにリスク評価などを共有する。AIを使った効率的な公共サービスを、世界中で展開したいという。 背景にあるのは、AI 使用で求められる透明性の確保などが、「公的機関の限られた資源や不十分な訓練」では、不足しているという認識だ。 議長国のイタリアが提案し、任期中の完成を目指す。 生成 AI の国際ルールは継続協議 一方、昨年合意した生成 AI の国際ルール「広島 AI プロセス」の具体的協議は継続することになった。 広島プロセスでは、AI の開発者に、市場投入前のリスク検証などを求める「行動規範」を規定する。 これらが適切に履行されているか、「モニタリング」する仕組みを、今後具体的に検討していくという。 生成 AI をめぐっては、開発途上ゆえに自由に可能性を探るべきである一方、教え込むデータが著作権を侵害する恐れがあったり、「ディープフェイク」など偽情報が容易に作れたりと、対策は急務だ。 13 日には欧州連合 (EU) で、AI 規制が欧州議会で可決。 世界で初めて生成 AI について制限を設けており、施行まであと一歩のところまで来ている。 G7 では、事前に規制を設ける欧州と、ガイドラインで緩やかに方向性を示す米国などとで立場の違いは大きく、いまだルールにどう実効性を持たせるか打ち出せずにいる。 会合に出席した河野太郎デジタル相は「それぞれアプローチに違いはあるが、向いている方向性は同じだ」と前向きな姿勢を見せた。 (トレント = 牛尾梓、asahi = 3-16-24) グーグル、対話型 AI で人物の画像生成を停止 人種的な偏りが原因か 米グーグルは 22 日、同社の対話型 AI (人工知能)「Gemini (ジェミニ)」について、人物の画像を生成する機能を停止すると発表した。 歴史上の人物として生成した画像が不適切だと批判が出ていた。 最新の AI 技術では人種的なバイアス(偏り)が指摘されており、対応の難しさを浮き彫りにした。 グーグルは今月、同社の対話型 AI 「Bard(バード)」の名称を「ジェミニ」に変更。 自然な言葉で文字を入力するだけで、画像を生成する機能を提供している。 グーグルは X (旧ツイッター)の投稿で、「一部の歴史的な画像表現で不正確な内容があった」と言及。 人物についての画像生成機能を一時停止し、問題を解決したうえで再開すると説明した。 米ニューヨーク・タイムズ紙によると、ある利用者が「1943 年のドイツ兵の画像を描いて」と英語のスペルをミスして入力したところ、ナチス時代のドイツ軍の制服を着た黒人やアジア人の画像が生成されたという。 マスク氏が「人種差別主義者」と投稿 SNS 上では、ジェミニで白人の画像の生成を要求すると断られた一方、中国人や黒人の画像の生成を求めると応じたという指摘も拡散。 グーグルが人種の多様性を過度に反映しすぎているとの批判も出ている。 起業家のイーロン・マスク氏は 22 日の X の投稿で、ジェミニと米オープン AI のロゴの上に「ウォーク (woke) な人種差別主義者」と描かれた画像を投稿した。 「ウォーク」は差別などへの問題意識を強く持つ人を批判する際に使われる言葉で、日本語の「意識高い系」に近い。 マスク氏は「グーグルの人種差別的で、反文明的なプログラミングをすべての人に明らかにした」と批判した。 グーグルは X の投稿で、ジェミニが幅広い人々の画像を生成することについて、「世界中の人々が使っており、一般的にはいいことだ」としながらも、「今回は的外れだった」と釈明した。 グーグルの AI 技術をめぐっては 2015 年、画像認識技術を使った写真アプリで、2 人の黒人の画像を「ゴリラ」と誤認識して、本人に謝罪をした経緯がある。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 2-23-24) メタ、AI 生成の画像に「ラベル付け」強化 音声や動画では罰則も 米メタは 6 日、フェイスブック (FB) や写真投稿アプリ「インスタグラム」上で、人工知能 (AI) で生成された画像だとわかるようにする「ラベル付け」を強化すると発表した。 米大統領選など世界で重要な選挙を控え、AI を使った選挙干渉への懸念が広がるなか、対応を急ぐ。 メタはこれまで、同社の AI 支援ツールを使って生成された画像について「AI で描かれた」というラベル付けや、AI が生成したとわかる「電子透かし」をつけてきた。 同社は今後、業界共通の技術を導入して、他社の AI 技術で生成された画像にもラベル付けを広げる。 今後数カ月で、アプリで利用可能な日本語を含むすべての言語で対応するという。 具体的には、画像が作製された際の日時や位置情報などのデータを埋め込む技術的な国際基準である「C2PA (米アドビやソニーが参画)」や、世界の大手報道機関が参加する「IPTC」などに対応する。 こうした取り組みによって、FB やインスタ上で、米グーグルや米マイクロソフト (MS)、対話型 AI 「ChatGPT (チャット GPT)」を運営する米オープン AI などの技術を使って生成された画像のラベル付けもできるようになるという。 メタは今後、AI が生成した動画や音声を利用者が投稿する際、ラベル付けを義務づけ、違反した場合は罰則を適用するとしている。 オープン AI も今月、チャット GPT や同社の画像生成 AI「DALL・E3」で生成された画像に、「C2PA」の基準に基づいた作製日時などのデータを含める方針を示した。 ただ、こうした電子透かしやデータなどは簡単に削除することができるため、オープン AI も「特効薬ではない」と認めている。 メタは、AI が生成した画像かどうかの見極めには、投稿元のアカウントの信頼性の確認など「複数の検討が重要だ」としている。 米大統領選の予備選があった米北東部ニューハンプシャー州では先月、AI で生成されたとみられるバイデン大統領に似せた声の自動電話が報告された。 捜査に着手した同州当局は 6 日、電話の発信元がテキサス州の業者と特定したと発表。 同州のフォーメラ司法長官は声明で「AI が生成した録音電話は、民主的な選挙プロセスに破滅的な影響を与えうる」と警告した。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 2-7-24) 国産 AI、小型 x 日本語で攻める ChatGPT を追わない選択 米 IT 大手が先行する生成 AI (人工知能)の開発競争に日本勢の参入が相次いでいる。 NEC や NTT が対話型 AI の基盤となる大規模言語モデル (LLM) を次々に開発。 巨大で英語中心の先行モデルとは一線を画し、「小型」と「日本語」を強みに専門的な使い道に商機を見いだす。 NEC は昨年 12 月の生成 AI の戦略発表会で、医療に特化した LLM が医師と患者の会話をもとにカルテを自動作成するサービスの未来像を披露した。
医師が医療用語を使いながら説明すると、瞬時に画面上で医師の言葉がそのまま文章化された。 「GPT-3」の 13 分の 1 こうしたサービスの実現に向けて、NEC は昨年 7 月に LLM を開発した。 特徴は、LLM の規模を示す指標である「パラメーター数」の小ささ。 数が大きいほど性能が高く、複雑な指示にも対応できるとされるが、電力消費が大きく運用コストもかかる。 NEC のモデルは 130 億。 ChatGPT (チャット GPT)を開発した米オープン AI が2020 年に出した LLM「GPT-3」の 1,750 億と比べ 13 分の 1 にとどまる。 オープン AI の最新モデル「GPT-4」のパラメーター数は非公表だが、大幅に増えているとみられる。 小型化すると、計算設備は小規模で済み、電力消費も少ないため、開発や運用コストを抑えられる。 導入企業はクラウドサービスを介することなく、自社内に置ける規模の計算機で動かせるため、情報漏洩のリスクも減らせる。 海外 LLM の学習データは英語中心 もう一つの強みが日本語での対応力だ。 オープン AI やグーグルなどの海外の主要 LLM は日本語も使えるが、学習データの大部分が英語なため、日本語特有の言い回しに対応しきれない面がある。 NEC は日本語データの学習量を大幅に増やし、日本語特有の文脈や文化を踏まえた回答が作れる性能に引き上げた。 NEC の西原基夫・最高技術責任者は「サイズが小さくても、質の高いデータをたくさん学習させれば性能は上がる。 我々もやってみて分かってきた。」と話す。 NTT も昨年 11 月、日本語データを学習させた小型 LLM「tsuzumi」を発表。 パラメーター数が 70 億の「軽量版」と 6 億の「超軽量版」の 2 モデルを用意した。 3 月に提供を開始する予定で、超軽量版は将来的にカーナビやスマートフォンの中でネット接続せずに動かすことを想定する。 木下真吾・研究企画部門長は記者発表で、「目指す方向性は、専門知識を持った小さな LLM。 日本語かつ軽量を武器にビジネス展開を図っていきたい。」と説明した。 サイバーエージェントや AI 開発のリンナ、プリファード・ネットワークス (PFN) なども日本語に特化したLLMを発表している。 日本語が得意な小型 LLM で各社が狙うのは、一般の人も使えるチャット GPT のような幅広いサービスではなく、特定の業界や業務に特化した使い方だ。 小型なので時間をかけずに専門知識の追加学習ができる。 保険会社のコールセンターや自治体の行政事務など、業務に特化したモデルをいくつも用意するイメージだ。 NECは医療や金融など業種の異なる 10 社余りで先行導入し、業界ごとのモデルを整備する構想を描く。 西原 CTO は「業界で共有できるデータを各社で出し合い、より賢いモデルをつくってみんなで使うことができれば、業界ごとに生産効率や利益率を上げられる」と話す。 背景に「デジタル赤字」の拡大 国産 LLM の開発には、海外のネットサービスが国内で重用されることで生じる「デジタル赤字」の拡大防止への期待もある。 クラウドサービスや音楽・動画配信、デジタル広告などでは、日本から海外企業にお金を支払うケースが多く、国際収支上は赤字状態にある。 日本銀行の統計によると、2022 年は 4.7 兆円の赤字で赤字幅は14 年から 2.2 倍に拡大した。 生成 AI 開発が今後も米企業頼みになれば、赤字幅はさらに広がる可能性がある。 AI のルール策定に関わる政府の有識者会議の委員を務める PFN の岡野原大輔氏は「クラウドサービスだけで 30 年ごろに 8 兆円の赤字になるとも言われている。 生成 AI では今から(米国勢に)対抗しうる余地をつくっていく必要がある」と指摘する。 (村井七緒子、asahi = 1-29-24) |