ファーウェイ包囲の切り札 米半導体設計ツール断絶 米国が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への規制を強化している。 包囲網の切り札として浮上してきたのが、最先端半導体の開発に不可欠な「EDA (電子設計自動化)」ツールだ。 同社が強みとするプロセッサーや通信用ベースバンド IC などの設計には、米企業製の EDA ツールが欠かせない。 米企業が提供する EDA ツールが業界標準となっているからだ。 この EDA 分野での圧倒的な優位性を生かすことで、ファーウェイに揺さぶりをかけてきた。 米商務省産業安全保障局 (BIS) は 5 月 15 日、ファーウェイへの規制強化を目的とした輸出管理規則 (EAR) の改正を発表した。 その狙いは、同社独自開発の半導体のサプライチェーンにおいて、米企業のソフトウエアや製造装置を利用できなくすることにあるとみられる。 EAR に基づいた禁輸対象(エンティティーリスト)にファーウェイおよび関連企業が追加されたのは、2019 年 5 月 16 日である。 同日以降、「米国で造られた製品(米国製品)」、「米国外で造られた製品(非米国製品)のうち、米国で造られた部品(米国製部品)や米国由来技術の価値が金額ベースで 25% を超えるもの」をファーウェイに供給することが禁じられた。 裏を返せば、米国産部品や米国由来技術の割合が 25% 以下の非米国製品ならば供給できるということだ。 エンティティーリスト入り後もファーウェイが独自開発のプロセッサーなどを確保できていたのは、この条件のおかげだろう。 同社はこれらの半導体について、傘下の海思半導体(ハイシリコン)で設計し、台湾積体電路製造 (TSMC) をはじめとする半導体受託製造会社(ファウンドリー)に造らせてきた。 エンティティーリスト入りでファーウェイがこのサプライチェーンを維持できるかどうかに関心が集まったが、大きな影響はみられず、同社はむしろ独自開発の対象を高周波 (RF) 半導体などにも広げてきた。 だからこそ、米政府は新規制でさらなる強化に踏み出したわけだ。 ■ わずかな可能性も潰す 新規制の効果は、まず製造面に表れた。 新規制の発表直後、TSMC が米アリゾナ州に半導体前工程工場を建設することを明らかにしたのである。 併せて、「ファーウェイからの新規受注を停止」とも報じられた。 TSMC はファーウェイからの受託が新規制に抵触すると判断したもようだ。 ファーウェイの最新プロセッサーや次世代通信規格「5G」対応ベースバンド IC は、7 ナノ(ナノは 10 億分の 1)メートルプロセスを前提に設計されている。 現時点で 7 ナノメートルプロセスの量産能力を持つのは、TSMC の他には韓国サムスン電子だけ。 そのサムスンも、米国の狙いを鑑みればファーウェイの依頼を受けるとは考えにくい。 とはいえ、数々の技術を取り込んできた中国が、将来的に最先端半導体の量産体制を構築する可能性も完全には捨てきれない。 そこで、米政府はそのわずかな可能性をも潰すために、EDA ツールの利用についても規制を強化したのだ。 EDA ツールの上位 3 社は、シノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズ、メンターといずれも米企業である。 18 年秋に明るみに出たファーウェイ「核心的サプライヤー」のリストにもシノプシスとケイデンスの名前があった。 ファーウェイやハイシリコンがプロセッサーやベースバンド IC などの設計に米企業の EDA ツールを使っているのは間違いない。 そもそも、米企業の EDA ツール自体が米国製品の一種であり、エンティティーリスト入りの時点で何らかの影響が出ていてもおかしくなかった。 ファーウェイやハイシリコンが既に購入していた分は引き続き使えたとしても、新規に購入したり、アップデートを受け取ったりすることはできなかったはずである。 しかし、実際には前述の通り、大きな影響はみられなかった。 このことから、ファーウェイやハイシリコンはグループ外の企業に技術者を出向させるなどして、規制を回避していたのではないかという見方もある。 今年 5 月に BIS が打ち出した新規制は、こうした「抜け道」も封じる狙いがありそうだ。 ここで考えられるファーウェイ側の対策は 2 つある。 第 1 に、米国製以外の EDA ツールを中国など米国外で開発すること。 第 2 に、これまでのように何らかの抜け道を探して米国製の EDA ツールを使い続けるということもあり得る。 ただ、EDA によってつくり出された強固で複雑な半導体設計チェーンを考えると、いずれの試みもほぼ不可能である。 ■ 複雑な EDA チェーン EDA と一言で言っても、例えば業務用ソフトは文書作成に Word (ワード)、表作成に Excel (エクセル)、プレゼンテーション作成に PowerPoint (パワーポイント)があるように、用途や機能が異なるツールがある。 複数の EDA ツールを使うことで、欲しい半導体の仕様を、半導体製造装置向けのデータに変換することができる。 EDA ツールは大きく 2 種類に分類できる。 1 つが設計そのもの、すなわち仕様などの抽象的なデータを実物に近いデータにする作業を実行するツール(設計系ツール)。 もう 1 つが設計結果を検証するツール(検証系ツール)だ。 現在、EDA ツールが扱える抽象的なデータは、欲しいデータの処理内容を表した動作記述で、ソフトウエアプログラミングでおなじみの C 言語や C++ で表現する。 ただし、この動作記述を、半導体製造装置向けのデータに一気に変換できる EDA ツールは存在しない。 複数の設計系ツールを使って、順繰りに、抽象度を下げる。 抽象度を下げた設計結果が得られると、検証系ツールを使ってその設計結果が正しいかどうかをチェックする。 結果が正しければ、次の設計系ツールを使って抽象度を下げる、そして検証するという繰り返しになる。 ■ 全ツールを提供できるのは 2 社 市場にある、論理 IC の設計系ツールは、主に 3 種類。 動作記述を RTL (レジスター転送レベル)記述に変換する「高位合成ツール」、RTL 記述をネットリスト(接続情報)に変換する「論理合成ツール」、ネットリストを製造装置で使うマスクのデータに変換する「配置配線ツール(レイアウト設計ツールとも呼ばれる)」である。 検証系のツールは種類が多いが、代表的なツールとしては、論理回路の機能を動的に解析する「論理シミュレーター」、論理回路の遅延時間を静的に解析する「スタチック・タイミング・アナライザー」、マスクデータを検証する「レイアウト検証ツール」を挙げられる。 ここまでの説明で登場した EDA ツールをすべて提供できる企業は、現在、シノプシスとケイデンスの 2 社だけである。 先端プロセスの論理 IC を受託製造できる 2 社、すなわち TSMC とサムスンは、シノプシスとケイデンスのツールを使って設計した IC を製造できる体制を築いている。 なお、独シーメンスの傘下に入ったメンターもいくつかの EDA ツールを提供しているが、レイアウト検証ツールや論理シミュレーター、高位合成ツールを除くと、シノプシスやケイデンスに比べて影が薄い。 EDA ツールとともに IC 設計で使われる IP コア(回路の設計情報)について触れておく。 英アームが提供する CPU (中央演算処理装置)コアは IP コアの代表例で、論理合成ツールに入力可能な RTL 記述として提供される。 IP コアを購入することで、その IP コアの設計をしなくて済む。 ■ 中国での開発は無理 ほぼすべての EDA ツールは米国製であることから、ファーウェイの機器で重要な役割を担う先端論理 IC を、米国由来のソフトウエアなしで設計することは不可能といえる。 EDA ツール企業で実際に開発しているのは中国系やインド系のエンジニアが多く、中国系エンジニアが中国に戻って EDA ツールを開発すれば大丈夫だという声がある。 実際、中国内で EDA ツールを開発するプロジェクトは進行している。 こうして、米企業の EDA ツールの初期バージョンと等価な EDA ツールは開発できるかもしれない。 とりあえず動けばいいという IC はその初期バージョンで設計できるだろう。 しかし、競合する IC に勝るどころか、同じような性能で動く IC を設計するのさえ、ほぼ不可能だと思われる。 先端論理 IC の設計に使われる EDA ツールは、EDA 企業、スタンダードセル(基本的な回路)を手掛けるアームなどの企業、IC の受託製造企業、半導体メーカーや大手機器メーカーといった世界中の半導体設計者が協力して最適化作業をして、第 2、第 3 バージョンを仕立てている。 中国で開発した EDA ツールに対して、こうした最適化が行われることは難しく、そのツールでは市場競争力のある先端 IC は設計できないといえる。 EDA ツールに関しては、もう 1 つ留意しておきたいことがある。 EDA ツールはソフトウエアなので、製造装置と比べて、どこで誰が何のために使ったかは分かりにくい。 このため、EDA ツールの規制は製造装置のそれに比べて網をかけるのが難しいとの声がある。 しかし、米政府が本気になると、設計結果を得るために使ったツールの情報は比較的簡単に割り出せる。 デジカメで撮った写真に付加されるカメラの機種や撮影日時のような情報は、EDA ツールで得られた設計データにも存在するのが普通である。 設計結果本体は業界標準データ形式で表されるため、どのツールを使ったかは分からないかもしれない。 しかし、「付加データを見せろ」と言われれば、一発で分かってしまう。 上述したように、EDAツールは初期バージョンから次々に改良されていく。 バージョンが異なると、設計結果に差が生じる。 このため、ある設計データがどのバージョンで設計したかが分からないと、品質管理面で問題が起こる恐れがある。 設計データの付加データは意外に重要で、設計者がそれを保存しないことはあり得ない。 「付加データはないです」とは答えられない。 つまり、抜け道経由で米国製 EDA ツールを使って設計・検証することは、ほぼ不可能に近いのだ。 (小島郁太郎、高野敦、nikkei = 7-10-20) TSMC、ファーウェイから新規受注停止 米規制強化受け 【台北 = 鄭●(= 女偏に亭)方、黎子荷】 半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造 (TSMC) が、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)からの新規受注を止めたことがわかった。 米トランプ政権が求める禁輸措置に対応した。 ファーウェイはスマートフォン市場で世界 2 位だが、基幹半導体の供給が断たれれば次世代通信規格「5G」向けの端末開発などで影響が出る。 米中摩擦の激化で、サプライチェーン(供給網)の分断リスクが鮮明になっている。 複数の関係者が明らかにした。 TSMC は 15 日の米規制強化発表を受け、ファーウェイ側からの新規受注を停止した。 既に受注済みの分は 9 月中旬までは通常通り出荷できるが、それ以外は輸出に際し米の許可が必要になるという。 TSMC は日本経済新聞に対し「顧客の注文については開示しない」としつつ、「法律と規制は順守する」とコメントした。 米政府は 19 年 5 月にファーウェイに対する事実上の禁輸措置を打ち出したが、米国由来の技術やソフトウエアが 25% 以下であれば規制の対象外とのルールが「抜け穴」となっていた。 今回は 25% 以下でも米国の製造装置を使っていればファーウェイに輸出できないようにした。 (nikkei = 5-18-20) ◇ ◇ ◇ 米、ファーウェイへの圧力強化 半導体供給の「抜け穴」封じ [ワシントン] 米商務省は 15 日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への半導体輸出規制を強化すると明らかにした。 輸出規則を変更し、すでに禁輸措置対象に指定されている同社が米国の技術やソフトを利用した半導体を間接的に取得できないようにする。 ファーウェイへの輸出規制を巡っては、保守など一部取引に関して猶予が認められている。 商務省はこの猶予期間について、さらに 90 日間延長するとともに、延長はこれが最後になると表明した。 これに対し、中国はすぐさま反応。 中国共産党系メディアの環球時報は、中国がアップル、シスコシステムズ、クアルコム、ボーイングを含む米国企業を「信頼できない実体リスト」に加える用意があると報じた。 ロス商務長官は FOX ビジネス・ネットワークとのインタビューで、ファーウェイが外国企業との取引を抜け穴にして、実際に米国の技術を利用しているとした上で、今回の決定は「こうした抜け穴を封じる」狙いがあると強調した。 ある商務省の高官は今回の措置が「米国第一主義」の推進につながると指摘。 中国の報復については「様子を見る必要がある」とした。 ファーウェイからのコメントは得られていない。 ファーウェイへの規制強化は、同社に製品供給する台湾積体電路製造 (TSMC) にとっても打撃となる恐れがある。 TSMC は 15 日、米政府との「強力なパートナーシップ」によりアリゾナ州に総工費 120 億ドルの半導体工場を建設すると発表したばかり。 TSMC は「外部の専門家を交え法律面で分析し、当該規則の包括的な解釈に努める」と述べた。 ワシントンの弁護士で元商務次官補のケビン・ウルフ氏は、ファーウェイに対する輸出規制強化は「新しくかつ複雑」だが、同社以外の企業が設計し、米国の技術を利用して製造された半導体なら、許可要件がなくても引き続きファーウェイへの売却が可能になると指摘した。 ある国務省の高官は「今回のポイントは許可要件にあり、ファーウェイへの半導体供給を頭ごなしに拒否するものではない」とした上で、申請ごとに内容が審査されることから同社への出荷を巡る透明性は高まるとの見方を示した。 (Reuters = 5-16-20) ファーウェイ「海外向けスマホ」低迷の深刻度 中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は 3 月 31 日、2019 年の決算報告書を発表した。 アメリカ政府が 2019 年 5 月に同社をエンティティー・リスト(訳注 : アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断された企業等のリストで、事実上の禁輸対象)に加えて以降、初めての年間業績の披露となる。 それによれば、売上高は前年比 19.1% 増の 8,588 億元(約 13 兆円)、純利益は 5.6% 増の 627 億元(約 9,500 億円)と増収増益を達成した。 ファーウェイは非上場企業ながら四半期毎の業績を公表している。 通年決算と同時に発表された 2019 年 10 - 12 月期の売上高は前年同期比 7.73% 増の 2,480 億元(約 3 兆 7,500 億円)と、2019 年の四半期のなかでは最低の伸び率を記録した。 同年 1 - 3 月期の売上高の伸び率は 39%、4 - 6 月期は 12.83%、7 - 9 月期は 26.74% だった。 その結果、通年の売上高の伸び率も 2018 年の 19.5% から 0.4 ポイント微減。 純利益の伸び率は 2018 年の 25.1% から大幅に低下した。 2020 年の第一目標は「生き延びる」こと ファーウェイ輪番会長の徐直軍氏はオンラインで開いた決算説明会で、アメリカの輸出規制の影響で海外市場での携帯端末事業の売り上げが少なくとも 100 億ドル(約 1 兆 750 億円)失われたと説明。 調達できなくなったアメリカ製品を代替するため、研究開発投資を大きく増やしたとした。 「このような状況下で、我々は自らの生死を顧みずに 2017 年や 2018 年と同等の純利益率を追求することはできない。 まずは空いた穴を埋め、サプライチェーンを再構築し、そのうえで生き延びることを第一の目標にしている。」 徐氏はそう語り、2019 年の業績に概ね満足しているとの見解を示した。 新型コロナウイルスの世界的大流行に関して、徐氏は「状況の変化が早すぎて予測できない」と断ったうえで、ファーウェイの経営への影響について次のようにコメントした。 「焦眉の急は従業員の安全を確保するとともに、顧客や政府の新型コロナ対策のニーズに応えることだ。 通年でどれだけ目標を達成できるかについて、詳しく分析・予測する余裕はまだない。」 徐氏は 2020 年がファーウェイにとってかつてないほど過酷な 1 年になると見ている。 2019 年は前半にはまだアメリカの制裁を受けておらず、新型コロナの流行もなかった。 2020 年はファーウェイのサプライチェーンの持続可能性が全面的に試されることになる。 「我々は懸命に努力して生き延び、来年も決算報告書を発表したい。」 徐氏はそう決意を表明した。 (張而弛/財新、東洋経済 = 4-3-20) ファーウェイ 18% 増収 19 年 12 月期、スマホ販売好調 【広州 = 川上尚志】 中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は 31 日、2019 年 12 月期の売上高が前の期比 18% 増の 8,500 億元(約 13 兆 2 千億円)を超えそうだと発表した。 米政府から事実上の輸出禁止措置などの制裁を受けたが、中国でのスマートフォン販売が伸びた。 ただ制裁の影響は今後本格化する可能性があり、先行きに不透明感が残る。 ファーウェイの徐直軍(エリック・シュー)副会長兼輪番会長が 31 日、20 年の年頭所感を公開し、売上高などを明らかにした。 「米政府の圧力にファーウェイ全員が立ち向かった。 (19 年の売上高は)年初の計画に達しなかったが、安定的な経営を保った。」という。 「米政府によるファーウェイへの締め付けは戦略的で長期的なものになる。 ファーウェイにとっては自らを鍛えるチャンスでもある。」とも語った。 米商務省は 19 年 5 月にファーウェイに対する禁輸措置を発動し、同社は米国由来のソフトウエアや部品の調達が制限された。 ただ、部品の内製化や新たな調達先の確保を進めて影響を抑えた。 業績をけん引したのがスマホの販売拡大だ。 ファーウェイの 19 年のスマホの世界出荷台数は 18 年比 2 割増の 2 億 4 千万台超の見込みで、主に中国で伸びた。 「米国にいじめられているファーウェイを応援したかった。」 四川省成都市で働く 29 歳女性の祝さんは、19 年初めにスマホを米アップルの「iPhone」からファーウェイ製品に切り替えた。 こうした「愛国」的な消費が広がり中国市場でシェアを高めた。 次世代通信規格「5G」用の基地局の出荷も伸びた。 米政府は同盟国などに対し、安全保障上の懸念があるとして 5G の通信網にファーウェイ製品を採用しないよう呼びかけている。 ただ同社はこれまでに世界の 60 超の通信会社と 5G の商用化に関する契約を結び、このうち約半分が欧州の企業だ。 20 年には 5G サービスが欧州やアジアなどで本格的に始まり、同社の事業に追い風となる。 ただ、米制裁の影響は今後本格的に出そうだ。 ファーウェイはこれまで海外で販売するスマホに、米グーグルの地図やメールなどの主要なソフトを搭載してきた。 これらのソフトは禁輸措置の対象となり、今後発売するスマホでは搭載できなくなる見込みだ。 ファーウェイは代替ソフトの開発を急ぐが、海外でのスマホ販売への打撃は避けられないとみられる。 (nikkei = 12-31-19) ◇ ◇ ◇ あれっ、iPhone が失速? まさかの Huawei スマホが大躍進という結果に … 苦しんでいるのはどちら? 米中貿易戦争のあおりを受け、Huawei (ファーウェイ)は、厳しい状況に追い込まれていると見られてきました。 たとえば、Google (グーグル)の各種ソフトウェアの正規ライセンスが制限されてしまっているため、Gmail も Chrome も Google マップも初期搭載せず、Google Play のアプリストアからほしいアプリを自由に追加することもままならない状態で、スマートフォンの新モデルを発売せざるを得ない模様 …。 これでは、売れ行きが落ち込んでも仕方ないですよね? そう思われていたはずが、このほど siliconANGLE は、まさかの Huawei 製のスマートフォンが、売れに売れていると伝えています! Gartner の今年第 3 四半期(7 - 9 月期)の調査データによると、同四半期中の Huawei によるスマートフォン出荷台数は約 6,580 万台。 米国による厳格な排除政策の影響を受けていたにもかかわらず、前年同期の約 5,200 万台の出荷台数から大幅にアップし、17% の世界市場シェアを確保しました。 前年の同じ時期は 13.4% のシェアでしたから、着実に世界のスマートフォン市場で存在感を増していることを意味しています。 一方、同四半期に、これまたまさかの失速という結果になったのは、Apple (アップル)です。 自由にビジネスを展開できなくなっている Huawei に代わり、iPhone が人気回復するのかと思いきや、約 4,080 万台の出荷台数で、10.5% の市場シェアにとどまりました。 前年同期には約 4,570 万台を出荷し、11.8% の市場シェアをキープしていたので、引き続き厳しい競争にさらされている状況も伝わってきますよね?
今回の調査レポートを受け、Gartner は、このような分析をしているそうです。 中国メーカーの勢いを弱め、米国企業に恩恵をもたらすはずだった米中貿易戦争の目論見が、どうやら一時的には逆の効果を生み、かえって中国では iPhone が毛嫌いされてしまう状態さえ見られているんだとか。 なお、1 年前と比べれば、売れ行きが落ちている iPhone ですけど、直近では、今年第 2 四半期(4 - 6 月期)より出荷台数が少し伸びており、今後はクリスマス商戦の勢いにも乗って、再び成長に転じていくかもしれませんね。 (Gizmodo = 12-2-19) 中国内でも評判ガタ落ちのファーウェイ
国際社会でイメージがガタ落ちの華為技術有限公司(以下、ファーウェイ)だが、中国の中でも評判が悪くなっている。 現在、中国ではとある数字の羅列が注目されている。 それが、「985、996、035、251、404」。実はこの数字は、ファーウェイを揶揄している。 「985」が意味するのは、同社の社員の多くが卒業したエリート大学。 1998 年 5 月、当時の江沢民政権は 985 工程(プロジェクト)を立ち上げ、中国の将来を担う人材を輩出する重点校を定めた。
ファーウェイが元社員を迫害!? すでに報道されている通り、2018 年 12 月 16 日、ファーウェイの元エンジニアである李洪元氏(42 歳)が警察に拘束され、翌 19 年 1 月 22 日、ついに逮捕された。 李氏はファーウェイで 13 年働いており、離職する際に、ファーウェイ幹部と補償金・退職金の交渉をして、退職金は 30 万元(約 470 万円)となった。 しかしファーウェイの管理者は、「李洪元が会社から補償金と退職金を騙して巻き上げた」として警察に訴えた。 その結果、李氏は警察に 251 日拘束された。 李氏は、録音テープで当時の状況を記録していた。 深セン検察院は証拠不十分のため李を起訴できず、釈放した。 その後、李氏は拘留期間中の賠償金 10 万元(約 156 万円)を国に求めた。 そのためか 12 月 9 日、李は深セン検察院に恐喝罪等で起訴された。 ただ一方では、ファーウェイが李氏以外に少なくとも 20 人以上の元社員に罪を被せ、迫害したという事実が暴露された。 中には、2 年の有期刑に処された人もいるという。 ファーウェイは従業員持株制による民間企業と謳っているが、実態はブラック企業と言える。 ネットユーザーらはこのスキャンダルを知り、反発。 同社は、企業イメージを大きく損ねている。 ファーウェイという企業 ファーウェイは 1987 年、人民解放軍で働いていた任正非(にんせいひ)氏が設立した。 本社は深セン市竜崗区にある。 よく知られているように、同社は中国ネット企業大手 BATH (バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)の一角をなす。 ファーウェイは、5G 等の先端技術を持ち、米国の牙城を脅かしている。 北京政府の支援を受けていることは、間違いないだろう。 一方では、スマホ等の電子機器端末に「スパイウェアを忍ばせている」と疑われている面もある。 そのため、特にアメリカは、同社に厳しい対応をしている。 ファーウェイのスキャンダル さて、米在住の評論家である陳破空氏は、『ラジオ・フリー・アジア(19 年 12 月 10 日付)』で、ファーウェイのイメージ失墜について指摘している。 カナダ当局は 18 年 12 月、米国の要請に従い、ファーウェイの副会長兼 CFO の孟晩舟氏を拘束した。 その時、中国のネットユーザーは、北京の論調に従い、孟氏を「民族英雄」と称え、ファーウェイを「民族ブランド」と奉った。 また、孟氏の逮捕は「米帝国主義」による弾圧だと激しく非難している。 しかし、その後まもなく、孟氏は勾留場から保釈金を支払い、保釈。 監視付きながらも、カナダの豪華な自宅へ戻った。 近頃、カナダで拘束されてから 1 年が経った孟氏は、自らの気持ちを公開した。 それは、自分を支えてくれた周囲の人々やネットユーザーに礼を言うためだった。 だが、これが思わぬスキャンダルとなる。 多くのネットユーザーは、孟氏が美しくファッショナブルなドレスで自由に街を闊歩し、駐カナダ中国大使から慇懃なる慰問を受ける姿を見て、反発したのである。 かつて孟氏は、「ファーウェイのプリンセス」というイメージを持っていたが、このスキャンダルにより、そのイメージは完全に崩れ去った。 孟氏のスキャンダルで、ファーウェイのイメージは地に堕ちたと言っても過言ではない。 (澁谷司、拓殖大学海外事情研究所、The LibertyWeb = 12-28-19) ◇ ◇ ◇ ファーウェイ、ネットで炎上 罪がない元社員に謝らず 中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が、元社員への対応を巡って中国のネット上で炎上している。 元社員は華為側を恐喝した疑いで同社から当局に通報され、逮捕された。 しかし、不起訴が決まり不当勾留への国家賠償請求も認められた。 こうした事態を招いた華為は元社員へ謝罪せず、批判を浴びている。 華為は 2 日、この件に関して「(会社から)損害を受けたと思うなら法的手段で自分を守ることを支持する」との声明を発表した。 有力紙「新京報」によると、賠償が認められたのは 2005 年から 18 年 1 月まで華為に勤めた李洪元氏。 所属部署の問題告発後に、契約を打ち切られた。 退職させられる賠償金として、18 年 3 月に約 38 万元(約 600 万円)を受け取った。 その後の 18 年 12 月、広東省深セン市の警察に突然勾留され、19 年 1 月には会社側への「恐喝」の疑いで逮捕された。 新京報の李氏への取材によると、人事部門の社員が李氏から、賠償金を払えばおとなしくやめると迫られ、仕方なく払ったと華為側は警察に訴えていたという。 その後の捜査で、李氏と華為側との賠償金交渉の録音内容が判明。 交渉はときに笑いを伴う状況で進んでおり恐喝の疑いは認められず、検察は李氏を 8 月に不起訴とした。 李氏は 251 日の勾留に対して国家賠償を請求し、約 11 万元(約 170 万円)が認められた。 李氏は朝日新聞の取材に、「もともとは任正非最高経営責任者 (CEO) と話がしたかったのだが、もはや無理とわかった。 とても怖い。 深センにいるのは怖いので田舎に帰る」と話す。 米国から制裁を受けた華為に対し、中国内では愛国心から応援する動きが広がり、中国内のスマートフォンシェアは 4 割まで上がった。 だが、企業による若手社員の使い捨てが社会問題になるなかこうした問題が起き、華為に対して「謝罪がない」、「華為製品は買わない」などの批判が渦巻く。 今後の対応次第ではイメージが一気に悪化しそうだ。 (北京 = 福田直之、asahi = 12-3-19) ファーウェイ輸出規制猶予、さらに 90 日間延長 米政権 トランプ米政権は 18 日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する輸出規制の一部猶予措置を、さらに 90 日間延長すると発表した。 米中通商協議で「第 1 段階の合意」の正式署名を目指すなか、米企業への打撃にも配慮して、摩擦のさらなる激化は避けた形だ。 ロス商務長官は声明で、米農村部で華為の機器を使う一部の通信業者やその利用者などに配慮したものだ、という従来の立場を強調。 そのうえで「米国の安全保障を脅かす勢力によって、我々の技術革新の力が抑え込まれることがないよう、機密技術の輸出については引き続き厳格に監視していく」と述べた。 これに対し華為は 19 日、声明を出し、「延長の決定にかかわらず、事業への実質的な影響は限られており、継続して不当な待遇を受けているという事実を変えるものではない」と訴えた。 その上で「不利益は当社よりも米国に大きく表れる。 当社と協業関係にある米国企業の経済的損失のみならず、世界的な部品供給網での協業関係と相互信頼を分断するものだ。」と強調し、制裁の撤回を求めた。 米政権は、華為への輸出規制を発動した 5 月から、農村部などで安価な華為の機器を使う通信業者などに配慮した猶予措置をとり、8 月にもこの措置の 90 日間の延長を決めていた。 ただ、米議会などでは華為を「スパイ企業」として敵視する強硬論が超党派で支持を広げており、米国市場からの華為の排除を徹底しようとする大勢に変わりはない。 農村部の業者に対しても、米連邦通信委員会 (FCC) が 10 月末、既存の華為製品の撤去や、新規購入の禁止を命じる政策を発表。 機器を交換する費用の補償など、具体策の検討が進められている段階だ。 (米アイオワ州エイムズ = 青山直篤、北京 = 福田直之、asahi = 11-19-19) ファーウェイにサイバー攻撃 1 日百万件、5G 技術狙いか 中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が、国内外から 1 日に約 100 万件のサイバー攻撃を受けていることが分かった。 同社が持つ高速大容量の第 5 世代 (5G) 移動通信システムの先端技術を盗み出す狙いがあった可能性があるとみている。 サイバーセキュリティーを担当するジョン・サフォーク上級副社長が 30 日までに中国広東省東莞市で、共同通信の取材に明らかにした。 サフォーク氏は、大部分の攻撃は防いだが、一部旧型のパソコンが影響を受けたと説明した。 (kyodo = 9-30-19) 華為めぐる米中対立、長期化の様相 米が制裁対象拡大 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を巡る米中の対立が長期化する見通しが強まっている。 米政権は 19 日、華為への輸出規制の一部猶予を延長する一方、46 の関連企業に制裁対象を拡大した。 華為は独自 OS を発表し、制裁長期化の備えを急いでいる。 米商務省は 19 日、この日期限を迎えた華為に対する輸出規制の一部猶予について、3 カ月延長することを決めた。 米グーグルが基本ソフト (OS) 「アンドロイド」をアップデートすることなどは認められる見通しだが、あくまで例外的措置という位置づけだ。 5 月に一部猶予が発表された後、インテルなどは華為への販売を続けてきたとされる。 これらの米企業は商務省に輸出許可を出すよう求めてきたが、ロス商務長官は 19 日時点で「特定の許可は一切与えていない」と強調した。 商務省は合わせて、華為の 46 の関連企業をこの日から新たに規制対象に加えるとも発表した。 トランプ氏は 6 月の米中首脳会談で、華為への制裁緩和を表明していたが、米議会などの反発で具体化は進んでいない。 米中通商協議の対立が深まる中、制裁の強化策が先に示されたことになる。 (ワシントン = 青山直篤) 中国「即刻、誤ったやり方やめるよう促す」 中国側には、制裁緩和の約束のはずが、一転して子会社まで対象に加えてきた「手のひら返し」と映る。 中国外務省の耿爽副報道局長は 20 日の定例記者会見で「何ら証拠もなく、輸出制限措置を乱用しているのに変わりは無い。 即刻、誤ったやり方をやめるよう促す。」と述べた。 華為は 19 日付の声明で「政治的動機に基づき、国家安全保障と何の関係もないことは明らかだ」とし、「自由競争の原則に反し、米企業を含む誰の利益にもならない」と批判した。 華為はすでに米国に頼らない自前の技術開発を進めている。 その柱の一つが今月発表した独自 OS 「鴻蒙(ハーモニー)」だ。 当初はテレビ用 OS としたが、制裁で「アンドロイド」を使えなくなれば代用する準備とも見られている。 だが制裁の影響で、今年の売上高は予想より約 2 割減る見通しで、難局は続くことになる。 華為に対する制裁強化は対米感情にも深刻な影響をもたらしている。 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は、米中通商協議について「早期合意を望む人は中国に今やほとんどいない。 ワシントンが全く信用ならないからだ。」とツイートした。 (北京 = 福田直之、asahi = 8-21-19)
ファーウェイの新型スマホ、ドコモも予約再開 9 月発売 NTT ドコモは、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製の新型スマートフォン「P30」の予約受け付けを 21 日に再開すると発表した。 発売は 9 月を予定している。 米国の同社に対する輸出規制を受け、5 月に予約受け付けを停止していた。 米国が 19 日に規制の一部猶予措置を 3 カ月延長したことなどから、ドコモは「現時点で安心してご利用いただけることの確認ができた」と再開の理由を説明している。 華為のスマホをめぐっては、KDDI (au) とソフトバンクも販売を中止していたが、再開した。 (井上亮、asahi = 8-20-19) 5G スマホ、中国で発売 華為技術(ファーウェイ) 【北京、上海】 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は 16 日、高速大容量の第五世代 (5G) 移動通信システムに対応したスマートフォンの販売を中国で始めた。 同社が中国で 5G スマホを売り出すのは初めて。 日本での販売予定は不明。 ファーウェイは 5G の基地局設備で世界最先端の技術を持つとされる。 スマホなど消費者向けの端末でも実績を積み上げ、米政権による輸出禁止措置などの圧力をはね返し、5G を巡る競争を勝ち抜きたい考え。 中国政府もファーウェイを後押しし、中国での普及を推進する構えだ。 販売するスマホは「Mate 20X 5G」で、価格は 6,199 元(約 93,000 円)。 ファーウェイが自主開発した 5G 対応の半導体を搭載した一方、基本ソフト (OS) は米グーグルのアンドロイドを搭載した。 中国政府は 6 月、中国移動通信(チャイナモバイル)など携帯電話大手に 5G 営業ライセンスを発行した。 (kyodo = 8-16-19) ファーウェイ新スマホ、au とソフトバンクが発売再開へ KDDI (au) は 5 日、販売を延期していた中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の最新スマートフォン「P30 lite」のシリーズを 8 日に売り出すと発表した。 ソフトバンクも宮内謙社長が 5 日の決算会見で「われわれも再開する方向だ」と述べた。 両社は当初、5 月の発売を予定していた。 米中の貿易をめぐる対立を背景に、米グーグルのアプリが一部使えなくなる可能性が出たことなどから予約の受け付けをとめていた。 販売を始める理由について KDDI は、ファーウェイ製品のセキュリティー更新や、グーグル製アプリのサービスの継続などについて一定の確認が取れたため、としている。 NTT ドコモは、予約受け付けの停止を続ける、としている。 (asahi = 8-5-19) 対ファーウェイ「朝令暮改」に村田製作所などメーカー苦慮 トランプ米大統領は 6 月 29 日、中国の習近平国家主席との首脳会談後、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に米企業が部品を売ることを認める意向を示した。 華為に部品を納入している日本企業は、トランプ氏の「朝令暮改」に苦慮している。 米商務省は 5 月に禁輸措置を発表後、通信ネットワークへの影響を考慮し、一部業務で適用を猶予している。 今回のトランプ氏の発言の真意も不明だ。 華為に電子部品を納めている村田製作所は、米政府が制裁を打ち出した後も部品の供給量を減らしていないという。 今回の方針変更発表も「影響はない」としている。 ただ、米政権は安全保障上の懸念などを理由に華為への警戒感を強めており、米中貿易摩擦が収まる気配が見えない中、「今後も状況を注視していきたい」との姿勢だ。 (SankeiBiz = 7-2-19) ファーウェイ売上高、予想の 2 割減 米制裁で「厳しい」 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の任正非最高経営責任者 (CEO) は 17 日、今年の売上高が予想より約 2 割減り、昨年並みの約 1 千億ドル(約 10.8 兆円)にとどまるとの見通しを示した。 米政府による制裁で、今後 2 年は減産を迫られるとも述べた。 任氏は米国のコラムニストらとの対話で、米国による制裁について「こんなに厳しいとは思わなかった」と発言。 2019 年は売上高が予想より 300 億ドル(約 3,2 兆円)減り、20 年も横ばいが続くと予想した。 だが、21 年には「再起できる」とし、「我々は強い。 不死鳥だ。」とも述べた。 一方、米ブルームバーグ通信は 17 日、華為が中国以外でのスマートフォンの出荷見通しを、4 千万 - 6 千万台引き下げる検討をしていると報じた。 米 IT 大手グーグルのソフトウェアを搭載している国外での販売分に悪影響が出るという。 (北京 = 福田直之、asahi = 6-17-19) 中国が豪語する半導体国産化、業界内部から不安視する声 [上海/香港] 米国政府が中国の華為技術(ファーウェイ)に米企業との取引を事実上禁止して以来、中国の指導部は果敢にも半導体技術を自前で賄うと主張している。 しかし業界関係者によると、中国の半導体産業は技術的にまだ西側諸国にかなり遅れを取っている上に有能な人材の確保も容易ではなく、ファーウェイなど国内ハイテク企業の全ての需要を満たす製品を供給するという課題をすぐにクリアするとは考えにくいという。 中国の半導体技術者の話では、国内の製造部門は及第点に達していない。 まだ多くの分野で米国、台湾、韓国、日本、欧州に依存しているのが実情で、政府補助は効率が悪いし、愛国主義に訴える政府の政策にも限界がある。 半導体設計大手、紫光展鋭 (Unisoe) の元技術者は、関連会社のメモリー半導体を使うように何度も働き掛けを受けたが、この関連会社は十分に進んだ技術を提供できなかったと打ち明けた。 海外の半導体業界関係者からは、中国は一部の分野がかなり進歩し、侮るべきではないとの声も出ている。 特に NAND 型フラッシュメモリーでは中国が差を詰めつつあるとの見方だ。 韓国のメモリー半導体メーカーの幹部は「中国政府にとって資金は問題ではない。 中国企業の動きを止めることはできない。 それが自由競争だ。 ただ、われわれの方が技術的には上で、製品も優れていると信じている。」と話した。 中国にとって最大の課題は、極めて特殊な装置や長年の経験の積み重ねを必要とする半導体製造工程にある。 光大証券は 5 月のリポートで中国の半導体産業について、製造工程は装置に依存しており、この分野では米企業が非常に大きなシェアを握っていると分析。 「中国製の製造装置のみを使用している生産ラインは中国国内には存在せず、米国製装置を使わずに半導体を製造するのは極めて困難だ」と説明した。 中国メーカーが米国や日本、欧州の製造装置メーカーから機器を輸入しても、装置を完璧に動かすことはできない。 高性能半導体の製造工程では、装置を動かす上で欠かせない微妙な操作がメーカーとの秘密保持契約 (NDA) で保護されているためだ。 業界関係者によると、半導体受託製造の中国最大手、中芯国際集成電路製造 (SMIC) は最新の製品をもってしても、台湾積体電路製造 (TSMC) に約 2 世代分先行されている。 TSMC は昨年、線幅 7 ナノメートルの製品の製造を開始したのに、SMIC はようやく 14 ナノメートルの製品の生産準備を進めているところで、この線幅が最先端だったのは 2014 年だ。 ファーウェイは高性能チップセットの製造では TSMC の装置、低機能向けで SIMC の装置をそれぞれ使い分けている。 中国の半導体産業は有能な人材の不足が何度も露呈しており、日本や韓国、台湾は専門技術の育成に数十年掛かったとの見方もある。 中国は海外、特に台湾と韓国から、魅力的な条件を提示してトップクラスの人材をリクルートしようとしているが、必ずしも実を結んではいない。 中国の半導体メモリーメーカー、CXMT は昨年、韓国のサムスン電子から半導体技術者を引き抜こうとしたものの、韓国の裁判所が移籍差し止めを命じた。 ベンチャーキャピタル会社グローリー・ベンチャーズのエリック・ヤン氏は、装置やシステムの動作に必要な機能の全てを 1 つの半導体に盛り込む「システムオンチップ (SoC)」など、複雑な最新の製品では先発組が有利な立場にあり、壁を打ち破るのは難しいと指摘。 「半導体製造には多くのノウハウが欠かせない。 人材が手に入らなければ競争に勝てないが、あらゆる人材は米国が握っている。」と述べた。 (Josh Horwitz and Sijia Jiang、Reuters = 6-13-19) |