高島屋と J フロント、最高益 訪日客が押し上げ トランプ関税に不安

大手百貨店の 2025 年 2 月期決算は、国内の富裕層やインバウンド(訪日外国人客)の旺盛な買い物意欲が押し上げて最高益が相次いだ。 高島屋の決算は、テナントも含めた売上高が前年比 8.5% 増の 1 兆 327 億円で、17 年ぶりに 1 兆円を超えた。 純利益が同 25.0% 増の 395 億円と過去最高を更新。 宝飾品やブランド品など高額商品がよく売れ、婦人服や紳士服、化粧品も好調だった。 特に、訪日客の買い物を示す免税売上高は 1,160 億円で、前年より 68% 増えた。 国内百貨店の店頭売上高の 15% を占めるほどになった。

大丸松坂屋百貨店などを運営する J フロントリテイリングの決算(国際会計基準)も同じだ。 純利益は同 38.5% 増の 414 億円で過去最高だった。 テナントを含めた売上高は同 10.1% 増の 1 兆 2,683 億円、営業利益は同 35.2% 増の 581 億円。 百貨店の免税売上高は 1,304 億円と、前年から 80.8% 増えた。 中国経済の減速で、中国からの来客はコロナ前の 19 年の 8 割ほどだが、富裕層の来客が増えて客単価は 2 倍近く高くなっているという。 訪日客の勢いは百貨店事業だけではなく SC 事業にも。傘下のパルコでは、キャラクターカフェなどエンタメ関連の取り組みが訪日客を呼び込んだ。

銀座や浅草に百貨店を展開する松屋は、純利益は同 9.4% 減だったが、売上高は過去最高だった。 特に銀座の店舗では免税売上高が店舗全体の売上高の 47.1% を占めた。 26 年 2 月期の業績予想は高島屋と J フロントが増収を見込む。 国内の個人消費は賃上げなどで伸びていくと見込む。 ただ、トランプ米大統領が打ち出した相互関税などで、世界的な景気低迷への懸念が広がり先行きは不透明になっている。

J フロントの小野圭一社長は「正直、見通しがつかない。 24 年は高額品が極めて大きな伸びを見せたが、同じペースで伸びるとは思っていない」と話す。 同社は 26 年 2 月期の免税売上高は 1,270 億円と微減すると予想する。 高島屋の村田善郎社長も「インバウンドは過熱しすぎとの印象もあった。 今後どうなっていくのか、不透明でよくわからない。」と語った。 高島屋も免税売上高は減ると見込んでおり、両社は当面、リピーター客の囲い込みに力を入れる考えだ。 (山口博敬、asahi = 4-13-25)



百貨店初売り、今年も「セールよりプロパー」

主要百貨店 5 社の 2023 年 12 月度業績は、おしなべて 1 割程度の増収だった。 ラグジュアリーブランドや時計・宝飾等の高価格帯商品が引き続きけん引し、気温が下がり切らない中でも冬物衣料が健闘した。

各社の前年同月と比較した売上高は、三越伊勢丹が 13.1% 増、高島屋が 10.1% 増、大丸松坂屋百貨店が 7.2% 増、そごう・西武が 3.9% 増(広島店、千葉店別館の閉店影響を除く)、阪急阪神百貨店が 12.3% 増。 婦人服、紳士服共に前年同月を上回った高島屋は、「年末年始の外出機会増を見据え、ジャケットやワンピースがよく動いた。(同社)」 そごう・西武の婦人服は前年同月比 1% と割り込むも、月の後半は気温の低下で復調した。

春先も着られるセーター、ジャケットが動く

1 月の初売りはそごう・西武が 1 日、三越伊勢丹と高島屋、大丸松坂屋百貨店、阪急阪神百貨店が 2 日に始まった。 新型コロナウイルスが 5 類に移行、感染拡大防止のための営業制限が 4 年ぶりになくなったが、例年に比べて特段のにぎわいはなかった。

三越伊勢丹の基幹3店(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)は 1 月 2、3 日の 2 日間で売上高が前年比 2% 増と、目立った押し上げ効果は見られなかった。 ただ売れたものの中身を見てみると、セール商品が同 8% 減に対してプロパー(正価)商品が同 8% 増。 「価格で妥協するのではなく、欲しいもの、価値のあるものが求められる(同社広報)」という傾向が鮮明になっている。 伊勢丹新宿本店では、セール、プロパーに関わらず、薄手のセーターやジャケットといった春先まで着られる商品がよく売れた。 福袋はコロナ禍から引き続き、大部分を EC で販売した。

阪急阪神百貨店の阪急本店は初売り初日の 2 日、約 2,000 人が並び列を作った。 2 - 3 日累計の売上高、客数は共に前年並みという。 元日が「一粒万倍日」だった影響からか、「ラグジュアリーブランドの革小物がよく売れた。(同社広報)」 (本橋涼介、WWD = 1-4-24)


狙いは「若手富裕層」 百貨店、業績好調 高級ブランド品が下支え

大手百貨店の 2023 年 8 月中間決算が 13 3日出そろった。 物価高に伴う節約志向が強まる一方で、大手 3 社は増収増益と好調だ。 都市部では訪日客需要の増加に加え、国内富裕層による高額消費が押し上げた。 ただ地方は苦戦が続く。 高島屋は同日、岐阜市内の店を閉めると発表した。

高島屋は 13 日、売上高が前年同期比 5.8% 増の 2,211 億円、本業のもうけを示す営業利益が同 62.4% 増の 208 億円で過去最高だったと発表した。 訪日客には有利な円安を追い風に、高級ブランド品の売り上げは 19 年同期比の約 1.7 倍に。 村田善郎社長は同日の会見で「高額消費の伸びは今後のトレンドだろう」と話した。 銀座と浅草に店舗をもつ松屋は売上高が前年同期比 25.9% 増の 195 億円、営業利益は 8 億円(前年同期は 8 億円の赤字)だった。 売り上げの約 9 割を占める銀座店では高級ブランドのバッグや時計、宝飾品が全体を牽引した。

大丸松坂屋百貨店を運営するJフロントリテイリングは、売上高が同 16.4% 増の 5,401 億円、営業利益も同 48.7% 増の 196 億円だった。 好本達也社長は「富裕層市場はここ 10 年ほど好調だったが、近年は若い富裕層が台頭してきた。 チャンスにつなげたい。」と意気込む。 こうした好業績を受け、アパレル企業には販売戦略を練り直す動きもある。 三陽商会の大江伸治社長は 6 日の決算会見で、「百貨店が高い志向を持った方に見直されている。 改めて攻勢をかけ、売り場面積を広げたい。」と話した。

野村総合研究所の推計によると、純金融資産保有額が 1 億円以上の富裕層は 21 年時点で、全国に 148 万 5 千世帯いる。 推計を始めた 05 年以降で、最も多いという。 ただ、ネット通販の台頭や高齢化など地方の百貨店を取り巻く状況は厳しい。 高島屋は 13 日、岐阜店を来年 7 月末に閉店すると発表した。 業績の改善が見込めないことや、建物の老朽化などが理由という。 岐阜店は 1977 年に開業し、県内唯一の百貨店として親しまれてきた。 (益田暢子、asahi = 10-13-23)


伊勢丹に「富裕層の日常着」狙う新売り場 中間層を失った国内アパレルの次なる一手

伊勢丹新宿本店は 9 月 20 日、3 階の新売り場「コンテンポラリー」をグランドオープンした。 従来は国内アパレルメーカーによる "昔ながらの百貨店キャリア服" やサイズ対応のブランドなどで構成していた区画を、3、4 階のメインであるラグジュアリーやデザイナーズのブランドと感度がつながるようにアップデート。 「リアルクローズの新ゾーン(藤本康介 新宿婦人・子供商品部リアルクローズ キャリア バイヤー)」として、「富裕層の間で増えている上質な日常着を求める声」に対応する。 外商顧客に支えられ、初日の滑り出しは好調だったという。

伊勢丹新宿本店は 2023 年 3 月期、年間売上高 3,276 億円を記録し、31 年ぶりに過去最高を更新した。 バブル期を超える勢いの原動力になっているのは、コロナ禍に関係を深めた 40 - 50 代中心の若年富裕層だ。 3、4 階に出店するラグジュアリーブランドやジュエリーブランドで高額品が富裕層に飛ぶように売れ、客数がコロナ禍前に戻りきらない中でも売り上げを大きく押し上げた。 新売り場が狙うのは、40 - 50 代の医師や自営業者といったまさに若年富裕層の女性、「伊勢丹新宿本店にとってコアのお客さま」だ。

そういった客は、例えば 4 階の「シャネル」、「ディオール」などでももちろん服を買っているが、「『どこのブランドか一目で分かってしまうような "これみよがし" な商品は避けたい。』 でも、『人とは違うものがほしい』、『質も担保したい』と感じている」と藤本バイヤー。 カードやアプリを通した顧客の購買行動分析や富裕層顧客のインタビューを通して、そうしたニーズが浮かび上がったという。 「ザ・ロウ」や「ロロ・ピアーナ」、「アニオナ」など、"これみよがし" でない上質ブランドは "クワイエットラグジュアリー" などと呼ばれ、富裕層の日常着としてもともと支持されている。 ただ、「それらのブランドだけでは選択肢が少ない」ため、国内メーカーと組んだ新売り場の開発につながった。 (五十君花実、WWD = 9-21-23)


そごう・西武、米投資会社傘下に売却完了 実質 8,500 万円程度で

セブン & アイ・ホールディングス (HD) は 1 日、傘下の百貨店そごう・西武の米投資会社フォートレス・インベストメント・グループへの売却を完了したと発表した。 そごう・西武はフォートレスを親会社に新たな経営体制に移る。 旗艦店の西武池袋本店などには家電量販ヨドバシ HD が不動産を取得した上で出店する意向を示している。 そごう・西武の企業価値は 2,200 億円と見込まれるが、有利子負債約 3 千億円やセブン & アイによる貸付金の一部 916 億円の放棄などを勘案し、実際の売却額は 8,500 万円程度になる見通し。

1 日には経営陣を刷新した。 関係者によると、田口広人社長は代表権がない取締役となり、新たな代表取締役にはフォートレスの関係者が就任。 このほかにもフォートレス側から複数人が取締役に就き、役員の過半数を占めたという。 フォートレスと連携するヨドバシは西武池袋本店、そごう千葉店のほか西武渋谷店にも出店したい意向だ。 関係者によると、池袋本店は約 1 年後の出店を目指している。 フォートレスはそごう・西武が持つ池袋本店の土地などを約 3 千億円でヨドバシに売却し、有利子負債の返済にあてる。 国内にある 10 店舗は当面は維持されそうだ。

だが、4 期連続赤字のそごう・西武を立て直すのは容易ではない。 流通アナリストの中井彰人氏は取材に、「ヨドバシの主な関心は出店対象の首都圏店舗の所有権を得ることにある。 百貨店の売り場にも配慮はするだろうが、どこまで(現在の形が)維持されるかはわからない。 他の店舗はフォートレスが個別に売却先を探すとみられるが、百貨店でなくなる可能性もある。」と指摘する。 雇用維持などを求めて 8 月 31 日にストライキを実施したそごう・西武の労働組合は、今後は新たな経営陣と協議を続ける方針だ。 セブン & アイを交えた協議は平行線に終わり、親会社がフォートレスに代わっても関係者間の溝が埋まるかは見通せない。

一方、そごう・西武を手放したセブン & アイは 1 日、1,331 億円の特別損失を計上すると発表。 2024 年 2 月期の純利益の予想を 19.3% 低い 2,300 億円に下方修正した。 頭痛の種はそごう・西武にとどまらない。 「物言う株主」の米投資ファンド、バリューアクト・キャピタルからは、総合スーパーを運営するイトーヨーカ堂も切り離し、高収益をあげるコンビニ事業への集中を求められており、前途はなお多難だ。

セブン & アイは、コンビニにも並ぶ商品づくりにスーパーの担当者も多く関わることなどから、スーパー事業は当面は切り離さない方針を示す。 ヨーカ堂は店舗を首都圏に集約するなどして 26 年 2 月期までの黒字化を目指すほか、1 日にはヨーカ堂とグループの食品スーパー「ヨーク」を合併。 本社機能の統合でコストを削減して利益体質につなげる狙いで、テコ入れを急ぐ。 (末崎毅、asahi = 9-1-23)

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「小売りの王様」百貨店 100 年の矜持 夢の空間、紡ぐか手放すか

100 年前の関東大震災の日、揺れに耐えて開業した帝国ホテル旧本館(ライト館)を、愛知・犬山の明治村に訪ねた。 歴史的な建物が数多く移築されている野外博物館の正門から一番奥、蒸し暑いなかをゆっくり 20 分ほど歩くとたどりつく。 玄関から吹き抜けのロビーに入り、天井まで届く透けた四方の柱を見上げる。 大谷石とスダレ煉瓦、そして装飾用の陶器テラコッタがつくり出す、時を忘れる空間だ。 そのテラコッタは外壁も彩り、昭和初期までの間、ライト館を起点とするように全国の建物に広がった。 当時の百貨店も採り入れて、風格のある店を次々と建てる。 建築陶器にくわしい INAX ライブミュージアム主任学芸員の後藤泰男さん (63) に聞くと、テラコッタは建物に入る前から夢みるような空間を演出し、わくわく感を与えることが大切にされた。

「百貨店たる威厳、そして復興に向けた勇気を示すとの思いもあったはずです。」

震災 2 カ月後の雑誌「実業之日本」の特集「大商店の復興方針」では、「最も完備した最新式の大百貨商店(デパートメントストア)を速やかに建築する。(高島屋呉服店東京支店支配人)」といった決意を各社がつづった。 戦後も長く買い物の主舞台を担った百貨店。 四半世紀前は全国で 300 店超あったが、いま 180 店ほど。 数は減っても「小売りの王様」と呼ばれた存在感は、郷愁とともにそのありようが気にかかる。

「地下から 4 階まで全部、全面っていうとさすがに顔が変わるかなと思います。」

東京・池袋駅の改札口とつながる西武池袋本店に家電量販のヨドバシカメラが入ろうという計画では、地元の豊島区長が難色を示した。 百貨店の労働組合も、ストライキの決行を視野に入れる。 「顔」は、その時代の客が求める品々や値ごろ感という表情を、わかりやすく映し出す。 日本橋三越本店には「百貨店のおもてなしと専門店の品ぞろえの融合」をめざす家電量販のビックカメラが、東武百貨店池袋店には 100 円ショップ・ダイソーの旗艦店が入った。 東京・銀座に二つ残る百貨店の松屋と三越には、祖業である呉服の売り場はもうない。 松屋で「浴衣を買いたいのですが」と案内で聞いてみたら、「申し訳ありません、もう扱ってないのです。 銀座の近辺なら、有楽町マルイさんに行っていただけたら」と地図を広げて教えてくれた。

「スタバはないけどスナバ(砂丘)はある」で知られた鳥取県、人口 14 万人あまりの米子市に行くと、高島屋の丸のロゴマークが遠くからもよく見えた。 富裕層や外国人客が限られる地方では、「百貨店ゼロ県」でもいまや驚かない。米子でも高島屋は苦戦して株式を手放したが、地元のまちづくり企業が買い取ってライセンス契約を結び、バラの包み紙や紙袋も同じままの店を残した。 朝 9 時に開店する「デパ地下」をのぞくとイオン系の食品スーパーがあり、レストランがあった 5 階に入るインテリアの専門店では、にぎやかな BGM を耳にする。

「ここが高島屋?」と思わず戸惑う私に、IT 企業出身の宇田川正樹社長 (59) は「化粧品、婦人服、紳士服というこれまでの売り場づくりでは、ネットのモールに勝てない」と説明した。 ネット慣れした人をより意識して、リアルの「顔」の表情はさらに変わるのか。 採算はとれるか。 郊外から街中にもっと人が戻ると見込む人口減時代の先行投資として、地域のプライドもかけて、親しまれてきた老舗の看板への社長のこだわりは、想像以上に強い。 駅ビルやショッピングモールとの違いなど、若い世代はもう意識しないだろう。 屋上の遊園地で遊んだシニア世代は、百貨店を語り出したら止まらないけれど。

ライト館の 2 年後に孔雀のテラコッタが掲げられた、大阪・心斎橋の大丸。 その風合いを残して 4 年前に建て替わったクラシックなビルに、戻ってきた外国人の姿が目立つ。 百貨店から衣替えしたもう一つの館のパルコとは、連絡通路で行き来できる。 買い回りという機能を「最新式」に置き換えながら、多くの人が「また行こう」と夢も感じられる空間を磨く。 百貨店がこの 100 年培ってきた矜持を、多様化した社会はどう紡ぐのか、手放すのか。 それぞれの地域が向き合っている。 (編集委員・伊藤裕香子、asahi = 8-5-23)

〈編者注〉 「百貨店を語りだしたら止まらない」世代でも、今の百貨店にそうそう足を向けるとは思えませんので、小売店の形態も自ずとその時々に変るのであろうと考えるのが自然です。 情報豊富な時代ですから、今自分の欲しいものが何処に売っているのか知っています。 基本的には「百貨」のお店は必要無いのです。 現在の百貨店の悲劇は、お店の名前自体にブランド価値があることに気づいていなかったことでしょう。 ブランド価値が下がると嘆くのでは遅すぎます。 「〇〇だったら △△店」と言われるような PB (ここでは店名ブランド)を作ろうとしなかった店側により大きな問題があるように感じます。


物価高下のボーナス商戦、百貨店は 11% 増 高額品が好調

公務員や会社員の夏のボーナスが支給され商戦が本格化してきた。 三越伊勢丹ホールディングス (HD) は、1 - 2 日のグループ全体の百貨店売上高が前年同月比 11% 増と好調に滑り出した。 株高による資産効果や新型コロナウイルス禍後の「リベンジ消費」が、時計や宝飾、衣料品などの高額品の購入を後押ししている。 三越伊勢丹 HD や高島屋、そごう・西武などの百貨店各社は 6 月末からセールを始めた。 伊勢丹新宿本店(東京・新宿)は売り上げが好調で入店者数も 2 桁増に伸びた。 「セール目当ての顧客がセール外の品を購入する傾向も強い(広報)」という。

そごう・西武の 6 月 30 日 - 7 月 2 日の全店売上高は前年比 10% 増だった。 高額品の「ラグジュアリーブランド」分野に絞ると売上高は 25% 増と高額品がけん引する構図だ。 エイチ・ツー・オーリテイリングによると、阪急本店(大阪市)では 6 月の 100 万円以上の高額品売上高は前年同月比 3 割増えた。 「株高による資産効果やボーナスの伸びで国内景気全体に明るさがみえていることが背景にあるのではないか(同社)」という。

完全予約制の高級時計販売会も

百貨店は高額品需要が一段と高まるとみる。 伊勢丹新宿本店は 5 日から 2,000 万円を超えるスイスの高級時計メーカー、ジャガー・ルクルトの「レベルソ」、ピアジェの「ポロ」を集めた企画を始める。 松屋銀座(東京・中央)は外商顧客を主な対象とし、レストランを貸し切った完全予約制の高級時計販売会を開く。 日本経済新聞社がまとめた 2023 年夏のボーナス調査(4 月 20 日時点、中間集計)は、平均支給額が前年比 3.4% 増の 85 万 2,012 円と 2 年連続のプラスとなった。 企業は物価高対策として従業員の月例賃金をこの春の労使交渉で引き上げ、夏季の賞与も積み増している。

総務省の家計調査によると、世帯主の月収が 50.3 万円以上の「高所得層」の 22 年の消費支出は月平均で 44 万円と、コロナ前の 19 年に比べ 4% 弱増えた。 全所得者の平均で 1% 減るなか、高所得者層は支出を増やす傾向がある。 円安効果でインバウンド(訪日客)の消費も追い風だ。

6 月の免税売上高を前年同月比でみると、三越伊勢丹グループが 4.1 倍となり、6 月単月として過去最高を更新した。 高島屋は 4.1 倍、エイチ・ツー・オーリテイリングは 3.8 倍、J・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は 6.6 倍、そごう・西武は 4 倍だった。 歴史的な賃上げや株高に加え、行動制限の緩和で高額品や旅行への消費が新型コロナ禍前より期待できる。 「非日常の消費」は物価高の影響を受けにくくなっている。

ホテルも高価格帯の客室に引き合い

好調な非日常の消費は、コト消費の代表格である旅行でも顕著だ。 高価格帯のホテル予約や単価の高い海外旅行が伸びている。 ホテルのオークラ東京(東京・港)では、通常よりも高価格帯の部屋の引き合いが増えている。 最高級ブランド「ヘリテージ」の客室の 9 月の平均客室単価は 6 月に比べて 10% 高い 12 万円近くになる。 通常タイプの部屋の客室単価は横ばいで推移し、「料金の高い部屋の予約が増えており購買意欲の高さを感じる。(同社)」 エイチ・アイ・エス (HIS) の 7 - 9 月の海外旅行売上高は、円安にもかかわらず 19 年同時期に比べて 7 割の水準まで回復した。 ハワイや若者に人気の韓国ソウルを中心にアジア方面が旅先として人気だ。

節約志向も、扇風機で電気代を節約

高額消費が活況な一方、物価が上がり、家電や日用品、食品では節約志向もみられる。 イオン傘下で 100 円ショップのキャンドゥは、5 月の既存店売上高が前年同月比 4.5% 増と 12 カ月連続でプラスとなった。 家電量販店では節電できる家電が伸びている。 6 月から一部を除き全国的に家庭向け電気料金が値上がりし、消費者は生活防衛に走っている。 ビックカメラではエアコンと比べて電気代が安くて済む扇風機が売れている。 1 - 2 日の扇風機の売上高が前週末(6 月 24 - 25 日)比 6 割増えた。 人気を受けて売り場を例年より広げる。 風量が強く、首を 360 度動かせる高機能品が増え、「エアコン代わりに扇風機を使って電気代を抑える動機で購入する人が増えている。(担当者)」

ヤマダデンキは節電ニーズに対応するエアコンや冷蔵庫などを通常より値引きするほか、高額のポイントを付ける販促策を始めた。 節約志向の高まりでスーパーも客数が伸び悩む。 日本チェーンストア協会(東京・港)によると、5 月の全店ベースの客数は前年同月を約 1% 下回った。 店頭では単価の高い牛肉から安価な豚肉や鶏肉に流れる傾向もみられるという。 「買い控え傾向が続き、単価の上昇でなんとか売上高を補っている格好だ。(同協会)」

消費の二極化がみられるなか、今後の消費全体の動向が注目される。 伊藤忠総研の中浜萌副主任研究員は「消費は緩やかな回復を続ける」とみる。 中浜氏はコロナ禍で旅行や買い物などへの支出が減り、反動で増えた貯金が年間消費額のうち 10% 程度残っていると試算する。 これが本格的に消費に回る可能性がある。 先行きに保守的な見方もある。 大丸松坂屋百貨店を傘下に持つ J・フロントリテイリングは「資源価格の高騰や物価高での消費者心理の冷え込みといった下押しリスクを注視する必要がある」とする。 (嶋田航斗、坂本佳乃子、鎌田旭昇、nikkei = 7-3-23)


百貨店売上高、15 カ月連続増 5 月、夏物衣料好調

日本百貨店協会が 23 日発表した 5 月の全国百貨店売上高(既存店ベース)は、前年同月比 6.3% 増で、15 カ月連続でプラスとなった。 気温の上昇で夏物衣料が好調だった。 マスクを外す機会が増え、化粧品や紫外線対策用品の売れ行きもよかった。 訪日客の動向を示す免税品の売上高は、前年同月比で約 3.5 倍。 ただ、中国本土から訪れる客の回復は限定的で、新型コロナウイルス禍前の 2019 年 5 月に比べ 32.2% 減にとどまった。 地区別の売上高は東京や大阪、福岡などの主要 10 都市が 8.5% 増。 10 都市以外は、東北の一部店舗が改装工事中だったことが響き、0.1% 減だった。 (kyodo = 6-23-23)


百貨店 5 月度 新型コロナ 5 類移行で衣料品、化粧品売れる

百貨店主要 5 社の 2023 年 5 月度売上高は、おしなべて前年並み - 1 割程度の増収だった。 行動制限のない大型連休に加え、5 月 8 日から新型コロナウイルスが 5 類感染症に移行したことで、来客に一定程度のプラス効果が出た。

ラグジュアリーブランドや宝飾・時計など高額品の好調は継続する一方、外出機運の高まりが衣料品や化粧品の売り上げを押し上げている。 各社の前年同月と比較した売上高は、三越伊勢丹が 19.1% 増(19 年同月比 16% 増)、高島屋が 8.3% 増(同微減)、大丸松坂屋百貨店が 11.5% 増(同 1.3% 減)、そごう・西武が 1.5% 増(同 3.0% 減)、阪急阪神百貨店が 14.6% 増(同 10% 増)だった。

三越伊勢丹の伊勢丹新宿本店は、衣料品の好調が際立つ。 婦人服の売上高は 19 年同月比 33.9% 増と大きく伸長した。 中国人観光客の購買に支えられていた化粧品は同 16.2% 減にとどまるものの、「ベースメイクや口紅が好調。(同社)」 阪急阪神百貨店の阪急本店も、化粧品が約 3 割増と高伸した。 「マスクを外す場面の増加も背景に、リップや基礎化粧品、ファンデーションなどの動きがいい。 耳周りのアクセサリーのニーズも高まっている。(同社)」という。 (本橋涼介、WWD = 6-1-23)


化粧、衣料品の売上高 2 桁増 百貨店の客「開放的に」

日本百貨店協会が 23 日発表した 4 月の全国百貨店売上高(既存店ベース)で、主力商品の化粧品と衣料品はともに前年同月と比べて 2 桁増となった。 新型コロナウイルス感染症の 5 類移行を控えてマスクをせず外出する機運が高まり、担当者は「顧客の心理が開放的になった」と分析した。 訪日客の動向を示す免税品の売上高は前年同月比で 3 倍超となり、好調を維持した。 コロナ禍前と比べて中国からの観光客は回復途上で、免税品需要はさらに拡大する余地があるとみている。 百貨店売上高全体は前年同月比 8.6% 増と、14 カ月連続でプラスとなった。 (kyodo = 5-23-23)



関西デパート各社旗艦店 11 月の売り上げ 前年から大幅増

先月の関西にあるデパート各社の旗艦店の売り上げは、いずれも、去年の同じ月から大幅に増えました。 国内客向けの秋冬物の衣料品などの販売が好調なことに加えて、外国人旅行客による消費が回復していることなどが要因です。 デパート各社の旗艦店のうち、「阪神梅田本店」では、引き続き全面改装による集客効果で売り上げが去年の同じ月と比べて 48% 増えたほか、同じグループの「阪急うめだ本店」は、秋冬物の衣料品の販売やクリスマスケーキの受注が好調なことから、「阪急メンズ大阪」との合計で 11% 増加しました。

「大丸心斎橋店」は、高級ブランドのバッグや財布などの販売が伸びたことから、29% 増えました。 近鉄百貨店の「あべのハルカス近鉄本店」は、プロ野球・オリックスの日本一を祝うセールがあったほか、国内の旅行需要の回復に伴ってバッグなどの販売が好調で 9% の増加、「高島屋大阪店」も冬物の衣料品が好調で 9% 増加しました。 さらに、いずれの店舗でも水際対策の緩和や円安によって外国人旅行者の消費が増えていて、中でも、阪急と阪神の全店での先月の免税売り上げは、コロナ禍前の 2018 年と比べておよそ 9 割まで回復するなど、国内外の旺盛な需要を取り込んだ形です。 (NHK = 12-5-22)


7 月の百貨店売上高 9.6% 増、5 か月連続プラス … 猛暑で夏物衣料品・日傘など好調

日本百貨店協会が 23 日発表した 7 月の全国百貨店売上高(既存店ベース)は、前年同月比 9.6% 増の約 4,391 億円となり、5 か月連続で増加となった。 外出機会の増加で入店客数が 9.0% 増となり、気温の上昇で夏物関連商品の売り上げも好調だった。 商品別では、猛暑の影響で夏物が好調な衣料品が 12.7% 増となったほか、日傘や帽子、サングラスなどの売れ行きも良かった。 人気が高まるラグジュアリーブランドを含む身の回り品や時計、宝飾などの高額品も引き続き、好調だった。 (yomiuri = 8-23-22)


伊勢丹新宿店の売上が第 1 四半期で統合以来過去最高を記録、入店客数も回復

三越伊勢丹ホールディングスが 2023 年 3 月期第 1 四半期決算(2022 年 4 月 - 6 月)で売上高 1,016 億 1,500 万円(前年同期比 14.7% 増)、営業利益 39 億 6,500 万円(前年同期は営業損失 60 億 2,700 万円)を計上し、増収増益を記録した。 昨年の臨時休業等の反動に加え、3 年ぶりに行動制限がない大型連休となったゴールデンウィーク商戦を中心に消費行動が活発化し、売上高、入店客数ともに前年から大きく伸長。 なかでも基幹店の一つである伊勢丹新宿店は三越と伊勢丹が経営統合した 2008 年以降、第 1 四半期として過去最高の業績を叩き出したという。

免税売上が戻らない中で過去最高の売上を計上した背景として、外商顧客をはじめとする上位顧客による売上好調を挙げた。 価値の高い品揃えの強化に加えて、三越伊勢丹ホールディングスが「百貨店の再生」を目指して近年取り組んできた収支構造改革の効果が一番現れているのも伊勢丹新宿店だという。

7 月度の速報値でも同店の売上は既存店の中でも最も高い水準の 29.9% 増となり、4 月から 4 ヶ月連続で統合以降、単月の売上が過去最高を記録した。 来店客数は前年同月比 25% 増と 2 桁増で推移。 7 月 20 日に都内の新型コロナウイルス感染者数が 2 万人を突破して以降は外出控えの傾向が出て、伊勢丹新宿店のほかに日本橋三越本店や銀座三越店でも入店客数で前週比 10 ポイントほど下落したが昨年ほどの影響はなく、また品揃えを強化しているラグジュアリーや宝飾品、秋冬の新作が入荷した衣料品などで上位顧客を中心に購買の動きがあったことから売上の低下は見られていないという。

一方で、中間層の顧客の購買動向はオミクロン株の流行が拡大した 1 月以降冷え込んでいる。 物価高による消費マインドへの影響もあり、回復には時間がかかると見ている。 (FashionSnap = 8-1-22)