オーストラリアもパレスチナを国家承認の意向 仏・英などに続き

オーストラリアのアルバニージー首相は 11 日、9 月にもパレスチナを国家承認すると明らかにした。 最近、フランス、英国、カナダが相次いでパレスチナの国家承認に向けた動きを見せており、豪州内でも政府に同様の措置をとるよう求める声が高まっていた。

アルバニージー氏は記者団に、9 月に予定されている国連総会でパレスチナを正式に承認するとの意向を表明。 「(イスラエルと将来のパレスチナ国家が共存する) 2 国家解決は、中東の暴力の連鎖を断ち切り、(パレスチナ自治区)ガザの紛争、飢餓を終わらせるために最善だ」と述べた。 また、今回の決定に先立ち、石破茂首相ら日、英、仏、ニュージーランドの首脳と協議したことも明らかにした。 ガザを実効支配するイスラム組織ハマスについては、パレスチナ自治政府のアッバス議長と意見を交わしたと明らかにした上で、「将来のパレスチナ国家において、いかなる役割も果たすことはない」と述べた。

また、イスラエルのネタニヤフ政権について、「国際社会の呼びかけを無視し、ガザにおける法的・道義的義務を果たしていないことに強い懸念を抱いている。 イスラエルは民間人保護の確保と、食料と医療物資の供給を保証する必要がある」と批判した。 豪州との関係が深いニュージーランド政府も 11 日、パレスチナを国家承認する検討に入ると発表した。 (ジャカルタ・河野光汰、asahi = 8-11-25)


カナダ、仏英に続きパレスチナ国家承認の意向 イスラエルへ圧力加速

カナダのカーニー首相は 7 月 30 日、9 月の国連総会で「パレスチナを国家として承認する意向がある」と表明した。 パレスチナ自治政府が改革を確実に進め、2026 年には選挙を実施する、という前提条件をつけた。 フランスと英国に続く決定で、パレスチナ自治区ガザの人道危機を止めるためにイスラエルへの国際的圧力を強める動きが加速している。

主要 7 カ国 (G7) でパレスチナを国家承認する方針を示したのは、7 月 24 日のフランス、同 29 日の英国に続き 3 カ国目。 カナダは承認の「意向」を実行する前提として、「自治政府の根本的改革」、「26 年にイスラム組織ハマスが全く関与しない選挙を実施すること」、「パレスチナ国家の非軍事化」などの要求を掲げた。 カーニー氏は 30 日に自治政府のアッバス議長と話し、これらの点について自治政府が履行する意向を確認したという。

カナダ、方針転換の背景には

カナダが承認の方向に踏み切ったのは、いずれも関係が深い国であるフランスと英国が立て続けに動いたことに促された面が強い。 カーニー氏は 30 日の記者会見で、フランスのマクロン大統領と協議したと説明。 「他国の動きは実際、とても重要だった。 (各国が立て続けに動くことが停戦に向けた)成功の見通しを高めるからだ」と述べた。 29 日には英国のスターマー首相とも、ガザの人道状況や英国のパレスチナ承認の方針について協議したという。

一方、カーニー氏はイスラエルについて、「ガザでの人道危機の悪化を食い止めるのに失敗し続けている」と非難。 英 BBC によると、29 日には 200 人近いカナダの元外交官らがパレスチナの国家承認を求める書簡に署名するなど、イスラエルに批判的な国内世論からの圧力も高まっていた。

反発するイスラエル

カナダの発表を受け、イスラエル外務省は 30 日の声明で「この時期にカナダ政府が立場を一転させたことは、ハマスに報酬を与えるものだ」と直ちに反発した。 ロイター通信は、米政権の高官が語った内容として「トランプ大統領もパレスチナの国家承認は『ハマスに報酬を与える』ものだと見ている」と伝えた。 カナダは、イスラエルの後ろ盾である米国との間で関税をめぐる交渉のさなかにあり、関係のさらなる緊張は避けたい面もある。 トランプ大統領は 31 日、SNS に「ワオ! カナダが国家承認を支持すると発表した。 我々がカナダと貿易の取引をまとめるのは非常に難しくなる。」と書き込んだ。

カーニー氏は 30 日の会見で「米国とは協議したのか」という会見での質問には正面からは答えなかったが、「機会と必要性があると判断すれば独立した外交的立場を取る」と強調していた。 (ニューヨーク・青山直篤、asahi = 7-31-25)


イスラエル、ガザへ物資の空中投下を許可 飢餓に国際的な非難高まる

パレスチナ自治区ガザで飢餓などの人道危機が深まるなか、イスラエル当局は 25 日、食料などの支援物資のガザへの空中投下を許可すると発表した。 イスラエルメディアが報じた。 栄養失調による子どもらの死亡が急増し、イスラエルと米国が支援する財団による配給所に集まる住民へのイスラエル軍などの銃撃が続いていることに国際的な非難が高まっていた。 「タイムズ・オブ・イスラエル」によると、ヨルダンとアラブ首長国連邦 (UAE) が近く、支援物資の空中投下を実施するという。 英 BBC によると、英国も協力する姿勢を示している。

ただ、国連や NGO などは、空中投下では物資の量が限られ、陸路での搬入の方が効果的だと指摘する。 空中投下は昨年にも米国やヨルダンなどが実施したが、物資が住民に命中するなどし、死亡する事例が相次いだ。 ガザ保健省は 25 日、過去 24 時間の間に、栄養失調などによって 9 人が死亡したと発表した。 同省によると、栄養失調などによる死者の数はこれまでに子ども 83 人を含む計 122 人に上るという。 だが、イスラエル当局は「ガザで飢餓は起きていない」とする立場を崩していない。

英独仏 3 カ国の首脳は 25 日、ガザの人道危機をめぐり、イスラエル軍によるガザへの支援物資の搬入制限は「容認できない」とする共同声明を発表。 イスラエルに対して、国連や NGO による物資の搬入制限を解除し、国際人道法上の義務を順守するよう求めた。 (根本晃、asahi = 7-26-25)


パレスチナ国家承認、フランス決断の影響は ガザの人道危機が背景に

フランスのマクロン大統領がパレスチナを国家承認する方針を打ち出した。 イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでの人道危機が深まるなかでの決断は、国際社会でのさらなる広がりにつながるのか。 国際社会では約 150 カ国がパレスチナを国家承認。 欧州ではアイルランドとスペイン、ノルウェーの 3 カ国が昨年 5 月、パレスチナを国家承認する意向を共同で発表。 スロベニアも昨年 6 月に承認手続きを終えた。 今後、特に注目されるのは、フランスと同じく主要 7 カ国 (G7) を構成し、イスラエル批判を強めた英国とドイツの動向だ。

英国のスターマー首相は 24 日、「ガザで続く苦難と飢餓は言葉にできないほど深刻で、正当化できないものだ」とする声明を発表した。 25 日には、マクロン氏とドイツのメルツ首相と 3 人での電話協議を予定しており、「殺人を止め、人びとが切望している食料を届けるために緊急にできることを議論する」としている。

イスラエル支援の米国は強く反発

英政府はかねて、最も効果的なタイミングで国家承認をするとしてきたが、米ブルームバーグ通信によると、複数の閣僚からスターマー氏に対し、パレスチナの国家承認を急ぐよう圧力がかけられている。 スターマー氏は声明で、パレスチナ国家の樹立については従来通り、「パレスチナ人の不可侵の権利」と強調。 その上で「停戦は、パレスチナの国家承認と、パレスチナ人とイスラエル人の平和・安全を保証する 2 国家解決へと我々を導くだろう」としたが、停戦実現前の国家承認決定には踏み切らない考えを示唆した。

ドイツ政府の報道官は 25 日、2 国家解決を支持する立場を強調。 一方、パレスチナの国家承認については「2 国家解決実現に向けた最終的な措置」として、近い将来における承認は「ない」と明確に否定した。 ドイツは、日英仏など 30 カ国と欧州連合 (EU) の外相らが即時停戦を求めた 21 日の共同声明にも名を連ねていない。 マクロン氏の突然の表明に、イスラエルを支持するトランプ米政権は強く反発している。 ルビオ国務長官は X (旧ツイッター)への投稿で、「米国は、パレスチナ国家を国連総会で承認するというマクロン大統領の計画を強く拒否する」とした。

トランプ政権は 6 月、フランスとサウジアラビアが共催予定だった、「2 国家解決」に関する国連の会議の開催にも強く反対していた。 ロイター通信によると、米国は各国に宛てた文書の中で、各国が独自にパレスチナ国家を承認することは「紛争の最終的な解決に重大な法的・政治的な障害を加え、戦争中のイスラエルを圧迫し、結果として敵対勢力を利するものだ」と主張していた。

ガザの人道状況悪化、停戦交渉も停滞

マクロン氏の決断を後押ししたのは、ガザの人道状況の悪化だ。 ガザ保健省の 24 日の発表では、2023 年 10 月から始まったガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘でのパレスチナ人の死者数は 5 万 9,587 人にのぼる。 2 カ月の停戦をへて戦闘が再開した 3 月 18 日以降だけで 8,447 人が死亡している。

国連人道問題調整事務所 (OCHA) の 23 日の発表によると、イスラエルの軍事作戦により、ガザの領域の 88% が立ち入り禁止や避難命令地域となった。 住民 200 万人以上が 45 平方キロメートルに押し込められるなか、飢餓で命を落とす人が増えている。 世界食糧計画 (WFP) によると、3 人に 1 人は数日間食事をとれず、栄養失調が急増して 9 万人の女性と子どもが緊急治療を必要としている。

イスラエルは 3 月にガザへの物資供給を完全に停止させた。 イスラエルと米国が支援する「ガザ人道財団 (GHF)」が 5 月末から、従来の国連機関など約 400 カ所での配給に代わり、4 カ所で配給を開始した。 だが、配給所に集まる住民へのイスラエル軍などによる銃撃が相次ぎ、ガザ保健省によれば、1 千人以上が死亡している。

停戦に向けた動きも停滞する。 交渉の仲介をつとめる米国のウィトコフ中東担当特使は 24 日、カタールの首都ドーハで続いていた停戦協議を中断し、米交渉団を帰国させると明らかにした。 ハマスからの最新の回答が「明らかに停戦合意への意欲を欠いている」ためだとしている。 イスラエルの首相府も 24 日、「ハマスが示した回答をふまえ、追加協議のために交渉チームをイスラエルに帰国させる」との声明を出した。

一方、ハマスは 24 日、「ハマスの立場に対するウィトコフ氏の否定的な発言に驚いている」としつつ、交渉を続ける意思を示した。 (ロンドン・藤原学思、ワシントン・下司佳代子、カイロ・其山史晃、asahi = 7-25-25)


ガザで急拡大する飢餓、24 時間で 15 人死亡 生後 6 週間の乳児も

パレスチナ自治区ガザの保健省は 22 日、食料不足による飢餓などのため、過去 24 時間に 15 人が死亡したと発表した。 イスラエル軍によって援助物資の搬入が極端に制限されるなか、飢餓が急速に深刻化している。 ロイター通信は 22 日、過去 24 時間で死亡した 15 人のうち 1 人は生後 6 週間の乳児で、病院で治療を受けていたと報じた。 家族は、粉ミルクが手に入らなかったと語ったという。 ガザ保健省によると、2023 年 10 月のガザでの戦闘開始以降、飢餓などで 101 人が死亡し、うち 80 人を子どもが占める。

日本含む 109 の人道支援団体が即時停戦求める声明

イスラエルは 3 月にガザへの物資供給を完全に停止させた。 イスラエルと米国が支援する「ガザ人道財団 (GHF)」が 5 月末から、従来の国連機関など約 400 カ所での配給に代わり、南部ラファなど 4 カ所で配給を開始した。 だが、配給所付近でイスラエル軍による住民への攻撃が相次ぐ。 21 日には一連の攻撃での死者数が 1 千人を超えた。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルや日本国際ボランティアセンター (JVC) など計 109 の人道支援団体は 23 日、飢餓の危機を防ぐためには即時停戦が必要だとする声明を出した。 声明では、1 日平均ではトラック 28 台分の物資しかなく、人口 200 万人以上のガザでは到底足りない、と訴えた。 一方、世界保健機関 (WHO) は、パレスチナ自治区ガザの中部にある WHO の施設が 21 日、イスラエル軍の攻撃を受けたと発表した。 倉庫には外科手術用の器具や物資、医薬品、抗生物質などが保管されていた。

WHO でパレスチナ自治区の代表を務めるリック・ピーパーコーン氏は 22 日の会見で「主要な倉庫が破壊され、ほとんどの医療物資が失われた」と説明。 「(被害を受けたのが) WHO の主要倉庫であり、必要性の高い医療物資があったことは誰もが知っている事実だ」と述べ、攻撃を批判した。 (ヨハネスブルク・今泉奏、ニューヨーク・田中恭太、asahi = 7-23-25)


プーチン氏、イランに「ウラン濃縮の完全放棄」要求 イランに痛手か

米ネットメディアのアクシオスは 12 日、欧州やイスラエルの情報筋の話として、ロシアのプーチン大統領がイランに対し、「ウラン濃縮の完全な放棄」を求めていると伝えた。 ただ、イランは「検討しない」と回答したとしている。 報道によると、プーチン氏は今月上旬のトランプ米大統領やマクロン仏大統領との電話協議でも、イランに濃縮を断念させる案を伝えたという。 ロシアはこれまで、イランの核開発問題の解決に向け、イランやイスラエルに案を示したとしていたが、内容は明らかにしていなかった。

イランに痛手か

トランプ政権は 6 月、イランの核施設を爆撃し、核爆弾をつくる能力を低下させたとしている。 だが、一部設備は残ったとみられ、トランプ氏は再び爆撃する可能性を排除していない。 プーチン氏はトランプ氏との友好関係を軸に、ウクライナ侵攻の和平協議を有利に進めたい考えだ。 イランの現体制の崩壊につながりかねない米国とイランとの対立激化も望んでおらず、両者の仲介に意欲を示している可能性がある。

だが、トランプ氏はプーチン氏の仲介は必要ないとの考えを示し、イランもウラン濃縮の能力を維持すると主張しているため、プーチン氏がどこまで協議に関与できるかは不透明だ。 ロシアはイランで唯一の原発を建設するなど「盟友」的な存在だ。 ウクライナ侵攻後、イランは兵器不足のロシアにドローン(無人機)を供給して支援しており、ロシアがイランに対する平和利用でのウラン濃縮を容認する姿勢を翻せば、イラン側に痛手となる可能性がある。 (asahi = 7-13-25)


「ガザ人道財団」配給所周辺などで 798 人死亡 国連機関が懸念表明

国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) は 11 日、イスラエル軍の攻撃が続くパレスチナ自治区ガザの人道支援物資の配給に関与した場所や輸送ルート周辺で、5 月末以降 798 人が死亡したと発表した。 そのうち 615 人は、イスラエルと米国が支援する「ガザ人道財団 (GHF)」の配給所周辺で亡くなったと確認されたという。 OHCHR の報道官は、死因の多くが銃撃によるものだと指摘し、「人々が射殺されるか、食料を得られるかを迫られている」と強い懸念を表明した。

イスラエルが 3 月にガザへの物資搬入を停止した後、従来の国連機関など約 400 カ所での配給に代わり、GHF は、5 月末にラファなど 4 カ所で配給を開始した。 イスラエル側は、ハマスによる物資奪取を防ぐためと説明しているが、配給所周辺地域の治安維持を担うイスラエル軍が集まった住民に対して発砲したとの報告が相次いでいる。 死傷者が増え続ける中、GHF は 9 日、施設維持のためとして、計 4 カ所のうちラファの 11カ所を除く 3 カ所の配給所を閉鎖すると発表した。

イスラエル軍は警告射撃をしたことは認めているが、住民を意図的に標的にして発砲したことは否定している。 国連は食料配給以外についても、ガザ内での燃料不足や負傷者らの治療にあたる病院の機能が失われていると警鐘を鳴らしている。 (エルサレム・高久潤、asahi = 7-12-25)


イスラエル、ハマス提案「受け入れられず」、代表団をカタール派遣へ

イスラエル首相府は 5 日、パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍と戦闘を続けるイスラム組織ハマスが 4 日に回答した停戦案への要求について「受け入れられない」とする声明を発表した。 ネタニヤフ首相は、人質解放のために停戦についての協議は続けるとして代表団を 6 日にカタールへ派遣するよう指示したとした。

ハマスは 4 日、米国が提示した「60 日間の停戦案」に対して「前向き」な回答を仲介国に提出した。 イスラエルのメディア「タイムズ・オブ・イスラエル」によると、ハマスの要求は、▽ 恒久停戦についての交渉は合意するまで継続される、▽ 国連その他の国際援助機関を通じた援助を再開する、▽ イスラエル軍が 3 月の停戦崩壊前に維持していた戦線まで撤退する - - の 3 点だという。 ガザの保健省は 5 日、過去 24 時間でイスラエル軍の攻撃により 70 人が死亡したと発表した。 イスラエル軍は 6 日未明、ガザ南部から発射された飛翔体 2 発を迎撃したと発表した。 (カイロ・翁長忠雄、asahi = 7-6-25)


イスラエル軍のガザ攻撃で 118 人死亡、ハマスは停戦案に近く回答へ

パレスチナ自治区ガザの保健当局は 3 日、イスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエル軍の攻撃で過去 24 時間にガザ全域で 118 人が死亡したと発表した。 4 日も攻撃は続き、現地からの情報によれば、避難住民のテントが空爆されるなどしている。 ロイター通信によると 3 日、ガザ市の学校が空爆され、少なくとも 17 人が死亡した。 また、医療従事者の話として支援物資の配給所に向かう約 20 人が砲撃で死亡したと伝えた。 ガザ保健省のまとめでは、7 月 3 日午後までの 3 日間で死者数は 376 人に上っている。

ハマスは 4 日朝、トランプ米大統領が求める「60 日間の停戦」案について協議しており、結果が出れば仲介者に伝えるとの声明を出した。 またロイター通信によると、トランプ氏は 4 日、ハマスが停戦案を受け入れるかどうかは「24 時間以内にわかるだろう」と述べた。 同通信によれば、停戦案は、▽ ハマスが人質 10 人と死亡した 18 人の人質の遺体を段階的に引き渡す、▽ スラエルは拘束しているパレスチナ人を解放する、▽ イスラエル軍は一部が撤退を始める、▽ 恒久的な停戦へ向けて交渉する - - といった内容だという。

ハマスは、停戦案がイスラエル軍の侵攻の終結と撤退につながるとの保証を求めている。 イスラエルのネタニヤフ首相は 3 日、2023 年 10 月 7 日にハマスが奇襲した、ガザとの境界に近いキブツ(集団農場)・ニールオズを事件後初めて訪問し、「生存している人質も亡くなった人も全員帰還させる」と住民たちに述べた。 (カイロ・翁長忠雄、asahi = 7-4-25)


「空港機能が完全停止」 フーシ派がイスラエルの空港に極超音速ミサイル発射
 イスラエルは報復予告

イエメンのフーシ派が再びイスラエル本土を狙った。 今回はテルアビブ近郊にあるベングリオン国際空港に向けて、極超音速弾道ミサイルを発射したと発表した。 1 日(現地時間)、フーシ派の報道官ヤヒヤ・サレアは、同派が運営する放送局『アルマシラ TV』を通じて「テルアビブにあるベングリオン空港を標的とした特別作戦として、『パレスチナ-2』型極超音速ミサイルを発射した」と明らかにした。

サレア報道官によれば、この攻撃によりイスラエルの空港機能が完全に停止し、数百万人の住民が防空壕に避難する混乱が起きたという。 また、無人機を用いた大規模な波状攻撃も同時に展開され、エイラト、テルアビブ、アシュケロンの 3 都市を「最も重要な目標」として狙ったと語った。 フーシ派はこの攻撃の目的について「ガザ地区に対するイスラエル軍の攻撃が完全に停止されるまで、パレスチナ人を支援するための作戦を続ける」としており、今後も同様の攻撃を繰り返す構えを見せている。

同日、イスラエル軍もミサイル発射を確認。 中部および南部で警報サイレンが鳴り響いたが、防空システムによって迎撃に成功し、死傷者は報告されていないと発表した。 これに対し、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は「フーシ派による今回の攻撃に対しては、断固たる報復を行う」と警告した。 フーシ派は 2023 年 11 月以降、イスラエル本土に向けたミサイルや無人機攻撃を繰り返しており、そのすべてを「封鎖下のガザ地区にいるパレスチナ人への連帯」と位置づけている。

イスラエル軍はこれまでにもフーシ派が支配するイエメン北部地域への空爆を続けてきた。 標的となったのは石油施設や軍事拠点であり、現地当局者によれば、こうした報復攻撃によりフーシ派地域では深刻な物的損害と多くの死傷者が発生しているという。 (竹内智子、江南タイムズ = 7-3-25)


幹部殺害に爆撃 … 停戦に傾いたイラン イスラエルは「目標達成」か

米国のトランプ大統領は 24 日、イスラエルとイランが「完全かつ全面的な停戦」に合意したと発表した。 発表は、イランが米軍による核施設への攻撃に報復してカタールの米空軍基地を攻撃した直後に出された。 背景に何があるのか。 イランのアラグチ外相は 24 日早朝、自身の SNS に投稿し、現時点で停戦の合意は存在しないとしたうえで、「イスラエル側がテヘラン時間の(24 日)午前 4 時(日本時間午前 9 時半)までに侵略行為を停止すれば、我々もこれ以上の反撃はしない。 停戦に関する最終的な決定は後に下される。」と述べた。

イスラエル政府は 24 日早朝の時点で停戦について正式な声明を出していないが、地元メディアはネタニヤフ首相がトランプ氏との電話協議で、停戦を受け入れる意向を伝えた模様だと報じている。

姿見せなくなったハメネイ師

イランは中東地域でも強大な軍事力を持つ国と目されてきたが、昨年のイスラエルとの直接攻撃の応酬で防空システムに大きな打撃を受け、その再構築を急ぐなか、今月 13 日にイスラエルによる攻撃が開始された。 交戦状態になってみると、予想以上の劣勢を強いられた。 精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」の最高幹部や軍事部門トップの参謀総長らが次々と殺害され、首都テヘランをはじめ各地の軍関係施設が破壊された。

弾道ミサイルやドローンでイスラエルの都市部を標的にして反撃したが、相当数が迎撃されてイスラエルに深刻な打撃を与えるまでには至っていないとみられている。 保有数 2 千発とも 3 千発とも言われる弾道ミサイルは減っていき、長期間の戦闘には耐えられないのではないかとの見方も出ていた。 そんななかで米国が 22 日に参戦し、フォルドゥやナタンズ、イスファハンの核施設が大規模な爆撃を受け、さらに追い詰められた。

23 日に米国への報復としてカタールの米空軍基地をミサイルで攻撃したが、米側に事前に通告したうえで死傷者が出ないよう配慮した攻撃にとどめた。 米国との全面的な軍事対決には耐えられないという計算が働いた可能性がある。 トランプ米大統領はイランの最高指導者ハメネイ師について「居場所はわかっている」などとして、いつでも標的にできることを示唆したほか、イランの革命体制の転覆もほのめかしていた。 ハメネイ師は攻撃を逃れるために姿を見せなくなっていた。 軍事的対決で展望を開くことは難しく、停戦に応じて体制を維持することを優先するという判断に傾いた可能性があるとの見方が出ている。

イスラエル側は「ベストシナリオ」

一方のイスラエルは、核と弾道ミサイルの脅威を取り除くことを目的に掲げて、イランへの攻撃を始めた。 一連のイランとの交戦で、「ベストシナリオ」とも言える戦果をあげたと受け止められている。 イスラエルはイランの核施設や弾道ミサイルの発射拠点に対する大規模な空爆を続け、ミサイル発射施設の半数以上を破壊。 さらに、米軍も参戦し、米軍しか保有しない B2 爆撃機と地中貫通弾「バンカーバスター」、巡航ミサイル「トマホーク」などで核施設を攻撃した。 イランを地域最大の脅威で「敵」と位置づけるイスラエルにとって、米軍の直接攻撃による支援は長年の念願だった。

ネタニヤフ首相は 22 日の演説で、米国による行動を称賛。 「目標に達する前に終えることもない」としつつ、「我々は目標達成に非常に近づいている」と述べた。 戦果の到達度に応じて終戦を判断する姿勢を示していた。 イスラエルと米国による攻撃で、最大の懸案とされていた地下深くにあるフォルドゥの核関連施設が完全に破壊されたかどうかは明らかではない。 ただ、イスラエル政府関係者は地元メディアに対し、「仮に完全には破壊できていなくとも、イランの核開発を数年は遅らせることができたのは確実だ」と語った。 (大野良祐、エルサレム・高久潤、asahi = 6-24-25)


〈解説〉 イランが米軍基地に報復 直後の「停戦合意」の行方は

イランが 23 日夜、中東カタールにある米軍基地にミサイル攻撃をしました。 22 日にあった米軍によるイランの核関連施設攻撃に対する報復攻撃でしたが、米軍側に事前に通告していたとの情報もあります。 イラン側は米軍側に死傷者が出ないように配慮した模様で、紛争拡大を避けるための計算された攻撃だったとみられています。

この攻撃後にトランプ米大統領は、イスラエルとイランが「完全かつ全面的な停戦」に合意したと SNS で発表しました。 イランの報復から数時間後に「停戦の発表」があったのはなぜか。 そして、停戦合意でイスラエルとイランの戦闘はおさまるのでしょうか。 中東での取材経験が長い元中東アフリカ総局長の翁長忠雄記者が解説します。

イラン側から米国への報復攻撃とみられるミサイル攻撃が行われました。 なぜ今だったのでしょうか?

米軍は今月 22 日にイランの核関連施設 3 カ所を攻撃しました。 米国がイラン本土を軍事攻撃するのは初めてと言われています。 当然、イランとしては、報復攻撃をするということを予告していました。 「あらゆる選択肢を排除しない」としていました。 そして、日本時間 24 日未明、現地は 23 日夜に、中東カタールにある米中央軍の前線司令部、こちらは中東最大の米軍基地になりますが、これを攻撃したということが伝えられました。

なぜカタールの米軍基地を狙ったのでしょうか?

米軍は、中東のアラブ諸国に何カ所かの米軍基地を持っていますが、今回狙われたカタールにある基地は中東最大の基地と言われています。 米軍の中東展開における前線司令部としての役割があることから、攻撃対象としては象徴的な場所であり、そのため攻撃対象になったと言えます。

イラン側からの攻撃を受けて、被害はどの程度だったのでしょうか?

今回の攻撃の規模は、トランプ米大統領によると、14 発のミサイルが発射されたということです。 「このうち 13 発が迎撃された」とトランプ氏は言っています。 イラン側も、イランの核関連施設が受けた攻撃と同じ数のミサイルで攻撃した、と主張しているとのことです。

イランは、今回も同様ですが、自らが攻撃を受けた場合には、同じ規模、同じ割合で報復、反撃すると。 これが彼らのルールの一つになっていますので、今回も同様の規模で反撃したということになります。 攻撃にあたっては事前にカタールに通告していたということです。 そうすると、恐らく(攻撃情報は)米国側にも伝わっていたと思われます。 トランプ大統領はこの攻撃後に、「事前に通告があったおかげで被害が出ていない。 人的被害が出ていない。」と話しています。 さらに言えば、感謝も伝えているというような状況です。

イランは今後も米国側への攻撃を続けるのでしょうか?

イランは 2020 年、精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」のソレイマニ司令官を米軍によって殺害されました。 その際に報復攻撃として、隣国イラクにある米軍基地をミサイルで攻撃しました。 その際も今回と同様に、事前通告した上で攻撃していました。 イランは今回も、20 年の時と同様に攻撃前に米国側に通告をして、ある意味で限定的な攻撃にとどめています。 トランプ大統領も「弱い攻撃だった」というように発言しています。 イラン側としては「もうこれ以上攻撃をする意図はありません」というシグナルを送っていると考えた方がいいと思います。

また、攻撃を受けて米国側も、これならイランと停戦になると解釈したと考えられます。 そういう前提に立てば、イラン側の攻撃は、ひとまずは終わったとみていいと思います。 イランが今回、限定的な攻撃にとどめた理由として考えられるのは、これまでイスラエルから(核関連施設や首都テヘランなどが)攻撃を受けて、革命防衛隊の幹部や核開発の科学者が殺害され、ミサイル防衛システムなども破壊されました。 つまり、反撃するための戦闘力が相当落ちてきたということがあると思われます。

同時に、イスラエルが続けているパレスチナ自治区ガザでの戦闘以来、イスラエルは、レバノンのシーア派組織ヒズボラという、イランの支援を受けている勢力に対して攻撃を加えました。 さらに、この間、イランと友好関係にあったシリアのアサド政権も倒れました。 イラン側としては、これ以上攻撃や反撃をして戦闘を長引かせるということは、現実問題として対応が難しくなるという判断があったとみられます。

この攻撃を受けて、米国側はどう出るのでしょうか。 さらに紛争が拡大する恐れはあるのでしょうか?

攻撃の直後、数時間後にはトランプ大統領が新たに SNS に投稿しました。 「イスラエルとイランがこれから 24 時間後には停戦に合意する。 戦争は終わる」というような投稿でした。 米国にすれば、この攻撃はある程度、当然予想していたものであって、ここからさらに反撃するのではなく、この攻撃を受けて停戦に持ち込むといったようなシナリオというか、計画のようなものがあったと思われます。

停戦合意がされたとしても問題が解決に向かうのでしょうか?

イスラエルとイスラム組織ハマスによるガザをめぐる戦闘を見てもわかるように、停戦が一度結ばれて、その後ずっと守られるということは、なかなか難しいというのが過去の例です。 今回も、仮に停戦が合意されても、トランプ大統領が言うように「永遠の戦争終結」ということにつながるのかどうかは予断を許さないと思います。 (翁長忠雄・元中東アフリカ総局長、asahi = 6-24-25)

米国のイラン空爆、原子炉への攻撃を意図的に回避 - 衛星写真が示唆

米空軍がイランの核開発計画に破壊的な攻撃を加えたにもかかわらず、重要な研究施設の原子炉を攻撃しないよう注意を払っていたことが衛星画像で示唆された。 国際原子力機関 (IAEA) が発表した最新の被害報告書には、イスファハン核技術・研究センターで稼働中の 3 基の研究用原子炉が含まれていない。 これらのうち 1 基は、1991 年に中国が製造した「小型中性子源原子炉 (HNSR)」で、900 グラムの核兵器級ウランを燃料として使用している。

米当局者は週末、トランプ大統領がイスラエルと共にイラン攻撃に踏み切ったことによる最終的な被害の評価には時間を要すると述べた。 ただ、衛星画像の公開が進む中、ウィーンの高官 4 人によると、イスファハンの原子炉施設は意図的に攻撃を避けられたように見えるという。 これらの関係者は機密情報を扱う立場にあるため、匿名を条件に語った。 米国の攻撃に対し、イランはカタールにある米軍基地にミサイルを発射した。 ただ、カタールによると、ミサイルは迎撃され、死傷者は出なかったという。

週明け 23 日には、IAEA 理事会がウィーンで緊急会合を開き、イランの核計画に対する攻撃について協議した。 たとえ、イスファハンのように出力の低い原子炉であっても、稼働中の原子炉を攻撃することは深刻な前例を作る恐れがあると、関係者は指摘している。 また IAEA の査察官らは、イランに対し、高濃縮ウランの現在の保管場所について報告するよう要求。 これに対し、イラン側は、今回の攻撃が核拡散防止を目指す国際的な外交努力に重大な損害を与えたと警告した。

IAEA イラン代表を務めるレザ・ナジャフィ氏は、米国の攻撃により「国際的な不拡散体制に根本的かつ回復不能な打撃を与え、現在の核不拡散防止条約 (NPY) 枠組みが無効であることを決定的に示した」と述べた。 NPT は約半世紀前に成立した国際条約で、イランなどの締約国に対し、核兵器の開発を行わないことを条件に原子力技術へのアクセスを認めている。 核技術の多くは民生用と軍事用の両方に転用可能であるため、IAEA が核物質の軍事転用を防ぐ役割を担っている。

イスファハンの研究用原子炉は、さまざまな物質を中性子で照射し、原子反応を研究するために使用されていた。 この「中性子放射化分析 (NAA)」と呼ばれる技術は、かつて米国が核兵器開発を進める上で重要な役割を果たしたが、現在では産業界や放射線医学の分野でも活用されている。 小型原子炉の 1 基が設置されているとみられる場所は、樹木が植えられたタイル敷きの広場に隣接しており、そのそばの建物は破壊されている。 この建物は上級研究者らが集う場として整備されていた可能性があると、分析官の 1 人が述べた。

米国はイスファハンへの攻撃に加え、ナタンズおよびフォルドゥの地下ウラン濃縮施設の破壊も試みたが、IAEA によると、米国とイスラエルの攻撃による環境への影響は局所的なものにとどまっているという。 濃縮ウランは爆弾や原子炉で照射されて初めて、より深刻な放射性物質の拡散が発生する。 IAEA は先週、イラン唯一の商業用原子力発電所であるブーシェフル原発が直撃された場合には、「極めて大量の放射能が放出」され、「最も深刻」な結果をもたらすと警告している。 (Jonathan Tirone、Bloomberg = 6-24-25)


イラン核施設「完全破壊」ならず? 米バンカーバスターの効果に疑問

米国がイランの核開発計画を阻止するためとしてイランの核施設 3 カ所に対して行った空爆をめぐり、トランプ大統領は「主要な核施設は完全に破壊された」と強調した。 が、トランプ氏が主張するほどの効果があったのかを疑問視する指摘が米メディアで相次いでいる。 作戦の焦点となってきたイラン中部フォルドゥの核施設について、米紙ニューヨーク・タイムズ (NYT) は 22 日、米軍の空爆により深刻な被害を受けたものの、完全には破壊されていない、とイスラエル軍が初期評価をしていると伝えた。 イスラエル当局者は、イランが事前にウランなどを別の場所に移動させたとみているという。

核兵器級のウラン濃縮は 90% といわれるが、フォルドゥには 60% まで濃縮を行う施設が地下約 80 メートルに造られているとされる。 今回米軍は、地下深くへの攻撃が可能な重量 3 万ポンド(約 13.6 トン)の新型地中貫通弾「バンカーバスター」 GBU57 を B2 ステルス爆撃機から投下した。 米当局者は、フォルドゥの核施設は「使用不能になった」としつつ、「12 発のバンカーバスターでも破壊できなかった」と NYT に認めたという。

また CNN は 22 日、巡航ミサイル「トマホーク」で攻撃された中部イスファハンの地下核施設をめぐり、攻撃後も地下にウランの備蓄が残されているとみる米専門家の指摘を報じた。 イスファハンの地下施設はフォルドゥよりも深いとみられ、破壊はさらに困難だとの見方もあるという。 こうした報道が相次ぐなか、トランプ氏は 22 日夜、SNS に「衛星写真が示すように、イランの全ての核施設は甚大な被害を受けた。 まさに消滅という言葉がぴったりだ!」、「最大の被害は、地表よりずっと下で発生した。 的中だ!!!」と投稿し、地下施設に損害を与えたとアピールした。/p>

22 日に会見した米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長は、フォルドゥ、イスファハン、ナタンズの施設に米軍が甚大な被害を与え、破壊したと語った。 一方で詳細については言及せず、「最終的な検証には時間がかかる」との見方も示した。 トランプ政権は今回の攻撃でイランの核施設をたたき、核開発計画を止めるという「短期決戦」を想定。 これをテコにイラン側に外交上の譲歩を求めている。 今回の作戦でイランの核開発にどれだけの打撃を与えたかは、今後の交渉をめぐる米国の出方にも影響しそうだ。 (ワシントン・清宮涼、asahi = 6-23-25)


イランのミサイル着弾、80 人負傷 = イスラエルも新たな攻撃

【カイロ】 イスラエルの中部などで 22 日、イランから発射されたとみられるミサイルが相次いで着弾し、報道によると約 80 人が負傷した。 イスラエルもイラン西部の軍事施設を攻撃。 米軍によるイラン空爆後も双方は攻撃の応酬を続けている。 イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」は約 40 発を発射し、この中には今回初めて投入した多弾頭ミサイルが含まれていると主張。 このうち 30 発前後がイスラエル領空に入ったとされる。

イスラエルの中部テルアビブなどでは、ミサイルが直撃して建物が損壊した。 目撃情報では「大規模な爆発」も起きた。 北部ハイファでは、イスラエル軍が誤射した迎撃ミサイルによる被害が出たとみられる。 イスラエル軍によると、同軍のイラン空爆ではミサイル発射装置 8 基を破壊。 このうち 6 基は発射準備が整っていたという。 イラン西部デズフルでは、空港で駐機中の F5 戦闘機 2 機を爆撃した。 (jiji = 6-22-25)


イラン外相、米国の空爆を非難 「永続的な結果」もたらすと警告

イランのアラグチ外相は、米国がイランの核施設を攻撃したことを非難し、「永続的な結果」をもたらすと警告した。 アラグチ氏は X (旧ツイッター)への投稿で、「今朝の出来事は言語道断であり、永続的な結果をもたらす」と述べた。 アラグチ氏はさらに「イランは主権、国益、国民を守るため、あらゆる選択肢を保持している」と強調した。 アラグチ氏は、国連安全保障理事会の常任理事国である米国がイランの平和的な核施設を攻撃することで、国連憲章と国際法、そして核拡散防止条約 (NPT) に対して重大な違反を犯したと指摘した。

イランは数十年にわたり核開発を進めてきたが、あくまで平和利用が目的だとしている。 同国にとって核開発は国家的誇りと主権の象徴でもある。 国連の監視機関によれば、核燃料として必要なウランについて、イランほどのウランを保有しながら核兵器計画を持たない国は例がない。 このことが、イランが自らの意図について十分な透明性を保っていないのではないかとの懸念を強めている。 (CNN = 6-22-25)


最新型バンカーバスターは実戦初、搭載した B2 爆撃機はミズーリ州から 37 時間かけイランに

【ワシントン = 阿部真司】 米軍による 21 日のイラン核施設への攻撃では、地下貫通型の大型爆弾「バンカーバスター」が使用された。 数々の実戦を重ねてきた米国の主力精密誘導型巡航ミサイル「トマホーク」も使われた。 「我々が今夜実施したようなことが可能な軍隊は世界のどこにも存在しない。」 トランプ大統領は 21 日、演説で強調した。

攻撃で中心的な役割を担ったのが、地下施設などを攻撃するために開発されたバンカーバスターの最新型「GBU57」で、実戦での使用は初めてとされる。 イスラエル単独では、イラン中部フォルドゥのウラン濃縮工場に致命的な打撃を与えるのは困難で、イスラエル側が米側にイランへの使用を求めていたとされる。 今回、GBU57 はフォルドゥの施設に 12 発着弾したとみられる。 同じ地点に複数回命中させる必要があると指摘されており、どれだけの損害を与えたのかが注目される。

約 14 トンの重量がある GBU57 を唯一搭載できる航空機とされるのが B2 爆撃機だ。 米紙ニューヨーク・タイムズによると、GBU57 を搭載した B2 爆撃機は、米本土の中西部ミズーリ州から約 37 時間かけて、途中で数回の空中給油を受けながらイランに向かい、攻撃したとされる。 攻撃は海からも行われた。 巡航ミサイル「トマホーク」が米海軍の潜水艦から計約 30 発発射され、イラン中部のナタンツ、イスファハンの核施設に命中したとされる。 トマホークは米軍が 1991 年の湾岸戦争で投入して以降、数々の実戦で使用されてきた。 最近では 2017、18 年のシリア攻撃でも使われた。

米軍はイランからの報復攻撃への警戒を強めている。 米政治専門紙ポリティコによると、最新鋭ステルス戦闘機「F35」などが中東の米軍基地に派遣されており、活動を支援する 12 機以上の空中給油機が同行している。 空母は 2 隻態勢で、複数の米海軍の駆逐艦がイスラエル近くの地中海東部に移動している。 NBC ニュースは米ホワイトハウス高官の話として、イランによる報復攻撃の可能性について、「今後 48 時間が特に懸念される」との見方を伝えている。 (yomiuri = 6-22-25)


トランプ大統領、イラン核施設 3 カ所を攻撃 「成功した」と投稿

トランプ米大統領は 21 日、米軍がイランの核施設 3 カ所を空爆したと発表した。 イランに核開発計画を放棄させるため、イスラエルの軍事作戦には加わらずに外交解決を模索してきたが、大きく方針を転換した。 攻撃を受けたのはフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの 3 カ所。 ホワイトハウスで国民向けに演説したトランプ氏は「軍事的に大成功したと報告できる。 イランの主要な核濃縮施設は完全に破壊された」と強調した。 イランの今後の対応によっては、さらなる攻撃を行う用意があるとも語った。

SNS への投稿によると、すでにすべての米軍機はイランの空域外に出ており「安全に帰還途中にある」という。 主要なウラン濃縮施設として知られるフォルドゥについては「搭載できる限りの爆弾を投下した」としている。 「偉大な米国の軍人たちに祝辞を贈る。 世界中でこの任務を遂行できる軍隊は他にない。 今こそ平和のときだ!」と主張した。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、フォルドゥでは、B2 ステルス爆撃機 6 機から米国製の大型特殊爆弾「バンカーバスター」 12 発が投下された。 ナタンズとイスファハンの核施設には、米海軍の潜水艦から巡航ミサイル「トマホーク」 30 発が発射された。 初期評価ではフォルドゥの施設は使用不能になったという。

イラン側が何らかの反撃に出るのは必至だ。 中東に展開する 4 万人以上の米軍の拠点が標的になる可能性があり、交戦が拡大するおそれがある。 トランプ氏は SNS で「イランによる米国へのいかなる報復にも、今晩目撃されたものよりも、はるかに強い力で対処する」と牽制した。 ニューヨーク・タイムズによると、米国は追加攻撃は予定していないが、イランからの報復への対応準備を進めている。

イランのアラグチ外相は 22 日朝、X (旧ツイッター)に、「国連安全保障理事会の常任理事国である米国が、国連憲章、国際法、NPT (核不拡散条約)に対する重大な違反行為を行った」と非難。 「国連憲章に定められた正当な自衛権の行使として、イランはあらゆる選択肢を有する」と訴えた。

国際原子力機関 (IAEA) は 22 日、攻撃を受けたイラン中部フォルドゥの核関連施設など三つの核関連施設について、「現時点で施設外の放射線レベルの上昇は報告されていない」と発表した。 一方、AFP 通信は同日、イラン当局が「(イラン中部の)フォルドゥ核濃縮施設とその周辺コム近郊の人々に、危険はない」と述べたというイラン国営通信の話を報じた。

トランプ政権は、イランの核兵器開発を交渉を通じて阻止しようと、4 月 12 日から 5 回にわたる協議を重ねてきた。 イラン側は核利用は平和目的だと強調し、ウラン濃縮活動の完全な放棄を求める米側の要望には応じなかった。 トランプ氏は交渉期限を 2 カ月に設定しており、この期限が過ぎたとされる 6 月 13 日に、イスラエルがイランの核関連施設などへの攻撃を始めた。 精鋭部隊の革命防衛隊トップや科学者らも殺害した。

トランプ氏は当初、イランとの間でも外交的な解決を優先する方針を明確にしていた。 イランの核開発計画を完全に破壊するため、軍事作戦に踏み切ろうとするイスラエルのネタニヤフ首相に対し、トランプ氏は自制を促していた。 その後、米国とイランの交渉が膠着状態に陥り、最終的にはイスラエルの軍事行動を黙認する形になった。 イスラエルとイランの応酬が続く中、今月 19 日には米国が軍事行動に出るかどうかを 2 週間以内に判断すると表明していたが、2 週間を待たずに攻撃に出た形だ。

ネタニヤフ氏は現地時間 22 日早朝に発表したビデオ演説で、「トランプ大統領は、地球上のどの国も実現してこなかった、世界で最も危険な武器を阻止するために行動した。本当にありがとう」とたたえた。

トランプ氏は大統領選で、中東に軍事介入して抜けられなくなった過去の米政権を批判し、世界各地の紛争を終わらせて国際社会に平和をもたらすと公約した。 海外の戦争への軍事的な介入には消極的な姿勢をとり、主要な支持基盤にも孤立主義的な傾向があった。 今回、空爆に踏み切った背景には、イスラエルによる攻撃でイランが著しく弱体化したため、米国自身が介入しても短期決戦で泥沼化は避けられると計算した可能性がある。

イランと米国は、1979 年にイランで起きたイスラム革命を機に良好だった関係が一転し、その後はイランが米国を「大悪魔」と呼び、米国ではイランが北朝鮮などと並ぶ「悪の枢軸」の一角に数えられるなど、敵対関係が続いてきた。 (ワシントン・下司佳代子、asahi = 6-22-25)


イスラエル、イランの国営放送を攻撃 生放送中断、スタジオに轟音

イスラエル軍は 16 日、イランの首都テヘランにある国営放送局を攻撃した。 一方、イランメディアによると同国は同日夜、イスラエルに向けてミサイルとドローン(無人機)を発射した。 両国による激しい攻撃の応酬が続いている。 午後 6 時半ごろ、国営放送のテレビ番組では、アナウンサーが周囲の爆発音について「侵略者による私たちの母国への音です」と叫ぶように繰り返した。 その直後、攻撃の音とみられる轟音が「ドカーン」とスタジオ内に響き、画面が灰色の煙で覆われた。 建物内部で火災が発生し、黒煙があがる様子も報じられた。 AP 通信はイランメディアの報道をもとに、国営放送の生放送が一時中断したと報じた。

イラン外務省のバガイ報道官は X (旧ツイッター)で、「生放送中の放送局の攻撃は悪質な戦争犯罪だ」と反発。 国連安全保障理事会に対応を求めた。 国際 NPO 「ジャーナリスト保護委員会 (CPJ)」も「イスラエルが生放送中に攻撃したことにがくぜんとしている」と非難する声明を発表した。 一方イスラエル軍は、国営放送局が「軍事利用されていた」と主張。 周辺住民への避難を促した上で攻撃したとした。 同国のネタニヤフ首相は 16 日の記者会見で、イランの国営放送局について「国民から現実を隠蔽する全体主義政権の道具だ」と述べ、攻撃はイランの「プロパガンダ」を妨害するためだったと主張した。

また、ネタニヤフ氏は会見でイランの最高指導者ハメネイ師を殺害する可能性があるか問われ、「戦争計画の詳細を語るつもりはない。 必要なことは何でも行う」と述べ、可能性を排除しなかった。 イスラエルはイランの「核開発計画の阻止」を軍事作戦の目標に掲げている。

国際原子力機関 (IAEA) のグロッシ事務局長は 16 日、英 BBC に、イスラエルの攻撃を受けたイラン中部ナタンズの核関連施設にある遠心分離機が「深刻な被害を受けた可能性が高い」と明らかにした。 遠心分離機は核兵器の原料となる高濃縮ウランの製造のために必要な装置。 施設の地下に設置されていたが、攻撃で停電が発生したことを受け、装置の損傷が生じたとみられるという。 (大野良祐・テヘラン、今泉奏、asahi = 6-17-25)