ヒズボラ指導者、イスラエルへの「報復と裁き」を宣言

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師は 19 日、2 日連続で起きたポケットベルやトランシーバーの同時爆発の後、初めて演説し、関与が指摘されるイスラエルが「厳しい報復と当然の裁きを受ける」と宣言した。 地元メディアが伝えた。 ナスララ師は「イスラエルは何の思慮もなく、2 分間で 5 千人を殺害しようとした。 大規模テロ、大虐殺であり、宣戦布告だ」と強く非難。 「安全保障と人道上の前例のない打撃を受けた」と、ヒズボラ側が被ったダメージの大きさも認めた。

その上で、イスラエルの狙いはガザ地区のイスラム組織ハマスとヒズボラの共闘の阻止だと分析。 「ガザへの弾圧が終わらない限り、レバノンの戦線は止まらない」と強調。 イスラエルのネタニヤフ政権が、ガザで始まった戦争の新たな目標として、ヒズボラとの戦闘で避難している北部の住民 6 万人の帰還を掲げたことについて、「軍事行動の拡大によって住民を戻すことはできない」と突き放した。 (asahi = 9-20-24)

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レバノンでまた通信機器爆発、20 人死亡 ラベルに「日本製」の表記

レバノンで 18 日、新たに通信機器が一斉に爆発し、国営通信によると、20 人が死亡、負傷者も 450 人を超えた。 17 日にはポケットベル型の通信端末が相次いで爆発し、12 人が死亡、約 2,800 人が負傷しており、2 日連続となった。

ヒズボラ、ポケベル爆発「出荷段階で火薬仕込んだか」元陸将の見方

新たに爆発した通信機器はトランシーバー型で、SNS に投稿された写真では、破損した端末内部のラベルに「ICOM」「Made in Japan(日本製)」と表記されている。 ロイター通信は、日本の通信機器メーカーのアイコム(本社・大阪市)の「IC-V82」というモデルと一致すると指摘。 治安当局筋の話として、ポケベル型の端末と同じくイスラム教シーア派組織ヒズボラが 5 カ月前に購入したと報じた。

19 日午前、朝日新聞の取材に応じたアイコムの幹部によると「IC-V82」は海外専用品で、2014 年まで 10 年以上にわたって全世界で約 16 万台販売し、販売先には中東の代理店もあった。 ただ、この品種を含む複数の製品について、海外で精巧な模造品が生産されていたことがわかり、13 年 8 月からはホログラムと呼ばれる識別シールを本体に貼って販売。 翌 14 年には出荷を停止した。 爆発した端末の写真にはホログラムが見あたらず、販路を特定するシリアルナンバーがあるかどうかも判然としない。 同社幹部は「偽物の可能性が高いと思っているが、自社でつくったものか完全に否定はできない。 可能な限り情報を集めて、徹底的に調べたい。」と話した。

レバノン国営通信によると、18 日の「第 2 波」では、トランシーバーのほかに複数の太陽光発電パネルも爆発したという。 第 1 波のポケベル爆発をめぐっては、米 CNN がイスラエルの対外諜報(ちょうほう)機関モサドと軍による共同作戦だったと報じるなど、イスラエルの関与が指摘される。 イスラエルのガラント国防相は 18 日、レバノン国境に近い北部の空軍基地を訪れて演説。 爆発には直接言及せず、「軍は(国内諜報機関の)シンベト、モサドとともにすばらしい成果を上げた。 結果は見事だ。」と語った。

「我々は戦争の新たな段階の始まりにいる」とし、パレスチナ自治区ガザを中心に昨年 10 月以来続く軍事作戦について「重心は北へ移り、我々は戦力と資源、エネルギーを北へ振り向けている。 北部の住民を安全に帰還させるためだ。」と語り、ヒズボラに対する本格的な軍事作戦に備えていることを示唆した。 (武石英史郎・イスタンブール、黒田陸離、asahi = 9-19-24)

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レバノンで通信機器爆発の第2波、死者 14 人に増加

レバノン保健省は 18 日、前日に続いて起きた通信機器の同時大量爆発の第 2 波による死者が 14 人に上ったと発表した。 負傷者も 450 人を超えた。 同国の国営通信が伝えた。 イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーに配られたポケットベル型の通信端末が爆発した 17 日の同時爆発の第 1 波では 12 人が死亡、2,800 人が負傷した。 18 日の第 2 波では、爆発したのは主にヒズボラのトランシーバー型無線機だったが、国営通信は複数の家屋で太陽光発電システムも爆発したと報じている。 (asahi = 9-19-24)

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レバノンでトランシーバー型の無線機爆発 9 人死亡、300 人けが

AP 通信によると、レバノン保健省は 18 日、同日にも無線の通信機器の爆発があり、9 人が死亡、300 人が負傷したと発表した。 首都ベイルートなどでも爆発が起きている模様だ。 ロイター通信は、イスラム教シーア派組織ヒズボラが使っているトランシーバー型の無線機が爆発したとしている。 (asahi = 8-18-24)

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ポケベル爆発をイスラエルの犯行と断定、報復を予告 ヒズボラが声明

レバノンで起きたポケットベル型通信端末の連続爆発について、同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラは 17 日、声明を出した。 多くの組織関係者が使用していた端末は、午後 3 時半ごろに爆発したという。 最初の声明から約 1 時間後には、別の声明を発表し、「あらゆる事実とデータ、情報を検証した結果、市民をも標的にし、多数を殺傷したこの犯罪行為の責めは全面的にイスラエルが負う」と述べ、イスラエルによる犯行と断定した。 爆発による死傷者については「(パレスチナ自治区の)ガザやヨルダン川西岸の人々の勝利のために犠牲となった殉教者」と位置づけ、イスラエルに対する報復を予告した。 (asahi = 9-18-24)

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ヒズボラのポケベルが次々爆発 数百人負傷か

レバノンの首都ベイルートなどで 17 日、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーが使うポケットベルのような通信機器が次々に爆発した。 ロイター通信は治安当局筋の話として、負傷者が千人を超えたと報じた。 また、ヒズボラは「3 人が死亡した」と発表した。 ロイターによると、最初の爆発から 30 分後にも新たな爆発が起き、救急車が行き交い混乱が広がっている。 爆発はレバノン南部など各地で起きた。 ヒズボラが最近持ち込んだ新型の機器が爆発したという。

地元メディアによると、政府の救急当局は緊急声明を出し「機器を持っていて負傷した人が病院に多数搬送されている」として、全病院に受け入れ態勢を強化するよう指示した。 市民には、機器から離れるよう求めた。 イラン政府系のメヘル通信は、レバノンに駐在するイラン大使が爆発で負傷したと報道。 イスラエルによるサイバー攻撃との未確認情報がある、と伝えた。 ヒズボラの当局者はロイターに、イスラエルと国境をまたいだ戦闘が続く中で「最大の治安の乱れだ」と語ったという。 (asahi = 9-17-24)


フーシ「極超音速ミサイル発射」 イスラエル商都近郊に被害、軍調査

イスラエルの商都テルアビブ近郊に 15 日朝、イエメンの反政府組織フーシが発射した弾道ミサイルが飛来した。 イスラエル軍が明らかにした。 地元メディアによると、迎撃されたものの、破片による被害が相次いだ。 フーシは新型の「極超音速ミサイル」を発射したと主張している。 地元紙エルサレム・ポストは軍当局者の話として、紅海上空など領空外での最初の迎撃に失敗し、領空内で撃ち落としたと報じた。 軍が原因調査を始めたという。 同紙などによると、破片はテルアビブ近郊の鉄道駅のエスカレーターを破損したほか、国際空港があるロッドで山火事を起こした。 空襲警報を聞いて防空施設に避難する際、9 人が軽傷を負った。

フーシ「これは始まりだ」

フーシはパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム勢力ハマスと共闘関係にあり、イスラエルへのミサイルなどの発射を繰り返している。 AP 通信によると、フーシは今年 7 月にテルアビブをドローン攻撃し、1 人の死亡が確認されたが、ほとんどは紅海上空で撃ち落とされていた。 フーシの軍事部門は 15 日、声明を出し、イスラエルまで「2,040 キロを 11 分半で飛ぶ新型の極超音速弾道ミサイルを使用し、米国やイスラエルの迎撃システムを突破した」と主張。 10 月 7 日のガザ侵攻 1 年に向けて、さらに攻撃を繰り返すと予告した。

ガザ地区では 14 日、ガザ市内で避難所となっている学校をイスラエル軍が再び空爆した。 地元救護当局によると、5 人が死亡した。 この攻撃を含め、ガザ市での同日の死者は 21 人に上ったという。(イスタンブール・武石英史郎、asahi = 9-15-24)


ヒズボラ、イスラエルに数百発のミサイル 司令官殺害の報復

[エルサレム/ベイルート] レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは 25 日、イスラエルによる最高幹部殺害の報復として、同国に対し数百発のロケット弾と無人機(ドローン)を発射した。 イスラエルは対応を協議するために閣議を開いた。 イスラエル軍はヒズボラが攻撃を準備していることを事前に察知し、戦闘機でレバノンの標的を攻撃したと発表した。 ヒズボラは 320 発以上の「カチューシャロケット」を発射し、11 カ所の軍事目標を攻撃したと明らかにした。 これにより報復の「第一段階」が完了したが、完全な対応には「しばらく時間がかかる」とした。

ヒズボラのシュクル司令官は先月、ベイルート郊外でイスラエルの空爆により殺害され、両者の間で緊張が高まっていた。 イスラエルのカッツ外相は、イスラエルは地上での情勢の変化に応じるが、全面戦争は求めていないと述べた。 ガラント国防相は声明で、「イスラエル国民に対する差し迫った脅威を阻止するため、レバノンで正確な攻撃を行った。 われわれはベイルートの動向を注視しており、国民を守るためにあらゆる手段を用いる決意だ」と表明した。 イスラエル軍の報道官は、攻撃のほとんどはレバノン南部の標的を狙ったものだが、脅威がある場所ならどこでも攻撃する用意があると述べた。

「数十機の(イスラエル空軍の)ジェット機が現在、レバノン南部のさまざまな場所を攻撃している。 われわれは脅威を除去し、ヒズボラのテロ組織に対する集中的な攻撃を続けている」と語った。 ガラント氏は非常事態を宣言し、テルアビブの空港を発着する便は約 90 分にわたって中断された。 空港当局は午前 7 時(日本時間午後 1 時)までに通常の運航が再開される見込みとしている。 イスラエル救急当局によると、今のところ死傷者は報告されていない。

地域紛争への懸念

イスラエルとヒズボラの緊張が高まったことで、米国とイランを巻き込むより広範な地域紛争が起こるのではないかとの懸念が高まっている。 米ホワイトハウスは、バイデン大統領は状況を注視していると述べた。 米国家安全保障会議 (NSC) のサベット報道官は「(バイデン氏の)指示により、政府高官はイスラエル側と継続的に連絡を取っている。 われわれはイスラエルの自衛権を支持し、地域の安定のために努力し続ける。」と説明した。 (Maytaal Angel、Maya Gebeily、Reuters = 8-25-24)


ガザでまた学校空爆、100 人超死亡 停戦交渉の再開に影響必至

パレスチナ自治区ガザの現地当局によると、北部ガザ市の学校に 10 日、イスラエル軍の空爆があり、100 人以上が死亡、数十人が負傷した。 停戦交渉を仲介する米国などは 15 日の協議再開をイスラエルとイスラム組織ハマスに呼びかけているが、交渉への悪影響は必至だ。 ハマスは 10 日に発表した声明で、学校は当時、夜明け時の礼拝をする避難民で混み合っていたとし、「(イスラエルが)パレスチナ人に対する絶滅戦争を継続していることを明確に示した」と非難した。 停戦交渉への対応については触れていない。

一方、イスラエル軍は「学校内の指揮統制施設で活動していたハマスのテロリストを正確に攻撃した」と SNS で主張。 「空爆に先立ち、民間人のリスクを減らすため、精密な弾薬の使用、空中からの監視、情報収集など数多くの措置をとった」などとした。

交渉再開、日本も賛同

ガザでは学校への空爆が相次ぐ。 4 日にはガザ北部の学校 2 カ所が空爆を受け、25 人が死亡。 8 日にはガザ市にある 2 カ所の学校が空爆され、少なくとも 15 人が死亡している。 イスラエルはいずれも「テロリスト」を攻撃したと主張している。 停戦を仲介する米国、エジプト、カタールの首脳は 8 日、イスラエルとハマスに対し、15 日に協議を再開するよう求める共同声明を発表。 欧州連合 EU) やフランス、日本などからも賛同の動きが相次いでいる。

自国でハマス最高幹部のハニヤ政治局長(当時)を殺害されたイランがイスラエルへの報復を宣言する中、地域全体に緊張が広がるのを防ごうとする動きだといえる。 今回の攻撃はこの流れに水を差し、ハマスの停戦交渉に対する態度を硬化させるおそれがある。

後ろ盾の米国もいらだち

イスラエルに対しては、後ろ盾である米国もいらだちを強める。 9 日には、イスラエルの極右政党党首で強硬派のスモトリッチ財務相が X (旧ツイッター)に投稿。 米国などが提案した停戦交渉の再開について、イスラエルに「降伏」を押しつけるものだと真っ向から批判し、ハマスとの交渉を拒むべきだとの考えを示した。 これに対し、米ホワイトハウスのカービー広報補佐官(国家安全保障担当)は 9 日の会見で、「言語道断で馬鹿げている」と強い口調で非難。 イスラエルは無制限に戦争を続けるべきではなく、自国民の人質を救い出すためには、相手との取引が必要になると訴えた。

米政府の高官がイスラエルの閣僚を名指しで激しく批判することは、極めて珍しい。 イスラエルとイランとの間でも緊張が高まる中、早期に停戦交渉をまとめたい米側の強いいらだちが露呈したかたちだ。 (佐藤達弥、ワシントン・高野遼、asahi = 8-10-24)


ハニヤ氏殺害でメンツを潰されたイラン ガザ停戦が遠のく可能性

イスラム組織ハマスの最高幹部、ハニヤ政治局長の殺害は、中東の対立をさらに激化させる恐れがある。 ハマスを支援するイランは、イスラエルが関与したと見なし、パレスチナ自治区ガザでの戦闘をめぐる停戦交渉への悪影響は必至だ。 「最後の面会。」 ハニヤ氏が殺害された 31 日、イランの最高指導者ハメネイ師は X (旧ツイッター)にこう題した映像を投稿した。 笑顔のハニヤ氏をハメネイ師が出迎えて抱擁し、両ほおに口づけして親しさを表す様子が映っている。

ハメネイ師は声明で「シオニスト政権が我々の親愛なる客を殉教させた」とイスラエルによる殺害と断じ、報復措置を示唆した。 イラン政府系メヘル通信によると、ハニヤ氏は 31 日午前 2 時ごろ、テヘラン北部にある退役軍人のための住宅に滞在していたところ、何らかの「飛翔体」が直撃し、死亡。 ハニヤ氏の護衛役の一人も、この攻撃で死亡したという。 テヘラン北部は一般に、南部に比べて治安が安定しているとされ、大統領経験者の邸宅や各国大使館などの重要施設も多い。

イランは近年、事実上の核保有国とされるイスラエルと直接の衝突を避け、「影の戦争」と呼ばれる状態を続けてきた。 ハマスやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなど、イスラエルと敵対する勢力を支援してきた。 しかし、4 月にシリアにあるイラン大使館がイスラエルの関与が疑われる空爆を受けたことをきっかけに、イランとイスラエル双方の領内への攻撃が起きた。 直接の衝突を避ける「前例」から逸脱するなかで起きた今回の事件で、両国の緊張がさらに高まっている。

イラン国内では過去に核施設の破壊工作や核科学者の殺害事件が起きた。 首都テヘランの住宅街でも 2022 年 5 月、革命防衛隊の大佐がバイクに乗った 2 人組に射殺された。 いずれも、イスラエルの関与が疑われてきた。 ハニヤ氏は、イランが中東各地で支援してきた反イスラエル勢力の最重要人物の一人だった。 ペゼシュキアン新大統領の就任式典に合わせてイランを訪れていた。 日本を含む 70 カ国以上の要人らを招いたが、祝賀ムードは暗転し、イラン側としてはメンツを完全に潰された形だ。

イラン政府系メディアによると、ペゼシュキアン氏は「テロリストの占領者(イスラエル)に、ひきょうな行いを後悔させる」と述べ、報復を宣言した。 今後の焦点は、イラン側の対応のあり方だ。 イスラエルとの本格的な衝突は、後ろ盾である米国の介入を招きかねず、直接的な軍事行動などに動くかどうか、指導部は慎重に検討するとみられる。

沈黙するイスラエル ネタニヤフ首相「あらゆるハマス指導者が標的」

イスラエルは現地時間 31 日午後 2 時現在、ハニヤ氏の殺害について、コメントを発表していない。 ただ、イスラエルのネタニヤフ首相は昨年 10 月のハマスの越境攻撃が起きた直後、カタールの首都ドーハを拠点にするハニヤ氏らパレスチナ自治区ガザ外のハマス幹部も含め、「あらゆるハマス指導者が標的になる」と述べた。 以来、ハマスや、ハマスと同様に「敵国」イランから支援を受けてイスラエルを攻撃する組織の幹部らを標的に殺害を繰り返してきた。

一方で「勝利」の決め手を欠くまま戦闘は長期化し、イスラエル北部国境付近では、イランが支援するシーア派組織ヒズボラとの戦闘が激化した。 27 日にはイスラエルが占領するゴラン高原で、「ヒズボラからの攻撃」で子どもら 12 人が死亡したと発表。 30 日にレバノンの首都ベイルートへの報復空爆に踏み切り、ヒズボラ幹部を殺害したと主張したばかりだった。

この局面でハニヤ氏を殺害したとすれば、ハマスへの「完全勝利」を掲げるネタニヤフ氏らイスラエル指導部と軍にとって、国民にハマス「壊滅」を印象づける格好のアピールとなるが、すでに国内からはハマスとの人質解放・停戦交渉への影響を懸念する声が上がっている。 ハニヤ氏は、仲介するカタールやエジプトとやりとりをするハマス側の代表者で、ハマスの中では「比較的穏健な人物(パレスチナ自治政府筋)」とされてきた。

停戦交渉をめぐっては、米中央情報局 (CIA) のバーンズ長官や仲介国の代表者らがローマで交渉を進めているが、ハニヤ氏殺害でハマス側の態度硬化は避けられない。 仲介国も交渉の柱を失ったことで、後ろ向きになることが懸念されている。 イスラエルは停戦交渉の進展よりも、戦闘での勝利の演出を優先した可能性があるが、イランでの標的殺害に対して、イラン側は何らかの報復に出るとみられる。 すでに戦闘が激化しているガザや北部国境に加え、戦線がさらに拡大するリスクが高まっている。 (高久潤、asahi = 7-31-24)

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ハマスの最高幹部ハニヤ氏殺害 イラン滞在中に「上空から飛翔体」

イスラエルとの戦闘を続けるパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスは 31 日、最高幹部のイスマイル・ハニヤ政治局長が殺害されたと発表した。 イランの首都テヘラン滞在中に、イスラエルによる攻撃を受けたと主張している。 ハマスを支援し、イスラエルと激しく対立するイランのハメネイ最高指導者は報復を示唆しており、ガザ情勢をめぐる緊張が中東全体でさらに高まっている。 ハニヤ氏は、ハマス最高指導者の一人。 イラン政府系のファルス通信は、31 日午前 2 時ごろ、テヘラン北部の滞在先で「上空からの飛翔体」による攻撃を受けたと伝えた。 ハニヤ氏の護衛 1 人も死亡したという。

ハマスも声明で「シオニスト(イスラエル)による急襲」があったとし、イスラエルの関与だと訴えた。 ガザでイスラエルとの戦闘を続けるハマスの軍事部門「カッサム旅団」は声明で、「戦いを新たな次元に引き上げ、地域全体に大きな影響を及ぼす重大かつ危険な出来事だ」と非難し、イスラエルのネタニヤフ首相を名指しして「犯罪者だ」と糾弾した。 ロイター通信によると、ハマス幹部は「どのような犠牲を払おうとも、この道を歩み続ける。 我々は勝利を確信している」とする声明を出した。

ハニヤ氏は 30 日にあったイランのペゼシュキアン新大統領の就任宣誓式でテヘランを訪れていて、攻撃はイラン領土で直接行われたことになる。 ファルス通信によると、ハメネイ師は声明で、イスラエルは自らに「厳しい罰」を与えることになる、と報復の構えを見せた。 ペゼシュキアン氏は SNS で弔意を示し、「イランとパレスチナという二つの誇り高き国家の絆は以前よりも強くなる」と強調。 イランは領土、尊厳、名誉を守る。 テロリストたちは、ひきょうな行為を後悔することになるだろう。」とした。

関与を疑われたイスラエル側からは、31 日午後 2 時時点で公式な反応は出ていない。 イスラエルの有力紙イディオト・アハロノトによると、イスラエル首相府は各閣僚に対して、今回の件について対外的にコメントしないよう指示を出したという。 同国政府の報道対応部門の SNS には、「殺害」と記されたハニヤ氏の写真が投稿されたが、その後に消去された。 ハニヤ氏はハマス政治部門のトップ。 AP 通信などによると、2019 年にガザを離れてカタールで亡命生活を送り、現在は同国の首都ドーハを拠点としている。

ガザにおける停戦や人質解放をめぐる交渉の中心人物であることから、交渉がさらに難航する可能性が高い。 一方、ガザでの戦闘はヤヒヤ・シンワル氏が率いていて、イスラエル側はシンワル氏の殺害に固執してきた。 パレスチナ自治政府の通信社 WAFA によると、自治政府トップのアッバス議長は、「ひきょうな行為で、危険な事態だ」と非難。 ハマスへの連帯を示すイエメンの反政府武装組織フーシ幹部は声明で、「ハニヤ氏を標的にすることは凶悪なテロ犯罪だ」とした。 (エルサレム・4今泉奏、村上友里,、asahi = 7-31-24)


イスラエル軍、イエメンのフーシ派拠点空爆 テルアビブ攻撃受け

[エルサレム/カイロ] イスラエル軍が 20 日、イエメンのホデイダ港近くにある親イラン武装組織フーシ派拠点を F15 戦闘機で空爆し、少なくとも 3 人が死亡、87 人が負傷した。 前日にフーシ派はイスラエルの商都テルアビブを無人機(ドローン)で攻撃している。

イエメンのフーシ派が運営するテレビ局が保健当局の話として伝えたところによると、石油施設と発電所を狙った空爆で負傷者のほとんどは重度のやけどを負った。 イスラエル軍報道官はホデイダ港について、イランからの武器を受け取るためにフーシ派が使用していたと指摘。 標的にはエネルギーインフラなどが含まれていたという。 イスラエルによると、同盟国には事前に今回の空爆を伝えていた。 一方、フーシ派最高政治評議会は、空爆に対して「効果的な対応」を行うと表明。 同派報道官は「ためらわずに敵の重要な標的を攻撃する。」と述べた。 (Ari Rabinovitch、Enas Alashray、Reuters = 7-21-24)


ガザ市で 60 人の遺体発見、前日も 60 人 一帯では攻撃激化

パレスチナ自治区ガザで救護活動を担う当局は 12 日、北部にあるガザ最大都市のガザ市で約 60 人の遺体を発見したと発表した。 AFP 通信が伝えた。 市内の別の地域では 11 日にも約 60 人の遺体が見つかった。 一帯でイスラエル軍の攻撃が激化しているとみられ、今後も被害拡大の恐れがある。 AFP によると、12 日に遺体が見つかったのはガザ市南西部の二つの地域。 がれきの下には依然として多くの人が取り残されているとしている。 市南部のシュジャイヤでは 11 日、同じ救護当局がイスラエル軍の撤退後に約 60 人の遺体を収容したと発表した。 シュジャイヤでは、イスラエル軍が約 2 週間にわたる攻撃の後、10 日に作戦終了を宣言していた。

イスラエル軍、UNRWA 施設内で戦闘

ガザ市南西部には国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA) のガザ本部があり、イスラエル軍が 8 日、イスラム組織ハマスの施設があるとして同本部などで作戦を行っていると発表。 12  日の発表では「UNRWA 施設内に要塞を築いていた戦闘員と戦い、ドローン(無人機)やロケット弾などの武器を発見した」と主張した。 カタールの衛星放送局アルジャジーラは 13 日、目撃者の情報として、ガザ市では退避しようとした人々が空爆や銃撃、ドローンの攻撃に巻き込まれていると伝えた。 イスラエル軍による攻撃が激化しているとみられる。

イスラエル軍が UNRWA の施設を攻撃している事態を受け、グテーレス国連事務総長は 12 日、「UNRWA、その職員や任務を守ってほしい」と加盟国に呼びかけた。 米ニューヨークの国連本部で開かれた UNRWA に関する国連総会の会合で訴えた。 日本を含む 118 カ国が連帯を示している。 グテーレス氏は職員の状況について「ますます暴力的な抗議や、悪質な誤報・偽情報キャンペーンの対象となっている。 イスラエル軍に拘束され、虐待や拷問を受けた者もいる。」とも述べた。(佐藤達弥、ニューヨーク・遠田寛生、asahi = 7-13-24)


ガザ、がれきの下に推定 1 万の遺体 ラファ侵攻に自制求める国際社会

イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの攻撃をめぐり、ガザ当局は 11 日、発表している死者数とは別に、推定 1 万人の遺体ががれきの下に埋まっていることを明らかにした。 米 CNN が伝えた。 軍はガザ最南部ラファに加え、北部や中部でも作戦を展開している。 ガザの死者数は 12 日、3 万 5 千人を超えた。

CNN によると、ガザで救護活動などを担う当局の報道官は、イスラエルに対し「国連と人道支援団体が直ちに介入し、がれきの下から行方不明者を救出するために必要な救助機材の搬入を許可することを求めている」と語ったという。 国連も 2 日、1 万人以上の遺体が埋まっているとの見立てを発表。 「遺体の収容に最大 3 年かかる」とした。 ガザ保健省は 12 日、昨年 10 月に戦闘が始まってから少なくとも計 3 万 5,034 人が死亡したと発表した。 負傷者は 7 万 8,755 人にのぼるという。

ラファ本格侵攻の阻止へ、米国の提案とは?

避難民を含め 150 万人が集中するラファへの攻撃には、国際社会から自制を求める動きが強まっている。 米紙ワシントン・ポストは 11 日、米バイデン政権がイスラエルに対し、イスラム組織ハマスの指導者らの居場所についての情報を提供することと引き換えに、ラファへの本格侵攻をやめるように求めていると報じた。 報道によると、イスラエルがラファへの本格侵攻を自制することを条件に、ハマス指導者の正確な居場所を突き止め、隠れ家となっている地下トンネルを見つけるのに役立つ機密情報などを提供することを提案している。 4 人の米当局関係者が話したという。

バイデン政権はイスラエル側に繰り返し自制を求め、武器の提供制限にまで踏み込んでいる。 一方、イスラエル側は「必要なら我々は単独で立ち向かう(ネタニヤフ首相)」としている。 イスラエル軍は 11 日、ラファの市民約 30 万人が侵攻に備えて避難したと発表した。 強硬姿勢を崩さないイスラエルに対し、欧州連合 (EU) の大統領にあたるミシェル首脳会議常任議長は 11 日、SNS で「ラファに閉じ込められた民間人を危険な場所へ避難させる命令は受け入れられない」と非難。 「ラファでの地上作戦を行わないよう、強く求める」と訴えた。

イスラエル支持を明言してきたドイツのショルツ首相も 11 日、「ラファへの攻撃は無責任だと考える。 我々は警告する。」と述べた。 ロイター通信が、地元ドイツメディアのイベントで語った内容を伝えた。

難民キャンプに降り注ぐ「じゅうたん爆撃」

イスラエルとハマスの戦闘休止をめぐる交渉を仲介するエジプトも反発する。 CNN は 11 日、エジプトが、ラファを経由したガザへの援助について、イスラエルとの調整を拒否している、とエジプトメディアを引用して報じた。 ラファへの攻撃激化に抗議しているという。 報道によると、エジプト政府がイスラエルに対し、ラファから軍を撤退させるまで、人道支援のトラックによる輸送を止める可能性があると警告している。

エジプト政府高官は CNN に対し、「エジプトはパレスチナ側にトラックを通過させる必要がある」としつつ、戦闘のなかでトラックが標的になりうるため「安全を保証することができなくなっている」と述べたという。 ラファ以外への攻撃も続く。 イスラエル軍のハガリ報道官は 11 日の記者会見で、ガザ北部や中部でも軍事作戦を展開していると説明した。 AP 通信は 12 2日、北部ジャバリヤの住民からの報告として、11 日の昼過ぎから夜中にかけて爆撃が続いたと報道。 カタールの衛星放送局アルジャジーラは、ジャバリヤの難民キャンプへの攻撃を「じゅうたん爆撃」と報じた。 (エルサレム・今泉奏、asahi = 5-12-24)


米大学デモ、計 1,500 人超逮捕 トランプ氏、警察称賛

米国の大学で展開されているイスラエルへの抗議活動は、コロンビア大などで約 300 人が逮捕された前日に続いて 1 日もデモ参加者が多数、拘束された。 CNN は 4 月 18 日以降、23 州の 30 校で 1,500 人以上が逮捕されたと伝えた。 ウィスコンシン大マディソン校では 1 日、構内のテントの撤去を始めた警察と抗議参加者がもみ合いになった。 警察によると、30 人以上が逮捕された。 カリフォルニア大ロサンゼルス校では 1 日未明にかけ、デモ参加者に何者かが襲いかかり、激しい衝突が起きた。

11 月の大統領選を控え、共和党のトランプ前大統領は自らの強硬姿勢を訴えつつ、混乱の責任がバイデン政権にあるとの印象を強めようと動いている。 トランプ氏は 1 日、コロンビア大での警察の取り締まりについて「見事だ」とたたえる一方、抗議の参加者について「過激派と(イスラム組織)ハマスの支持者たち」と批判的に触れた。 (ニューヨーク・遠田寛生、ワシントン・高野遼)

■ <考論> デモ、一部のエリート大学に限定 テキサス大オースティン校、スティーブン・ミンツ教授

支持しているのは全米の学生の一部にすぎず、少数派とみるべきだ。 1960 年代の(ベトナム戦争)抗議運動は、男性学生は誰もが徴兵対象になる状況で、自分の存在にかかわる極めて個人的な問題だった。 政治的な立場が違っても、その点では団結できた。 黒人や女性を受け入れる授業を増やすことなど、目に見える要求も多かった。 今回のデモは、一部のエリート大学に限定されている。 デモが求めている企業への投資の引き揚げも、基金に頼る大規模な大学では不可能だ。

60 年代の学生デモで、大学はより開放的な場所になったが、その反動もあった。 (共和党の)ニクソン大統領の選出以降、保守派が勢いを増すことにつながった。 今後重要になるのが、8 月にシカゴで開かれる民主党大会だろう。 68 年に同じシカゴで開かれた(抗議者と警察が衝突し 600 人近い逮捕者が出た)民主党大会での暴力行為によって、(ニクソン氏が勝利した)大統領選の得票が最大 7 ポイント動いたといわれている。 似たような状況になれば影響は大きいだろう。(聞き手・サンフランシスコ=五十嵐大介)

■ <考論> ユダヤ人の影響強い米で呈された疑問 慶応大(現代アメリカ論)・渡辺靖教授

米国は公民権運動以降、社会的少数者の権利や多様性を重視してきた。 「反ユダヤ主義」を許せば、その理念が崩れてしまう。 米国でイスラエル問題は、単なる外交・安全保障論争ではない。 ユダヤ人は米国で成功し、強い影響力を持つ。 批判すれば「反ユダヤ主義」だとバッシングされるリスクが伴う。 最近はムスリム系人口が増え、イスラエル寄りの外交の危うさも指摘されるようになった。 ガザ侵攻後は、イスラエルのやり方はロシアと同じではないかとの見方も出て、批判も口に出せるようになってきた。

大学のデモは一方的に取り締まられているように見えるが、キャンパス内でイスラエル殲滅(せんめつ)を連呼されればユダヤ系学生は脅威を感じるだろう。 保守派もリベラル派も「自分こそ正義」あるいは「自分こそが被害者」と極端に振れると、表現の自由を奪い合うことになりかねない。 ガザ問題で和平が成立するなどすれば、この問題は下火になるかもしれない。 ただ、米国のイスラエル支持に疑問が呈された事実は大きい。(聞き手・鈴木峻、asahi = 5-3-24)

〈編者注〉少なくとも、イスラエルによる、無差別的、残虐で非人道的な攻撃が抑えられるきっかけになったのは間違いありません。 イスラエルに対する強力な足かせです。


イランの核関連施設防空網に攻撃か イスラエルのミサイルで米報道

イスラエルが 19 日にイランに反撃したとされる攻撃をめぐり、米 ABC は同日、米当局者の情報として、イスラエルの戦闘機がイラン中部イスファハン州の核関連施設を守るレーダーサイトに向けてミサイルを発射したと報じた。 防空網をかいくぐる能力があることを示す狙いとの見方が出ている。

ABC によると、戦闘機はイラン領外からミサイル 3 発を発射した。 同州内のナタンズにはウラン濃縮施設など核関連施設があり、レーダーサイトはこれを守るための防空網の一つとされる。 初期評価ではサイトは破壊されたとしているが、最終的な評価は終わっていないという。 米当局者は、今回の攻撃はイスラエルの能力をイラン側に伝えるためだったと説明したという。

ニューヨーク・タイムズも 19 日、欧米当局者とイラン当局者 2 人の情報として、イスラエル軍の航空機がイランに複数のミサイルを発射したと報じた。 ミサイルの種類や、発射場所、迎撃されたかどうかなどは明らかでないとしている。 また、衛星画像の分析から、標的はイスファハン州の空軍基地の防空ミサイルシステム S3000 のレーダーだった可能性があるとしている。

一方、イラン国営プレス TV が伝えたところによると、アブドラヒアン外相は 19 日に受けた攻撃で「死傷者や被害は出ていない」と述べた。 19 日の米 NBC のインタビューでは「昨夜の攻撃は空爆ではない。 ドローン(無人機)ではなく子どものおもちゃのようなものだった。」と述べた。 攻撃の背後にイスラエルがいるとの認識は示さなかった。 「イスラエルが我が国の利益に反する新たな冒険主義をとらない限り、我々は新たに反応することはない」とした。 同時にイスラエルがイランに対して決定的な行動をとった場合、迅速かつ最大限の対応をとり、イスラエルは後悔することになるだろうと警告した。

20 日未明にはイラクの首都バグダッドから南に約 50 キロの位置にある基地で爆発があった。 この基地にはイランの支援を受ける武装組織「人民動員隊」の部隊がおり、イラク軍によると、この爆発で人民動員隊のメンバー 1 人が死亡し、8 人が負傷した。 人民動員隊の一部の組織は、イランが中東各地で支援し、イスラエルと敵対する武装組織のネットワーク「抵抗の枢軸」を構成する。

人民動員隊の拠点はたびたび米軍の空爆対象となってきたが、米中央軍は 20 日、X (旧ツイッター)への投稿で「米国は今日、イラクで空爆はしていない」とした。 米 CNN によると、イスラエル当局者もこの爆発への関与を否定したという。 イタリア南部カプリ島で開かれていた主要 7 カ国 (G7) の外相会合は 19 日の共同声明で、イランによるイスラエルへの攻撃を「最も強い言葉で非難する」と強調。 イランの今後の行動に応じて「制裁を科す用意がある」と表明した。

これに対し、イスラエルによると報じられたイランへの攻撃については、「すべての当事者に事態のエスカレートを防ぐように強く求める」とするにとどめた。 (カイロ・其山史晃、カプリ島・宋光祐、エルサレム・根本晃、asahi = 4-20-24)

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イランで爆発 イスラエルが報復攻撃と米報道 報復連鎖、緊迫の恐れ

イランメディアは 19 日、イラン中部イスファハンで原因不明の爆発があったと報じた。 米 ABC ニュースは米政府関係者の話として、イスラエルがイランに報復攻撃を実施したと報じた。 イラクやシリアでも爆発が起きたとの情報もある。 報復の連鎖で中東情勢がさらに緊迫する恐れが懸念される。 ロイター通信は 19 日、イラン関係者の話として、イスファハンで防空システムが稼働したと報じた。 イスファハンを含む複数の都市では、航空便の発着を中止したという。

イランは、1 日にイスラエルが在シリアのイラン大使館を空爆したとして、13 日夜から 14 日にかけ、イスラエルに対して無人航空機(ドローン)や弾道ミサイルなど 300 発以上を発射していた。 そのほとんどは迎撃され、大規模な被害はなかったが、イスラエルは報復攻撃を検討していた。 イランのアブドラヒアン外相は 18 日、米ニューヨークの国連本部で開かれた国連安全保障理事会の公開会合で、イスラエルへの攻撃には「他の選択肢はなかった」と述べ、「軍事拠点のみを標的とした限定的かつ最小限のものだった」と正当化した。

さらに、「イランの合法的な防衛と対抗措置は終わった」と強調し、イスラエルによる軍事行動があった場合は「断固とした措置で対応する」とけん制した。 (カイロ・金子淳、ニューヨーク・八田浩輔、mainichi = 4-19-24)

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イスラエル軍「300 以上のミサイルやドローン、99% は迎撃」

イランのイスラエルへの報復攻撃をめぐり、イスラエル軍のハガリ報道官は 14 日朝、13 日夜から 14 日未明にかけてイランが発射した計 300 以上のミサイルやドローンのうち、99% は防空システムで迎撃したと発表した。 ハガリ氏は「非常に重要な戦略的達成だ」と語った。 ハガリ氏によると、イランはイスラエルに向けて約 170 機のドローンを発射したが、イスラエルの領空内に入る前に全て「イスラエルとパートナー国」によって撃墜された。 また、30 発以上の巡航ミサイルが発射されたが、うち 25 発はイスラエル空軍の戦闘機が撃墜し、イスラエル領空内に一発も侵入を許さなかったとしている。

このほか、120 発以上の弾道ミサイルが発射されたが、多数が防空システム「アロー」によって迎撃された。弾道ミサイルの一部はイスラエル南部のネバティム空軍基地に着弾したが、被害は軽微で基地は通常通り稼働しているという。 ハガリ氏は「イランは基地を無力化させることで我々の航空能力に損害を与えようとしたが、失敗した」と指摘。一方、イランの攻撃とあわせてイラクとイエメンからも飛翔体が一部発射されたが、イスラエル領空内への侵入は阻止したと説明した。 このほか、レバノンからもイスラエル北部に向けて数十発のロケット弾による攻撃があったが、死傷者は出ていないという。 (asahi = 4-15-24)

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シリアのイラン大使館に攻撃、イスラエル空爆か 革命防衛隊幹部ら死亡

[ダマスカス] シリアの首都ダマスカスのイラン大使館周辺に 1 日、イスラエル軍戦闘機によるものとみられる攻撃があった。 イラン政府はこの攻撃で上級司令官 3 人を含む 7 人が死亡したと発表。 イランは厳しい対応を取るとしており、イスラエルとの緊張が高まっている。 イラン革命防衛隊は声明で、精鋭部隊「コッズ部隊」の上級司令官モハンマド・レザ・ザヘディ氏を含む軍事顧問 7 人が死亡したと発表。 イラン国営メディアによると、同国政府はザヘディ氏が標的だったとの見方を示している。

シリアのミクダード外相は「ダマスカスのイラン外交施設を標的とし、多くの無実の人を殺害したこの残虐なテロ攻撃を強く非難する」と述べた。 イランのアクバリ駐シリア大使はこの攻撃で負傷していない。 国営テレビに対し、外交官を含む最大 7 人が死亡したとし、イラン政府は「厳しい」対応を取ると述べた。 米紙ニューヨーク・タイムズはイスラエル当局者 4 人の話として、イスラエルが攻撃を実行したと認めたと報じている。

ロイターの記者は、大使館に隣接し、倒壊した領事関連の建物のがれき上で救急隊員が捜索に当たる様子を目撃した。 現場ではシリア外相や内相の姿も見られたという。 シリア国営メディアは軍関係者の話として、イスラエルがゴラン高原からイラン大使館周辺を攻撃し、シリアは防空システムでミサイルのうち数発を撃墜したと報じている。 イスラエル軍の報道官は外国メディアの報道にはコメントしないとした。 イスラエルは長年、シリア内のイランの軍事施設などを標的に攻撃を繰り返しているが、大使館周辺が攻撃を受けたのは今回が初めて。

イラン国連代表部は攻撃が「国連憲章、国際法、外交・領事施設の不可侵という基本原則に対する明白な違反だ」と断じた。 また「地域の平和と安全に対する重大な脅威」だとして国連安保理に攻撃を非難するよう求め、イランは「断固とした対応を取る」権利を留保していると述べた。 レバノンの親イラン武装組織ヒズボラは「敵が罰と復讐を受けることなくこの犯罪が済まされることはない」と報復を表明した。

イラクやヨルダン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦 (UAE) などイスラム諸国のほか、ロシアも攻撃を非難した。 米ホワイトハウスは今のところ直接コメントしていない。 米国務省のマシュー・ミラー報道官は定例記者会見で、米国は「地域的な紛争のエスカレーションを引き続き懸念している」と述べた。 また、イランの支援を受けているハマスが拘束している人質の解放を巡る交渉に影響は及ばないとの見方を示した。 (Reuters = 4-2-24)