米アップルと FB、深まる対立 個人情報巡り批判の応酬 個人情報の保護を巡り、米アップルと米フェイスブック (FB) の対立が鮮明になっている。 アップルが 1 月、プライバシー保護策の強化のため、iPhone 上などでアプリが収集するデータを今春から利用者に通知すると発表したことが発端だ。 FB は、アップルに対し独占禁止法違反の提訴も検討していると報じられ、米巨大 IT 同士の異例の対立に発展している。 「我々の生活のすべてにかかわることが集計され、販売されるのが普通で不可避だと受け入れてしまったら、我々は人としての自由そのものを失う。」 アップルのティム・クック最高経営責任者 (CEO) は 1 月 28 日、欧州でのプライバシーを巡るシンポジウムにオンラインで参加し、強い調子で訴えた。 名指しこそしなかったものの、FB を意識しているのは明らかだった。 FB やグーグルは、SNS の無料サービスを提供する一方、利用者の利用履歴や好みなどのデータを集め、企業からターゲティング広告を出してもらうビジネスモデルだ。 FB の広告収入は 2020 年で 841 億ドル(約 8 兆 8 千億円)、グーグルの親会社アルファベットは 19 年で 1,348 億ドル(約 14 兆 1 千億円)で、両社で世界のネット広告市場の 5 割を占めるとされる。 クック氏は「テクノロジーとして成功するのに、数十のウェブサイトやアプリからつなぎ合わせた膨大な個人情報は必要ない。 広告は、それらがなかったころから数十年にわたって存在し、繁栄している。」とも言及。 個人の情報を活用して広告収入を稼ぐ、FB などのビジネスモデルを真っ向から批判した。 アップルは前日の 27 日、FB などの反対で延期していた新たな個人情報の保護策を、今春に導入すると発表。 端末ごとに割り振られた「広告主向け識別子」と呼ばれる情報をアプリ企業が取得する際、利用者に通知を出して同意を求める仕組みだ。 例えば、iPhone 上でアプリを開いたときに、「このアプリが、あなたの利用履歴を他のアプリやウェブサイト上でも追跡することを許しますか」という趣旨の通知が出て、利用者が可否を選べるようになる。 アップルの担当者は取材に対し、「人々に選択肢と透明性を提供する手助けをすることが重要だ」と強調。 同社がプライバシー対策の説明で、新たな通知の例として表示したアプリは「フェイスブック」だった。 FB 側は、個人情報の保護対策を矢継ぎ早に打ち出すアップルに危機感を募らせる。 マーク・ザッカーバーグ CEO は 27 日の決算発表の電話会見で、「アップルは、自分たちが支配的なプラットフォームを持っているという立場を使い、我々や他のアプリを邪魔している」と異例の批判を口にした。 米ネットメディア「ジ・インフォメーション」は 28 日、FB がアップルに対し、独禁法違反で訴訟を起こす準備をしていると報道。 FB は取材に対し、訴訟を巡る臆測にはコメントしないとする一方、「アップルは、競争を阻害する行動をとっている。 (同社のアプリ配信サービスの)『アップストア』をコントロールできる力で自分たちに有利になるように使い、アプリ企業や小規模な企業を犠牲にしている」と不満をあらわにした。 アップルと FB の対立の背景にあるのは、両社のビジネスモデルの根本的な違いだ。 アップルは、iPhone や iPad などの機器を売り、アプリや有料の音楽、動画サービスなどでもうけるビジネスだ。 20 年 10 - 12 月期の四半期だけで、売上高は前年同期比 21% 増の 1,114 億ドル(約 11 兆 7 千億円)、純利益は同 29% 増の 287 億ドル(約 3 兆円)とそれぞれ過去最高に達した。 一方の FB やグーグルは、無料サービスを提供する一方で、利用者の情報を得て、それを元にした広告収入を得ている。 アップルの機器は全世界で 16 億 5 千万台に上り、FB やグーグルはその機器上で無料のサービスを提供する「共存関係」がこれまでは成り立ってきた。 だが、FB からは 16 年に最大 8,700 万人の個人情報が流出し、大きな批判にさらされた。 プライバシー保護への関心が高まるなか、アップルは自社の機器上で FB などが利用者の情報収集を行うことへの透明性の向上策を強めている。 FB 側は自らのビジネスの根幹にかかわるとみており、両社の対立が鮮明となった。 FB 同様に無料のサービスを提供して広告費で稼ぐグーグルは、iPhone などの機器上でグーグル検索などを初期設定にしてもらうため、アップルに毎年 100 億ドル(約 1 兆 400 億円)前後の巨費を支払っているとされ、両社は協力関係にある。 ただ、両社は、グーグルは「アンドロイド」、アップルは「iOS」でスマートフォン市場の基本ソフトの市場を分け合う最大のライバルでもある。 アップルが今回、基本ソフト「iOS」でプライバシー保護の対策をさらに強めたことで、グーグルも同様の対策を迫られる可能性がある。 グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの英語の頭文字から GAFA (ガーファ)とも呼ばれる 4 社に対しては、米議会や当局から、市場での圧倒的な力を使って競争を阻害しているとの批判が強い。 グーグルと FB は昨年それぞれ、米当局から独禁法違反で提訴され、1998 年の対マイクロソフト訴訟以来の歴史的な局面を迎えている。 消費者の個人情報をどう守るか、ネットの利用情報はどこまで収集してよいのか、という利用者個人にかかわる重要な論点を含んでいるだけに、米社会の関心もさらに高まっている。 (サンフランシスコ = 尾形聡彦、asahi = 1-31-21) 2021 年、インターネットと IT は大きな転換期へ
2021 年を迎えた現在、インターネットと IT の世界は大きな転換期を迎えている。 「インターネットとデジタル技術のイノベーションで世界を変える」という目標は現実のものとなったが、その結果として巨大テクノロジー企業に対する政府の規制(レギュレーション)が本格化し、企業や資本家の行動が倫理的(エシカル)であるかどうかが問われるようになったのだ。 その象徴となる出来事が 2020 年に起こった。 Google と Facebook が反トラスト法(独占禁止法)で訴えられたのである。 2020 年 10 月 20 日、米司法省は Google を反トラスト法違反の疑いで提訴した。 さらに同年 12 月 16 日、米国 10 州が Google を反競争的行為の疑いで提訴。 翌 12 月 17 日には、米国 38 州が Google を反競争的行為の疑いで提訴した。 複数の大型訴訟により、Google は自らのビジネスモデルの正当性を法廷で証明することを迫られている。 Google 側は司法省に訴えられた当日に反論する Blog 記事を公開するなど闘志まんまんだが、同社の姿勢は政府と Google との争いが長期化する可能性を示しているように思える。 一方、2020 年 12 月 9 日には Facebook に対する 2 件の大型訴訟が始まった。 米国の 46 の州とグアム地区およびワシントン D.C. の各司法長官 48 名が Facebook を独占禁止法(反トラスト法)違反の疑いで提訴した。 同じ日、米国連邦取引委員会 (FTC) も同じ法律に基づく訴訟を起こしている。 Google と Facebook への風当たりは、反トラスト法に基づく大型訴訟だけでは語り尽くせない。 例えば人権団体アムネスティインターナショナルは、2019 年 11 月に Google と Facebook の広告主導型のビジネスモデルは大規模監視に基づくものであり、「両社のビジネスモデル自体が人権侵害である」と告発する報告書を公開している。 Google と Facebook は、インターネット上の情報流通で圧倒的に有利な立場にあるが、人々が望まないやり方でその立場と能力を利用して広告収入に結びつけていると批判しているのである。 顔認識技術への批判、倫理的な AI の議論が盛んに Google と Facebook への訴訟の背後にあるものは、「技術 & 経済」と「倫理 & 人権」の両方の領域にまたがる問題が顕在化してきていることがある。 その典型例が顔認識技術の問題だ。 米国で顔認識技術への批判の声が急激に高まっている。 MIT メディアラボ、ACLU (アメリカ自由人権協会)、そして国立研究所 NIST (米国標準技術研究所)がそれぞれ現状の顔認識技術には人種差別や性差別のバイアスがあるとの調査結果を公表した。 多くの顔認識技術は白人男性を高精度で識別できたが、黒人女性の識別では大きく成績が劣っていたのである。 特に NIST の調査は 189 種類の顔認識ソフトウェアを対象にする大規模な調査だった。 これらの調査により、「顔認識技術には問題がある」との米国内の世論が高まった。 さらに 2020 年に米国各地で盛んになった BLM (Black Lives Matter) 運動と相まって、「顔認識技術を禁止せよ」との世論が高まった。その背景には、人種差別や性差別のバイアスを含む顔認識技術を警察などが利用することで、結果的に黒人に不利となる誤認逮捕などが発生しかねないという懸念がある。世論を受けて、IBM、Amazon、Microsoftは顔認識技術を警察などへ提供するビジネスから撤退した。 顔認識技術への批判の高まりは、Facebook も直撃している。 写真タグ付けのため同意を得ず顔認識技術を使ったことが米国イリノイ州の法律に違反したとする集団訴訟を受けて、Facebook は 2020 年 7 月、同州のユーザーに 1 人あたり 200 - 400 ドル、総額 6 億 5,000 万ドル(約 680 億円相当)と巨額の和解金を支払うことで合意した。 以前の Facebook の機能に、投稿した写真に対して顔認識技術を適用して「知り合いかもしれない人物」のタグ付けをサジェストする機能が実装されていたことを覚えている人もいるだろう。 この機能は日本のユーザーにも提供されていた。 しかしある時期からこの機能は見かけなくなった。 その背景には顔認識技術への批判の声があった訳である。 Google 内部の倫理的 AI (人工知能)研究チームの共同リーダーだった Timnit Gebru 氏が 2020 年 12 月に Google から事実上解雇された事件は大きく報道された。 Gebru 氏はエチオピアにルーツをもつ黒人女性であり、前述した顔認識技術に潜む差別問題に関する研究実績を持ち、Apple と Microsoft Research で勤務した経験を持つ。 Gebru 氏のような研究者を雇用していることは Google が倫理的 AI に本気で取り組んでいることを対外的にアピールできる材料となるはずだった。 ところが Gebru 氏は突然、解雇されてしまった。 Google 社内で準備を進めていた「大規模言語モデル」の危険性を指摘する論文の内容に関して上司と意見が合わなかったことが理由ではないかと見られている。 現在「AI」と呼ばれる技術の多くは現実世界のデータを学習して作られたものだ。 その現実世界のデータは、現実世界の差別が含まれており、AI にも差別は反映されている。 このバイアスを取り除くことは簡単ではなく、おそらくは技術と倫理の両面で深い洞察が必要となる分野である。 米国の巨大テクノロジー企業はこの課題を解決しなければ先に進めない状態になっているのだ。 イノベーションを追求する段階から、あるべき社会を議論する段階へ 「規制(レギュレーション)が本格化」、「倫理的(エシカル)な技術」という話題を聞いて抵抗感を持つ人も多いかもしれない。 「自分が見聞きしている話は『イノベーションをもっと追求しよう』という論調だ」、「規制はイノベーションを阻害するので良くないことだ」、「技術は善悪とは中立である」、「これでは中国の技術に負けてしまう」といった意見を持つ人もいるだろう。 特に 2021 年を迎えようとしている日本では「もっとイノベーションを!」という論調はよく見かける。 また「デジタル」という言葉もポジティブな意味で多用されている。 IT 分野の重要キーワードとして DX (デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)という言葉もよく聞く。 日本の政府は、管総理肝いりのプロジェクト「デジタル庁」を 2021 年内に設立すべく動いている。 「日本は IT 後進国だったが、これから巻き返すんだ」と意気込んでいる人もいることだろう。 レギュレーションやエシカルという概念は、デジタル技術でイノベーションを追求する考え方そのものを否定する訳ではない。 民間企業や官公庁がデジタル技術を追求することは、私たちの競争力を維持、向上する上で必要不可欠の取り組みであることは間違いない。 ただし、世界的なトレンドとして「デジタル技術によるイノベーションを推進すれば世の中が良くなるだろう」と無邪気に信じる時期はもう終わっている。 GAFA (Google、Apple、Facebook、Amazon) というキーワードに代表される巨大 IT 企業は十二分に成功したが、これらの企業のやり方を放置すれば、むしろ私たちの社会を悪い方向に導く可能性があると懸念する見方が強まっているのだ。 記事冒頭で記したように、特に Google と Facebook の 2 社への風当たりが強い。 両社はインターネット上の情報流通を支配する立場にあるからだ。 それだけでなく、両社は自社のライバルになりうる有力なスタートアップ企業を次々と買収してきたが、このことが新たなイノベーションを阻害しているとの見方も出ている。 「Facebook 以降、スタートアップが大企業に成長した事例が出てこないではないか」との論調もある。 記事冒頭に記した反トラスト法訴訟では、この点について論戦が繰り広げられる可能性が高い。 GAFA の成功とは裏腹に、米国のマクロ経済指標は改善せず、米国に住む大勢の人々は豊かさを実感できていない。 Google のビジネスモデルはメディアの再編をうながし、米国では多くの新聞社が閉鎖に追い込まれた。 SNS 上のフェイクニュースやヘイト言説の拡散が世論に大きな影響を与える一方、伝統的ニュースメディアは弱体化し、特に米国では地方紙が激減した。 この状況を「民主主義の危機」と見る声すらある。 巨大テクノロジー企業が引き起こしたイノベーションは、本当に世の中を良くしているのだろうか? こうした疑問点を記した書籍が日本でも登場しはじめている。 例えばラナ・フォルーハー『邪悪に堕ちた GAFA』、西村●(= 土の下に口)雄『イノベーションは、万能ではない』がある。 経済界も「株主利益の最大化」から脱却を目指す デジタル技術以外の分野からも、時代の変わり目のサインが登場している。 2019 年、米国の経営者団体ビジネス・ラウンドテーブルは「ステークホルダー資本主義」を提唱した。 「企業の役割は株主利益の最大化である」という考え方から脱却し、顧客、従業員、取引先、そして社会と複数のステークホルダーのために企業活動を進めようという考え方だ。 この考え方は 2020 年 1 月のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)でも取りあげられた。 もうひとつの要注目キーワードは「グリーン」である。 日本の 3 大メガバンクを含む世界の大手金融機関や機関投資家は、今や投資先に環境への配慮を求めるようになった。 地球温暖化を推進する二酸化炭素排出量を減らす取り組みをしない企業は、今後の資金調達が難しくなる。 自動車産業が排ガス規制や安全対策への要求に応えてきたように、Google や Facebook に代表される巨大テクノロジー企業も、その影響力に見合った形で社会との折り合いを付けることが求められている。 反トラスト法に基づく訴訟は、その最初のステップにすぎない。 訴訟は複数年にまたがることは間違いない。 そして何年か先に、現在の巨大テクノロジー企業がどのような妥協を受け入れるのか。 それはおそらく日本で活動する人にとっても大事な話になるだろう。 「世界を変える」 - - これはシリコンバレーのスタートアップの合い言葉だった。 インターネットとデジタル技術によるイノベーションは、たしかに世界を変えた。 そして、成功した巨大テクノロジー企業は、世界を変えてしまった責任と向かい合う時を迎えている。 (星暁雄、Internet Watch = 1-2-21) 米当局、FB を独禁法違反で提訴の見通し 米紙報道 米連邦取引委員会 (FTC) や 40 州以上の司法当局が 9 日にも、反トラスト法(独占禁止法)違反で米フェイスブック (FB) を提訴する見通しであることがわかった。 米ワシントン・ポスト紙などが報じた。 訴訟では、FB に対して企業分割を求める見通しだといい、1998 年のマイクロソフトに対する訴訟以来の大型案件になる可能性がある。 報道によると、ニューヨークなど各州が準備する訴訟では、FB が 2012 年に写真投稿アプリ「インスタグラム」、14 年にメッセージアプリ「ワッツアップ」を買収したことで競争を阻害したとして、両社の分離を含めた措置などを求める見通しだという。 また、FB がライバル企業に対して、FB 上のデータへのアクセスを不当に制限したことも問題視しているという。 これとは別に、FTC も 9 日、FB に対して独自の反トラスト法違反の訴訟を起こす見込みだという。 同紙などは、提訴内容は各州と似た内容になる部分が多いとしている。 FB は、インスタグラム、ワッツアップなどを含むグループ内のアプリの利用者が月間で約 32 億人に達し、世界で大きな影響力を有する一方、プライバシーの保護対策が不十分だとして問題になっている。 米巨大 IT 企業を巡っては、米司法省などが今年 10 月、グーグルを反トラスト法違反で提訴。 検索事業での同社の独占的地位を問題にする一方で、事業分割については可能性を示唆するにとどまっていた。 今回の FB への訴訟は、より直接的にインスタグラムなどの切り離しを求める内容になりそうだ。 米司法省による 98 年のマイクロソフトに対する訴訟では、一審でいったん分割命令が出たが、控訴審などを経て、その後和解に至った。 (サンフランシスコ = 尾形聡彦、asahi = 12-9-20) Google 米司法省の提訴に反論 「提訴には重大な欠陥」 アメリカ司法省に提訴されたことを受け、IT 大手・グーグルが反論した。 司法省は提訴について、グーグルがモバイル端末やパソコンで検索エンジンの初期設定になるよう契約を結ぶなど、ほかの検索エンジンとの競争を妨害しているとしている。 これに対しグーグル側は声明で、「提訴には重大な欠陥がある」と反論した。 声明では、「利用者は強制されたからではなく、自ら選んでグーグルを使っている」うえ、「利用者は検索エンジンだけで情報などを探しているのではなく、今や SNS やショッピングサイトなど手段は数多くある」と主張している。 司法省は 2019 年から、巨大 IT 企業を対象に調査を進めていて、「調査はこれで終わりではない」として、ほかの企業への法的手段の可能性も示唆している。 グーグルの反論のポイント 人々はグーグルを「選んで」使っていると、ほかのソフトがいいのであれば変更するのは簡単だとしている。 また、情報や商品を探す手段は数多くあるとして、今ではツイッターやインスタグラム、アマゾンもあり、こういったことを主張している。 また、この訴訟によって、質の低い検索サービスを人為的に押し上げて、電話料金を値上げするということになれば、結果的に、消費者が利用したいサービスが手に入れづらくなると述べている。 (FNN Prime = 10-22-20) ◇ ◇ ◇ 米司法省、グーグルを独禁法違反で提訴 米メディア報道 MS 以来 20 年ぶり大型訴訟 米司法省は 20 日、米 IT 大手グーグルを独占禁止法(反トラスト法)違反の疑いで連邦地裁に提訴した。 複数の米メディアが報じた。 司法省は、グーグルがインターネット検索事業などで市場支配力を利用して不当に競争を妨げているとして違法行為の差し止めを求めたとみられる。 米司法省の独禁法訴訟としては、1998 - 2002 年の米 IT 大手マイクロソフト (MS) 訴訟以来、約 20 年ぶりの大型訴訟となる。 グーグルが司法省の訴えに反論するのは確実で、訴訟の決着まで数年以上を要する可能性が高い。 司法省の動きは、インターネットの普及を背景に急成長してきたグーグルやアップル、フェイスブック、アマゾン・コムの「GAFA」と呼ばれる米 IT 大手にビジネスモデルの転換を迫ることになりそうだ。 米国ではネット交流サービス (SNS) 大手のフェイスブックで最大 8,700 万人分の個人情報が流出し、16 年米大統領選で不正利用されていた問題を受け、個人データの独占など GAFA の強力な市場支配力への警戒が強まっていた。 司法省は 19 年 7 月、グーグルに対し独禁法違反で調査を開始。 全米 50 州・特別区と協力して調査を進めていた。 一部州政府も司法省の提訴に加わるとみられる。 一方、米下院司法委員会の反トラスト小委員会は 10 月 6 日、GAFA が独禁法に違反しているとの報告書を公表し、会社分割や独禁法改正による規制強化を提言した。 グーグルについては、圧倒的なシェアを握るネット検索で、検索画面に自社サービスを優先表示するなどして独占体制を強めていると指摘していた。 (ワシントン・中井正裕、mainichi = 10-21-20)
アップル、FB からの批判受け異例対応 手数料 3 割免除 米アップルは 25 日、料理教室やフィットネスクラスといった、フェイスブック (FB) などのアプリ上で提供されるオンラインイベントについて、今年末まで 30% の手数料を免除することを明らかにした。 アップルが例外を設けるのは珍しく、FB の批判に対処した形だ。 FB は 8 月、コロナ禍で対面サービスができない小規模企業向けに、FB のアプリ上で有料のオンラインイベントを運営できるサービスを始め、1 年間は FB 側の手数料を無料にした。 ただ、FB のアプリは、アップルや、グーグルのアンドロイドの機器上で動いており、利用者への有料課金の際は両社への手数料が必要だ。 FB はコロナ禍の企業支援だとして、両社に手数料免除を求めたところ、グーグルが応じる一方、アップルは拒否。 アップルの機器上では、通常通り 3 割の手数料をとられる状態だったが、同社は 25 日、年末までの手数料免除へと転換した。 民泊仲介大手の「エアビーアンドビー」にも同様の措置を認める。 アップルは今回、FB などに譲歩したものの、3 割の手数料を巡って係争中の米エピックゲームズとは激しい対立を続けている。 (サンフランシスコ = 尾形聡彦、asahi = 9-26-20) Apple、Epic の App Store アカウントを停止 Unreal Engine は無事 米 Apple は 8 月 28 日(現地時間)、警告通り米 Epic Games の iOS および macOS の App Store アカウントを停止した。 警告ではすべてのアカウントを停止するとしていたが、裁判所命令に従い、Epic のゲームエンジン「Unreal Engine」を管理する別アカウントは残した。 米 9TO5Mac が同日、Apple のコメントを添えて報じた。 App Store アカウントの停止により、既にアプリストアから削除されている「Fortnite (フォートナイト)」を含むすべての Epic 製品がアプリストアから消えた。 ユーザーは、インストール済みのゲームはプレイできるが、アップデートやゲーム内コンテンツの購入はできなくなった。 Apple は 13 日、Epic が Fortnite に App Store のガイドラインに違反する新機能を追加するアップデートを行ったため、このアプリを App Store から削除し、ガイドライン通りアプリを修正するための 14 日間の猶予を与えた。 だが、Epic は同日中にこれを独禁法違反だとして提訴した。 Apple は一貫して Epic がガイドラインを順守すればアプリは復活させるし、アカウントの停止もしないと説明しているが、Epic はこれに応じず、ユーザーを巻き込むアンチ Apple キャンペーンを展開している。 Apple は 9TO5Mac に送った声明文で「Epic のアカウントを終了しなければならなくなり、残念だ。 われわれは長年、Epic のチームとゲームの立ち上げやリリースで協力してきた。 裁判所は Epic に対し、係争中に App Store のガイドラインに準拠するよう勧めたが、Epic はこれを拒否し、ガイドラインに違反する Fortnite のアップデートを何度も試みた。 これは App Store のすべての開発者にとって不公平なことであり、ユーザーを争いに巻き込む行為だ。 われわれは Epic と将来また協力できることを願っているが、残念ながら今は不可能だ。」と語った。 この声明文について Epic のティム・スウィーニー CEO は自身の Twitter アカウントで「Apple の声明は率直ではない。 Epic のアカウントを停止する必要はなかったのに、停止することを選んだ。 Apple はわれわれが何度もレビュープロセスをスパムしたと言うが、そうではない。 3 回アップデートを送ったが、その中の 2 つはバグ修正で、あと 1 つはメモをつけたシーズン 4 のアップデートだった。」と語った。 ツイートに添付されているメモによると、「Apple が(フォートナイトの)シーズン 4 開始に間に合うようアプリを復活させたい場合のために」申請したとある。 だが、Apple がガイドライン違反だとしている新機能はそのままだ。 Epic 対 Apple 訴訟の初審理で判事は、Unreal Engine を締め出すのは「報復的な印象がある」として、Epic 側に "傾いた" としていた。 判事は同日中に、App Store のアカウント停止は認めるが、Unreal Engine を管理するアカウント停止は認めない命令を下した。 Epic 対 Apple の訴訟の次の審理は 9 月 28 日午前 9 時半から、前回と同様 Zoom で行われる予定だ。 (佐藤由紀子、ITmedia = 8-29-20) ◇ ◇ ◇ アマゾンびいき? 手数料 30% のアップルに公開書簡 米アップルがアプリ配信サービス「アップストア」で有料購入に課している 30% の手数料を巡り、手数料を徴収されている企業側からの不満が広がっている。 20 日にはニューヨーク・タイムズ紙など米主要メディアが参加する団体が、優遇措置を受けるための条件を問う公開書簡をアップルのティム・クック最高経営責任者 (CEO) に送った。 「アマゾンが(優遇措置を受けるために)満たしている条件を明確に定義して欲しい。」 同紙やワシントン・ポスト紙、ウォールストリート・ジャーナル紙などが参加する団体「デジタル・コンテント・ネクスト」の代表は 20 日、クック CEO にこう求めた。 アップルの「アップストア」で配信されるアプリは、有料アプリの販売代金やアプリ内の販売に 3 割の手数料がかかる。 毎月の購読料などサブスクリプションの場合は、1 年目は 30%、2 年目以降は 15% だ。 ただ、米アマゾンには、優遇措置がある。 コンテンツ団体によると、アップルは 2017 年、アマゾンの動画サービス「プライム・ビデオ」に新規会員が入った場合の購読料の手数料を、通常の 30% から 15% に減免することで合意。 さらに、既存会員の購読料については、15% の手数料自体を免除することでも合意していたという。 アマゾンへの優遇措置は 7 月末、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの、GAFA とも呼ばれる大手の 4 首脳がそろって証言した米議会公聴会でも問題になった。 議員から、アマゾン同様の優遇措置を他社が受けられるのかどうかを問われたクック CEO は「条件を満たせば、誰でも使える」と説明。 20 日の公開書簡は、この発言を受けて、その「条件」の明示を求めるものだ。 書簡や同団体の発表文書には、一部の企業だけが優遇される不満がにじむ。 手数料を巡っては、世界的な人気ゲーム「フォートナイト」を手がける米エピックゲームズが今月、これを回避する独自の課金システムの運用を始めた。 アップルは規約違反だとして、フォートナイトをアップストアから削除。 エピック側は「高い手数料は、競争を阻害する」などとして米連邦地裁に提訴し、対立が広がっている。 スウェーデンに本拠を置く音楽配信の世界的大手「スポティファイ」も昨年 3 月、「アップルミュージック」を展開するライバルのアップルが、スポティファイなど他の音楽配信に 3 割の手数料を課すのは不公平だと異議を申し立てた。 欧州連合 (EU) は今年 6 月、競争法違反の疑いがあるとして本格調査に入っている。 時価総額が 19 日に 2 兆ドル(212 兆円)を突破し、世界最大の企業になっているアップルの機器は、世界で15 億台以上に上る。 その機器上で使えるアプリを配信する「アップストア」で成功できるかどうかは、世界の多くの企業の業績に影響するようになっている。 それだけに、手数料の高さに加え、独占的な地位を使ってアップルが自社アプリを推奨しているといった指摘や、アップルが「門番」として他社の運命を左右しているとの批判が、米国だけでなく世界で高まっている。 クック CEO は 7 月末の米議会公聴会で「アプリの 84% は無料配信。 手数料の対象は 16% だけだ。」と理解を求めたが、異を唱える企業が増えている状況だ。 (サンフランシスコ = 尾形聡彦、asahi = 8-21-20) ◇ ◇ ◇ 「フォートナイト」のアプリを削除 アップルとグーグル 米アップルとグーグルは 13 日、人気戦闘ゲーム「フォートナイト(米エピックゲームズ)」を両社のアプリ配信サービスから削除した、とそれぞれ明らかにした。 両社が課す手数料を回避するため、エピックが独自の課金システムを導入したことが規約違反だとした。 エピックは同日、アプリ配信を独占した上での高率の手数料は競争を妨げるなどとし、まずはアップルを米カリフォルニア州の連邦地裁に提訴した。 アップルとグーグルは、それぞれのアプリ配信サービス「アップストア」、「グーグルプレイ」で、アプリ販売やゲーム内課金に 30% の手数料を徴収している。 とくに規約が厳しいアップルに対しては、アプリ開発者らから「独占的な立場を利用した『アップル税』だ」と批判が出ていた。 エピックは 13 日、手数料を回避することで消費者に安くサービスを提供できるとして、独自の課金システムの運用を開始。 アップルがアプリ削除を決めたことを受け、提訴を公表した。 その後、グーグルもアプリ削除を明らかにした。 アップルは 1984 年にパソコン「マッキントッシュ」を売り出した際、ジョージ・オーウェルの小説「1984」をモチーフにした CM を制作。 当時コンピューター市場を支配していた米 IBM を想起させる独裁者に対し、アップルは、独占を打ち破る挑戦者として描かれていた。 エピックは訴状の冒頭でこの CM に触れ、「アップルはかつて自身が非難していた、市場を支配し、競争を妨げ、革新を押さえつける巨獣となってしまった」などと訴えた。 アプリ削除について、アップルは「エピックは、あらゆる開発者に適用される規約を意図的に破った」などと説明した。 ただ、アップル、グーグルとも、アプリの復帰に向けてエピックと協議を続けるとしている。 提訴を含むエピックの動きは、スマートフォンやタブレット端末向けアプリの配信で、世界シェアを二分する巨大プラットフォーマーに対し、推定 3 億 5 千万人もの利用者がいる超人気ゲームの開発会社が反旗を翻した形で、デジタル市場規制をめぐる議論にも大きく影響しそうだ。 米議会が 7 月、アマゾンとフェイスブックを含めた米大手 IT 4 社を呼んで開いた公聴会でも、アプリ配信は焦点の一つとなった。 音楽配信サービスのスポティファイ(スウェーデン)は、アップストアの手数料のせいで、アップル自身が展開する競合サービスよりも不利になっていると主張。 これを受けて、欧州連合 (EU) の当局が競争法違反の疑いで本格調査に入っている。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 8-14-20) 「グーグル、手数料取りすぎ」ネット広告規制に動く政府 政府がネット広告規制の検討に乗り出した背景には、米グーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー (PF)」と呼ばれる巨大 IT 企業の寡占状態が強まっていることへの懸念がある。 広告主やメディア側だけでなく、ネット利用者の不満の声を受けた規制も検討していく方針だ。 世界のネット広告、5 割以上がグーグル & FB 現在、ネット広告市場の多くを占めるのが「運用型広告」と呼ばれる、リアルタイムの入札などで広告の掲載場所や価格が決まる方法だ。 ネットの利用者が広告枠があるウェブサイトを訪れると、ウェブサイトと広告主の間を多くのネット広告業者が仲介し、株式取引のように瞬時に入札が行われて広告が表示される。 多くの業者が参入し、取引の流れは複雑化している。 そんな中で、グーグルやヤフーなどは 1 社でこの仲介の多くを行えるシステムを構築している。 様々なウェブサイトに広告を仲介するほか、グーグル傘下のユーチューブやヤフーのポータルサイトなど、利用者の多いウェブサイトを自社でも抱えており、そこで広告を表示できる強みもある。 政府の資料によると、世界のネット広告売上高の 5 割以上をグーグルとフェイスブックの 2 社が占める。 国内のシェアは不明だが、グーグルのシェアは圧倒的に高いとみられている。 政府、情報開示求める方針 一方で、広告の価格や質の透明性についてはかねて、広告主と、広告枠に広告を掲載するメディア側の双方から懸念の声が出ていた。 公取委の調査では、広告主・メディアともに約 5 割前後が「サプライチェーンの透明性に問題がある」と回答した。 政府が 16 日にまとめた規制に向けた中間報告では、「メディアの取り分が広告主が払っている費用の 3 割を切っているとの見解もある」として、PF などが手数料を取りすぎているのではないかと指摘した。 メディア側には、記事や動画などにコストをかけて利用者の閲覧数を伸ばそうとしているのに、広告枠の価値が上がらなければ経営基盤が立ち行かなくなるとの懸念がある。 広告主側からは、閲覧数が水増しされていたり、不適切なサイトに広告が掲載されていたりなど、広告の質が担保されていないとの不満もある。 17 年には電通が、ネット広告で 1 億円強の不正請求をしていたとして広告主らに謝罪している。 政府は中間報告で示した規制案で、広告の落札価格の開示、広告の質の担保のためのモニタリング、第三者によるテレビの視聴率のような広告効果の測定などを PF 側に受け入れるよう求めていく方針を打ち出した。 利用者も不満 「煩わしい」 ネット広告については、利用者からも不満を訴える声が出ている。 消費者庁が 5 月に発表した調査では、検索サイトの利用者の 7 割が、検索した言葉や商品などから利用者ごとの興味を分析して表示される「ターゲティング広告」について「煩わしい」、「どちらかというと煩わしい」と答えた。 そのため、政府は中間報告で、グーグルなどが利用者に対してターゲティング広告を行うことを、初期設定(デフォルト)にすることを禁止する案を打ち出した。 ただ、ターゲティング広告は多くの広告業者や広告主、メディアの収益になっている。 業界の反発も大きいとみられ、実現するかは不透明だ。 政府は他に、データを使われないようにできる手段の明確な表示や、利用者が広告用のデータ提供を拒否した場合でも、サービスの利用を継続できるよう求めることなども検討している。 利用者のデータ保護については、18 年に米フェイスブックが個人に説明しないまま大量のデータを外部と共有していた問題が発覚。 16 年の米大統領選にも利用されたと指摘され、各国は規制を強めている。 欧州の一般データ保護規則 (GPDR) では、企業がターゲティング広告に利用する、ウェブの閲覧履歴を管理するデータ「Cookie (クッキー)」を取得する際、利用者の同意を得ることを義務づけている。 欧州のほとんどのウェブサイトでは現在、最初に訪れた時に「クッキーの利用に同意しますか」というボタンが表示される。 ただ、同意する手段が用意されたとしても、消費者が利用条件などをよく読んで同意しているとは限らないとの指摘も根強い。 政府は消費者の同意があったとしても、ターゲティング広告が認められない場合の指針を整理していく方針だ。 (栗林史子、asahi = 6-16-20) ◇ ◇ ◇ 巨大 IT 規制法が成立 ネット通販で公正性高まるか プラットフォーマー (PF) と呼ばれる巨大 IT 企業を規制する新法案「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が 27 日、参院本会議で可決、成立した。米アマゾンやグーグル、アップル、国内では楽天やヤフーが対象となるとみられ、出店者との取引の公正性・透明性を高めるよう促すのが狙いだ。 年度内の施行をめざす。 新法では、国民生活や経済への影響が大きく、売上高などが一定規模ある企業を政令で「特定デジタルプラットフォーム」と規定。 まずはモール型ネット通販やアプリストア運営会社を対象とする。 対象企業には、出店者との契約を解除した場合に判断基準を明かすことや、契約変更をする場合は事前に知らせることなどを義務づける。 こうした取り組みの状況を、年に 1 回経済産業相に報告させる。 違反した場合、改善命令や勧告などの行政処分をする。 最近は PF による市場の寡占化が進み、PF の提供するサービスに商品販売を頼る出店者の権利をどう守るかが課題となっている。 (伊藤弘毅、asahi = 5-27-20) 前 報 (10-21-19) アマゾンジャパン、取引先 1,400 社に計 20 億円返金へ ネット通販大手・米アマゾンの日本法人「アマゾンジャパン(東京)」が、取引先約 1,400 社に計約 20 億円を返金する方針を決めたことがわかった。 不当な協賛金を集めたなどの疑いで調べていた公正取引委員会に対し、損害相当分を取引先に返金することを盛り込んだ自主改善計画を提出し、10 日付で認定を受けた。 そのうち二つは取引先に金銭を要求するもので、同社は自社サイトでの販売価格をライバルサイトの価格にあわせて自動的に変動させているが、これによりアマゾンが想定している利益に達しなかった場合、利益補填を要求していた。 また、同社のシステムへの投資名目で仕入れ額の数 % - 10% の支払いを求める「ベースコープ」と呼ばれる協賛金制度を 2018 年に始め、参加を求めていた。 ほかの三つは、減額や返品などの強要で、取引先が仕入れ値を下げると、アマゾンがすでに抱えている在庫個数分の値下げ相当額を次の仕入れ時に減額するよう求める「在庫補償契約」を結んでいた。 また、アマゾンのサイト内で商品を目立たせるバナー広告を出すためなどに取引先が仕入れ値の一定割合を積み立てる「共同マーケティングプログラム」で、一定期間使われない残高を無効にしていた。 このほか、アマゾン側が「過剰」と判断した在庫を返品基準の合意なしに返していた。 アマゾンは公取委に認定を受けた計画で、これらの行為を取りやめて今後行わないことやコンプライアンス態勢の整備、履行状況を今後 3 年間、公取委に報告することを約束。 アマゾンへの取引依存度が高く、こうした要求に応じていた約 1,400 業者に対する損害相当分を約 20 億円と算出して返金するとした。 公取委はこれまで、アマゾンの一連の行為が、取引先に対して優位な立場を利用し、不当に不利益な取引を受け入れさせることを禁じる独占禁止法の「優越的地位の乱用」にあたるとみて調査を実施。 アマゾンは、自主的な改善計画が認定されれば課徴金納付命令などの行政処分が見送られる「確約手続き」にのっとり、計画を提出していた。 アマゾンは 10 日、取材に「公取委との協力的かつ建設的な議論の結果、取引先企業における料金体系を一部変更することを決定した。 引き続き全ての取引先企業とオープンかつ適切な対話に取り組んでいく。」とコメントした。 確約手続きは 18 年末に導入された制度で、認定は今回で 5 例目。 公取委はアマゾン側と、どの程度の改善措置を提示すれば認定に値するのか、水面下で協議を続けてきたという。 公取委としては巨大プラットフォーマーに対し、違反行為の排除や返金を取り付けた形になる。 小売業界に詳しい西村尚純・日本経済大学教授は「アマゾンにとって 20 億円は大きな痛手ではないだろうが、国内業者が苦しんでいた側面が明らかになった。 メーカーや卸業者はいま、百貨店や大型スーパーに代わり、EC (電子商取引)サイトに頼らざるをえない。 他の大手 EC 業者が襟を正すきっかけになるのではないか」と話した。 公取委の担当者は「多種多様な商品が安く買えるという意味では、消費者のためになるが、不正な形では長期的な継続性はない。 確約計画でベンダー(納入業者)との取引関係が公正化されれば、ひいては消費者の利益にもつながる。」と話す。 (田中恭太、asahi = 9-10-20) |