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テスラの株式時価総額、1 兆ドルの大台割り込む - 欧州で販売急減

電気自動車 (EV) メーカー、米テスラの株価が 25 日に急落し、時価総額は 1 兆ドル(約 150 兆円)の大台を割り込んだ。 欧州での大幅な販売急減が報告された。 テスラの株価は 8.4% 下落し、302.80 ドルで取引を終えた。 時価総額は 9,740 億ドル。株価は 4 営業日連続安となり、この間の下落率は 16%、時価総額は 1,860 億ドル減少した。 欧州自動車工業会  (ACEA) によると、1 月の EV 販売台数は業界全体で 37% 増加した一方で、テスラの欧州販売は 45% の落ち込みとなった。

ブルームバーグ・インテリジェンス (BI) の上級アナリスト、スティーブ・マン氏は「テスラの 1 月の販売台数急減で同社の欧州での夢は行き詰まっている」と指摘。 EV 大手のテスラは「競争やイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) を巡る論争に直面している」と述べた。 テスラの状況は急速に変化している。

米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利した後、同氏とマスク氏との友好関係がテスラの完全自動運転車開発の野心的目標にとって規制上の課題を容易にすると期待され、株価は急騰した。 しかし、12 月中旬に上場来最高値を記録した後は下落基調が続いており、販売鈍化に対する懸念や、政治に没頭するマスク氏を巡る不安が影を落としている。 (Esha Dey、Bloomberg = 2-26-25)


世界の EV・HEV 販売、1 月は前年比 18% 増 欧米が中国上回る伸び

世界全体で今年 1 月に販売された完全電気自動車 (EV) とプラグインハイブリッド車 (PHV) は前年同月比 17.7% 増の 130 万台に達した。 調査会社ロー・モーションが 12 日明らかにした。 中国の販売台数は 11.8% 増の 70 万台、欧州は 21% 増の 25 万台、北米(米国・カナダ)は 22.1% 増の 13 万台で、欧米の伸びが中国を上回ったのは昨年 2 月以降で初めて。 これら以外の地域では 50% 増加した。

ロー・モーションのデータマネジャー、チャールズ・レスター氏は、欧州連合 (EU) のより厳格な二酸化炭素 (CO2) 排出規制が発効した中で、欧州自動車市場は堅調な滑り出しとなった一方、中国は春節(旧正月)の連休が 1 月に始まった影響もあり販売台数は前月比 43% も落ち込んだと述べた。 欧州ではドイツの販売台数が 40% 余り増加。 これは昨年 1 月に EV 購入補助金が突然停止されて販売が減少した反動が生じた面がある。 フランスは PHV 向け重量税導入が響き、52% 減となった。 (Alessandro Parodi、Reuters = 2-12-25)


欧州 EV 販売、初の減少 24 年、補助金終了響く

【ダボス】 欧州自動車工業会が 21 日発表した 2024 年の欧州連合 (EU) 各国の電気自動車 (EV) の新車登録台数は、前年比 5.9% 減の 144 万 7,934 台だった。 EV 販売が前年を下回るのは初めて。 ドイツなどで購入補助金が打ち切られ、充電インフラの整備が遅れていることも響いた。 欧州で EV 失速が鮮明になっている。

ハイブリッド車 (HV) は 20.9% 増と急伸した。 ガソリン車などを合わせた全体では 0.8% 増の 1,063 万 2,381 台と、2 年連続でプラスだった。 日本勢では、HV が強いトヨタ自動車が、高級車ブランド「レクサス」を含めて 17.5% 増の 85 万 6,654 台と好調だった。 (kyodo = 1-21-25)


VW の新型EVセダン『ID.7』、1 回の充電で航続 941km 達成 … カタログ値を 32% 上回る

フォルクスワーゲンは新型 EV セダンの『ID.7』の「Pro S」グレードが、1 回の充電で 941km の走行に成功したと発表した。 このテストは、イタリア南部ナルドーのサーキットで行われた。 941km の記録は、同モデルの最大 WLTP 走行距離 709km を 232km、率にして 32.7% 上回るものだ。 テストに使用された『ID.7 Pro S』は、標準的な技術パッケージを搭載し、210kW (286ps) の出力を発揮する市販モデルだ。 941km の走行中、ID.7 Pro S の平均消費電力はわずか9.2kWh/100km という驚異的な低さを記録した。 これをディーゼル燃料に換算すると、約 1 リットル/100km に相当する。

このテストは、ID.7 Pro S の最大効率を測定することを目的として実施された。 テストドライブは、ナルドーのロースピードリングで行われ、気温 5 - 15 度の環境下でフォルクスワーゲン・ドライビング・エクスペリエンスのプロドライバーによって完遂された。 12.5km のサーキットは、様々な交通シナリオと耐久テストを効果的にシミュレートできるよう設計されている。 効率性テスト中の平均速度は 29km/h で、これは大都市のラッシュアワー時の典型的な速度に相当する。

ID.7 Pro S の優れた効率性の基盤となっているのは、強力な空力性能と最先端のドライブシステムだ。 装備によって異なるが、空気抵抗係数は低い 0.23 を実現している。 また、「APP550」と呼ばれる革新的で高効率なドライブは、経済性と力強さを兼ね備えている。 リアアクスルに統合された電動ドライブモーターは最大トルク 545Nm を発生させ、公式 WLTP サイクルでの消費電力を 16.2 - 13.6kWh/100km に抑えながら、必要に応じて 0 - 100km/h 加速を 6.6 秒でこなすスポーティな性能も備えている。

さらに、ID.7 Pro S は最大 200kW の DC 充電能力により、急速充電も可能だ。 この充電能力を活用すれば、わずか 10 分で 244km 分のエネルギーを補給できる。 フル DC 充電能力では、バッテリーを 10% から 80% まで約 26 分で充電可能だ。 (Response = 1-20-25)


EV オーナーの 92% が「エンジン車」にもう戻らないワケ!
 「世界 2 万 3,000 人調査」で明らかになった満足度 & 課題とは?

EV 調査結果、世界で広がる支持

多くのドライバーにとって、これまで電気自動車 (EV) への乗り換えは他人事のように感じられていたかもしれない。 しかし、時が経つにつれ、その意識は徐々に高まってきている。 重要なのは、すでに EV を所有しているオーナーたちの声だ。 実際、EV オーナーは電動モーターで走る新たな愛車に満足しているのだろうか。 世界 38 か国にまたがる 64 の EV ドライバー協会からなる非営利ネットワーク「Global EV Alliance (GEVA)」が 2024 年 11 月に発表した調査リポートによると、EV オーナーの「92%」は次の車も EV であると回答したことが報告されている。

この調査は 2024 年 8 月 27 日から 11 月 20 日にかけて行われ、18 か国(オーストリア、ブラジル、カナダ、コスタリカ、フランス、ドイツ、ハンガリー、インド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、スイス、英国、米国)の EV オーナー「2 万 3,254 人」が回答している。 ただし、この組織は EV 普及を推進している団体であるため、その調査結果にはバイアスがかかっている可能性があることも考慮する必要がある。

EV 満足度 97%、次も選ぶ理由

調査結果から、EV ユーザーの満足度が明確に浮き彫りになった。 なんと、「97%」のユーザーが現在の EV の運転に「満足」または「とても満足」と回答している。 さらに、もし明日車を買い替えると仮定した場合、92% が再び EV を選択すると答え、わずか 1% が確実にガソリン車やディーゼル車 (ICE) に戻ると回答した。 残りの 7% のうち、4% はプラグインハイブリッド車 (PHV) を選択し、残りは未定としている。 「これは驚くほど高い数字であり、ドライバーが EV 体験を気に入っており、EV が今後も普及していくことを裏付けています」と、GEVA の会長兼ディレクターであるジョエル・レビン氏は述べている。

また、ノルウェー EV 協会の事務次長であるピーター・ハウゲランド氏は、「これらの結果から、EV ドライバーは自分の選択に非常に満足しており、EV の人気が低下しているという報告は誇張されていることがわかります」と述べ、EV の人気が依然として高いことを強調した。

EV 購入理由のトップ 3

リポートによると、EV 購入の理由として最も多かったのは「維持コストの安さ」、次いで「環境への優しさ」、そして「地域環境への好影響や騒音の低減」の順となっている。 さらに、環境問題に関心があるかどうかに関わらず、回答者の 90% が「気候変動は大きな問題である」と認識している点が興味深い。 「EV に乗っていて何が不都合を経験しましたか」という質問には、最も多くの回答者が「特にない」と答えた。 しかし、次点として、

・ 急速充電スタンドの少なさ
・ 充電時間の長さ
・ 充電器の不具合の多さ

が挙げられた。 充電場所については、自宅が 72% を占め、

・ 急速充電スタンド : 13%
・ 公共充電スタンド : 7%
・ 勤務先 : 7%
・ 私設充電場所 : 1%

と報告されている。 また、「EV で長距離旅行をするには、ガソリン車やディーゼル車よりも計画が必要」との質問に対して、ブラジル、インド、コスタリカ、ポルトガルの参加者は明確に同意しており、他の国々でも程度の差はあるものの、すべての国で同様の意見が示された。

充電の不安とその実態

「航続距離への不安を頻繁に感じる」という意見には、はっきりと同意する意見は少ないが、インド、ブラジル、コスタリカ、ポルトガルなどでは若干の懸念が見られる。 「長い旅行時に充電が心配になる」という意見については、ブラジルとインドは明確に同意している一方で、ドイツでは同意しない結果となった。 「充電ステーションで行列に並んだことがありますか」という質問に対して、回答は「ない」が 28%、「まれにある」が 40%、「時々ある」が 18%、「よくある」が 3%、「いつも」が 1%、「充電スタンドを利用していない」が 10% という結果となった。

故障している充電ステーションに遭遇した経験については、「ない」が 20%、「まれにある」が 37%、「時々ある」が 27%、「よくある」が 5%、「いつも」は 0%、「充電スタンドを利用していない」が 10% という結果が出た。 充電スタンドでカードを使えるようにすべきかという質問には、「強く賛成」が 53%、「賛成」が 28%、「どちらでもない」が 10%、「反対」が 4%、「強く反対」が 3%、「わからない」が 2% という意見が集まった。

「運転前に充電する場所を確認しておく」という意見には、

・ 強く同意 : 30%
・ 同意 : 47%
・ どちらでもない : 10%
・ 不同意 : 7%
・ 強く不同意 : 3%
・ わからない : 4%

という結果が示された。

EV 市場成長には利便性向上

EV は多くのユーザーにとって、もはや欠かせない存在となっている。 しかし、充電インフラには依然として改善の余地があり、リポートではその必要性が指摘されている。 現在、ほとんどの EV ドライバーは自宅で充電しているが、利便性の高い充電ソリューションの開発がEV市場の成長にとって重要な要素であることは明白だ。 それでも、EV シフトは確実に進行中であり、少しずつではあるが着実に進展していることが今回のレポートで示された。 (仲田しんじ、Merkmal = 1-9-25)


テスラ世界販売 178 万台、初の前年割れ 中国勢との競争激化で

米電気自動車 (EV) 大手テスラが 2 日公表した 2024 年の世界販売は、前年比約 1% 減の 178 万 9,226 台だった。 テスラが販売実績の公表を始めて以来、年間販売が前年割れとなるのは初めて。 主力市場の米中両国で販売が伸び悩んだとみられる。 24 年 10 - 12 月期は四半期として過去最高となる 49.5 万台を売って巻き返しを図ったが、通年で前年を上回るには、51 万台以上の販売が必要だった。

販売の頭打ちの背景には、EV 市場の減速と世界的な競争の激化がある。 米国では新しもの好きや環境意識の高い層への EV 販売が一巡し、市場の成長ペースは鈍った。 24 年はむしろ日系メーカーが強いハイブリッド車 (HV) の人気が高まった。 (asahi = 1-3-25)

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それでもテスラ乗りますか マスク氏に抵抗始めた利用者

マスク氏がトランプ次期政権への影響力を高める中で「マスク離れ」の動きも出ている

【ニューヨーク = 川上梓】 米電気自動車 (EV) 大手、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) がトランプ次期政権への影響力を強める中、米国のテスラ利用者の一部でマスク氏に反対の意思表示をする動きが広がる。 政治的な発言などへの反発が背景にある。

「反マスク」ステッカー、選挙後に販売急増

「テスラの EV を本気で手放すことを考えている。」 カリフォルニア州ロサンゼルス在住のコンサルタント、シェリル・アーレンス・ヤングさんは 2021 年からテスラの EV に乗り続けてきたが、最近のマスク氏の行動や言動に嫌悪感を感じているという。 マスク氏が多額のお金を持っていることを考えると、彼が今後何をやろうとしているのか怖くなった。(ヤングさん)」 マスク氏がトランプ氏へ多額の献金を行い、政治的な影響力を強める中で、テスラに乗ることを恥ずかしいと感じるようになった。

売却に迷うヤングさんが購入したのが、EV に貼って「反マスク」の意思表示をするステッカーだ。 マスク氏の名前にバツをつけたデザインなど 10 種類以上がアマゾンなどのインターネット通販で売られている。 「私はイーロンが狂う前にこの車を購入した」、「アンチ・イーロン(・マスク)」など様々な表記やデザインが並ぶ。

ステッカーを企画して販売しているマシュー・ヒラーさんは「マスク氏がトランプ氏支持を表明した 24 年 7 月以降に販売が急増した」と話す。 24 年 11 月 5 日の大統領選翌日には 1 日で通常の 6 倍の 300 枚を売り上げ、過去最高となった。 「テスラを所有することを恥ずかしく思っているドライバーが大勢いることが分かった。(ヒラーさん)」

利益誘導を懸念 マスク氏に否定的な見方も

テスラは米国の EV 市場で 5 割近いシェアを持つ。 気候変動対策に取り組む環境配慮型のイメージが支持され、先進的なブランドとして認識されてきた。 テスラの工場があり、全米で EV 登録台数が最多のカリフォルニア州はテスラの利用者が多い。 反マスク運動は民主党支持のテスラ利用者の間で特に広がっているようだ。 米テレビ局 NBC の世論調査ではマスク氏に対して否定的な見方は 21 年に全米で 21% だったが、同氏がトランプ氏支持を表明して以降、24 年 9 月時点で 45% に上昇した。

トランプ次期政権入りでマスク氏の運営会社に有利な政策が進めば利益誘導となる。 実際、トランプ氏はテスラが成長を見込む自動運転に関する規制緩和を検討している。 テスラに追い風でも、マスク氏のトランプ政権接近を嫌う利用者はいる。 1 日には西部ラスベガスのトランプ氏一族が経営するホテル前でテスラの「サイバートラック」が爆発する事件が起きた。 トランプ氏やマスク氏との関連性は明らかになっていないがテロと見られる。

5 割は「購買変化なし」 根強いテスラファンも

一方、テスラには根強いファンが多く、マスク氏に抵抗があってもテスラに乗り続ける利用者が多いのも実態だ。 世論調査機関のユーガブは 24 年 10 月に米国の有権者約 5,000 人に調査を実施。 マスク氏がトランプ氏を支持したことでマスク氏の運営企業の製品購入に対する意識が変わったかを尋ねた。 このうち約 5 割は「購買に変化はない」と回答した。

フロリダ州のテスラ利用者、カーソン・ギャロさんは「マスク氏を嫌ってもテスラを運転する理由は商品力だ。 買う理由がある。」と話す。 人工知能 (AI) による運転支援などスマートフォンのような先進的な機能が魅力だといい、「他メーカーへの買い替えは考えていない(ギャロさん)」と主張する。 テスラは 24 年の暦年販売が初めて前年比でマイナスになった。 米調査会社コックス・オートモーティブによると米国販売は前年比で 6% 減った。 一方で一連の販売減は EV 普及の遅れや市場競争によるものが大きく、反マスク運動がさらに販売台数を押し下げるかどうかは不透明だ。 (nikkei = 1-3-25)


中国 EV 「90 万円値引き」でも売れない? 市場低迷のタイ 一方、トヨタの HV は「4 割伸びた」

【バンコク = 藤川大樹】 タイの首都バンコク郊外で自動車展示会「タイ国際モーター・エキスポ」が 28 日開幕し、報道陣に公開された。 タイの自動車市場は今年に入り低迷が続き、先行きは不透明感が漂う。 日本や中国、韓国など計 9 カ国から 42 の自動車ブランドが出展。 電気自動車 (EV) を柱に攻勢を強める中国メーカーは新型モデルを相次ぎ発表し、地元メディアの注目を集めた。

トヨタ自動車は、10 月に発売した中型セダンのハイブリッド車 (HV) 「新型カムリ」などを出展。 現地法人のトヨタ・モーター・タイランドの山下典昭社長は記者会見で「HV (の販売台数)は前年に比べて 4 割以上増えているのに対し、EVは 1% 増にとどまる。 足元では EV よりも HV の電動化がお客さまには選択されている」と述べた。

中国メーカーは大幅な値引きでシェア拡大を狙う。 ただ、山下氏は「20 万バーツ(約 90 万円)の値下げなど非常に驚いている。 それが直接台数には結び付いていない。」との認識を示した。 タイ市場は家計債務の上昇に伴うローン審査の厳格化を受け、低迷が続く。 トヨタによると、1 - 9 月の国内販売台数は前年同期に比べ 2.3% 減の 43 万 8,659 台にとどまっている。 (東京新聞 = 11-29-24)


「安価な米国製 EV」の夢、はかなく散るのか

米国のドライバーに 2 万 5,000 ドル(約 390 万円)の電気自動車 (EV) を提供するという夢がピンチに陥っている。 米実業家イーロン・マスク氏はこれを断念した。 ドナルド・トランプ次期米大統領が支援する見込みはなさそうだ。 さらに、米自動車業界が置かれた経済状況もその夢を後押しするものではない。 カギとなる問題は何か。 米国では安価な新車をもはや販売していないことだ。 最近の新車平均価格の半分程度の価格帯で、高価な技術を詰め込んだ EV を提供できる自動車メーカーがどこにあるだろうか。

「2 万 5,000 ドルの通常モデルを用意するのは無意味だ。」 マスク氏は数週間前にこう述べた。 「そんなことはばかげている。」 確かにそうだ。 マスク氏によると、同氏が率いる EV 大手テスラは 2026 年に登場予定の 2 万 5,000 ドルのロボタクシーの開発には依然として取り組んでいるという。 だが、同氏の思い描く自動運転車がその時までに実現するとは考えていない人々、あるいはハンドルやペダルを残した 2 万 5,000 ドルの新型 EV なら買いたい人々にとっては何の希望にもならない。 米国向けの低価格 EV の製造に否定的な見方をするのはマスク氏だけではない。

「(低価格 EV の)市場は最悪だ。」 新興 EV メーカー、ルーシッド・グループのピーター・ローリンソン最高経営責任者 (CEO) は、筆者と同僚のクリストファー・ミムズが新たに配信し始めたポッドキャストの番組「Bold Names (ボールド・ネームズ)」でこう語った。

ルーシッドは近く登場する新型 SUV (スポーツ用多目的車)「Gravity (グラビティ)」の 9 万ドルのバージョンの受注を開始しており、2026 年秋にはテスラのクロスオーバー SUV 「モデル Y」と競合する、より手頃な中型車を発売したい考えだ。 この車種は 5 万ドル未満に価格を抑えると言われている。 だが低価格 EV について、ローリンソン氏は自社の技術を他社にライセンス供与する形でなければ肩入れしないと述べた。 「量産体制に入ると、恐ろしく利益率が低下するということで悪名高い市場だ。」 ローリンソン氏は低価格 EV についてこう述べた。 「数百万台規模の生産基盤を整えることが理にかなうとは思えない。」

2 万 5,000 ドルの車を製造する構想を諦めることは、自動車の電動化がほぼ一夜にして成し遂げられ、あらゆる所得層向けの EV が路上を走る何千万台もの車両に取って代わると見込んでいた人々には痛手となる。 反対に、少なくとも米国では、EV への移行はなかなか進まないという見方に戻りつつある。 マスク氏は約 2 年前、自動車業界に波乱を巻き起こした。 低価格 EV の開発を目指す中で、テスラは生産コストを半減させるという信じられない目標を掲げ、その一方でセダンの「モデル 3」と SUV の「モデル Y」を値下げして価格戦争を仕掛けた。

これに対し競合他社は、テスラや同社の今や断念された主張に後れを取らないように、独自の低価格 EV を目指してきた。 だが、彼らの電動化への広範な取り組みは困難に見舞われている。 例えば、フォード・モーターは需要低迷を受け、電動ピックアップトラック「F-150 ライトニング(価格は約 6 万 3,000 ドルから)」の生産を一時停止すると先月発表した。

EV 販売台数の伸び鈍化がこの状況をさらに複雑にしている。 次期トランプ政権が EV 購入を支援する税控除を廃止するとの見方が強まっていることも影響しそうだ。 テスラの米国での最安値モデルは約 4 万 3,000 ドルからだが、7,500 ドルの税控除を適用すると 3 万 5,500 ドルになる。 米国で低価格自動車(EVかどうかは別として)を製造・販売することはそれ以前から困難だった。

そもそも、低価格自動車は利益が出にくい。 それは高価な車載電池を計算に入れる前であっても、インフレ高進で何もかも値上がりする前であっても、中国の競合メーカーが非常に安価な独自の EV を製造する能力をいかんなく発揮する前であってもそうだった。 大いに注目を集めているのは、新車が以前に比べはるかに高額になったという事実だ。 それは最近のあらゆるものの価格と同様だ。 自動車評価サイト、ケリー・ブルー・ブックによると、米国で 10 月に販売された新車の平均取引価格は 4 万 8,623 ドルと、新型コロナウイルスが流行する前の 2019 年と比べて約 1 万ドル高くなっている。

調査会社 JD パワーによると、10 年前には、米国の新車の約 40% が 2 万 5,000 ドル未満(奨励金や割引を含む)だった。 今年はわずか 9% だ。  2020 年にマスク氏が近々 2 万 5,000 ドルの車が登場すると発言し、興奮をあおった際には、米国の新車市場の状況はすでに大きく違っていた。 その時でさえ、2 万 5,000 ドル未満の新車の割合は約 25% に低下していた。 JD パワーによると、それが 1 年後には 15% になった。 さらに 6% まで落ち込んだが、今年はわずかに反転している。 金利上昇で車の購入が困難になった一部の消費者を念頭に、自動車メーカーが販売促進のための策を講じているためだ。

この間に何が起きたのか? コロナ禍だ。 それで自動車価格が高騰した。 最初は供給不足の影響で値上がりし、次に自動車メーカー各社が利益の出ない車種を廃止し、ラインアップを調整したことで価格は高止まりした。 「サプライチェーン危機の際に、自動車メーカーは最大限の利益を得ようとした。 そうすると、より大型で高価な、利益率の高い車種を優先することになる。」 JD パワーのタイソン・ジョミニー副社長(データ・分析担当)は筆者にこう説明した。 「今や(これらの安価なモデルは)もう存在しない。」

現在、米国で希望小売価格が 2 万 5,000 ドル未満の全車両の 3 分の 2 以上を、わずか 4 車種が占めている。 トヨタ自動車の「カローラ」、起亜の「フォルテ」、日産自動車の「セントラ」、ゼネラル・モーターズ (GM) 傘下シボレーの「トラックス」だ。 人々が安価な車を望んでいないわけではない。 最近では中古車を購入するしかない人々が大勢いる。 西側の自動車業界幹部がじくじたる思いを抱くのは、自分たちが中国の競合メーカーに図らずも絶好の機会を与えてしまったかもしれないことだ。 彼らは米国以外の消費者が飛びつくような低価格 EV の製造能力を示している。

トランプ次期大統領は、中国からの輸入品を事実上排除するために一段と高率の関税をかけると約束しているが、それと同時に、中国自動車メーカーが米国に工場を建てることはいとわない可能性もうかがわせる。 ただ、そのような動きは、中国企業の労働コストが本国の水準よりも確実に上昇することを意味するだろう。 一方、マスク氏にとっても世界の状況は急速に変化しているようだ。 同氏はテスラの既存モデルの低価格バージョンを提供すれば、来年の販売台数が最大で 30% 増える可能性があると語っている。

「より低コストの車を作るために必要な作業量はとてつもなく膨大になる。」 マスク氏は 10 月にアナリストらに対し、こう語った。 「車のコストを 20% 削減するようなことは、それを一から設計し、工場をまるごと建設するよりも難しい。 その苦労は耐え難いほどだ。」 そしてこう続けた。 「 車のコストを 20% 削減したヒーローを描く映画はあまりないが、ぜひそういう映画を作るべきだと言っておこう。」 (Tim Higgins、The Wall Street Journal = 11-20-24)


EV の中古価格急落、所有者やディーラーが苦境に

電気自動車 (EV) が「高価な買い物」から「中古車市場での特価品」に変わりつつある。 リセール価値が急落しているためだ。 2 年前にはサプライチェーン(供給網)の混乱によって自動車全般が不足していたため、中古 EV の一部車種は新車と同等かそれ以上の価格で売られていた。 今では状況が一変した。 ディーラーの駐車場は売れ残りの EV であふれかえり、テスラをはじめとする自動車各社は EV の新型車を売るために値下げしている。

新車 EV の値引きは、低迷する販売をてこ入れするのに役立った。 7 - 9 月期には好条件のローン契約がテスラの世界販売台数を押し上げ、今年に入ってからの減少の流れを反転させた。 ただ、次々に行われる値引きによって中古EV価格は急落しており、自動車業界は EV 技術への大きな賭けが失速し続ける中で、新たな課題に直面している。

自動車ショッピングサイトのエドマンズによると、9 月時点で 3 年落ちの EV の平均販売価格は約 2 万 8,400 ドル(約 425 万円)と、同じ年式のガソリン車を下回り、2023 年初めの水準からは 25% 下落した。 こうした中古 EV 価格の急落は、中古車市場全体の動向とは対照的だ。 エドマンズのデータでは、この期間の中古車全体の価格は安定していた。 アナリストによると、中古 EV は価格が急落したことで、予算を抑えたい消費者への訴求力が高まる可能性がある。 それと同時に、割高な値段で EV を購入した所有者の多くは現在、ローン残高が車の価値を上回る現象に直面している。

最大級の打撃を受けているのは、一部のテスラ所有者だ。 昨年世界で最も多くのEVを販売したテスラは米国で、一部の新モデルの価格を3分の1も引き下げた。他の自動車メーカーも値下げで対応した。アナリストやディーラーによると、これに加え、レンタカー会社のハーツが今年1月に大量のテスラ車を中古車市場に放出したため、価格はさらに下落した。 中古車情報サイト「カーグルズ」のデータによると、テスラの人気モデルである「モデル 3」と「モデル Y」の中古車の平均販売価格は、過去 1 年間に約 25% 下落した。

2018 年式のモデル 3 を新車で購入したクリスチャン・ラングさんは「テスラが値下げを続けたため、中古 EV 市場が打ちのめされた」と話した。 2023 年初めの時点では、ラングさんのモデル 3 の評価額は約 3 万 5,000 ドルで、ローン残高とほぼ同じだった。 車の購入者は通常、ローンの支払いが進むに従ってエクイティ(車の価値とローン残高との差額)が徐々に大きくなる。 しかし、ラングさんに起こったことはその逆で、テスラの新車価格の急激な値下がりにより、所有車の評価額も大きく下がってしまった。 今年初めにはローン残高を 1 万ドルも下回るようになった。

ラングさんはテスラへの不満が募ったため、モデル 3 を売り、起亜の「EV9」を購入した。 テスラにコメントを求めたが、回答は得られなかった。 EV の購入意欲が今年も低下し続ける中で、EV メーカーは、リース契約料の抑制、低金利ローンの提供など、新型 EV の販売促進策をより積極化しており、これが中古 EV の需要を奪っている。 一部の EV ブランドは、EV 購入者が得られる 7,500 ドルの税額控除をリース契約に直接反映させることで、リース料を引き下げている。

エドマンズによると、こうした対応によって EV リース料の月額平均は 8 月に 582 ドルとなり、昨年初めの 950 ドルから低下した。 エドマンズの分析部門ディレクター、アイバン・ドルーリー氏は、このリース料水準は、ローンを組んで 2 万 8,000 ドルの中古 EV を購入した場合の月々の返済額とほぼ同じになると指摘し、リースの利点を強調した。 同氏はさらに、1 - 2 年落ちの中古 EV はどのディーラーでも新車リースが最大の競争相手になっているとの見方を示した。

リース契約はあっという間に新車 EV の購入方法として最大の人気を集めるようになった。 エドマンズによると、リース契約は昨年初めにはディーラーでの EV 販売の 16% を占めていたが、現在は 80% 近くに達している。 自動車業界幹部らは、市場の動向を読み間違えたことを認めており、こうした判断ミスが中古 EV の価格を圧迫している。 自動車メーカーは、EV 供給を抑制するためこれまでの野心的計画を修正し、減産や生産拡大計画の先送りなどに動いている。 メーカーの中には、EV のリセール価値下落を防ぐため、EV のリースに慎重になっているところもある。

ゼネラル・モーターズ (GM) のポール・ジェイコブソン最高財務責任者 (CFO) は 7 月、アナリストらとの電話会見の中で、「目標達成のためだけに生産し、需要がないという状況には陥りたくない」とし、「残存価値の問題はかなり長く続く」と述べた。 中古市場の価格は、中古 EV 購入時の新たな連邦税額控除によっても打撃を受けている。 昨年初めに導入された 4,000 ドルの税額控除は、販売価格が 2 万 5,000 ドルを下回る EV にしか適用されない。 アナリストによると、このような要件があるため、一部のディーラーはこの額を下回るよう値下げしている。

ミシガン州のディーラー大手フェルドマン・オートモーティブ・グループのデーブ・カタルスキー最高執行責任者 (COO) によると、同社の店舗では月間 200 台超の中古 EV を販売しており、その数は 1 年前と比べて大幅に増加している。 同氏はさらに、中古EVの税額控除が消費者の関心を刺激するのに役立っている上、ハーツが手放した安価なテスラ車も市場に流入していると言及した。 「テスラ車が買えるようになったため、それに多くの人が集まっている。」

問題になりそうな兆候もある。 EV 下取り価格に関するエドマンズの調査によると、8 月時点では、EV 所有者のローン残高の平均はその車の価値よりも約 1 万ドル多く、その差は 2023 年初めの約 8,000 ドルから拡大している。 カーグルズの業界分析部門責任者ケビン・ロバーツ氏によれば、EV リースの急増も、より長期的な影響を及ぼす可能性がある。

現時点では在庫の積み上がりに歯止めをかけるのに役立っているものの、2 - 3 年後には、状態の良い中古 EV が大量に市場に戻ってくる可能性が高い。 こうした波が実際に来れば、価格に一層の下押し圧力がかかる可能性があるとロバーツ氏は指摘する。 リース車両を所有する自動車メーカーや貸し手は、リセール価値が想定より大幅に下がった場合、損失を負担する立場に置かれることになる。 エドマンズのドルーリー氏は「この状況を肯定的に捉える方法はない」とし、ディーラーの EV の 77% はリースされていると述べた。 「問題はそれらが市場に戻ってくることだ。」 ( Sean McLain、The Wall Street Journal = 10-17-24)

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