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グーグルに 3,800 億円制裁金、欧州司法裁判決 「自社優遇で違反」

米検索大手グーグルが不当に自社のショッピングサイトに顧客を誘導していたとして、欧州連合 (EU) の行政を担う欧州委員会が多額の制裁金を科したことをめぐり、EU の最高裁にあたる欧州司法裁判所は 10 日、グーグルの異議申し立てを退けた。 これにより、グーグルは制裁金約 24 億 2 千万ユーロ(約  3,820 億円)を支払うことになる。 グーグルは 2017 年、ネット検索で支配的な地位を使い、検索結果で自社の商品比較サイト「グーグル・ショッピング」が競合する他社のサイトより目立つように表示したとして、EU 競争法(独占禁止法)違反にあたるとされた。 EU が 1 社に対して科す金額としては過去最高だった。

グーグルは異議を申し立てたが、下級審は同社の訴えを棄却。 欧州司法裁は 10 日の判断でも、「グーグルの自社優遇は排他的で、実質的に競争になっていない」とした。 社の広報は「判決に失望している。 当社は 17 年の欧州委の決定に準拠するために変更を加えており、800 以上のショッピングサイトが数十億回閲覧されている」と反論している。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 9-10-24)


米メタ、日本でファクトチェックへ 専門メディアと連携

米メタは 2 日、第三者によるファクトチェックを日本で始めると発表した。 フェイスブック (FB)、写真投稿アプリ「インスタグラム」、短文投稿アプリ「スレッズ」向けに、日本語での偽情報対策を強化するとしている。 日本でファクトチェック専門メディアとして活動する一般社団法人リトマスと提携。 リトマスが FB 上などの投稿の正確性を審査し、内容が「虚偽」、「改変」、「一部虚偽」と評価した場合、メタはその投稿の配信や閲覧者を減らすなどの対応をとる。

リトマスは、世界のファクトチェッカーらでつくる団体「国際ファクトチェックネットワーク (IFCN)」の加盟団体として認証されている。 メタは 2016 年以来、第三者によるファクトチェックプログラムを展開。 世界 60 以上の言語で約 100 の団体が参加しているが、日本からの参加は初めてという。(サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 9-2-24)


グーグル、巨額契約金で「違法独占」判決 事業見直し迫られる可能性

米連邦地裁は 5 日、米グーグルがインターネット検索をめぐって違法な独占状態にあると認定した。 巨大 IT 企業の「権力」の根幹に関わる判断で、今後の事業のあり方や、デジタル空間の競争環境に大きな影響を与える可能性がある。

グーグル、ネット検索で違法な独占 米連邦地裁、司法省の訴え認める

グーグルは検索で圧倒的なシェアを誇る。 判決によると、2020 年の段階で全検索の約 9 割を占めた。 スマートフォンなどの携帯機器に限ると 95% に近かった。 英語でも「ググる」は動詞として使われ、「検索する」と同義語だ。

巨額の契約を問題視

判決はその理由として「最も質が高い検索エンジンを提供している」と認め、優れた人材を集め、賢明な経営判断を続けてきたグーグルを評価した。 ただ、「ライバルと比べ利点があまり見えないものもある。 初期設定だ。」とも述べた。 グーグルはアップルやサムスンなどと契約を結び、お金を払う代わりにブラウザーやスマホなどで初期設定の検索エンジンにしてもらっている。 多くのユーザーが初期設定のままで使うため、グーグルの検索に伴う広告収入は 21 年には 1,460 億ドル (約 21.3 兆円) に達した。

そのための支出もかさむ。 21 年には初期設定を維持するための対価が 263 億ドル(約 3.8 兆円)に上り、グーグルとして最大の費用となった。 なかでも重要なのはアップルとの関係で、22 年には推定 200 億ドル (約 2.9 兆円) を支払った。 判決が問題としたのはこうした契約だった。 グーグル元幹部による「契約金の支払いは、変化を困難にする」という証言を重視し、アップルなどが初期設定の検索エンジンを変えたり、契約条件を変更したりすることも検討しながら、「グーグルからの巨額収入を失うことになり、断念している」とし、グーグルの独占に重要な役割を果たしていると判断した。

一方、ライバルのマイクロソフト (MS) が開発した検索エンジン「ビング」のシェアは約 5% で、グーグルに遠く及ばない。 MS はアップルに初期設定のエンジンとして採用してもらうことももちかけているが、交渉は難航。 判決によると、アップル幹部は「MS がどんな金額を提示しても受けない」と述べたという。 判決は MS のブラウザー「エッジ」ではビングが初期設定され、検索の 80% に使われていると指摘。 他のブラウザーなどでグーグルが初期設定を独占していることが、新規参入を妨げている証拠の一つとした。

グーグルは声明で「我々の検索エンジンが最も優れていると認めながら、容易に使えるように提供すべきではないと結論づけている」と皮肉った。 判決がグーグルを高く評価した箇所を引用しながら、控訴する意向を表明した。(ニューヨーク・中井大助)

米独禁法は巨大 IT 企業に対応できるか 最終決着は先

ネット検索をめぐり米司法省が起こした訴訟で、米グーグルの独占が認定された。 今回の訴訟は、1998 年に司法省がマイクロソフト (MS) を提訴して以来となる大型独禁訴訟で、米政府による IT 大手に対する一連の訴訟で最初の判決となる。 1890 年に中心となる法律ができた米独占禁止法が、巨大 IT 企業が台頭する 21 世紀のデジタル経済に対応できるかの試金石として注目された。 独禁法に詳しい米バンダービルト大のレベッカ・ホウ・アレンスワース教授は今回の判決について、「IT 大手だけでなく、米国の独禁法全体にとっても大きな転換点になりうる。 ビッグテックの取り締まりの動きに勢いを与えるだろう。」と話す。

司法省側はグーグルの違反行為をやめるよう求めており、当局側の主張が認められたことで、同社は事業の見直しを迫られる可能性がある。 アレンスワース氏は「裁判所が事業分割を求める可能性は極めて低く、何らかの違反行為の差し止めになる」とみる。 ただ、最終的な決着は先になりそうだ。 一審は政府側が勝訴したものの、具体的な改善措置の検討は数カ月かかる見通し。 グーグル側は控訴する構えで、最終的な判決や和解までは数年かかるとみられる。 グーグルは今回の訴訟とは別に、デジタル広告市場での独禁法違反の疑いでも司法省から提訴されており、来月から審理が始まる予定だ。

GAFA の 4 社が当局と法廷闘争中

米 IT 大手をめぐって米当局は、トランプ前政権下の 2020 年、グーグルと米メタ(旧フェイスブック)を独禁法違反で提訴。 バイデン政権も昨年に米アマゾン、今年 3 月にはアップルを提訴しており、「GAFA (ガーファ)」と呼ばれる IT 大手 4 社すべてが米当局との法廷闘争に直面している。 IT 大手を取り巻く環境は厳しさを増している。 欧州連合 (EU) は、今年本格運用を始めたデジタル市場法 (DMA) 順守していないとして、グーグル、アップル、メタへの正式調査を開始。 日本でもアップルとグーグルを事実上の規制対象とする新しい法律が 6 月に成立している。(五十嵐大介、asahi = 8-6-24)


経産省、アマゾンとアップルに勧告 情報開示「不十分」 法施行後初

経済産業省は 2 日、取引事業者への情報開示が不十分だったとしてアマゾンジャパンとアップルに勧告をおこなった。 プラットフォーム取引透明化法に基づく行政指導で、2021 年の同法施行以来初めて。

経産省によると、アマゾンは通販サイトの出品者に対し、販売手数料に関する情報開示が不十分だった。 アマゾンでは、手数料が商品分類ごとに異なる。 出品者は商品登録時に商品の分類を自ら選択するが、手数料を決める分類はこれとは別にあり、どの分類に該当するかはアマゾンが決めている。 この点が明示されていないうえ、手数料の分類をアマゾンが変更した際の通知が不十分なケースがあったとした。

アマゾンジャパンは取材に対し、「手数料カテゴリーや手数料については、常に透明性を保つとともに、販売事業者様によりご理解いただきやすくなるよう取り組みを続けております」とコメントした。 アップルは、アプリ開発者向けの規約を変更した際に日本語訳の公開が遅かったとして勧告を受けた。 (村井七緒子、asahi = 8-2-24)


グーグル、米セキュリティー企業の買収交渉 米報道、総額 3.6 兆円

米グーグルの親会社アルファベットが、サイバーセキュリティーの米新興企業ウィズの買収交渉を進めていることが明らかになった。 複数の米メディアが 14 日報じた。 買収総額は約 230 億ドル(約 3.6 兆円)にのぼる見通しといい、実現すればグーグルによる企業買収で最大となるという。 グーグルは 2012 年、携帯端末大手モトローラ・モビリティを 125 億ドルで買収。 14 年に中国の IT 大手レノボグループへの売却を発表したが、今回の買収が実現すれば、これを上回る規模になるとみられる。

グーグルは企業向けのクラウド事業で、業界首位の米アマゾン、2 位の米マイクロソフト (MS) を追う立場にある。 グーグルは 22 年にセキュリティー企業マンディアントを 54 億ドルで買収するなど、巻き返しのためにクラウド向けのセキュリティー部門を強化してきた。 グーグルは米司法省から検索市場などで反トラスト法(独占禁止法)に違反したとして提訴されている。 今回の買収で合意すれば、当局からの圧力が強まる可能性もある。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 7-15-24)


検索シェア 9 割のグーグル、広告市場で大きな存在感 米当局も訴訟

公正取引委員会が、米グーグルに対して独占禁止法に基づく行政処分を出した。 グーグルは本拠地米国でも、デジタル広告市場で大きなシェアを握り、米当局が訴訟を起こしている。 米グーグルは世界のデジタル広告市場で大きな存在感がある。 調査会社イーマーケターによると、世界と米国のデジタル広告市場で、ともに約 3 割のシェアを握る。 米メタ(フェイスブック)が 2 位で後を追う構図だ。 グーグルの昨年の売上高は約 3,070 億ドル(約 47 兆円)で、その約 6 割を主力の検索広告が稼ぐ。

強さの源泉は、人々がネットを使う際の「入り口」となる検索で、グーグルが占める圧倒的な地位だ。 米調査会社スタットカウンターによると、世界の検索市場でのシェアは 91% にのぼる。 2 位の米マイクロソフト (MS) の検索エンジン「ビング」は 3% にとどまる。 こうした状況で、おひざ元の米国でも競争当局が取り締まりに乗り出している。 米司法省は 2020 年、検索や検索広告市場で独占的な地位を使って競争を阻害したとして、グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。

グーグルの検索エンジンを iPhone (アイフォーン)や自社の基本ソフト (OS) 「アンドロイド」向けのスマートフォンですぐに使える「初期設定」にさせるため、アップルに毎年最大 120 億ドル(約 1.8 兆円)を支払うなどしていたと指摘。 検索広告市場での競争を妨げてイノベーションを阻んでいるほか、個人情報の利用にからんで消費者にも損害を与えていると主張した。 一方、グーグル側は、デジタル広告は検索だけでなく、メタの写真投稿アプリ「インスタグラム」や動画投稿アプリ「TikTok (ティックトック)」などとの競争が激化していると反論する。

1998 年に司法省が MS を提訴して以来の大型裁判として注目を集める。 5 月に最終弁論があり、年内に判決が出る見通し。 敗訴した側が控訴するのは必至で、決着には数年かかるとみられている。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 4-22-24)


グーグル社員たちの憂鬱 「おもしろ、異質」職場を変えた解雇の余波

昨年 10 月のある日の午後、ダイアン・ハーシュ・テリオさんの同僚がランチの後にマサチューセッツ州ケンブリッジにあるグーグルのオフィスに戻ると、入館証をかざしてもゲートが開かなかった。 自分は解雇されたと、すぐにぴんときたという。 ほどなく、博士号を持つハーシュ・テリオさんは、同じ職場でグーグルニュースを担当するエンジニア仲間の大半も職を失ったことを知った。 同社の労働組合によると、ニュース部門の 40 人以上が解雇されたが、そのうちの何人かは後にグーグルの別部門での仕事をあっせんされたという。

最近のグーグルでは、ハーシュ・テリオさんのような経験はますます日常茶飯事になっている。 大規模な人員削減が 1 年続いた後、順繰りに実施されている人減らしの中で、社員たちは神経質になっている。 人員削減の影響でプロジェクトの進行は遅くなり、社員たちはやむにやまれず、どのチームが削減対象になったか、あるいは、次に狙われる可能性があるのは誰かを勤務時間中に探っている。 取材に応じたグーグルの現役社員と元社員ら 10 人はそう話した。 自らの仕事の現状を率直に語りたいとの理由で何人かは匿名を条件に語った。

創意工夫を目指す人々が集まる組織とみられてきたグーグル。 今では午後 4 時半にオフィスの半分は空っぽになる - -。 NYT の取材に応じた社員たちが現状を語っています。

人員削減は単にそれだけにとどまらず、単なる職場というより、創造性と、既成概念にとらわれない発想が奨励され、創意工夫を目指す人々が集まる組織と長らく見られてきたグーグルの企業イメージをも変えている。 同社には、おもしろくて異質な職場というオーラがあった。 グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者 (CEO) は 1 年以上前、従業員の 6% にあたる 1 万 2 千人の雇用を削減すると発表し、将来に備えるための苦渋の決断だと説明していた。

人員削減は今年に入っても続いている。 ピチャイ氏によれば、年間を通して、以前よりはかなり小規模な人員削減が順繰りに実施される可能性があるという。 1 月初旬から実施された 1 千人以上の人員削減では、広告販売部門や YouTube、音声アシスタント部門の従業員らが対象になった。 グーグルの親会社アルファベットは、増えつつある AI (人工知能) 関連への投資費用を賄うため、経費削減に努力していると説明している。 また、同社の広報担当者のコートネイ・メンシーニ氏は、社員が会社の最優先業務に集中できるよう、お役所的な煩雑な組織を簡素化していると話す。 また、全社的に人員削減を行っているわけではなく、組織再編は通常の事業経営の一部だと説明する。

ピチャイ氏は 1 月 17 日付の社員向けメモで「現実的には、こうした投資を可能にするため、厳しい選択をしなければならない」と述べ、部門によっては「再編を意味し、場合によっては役割の廃止となる」と記した。 また、年間を通じて、諸部門で追加的なポスト削減がありうるとも述べた。

夕方には半分空っぽになるオフィス

社員たちによれば、職場の雰囲気は陰鬱になっているという。 グーグルが AI 製品の開発に拍車をかけ、マイクロソフトや、対話型 AI 「ChatGPT (チャットGPT)」を運営するオープン AI などの競合他社と足並みをそろえる一方で、同社のテクノロジー開発を支える人間の重要度が下がっていると感じている人たちもいる。 ハーシュ・テリオさんはビジネス向けインターネット交流サイト「リンクトイン (LinkedIn)」へこう投稿した。 「午後 4 時半になるとオフィスは半分空っぽ。 以前は試作品を完成させるために、あるいは退屈をまぎらわすために、平日夜や週末に余分な仕事を喜んでやっていた人たちを私はたくさん知っていた。 私もその一人。 もうそんなこともなくなりました。」

グーグルの人員削減は、メタなどの他の大手テクノロジー企業の人減らしに比べれば規模は小さい。 また、全従業員に占める削減数の割合でも、ゼロックスやゲーム実況配信サービス「Twitch (ツイッチ)」のような企業で最近実施された人員カットよりもはるかに小さい。 グーグルの 2023 年末時点の正社員数は 18 万 2,502 人で、22 年末時点よりわずか 4% 少ないだけだ。 アルファベットは 1 月 30 日、23 年 10 - 12 月期の純利益が前年同期比 52% 増の 207 億ドル(約 3.7 兆円)だったと発表した。

しかし、グーグルの人員削減では、業務グループ群が再編され、管理職層が削減されているため、全社の運営に広範囲な変化をもたらしている。 社員たちは、組織再編は無秩序に行われ、社内の意思疎通も不十分との不満を漏らす。 YouTube では、動画監視サービスなどの外部業者への発注や支払いに関する承認業務を担う管理チームの一つが削減された際、同チームに依存している他のチームにはそのことが知らされなかった、と関係者の一人は話す。 結果的には、人員削減の対象となったチームメンバーの何人かは同じ業務への復帰のチャンスが与えられたという。

1 月に人員削減が再開された際、会社側が削減対象についての情報をほとんど公開しないため、スイスで働くグーグル社員の一人は、人員削減をフォローして記録した社内文書を作成した。 社員らによると、メディアのニュースや SNS、あるいは昔ながらの職場でのうわさ話とともに、欠かせない情報源になっているという。 「人事政策という観点からは、最悪の事態だ」と、理想的な人材活用をテーマに情報を提供するタレントカルチャー社の設立者、メーガン・ビロー氏は指摘する。 「望ましい雇用主としてのイメージを完全に台無しにする。」 ただ、グーグルによると、幹部たちは人員削減の実施について各チームに明確に伝えていたという。

「20% ルール」に二の足

ニューヨーク・タイムズ (NYT) の取材に応じた社員たちは、人員削減によっては、込み入った任務の遂行にすでに苦労していた一部の業務を混乱させる可能性があるとの懸念を示した。 グーグルは 1 月、組織全体で使う社内インフラやツールを担当する中核的なエンジニアリングチームで何百人もの人員を削減した。

同チームの最優先課題の一つは、3 月 6 日に施行される欧州連合 (EU) の「デジタル市場法 (DMA)」を順守するための対応への支援だ。 同法は大手テクノロジー企業に対し、ブラウザーなどのオンラインサービスについて消費者に選択肢を示すことを義務づける。 また、社内で顧客データを共有するためには、事前に利用者の同意を得ることも義務づける。 しかし、この件に詳しい 2 人の関係者によると、同法への対応に携わる社員らは、準備が予定より遅れており、期限までに完全に順守できる態勢を整えるのは難しいかもしれないと懸念しているという。

グーグルによると、同社はすでに 1 月から、欧州の利用者の同意を得るための画面を表示し始めており、期限前にさらなる変更を加える予定だという。 同社の中核部門での最近の人員削減は、こうした法令順守のタイミングには影響しないとしている。 グーグル社員は長い間、実験的なプロジェクトに取り組むことを奨励されてきた。 しかし、匿名を条件に取材に応じた 4 人の社員によると、実験的なことに手を出すのは危険であることが過去 1 年で明らかになったという。 同社は、新しい製品やサービスの開発に取り組んでいた社内インキュベーター(新規事業などへの支援チーム)の「Area 120」をほぼ閉鎖し、新規企業の立ち上げを狙う壮大な計画の推進を担う研究機関「X」の戦略も見直した。

グーグルは、全社を通じて社員たちはきわめて革新的かつ野心的な仕事を常に続けていると話す。 取材に応じた 5 人の社員らによると、グーグルが採用している、いわゆる「20% ルール」の活用に二の足を踏む社員が増えているという。 社員たちにとって、通常業務の時間枠のうち、20% を使って好奇心をかき立てるアイデアの探求に使える制度だった。 グーグルに 16 年間在籍し、主にチューリヒでグーグルマップのストリートビューなどのサービスの開発に携わってきたルパート・ブレヘニーさんにとって、それは残念な変化だという。

「人々は情熱を持ってグーグルに入社した。 ものづくりを楽しむことができた。 そんな時代がずいぶん長い間ありました。」と昨年夏に解雇されたブレヘニーさんは振り返った。 (ニコ・グラント・The New York Times/asahi = 2-12-24)


アップル、EU で外部アプリストア容認 「壁で囲まれた庭」に風穴か

米アップルは 25 日、iPhone (アイフォーン)向けのアプリについて、欧州連合 (EU) 域内で、3 月から外部のアプリストアからのアプリ取得を認めると発表した。 2008 年に「アップストア」を開設後、外部に開放するのは初めて。 世界で IT 大手への規制が強まるなか、自社優位のルールで利用者を囲い込んできた方針の転換を迫られた。 EU の「デジタル市場法 (DMA)」が 3 月に本格運用されるのを受けた対応。 同法はアップルなど IT 大手 6 社を対象に、自社サービスの優遇や配信アプリの課金方法の義務づけを禁止し、違反すれば巨額の罰金を科すと定めている。

EU の行政府の欧州委員会の広報担当者は 25 日、アップルの発表について「コメントしない」と回答した。 欧州委は今後、アップルの対応が DMA を順守するかどうか検討する。 アップルはこれまで、基本ソフト (OS) 「iOS」上の iPhone やタブレット端末「iPad (アイパッド)」向けのアプリについて、自社以外のアプリストアからの取得を認めてこなかった。 また、アップストアのアプリ内での課金で最大 30% の手数料を取っており、アプリ業者から「高すぎる」と批判が出ていた。

同社は今回、この手数料を最大 17% に引き下げることも明らかにした。 一方、ダウンロードが年間 100 万回を超えるアプリについては、1 件あたり 0.5 ユーロの技術手数料を取る。 アップルによると、今回の変更でアプリ業者の 99% は手数料が現状と同じか安くなるという。 アップルは外部のアプリストアを認めない理由として、セキュリティーやプライバシー侵害のリスクを主張してきた。 担当幹部のフィル・シラー氏は声明で、EU の新法への対応は「新たなリスクを生む」として、すべてのアプリの安全性を確認するしくみを導入する方針を示した。

アップルなどのプラットフォーム事業者は「walled garden (壁で囲まれた庭)」と呼ばれ、利用者を囲い込み、アプリ配信や広告などの収益につなげてきた。 こうした手法は、利用者が増えれば増えるほど利便性が高まる「ネットワーク効果」が働きやすい。 アップルの機器は世界で 20 億台以上使われている。 各国当局は、アップルやグーグルがアプリ市場で強大な力を持ち、競争を阻害している可能性があると問題視してきた。 今後の影響はアプリ業者の対応次第だが、外部のアプリストアでより割安なサービスが増えれば、利用者にも恩恵が広がりうる。

人気ゲーム「フォートナイト」を運営する米エピックゲームズは 25 日、アップルの方針転換を受け、欧州で iOS 向けにアプリストアを開設すると発表。 音楽配信サービス「スポティファイ」も、3 月から自社のサイトからアプリを iPhone に直接ダウンロードできるサービスを始めると明らかにした。 エピックのティム・スウィーニー最高経営責任者 (CEO) は同日、X (旧ツイッター)の投稿で、「アップルの新たなごまかしの一例だ」として、大手アプリ業者への手数料などを批判した。 今後の課題は、企業側の対応でアプリ市場の競争環境を改善する実効性を持たせられるかどうかだ。

競争法が専門の米スタンフォード大のマーク・レムリー教授は「中小アプリ業者にとって、多くの利用者がいるアップストアは魅力がある。 多くの利用者は従来の制度にとどまる可能性があり、外部のアプリストアが広がるかはわからない」と話す。

今回の動きを日本政府も注視する。 公正取引委員会は EU の DMA を参考にアプリ市場を規制する法案を準備中で、スマホの OS を握る企業に対し、他社のアプリストアを利用できるようにすることや、外部の決済システムを認めるよう義務づける見通しだ。 アップルなどの欧州での対応を見極めた上で法案を固め、通常国会への提出を目指している。 アップルは日本市場も重視しており、日本でも対応を迫られる可能性がある。 (五十嵐大介 = ソルトレークシティー、村井七緒子、asahi = 1-26-24)


米アマゾン、日本のクラウド設備に 2 兆円超投資 データセンター増強

米アマゾングループでクラウド事業を手がける「AWS」は 19 日、2023 年 - 27 年の日本での投資額が、約 150 億ドル(2 兆 2,600 億円)になると発表した。 日本で官民による大幅な需要増を見こみ、東京地区と大阪地区にあるデータセンター (DC) のサーバーや通信設備などを増強する。 同社が日本で投資計画を発表するのは初めて。 今回発表した投資額には実施済みの設備投資などのほか、今後の運用や修繕に充てる費用も含むという。 取引先など主にサプライチェーン上にある国内企業の雇用として、「3 万人以上の雇用を創出する」との試算も示した。

AWS ジャパンの長崎忠雄社長は同日の記者会見で、「日本のデータを国外に持ち出さずに利用できる。 非常に低遅延でサービスを利用いただける。」と投資拡大の狙いを説明した。 AWSは、遠隔でデータの管理や処理ができるクラウドサービスの世界最大手。 日本では、DC が集まる「リージョン」を 11 年に東京、21 年に大阪に開設した。 同社は、政府が行政機関や自治体の情報を効率的に管理するため業務システムを自前の設備からクラウドに移すガバメントクラウドの事業者に選ばれており、自治体などとの契約数はこれまで最多になっている。 (渡辺淳基、asahi = 1-19-23)


マイクロソフト、米ゲーム大手買収を完了 過去最大の 10 兆円

米マイクロソフト (MS) は 13 日、米ゲーム開発大手アクティビジョン・ブリザードの買収を完了したと発表した。 MS にとって過去最大の買収となる。 独占禁止法の観点から欧米当局が阻止に動いたが、発表から 2 年近くかけて実現にこぎ着けた。 MS は昨年 1 月、 687 億ドル(約 10 兆円)でアクティビジョンを買収すると発表した。 同社は戦争を題材にしたシューティングゲーム「コール・オブ・デューティー」などを手がけ、世界で 4 億人近い月間利用者を持つ。 MS は人気ゲームの取り込みで、ゲーム事業を強化する狙いがある。

買収を巡っては当初、欧米の当局が競争を阻害するとして反対を表明。 だが、米連邦取引委員会 (FTC) による買収差し止めの訴えを裁判所が棄却し、英国当局の判断が最後のハードルとなっていた。英競争・市場庁 (CMA) は 13 日、MS がアクティビジョンのネット経由の配信事業を他社に売却すると応じたことで「懸念が軽減された」として、買収を承認した。 バイデン米政権は米 IT 大手が巨額の買収を繰り返して拡大してきた状況を問題視しており、今回の買収が実現するかどうかは「テストケース」として注目されていた。 米当局の買収差し止めが失敗に終わったことで、当局による介入の難しさが浮き彫りとなった。 (サンフランシスコ = 五十嵐大介、asahi = 10-14-23)


米当局、アマゾンを独禁法違反で提訴 他サイトで安く売ったら「罰」

米連邦取引委員会 (FTC) とニューヨークなど 17 州は 26 日、米アマゾンが通販サイトで競争を阻害したとして、反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した。 米当局は 2020 年に米グーグルと米メタ(旧フェイスブック)も独禁法違反で提訴しており、国家を超える影響力を持つ巨大 IT 企業の取り締まりを本格化させている。

訴訟は米北西部ワシントン州の連邦裁判所に提訴された。 訴状によると、FTC はアマゾンが自社の通販サイトで販売する業者が別のサイトでより安い価格で販売しているのを見つけた場合、アマゾン上の検索結果の順位を引き下げて実質的に見えなくする「罰」を与えていると指摘。 その結果、インターネット上で幅広く売られる製品の価格を不当に高く維持したと主張した。 さらに、業者が有料会員サービス「プライム」向けに出品する条件として、費用がかさむアマゾンの配送センターを使うよう強要したという。

アマゾン、法廷で争う姿勢

FTC は声明で「アマゾンは独占的な力を使って価格を膨らませて(製品の)質を下げ、競争を妨げた」と強調。 「アマゾンの広範囲にわたる策略は数億人の消費者に影響を与えている」と訴えた。 一方、アマゾンは 26 日に声明を出し、「FTC の焦点は、消費者や競争の保護という使命から根本的に逸脱している」と反論。 「法廷で(自社の)主張を訴えていく」とした。 米 IT 大手をめぐっては、米司法省が 20 年、グーグルが検索や検索広告での独占的地位を使って競争を阻害したとして独禁法違反で提訴。 FTC はアマゾンに対しても 19 年から調査を進めてきたと報じられており、対応が注目されていた。 (サンフランシスコ = 五十嵐大介、asahi = 9-27-27)


グーグル独禁法訴訟、12 日審理入り 「ここ数十年で最も重要な事案」

米国で 2020 年、司法省などがグーグルを訴えた裁判の審理が 12 日から始まる。 「ビッグテック」と呼ばれる米 IT 大手が反トラスト法(独占禁止法)違反にあたるかどうかが争点で、1998 年に司法省がマイクロソフト (MS) を提訴して以来の大型裁判となる。 審理次第では、世界のインターネットを支えるビジネスにも影響する。

「この数十年の米国の独禁法訴訟のなかで、最も重要な事案になる。」 元司法省幹部のビル・ベアー氏はそう話す。 米当局は 20 年にフェイスブック(現メタ)を独禁法違反で訴えたほか、アマゾンの提訴も検討していると報じられており、今回の裁判は「ほかの IT 大手の訴訟の先例となる」とみる。 米司法省と 11 の州は 20 年 10 月、グーグルを独禁法違反で提訴した。 訴えの中心は、グーグルが検索や検索の広告市場で独占的な地位を使い、違法に競争を阻害したという点だ。

司法省側は、グーグルがアップルや韓国サムスンなどと契約を結び、自社の検索エンジンを iPhone (アイフォーン)や基本ソフト「アンドロイド」向けのスマートフォンですぐに使える「初期設定」にさせていたと指摘。 検索エンジン「ビング」を提供する MS などの競合を不利な状況に追いやり、競争を阻害したと主張した。 グーグルに対しては、20 年 12 月にコロラド州など 38 の州や特別区が同様の内容で提訴しており、裁判所が二つの訴訟を一本化していた。

特にアップルとの契約では、グーグルが毎年 80 億ドル(約 1.2 兆円) - 120 億ドル(約 1.8 兆円)の巨額の支払いをしていると指摘。 これはアップルの年間利益の 15 - 20% を占める。 司法省は、米国のモバイル機器の約 6 割はアップルの基本ソフト「iOS」で動いているとして、「検索市場の競合を損ね、グーグルの独占を突き崩せないものにしている」と訴えた。

一方、グーグル側は真っ向から反論している。 同社は今月 8 日のブログで「(アップルなどとの)契約は、我々のサービスの質や消費者の好みに基づいた機器メーカーの選択を反映したものだ」と主張した。 米首都ワシントンの連邦裁判所は 8 月、司法省が訴えた一部の論点を「証拠がない」と棄却する一方、アップルとの契約など主要な論点は支持した。 今月で創業から 25 年を迎えたグーグルは、世界の検索市場で 9 割超のシェアを持つ。 昨年の売上高約 2,828 億ドル(約 42 兆円)の約 6 割を検索の広告が支えており、訴訟の結果次第では事業の根幹に影響する可能性がある。

日本では 10 年、検索最大手ヤフーがグーグルの検索エンジンを採用すると決定。 検索エンジン「ビング」を開発していたマイクロソフトは反対の立場でロビー活動を展開したが、公正取引委員会は当時、問題ないと判断した。 これまでの独禁法の議論では、独占的な企業が商品の価格を引き上げるなどして消費者の不利益になるかどうかが注目された。 だが、メールや検索などのサービスを無料で提供し、利用者の閲覧履歴や位置情報などの膨大なデータを収集して広告で稼ぐビジネスモデルは、従来の「価格」の議論があてはまらなかった。

司法省はグーグルについて「消費者データの保護などの分野を含め検索サービスの質を下げ、消費者に損害を与えた」と指摘した。 グーグルの訴訟のゆくえは、1890 年につくられた米国の独禁法が、21 世紀のデジタル経済に対応できるかをも見極める試金石として注目されている。 米メディアによると、今回の審理は 10 週間程度となる見通し。 グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者 (RO) ら幹部も証人として呼ばれるとみられている。 判決は数カ月以内に出る見通しだが、その後も控訴が予想され、最終的な決着には数年かかるとみられる。

巨大 IT 規制では欧州連合 (EU) EU)が先行していたが、米国でもバイデン政権が取り締まりを強めている。 司法省は今年 1 月、グーグルのデジタル広告市場が独禁法に抵触するとして提訴。 米メディアは、米連邦取引委員会 (FTC) がアマゾンを独禁法違反で 9 月中に提訴すると報じた。 だが、メタによる仮想現実 (VR) 向けアプリ企業の買収では、差し止めを求めた FTC の訴えが裁判所に棄却されるなど、政府側の思惑通りには進んでいない。 (サンフランシスコ = 五十嵐大介、asahi = 9-12-23)


好スタートのスレッズ、ツイッターを超えるか でも 1 日あたり利用者半減

SNS 世界最大手の米メタが新たな SNS 「Threads (スレッズ)」を立ち上げてから、5 日で 1 カ月になる。 アプリ公開後 5 日で登録者が 1 億人を超えたが、その後、利用者の伸び悩みも指摘されている。 起業家イーロン・マスク氏の買収後に混乱が続く「X (エックス、旧ツイッター)」を超える存在になるか。 「スレッズは我々が期待していたよりはるかに大きな規模で普及している。」 メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者 (CEO) は 7 月 26 日の決算会見でそう話した。

昨年来 2 万人以上の人員を削減したメタは、今年を「効率化の年」と呼び、多くの人員は割けない。 そんな状況で「突然大きな機会を生み出した」と喜びをあらわにした。 スレッズは 7 月 5 日の公開後、5 日で登録者が 1 億人を突破。 米メディアによると、対話型 AI (人工知能)「ChatGPT (チャット GPT)」の約 2 カ月より短く、アプリとして史上最も速く 1 億人の大台を突破した。 初速の背景にあるのが、世界で 20 億人を超えるインスタグラムの利用者だ。 スレッズは、メタが運営する写真投稿アプリ「インスタグラム」のアカウントと連動しており、インスタのアカウントがあればすぐに登録できる。 利用者はインスタのフォロワーをそのまま引き継ぐこともできる。

アプリをインストールすると、エックスに似た画面が表示される。 500 字までの文章や写真、最大 5 分間の動画も投稿できる。 他人の投稿をシェアしたり、「いいね」を押したりする機能もエックスと同じだ。 一方、エックスと異なる機能も多い。 エックスでは、気になるキーワードで投稿をリアルタイムで検索することができるが、スレッズではアカウント名の検索しかない。 エックスにあるダイレクトメッセージ機能もスレッズにはない。 エックスは自分がフォローしている人の投稿が時系列で表示されるが、スレッズでは人工知能 (AI) のアルゴリズム(計算手順)で選ばれた他人の投稿が多く表示される。

メタは 7 月下旬、自分がフォローしている利用者の投稿のみが時系列でみられる機能などを加えた。 ザッカーバーグ氏は「まだやるべき基本的なことがある」としており、利用者が数億人規模に増えてから収益化をめざす方針だ。 米調査会社データ AI によると、スレッズのダウンロード数は公開後 1 週間で 1.5 億人を超えた。 最もダウンロードされたのが世界最大の人口を持つインド(33%) で、ブラジル (22%)、米国 (16%)、メキシコ (8%)、日本 (5%) が続く。 ただ、スレッズは炎上リスクもある政治などの話題から距離を置く姿勢をとる。 インスタのトップ、アダム・モセリ氏は 7 月の投稿で「目標はツイッター(現エックス)に置き換わることではなく、怒りが少ない場に関心がある人々向けの公共の場をつくることだ」と強調した。

スレッズが誕生する伏線にあったのが、イーロン・マスク氏による買収後のエックスの混乱だ。 マスク氏は昨年 10 月の買収後、従業員を大幅に削減。 約 7,500 人いた人員は 2 千人以下に減り、大規模なシステム障害が相次いだ。 マスク氏は投稿管理の運用を変え、凍結されていたアカウントを次々に復活。 差別的発言が急増し、主要広告主の多くが出稿を止めた。 マスク氏は 7 月、広告収入が半減したことを明らかにした。 7 月には 2006 年の創業以来使っていた青い鳥のロゴを「X」に変更。 決済機能をもつ「万能アプリ」をめざす方針を示したが、子どもの性的な画像が投稿されたと報じられるなど、混乱が続く。

エックスの代替をうかがうアプリも出始めた。 ドイツ発の「Mastodon (マストドン)」、ツイッター共同創業者ジャック・ドーシー氏が立ち上げた「Bluesky (ブルースカイ)」などだ。 メタなどの大手 SNS は「walled garden (壁で囲まれた庭)」と呼ばれ、プラットフォーム事業者が利用者を囲い込む。 事業者は利用者の行動履歴などの詳細データをもとに広告収益につなげてきた。 大手 SNS は、利用者が増えれば増えるほど利便性が高まる「ネットワーク効果」がはたらきやすい。 利用者はサービスに不満があっても、築き上げたフォロワーを失うことなどから、他のサービスに切り替えるハードルが高い。

スレッズは今後、ほかの SNS との互換性を高めるため、「アクティビティーパブ」と呼ばれる規格を導入する方針も示している。 実現すれば、スレッズ上の投稿やフォロワーを、マストドンなど他の SNS に移行することができるようになる可能性がある。 好スタートを切ったスレッズだが、エックスを超える存在になるかはまだわからない。 米調査会社シミラーウェブによると、スレッズの 1 日あたり利用者は当初の約 4,900 万人から、1 週間で約 2,360 万人に減った。 一方で、エックスの 1 日あたり利用者は 1 億人超という。

7月下旬には、ザッカーバーグCEOが社内会議で「1億人以上が登録しているが、その半分でも利用し続けてくれたら素晴らしい。 まだそこに達していない。」と述べ、継続的な利用者が登録者の半分に満たないとの認識を示したことが報じられた。 IT アナリストのエリック・スーファート氏は「ニュースや政治はツイッター(現エックス)上の多くの話題を占めており、文字ベースの SNS がニュースや政治抜きで利用者を維持できるのかという問題がある。 スレッズはツイッターの代わりというより、別の領域を狙っており、大きなネットワークを築きうる。」とみる。

一方、メタに対しては、欧米当局が独占禁止法や個人情報保護などの観点から規制を強めており、今後規制の影響を受ける可能性もある。 大手 IT の囲い込みなどを厳しく制限する「デジタル市場法」が導入される欧州連合 (EU) 域内では、メタはスレッズの提供を見合わせている。 (サンフランシスコ = 五十嵐大介、asahi = 8-3-23)

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米メタ、独自の SNS 「スレッズ」を提供開始 ツイッターに対抗

米メタ(旧フェイスブック)は米国時間 5 日、ツイッターに対抗するサービス「Threads (スレッズ)」の提供を始めた。 6 日に公開する予定だったが、1 日前倒ししての開始となった。 アップルの iPhone (アイフォーン)とグーグルのアンドロイド端末で使える。 マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者 (CEO) は、自身のアカウントで「開始 2 時間で利用登録が 200 万を超えた」と明かした。 また、「オープンで友好的な対話の公共空間をつくりたい」と投稿している。

スレッズは英語や日本語など約 30 言語に対応しており、文章や写真、動画を投稿できる。 文章は 1 回あたり最大 500 文字まで、動画は 5 分まで投稿できる。 メタによると、100 カ国以上で使えるようになったという。 料金は無料。 メタの画像投稿アプリ「インスタグラム」のアカウントでログインでき、フォロー先やユーザー名をそのまま引き継げる。 ツイッターはイーロン・マスク氏の買収後、相次ぐ仕様変更や人員削減で安定した運営が困難になっており、利用者の間で不満が高まっている。 (村井七緒子、asahi = 7-6-23)

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