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「審判とプレーヤーが同じようなもの」 世界で強まる巨大 IT 規制

プラットフォーマーと呼ばれる巨大 IT 企業の強大な力は、時に市場競争にゆがみを生じさせる。 米連邦地裁がグーグルのネット広告事業の一部を反トラスト法(独占禁止法)違反だと認定した判決は、その構造の一端を明らかにした。 グーグルはネット広告市場を形づくる、広告を「買う側」、「売る側」、「取引所」のすべてに関与している。

その状況を、ニッセイ基礎研究所の松沢登研究理事は「審判とプレーヤーを同じ人が務めるゲームのようなもの。 グーグルが必ず勝ってしまい、自由競争ではない。」と説明する。 広告市場で自由競争がなくなれば、広告料が下がりにくく、広告費用が製品価格に跳ね返る可能性がある。 消費者は無関係ではいられない。 グーグルは、中核の検索サービスをめぐる別の裁判も係争中だ。

米連邦地裁は 2024 年 8 月、グーグルの検索サービスが反トラスト法に違反しているとの一審判決を下した。 米司法省は、グーグルが閲覧ソフト「クローム」と、スマートフォンの基本ソフト (OS) 「アンドロイド」を所有していることが、違法な独占状態の温床だと指摘。 クロームの売却を含む是正策を求めている。 この審理は、4月中に連邦地裁で始まる予定だ。

司法省は、グーグルが検索サービスを通じて膨大なデータを集めている点も問題視し、得たデータを競合企業に無償で提供することも要求している。 クロームを初期設定してもらうため、グーグルが端末メーカーと結ぶ巨額の契約についても、司法省は破棄するよう求めた。 市場の競争をめぐる訴訟は、ほかの巨大 IT 企業も抱えている。 連邦取引委員会 (FTC) は、「フェイスブック」を運営するメタに対し、写真投稿アプリ「インスタグラム」やメッセージアプリ「ワッツアップ」の分離を求めている。 アップルも司法省に反トラスト法違反で訴えられた。

巨大 IT の力が市場をゆがませる懸念は世界に広がっており、各国で法規制や競争当局による取り締まりの動きが出てきている。 規制で先行する欧州連合 (EU) は、22 年にデジタル市場法 (DMA) を制定し、巨大 IT が検索サービスやネット通販で自社を優遇する行為などを制限した。 日本でも公正取引委員会が今月15日、グーグルが自社の検索アプリだけを初期搭載するようスマホメーカー側に強いていたのは独占禁止法違反だとして、排除措置命令を出した。 今年 12 月には「スマホソフトウェア競争促進法」が完全施行され、グーグルやアップルを対象にスマホ市場の公正な競争を促す仕組みが強化される。

ただ、巨大 IT 企業が手がけるサービスは広範な上に仕組みが複雑だ。 市場への影響とカラクリを解き明かし、技術革新を阻まずに適切な規制をかける難しさは常にある。 ニッセイ基礎研の松沢研究理事は「今回のグーグル訴訟は、巨大 IT 企業の事業構造の事実関係を明らかにした点でも意義がある。 日本でも取り締まりや立法の必要性を考える機会にしてほしい。」と話す。 (サンフランシスコ・市野塊、奈良部健、asahi = 4-18-25)


グーグルが「遺憾の意」を表明 公正取引委員会の命令に対し反論展開

自社の検索アプリだけを初期搭載するようスマートフォン端末のメーカー側に強いたとして、米グーグルが 15 日、日本の公正取引委員会から独占禁止法違反(不公正な取引方法)で排除措置命令を受けた。 グーグルは同日、「遺憾の意を表明する」とするコメントを同社のサイトで公表し、命令に対する反論を展開した。

公取委の発表によると、グーグルは遅くとも 2020 年 7 月以降、スマホ端末メーカー大手 6 社に対し、自社のアプリストア「グーグルプレイ」の搭載を許可する条件として、初期状態のスマホに検索用のグーグルのアプリやグーグルの検索エンジンが登録されたブラウザーアプリなどをまとめて搭載し、初期のホーム画面など目立つ場所に配置させる契約を結んでいた。 6 社は国内のシェアで約 8 割を占める。

グーグルはコメントのなかで、メーカー側が「グーグルが最高のサービスを提供していることを踏まえ、自らの事業や日本におけるユーザーにとって最良の選択肢として、自らグーグルを選択している」とし、取引を強制していないと主張。 契約は任意で、「競争を阻害することも、消費者の選択を減らすこともない」とした。  そのうえでグーグルは、メーカーなどが希望する場合は、他社の検索エンジンやブラウザーアプリを「柔軟に選択できる」と指摘。 「競争を阻害するものではなく、むしろ競争を促進するものだ」と主張した。 (中野浩至、asahi = 4-15-25)

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グーグルに独禁法違反で排除命令、GAFA に初 検索アプリ搭載強要

米グーグルが、自社の検索アプリだけを初期搭載するようスマートフォン端末のメーカー側に強いたとして、公正取引委員会は 15 日、独占禁止法違反(不公正な取引方法)で排除措置命令を出した。 巨大 IT 企業 4 社「GAFA (ガーファ)」への公取委の同命令は初めて。 公取委は昨年 12 月にグーグルに処分案を通知し、意見聴取を重ねてきた。 命令では、違反認定した契約の取りやめや、再発防止を求めた。 デジタルの専門性が高いことなどから、同命令では初めて、独立した第三者による 5 年間の実施状況の監視と公取委への報告も求めた。

確定した命令に従わなければ、グーグルは罰金などの罰則が科される可能性がある。 命令によりスマホメーカーは、どの検索アプリを初期搭載し、どこに置くか、自由に選択できるようになる。

公取委の発表によると、グーグルは遅くとも 2020 年 7 月以降、同社の基本ソフト (OS) 「アンドロイド」を搭載したスマホ端末メーカー大手 6 社に対し、自社のアプリストア「グーグルプレイ」の搭載を許可する条件として、初期状態のスマホに検索用のグーグルのアプリ「クローム」やグーグルの検索エンジンが登録されたブラウザーアプリなどをまとめて搭載し、初期のホーム画面など目立つ場所に配置させる契約を結んでいた。 6 社は国内のシェアで約 8 割を占める。

またグーグルは、メーカー 4 社と携帯キャリア 1 社に対し、グーグルが広告サービスで得た収益の一部を分配する条件として、競合他社の検索アプリを搭載しないことを求める契約もしていた。 公取委は、グーグルが二つの取引によって検索市場から競合他社を排除し、公正な競争を阻害した恐れがあると判断。 独禁法が禁じる「拘束条件付き取引」に当たると認定した。

総務省の資料によると、グーグルは日本国内のスマホの検索市場でシェア約 79%。 2023 年の売上高は約 3,070 億ドル(約 47 兆円)で、検索広告が約 6 割を占める。 公取委は、生成 AI 検索の台頭で検索の形が変わりつつあるなか、グーグルが現状の地位の固定化を図ったとみている。 (高島曜介、asahi = 4-15-25)


「詐欺広告を放置」、被害訴え 30 人がメタを一斉提訴へ 5 地裁に

SNS で著名人になりすます「詐欺広告」が放置されたためにお金をだまし取られたとして、首都圏や近畿などに住む約 30 人が近く、フェイスブック (FB) やインスタグラムを運営する米メタ本社と日本法人(東京)に損害賠償を求めて提訴する。 請求総額は約 4 億円にのぼるという。 さいたま、千葉、横浜、大阪、名古屋の各地裁に一斉提訴する方針。 神戸地裁などでもすでに同様の訴訟が起こされており、原告はあわせて計約 60 人、請求総額は計 8 億円を超える。 メタ側の「不作為」を追及する動きがさらに広がる形だ。

原告らは、FB などで実業家の前沢友作氏らになりすまして投資を勧める偽広告を見て被害にあったと主張。 広告が真実かを確認する対策などをメタ側が怠ったと訴える。 メタ側は先行する訴訟で、自動検知システムで詐欺広告を削除しているとして「日本の法律上、詐欺広告を網羅的に検出したり内容の真実性を調査・確認したりする義務はない」などと反論。 原告たちは広告閲覧後、詐欺の加害者と LINE でやりとりして被害にあっているため「メタ側の対応と関係ない」と主張する。

被害額が「オレオレ詐欺」などの特殊詐欺を上回り、深刻化している投資詐欺。 記事の後半ではネット広告に詳しい専門家の見方を紹介します。 一方、総務省は昨年 6 月、詐欺広告の深刻化を受けメタなどに広告の審査基準の公表や削除の迅速化などを求めた。 警察庁によると、SNS型投資詐欺の昨年の認知件数は 6,380 件で、前年より 4,109 件増加。 被害額は前年の約 3 倍の 871 億円で、「オレオレ詐欺」など特殊詐欺の被害額(約 721 億円)を上回った。

詐欺広告「再び増えている」

詐欺被害が後を絶たないなか、専門家は、メタ社などへの法規制が必要だと指摘する。 「昨秋ごろから、なりすまし広告は再び増えている。」 ネット広告の業界団体「日本アフィリエイト協議会(東京)」の笠井北斗代表理事は、こう指摘する。 「絶対もうかる」などとうたう広告をクリックすると、SNS のグループに招待され、投資名目でお金を振り込まされる。 「利益を引き出すための手数料」などとしてさらにお金をつぎこむが、連絡がとれなくなる - -。 警察などはこうした手口に注意を呼びかけるが、被害が続いているのが現状だ。

詐欺広告に画像を使われた実業家の前沢友作氏や堀江貴文氏が昨年、政府に対策を求めたことなどで問題が注目された。 メタ社は自動検知システムによる詐欺広告の削除などを進めているが、笠井さんは「『事業者任せ』にみえる日本の法規制の甘さという隙を突かれているのでは」と話す。

SNS のもうけ話「信じてはいけない」

最近は政治家のなりすましも目立つ。 自民党の高市早苗前経済安全保障相は昨年 12 月、自身の X (旧ツイッター)で「私の名前を悪用した詐欺広告が出ていた」、「絶対にアクセスなさらないよう、ご注意下さいね」と投稿した。 新たな懸念材料となるのがトランプ米大統領の就任だ。 政権の意向に沿う形で、メタが偽情報の拡散を防ぐ「ファクトチェック」の米国での廃止を表明するなど「投稿の自由」を優先させる動きが進む。 詐欺広告の監視も甘くなる恐れがあり、笠井さんは「被害は増える」とみる。

解決策はあるのか。 笠井さんは「根本的には、メタ社などの事業者に特化した法規制しかない。 事業者に『違法な広告を排除しなければならない』とする法律をつくるべきだ。」 ユーザーに対しては「SNS で見かけたもうけ話は信じない。 これを徹底してほしい。」と呼びかける。 今回の一斉提訴の動きについては、「裁判をすることで得られる情報があり、事業者側も対策をとる必要に迫られる。 SNS 空間の健全化につながるのではないか。」と語った。 (米田優人、asahi = 2-24-25)

詐欺広告の被害に遭わないために …
・ 「必ずもうかる」、「確実に利益が出る」などの誘い文句は疑う
・ 著名人自身が公式アカウントなどで注意喚起していないかを確認する
・ 振り込みを指定された口座が個人口座の場合は詐欺を疑う
・ 不審に思ったら消費者ホットライン (188) や警察相談専用電話 (#9110) に連絡する
 (警察庁や国民生活センターのサイトから)


米メタ、多様性確保の目標廃止へ トランプ氏と歩調合わせる

米メタ(旧フェイスブック)は、多様性や公平性の確保に向けた目標を廃止する。 トランプ次期政権が、DEI (多様性、公平性、包摂性)の取り組みを否定する姿勢を見せており、米企業で歩調を合わせる動きが相次いでいる。 リベラルな価値観が強い IT 企業にも広がってきた。 メタの方針転換について、複数の米メディアが伝えた。 報道によると、メタは採用で多様性への配慮をやめるほか、多様性の観点から取引先を決めてきた方針も廃止する。 社内の DEI に特化したチームもなくす。

メタは、投稿の信頼性を第三者が評価する「ファクトチェック」を米国で終了すると発表したばかり。 トランプ次期大統領の就任を前に、歩調を合わせることで関係改善を狙ったとみられる。 多様性をめぐっては、米連邦最高裁が 2023 年、大学入試で人種的少数派を優遇する「アファーマティブ・アクション」を違憲とした。 以降、DEI そのものが逆差別だとして批判の対象となり、一部の保守系活動家らが DEI を掲げる企業の商品ボイコットを訴えてきた。 そのため、企業では多様性へ配慮する取り組みを縮小する動きが出始めていた。

メタ以外では、外食大手の米マクドナルドは 6 日、多様性や公平性の確保に向けた目標の廃止を発表した。 自動車大手のフォード・モーター、小売りのウォルマートなども DEI の取り組みを停滞させている。 米 IT 大手では、アマゾンもメタと同様の方針変更が報じられている。 両社をはじめとする米 IT 大手では、DEI を尊重するリベラルな価値観がもともと強かったが、それが一変しそうだ。 日本企業でも、トヨタ自動車や日産自動車が多様性に配慮する米国内での方針を見直している。 (サンフランシスコ・奈良部健、asahi = 1-11-25)


メタ、ファクトチェックを廃止「表現の自由守る」 保守派の批判受け

米メタ(旧フェイスブック)は 7 日、第三者が投稿内容の事実関係を確認する「ファクトチェック」を米国で廃止すると発表した。 メタの投稿管理をめぐっては保守派から「検閲だ」などと批判が出ていた。 トランプ次期大統領の就任を前に歩調を合わせた形で、SNS のあり方が大きく変わる可能性がある。 「フェイスブック」や「インスタグラム」、「スレッズ」のサービスで、外部のファクトチェックをやめる。 代わりに、X (旧ツイッター)が導入する「コミュニティーノート」に似た機能を採り入れる。 利用者が投稿に関する指摘を書き込めるものだ。 数カ月以内に米国で始める。

日本では昨年 9 月に第三者によるファクトチェック制度を導入しており、メタは「現時点で変更はない」としている。 さらに、投稿管理による介入が過剰になっていたとして、ルールを緩め、移民やジェンダーなどのトピックに関する制限をやめる方針も示した。 同社によると、昨年 12 月は 1 日あたり数百万件の投稿を削除したが、1 - 2 割は規約違反にあたらない投稿を誤って削除した可能性があるという。

マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者 (CEO) は 7 日のインスタグラムへの投稿動画で「トランプ氏の初当選後、既存メディアは誤情報が民主主義の脅威になると指摘した。 我々は懸念に対応しようとしたが、ファクトチェッカーは政治的に偏り過ぎていた。 自由な表現について、我々の原点に戻るときだ」と話した。

保守派らからの投稿管理の批判などを受け、メタは 2021 年以降、政治的な投稿が表示されにくくする対応を進めてきた。 だが、ザッカーバーグ氏は今回、「配慮に欠けていた」として、政治的な投稿への制限を緩める考え。 投稿管理を手がけるチームは、民主党支持者の多いカリフォルニア州から、より共和党支持者が多いテキサス州に移すとした。 大手 SNS の投稿管理をめぐっては、21 年の米連邦議会議事堂襲撃事件後、メタや旧ツイッターがトランプ氏のアカウントを一時凍結。 その後、保守派などから「リベラル寄りだ」などとして批判が強まっていた。 (ラスベガス・五十嵐大介、asahi = 1-8-25)


アマゾン、過去にも二度立ち入り 公取委 vs プラットフォーム事業者

公正取引委員会が、独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いでアマゾンジャパンに立ち入り検査をした。 公取委が同法違反の疑いで同社への立ち入り検査に入るのは、2016 年以降で 3 回目。 巨大 IT 業界では独占が進みやすいとされ、公取委は監視を強めている。

アマゾンジャパンへの立ち入りの 1 回目は 16 年 8 月。 同社は自社の通販サイトの出品者に対し、楽天やヤフーなどのライバル社が運営する通販サイトより、低い価格に設定するよう要求していた疑いが浮上した。 独禁法が禁じる「拘束条件付き取引」に当たるとみた公取委が調査を進めていたところ、同社はそうした契約事項を撤廃。 公取委の調査も終結した。

立ち入り、アマゾンだけでなく

18 年 3 月には、アマゾンジャパンが自ら仕入れて販売する事業で、取引するメーカーに対し、利益目標を下回った際に「協力金」の支払いを要求した疑いがあるとして、公取委が立ち入り検査に入った。 公取委は、優越的な地位にある同社が、要求を断れないメーカーに不利益をもたらす取引を受け入れさせた可能性があるとみて、約 2 年半にわたって聴き取り調査などを進めた。 同社は公取委に対し、違反の疑いがある行為を自主的に改善し、取引先に損害の相当額を返金するなどの計画を盛り込んだ「確約手続き」の認定を申請。 公取委は申請を認め、同社は違反の認定を回避した。

ネット通販大手で独禁法違反の疑いが浮上したのは、アマゾンに限らない。 公取委は 20 年 2 月、業界大手の楽天にも同法違反の疑いで立ち入り検査をした。 同社の通販サイト「楽天市場」で一定額以上を購入した利用者の送料を無料とするプランが、出店者側に一方的な負担を強いる恐れを生じさせ、優越的地位の乱用に当たる疑いがあるとみて調査した。

楽天は「法律上は問題ない」と主張し、公取委が東京地裁にプランの一時停止の緊急停止命令を出すよう申し立てる事態に発展した。 その後楽天は、全店舗で始めるとしていた計画を見直し、可能な店舗だけで開始すると発表。 公取委は独禁法違反の可能性があると指摘したが、楽天から申し出があった改善措置の内容を確認したうえで、調査を終えた。 (高島曜介、asahi = 11-26-24)


米司法省、グーグルのブラウザー「クローム」の売却要求へ 米報道

ネット検索をめぐり米グーグルが反トラスト法(独占禁止法)に違反しているとの一審判決が出た訴訟で、米ブルームバーグ通信は 18 日、米司法省がブラウザー「クローム」の事業売却を求める方針を決めたと報じた。 裁判所の判断次第では、2000 年の米マイクロソフト (MS) 訴訟以来となる大規模な事業分割命令につながる可能性がある。

司法省がトランプ政権下の 2020 年にグーグルを相手に起こした訴訟で、首都ワシントンの連邦地裁は今年 8 月、グーグルが「ネット検索で違法な独占状態にある」との判決を出した。 司法省側は先月、裁判所側に出した是正策の素案で、クロームなどの一部事業の分割を検討していることを示唆。 司法省は今月に是正策の詳細案を裁判所に提出し、連邦地裁は来年 8 月までに結論を出す考えを示していた。

ブルームバーグによると、司法省側は、グーグルの AI (人工知能)検索に使われるデータをサイト運営者が制限できるようにすることや、検索データの外部企業への提供の義務づけなども求めるとしている。 グーグルは先月の司法省側の素案に対して、「消費者、企業、米国の競争力に対し、相当な意図せぬ結果をもたらす」と反対していた。

グーグルは一審の判決について控訴する姿勢を示しており、最終的な決着まで数年かかるとみられている。 トランプ次期大統領は先月、グーグルの事業分割について「とても危険なことだ。 中国にこうした企業を持ってほしくない。」として、否定的な見方を示した。 (ロサンゼルス・五十嵐大介、asahi = 11-19-24)

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グーグル独禁法訴訟、第 2 弾審理入り ビジネスの根幹揺るがす可能性

デジタル広告市場の競争をゆがめているとして、米グーグルが反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで訴えられた訴訟は 9 日、米バージニア州の連邦地裁で審理が始まった。 米司法省が同社に起こした訴訟の第 2 弾となる。 司法省側は同社の事業の一部分割を求めており、第 1 弾に続いてグーグルが敗訴すれば、ビジネスの根底を揺るがしうる。 首都ワシントンのポトマック川の対岸、同州アレクサンドリアの連邦地裁。 午前 9 時の開廷前から、法廷は 60 人ほどの傍聴者らで埋まった。

今回の訴訟の焦点は、サイトを訪れると表示されるディスプレー広告の市場。 検索や地図などの無料サービスを使う対価として、利用者はグーグルなどに閲覧履歴や位置情報などのデータを提供している。 市場運営者はこうしたデータに基づき、広告の売り手と買い手を瞬時につなぐ。 デジタル広告市場は、ニュースサイトなど広告枠を提供する「売り手側」、ブランドなど広告主の注文を取り次ぐ「買い手側」、それら二つをつなぐ「取引所」の三つに分かれている。

9 日の審理で司法省側は、グーグルが競合他社の買収などを通じて、これら三つの市場で大きなシェアを持ち、自社を優遇する形でコントロールしていると指摘。 「規模が大きいことではなく、競合をつぶすために規模を利用していることが問題だ」と訴えた。 一方、グーグル側は、広告市場のインフラへの投資は、小規模事業者の恩恵になっていると反論。 市場の定義についても「商業的な現実を反映していない」として、米アマゾンや米メタなどとも競合関係にあると主張した。 司法省側はディスプレー広告に焦点を当てる一方、グーグル側は SNS などを含めたより広い市場の定義をしようとしている。

デジタル広告市場は、一般の消費者から見えないところで運営されているうえ、極めて複雑なしくみになっている。 この日の審理では、司法省側はわかりやすいイラストを示しながら、難解な用語の説明を証人らに求めた。 審理は今後 4 週間ほど続く見通しで、広告スペースの売り手側の報道機関幹部やデジタル広告市場の運営者らが証言する。

グーグルの検索市場に関する「第 1 弾」の訴訟では、ワシントンの連邦地裁が先月、「インターネット検索で違法な独占状態にある」との判決を出し、司法省側が勝訴した。 違法状態を解消する是正策についての審理が今月 6 日から始まり、連邦地裁は来年 8 月初旬までに結論を出す考えを示した。 メタ裁判長は、年内に司法省側から是正策の案を出すよう求め、来春に是正策についての検討を進める。 検索をめぐってはグーグルが今年、自社の生成 AI(人工知能)「Gemini (ジェミニ)」を活用した検索サービスを始めたほか、対話型 AI「ChatGPT (チャット GPT)」を運営する米オープン AI なども AI 検索を打ち出している。

6 日のやりとりでは、司法省側がグーグルの是正策について、最新の AI の影響についても考慮すべきだと主張。 判決の検討段階から状況が変わっているとして、裁判所側も考慮に入れる方針を示した。 (ワシントン・五十嵐大介、asahi = 9-10-24)


SNS 広告、詐欺被害者がメタを一斉提訴へ 首都圏や関西の 5 地裁に

著名人になりすまして投資に誘う SNS の詐欺広告をめぐり、詐欺被害にあった約 30 人がフェイスブック (FB) やインスタグラムを運営する米メタと日本法人を相手取り、損害賠償を求めて全国 5 地裁で一斉に提訴することがわかった。 原告側代理人の弁護士によると、請求額は総額 3 億円を超える。 首都圏や関西地方などに住む原告らが 29 日、横浜、千葉、さいたま、大阪、神戸の 5 地裁で訴訟を起こす方針。 原告らは、実業家の前沢友作氏や堀江貴文氏らになりすまして投資を呼びかける詐欺広告を FB やインスタなどで閲覧。 その後 LINE に誘導され、投資名目で指定の口座に送金させられたとしている。

メタ側には疑わしい広告について真実かを調べる義務があるのに、それを怠って虚偽の広告を利用者に提供した、などと原告側は主張している。 米メタと日本法人に対しては、神戸地裁で同様の訴訟が 4 月に起こされている。 米メタ側はこの訴訟で「SNS プロバイダーに広告の真実性を調査・確認する義務はない」などと主張し、請求棄却を求めている。 (原晟也、asahi = 10-24-24)


EU 高裁、アップルの「追徴税無効」一転 約 2 兆円の支払い命令

欧州連合 (EU) の最高裁にあたる欧州司法裁判所は 10 日、米アップルに 130 億ユーロ(約 2 兆円)相当の追徴税を支払うよう命じた。 追徴税を課す決定は無効とした下級審の判断を覆した。 EU の行政を担う欧州委員会は 2016 年、アイルランド政府によるアップルへの法人税優遇策が「違法な補助金」であると指摘。 「アップルは課税対象にならないペーパーカンパニーに収益を移し、14 年の実質税率はわずか 0.005% だった」として、アイルランド政府に追徴課税するよう指示していた。

アップルやアイルランド政府はこれが無効だとして提訴。 下級審は 20 年、EU の競争法に違反したことを示す十分な証拠がないとして、アップルの異議申し立てを支持し、追徴税を課す決定を無効とした。 しかし、欧州司法裁は 10 日の判断で、「本社のある米国外での売り上げは、税務上、(ペーパーカンパニーでなく)アイルランドに割り当てられるべきだ」と指摘。 同政府に130 億ユーロ相当の追徴課税を指示し、欧州委の判断を支持した。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 9-10-24)

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