エイチ・ツー・オー 20 年 4 - 9 月期は最終赤字 101 億円 OMO 化を急ぐ エイチ・ツー・オー リテイリングの 2020 年 4 - 9 月期連結業績は、売上高が前年同期比 25.5% 減の 3,356 億円、営業損益が 44 億円の赤字(前年同期は 63 億円の黒字)、純損益が 101 億円の赤字(同 14 億円の黒字)だった。1 特別損失 114 億円のうち、新型コロナの影響に伴う損失 50 億円、取引先の退店などで収益性が低下した神戸阪急、高槻阪急について減損損失 58 億円を計上した。 主力の百貨店事業を運営する阪急阪神百貨店は、新型コロナによる店舗休業および影響の長期化による客数減で、売上高が前年同期比 37.2% 減の 1,370 億円、営業損益が 33 億円の赤字(前年同期は 66 億円の黒字)と、大きく落ち込んだ。取扱高の 21.9% を占める衣料品の売上高は同 45.4% 減だった。 店舗別の売上高を見ると、阪急うめだ本店 45.3% 減(680 億円)、阪神梅田本店 52.5% 減(113 億円)、博多阪急 50.0% 減(123 億円)と、都心部の店舗のダメージが特に大きい。 21 年 3 月期通期の連結業績は、売上高が前期比 18.6% 減の 7,300 億円、営業損益が 100 億円の赤字(前期は 111 億円の黒字)、純損益が 220 億円の赤字(同 131 億円の赤字)を予想する。 22 年 3 月期を最終年度とする中期経営計画(同期末に売上高 9,600 億円、営業利益 250 億円、純利益 125 億円)は取り下げた。 不採算事業の見直しなどの構造改革や既存事業の再建などの内容を盛り込んだ新計画を 21 年 5 月に発表する。 取引先の退店が顕在化するファッションフロアなどの見直しについては阪急うめだ本店をモデルケースに、ファッション、雑貨、食などジャンルの垣根を超えた編集スタイルの水平展開を進める。 リアル店舗への集客を前提としたビジネスモデルのデジタル化も加速する。 9 月からは、店頭商品をホームページ上で閲覧できるウェブカタログを、ラグジュアリーファッションの領域まで拡大。 来店不要で決済できる独自サービスの「リモーダー (REMO ORDER)」も導入した。 「大事なのはコロナで浮き彫りになった『リアルでしか物を買えない』というペインポイントの改善。 オンライン・オフライン問わずお客さまとコミュニケーションを取り、買い物の体験価値を高められる環境を整えていく。(荒木直也社長)」 (本橋涼介、WWD = 10-30-20) 大阪発祥の百貨店「そごう」、関西から姿消す 今月末で 今月末、百貨店「そごう」が関西から姿を消す。 江戸時代に大阪で創業したそごうは、かつて売り上げ日本一の百貨店だった。 だが急な店舗拡大で経営破綻し、立て直しにも苦戦。 関西には 5 店舗あったが、31 日には唯一残っていた西神店(神戸市)が営業を終える予定で、すべて看板を下ろすことになった。 神戸市営地下鉄の西神中央駅のすぐ隣、歩いて数分のそごう西神店。 閉店を 2 週間後に控えた 8 月中旬、食品売り場は多くの客でにぎわっていた。 毎日のように通う近所の女性 (87) は、「買い物もイベントも行けば何かしらあり、安心感が持てた。 住みやすさの中心に百貨店があった。」となくなることを惜しんだ。 同店は 1990 年、ニュータウンの開発に合わせて開業した。 駅直結の利便性や地元重視の店づくりで、ファミリー層を中心に人気を集めた。 だが近年は若者の百貨店離れやほかの商業施設との競合などで、売り上げが低迷していた。 店舗担当者には阪神・淡路大震災時の忘れられない思い出も … 開業時や 95 年の阪神・淡路大震災の際にも同店で勤めていた三原浩文・食品課長 (54) には、震災のときの忘れられない思い出がある。 発生当日の夜、営業再開に向けて準備していて店の外に出ると、大勢のパジャマ姿の客が開店を待って並んでいた。 それから 1 週間、水やおにぎりなどをひたすら販売した。 「店を開けたことで感謝された。 関西で最後まで残ったのも地域のニーズにこたえてきたからだと思う。」 店舗の建物を所有する神戸市は後継事業者を募り、18 日に優先交渉権者として大手商社の双日を選定。 来年 11 月までに食品や飲食店などが入る新たな商業施設の開業をめざすという。 西神店は今月 31 日午後 8 時に閉店を迎える。 売り上げ日本一から経営破綻へ 厳しい環境抜け出せず そごうは 1830 (天保元)年、十合(そごう)伊兵衛が大阪市に開いた古着店「大和(やまと)屋」がルーツ。 心斎橋に移転して「十合呉服店」と改称。 1919 年に本格的な百貨店としてスタートした。 神戸、東京にも出店して 3 店体制としていたが、62 年に社長に就いた故・水島広雄氏が地方への積極的な出店を開始。 30 年以上も社長に就き、90 年代には売り上げ 1 兆円を超える日本一の百貨店となるまでに拡大させた。 最盛期には札幌から九州・小倉まで国内 28 店舗を数えた。 だが、出店用の土地を担保に借金する手法を繰り返し、バブル崩壊による地価下落で資金繰りに行き詰まった。 2000 年の経営破綻後に再建を図り、06 年にセブン & アイ・ホールディングスの傘下に入った。 だが、百貨店業界は専門店やショッピングモールなどに押されて厳しい環境が続き、不採算店の閉店や売却を余儀なくされてきた。 そごう発祥の大阪店も 00 年に一度閉店した後、05 年に同じ場所で心斎橋本店として再オープン。 だがわずか 4 年後に J フロントリテイリング傘下の大丸に売却され、「大丸心斎橋店北館」となった。 現在改装中で、今秋にはファッションビル「パルコ」を中心とした商業施設に生まれ変わる予定だ。 関西の他の店舗では、00 年に奈良と加古川(兵庫県)の 2 店が閉店。 神戸店は 17 年にエイチ・ツー・オーリテイリングに売却され、「神戸阪急」となっている。 今月末には西神店に加えて徳島店、来年 2 月に川口店(埼玉県)が閉店する。 全国でそごうの看板が残るのは横浜、千葉、大宮、広島の 4 店のみになる。 百貨店の歴史に詳しい大阪商業大学の谷内正往(まさゆき)准教授は「そごうは関西で戦後、ブランド力でも大丸や三越を追い抜いた時期があった。 だが先頭を走っていたぶん、低価格のファストファッションの台頭といった消費トレンドの変化に適応できなかった面もあるのではないか。」と話す。 (加茂謙吾、生田大介、asahi = 8-24-20)
高島屋、東京・大阪 8 店舗で売り場再開「顧客の要望あった」 高島屋は 18 日午前、東京都や大阪府などの計 8 店舗で、衣料品や雑貨など生活必需品の売り場の営業を約 1 か月半ぶりに再開した。 日本橋店(東京都中央区)では午前 10 時半、本館の正面玄関などが開かれた。 高島屋は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令を受け、日本橋店などで 4 月 8 日から原則、食料品売り場に限って営業してきた。 今回の営業範囲の拡大について「顧客の要望があった。 従業員などの雇用の維持も必要だ。(広報)」としている。 日本橋店の入り口では、フェースシールドをつけた従業員が来店客に対し、アルコール消毒の利用やマスクの着用などを呼びかけた。 日本橋店は当面、午後 6 時までの時短営業とし、混雑時は入店を制限する。 宝飾品や呉服などの売り場は引き続き休止する。 大丸松坂屋百貨店も、19 日から平日に限って大丸心斎橋店(大阪市)などで全館営業を再開する。 (yomiuri = 5-18-20) ◇ ◇ ◇ 高島屋が首都圏 3 店舗で営業再開 14 日から玉川、立川、柏で 高島屋は 14 日から、一部の首都圏店舗の営業を再開する。 対象となるのは、玉川高島屋 S・C (東京都)、立川高島屋 S.C. (同)、柏高島屋ステーションモール(千葉県)の 3 店。 首都圏を含む「特定警戒都道府県」の百貨店が食品売り場以外の営業を再開するのは初めて。 4 月 7 日の新型コロナウイルス感染拡大に伴う「緊急事態宣言」以降、それぞれ食品フロアに限って営業してきたが、「利用客の要望が高まってきたこと、また従業員の雇用を守るという観点からも営業再開を決めた。(高島屋広報)」 3 店ともに、婦人服・雑貨、紳士服・雑貨、子供服、リビング雑貨などを取り扱うフロアの営業を再開する。 ただし 14 日時点で再開する売り場は、館全体の 5 - 6 割に限られる。 また、特選、宝飾、呉服・美術などは営業再開の対象から除く。 化粧品も取引先が営業再開に慎重な姿勢を示していることなどから、一部を除いてほぼ全面的に休業を継続する。 営業時間は玉川高島屋 S・C が 10 時半 - 18 時、立川高島屋 S.C. が 11 - 18 時、柏高島屋ステーションモールが 10 時半 - 18 時(専門店は 19 時まで)の短縮営業となる。 館内の定期的なアルコール消毒や飛沫感染防止シートの設置、混雑時の入店制限などの対策を講じる。 同社の店舗では、そのほか高崎高島屋(群馬県)、岡山高島屋(岡山県)が 11 日からすでに営業を再開している。 政府は 14 日に専門家会議と諮問委員会を開き、緊急事態宣言の一部緩和を検討する。 重点的に対応する特定警戒都道府県についても一部解除される見通しだが、東京都や大阪府などは引き続き指定されるといわれている。 (本橋涼介、WWD = 5-13-20) ニーマン・マーカスが破産 米百貨店でコロナ後初の破綻 米高級百貨店ニーマン・マーカスは 7 日、米連邦破産法 11 条(日本の民事再生法に相当)の適用を、テキサス州の破産裁判所に申し立てたと発表した。 新型コロナウイルスの感染拡大防止で営業を制限され、経営が行き詰まった。 コロナ問題で米国の大手百貨店が経営破綻したのは初めて。 米国では他の百貨店やファッションブランドの経営悪化も相次いで伝えられ、大規模な業界再編につながる可能性もある。 ニーマン・マーカスはテキサス州で 1907 年に創業した老舗百貨店。 以前からネット通販の台頭や 50 億ドル(約 5,300 億円)もの負債の利払いで経営が悪化しており、コロナ問題が追い打ちをかけた。 3 月、ウイルスの感染拡大防止のため、全米の 43 店舗やアウトレット店、傘下でニューヨーク・五番街に拠点がある高級店「バーグドルフ・グッドマン」が一時休業に追い込まれた。 売り上げが激減し、資金繰りが一気に悪化した。 破産手続きでは、ニーマンの経営権と引き換えに債務 40 億ドルを免除してもらう計画。 6 億 7,500 万ドルのつなぎ融資も確保したという。 店舗閉鎖などのリストラ策は明らかにしていない。 レムドンク最高経営責任者 (CEO) は「他の大半の企業と同様、我々は過去に例のない混乱に直面し、容赦のない圧力がのしかかってきた」との声明を出した。 単独での経営再建は難しいとの見方もあり、同業のサックス・フィフス・アベニューの親会社などが買い手候補として報じられている。 サックスは、昨年 8 月に経営破綻した米高級セレクトショップ、バーニーズ・ニューヨークのブランド使用権も取得している。 バーグドルフ・グッドマンの買い手としては、「ルイ・ヴィトン」などの高級ブランドで知られる仏モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン (LVMH) の名が挙がっている。 LVMH はコロナ問題前から、米高級宝飾大手ティファニーの買収手続きにも入っている。 コロナ問題をきっかけに、高級ファッション市場で寡占が強まる可能性がある。 米小売業で新型コロナによる打撃がもっとも深刻なのが、ファッションや衣料関連だ。 営業が制限された 3 月の売り上げは前年同月より半減したとの調査もある。 すでに衣料品大手 J クルー・グループは 4 日に破産法適用を申請。 JC ペニーやロード & テイラーなど、ほかの米大手百貨店も破産手続きを準備していると報じられている。 (ワシントン = 江渕崇、asahi = 5-8-20) ◇ ◇ ◇ アメリカで始まった「百貨店倒産ドミノ」の悲惨 かつてはアメリカ中のショッピングモールや繁華街で栄華を誇った百貨店も、この 10 年は困難の連続だった。 JC ペニーとシアーズはヘッジファンドの餌食になった。 メイシーズはいくつかの店舗を閉店し、本社スタッフを解雇している。 バーニーズ・ニューヨークは昨年、破産申請を行った。 しかし、弱体化した百貨店業界が新型コロナウイルスのパンデミックから受けている打撃の規模は、これまでとは比較にならない。 アパレルやアクセサリーの販売は 3 月には半分以上減り、この傾向は 4 月にはさらに悪化するとみられている。 ロード・アンド・テイラーの幹部チームは今月、丸ごと解雇された。 ノードストロムは注文をキャンセルし、業者への支払いを延期した。 アメリカのデパートチェーンの中でも最も華やかなニーマン・マーカス・グループは、ここ数日中に破産法の適用を申請するとみられている。 そうなれば、コロナ危機で経営破綻する初の大手小売企業となる。 しかも、経営破綻はそれで終わりとは行きそうにない。 百貨店ビジネスは「終わっている」 「百貨店各社の経営は非常に長い時間をかけて傾いてきた。 今回の危機を乗り越えられる会社はないだろう。」と、コロンビア大学ビジネススクールで小売業界の調査研究を率いるマーク・コーエン教授は語る。 「小売業界はもう終わっている。 生き残れる会社があったとしても、ごくわずかだ。」 今はちょうど最大の書き入れ時となるクリスマス商戦に向けて小売店が発注を行う時期にあたる。 が、そんな重要なタイミングで百貨店チェーンは本部と店舗の従業員を何万人と一時帰休(無給休職)にし、現金を積み上げ、死に物狂いで生き残り策を練っている。 大量の債務不履行への不安は密室で語られているだけでなく、アナリストたちの予測モデルにも表れている。 新型コロナの感染拡大で世の中が激変し、小売業界が置かれた状況や、ブランドと販売店の関係が恒久的に変わってしまうことを疑う者はいない。 少なくとも、かつて多頭竜ヒュドラの群れのようにアメリカ大陸全土に散らばっていた百貨店のチェーン網は大幅に縮小されるとみられている。 不動産調査会社グリーン・ストリート・アドバイザーズの 1 月のリポートによれば、百貨店チェーンはアメリカのモール総床面積の約 30% を占め、うち 10% がシアーズと JC ペニーによるものだった。 パンデミックの前ですらグリーン・ストリート・アドバイザーズは、モールに店舗を構えるデパートの半数が数年内に閉店すると予測していた。 ネットでは実店舗の落ち込みとても補えない 確かに百貨店もアプリやウェブサイト、注文商品の店頭受け取りサービスなど、ネット通販に合わせて変身を試みてきた。 だが、今回のパンデミックで浮き彫りになったように、デパートの売り上げは今も実店舗依存だ。 メイシーズは 3 月 30 日、2 週間近く店舗を閉鎖したことで売上高の大半が失われたと述べた。 アメリカ商務省が今月中旬に公表した 3 月の小売売上高は惨憺たる結果だった。 3 月にはわずかな期間営業していた店舗もあったが、4 月は休業の影響がフルに響いてくるため、数字はさらに悪化するとみられている。 百貨店会社は生き残りに向け過激な策を打ち出さなければならない状況になっている。 昨年、カナダの小売企業ハドソンズ・ベイからロード・アンド・テイラーを買収した衣料レンタルサービスのル・トートは 4 月 2 日のメモで、同チェーンの経営陣は最高経営責任者も含めて全員が直ちに解雇されると発表した。 同社はまた、「当社の流動性ポジションに対する多大なプレッシャー」を理由に、業者への代金支払いを少なくとも 90 日遅らせている。 ブルーミングデールズを傘下に持つメイシーズは商品・サービス料金の支払いを 60 日から 120 日に延期。 ロイター通信によれば、新たな資金調達方法を探るため投資銀行のラザードから銀行家を雇い入れてもいる。 最高経営責任者のジェフ・ジェネット氏はこの危機の間、いかなる報酬も受け取らない。 メイシーズは 3 月、時価総額が基準値を下回り、株価指数 S & P500 の構成銘柄から除外された。 JC ペニーは事情を知る 2 人の関係者によると、再建の選択肢を探るためにラザードのほか、法律事務所のカークランド・アンド・エリス、およびコンサルティング会社のアリックスパートナーズと契約した。 これら 2 人の関係者は、同社が先週、利息の支払いを行わなかったことを認めている。 破産申請の可能性も含めて数週間以内に方針が決定されるもようだ、と関係者の 1 人は語った。 だが、どの会社もニーマン・マーカスほど切羽詰まった状況にはない。 ニーマン・マーカスは約 48 億ドルという莫大な負債を抱えている。 これは、一部にはアレス・マネジメントとカナダ年金制度投資委員会が 2013 年に行ったレバレッジドバイアウト (LBO) によるものだ。 また、景気がよかった時代に一等地のショッピングエリアで大量に契約した高額の賃料負担も響いている。 3 月下旬、破産の噂が広がり始める中、ニーマン・マーカスは新商品の受け取りを停止し、約 1 万 4,000 人の従業員の大部分を一時帰休とした。 最高経営責任者のジェフロイ・ヴァン・ラムドンク氏は自身の 4 月の給与を見送ると発表した。 同社は取引先や傘下のバーグドルフ・グッドマンの従業員に対し破産申請を検討するためにアドバイザーを招いていることを否定したが、S & P は 4 月 14 日にニーマン・マーカスの信用格付けを引き下げている。 さらに同社は 4 月 15 日が期限だった利息の支払いを行わず、社債保有者の怒りを買い、破産申請が目前に迫っているという疑念を一段と加速させた。 ニーマン・マーカスのスポークスパーソンはコメントを拒否した。 新商品の価格がすでに 4 割引に 最も財務が健全であると広く考えられているノードストロムですら今月、消費者に近い実店舗の閉鎖が「より長い期間」続けば「苦境」に陥りかねないと述べた。 最高経営責任者のエリック・ノードストロム氏と社長兼最高ブランド責任者のピート・ノードストロム氏は、2 人とも最低 6 カ月間は基本給を受け取らない。 ノードストロムは最近、土壇場になってメールで発注キャンセルを通知し、取引業者を驚かせた。 百貨店のネット通販サイトでは、新商品の価格がすでに 40% も下がっているケースもある。 通常なら 5 月に納品が始まっていたはずのプレフォールシーズン(初秋)向け商品も、発注キャンセルが増えている。 納品と同時に倉庫に商品を送り返されたというブランドもある。 支払期限の繰り延べは業者間で連鎖的に広がり、商品を納入するメーカーや卸売業者は、委託先メーカーやマーケティング会社、発送センター、賃貸物件の家主との交渉を余儀なくされている。 「第 4 四半期(10 - 12 月期)がどうなるかは誰にもわからない。 だが、発注は今始める必要がある。」 通常なら百貨店にとって書き入れ時となるクリスマス商戦について、調査会社フォレスターの小売業界担当アナリスト、スチャリタ・コダはこう語った。 「第 4 四半期の発注資金すらない会社もある。 第 4 四半期の注文はどのみちキャンセルされる可能性もあって、もう、ぐちゃぐちゃな状態だ。 これほどの不確実性は目にしたことがない。(コダ)」 ル・トートとロード・アンド・テイラーの経営陣は、事業を維持していくために「主要従業員」だけを残すと 4 月 2 日のメモに記した。 これについてロード・アンド・テイラーとル・トートはコメントを拒否し、一時帰休および一時解雇(レイオフ)された従業員の数も明らかにしなかった。 ロード・アンド・テイラーも清算不可避? 「会社更生手続きを経るかどうかはさておき、ロード・アンド・テイラーは遠からず事業清算することになるとみて、ほぼ間違いない」と、法律事務所バーンズ & ソーンバーグのパートナーで、小売業の倒産処理を専門とするジェームズ・ヴァン・ホーン氏は語る。 「同社は新型コロナの感染が拡大する以前から、百貨店の中では特に経営が厳しかった。 経営陣の大半が去り、従業員の大多数が一時解雇され、一部が一時帰休となると、おそらく在庫の流動化以外にとれる戦略はない。」 ヴァン・ホーン氏は、店舗数を削減し、店舗の賃料負担を軽減するために、他の百貨店が連邦破産法第 11 条による会社更生手続きを戦略的に利用する可能性があると語った。 「(百貨店は)ドミノ倒しのように崩れる。 どこがその 1 枚目で、どこが 10 枚目になるのかはわからないが。」 (Sapna Maheshwari & Vanessa Friedman、The New York Times /東洋経済 = 4-27-20) 「なんて勝手」国が百貨店を非難 デパ地下休業で板挟み 新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言をめぐり、休業を要請する事業者の範囲があいまいだったことに百貨店業界は振り回された。 宣言が出る前の 6 日夜に公表された東京都の対応案で、要請範囲に百貨店が含まれていたこともあり、百貨店大手は 7 日に早々と当面の臨時休業を相次ぎ発表した。 食料品フロアを含めて全面的に休むところも出た。 経産省「なんて勝手なことを」 これに、政府側がすぐさま反応した。 「なんて勝手なことをしてくれるんだ。」 宣言が出た 7 日夜、大手 4 社のトップが東京・霞が関の経済産業省の庁舎に呼ばれ、宣言前に当面の休業を決めたことをそう非難された。 関係者によると、経産省がこだわっていたのは食料品を売る「デパ地下」だ。 緊急事態宣言では、各知事が使用制限を要請できる施設に百貨店も含まれている。 ただ、食品や医薬品といった生活必需品は除外されており、政府は「『デパ地下』は営業を続けてほしい(経産省幹部)」との立場だった。 都心にはタワーマンションに住んでいる人も多くなり、「都心回帰が進み、デパ地下をスーパーのかわりに使う人も多い(同)」との理由からだ。 だが、百貨店側には東京都の対応案に含まれていたということに加え、別の思いもあった。 百貨店を追い詰めた「社会の目」 感染拡大で 3 月以降、営業時間を短縮していた百貨店業界では、3 月最終週から都が出した週末ごとの外出自粛要請に応じ、多くが土日の臨時休業に踏み切った。 3 月最終週に多くの百貨店が休業したが、店舗営業を続けたある百貨店大手には、SNS などで批判が多く寄せられたという。 こうした「社会の目」も背景に、三越伊勢丹は 7 日昼過ぎに、首都圏 6 店舗の全面的な臨時休業を発表。 大丸松坂屋百貨店も宣言の対象区域の全 9 店で一部を除き、デパ地下を含む臨時休業を発表した。 ある百貨店では「営業サイドは最後までデパ地下だけは営業を続けるべきだ」と主張したが、経営陣は「デパ地下は一番人が集まるところだ。 感染予防のためならデパ地下を閉めなければ意味がない」と判断し、休業を決めたという。 三越伊勢丹は「お客や取引先に周知する時間が必要で、休業要請を待っていたら遅い(広報)」、大丸松坂屋百貨店は「趣旨をくみして我々として休業を判断した(広報)」と説明する。 都と国の合意で「デパ地下」開けられる? 感染拡大で厳しくなる一方の世間の視線や、都の対応案を「先取り」した上での百貨店側の決断だったが、10 日に都が公表した休業要請の対象に百貨店は含まれなかった。 記者会見で小池百合子都知事は「(食品など)生活必需品が都民にとって必要という立場は変わらない」とし、デパ地下の営業を求める国と歩調を合わせた。 百貨店側は困惑する。 「生活必需品である食品をどうするかは今後の課題だ。」 大丸松坂屋百貨店を運営する J フロントリテイリングの山本良一社長は 10 日、百貨店に休業要請はしないとする都の決定後の決算会見でそう話した。 一方で、三越伊勢丹ホールディングスは同日、首都圏の 6 店でのデパ地下を含めた「全館休業」を改めて貫くことを発表した。 関係者はこう話す。 「今さらデパ地下だけ開けるのは難題だ。 売れなかった商品は廃棄し、売る商品がない。」 (佐藤亜季、久保智、asahi = 4-10-20) 緊急事態宣言に対する百貨店各社の対応 新型コロナ対策 安倍首相が緊急事態宣言を行った。 7 都府県を対象としており、効力は 5 月 6 日まで。 この緊急事態宣言を受けた 7 都府県の百貨店各社の対応をまとめる。 (デパートニューズ = 4-7-20)
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