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中国軍機が自衛隊機にレーダー照射 防衛相が臨時会見、中国側に抗議

小泉進次郎防衛相は 7 日午前 2 時過ぎ、防衛省で臨時の記者会見を開き、沖縄本島南東の公海上空で 6 日午後、中国軍機が自衛隊機に対し、2 回にわたって断続的にレーダー照射を行ったことを明らかにした。 小泉氏は「今回のレーダー照射は、航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為だ」と非難した。 自衛隊機と隊員に被害はなかったという。 中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射が公表されたのは今回が初めて。 日本政府は 7 日未明、今回のような事案が発生したことは極めて遺憾だとして、外務・防衛当局双方のルートで中国側に強く抗議し、再発防止を厳重に申し入れた。

防衛省によると、6 日午後 4 時 32 分ごろから同 35 分ごろまでの約 3 分間、沖縄本島南東の公海上空で、中国海軍空母「遼寧」から発艦した J15 戦闘機が、対領空侵犯措置を実施していた航空自衛隊 F15 戦闘機に対し、レーダー照射を断続的に行ったという。 さらに同日午後 6 時 37 分ごろから同 7 時 8 分ごろまでの約 30 分間も、同じく対領空侵犯措置を行っていた別の空自 F15 戦闘機に対し、レーダー照射を断続的に行ったという。

防衛省によると、今回の事案は、沖大東島(沖縄県)の西約 270 キロの西太平洋上を航海していた「遼寧」から発艦した J15 戦闘機に対し、空自那覇基地(那覇市)から F15 戦闘機を沖縄本島南東の公海上に向けて緊急発進(スクランブル)させる中で発生したという。 その際、自衛隊機は、中国軍のJ15 戦闘機の機首に備えているレーダーの照射を受けたという。

戦闘機のレーダー照射は、攻撃目標を定める火器管制用のほか、周囲の捜索用のために使われることがあるが、中国側がどのような目的でレーダー照射を行ったかは不明という。 ただし、防衛省・自衛隊は、中国機が自衛隊機に対して断続的にレーダー照射を行ったことなどの状況を鑑み、火器管制用の目的で使用した可能性があるとみて、航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為だと判断したという。

一方、この間、中国機による領空侵犯は発生しなかった。 防衛省の担当者は「F15 は目視できるような距離感で J15 に近づいておらず、相当な距離があった」と説明した。 防衛省によると、中国軍機から自衛隊機がレーダー照射されたと公表した事例は今回が初めて。 一方、海上においては、2013 年 1 月 19 日に中国海軍艦艇による海自護衛艦の艦載ヘリコプターに対して火器管制レーダーを照射したことが疑われる事例が起きたほか、同月 30 日には中国海軍艦艇から海自護衛艦に火器管制レーダーを照射した事例が発生し、公表されている。

日中防衛当局間の専用回線「ホットライン」の活用については「相手国との関係もあり答えられない(防衛省担当者)」として明言を避けた。 2023 年に自衛隊と中国軍の偶発的衝突を避けるために開設されたが、実質的には機能しておらず、今回も使用されていないとみられる。 (asahi = 12-7-25)


フィリピンに情報処理・指揮統制システム輸出へ ミサイルに関心も

日本政府が、フィリピンに情報処理や指揮統制を行うシステムを輸出する方向で調整していることがわかった。 対中国を念頭に、日本はフィリピンへの防衛装備品の移転を重視している。 フィリピン側からは、日本の防空ミサイルにも関心が寄せられているといい、フィリピンへの装備品輸出が広がりつつある。 複数の防衛省関係者が明らかにした。 輸出が調整されているのは、対空戦闘を念頭に、レーダーなどのセンサーで探知した相手国の戦闘機やミサイルの情報を一元的に集めて処理し、指揮統制まで行うシステムだ。

防衛装備移転三原則の運用指針では、輸出する防衛装備品を「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の目的に限定することが定められている。 政府はシステムの目的が警戒監視であるとして、「5 類型」のもとでの輸出は可能と判断する方針だ。 日本はすでにフィリピンに警戒管制レーダーを輸出。 指揮統制システムを輸出すれば、比軍との間でより円滑な情報共有ができるようになるという。 防衛省幹部は「日比間で共通の防空システムを構築する準備が進みつつある」と話す。

複数の防衛省関係者によると、フィリピンは最近、敵の航空機や巡航ミサイルを迎え撃つ陸自の「03 式中距離地対空誘導弾(中 SAM)」にも関心を示しているという。 中 SAMの輸出が実現すれば、フィリピンで、レーダーによるミサイルの探知から迎撃までを日本の装備品で実施することができるようになる。 「ますます中国にともに対処しやすくなる(防衛省幹部)」との期待が日本側にはある。

ただし、中 SAMは「5 類型」に該当しないため、現行制度のもとでは輸出ができない。 しかし、自民、日本維新の会は連立合意書で「5 類型」について、来年の通常国会中の「5 類型」撤廃を明記。 「5 類型」が撤廃されれば、中 SAMの輸出が可能になる。 省内での具体的な検討はこれからであり、防衛省関係者は「国内での生産ラインに余裕があるかを含めて今後の議論になる」と語る。 (佐藤瑞季、asahi = 13-3-25)


今年度の防衛費、GDP 比 2% 前倒し達成へ 補正予算案で積み増し

28 日に閣議決定された 2025 年度補正予算案では、防衛費に関連経費を含めて 1.1 兆円を計上し、25 年度の防衛費を国内総生産 (GDP) 比 2% にする目標を達成することとなった。 高市早苗首相は今回の補正予算と合わせて「2%」目標を前倒しして今年度中に実現する方針を示していた。

25 年度当初予算では、関連経費を含め防衛費に 9.9 兆円を計上し、22 年度の GDP 比で 1.8% だった。 今回の補正予算案では、防衛力整備計画の対象経費に 5,021 億円、米軍再編事業に 3,451 億円を計上。 これに関連経費を合わせ、防衛費を 1.1 兆円とした。 今年度の防衛費は計約 11 兆円となり、GDP 比で 2% を達成することとなった。

22 年末に制定された安全保障関連 3 文書の一つ、国家安全保障戦略では、防衛費を関連経費を含めて 27 年度に GDP 比 2% にする目標を掲げた。 だがトランプ米政権が同盟国に防衛費増額を求める中、首相は所信表明演説で「2%」目標の前倒し達成と、さらなる防衛費増を視野に入れて安保関連 3 文書を 26 年中に改定する意向を示した。 10 月 28 日の日米首脳会談でも、トランプ大統領にこうした意向を伝えていた。

小泉防衛相「可能な限り加速」

小泉進次郎防衛相は 28 日の会見で「急速に厳しさを増す安全保障環境を踏まえれば、現在の国家安保戦略などに記載している取り組みを可能な限り加速させることが必要だ」と意義を語った。 一方、防衛費をめぐっては例年、使い切れなかった「不用額」も多く出ている。 政府は今月、2024 年度予算に計上した防衛費 7 兆 9,496 億円のうち、不用額が約 1,100 億円になるとの見通しを示している。 政府側は、防衛装備品調達の競争入札により契約額が見込みを下回ったことなどを理由に挙げている。

また政府はこれまで、防衛費の対 GDP 比について当初予算をベースに示していたが、今回、補正予算を上乗せした形で「2%」達成とした。 このことについて会見で問われた小泉氏は、「必要な防衛力の内容を積み上げた上で導き出したもので、数字ありきで防衛力整備を行っているのではない」と強調した。

防衛省予算は過去最大 8,472 億円

25 年度補正予算案で、防衛省の予算は過去最大の 8,472 億円に上った。 安全保障環境の変化への速やかな対応を目的に、航空機や艦船など自衛隊の運用態勢の早期確保のために 2,808 億円を計上。 このうち、陸上自衛隊の多用途ヘリコプター「UH2」や海上自衛隊の護衛艦 (FFM)、たいげい型潜水艦などに 1,222 億円、「03 式中距離地対空誘導弾」(中 SAM)の弾薬などを早期に確保するための調達費用を 566 億円とした。

 このほか、不審なドローンを識別し、電波妨害をして対処するための機材の早期導入のために 29 億円、自衛隊員の生活環境の整備を目的にした、人件費の増額や隊舎の個室化など人的基盤の強化に 1,674 億円を計上している。 (佐藤瑞季、清宮涼、asahi = 11-29-25)


異色の統合部隊「海上輸送群」、航海を初公開 南西シフトの一翼担う

今春発足した陸海空自衛隊の統合部隊「海上輸送群(広島県呉市)」の訓練航海が 7 日、初めて報道陣に公開された。 南西諸島などに装備車両や物資の輸送を行う水上部隊で、政府が推し進める自衛隊の「南西シフト」の一翼を担う。 公開されたのは、輸送艦「にほんばれ(全長 80 メートル、基準排水量約2400トン)」。 装備車両なら十数台、コンテナなら十数個を載せて運べる。

最大の特徴は乗組員の構成だ。 約 30 人の定員のうち 9 割が陸上自衛隊の所属。 人手不足にあえぐ海自に代わり、海に不慣れな陸自隊員が初めて艦艇を運用する。 7 日に広島県沖で公開された訓練では、霧で視界が悪い想定下、陸自隊員が海自隊員の助言を受けながら狭い海峡を慎重に航行した。 漁船と衝突しないよう素早くいかりを下ろす方法も検討されたほか、休憩室に置かれていたモバイルバッテリーから出火した想定で延焼を防ぐ消火訓練もあった。

異色の部隊、将来は 10 隻体制に

「にほんばれ」は港がなくても車両や物資を陸揚げできる「ビーチング」が可能で、港湾設備が整っていない南西諸島でも有効とされる。 10 月には初めて実動演習に参加し、大分県の港で 155 ミリ榴弾砲 FH70 の搭載やコンテナの積み下ろしも行われた。 現在は 2 隻が運用されているが、防衛省は来年 3 月にさらに 2 隻を就役させ、2027 年度までに 10 隻体制にすることをめざしている。

元々は陸自でトラックを運転し、5 年ほど海自の輸送艦などで研修を重ねた佐藤康典 2 等陸曹 (37) は「チームワークを高めて運航に努めていきたい」と話す。 海自の原陽二郎 1 等海曹 (45) は「(陸から海へ)職種を変えても熱意を大きく感じる。 経験を補うために助けて訓練を積み上げ、陸自主体で船が動かせるよう協力していきたい」と語った。 (矢島大輔、asahi = 11-7-25)


初配備の F35B 訓練始まる 住民の反対根強いまま 宮崎の空自基地

防衛省は 4 日、国内で初めて航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県新富町)に配備した最新鋭ステルス戦闘機 F35B の飛行訓練を始めた。 特徴である「垂直着陸」に対し、騒音被害の拡大を懸念する周辺住民の声が根強い中、実施に踏み切った。 午後 2 時半過ぎ、1 機の F35B が基地の滑走路を離陸。 周辺で旋回を繰り返し、約 30 分にわたり滑走路に接地だけして飛び立つ「タッチ・アンド・ゴー」を 4 回、低空飛行で通過する「ローパス」を 1 回して訓練を終えた。 垂直着陸はしなかったが、断続的にゴウゴウと空を切り裂くような轟音が響いた。

F35B は 8 月に 3 機、10 月に 2 機配備された。 垂直着陸は滑走路の真上でホバリングするなど、通常の着陸より時間がかかる。 従来の F15 と比べて騒音が長い時間続くとされる。 防衛省によると、9 月の飛行実演の際、着陸地点から 3.5 キロ離れた住宅での最大騒音値は 105.2 デシベル。 パチンコ店内に例えられる最大 90 デシベル程度を上回る。 訓練は、空自パイロットが F35B の操縦資格を得たり、技量を維持したりするのが目的。 垂直着陸の訓練回数は 30 機が配備される 2029 年度に最大となり月平均約 80 回(うち夜間訓練約 20 回)とする計画だ。

防衛省はもともと、新田原基地では原則、垂直着陸訓練をしないとしていたが、今年度に入って「実施する」と方針転換。 地元の反発を受け、10 月に夜間の垂直着陸訓練の回数を当初計画から減らすなどの「負担軽減策」を示したものの、住民の反発は根強い。 小泉進次郎防衛相はこの日の閣議後会見で「訓練開始は F35B の早期戦力化に大きく貢献するもので、安全保障上、非常に重要な意義がある」とし、「周辺地域への影響を局限できるように最大限の努力をしていく」と述べた。

F35B は 31 年度ごろまでに約 40 機が新田原基地に配備される計画だ。 これまでの F15 のうち残るものを含めると、新田原に配備される戦闘機の数は約 1.5 倍となり、騒音被害がさらに拡大する可能性もある。 これまでも騒音被害を訴えて「爆音訴訟」を闘ってきた原告団の住民らは、F35B を含めた被害について、飛行差し止めや損害賠償を求める訴訟を新たに起こす考えを示している。 (吉田啓、asahi = 11-4-25)

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F35B 垂直着陸訓練、騒音対策で夜間回数減へ、宮崎の空自基地配備

航空自衛隊新田原基地(宮崎県新富町)に 8 月、国内で初配備された最新鋭ステルス戦闘機 F35B の訓練をめぐり、九州防衛局の伊藤和己局長が 5 日、宮崎県の河野俊嗣知事と面談し、夜間の垂直着陸訓練の回数を減らすなどの騒音被害の軽減策を示した。 住民への説明会を終えた今月末以降に訓練を始めたいとしている。 防衛省は当初、大きな騒音が続く F35B の垂直着陸訓練を同基地では「しない」としてきたが、今年に入って「する」と方針転換し、地元から反発の声があがっていた。

軽減策では、1 カ月あたりの夜間の垂直着陸訓練について、今年度は平均 10 回程度の想定だったのを数回にする。 2029 年度には平均 40 回程度を約 20 回に、馬毛島(鹿児島県西之表市)の基地完成後の 31 年度には数回に減らす方針だとしている。 また、騒音の実情について今年度から 27 年度にかけて測定し、自衛隊機などの騒音被害が著しいとして国が住宅防音工事などに助成する「第 1 種区域」の指定を見直す方針も示した。

河野知事は夜間訓練回数について「地元の意向を受けて配慮していただいたものと思う」と述べる一方、「以前よりは負担が増すことに変わりはないということを重く受け止めていただき、地元に寄り添った対応を今後もお願いしたい」と伝えた。 垂直着陸はホバリングの時間を含めて通常着陸の約 5 倍、約 2 分間かかり、基地周辺への騒音被害の増加が懸念されている。 特に夜間訓練には住民の反発が大きい。 (吉田啓、asahi = 10-6-25)


不審船や密漁船を見逃すな! 海保の新鋭「シーガーディアン」お披露目
  なぜ "九州のローカル空港" が拠点に?

北九州空港開港 20 周年記念イベントの一環として 2025 年 10 月 26 日(日)、「北九州空港まつり」が開催されました。 北九州空港には海上保安庁の北九州航空基地もあるため、イベントの開催に併せて一般開放され各種航空機や救難用機材などが公開されていました。 そうしたなか、異彩を放っていたのが、MQ-9B 「シーガーディアン」です。 「シーガーディアン」は海上保安庁が運用する「無操縦者航空機」、いわゆる UAV で、地上のコントロール施設から衛星等を介しながら遠隔で操縦します。

主な任務は周辺海域の警戒、監視で、密漁の取り締まりも行います。 性能は 24 時間以上の連続飛行が可能で、広範囲を昼夜問わず監視ができ高性能の可視カメラや赤外線カメラ、監視用レーダーを搭載しています。 2022 年 10 月の運用開始以降、海上自衛隊八戸航空基地を拠点にしていましたが、南西諸島および周辺海域を巡る情勢を踏まえ、北九州航空基地への移転が決定。 今年 1 月より北九州航空基地にて試験運用をスタートすると、4 月より本格運用へと移行しています。

新たな拠点に北九州空港を選んだ理由について、海上保安庁は 24 時間運用が可能で哨戒海域への進出が迅速に行える点を挙げています。 事実、北九州空港は沖合を埋め立てて造られた人工島の上にある海上空港であり、人家のある市街地とは海で隔てられています(往来は連絡橋)。 そのため、九州唯一の 24 時間空港として機能しており、そうした点から緊急事態にも直ちに対応可能だとして選ばれました。

 

2025 年 10 月現在、海上保安庁では 3 機を運用していますが、さらに 2 機を追加調達しており、まもなく日本に到着する予定です。 また 2026 (令和 8 年度)予算の概算要求で、4 機追加購入する意向を示しており、10 機程度まで増える模様です。 加えて海上自衛隊も MQ-9B 「シーガーディアン」の調達を決めており、初号機は 2028 年度にお目見えする予定です。 防衛省・海上自衛隊では 2032 年ごろまでにトータルで 23 機導入する計画であることから、10 年後の 2035 年ごろには 30 機以上の「シーガーディアン」が日本周辺において海洋監視に就き、国民の安心安全のために飛び回っていると思われます。 (神徹也、乗りものニュース = 11-2-25)


過去最大 5 万 8 千人の自衛隊演習始まる 全国 39 の空港・港湾も使用

陸海空の 3 自衛隊による実動訓練「自衛隊統合演習 (JX)」が 20 日から全国各地で実施されている。 今年 3 月に発足した「統合作戦司令部」が初めて中心となり、米軍や豪州軍も加わって 31 日まで行われる。 参加人数は約 5 万 8 千人と過去最大となる。 JX は 2 年に 1 度行う実動演習で、今回の自衛隊の参加人員は約 5 万 2,300 人と前回 23 年から約 2 万人増えた。 ほかに、米軍約 5,900 人と豪軍約 230 人も参加。 車両約 4,180 両、航空機約 310 機、艦艇約 60 隻を使い、有事や災害の際に陸海空の自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」による運用能力を高める狙いがある。

民間の空港・港湾の利用も拡大される。 北海道から沖縄まで 8 空港と 31 港湾を使う予定で、敵の攻撃や災害で基地が使用できなくなった想定の訓練では、空自の F15 戦闘機が南紀白浜(和歌山)、鹿児島、奄美(鹿児島)、徳之島(同)の 4 空港を使用する。 一部では滑走路に降下した直後に急上昇する「タッチアンドゴー」も行われるという。

自衛隊が急ピッチで進めている南西諸島の防衛力強化「南西シフト」に伴い、南西地域への部隊や装備品の輸送訓練にも力を入れる。 今夏に佐賀駐屯地(佐賀)に移駐した陸自輸送機オスプレイで、相浦駐屯地(長崎)に拠点がある離島上陸の専門部隊「水陸機動団」を輸送する。 陸自中心に今春に編成された海上輸送部隊「海上輸送群」の艦艇は、大分県内で物資の積み下ろしを行う。

政府は、自衛隊や海上保安庁が平時から利用できるように整備する「特定利用空港・港湾」を順次指定しており、今年 8 月時点で全国 40 の民間空港や港湾が指定されている。 自衛隊制服組トップの内倉浩昭・統合幕僚長は 9 日の会見で「オペレーションの(戦い続ける力を示す)抗堪性、柔軟性を高められ、極めて意義がある」と語った。 (矢島大輔、asahi = 10-21-25)


「中国本土も射程内!」 日本のイージス艦、米国で "トマホーク搭載" へ ついに日本も "反撃力" 本格化か

海上自衛隊の艦艇が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」搭載に向けた本格的な作業に入った。 米 CNN など複数の海外メディアは 1 日(現地時間)、海上自衛隊のイージス護衛艦「ちょうかい」がトマホーク搭載を目的に米国へ出港したと報じた。

「ちょうかい」は現在カリフォルニア州サンディエゴに向かっており、今後 1 年間にわたりミサイル発射に対応するための艦艇改修と、乗員の訓練を行う予定だという。 日本政府は 2024 年初め、米国から計 400 発のトマホークを購入する契約を締結している。 米軍事専門誌「ザ・ウォー・ゾーン」は「2026 年夏ごろに実射試験が予定されており、これにより艦の運用準備態勢や乗員の熟練度が検証される」と述べた。 そのうえで「最終的には、海上自衛隊が保有する 8 隻のイージス艦すべてにトマホークを搭載する計画だ」と報じた。

米国が開発した巡航ミサイル「トマホーク」は「戦争の火ぶたを切る兵器」とも呼ばれ、米軍が軍事介入や開戦時に敵の重要拠点を初期段階で攻撃する手段として用いられてきた。 射程は 1,600 キロメートルを超え、日本の艦艇に配備されれば朝鮮半島全域に加え、中国本土の一部も射程に収めることになる。

このため日本政府が 2023 年にトマホーク購入を米国に要請した際、中国政府は「日本は第二次世界大戦後に制定した平和憲法に違反している」と非難し、「国際秩序を損ない、世界の戦略的均衡と安定を深刻に脅かす」と強く反発した。 一方、日本政府は「反撃能力」の一環として導入を進めてきた。 2022 年末に改定した国家安全保障戦略など安全保障関連 3 文書で、「日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合」、「他に適切な手段がない場合」など 3 要件に基づき反撃能力を行使できると明記した。

CNN は「中国や北朝鮮が影響力を拡大する中で、日本の艦艇へのトマホーク配備はワシントンとアジアの同盟国が火力を強化する最近の動きの一環だ」と指摘し、「トマホークが配備されれば、中国や北朝鮮の奥深い地域まで日本の艦艇の射程に入る」と分析している。 (織田昌大、江南タイムズ = 10-2-25)


中国の海洋調査船、奄美大島沖の排他的経済水域で活動 2 日前にも

9 月 30 日午前 7 時ごろ、鹿児島県・奄美大島の西 386 キロの日本の排他的経済水域 (EEZ) 内で、中国の海洋調査船「向陽紅 22」がパイプのようなものを海中に伸ばしている状況を確認したと、第 10 管区海上保安本部が発表した。 巡視船から無線で中止を要求。 調査船は午後 1 時 20 分過ぎに日本と中国の地理的中間線の西側に出たという。 付近では 28 日にも、同じ調査船がワイヤのようなものを海中に伸ばしているのが確認されていた。 10 管は監視を続けている。 (asahi = 9-30-25)

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中国船、排他的経済水域内でワイヤ投入 海保が中止要求 奄美大島沖

28 日午前 6 時 15 分ごろ、鹿児島・奄美大島の西約 380 キロの日本の排他的経済水域 (EEZ) 内で、中国の海洋調査船「向陽紅 22」が船尾からワイヤのようなものを海中へ伸ばしているのを巡視船が確認したと、第 10 管区海上保安本部(鹿児島市)が発表した。 巡視船は、調査船に無線で中止を要求。 調査船は約 3 時間半後、日本と中国の地理的中間線の西側に出たことが確認されたという。 (asahi = 9-28-25)


米軍、新開発の中距離ミサイルシステムを日本に初展開

アメリカ軍は新たに開発した地上発射型の中距離ミサイルシステムを日本に初めて展開させ、日本から中国にも届くミサイルの能力を示すことで抑止力を強化するねらいがあると見られます。 アメリカ軍が新たに開発したのは地上発射型の中距離ミサイルシステム「タイフォン」で 15 日、アメリカ軍岩国基地でメディアに公開されました。 アメリカ軍は今月 11 日からの自衛隊との大規模な共同訓練で九州・沖縄など各地で離島防衛を想定した訓練を実施していて、このなかで初めて地上発射型の中距離ミサイルシステムを日本の基地に展開させました。

「タイフォン」は巡航ミサイル「トマホーク」を発射でき、射程 1,600 キロのタイプであれば、岩国基地から東シナ海、そして中国の一部に届く能力があります。 日本への展開のねらいについて部隊のウェイド・ジャーマン司令官は「今回、我々は自衛隊とともに厳しく現実的な訓練を実施する機会を得ており、必要に応じて戦う準備を整えられることを確認する。 岩国基地では航空基地と港湾の両方でタイフォンを展開するさまざまな運用形態を検証する機会となる」と話しています。 一方、今回の展開について中国は「断固拒否する」とし、ロシアは「さらなる不安定を招く行動だ」などとして、ともに反発を強めています。

「タイフォン」開発の背景に中国軍への危機感

アメリカ軍の「タイフォン」は新たに開発された移動可能な地上発射型の中距離ミサイルシステムで、さまざまな領域で作戦を展開するアメリカ陸軍のマルチ・ドメイン・タスクフォースが運用しています。 システムは巡航ミサイル「トマホーク」と対空ミサイル「SM6」を発射できます。 アメリカは冷戦末期に旧ソビエトと結んだ INF = 中距離核ミサイルの全廃条約で、地上発射型の中距離ミサイルを保有してこなかった一方、中国は中距離ミサイルの生産と配備に力を入れ、少なくとも 1,800 発以上を保有していると分析されています。

このためアメリカ軍は中国軍との間で中距離ミサイルの能力に大きな差があるとして危機感を強め、2019 年の INF 全廃条約の失効後、開発を急ぎ、インド太平洋地域への配備を目指してきました。 そして去年、フィリピンで実施した訓練で初めて「タイフォン」を展開し、今回、初めて日本にも展開させました。

中国「アジアの国々に配備 断固反対」

中国は、アメリカ軍の「タイフォン」について、日本やフィリピンといったアジアの国々への配備に反対する立場を示してきました。 今回の日本への展開をめぐって、中国外務省の郭嘉昆 報道官は、先月 29 日の記者会見で「中国は一貫して、アメリカがアジアの国々に『タイフォン』を配備することに断固反対しており、日本への配備は他国の正当な安全上の利益を損なうものだ」と強調しました。 そのうえで「アメリカと日本は他国の安全上の懸念を適切に尊重し、『タイフォン』を導入せず、地域の平和と安定のために積極的な役割を果たすべきだ」と述べ、強くけん制しています。 (NHK = 9-15-25)


防衛省の 2026 年度予算概算要求 過去最大 8.8 兆円超に
 攻撃型無人機取得や極超音速ミサイルの量産も

防衛省は 29 日、2026 年度予算の概算要求を発表した。 過去最大となる 8 兆 8,454 億円を計上している。 ロシアによるウクライナ侵略などでは無人機が広く活用され、中国は無人機による活動を活発化させている。 こうした現状を踏まえた現代戦対応のため、無人機などによる多層的沿岸防衛体制「SHIELD」の構築に 1,287 円を計上した。 「SHIELD」では、2027 年度までに陸上自衛隊の小型攻撃用 UAV (無人機)や、航空自衛隊の艦艇攻撃用 UAV など、陸海空自衛隊で 10 種類の無人機を数 1,000 機取得する予定だ。

また、敵の射程圏外から攻撃するスタンド・オフ防衛能力の抜本的強化のため、迎撃が困難とされる極超音速ミサイルの量産などに向け 305 億円を計上した。 このほか、自衛官の処遇や生活環境を改善する費用や、宇宙作戦集団を新編して航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改編する費用などを盛り込んでいる。 政府は、防衛力の抜本的強化に向けた防衛費について、2023 年度から 5 年間の総額を約 43 兆円と定めていて、今回はこれまでで最も多い 8 兆 8,454 億円を計上した。 (FNN = 8-29-25)


インドネシアで多国間演習、自衛隊も参加 背景に全方位外交誇示か

多国間演習「スーパー・ガルーダ・シールド」の開始式が 25 日、ジャカルタで開かれた。 インドネシア軍によると、米軍や自衛隊、オーストラリア軍などオブザーバー参加を含めて計 18 カ国が参加する見込み。 作戦の互換性や兵力の相互運用性などを高める訓練が 9 月 4 日まで行われる。 同演習は 2007 年に米軍とインドネシア軍の合同演習として始まり、22 年から他国も参加している。 インドネシア軍によると、今年は各国から計約 6,500 人が参加。 「多国間協力と相互運用性の強固さを象徴するものだ」としている。 陸上自衛隊の武者利勝・水陸機動団長は「同志国との連携を高め合っていきたい」と話した。

全方位外交、特定勢力に依存しない意思表示か

「1 千の友は少なすぎ、一つの敵は多すぎる。」 インドネシアのプラボウォ大統領がよく引用するこのフレーズは、同国が掲げる非同盟主義の「全方位外交」を示すものだ。特定の勢力に偏らず、様々な国とバランスを取りながら関係を維持することで、主に経済面での自国の利益最大化を目指してきた。 ただ、昨年 10 月に就任し、最初の外遊先に中国を選んだプラボウォ氏は今年 6 月にカナダで開かれた主要 7 カ国首脳会議 (G7) への参加を見送ってロシアを訪れた。 プーチン大統領との首脳会談で「戦略的パートナーシップ宣言」に合意するなど、ロシア・中国寄りの姿勢が目立つとの指摘もある。

一方、中国との軍事的緊張関係が続く豪州とは 24 年に防衛協力協定を締結し、以降も安保協力を拡大。 日韓やフランスからの防衛装備品の調達も進める。 25 日の開始式で、米インド太平洋軍のパパロ司令官は「過去最大の訓練になる」とした上で「暴力によって現実を変えようとする者に対し、主権の原則を守る抑止力を示す」と述べた。 米国にとっても、同盟国や友好国が多く参加するスーパー・ガルーダ・シールドは、中国を念頭に地域でのプレゼンスを示す機会でもある。

インドネシア軍関係者によると、ロシアや中国もインドネシア側にスーパー・ガルーダ・シールドと同規模の軍事演習開催を提案してきた経緯があるが実現には至っていない。 インドネシア側にとっては演習を続けることで、安全保障で特定勢力に依存する意思がないことを示す狙いも透ける。 (ジャカルタ・河野光汰、asahi = 8-25-25)


「爆音段違い」垂直着陸、通常の 5 倍の時間 初配備の戦闘機 F35B

ゴォーと空を切り裂くような轟音と共に、黒みがかった 3 機の戦闘機が舞い降りた。 7 日午後、地元首長や反対派の住民らが注視する中、航空自衛隊新田原基地(宮崎県新富町)に最新鋭ステルス戦闘機 F35B が着陸した。 騒音被害への懸念について具体策が示されないままの配備に、防衛省への非難の声も聞かれた。

「来ました。」 午後 1 時 24 分、基地の滑走路近くに設けられた取材エリアに集まった報道陣に、広報係の空自隊員が声をあげた。 グアムの米軍基地から飛来した F35B の最初の 1 機は、基地周辺を旋回すると、ゆっくりと滑走路上空に近付き、ヘリコプターのように空中で浮遊。 そのまま垂直に地面へと降りていった。

これが F35B の最大の特徴、垂直着陸だ。 防衛省は、パイロットには高い技量が求められ一定頻度の訓練が不可欠と説明する。 一方で、着陸地点約 2 キロ手前からの所要時間が通常着陸(約 24 秒間)に比べて 5 倍の約 2 分間かかるといい、これまでより長く騒音が響くのではと、被害の増加が懸念されている。 防衛省はこれまで「緊急時等を除き」新田原基地では垂直着陸訓練はしない考えを地元に示してきたが、今年に入り説明を一転。 最大月約 100 回(うち夜間約 40 回)を実施する計画を示し、地元から反発を買った。

住民らが強く求めている騒音被害の軽減策を配備前に示すことが「筋ではないか」と、河野俊嗣知事も九州防衛局長に遺憾の意を伝えていた。 この日、基地内で垂直着陸の様子を見守った日隈俊郎副知事は取材に「騒音が響く時間が長くなると実感した」と話した。 県も求めてきた負担軽減策がいまだ防衛省から示されていないことに「住民はまだ納得されていないと思う」と指摘。 実質を伴った対策を早期に示すよう求めた。 F35B の配備そのものに反対する団体「県平和委員会」などはこの日午前、基地近くの広場で抗議集会を開いた。

基地の、周辺住民に対する騒音被害を認める判決が確定した裁判で、原告の 1 人だった海老原司さん (71) は「(住民の声に対する答えがないままの F35B 配備は)怒りと不信感を増幅させるもの」と憤った。 「判決を踏まえ、国は爆音被害の軽減にこそ努力すべきだ。 これ以上、騒音被害を大きくすることは許されない」と訴えた。

県平和委員会の副会長、佐川嘉正さん (84) は集会の後、基地近くの展望台で垂直着陸などの様子を目にし、「爆音のすごさは通常着陸と比べて段違い」と述べた。 F35B は 2031 年度ごろまでに、約 40 機が新田原基地に配備される計画だ。 佐川さんは「これが 40 機になったら大変なことになるのでは」と話した。 (吉田啓、後藤たづ子、asahi = 8-7-25)

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