(2)
「取り締まれ」相次いだ通報 小さな疑惑に向かう正義感
7 月 23 日夕、名古屋市中区栄にあるライブハウス、伏見ライオンシアター。 「ちょっと寂しい状況ですよね。」 地下アイドルのライブを前に、店長の稲垣鷹樹さん (36) はフロアを見渡した。 1 メートルおきに床に目印をつけたホールは、本来 250 人収容できる。 主催者側の人数制限もあり、新型コロナウイルスの感染者が再び増えるなか、観客は十数人だった。 3 月半ば、大阪市のライブハウスで判明した集団感染が、大きく取り上げられていたころ、地下 1 階にあるライオンシアターの入り口に貼り紙が見つかった。
コロナ禍で出演辞退が相次ぎ、4、5 月は休業。 6 月半ばに再開すると、今度は店のウェブサイトに「死人が出たら責任とれるんですか」と書き込まれた。 稲垣さん自身は、こうした貼り紙や書き込みはあまり気にはしていない。 「へんな正義感を振りかざす人はいますから。」 「何とかしろ」 匿名でかかってくる電話 飲食店などに休業や営業時間の短縮が要請されていた 4 月。 名古屋市内の全国市民オンブズマン連絡会議事務局に、男性から電話がかかってきた。
行政による不正な公金支出を監視し、是正することを活動目的とする市民オンブズマン。 確かに、協力金には公金が使われている。 しかし、事務局員の内田隆さん (45) は困惑した。 ウソを言って協力金をもらっているなら、詐取かもしれない。 でも本当に申請したかどうか、第三者にはわからない。 布マスクなど効果が疑わしいものもあるコロナ対策に膨大な公金が使われているとき、不正かどうかわからない小さな疑惑に、なぜ正義感が向かうのか。 「貴重な情報ありがとうございました。」 電話を切った。 7 月 11 日に海水浴場が「海開き」を迎えた津市の御殿場海岸。 全国に緊急事態宣言が出ていた 4 月下旬から 1 カ月余り、市は周辺の市営駐車場を閉鎖した。 大型連休中などは県外からも多くの潮干狩り客が訪れる。 例年、路上駐車への苦情も市に多く寄せられるが、この春は少し違った。
県外からの人をとがめる内容が多く、「何とかしろ」、「取り締まれ」と続いた。 名乗らず、激しい口調の電話が多かったという。 自粛要請解除で減った 110 番
外出や店舗の営業を「自粛」するように求められているのに、守っていない。 愛知県警には、そんな 110 番通報が相次いだ。 県警によると、新型コロナに関する 110 番通報は、4 月 224 件、5 月 171 件。 SNS などで「自粛警察」と呼ばれる内容が半数以上にのぼった。 ところが、5 月末に愛知県が休業や自粛の要請を全面解除すると、一変した。 6 月のコロナに関する通報は 15 件のみで、「マスクをしていない客に注意したら口論になった」などけんかや口論についてが 10 件を占めた。 自粛に関わるものは一件もなかったという。 愛知県知多市に住む森靖雄さん (85) は、商店街で育った少年期を思い出す。 戦時下、スパイ警戒の「防諜」がやかましく言われた。 庶民にはスパイがどこにいるのか、警察がどう取り締まっているのか、さっぱりわからなかった。 それでも誰かが正義感から、あらぬ通報をしないとも限らない。 一番気になったのは、ふだん親しくしているはずの隣近所だった。 そして、終戦の玉音放送が流れた 1945 年 8 月 15 日。 直後に母親や近所の人が「戦争が終わってよかった」と突然、本音を話し出した。 警戒されていたのは「軍国少年」の自分もだったのか。 いまはそう思う。 (伊藤智章、高絢実、臼井昭仁、小松万希子、asahi = 8-16-20) 感染防止ステッカー、実は入手が簡単 パブでクラスター ![]() 東京都江戸川区のフィリピンパブで、客ら計 8 人が新型コロナウイルスに感染した。 同店は感染防止に取り組んでいることを示す、都の「感染防止徹底宣言ステッカー」を掲示していたが、それでもクラスターが発生した。 店側の対策に頼る限界がにじむ一方で、入手が容易なステッカーの効果を疑問視する声もあがっている。 このフィリピンパブは「マヨン2」。 地下鉄西葛西駅に近い、飲食店が集まる一角にある。 区保健所によると、60 代の利用客の感染が判明。 濃厚接触者を検査したところ、店の従業員 7 人の感染が判明した。 同店が入るビルには都のステッカーが貼られ、ビルに入る飲食店 7 店の連名で、「ご来店の際に手指消毒を」と利用客に求める貼り紙も。 感染対策を取っていることが示されていた。 保健所の担当者も、同店は消毒液を設置し、換気に気を配るなど対策を講じていたという。 ただ、従業員が客から「マスクをとって」と求められ、外さざるを得ない状況もあったと明かす。 この担当者は「ステッカーを貼る条件は整っていたが、業態として難しい部分があるのか …」と苦しさをにじませた。 13 日昼すぎ、都職員らがこの店を訪れ、ステッカーをはがしていた。 周辺の店もほとんどが入り口にステッカーを掲示している。 近くのパブ店で働く女性 (35) は「どこの店もやれることをしている。 感染者が出たからと言って、ごまかしてステッカーを貼っているとは思わないでほしい。」と話した。 項目遵守の確認体制なし 一方、ステッカーの効果を問題視する向きもある。 ステッカーは都のホームページで「利用者・従業員にマスク着用の徹底を周知する」「座席の工夫など従業員も含めて対人間隔を確保する」といった対策項目をすべてチェックすれば、だれでもダウンロードできる。 今回のパブは 7 月 16 日に都に登録申請をしたという。 都によると、13 日朝時点で飲食店やカラオケ店、映画館など幅広い業種で 17 万 5 千店が掲示するが、実際に項目を順守しているかを確認する体制にはなっておらず、実効性が課題だ。 小池百合子知事は 13 日、報道陣に「(今回の店は)感染防止の取り組みはずいぶん早くからやっていると聞いている」との認識を示した上で「(感染防止には)お店の理解、協力と利用者側の両方の認識が必要なんだということを改めて理解しなければならない」と語った。 都の担当者も「都としては、ステッカーが貼ってあるのは意識が高い店舗であり、行くならそういう店を選んでほしいという姿勢は変わらない」と話した。 (柏木友紀、大山稜、長野佑介、asahi = 8-13-20) 帰省容認の知事「温かい心で受け入れて」 差別を危惧 8 日に開かれた新型コロナウイルスに関する全国知事会のウェブ会議では、お盆期間の帰省自粛を求める声が出る一方、偏見や差別への懸念から「温かい心で受け入れてほしい」という意見も上がった。 青森県の三村申吾知事は「適切な感染防止対策をしているにもかかわらず、帰省する方々に対して根拠のない偏見や差別が危惧される」と発言。 帰省を受け入れる立場として、一律の自粛は求めないという。 お盆期間について、「お盆は家族や親戚や友人の温かさに触れ、ふるさとの絆を改めてたぐり寄せる機会。 新型コロナによってその機会が失われ、ふるさとの有り様が変わってしまうとすれば残念で寂しい。 帰省される方に対して、温かい心で受け入れていただきたい。」と訴えた。 大阪府の吉村洋文知事は「一律自粛はお願いしていない」とし、「大事なのは帰省先での行動。 飲み会などのリスクの高い行為は控えて、親族で静かにお過ごしください。」と話した。 (大山稜、浜田奈美、木下こゆる、asahi = 8-8-20) 感染者が宿泊した施設は GoTo に登録? 国交省把握せず 政府の観光支援策「GoTo トラベル」事業に関わる新型コロナウイルスの感染者情報を、事業を所管する国土交通省に迅速に伝える仕組みが整っていない。 4、5 日にあった野党合同ヒアリングでこうした課題が浮上した。 ヒアリングで野党議員が省庁側にただしたのは、福井県が 7 月 29 日に発表した感染例をめぐる対応だ。 同県の男性 6 人が 7 月 23 - 26 日、沖縄・石垣島に一緒に宿泊し、地元に戻った後に感染が判明した。 6 人が泊まった宿泊施設は「GoTo」に登録しているのか。 野党議員は国交省にそう問いかけた。 宿泊施設が「GoTo」の登録を受けるためには、旅行者全員の検温や浴場の人数制限などの感染防止策をとらなければならず、対策していなければ取り消される可能性もある。 6 人が宿泊したのが登録された宿泊施設だったとすれば、国交省はその事実を把握した段階で、感染対策がされていたかを確認する必要があることになる。 4 日の時点で国交省の担当者は 6 人が泊まった宿泊施設を「把握していない」と説明。 同席した厚生労働省の担当者も、「福井県に問い合わせをしている最中だ」と答えた。 国交省は 5 日になって、宿泊施設の親会社が事業に登録していたことが確認できたと説明、割引の対象になる可能性があったとの見解を示した。 感染者の情報は通常、各地の保健所から都道府県などに報告され、厚労省に概要が集約される。 その後、国交省に情報が伝達される仕組みはなかったという。 国交省は、宿泊施設名がわかれば「GoTo」に登録されているかどうかはすぐに確認できると説明している。 だが、その前提となる情報が届いていないことになる。 担当者は「いま厚労省と調整を始めたところ。 どういう形で保健所から情報をもらえるかを早急に詰める。」と話した。 もう一つの「ほころび」も明らかになった。 国交省はこれまで、「GoTo」に登録された宿泊事業者が感染者の情報を得た場合、すぐに「GoTo」の事務局に報告する仕組みがあると強調していた。 ところが 4 日のヒアリングの中で、登録を受けた宿泊施設で従業員の感染が確認されたのに、国交省が報告を受けていない事例が明らかになった。 長野県のホテルで 7 月 31 日、従業員の感染が確認され、ホテルは 8 月 1 日にウェブサイトでこの事実を公表していた。 このことを指摘されると、国交省の担当者は「タイムラグがあったかもしれない。 すみやかにヒアリングや検査をしたい。」と話した。 「GoTo」事業をめぐっては、8 月中旬の開始予定を急きょ 7 月 22 日に前倒ししたことで、詳細の詰めが後手に回る点が散見される。 赤羽一嘉国交相は 4 日の閣議後会見で、「GoTo」事務局や国交省の職員が早ければ宿泊施設の一部を週内にも訪れ、感染対策の状況を確認する方針だと説明した。 (贄川俊、asahi = 8-5-20) 首都圏の観光地、東京からの人出が増加 4 連休の期間 26 日までの 4 連休の期間、首都圏周辺の観光地では東京からの人出が増える傾向だったことがわかった。 一方で、東京から沖縄や北海道など遠方への動きは低調だったようだ。 東京は連休直前に始まった政府の観光支援策「Go To トラベル」の対象から外れ、都知事が都民に 4 連休中は「不要不急の外出はできるだけ控えて」と呼びかけている。 ソフトバンクの子会社アグープから、スマートフォンの位置情報をもとに、観光地を訪れた人がどこから来たのかのデータを提供してもらい、朝日新聞社で、7 月中旬までの 3 度の週末と 4 連休の平均を比べた。 東京からのアクセスが比較的良い江の島海岸(神奈川県)や熱海温泉(静岡県)では他県からの人出が 1.5 倍以上増え、東京からは 2 倍以上の増加だった。 那須(栃木県)や軽井沢(長野県)では連休中の他県からの人出が倍増したが、東京からはそれを上回る増加幅だった。 東京から距離的に遠い新千歳空港駅(北海道)や那覇空港駅(沖縄県)では、東京からの人出は 2 割ほどの増加にとどまった。 (合田禄、asahi = 7-27-20)
Go To トラベル キャンセル料補償 今月 10 - 17日予約分を検討 観光需要の喚起策「Go To トラベル」をめぐり、政府は当初の方針を転換し、東京を割り引きの対象から外したことに伴うキャンセル料について補償する方針です。 対象は、キャンペーンの開始日を公表した今月 10 日から 17 日までの間に旅行を予約した人とすることを検討しています。 22 日から始まる「Go To トラベル」をめぐって、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、すでに予約された分を含めて、東京都を目的地とする旅行と、都内に住む人の旅行を、割り引きの対象から外しました。 これに伴って旅行を予約した人がキャンセルした場合の対応について、赤羽国土交通大臣は先週の記者会見で「国として補償する考えはない」としました。 しかし、割り引きを見込んで旅行を予約した人たちから補償を求める声が相次いだことなどから、政府はキャンセル料を補償する方針に転換しました。 この中では、 また補償の対象は、キャンペーンの開始日を公表した今月 10 日から、東京を対象外とすることを表明した 17 日までの間に旅行を予約した人とすることを検討していて、赤羽大臣は 21 日、こうした補償の方針などを説明することにしています。 (NHK = 7-21-20) ◇ ◇ ◇ Go To トラベル、若者や高齢者の団体旅行も除外を検討 新型コロナウイルスの影響で落ちこんだ観光業の支援策として22日から始める「Go To トラベル」について、赤羽一嘉国土交通相は17日の閣議後会見で、東京都民と都内への旅行を対象外とすることを正式に発表した。 赤羽氏は会見で「都内の観光事業者の皆さま、都民の皆さまに大変期待があったと承知している。 私としても断腸の思いだ。」と述べた。 そのうえで「一刻も早く全国各地から東京の旅行を楽しんでいただけるよう、環境づくりに全力をあげて取り組む」とした。 東京を補助対象に含めるかどうかは、今後の感染状況を踏まえて専門家の意見を聞いて政府として判断する考えを示した。 東京が対象から外れたことを理由に旅行の予約をキャンセルした場合の補償は「考えていない」という。 16 日の政府の新型コロナ感染症対策分科会では、若者や高齢者の団体旅行や、大人数の宴会をともなう旅行などは感染リスクが高く控えることが望ましいとの指摘があったという。 赤羽氏は、こうした旅行は支援の対象外にすることも検討する考えを示した。 具体的にどういった事例を対象外とするかは、今後事業の委託先などと協議して決めるという。 また、東京を外して事業を実施することで事業効果が薄れるとの指摘について、赤羽氏は「一定の経済的影響が出る」と認めた。 「経済的効果より安全対策上やむを得ぬ措置だ」とも付け加えた。 支援策は当初、22 日から全国一律で始める予定だった。 しかし、東京都を中心に感染者の増加傾向が確認されたことなどから各地の首長らから批判が続出。 政府は方針を転換し、東京都を外して予定通り行うこととして、16 日の政府の分科会で了承された。 (asahi = 7-17-20)
◇ ◇ ◇ 「GoTo トラベル」 東京発着は補助対象外に … 赤羽国交相 赤羽国土交通相は 16 日、政府の観光支援事業「Go To トラベル」について、東京都内で新型コロナウイルスの感染者が急増していることを踏まえ、東京都を目的地とする旅行と、都内居住者が都外に出る旅行については補助の対象外とする方針を示した。 首相官邸で安倍首相と会談後、記者団に語った。 16 日夕に開かれる新型コロナウイルス感染症対策分科会に政府案として提示し、専門家の意見を聴取する予定だ。 (yomiuri = 7-16-20) 観光業界期待の GoTo 前倒し 「国は責任ある対応を」 東京都の新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を連日更新するなか、政府は経済活動の再開を加速させている。 10 日には、大規模なイベント開催の制限を緩和。 観光支援策「Go To トラベル」の前倒しも発表した。 だが、医療関係者からは、政府に感染拡大の防止策をさらに強めるよう求める声が出ている。 GoTo、予約済み旅行も割引に 1 人 1 泊 2 万円が上限 国内旅行を対象に、宿泊や日帰りの旅行代金の半額相当を補助する「Go To トラベル」事業。 当初は 8 月上旬の開始を予定していたが、赤羽一嘉国土交通相は 10 日の会見で、前倒しして 7 月 22 日から開始すると表明。 「観光関連業界などからできるだけ早くという要望が強く寄せられた」と強調した。 コロナの影響でホテルや旅館の倒産が相次ぐなど、地方の観光地はどこも苦境にある。 赤羽氏は夏休みの旅行シーズンを前に実施できるよう、準備を急がせてきた。 だが、東京都の感染者数は 200 人を超え、連日過去最多を更新。「Go To」事業で観光目的の人の移動が活発になれば、感染者が全国に広がりかねない懸念もある。 それでも、赤羽氏は「旅行者や業界の安心安全の確保は大前提だ」として、「感染拡大防止と社会経済活動の両立に取り組むのが政府の方針だ。 Go To トラベル事業だけ予定を変更しなければいけないという認識はない。」と話す。 実際、10 日には、イベント開催について、政府の制限が緩和され、プロ野球とサッカー J リーグが観客を入れた試合を再開。 新型コロナウイルスの感染が拡大している首都圏でも、千葉市のゾゾマリンスタジアムでロッテ - 西武の試合があった。 菅義偉官房長官も 10 日の会見で、「直ちに緊急事態宣言を発出する状況に該当するとは考えていない」と従来の立場を繰り返し、今後もイベントなどの制限緩和を予定通り実施していく考えを示した。 コロナ対応を担う西村康稔経済再生相も同日の閣議後会見で、「重症者数はむしろ減ってきている」と強調。 報道陣に対し、重症者数や若い感染者の割合など、内訳も詳しく報じるよう要請した。 だが、政府の姿勢を疑問視する声は日に日に高まっている。 「Go To」事業の前倒し実施について、九州のある観光業者は「感染が収まる前に急いでキャンペーンをしても遠出をする人が少なくて、地方への恩恵は限定的だろう」と効果を疑問視する。 全国知事会は 10 日、「Go To」事業について、全国一律ではなく、近隣地域の誘客から始めることなどを求める緊急提言を発表。 長野県の阿部守一知事は同日、全国知事会ワーキングチームの会合で、政府に対し「都道府県レベルでは十分な対応が取りにくい。 人の往来の部分については特措法に位置づけるなど、まず国が責任を持って対応を」と注文をつけた。 (asahi = 7-10-20) 専門家会議廃止、与党からも批判続出 「経緯説明ない」 新型コロナウイルス対策に関する政府と与野党の連絡協議会が 26 日、国会内で開かれた。 政府が専門家会議を廃止し、新たな会議体を設けるとしたことに野党だけでなく、与党も反発。 公明党の高木美智代政調会長代理は終了後、記者団に対し、与党に事前説明がなかったとし、「与党の了解の上でやってもらわないといけない」と批判した。 専門家会議の廃止は新型コロナ対策を担当する西村康稔経済再生相が 24 日に発表した。 高木氏は記者団に「専門家会議の設置は公明党が政府に提言して実現したもの」と強調。 「総理の横に専門家がいて発信しなかったら国民とのリスクコミュニケーションは成り立たない。 改変するなら目的やこれまでとの違いは何か総合的に示してもらいたい。」と求めた。 立憲民主党の逢坂誠二政調会長は「どういう経過で決まったのか、新たな体制に移ることの合理性はあるのか」と政府に説明を要求。 しかし、明確な回答はなかったという。 (吉川真布、asahi = 6-26-20) 新型コロナでテレワーク 3 割超実施、23 区内は 5 割越す 内閣府初調査 内閣府は 21 日、新型コロナウイルス感染症の影響で全国の 3 割以上の人がテレワークを行い、実施者のうち、仕事より生活重視に意識が変化した人が約 6 割、地方移住に関心が高まった人が約 2 割となるといった変化がみられたとする調査結果を明らかにした。 調査は感染拡大後、初めて実施。 全国の 1 万 128 人にインターネットで意識や行動の変化を聞いた。 その結果、テレワークを何らかの形で実施した人は全国で 34.6%、東京 23 区では 55.5% に上った。 通勤時間は東京 23 区で 56% が「減少した」と答え、回答者の 72.7% が「今後も保ちたい」と答えた。 また、テレワーク実施者の 64.2% が「仕事より生活重視に変化した」と回答。 「地方移住への関心が高まった」と回答したのは、テレワーク実施者の 24.5%、東京 23 区に住む 20 代では 35.4% に上った。 一方、テレワーク実施者に利用拡大の課題を複数回答可で尋ねたところ、「社内の意思決定の仕方の改善」や「書類のやり取りの電子化」との回答が 4 割以上だった。 回答者全体の 47.7% が「生産性が減少した」とも回答した。 西村康稔経済再生担当相は 21 日の記者会見で「これまで突きつけられてきた地方創生や東京一極集中の是正、少子化対策、働き方改革、デジタル化などを一気に進めるチャンスだということがデータから分かる」と述べ、今後、成長戦略として「骨太方針」などに反映させる考えを示した。 (sankei = 6-21-20) 県境越え移動・接客営業、全面解禁 人の流れ一段と 政府は 19 日、新型コロナウイルス対策として自粛を要請していた都道府県境をまたぐ移動を全面的に解禁した。 東京の主要駅や空港では出張や旅行に向かう人々の姿が目立った。 感染リスクが高いとされたライブハウスやナイトクラブの休業要請も同日解除された。 感染リスクを抑えながら社会経済活動を再開する動きが一段と広がる。 羽田空港第 1 ターミナルの電光掲示板にはまだ「欠航」の文字が多いものの、スーツケースや旅行かばんを持った人が出発ロビーを行き交っていた。 石川県の大学院で触覚に関する研究をしている東京都内の女性会社員 (39) は久しぶりに研究室に向かう。 秋の学会に向けて論文を準備中。 移動自粛の要請を受けてリモートで研究室とやり取りしてきたが「実験機器を使えないなど限界があった。」 週末を利用した今回の出張では実験の予定をみっちり詰め込んでいるという。 国は 5 月 25 日に緊急事態宣言を全国で解除した後も、東京、神奈川、千葉、埼玉の 1 都 3 県と北海道については都道府県境をまたぐ移動を控えるよう求めていた。 安倍晋三首相は 18 日の記者会見で「社会経済活動のレベルをもう一段引き上げる」と述べ、19 日から移動自粛の要請を全国で解除した。 東京駅の新幹線ホームでもビジネス客や旅行者の姿が目立った。 古本店主の男性 (57) は 18 日夜に高速バスで京都を出て 19 日早朝に東京に到着。 新幹線で山形県米沢市に向かった。 同市の博物館で 21 日まで開催中の展覧会を鑑賞する。 「終了間際に移動制限が解除され、ようやく気兼ねなく旅行できる。」 人気観光地、登別温泉(北海道登別市)では、6 月に入っても休業していた一部のホテルが 19 - 20 日に営業を再開する。 5 月はほとんどの施設が休業し、売り上げの落ち込みは激しい。 登別国際観光コンベンション協会の志水孝暢事務局次長は「人の動きが出て、観光需要につながれば」と道外からの観光客の回復に期待を寄せる。 岐阜県の高山市、飛騨市、白川村は 18 日に「飛騨お目覚め宣言」を発表し、これまでは来訪の自粛を求めていた全国からの観光客向けに旅行キャンペーンを始めた。 7 月末まで国指定史跡の高山陣屋などの観光施設を入場無料にし、宿泊施設の割引サービスも行う。 富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)は 19 日に全国からの入園の受け入れを始めた。 5 月 23 日に同県在住者に限って営業を再開し、6 月 1 日からは首都圏や北海道以外の客も入園可能としていた。 休業要請が続いていたライブハウス、ナイトクラブなど接客を伴う飲食業の営業も 19 日から再開可能になった。 東京都江戸川区のライブハウス「ジョニーエンジェル」は 19 日夜の公演から営業を再開する。 70 人の収容が可能だが、当面は来場者を 15 人に制限し、ステージと客席の間には仕切りのビニールシートを設けた。 東京・銀座でクラブを経営する女性も 19 日夜から営業を再開する。 一部の席はバツ印をつけて使用不可とし、換気のための空気清浄機や扇風機を店内各所に設置した。 客にはマスク着用を求め、入店時に検温を行うほか、靴にはカバーを着けてもらう。 コンサートなどのイベントも 19 日から参加人数の上限が 1 千人に引き上げられた。 プロ野球は同日、約 3 カ月遅れで開幕し、史上初めて無観客で公式戦が行われる。 東京都渋谷区のスポーツバー「City 倶楽部」は 19 日夜、開幕全戦を大型モニターで流す計画だ。 30 人収容できるところを 20 人に制限し、検温や消毒を徹底する。 オーナーの中野雅文さん (37) は「常連客はテレワークが続いているようで客足の戻りは鈍いが、開幕が売り上げ回復のきっかけになれば」と期待していた。 (nikkei = 6-19-20) 移動制限解除でも「展望見えない」 観光業の消沈続く 北海道や首都圏の 1 都 3 県などでも、19 日から県境を越えた移動が自由になる。 だが新型コロナウイルスへの懸念は消えず、人の往来がすぐに戻ると考える人は少ない。 基幹産業の観光が深刻な打撃を受けた北海道では、まず近場の客を呼び込もうとしている。 「移動は自由、どんどん旅行してといわれても、そうはいかない。 観光客はしばらく戻らないと覚悟している。」 移動制限の解除を翌日に控えた 18 日、JR 函館駅近くの函館朝市は人通りがほとんどなかった。 乾物屋の店主は周りを見渡し、ため息をついた。 旬の魚介類や野菜などを扱う約 250 店がひしめき、コロナ禍の前は威勢のいいかけ声が飛び交っていた。 函館の場合、観光客の 7 割近くを訪日外国人を含む道外客が占める。 函館朝市協同組合連合会の藤田公人副理事長は「札幌の『昼カラオケ』や東京の『夜の街』の問題もあり、多くの人が慎重になっている。 観光が息を吹き返すまでには時間がかかる。」と話す。 V 字回復の見通したたず 北海道にとって、移動制限の解除は朗報だ。 だが、右肩上がりに増えてきた訪日外国人客はもちろん、国内客の「V 字回復」は見込みづらい。 そこで期待をかけるのが道内客だ。 北海道は 7 月から、道民向けに道内旅行で最大 1 万円を補助する制度を始める。 登別温泉は国内外から年間約 400 万人が訪れる。 14 館ある温泉旅館の多くが 4 月下旬から休業していたが、19 日までにすべてが営業を再開する。 登別国際観光コンベンション協会がかけあい、登別市は市民限定の 8 千円クーポン券を発行した。 三つの温泉ホテルを運営する「トーホウリゾート」の社長でもある唐神昌子会長は「まずは市民、道民へと安心感を広げていき、少しでも早く道外のお客様にも来てほしい」と話す。 道内観光の拠点になる札幌市では例年 200 万を超える人が訪れる「さっぽろ雪まつり」が大幅縮小になるなど、集客を見込めるイベントの相次ぐ中止が重くのしかかる。 センチュリーロイヤルホテルでは 7 月から、1 泊朝食付き 6 千円からの道民限定割引プランを始めることにした。 担当者は「地域をまたぐ移動はしばらくは活発にならない。 これまで宿泊の機会が少なかった地元の方に楽しんでほしい。」と話す。 しかし、別の大手ホテル担当者は「明るい展望が見えない。 観光業界が元気を取り戻すのは一体いつになるのか。」と表情は暗い。(阿部浩明、西川祥一、長崎潤一郎) 閑散とした横浜中華街 首都圏の観光地も、県境をまたいだ観光の再開を待っていた。 横浜市中区の横浜中華街では、修学旅行生や観光客で通りが埋まる風景は戻っていない。 カラフルなポーチや小物入れなど、約 2 千種類の雑貨が並ぶ中国雑貨店「萬来行(ばんらいこう)」。 代表取締役の竹本理華さん (48) は「以前は制服姿の修学旅行生が大勢買い物に来てくれたのにすっかり見かけなくなった。」 5 月 8 日に営業を再開したものの、売り上げは感染拡大前の 1 割以下だという。 横浜中華街発展会協同組合の高橋伸昌理事長によると、飲食店は約 8 割が営業を再開。 遠方からやって来る人ほど土産を買うといい、「県外からの観光客や修学旅行生が中華街に戻ってきてくれることを祈っています。」 (岩本修弥、asahi = 6-18-20) 「Go To キャンペーン」やり直しへ 委託費に批判 新型コロナウイルスの対策として第 1 次補正予算に盛り込まれた消費喚起策「Go To キャンペーン事業」について、政府が事務局事業者の公募を 8 日の応募締め切りを前にいったん中止し、やり直す方向で調整していることがわかった。 同事業をめぐっては、委託費が総事業費の約 2 割にあたる 3,095 億円と巨額であることに、野党から批判が相次いでいた。 政府は 5 日午後に発表する予定。 同事業は、旅行や飲食店での食事などで使えるクーポン券や割引券を配り、観光地や飲食店などでの消費を支援するもの。 旅行のほか外食や商店街、イベント業界の支援を目的に 4 分野があり、経済産業省が 5 月 26 日から 6 月 8 日まで全体事務局の事業者を公募している。 政府は、この事業を分割し、観光は国土交通省、飲食は農林水産省、イベントや商店街は経産省がそれぞれ改めて公募する方向で検討している。 公募が改めて行われるのは早くとも 2 週間程度あとになる見込みだ。 (野口陽、asahi = 6-5-20) ◇ ◇ ◇ 「日本の花いいよね」でも、それ急ぎ? コロナ後振興策 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策の補正予算には、コロナ収束後を見越した観光やイベントなどの振興策が盛り込まれている。 その予算規模は、医療現場への支援やワクチン開発など、感染症対策のための金額に匹敵する。 緊急性やコロナ対策との関連性はあるのか、各予算を担当する省庁に問い合わせて検証した。 コロナ後、旅行が半額に? 「簡単に言うと、旅行代金が半分になるイメージです。」 国土交通省の担当者がそう説明するのは、インバウンドの激減で打撃を受ける観光業を、コロナ収束後に後押しする「Go To Travel キャンペーン」だ。 個人が旅行業者などから旅行商品を購入した際に、代金の 2 分の 1 にあたるクーポン(1 泊あたり上限 2 万円)がもらえる。 うち 7 割を旅行商品そのものに、残る 3 割はおみやげの購入などに使える想定だという。 たとえば、5 万円の北海道旅行 2 泊 3 日ツアーに参加した場合。2 泊なので上限は 4 万円となり、ツアー代金の 2 分の 1 にあたる 2 万 5 千円が補助される。 うち 7 割の 1 万 7,500 円分が旅行代金の割引に、残り3割の 7,500 円分がおみやげの購入や現地での飲食代に使える。 担当者は「延べ数千万人の利用を見込んでいる。 観光業へのインパクトは相当ある」と意気込む。 「Go To キャンペーン事業」にはほかに「Eat」、「Event」、「商店街」の各キャンペーンが用意されていて、経済産業省、農林水産省がそれぞれ取り組む。 今回の補正には総額 1 兆 6,794 億円が盛り込まれた。 感染症防止策や医療体制の整備のために用意された 1 兆 8,097 億円と同規模だ。 「Go To Eat キャンペーン」では、たとえばグルメサイトで飲食店を予約して来店した場合、飲食店などで使えるポイントが 1 人最大 1 千円分もらえる。 農水省の担当者は「飲食店の客入りが激減している中で、早期に客足を戻していきたい」としている。 28 日にあった衆院予算委員会の審議でも、キャンペーンが緊急経済対策に盛り込まれたことを疑問視する質問が野党から出た。 緊急事態宣言の解除が見通せない中で、開始の時期も不透明だ。 タイミングを見誤れば、ウイルスの拡散に再び火をつけることになりかねない。 経産省の担当者は「開始には感染症の専門家の意見をいただいて検討したい」としているが、別の省庁からは「終息が見極められない状態が続けば、1 兆円超のお金が塩漬けになる可能性がある」との声も聞こえる。 事業は今後、3 省で申請の窓口になる事務局の設置などを協議し、民間に発注するというが、現時点では具体的なしくみは明らかにされていない。 国交省では、さらに観光イベントなどの支援に 106 億円を計上するほか、96 億円をかけて国際線の航空券割引キャンペーンを支援したり、SNS で影響力のあるインフルエンサーを招いて日本の観光地を PR したりするという。 離島体験ツアーも 観光振興に予算を求めるのは、国交省だけではない。 内閣府が約 5 億 6 千万円を盛り込むのは「離島来訪促進事業」だ。 東京都の小笠原諸島や新潟県の佐渡、長崎県の対馬、鹿児島県の奄美群島など、8 都道県にある国境の離島 71 島を対象に、体験ツアーなどの旅行商品を企画。 交通費やイベントの費用を補助する。 観光客のほとんどが約 50 キロ離れた韓国・釜山から訪れるという対馬では、新型コロナの感染拡大で 3 月 7 日までに国際航路がすべて運休。 現在、島を訪れる観光客はほぼゼロだという。 2018 年には約 41 万人、日韓関係が悪化した19 年も約 26 万人が島を訪れた。 長崎県対馬市の対馬観光物産協会事務局長の西護(にしまもる)さん (47) によると、島内で感染者は確認されていないが、民宿や飲食店などは休業しているという。 西さんは「今が我慢のしどころ。 自粛して早く終わらせるしかない。」とする一方で、「島内には入院できるベッドが 4 床しかなく、高齢者も多い。 完全に終息する前に観光客が来て、島民に感染すると大変なことになる。 観光再開はタイミングが難しい。」と不安も語る。 内閣府の担当者は「もちろん目の前の雇用対策などとは異なるが、民間の観光商品や企画はコロナが終息してから作るのではなく、あらかじめ作って終息後に売り出す。 そのために準備は必要。」と説明する。 コロナ後に出現する「空間」 農水省がコロナ収束後の観光回復を狙って補正に盛り込むのは、「公共施設等における花きの活用拡大支援事業」、つまり花の消費を増やそうという取り組み。 予算額は 31 億 9 千万円。 事情はこうだ。 業界にとってかき入れ時だった 3、4 月の卒業・入学シーズン、学校は休校し、イベントは自粛。 デパートや駅ビルに入る生花店も休業を余儀なくされ、消費の落ち込みに輪をかけた。 「切り花の価格は平年より 3 - 4 割ほど下がっている。 かつてない事態。(農水省の担当者)」だという。 そこで、コロナ収束後は学校や観光地、駅、空港などに花を飾り、戻ってきた来日観光客らに日本の花の魅力をアピールする。 特に力を入れるのが、「和の空間」の提供。組み立て式の茶室のような空間で、これを主要な空港や駅などの空いたスペースに設置。 生け花を展示したり、茶道を実演したりして、和の文化の魅力を PR するという。 担当者は「花を飾るだけでなく、同時にお茶を配ったり着物にそでを通してもらったりする。 外国人に花や日本の文化のよさを知ってもらう。 訪日客に『日本の花っていいよね』と思ってもらえれば、それは将来の輸出拡大につながっていく」と力を込める。 ゴールデンウィーク中も連日、外出の自粛要請が続く。 元厚生労働省キャリア官僚で神戸学院大の中野雅至教授(行政学)は「緊急にお金が必要なところをもう少し深掘りすべきではないか。 大学には家庭の事情から奨学金に依存する学生も多く、アルバイトもなくなって学費の工面に悩む子もいる。 オンライン授業でもパソコンを所持している者が少なく、補助が必要だ。今は若者を支えないといけない。 必要なところにお金を回さず、すぐに使えない予算があるのは疑問だ」と指摘する。 (酒井祥宏、藤山圭、小池寛木、asahi = 4-29-20) |