ガザ停戦でイスラエルの「第 1 段階」撤退完了 避難民 20 万人が帰還

パレスチナ自治区ガザでの戦闘をめぐり、イスラエル軍は 10 日、停戦の発効に伴い、和平案の「第 1 段階」で定められたラインまで部隊を撤退させたと発表した。 停戦は 11 日で 2 日目に入ったが、大きな衝突は報告されていない。 人質の解放や停戦の維持などの和平案の合意が着実に履行されるかが焦点となる。 イスラエル軍の報道官は 10 日の記者会見で、部隊を「合意されたラインに配置した」と説明。 解放される予定の人質を受け入れる準備を進めているとした。 米国のウィトコフ中東特使も SNS に「イスラエル軍の第 1 段階の撤退完了を米軍が確認した」と投稿した。

AFP 通信がガザの救助団体の情報として伝えたところによると、軍はガザ南部ハンユニスや最大都市の北部ガザ市の一部から撤退。 軍の支配地域はガザ全域の 53% に縮小したという。 中東の衛星放送局アルジャジーラは、軍の撤退の動きに伴い、避難民らが自宅を目指して海岸沿いを進む様子を放送した。 ほとんどは徒歩で移動し、乳児を抱える母親や車いすに乗る人もいた。 AFP によると、10 日までに約 20 万人がガザ北部に帰還したという。

静寂な夜、数カ月ぶりに

停戦は 10 日正午(日本時間午後 6 時)に発効。 アルジャジーラは、停戦は 11 日時点で維持されており、ガザの住民たちは数カ月ぶりに空爆やドローン(無人機)の音が聞こえない「静寂な夜」を過ごしたと報じた。 米 ABC によると、停戦監視を担う米軍の部隊が 10 日夜までにイスラエルに到着し始めたという。 和平案の第 1 段階では、イスラエルがパレスチナ人の収監者らを釈放するのと引き換えに、イスラム組織ハマスは人質約 50 人(うち生存者約 20 人)を 13 日正午までに解放するよう求められている。 トランプ米大統領は 10 日、人質が「月曜日(13 日)に帰ってくる」と記者団に語った。

トランプ氏は 13 日にイスラエルを訪れて国会で演説し、その後エジプトに移動して「世界中の指導者たち」と会談すると明らかにした。 米ネットメディアのアクシオスが複数の関係筋の話として伝えたところによると、会談には仲介役を務めたエジプトやカタール、トルコのほか、欧州の主要国やサウジアラビアなどアラブ・イスラム諸国の首脳・外相級が参加する見通し。 イスラエルのネタニヤフ首相は出席しない方向だという。 トランプ氏は 14 日には米国に戻るといい、中東の滞在はごく短期間になる。

イスラエルとハマスが第 1 段階を無事に終えたとしても、その先の焦点となるイスラエル軍の完全撤退やハマスの武装解除、ガザの戦後統治などでは、交渉の難航が予想される。 和平案では米国やアラブ諸国による「国際安定化部隊」がガザに展開して当面の治安維持にあたる計画だが、ハマスやその他のガザの武装組織は 10 日の声明で、「いかなる外国の保護も拒否する。 ガザの管理はパレスチナ内部の問題だ。」と強調した。 (イスタンブール・根本晃、ワシントン・青山直篤、asahi = 10-11-25)


ガザ停戦、イスラエルが承認へ 人質解放は停戦開始の 72 時間以内

トランプ米大統領は 8 日、パレスチナ自治区ガザの戦闘をめぐり、イスラエルとイスラム組織ハマスの双方が「我々の和平案の第 1 段階に合意した」と SNS で発表した。 「全人質がすぐに解放され、イスラエルが合意のラインまで軍を撤退させる」としている。 イスラエル首相府は 9 日、同日の閣僚会合で合意を承認後、24 時間以内に停戦に入ると発表した。 今回の合意により、6 万 7 千人以上の犠牲者を出し極限の人道危機が続くガザの 2 年にわたる戦闘の終結に向け前進した。 ただ、両者はこの 2 年で 2度、短期間で停戦が終わり戦闘を再開させていて、恒久的な停戦につなげられるかはなお不透明だ。

トランプ氏は 8 日の発表で「強固で永続的な平和への第一歩だ」と強調し、交渉を仲介してきたカタール、エジプト、トルコに謝意を示した。 FOX ニュースの番組で、人質解放は「おそらく月曜(13 日)になる」と明らかにした。 合意発表前には記者団に、一連の交渉に立ち会うため、週末の 11 日か 12 日に「(中東に)行くかもしれない」とも語った。

人質解放、円滑に進むか

ハマスは 2023 年 10 月 7 日のイスラエルへの奇襲で約 1,200 人を殺害し、200 人以上を人質にした。 現在も残る約 50 人の人質のうち、20 人が生存しているとみられている。 ハマスにとって交渉で決定的に重要だった人質が円滑に解放されるのかが、まずは焦点の一つとなる。

ハマスは 9 日、ガザでの戦闘終結とイスラエル軍の撤退、支援物資の搬入、収監されている人らの交換の合意に達したとする声明を発表した。 トランプ氏や仲介国に対して感謝を示す一方で、イスラエルが合意を破ったり遅らせたりすることなく、完全に履行するよう求めた。 声明では「自由と独立、自決権を獲得するというパレスチナ人としての権利を決して放棄しないことを誓う」とも宣言した。

イスラエルのネタニヤフ首相は 9 日、「和平計画の第 1 段階が承認されれば、人質は全員解放される。 これはイスラエルにとっての外交的な成功であり、国家的かつ道徳的な勝利だ」との声明を出した。 イスラエル首相府は 9 日の会見で、閣僚会合の承認から 24 時間以内に停戦が始まり、「(停戦発効後) 72 時間がたつまでに全ての人質が解放される」と説明。 一方でイスラエル軍は合意されたラインまで撤退するが、「ガザ域内の約 53% は軍事的に掌握する」とした。

仲介国カタールの外務省報道官は 9 日の X (旧ツイッター)への投稿で、和平案の第 1 段階の実施手順に合意したと発表した。 この合意によって、戦争の終結と、人質解放と捕らわれているパレスチナ人の釈放、支援物資の搬入が実現するとの見通しを示した。

「第 2 段階」はより困難に 残る隔たり

20 項目からなる米国の和平案は、トランプ氏がネタニヤフ氏と会談した 9 月 29 日に発表された。 計画では、イスラエルとハマスの合意後、直ちに戦闘を終結させ、イスラエル軍は段階的に撤退するとしている。 ハマス側は人質全員を解放し、イスラエル側はその後、終身刑を受けた 250 人のパレスチナ人と、ハマス襲撃以降に拘束されたガザの住民 1,700 人を釈放。 ガザへの支援物資搬入も全面的に再開されるとした。 ガザはパレスチナ人らの委員会が暫定統治し、ハマスは統治に一切関与しないことも盛り込まれた。

米国は、双方が「第 1 段階」の合意内容を履行した後、ハマスの武装解除やガザの戦後統治の在り方など、より難しい「第 2 段階」の交渉へ進む構想を描く。 だが、ハマスが統治で一切の役割を担わないという和平案の核心部分について、ハマスはこれまでのところ受け入れる意思を示していない。 イスラエル側との隔たりが大きい項目もあり、仮に人質解放が実現したとしても、恒久的な停戦に結びつくかは見通せない状況だ。

仲介国を交えた交渉は 10 月 6 日にエジプト東部シャルムエルシェイクで始まった。 ロイター通信によると、トランプ氏の娘の夫クシュナー元大統領上級顧問やウィトコフ米中東担当特使、カタールのムハンマド首相、イスラエルのデルメル戦略問題相ら交渉の鍵を握る人物が参加していた。 イスラエルとハマスは 1 月中旬に一度は停戦に合意して戦闘は止まったが、3 月 18 日からイスラエル軍が攻撃を再開。 9 月中旬からは中心都市の北部ガザ市への地上侵攻に踏み切っていた。

ガザではイスラエルが 3 月初旬から 2 カ月半にわたって支援物資の搬入を止めたことで、人道状況は極度に悪化。 その後も米国主導で設けられた財団が配給業務を担ったが、数カ所の配給所に殺到する住民へのイスラエル軍の銃撃などが相次いだ。 8 月 22 日には世界食糧計画 (WFP) などの国連機関が、ガザ市や周辺地域が 5 段階の食料危機のレベルで最も深刻な「飢饉(ききん)」に陥ったことを確認。 「飢餓を武器化している」として、国際的に非難が高まっていた。 (ワシントン・青山直篤、エルサレム・真野啓太、asahi = 10-10-25 未明)


追い込まれたハマス 全人質の返還に同意 今後の焦点と課題は?

パレスチナ自治区ガザの戦闘をめぐり、イスラム組織ハマスが 3 日、トランプ米大統領が示した和平案に回答し、人質全員の解放などに同意する声明を出した。 トランプ氏から「最後のチャンス」と圧力をかけられ、アラブ諸国からも合意を求められたなかで、一定の譲歩を見せた形だ。 停戦や人質解放が実現するか、イスラエルとハマス双方の対応が焦点だ。

ハマスは 2023 年 10 月の戦闘開始以降、最高指導者らがイスラエル軍に相次いで殺害され、最大都市ガザ市への地上侵攻でも劣勢に立たされている。 後ろ盾になってきたイランやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなども攻撃を受けて弱体化し、ハマスは孤立する恐れがあった。 米メディア・アクシオスによると、ハマス幹部を受け入れてきたカタールのムハンマド首相は、同じ停戦交渉仲介国のエジプトの高官とともにハマス指導部に和平案を伝えた際、「これが最善の取引であり、これ以上の内容は得られないだろう」と述べて、合意を迫ったという。

トランプ氏、拒否すれば「地獄」

トランプ氏は 9 月 30 日に回答期限は「約 3 - 4 日」とし、ハマスの回答に先立つ 3 日午前には、米東部時間 5 日午後 6 時(日本時間 6 日午前 7 時)までに合意するようハマスに要求し、拒んだ場合は「誰も経験したことがない地獄」が訪れると SNS への投稿で警告。 「(ハマスの戦闘員のうち)残っている者の大半は包囲され、軍事的に行き場のない状態にある」とも主張した。 「あとは私の『行け』という言葉を待っているだけだ。 (その言葉とともに)彼らの命は速やかに消し去られる」と圧力をかけていた。

追い込まれつつあったハマスは、イスラエルとの交渉時の取引材料として利用してきた人質全員の解放に同意したと回答せざるを得なかった。 今後は、ハマスとイスラエル双方が停戦や人質の解放を実際に進められるかが注目される。 イスラエル首相府と軍は 4 日、人質全員の解放に向けた第 1 段階の準備を始めたと表明した。

ガザ統治で隔たりも

ただ、両者は 1 月に 3 段階からなる停戦で合意したが、イスラエル軍のガザからの完全撤退や恒久的な停戦合意を含む第 2 段階への移行にイスラエル側が応じず、3 月に攻撃を再開。 停戦はわずか 2 カ月で崩壊した。 ハマスは今回の声明で、イスラエル側が強く求めてきた武装解除については言及していない。 今後のガザの統治やパレスチナ国家の樹立をめぐっても、意見の食い違いが浮き彫りになっている。

当面は、回答を受けたイスラエル側の出方が重要だ。 ネタニヤフ政権では、ハマスの壊滅や戦闘の継続を訴えてきた極右閣僚が影響力を持ち、ハマスへの安易な妥協は政権の崩壊につながりかねない。 最大の支援者であるトランプ氏が戦闘の停止を求めるなか、ネタニヤフ首相は難しい判断を迫られている。 (エルサレム・石原孝、ワシントン・青山直篤、asahi = 10-4-25)


トランプ氏、ネタニヤフ氏と和平案で合意 ハマスが拒めば戦闘継続

トランプ米大統領は 29 日、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談し、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスとの停戦に向けた「包括的計画」について合意したと表明した。 即時の停戦や人質の全員解放を求める提案にネタニヤフ氏が「支持」する意向を示したが、ハマス側が受け入れるかは不透明だ。 「ガザの紛争を終えるためのトランプ大統領の包括的計画」と銘打った提案ではハマスに対し、将来のガザ統治に一切関与しないことを求めた。 ハマスが提案を拒めばイスラエルは戦闘を続け、米国もそれを支持するとも、両首脳は説明している。

一方で、「ガザの再開発が進み、パレスチナ自治政府の改革が誠意をもって実行された時には、パレスチナの自決権と国家の樹立に向けた信頼できる道筋への条件がようやく整うかもしれない」と指摘。 ネタニヤフ氏が拒んできたパレスチナの国家承認の可能性に含みを持たせた。 また、「誰もガザから去ることを強いられない。 住民にはガザに残ることを奨励し、より良いガザを再建するための機会を提供する」とも言及した。 2 月、米国とイスラエルの首脳会談後に唐突に示された、ガザから住民を退去させて米国が「所有」する復興案は事実上撤回した。

会談後の記者会見で、トランプ氏は「我々は(合意に)非常に非常に近づいた」と誇示した。 ネタニヤフ氏もトランプ氏に謝意を示し「人質を取り戻し、ハマスの軍事能力の解体と政治的支配の終了を告げる提案だ」と述べた。 「計画」では、人質の解放やハマスの武装解除の進展に応じ、イスラエル軍も段階的に撤退する。 ネタニヤフ氏は「ハマスが計画に同意すれば、第 1 段階として(イスラエル軍が)小規模な撤退をし、我々の人質全員が 72 時間以内に解放されるだろう」と語った。 ただ、イスラエルとの境界の周辺地域については「当面の間は留まる」とも語った。

ガザの統治は、政治色のないパレスチナ人官僚らでつくる暫定的な組織が担う。 この組織は、英国のブレア元首相らを交え、トランプ氏が主宰する「平和評議会」の監督下に置かれるという。 ネタニヤフ氏は「この国際機関が成功すれば、我々は戦争を恒久的に終結させることができる」とした上で、パレスチナ自治政府が統治に関与するには「抜本的な改革」が必要だと強調した。 中東の衛星放送局アルジャジーラによると、ハマスは「誠意をもって検討する」としている。 ただ、ハマス幹部は同局のインタビューで、この案が「イスラエル側の考えに近い」と指摘しており、合意するかは見通せない。

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸を統治し、ハマスと対立するパレスチナ自治政府は 30 日、「トランプ氏の誠実かつ断固たる取り組みを歓迎する」とする声明を発表した。 「包括的合意を通じてガザ戦争を終結させるべく、米国や地域諸国などと協力する」と主張した。 仲介を主導してきたエジプトやカタール、地域大国のサウジアラビアを含む近隣アラブ諸国など 8 カ国の外相は 29 日、共同声明で「合意を確実にするため、米国及び関係諸国と前向きかつ建設的に関与する用意がある」と訴えた。

英仏独の首脳や欧州連合 (EU) のフォンデアライエン欧州委員長もトランプ氏の提案を支持した。 日本は林芳正官房長官が会見で「2 国家解決に向けた重要な一歩だ。 平和に向けたトランプ大統領の取り組みを歓迎し、高く評価する。」と述べた。 トランプ氏は和平の仲介に意欲を燃やしてきたが、9 日にイスラエルがカタールでハマスを狙った空爆を実施し、交渉は頓挫した。その後、欧州を中心にパレスチナを国家承認する動きが相次ぎ、イスラエルへの国際的圧力は強まっている。

トランプ氏は29日のネタニヤフ氏との会談の際、カタールのムハンマド首相兼外相を電話でつなぎ、3 者の会談も実施した。 ホワイトハウスによるとネタニヤフ氏はムハンマド氏に対し、空爆について「深い遺憾の意」を示した上で、今後、このような攻撃を実施しないと確約した。 米国が結果的に安全を保障できなかった同盟国カタールに対し、トランプ氏が配慮を示した形だ。 イスラエルとハマスの軍事衝突が起きて約 2 年となり、犠牲者は 6 万 5 千人を超えている。

「平和の調停者」を自任するトランプ氏が大統領に復権した後も、米国の後ろ盾と中東での軍事的優位を背景にイスラエルは戦渦を拡大させ続け、ガザでの人道危機は極度に悪化した。 今回の提案には、こうした状況を受けてトランプ氏が過去に示した極めてイスラエル寄りの案を修正し、アラブやイスラム諸国とも調整した上で、イスラエルも受け入れられる現実的な枠組みを示したという意義はある。 今後の中東和平に向けた交渉の起点になるかどうか、当面はハマスの出方が焦点となる。 (ワシントン・青山直篤、イスタンブール・根本晃、asahi = 9-30-25)


イギリス、カナダ、オーストラリアがパレスチナを国家承認

イギリスのスターマー首相は 21 日、ビデオ演説で、「2 国家解決の希望は薄れつつあるがわれわれはその光を消してはならない」と述べ、パレスチナを国家として承認すると発表しました。 オーストラリアのアルバニージー首相は 21 日、「パレスチナを独立した主権国家として正式に認める」とする声明を発表しました。  その上で「きょうの承認はイスラエルとパレスチナの人々が永続的な平和と安全を得るための 2 国家解決にオーストラリアが長年、関与してきた立場を反映したものだ」としています。

カナダのカーニー首相は 21 日、パレスチナを国家として承認し、パレスチナとイスラエルの平和構築に向けて支援すると明らかにしました。 声明でカーニー首相はイスラエルのパレスチナへの攻撃などを非難したうえで、「カナダは 2 国家解決の可能性を維持するための国際的な協調の一環として承認を行う」としています。 国連総会にあわせて 22 日には、イスラエルとパレスチナの 2 国家共存による和平を推進する首脳級の会議が開かれます。 (NHK = 9-21-25)


オーストラリアもパレスチナを国家承認の意向 仏・英などに続き

オーストラリアのアルバニージー首相は 11 日、9 月にもパレスチナを国家承認すると明らかにした。 最近、フランス、英国、カナダが相次いでパレスチナの国家承認に向けた動きを見せており、豪州内でも政府に同様の措置をとるよう求める声が高まっていた。

アルバニージー氏は記者団に、9 月に予定されている国連総会でパレスチナを正式に承認するとの意向を表明。 「(イスラエルと将来のパレスチナ国家が共存する) 2 国家解決は、中東の暴力の連鎖を断ち切り、(パレスチナ自治区)ガザの紛争、飢餓を終わらせるために最善だ」と述べた。 また、今回の決定に先立ち、石破茂首相ら日、英、仏、ニュージーランドの首脳と協議したことも明らかにした。 ガザを実効支配するイスラム組織ハマスについては、パレスチナ自治政府のアッバス議長と意見を交わしたと明らかにした上で、「将来のパレスチナ国家において、いかなる役割も果たすことはない」と述べた。

また、イスラエルのネタニヤフ政権について、「国際社会の呼びかけを無視し、ガザにおける法的・道義的義務を果たしていないことに強い懸念を抱いている。 イスラエルは民間人保護の確保と、食料と医療物資の供給を保証する必要がある」と批判した。 豪州との関係が深いニュージーランド政府も 11 日、パレスチナを国家承認する検討に入ると発表した。 (ジャカルタ・河野光汰、asahi = 8-11-25)


カナダ、仏英に続きパレスチナ国家承認の意向 イスラエルへ圧力加速

カナダのカーニー首相は 7 月 30 日、9 月の国連総会で「パレスチナを国家として承認する意向がある」と表明した。 パレスチナ自治政府が改革を確実に進め、2026 年には選挙を実施する、という前提条件をつけた。 フランスと英国に続く決定で、パレスチナ自治区ガザの人道危機を止めるためにイスラエルへの国際的圧力を強める動きが加速している。

主要 7 カ国 (G7) でパレスチナを国家承認する方針を示したのは、7 月 24 日のフランス、同 29 日の英国に続き 3 カ国目。 カナダは承認の「意向」を実行する前提として、「自治政府の根本的改革」、「26 年にイスラム組織ハマスが全く関与しない選挙を実施すること」、「パレスチナ国家の非軍事化」などの要求を掲げた。 カーニー氏は 30 日に自治政府のアッバス議長と話し、これらの点について自治政府が履行する意向を確認したという。

カナダ、方針転換の背景には

カナダが承認の方向に踏み切ったのは、いずれも関係が深い国であるフランスと英国が立て続けに動いたことに促された面が強い。 カーニー氏は 30 日の記者会見で、フランスのマクロン大統領と協議したと説明。 「他国の動きは実際、とても重要だった。 (各国が立て続けに動くことが停戦に向けた)成功の見通しを高めるからだ」と述べた。 29 日には英国のスターマー首相とも、ガザの人道状況や英国のパレスチナ承認の方針について協議したという。

一方、カーニー氏はイスラエルについて、「ガザでの人道危機の悪化を食い止めるのに失敗し続けている」と非難。 英 BBC によると、29 日には 200 人近いカナダの元外交官らがパレスチナの国家承認を求める書簡に署名するなど、イスラエルに批判的な国内世論からの圧力も高まっていた。

反発するイスラエル

カナダの発表を受け、イスラエル外務省は 30 日の声明で「この時期にカナダ政府が立場を一転させたことは、ハマスに報酬を与えるものだ」と直ちに反発した。 ロイター通信は、米政権の高官が語った内容として「トランプ大統領もパレスチナの国家承認は『ハマスに報酬を与える』ものだと見ている」と伝えた。 カナダは、イスラエルの後ろ盾である米国との間で関税をめぐる交渉のさなかにあり、関係のさらなる緊張は避けたい面もある。 トランプ大統領は 31 日、SNS に「ワオ! カナダが国家承認を支持すると発表した。 我々がカナダと貿易の取引をまとめるのは非常に難しくなる。」と書き込んだ。

カーニー氏は 30 日の会見で「米国とは協議したのか」という会見での質問には正面からは答えなかったが、「機会と必要性があると判断すれば独立した外交的立場を取る」と強調していた。 (ニューヨーク・青山直篤、asahi = 7-31-25)


イスラエル、ガザへ物資の空中投下を許可 飢餓に国際的な非難高まる

パレスチナ自治区ガザで飢餓などの人道危機が深まるなか、イスラエル当局は 25 日、食料などの支援物資のガザへの空中投下を許可すると発表した。 イスラエルメディアが報じた。 栄養失調による子どもらの死亡が急増し、イスラエルと米国が支援する財団による配給所に集まる住民へのイスラエル軍などの銃撃が続いていることに国際的な非難が高まっていた。 「タイムズ・オブ・イスラエル」によると、ヨルダンとアラブ首長国連邦 (UAE) が近く、支援物資の空中投下を実施するという。 英 BBC によると、英国も協力する姿勢を示している。

ただ、国連や NGO などは、空中投下では物資の量が限られ、陸路での搬入の方が効果的だと指摘する。 空中投下は昨年にも米国やヨルダンなどが実施したが、物資が住民に命中するなどし、死亡する事例が相次いだ。 ガザ保健省は 25 日、過去 24 時間の間に、栄養失調などによって 9 人が死亡したと発表した。 同省によると、栄養失調などによる死者の数はこれまでに子ども 83 人を含む計 122 人に上るという。 だが、イスラエル当局は「ガザで飢餓は起きていない」とする立場を崩していない。

英独仏 3 カ国の首脳は 25 日、ガザの人道危機をめぐり、イスラエル軍によるガザへの支援物資の搬入制限は「容認できない」とする共同声明を発表。 イスラエルに対して、国連や NGO による物資の搬入制限を解除し、国際人道法上の義務を順守するよう求めた。 (根本晃、asahi = 7-26-25)