米戦略爆撃機が参加し日米韓が空中訓練 北朝鮮の ICBM 発射に対応 韓国軍の合同参謀本部は 3 日、米軍の B1B 戦略爆撃機が参加し、日米韓が合同で空中訓練を実施したと発表した。 北朝鮮が 10 月 31 日に大陸間弾道ミサイル (ICBM) を発射したことへの対応だとしている。 韓国軍によると、訓練は韓国南部・済州島の東方の日韓の防空識別圏 (ADIZ) が重なり合う空域で行われた。 米軍の戦略爆撃機が朝鮮半島周辺に展開したのは今年 4 回目、日米韓による同種の空中訓練は今年 2 回目だという。 韓国空軍の F15K 戦闘機、日本の航空自衛隊の F2 戦闘機などが参加した。 訓練は、B1B 戦略爆撃機が日米韓の戦闘機の護衛を受けて計画された訓練空域まで移動し、仮想の標的を攻撃する形で行われたという。 韓国軍は、高度化する北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対し、日米韓の「安全保障協力を通じた強力な対応の意志と能力を示した」とし、今後も北朝鮮の脅威に共同で対応できるよう、協力を強化していくとしている。 北朝鮮が 31 日に発射した ICBM は、高度が過去最高、飛行時間も過去最長だった。 北朝鮮は最新型の「火星 19」で、「最終完結版」の ICBM だと主張している。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 11-3-24) 「安全保障の失敗は許されない」 石破政権、初の弾道ミサイル対応 石破政権が 10 月 1 日に発足して以降、北朝鮮が初めて弾道ミサイルを発射した。 政府は危機管理能力が試される事態と位置づけ、国家安全保障会議 (NSC) の開催など対応に追われた。 発射の兆候がつかみにくい「固体燃料型」の新型ミサイルの可能性もあるとみて分析を進める。 「北朝鮮は今後、各種ミサイルの発射や核実験の実施を含め、更なる挑発行為に出る可能性はある。」 林芳正官房長官は、ミサイル発射を受けた 31 日午前の臨時記者会見でそう指摘した。 北朝鮮の弾道ミサイル発射は 9 月 18 日以来で、石破政権にとっては初めて。 午前 7 時 11 分ごろにミサイルが発射されると、政府はあわただしく動いた。 石破茂首相はミサイルが飛行中の 8 時 20 分、首相官邸に到着。 記者団に「国民に対する情報提供、安全確認の徹底などの指示を出した」と述べた。 ミサイルが約 86 分間飛行し、8 時 37 分ごろに日本海に落下すると、中谷元防衛相は「これまでのミサイルで一番長い時間飛んでいる。 従来とは別のミサイルではないか」と防衛省で記者団に説明。 最高高度もこれまでで最も高い 7 千キロ超だった。 政府は 9 時 18 分に官邸で NSC の 4 大臣会合を開催した。 北朝鮮のミサイル発射が議題の NSC は昨年 12 月以来。 岸田文雄前政権では、北朝鮮のミサイル発射後の NSC 開催が少なく、野党から「どういう危機感でやっているのか。 強く抗議したい。(立憲民主党の福山哲郎参院議員)」との批判も出ていた。 NSC 後、林氏は「ミサイル発射情報を集約し、さらなる事実関係の確認、分析を行った」と強調した。 防衛省によると、航空自衛隊の F15 戦闘機が発進し、「ミサイルに関連していると推定されるもの」を空中で確認した。 政府は、北朝鮮が過去 2 年発射を繰り返してきた「火星 17 (液体燃料型)」や「火星 18 (固体燃料型)」とは異なる新型の固体燃料型のものだと推定。 31 日午後にあった自民党の国防部会などの会合で、北朝鮮が 9 月に公開した 12 軸車輪の新型移動式発射台が使われた可能性に触れ、「(火星 17 や 18 を超える) 1 万 5 千キロ以上の射程がある」と説明したという。 この会合で、森山裕幹事長は「安全保障の失敗は許されない」と指摘。 米国の大統領選を 11 月 5 日に控えたタイミングでの発射について、小野寺五典政調会長は「米国の東海岸が十分射程に入ったと、わざわざ示すような打ち方だ。 今回の事案は決して看過できない。」と強調した。 防衛省には「技術力をアピールしながら米国を刺激しすぎない、ちょうどよい加減のメッセージだ(幹部)」との見方も。 自衛隊幹部は「ウクライナへの北朝鮮軍派兵から目をそらすねらいがあったのかもしれない」と分析する。 (佐藤瑞季、田嶋慶彦、asahi = 10-31-24) ロシア爆撃機や哨戒機が日本海上空を次々飛行 潜水艦の捜索訓練など ロシア国防省は 22 日、ロシア軍の戦略爆撃機や戦闘機、哨戒機が、相次いで日本海上空を飛行したと発表した。 発表によると、核兵器を搭載可能な戦略爆撃機 Tu95 が同日、日本海上空を約 10 時間飛行し、戦闘機 Su30 が護衛した。 同省は「計画的なもので、公海上を飛行した」としている。 同省はまた、哨戒機 Il38 が日本海で敵の潜水艦を捜索や追尾する訓練を実施した。 ロシア太平洋艦隊のディーゼル潜水艦が仮想敵を務めたという。 (asahi = 10-23-24) 台湾海峡初通過、なぜ岸田首相は決断した? 対中抑止戦略は新段階に 海上自衛隊の護衛艦が台湾海峡を初めて通過し、日本の対中抑止戦略は新たな段階に入った。 ただ、中国への強いメッセージと引き換えに、不測の事態を招くリスクも抱えることになる。 海軍艦艇による台湾海峡通過は、米国を始め、英独などが実施していたが、日本は中国の近隣であるうえ、台湾を「核心的利益の中の核心」と位置付ける中国の立場を尊重し自制してきた。 しかし、最近の中国による日本周辺での軍事活動の活発化に、防衛省内では「中国になめられ続けてはいけない。 日本側も嫌がらせをやり返す。 台湾海峡を堂々と通るべきだ。(幹部)」との強硬論が強まっていた。 記事後半では、日本の専門家が中国の今後の動きを分析します。 首相の決断 複数の政府関係者によると、海自護衛艦に台湾海峡を通過させる案は以前からあり、岸田文雄首相が最終的に決断したという。 軍事活動を活発化させる中国への牽制に加え、自民党総裁選という「政治空白」につけ込まれるリスクへの対応もあった。 次の首相が就任後いつ同様の判断ができるか分からないためだ。 政府関係者は「中国の昨今の動向、日本の政治状況を総合して考えた」と明かす。 安全保障問題に詳しい小谷哲男・明海大教授は「『日本も中国が嫌がる行動を取り得る』と、中国側にメッセージを出した意義は大きい」と指摘。 「中国がやりたい放題というのは決していい状態ではない。 牽制しあって緊張状況を管理することが必要だ」と話す。 偶発的な衝突リスクも もともと海軍艦艇による台湾海峡通過は、中国による台湾への軍事圧力を牽制するため、米国が主導して実施してきた経緯がある。 台湾問題をめぐっては、バイデン大統領が 24 日の国連総会での演説で「台湾海峡の平和と安定を維持する」と述べたばかり。 台湾問題は日米共通の懸案となっており、2021 年 4 月以来、日米首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」が言及されてきた。 今回の海自護衛艦の台湾海峡の通過も、米側と事前に調整がなされた可能性が高い。 ただ、こうした行動は、現場での偶発的な衝突のリスクも伴う。 日中が不測の事態を避けるための「海空連絡メカニズム」のうち、防衛当局間の年次会合は 21 年を最後に開かれていない。 自衛隊制服組トップの吉田圭秀・統合幕僚長は 26 日の会見で「軍同士の意思疎通を維持することが、誤算を防ぐには重要だ」と強調した。(田嶋慶彦、里見稔、ワシントン・清宮涼) 中国国防省「全過程を追跡監視した」 台湾問題を「核心的利益の中の核心」とする中国は反発している。 中国国防省の張暁剛報道官は 26 日の定例会見で、日本の護衛艦などの航行は中国軍が「全過程を追跡監視した」とし、「『航行の自由』の名の下に台湾独立勢力に誤ったシグナルを送り、中国の主権と安全を損なう挑発行為に断固反対する」と批判した。 台湾海峡は最も狭いところでも幅が約 130 キロあり、いずれの主張する領海にも属さない海域がある。 しかし、台湾を「不可分の領土」と主張する中国は、「台湾海峡の主権や主権的権利、管轄権を享有している」との立場だ。 米国などが海峡を「国際水域」とする位置づけも真っ向から否定し、米軍艦などの航行にも反対してきた。 中国側の受け止めは? 日本の台湾への関与をめぐっては、安倍晋三元首相が退任後に発言した「台湾有事は日本有事」といった認識に基づき日米の軍事的な協力強化の議論が進むことに神経をとがらせ、国会議員らによる台湾との交流も警戒してきた経緯がある。 日本が海自護衛艦による初の台湾海峡通過に踏み切ったことで、今後、安全保障や外交の面で日本に対抗措置をとる恐れがある。 防衛研究所中国研究室の増田雅之室長は「中国側は、日本の防衛、安全保障戦略が変わり、抑止対象が台湾情勢にも向けられているとの理解を強めるだろう。 中国は内外に向け、もともと計画していた訓練やロシアとの演習などを今回の対抗措置のように見せて実施する可能性がある」と分析する。 (北京・畑宗太郎、asahi = 9-26-24) ロシア軍機が 3 回領空侵犯、空自戦闘機は初の「フレア」警告 北海道 防衛省は 23 日、ロシア軍の哨戒機 1 機が同日午後に 3 回にわたり、北海道・礼文島の北方で日本領空を侵犯したと発表した。 航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し、光や熱を発する実弾「フレア」による警告を初めて実施した。 林芳正官房長官は首相官邸で記者団の取材に応じ、「極めて遺憾」と述べ、外交ルートを通じてロシア政府に厳重に抗議し、再発防止を強く求めたことを明かした。 同省によると、ロシア軍機は北海道西側の日本海上空から礼文島北方に飛来し、午後 1 時 3 - 4 分に日本の領空を侵犯した。 その後、いったん領空外に出たが、同 3 時 31 分ごろと、同 3時 42 - 43 分ごろに領空侵犯したという。 空自からは F15、F35 戦闘機が緊急発進し、無線や機体信号で警告を行い、3 度目の侵犯時にフレアで警告した。 フレアは通常、敵の赤外線ミサイルの追跡を避けるために戦闘機が後方に射出するもので、領空侵犯に対しては無線などより強く警告の意思を伝える措置だという。 22 - 23 日には中国軍とロシア軍の艦艇計 8 隻が、北海道北側の宗谷海峡を通過した。 木原稔防衛相は中ロが共同演習を予定していることを踏まえ、「(今回の領空侵犯と)関連している可能性がある」と記者団に語った。 ロシア軍の固定翼機による領空侵犯は 2019 年 6 月以来だが、その後も毎年ロシア機と推定される機体などが領空侵犯を重ねている。 8 月 26 日には中国の情報収集機による日本の領空侵犯が初めて確認されている。 (里見稔、asahIi = 9-23-24) 中国艦が鹿児島沖の領海侵入 21 年以降 10 回目、外交ルートで抗議 防衛省は 31 日、中国海軍の測量艦 1 隻が鹿児島県周辺の日本の領海に侵入したと発表した。 中国軍艦艇による領海侵入は 13 回目で、昨年 9 月以来となる。 26 日には中国軍機が長崎県沖で初めて領空侵犯したことも踏まえ、同省は外交ルートを通じて中国側に強い懸念を伝え、抗議をしたという。 防衛省によると、領海に入ったのは中国海軍のシュパン級測量艦。 31 日午前 4 時 47 分ごろ、口永良部島(鹿児島県)西方の接続水域を東進しているのが確認され、午前 6 時ごろ、口永良部島南西の日本の領海に侵入。 約 2 時間後の午前 7 時 53 分ごろ、屋久島(同県)南西の領海から出たという。 海上自衛隊は掃海艇や哨戒機を派遣し、警戒や監視などにあたった。 中国の測量艦による同島周辺の領海への侵入は 2021 年 11 月以降相次いでおり、今回で 10 回目という。 中国軍は 8 月 26 日、長崎県五島市の男女群島沖で Y9 情報収集機が日本の領空を侵犯。 また、防衛省によると、30 日にも中国の無人機とみられる 2 機が台湾と日本最西端の与那国島(沖縄県)の間を相次ぎ通過し、航空自衛隊の戦闘機がスクランブル(緊急発進)対応をしたという。 防衛省は「(中国軍は)日本周辺での軍事活動をますます拡大、活発化させていて、今回の領海侵入もその一環とみられる」と分析し、「強い懸念を持って、注視している。 警戒、監視活動に万全を期していく。」としている。 (矢島大輔、asahi = 8-31-24) イタリア空母が日本に初寄港 国防相は日本と連携深めたい考え イタリア海軍は、日本に初めて寄港させた空母「カブール」を 26 日、NHK など一部のメディアに公開し、搭載している最新鋭のステルス戦闘機などを披露しました。 イタリアは 8 月 22 日から海軍の空母「カブール」を神奈川県の海上自衛隊横須賀基地に寄港させています。 「カブール」は全長 244 メートルのイタリア海軍を代表する空母で、26 日は、甲板での取材が NHK とイタリアのメディアに許可されました。 披露されたのは搭載されている最新鋭のステルス戦闘機「F35B」 8 機や、ハリアー攻撃機 7 機などです。 イタリア海軍によりますと、空母は 27 日に横須賀基地を出港し、海上自衛隊などと共同訓練を行ったあと、フィリピンやインドなどインド太平洋地域の各地に寄港し 11 月にイタリアに戻る予定だということです。 イタリア海軍のトップ、クレデンディーノ参謀長は、空母の特徴について「カブールはイタリアの空母打撃群の中心で、離れた場所まで移動し任務を遂行できるイタリアの能力を示している」と強調しました。 そのうえで共同訓練について「水上や空、水中などあらゆる面での訓練を行う。 日本との相互運用性を高めていく。 これは始まりに過ぎず、さらに訓練を進めていきたい」と話していました。 イタリア国防相 "両国の軍事面での協力 非常に重要" イタリアのクロセット国防相は海軍の空母を日本に初めて寄港させたことについて「日本とイタリアとの緊密な関係を示すためだ」と述べ、インド太平洋地域の安定に向けて日本と安全保障面での連携を深めたい考えを示しました。 イタリアは海軍の空母「カブール」を日本に初めて寄港させているほか、イタリア海軍の練習用帆船も派遣し、26 日、都内では来日したイタリアのクロセット国防相も出席して記念のセレモニーが行われました。 セレモニーの後、NHK の単独インタビューに応じたクロセット国防相は、空母を寄港させたねらいについて「日本とイタリアとの緊密な関係を示すためだ。 両国の軍事面での協力が今後、非常に重要になる。」と述べました。 その上で「アジアだけでなく世界全体にとって経済的に重要なインド太平洋地域をイタリアが重視していることを意味する」と強調し、貿易立国のイタリアにとって重要性を増すインド太平洋地域の安定に向けて日本と安全保障面での連携を深めたい考えを示しました。 一方で、今回、空母は台湾海峡を通過しないと明らかにした上で「空母の派遣は、誰かを挑発するためのものではない」と述べ、中国との摩擦は避けたいという姿勢を示しました。 (asahi = 8-27-24) 領空侵犯、真意測りかねる日本側 領海航行への「意趣返し」の見方も 中国が日本周辺で軍事活動を活発化させているさなかの今回の領空侵犯。 日本側は中国側の真意を測りかねているが、両国間の緊張が高まれば偶発的な衝突に発展しかねないリスクがある。 中国軍機が長崎県沖で初の領空侵犯 防衛省発表、中国側に厳重抗議 自衛隊幹部「強いメッセージ」 中国軍機の初の領空侵犯に、防衛省・自衛隊では驚きが広がった。 領空とは、領土と領海(海岸線から約 22 キロの範囲)の上空を指す。 領空内を許可なく自由に航行することは国際法上認められていない。 ある自衛隊幹部は「軍用機が領空侵犯するのはとても強いメッセージであることは間違いない」と指摘。 別の幹部は「世界が中東情勢に注目している中、日本側の反応をうかがうために侵犯したとも解釈できる」と語った。 軍用機以外の中国機による領空侵犯は過去 2 回あった。 2012 年の国家海洋局の航空機、17年のドローン(無人機)とみられる物体で、いずれも中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島周辺の領空だった。 このため、今回の領空侵犯が尖閣諸島周辺ではなく、本土の長崎県で起きたことにも衝撃が広がっており、首相周辺は「尖閣なら『さもありなん』だが、長崎というのは驚きはある」と語る。 「単純に航路を誤り領空に」との見方も 防衛省・自衛隊内では「中国軍機は単純に航路を誤り領空に入った」との見方も出ている。 ある同省関係者は、中国軍機の航路を分析したうえで「領空侵犯直後の鋭角的な飛行は慌てたのではないかと推測できる」と指摘。 周辺には航空自衛隊の警戒監視レーダー施設が 2 カ所あり、「今回領空侵犯した機体は自衛隊のレーダー周波数などの情報を集めている。 情報収集に注力するあまり、領空に入ったと見るのが自然だ。」と語った。 一方、「本土のあんな領空近くで中国軍機が情報収集活動していることに警戒しないといけない」とも述べ た。 領空より広い範囲は「防空識別圏 (ADIZ)」に指定されており、自衛隊は航空機の国籍や領空侵犯の恐れの有無などを識別。 今回も中国軍機が ADIZ に近づいてきた段階で、航空自衛隊の F15 戦闘機と、F2 戦闘機がスクランブル(緊急発進)を実施。 領空に近づいた際には地上と F2 から警告を行ったという。 中国機による日本周辺での活動は、活発な状況が続いている。 23 年度の自衛隊の緊急発進回数は 669 回だったが、うち対中国機は 479 回。 今年 4 - 6 月でも全体の緊急発進回数 159 回に対し、105 回が対中国機だった。 中国はロシアとの関係を深める中、両国は 19 年 7 月 - 23 年 12 月、7 回にわたり日本周辺で爆撃機による長距離の共同飛行を行った。 特に 22 年 5 月には、日本での日米豪印首脳会合開催中に共同飛行が行われ、防衛省は「開催国たるわが国に対する示威行動を意図したものだ」と分析している。 今回の中国軍機の領空侵犯について、自衛隊幹部は「なぜこのタイミングなのか分からない(幹部)」と戸惑いも見せる。 ただ、仮にミスによるものでも、軍用機が領空侵犯した事実は変わらない。 防衛省・自衛隊内には「既成事実を積み上げようとするのは中国の常套手段だ」との危機感が広がっている。(田嶋慶彦、里見稔) 中国側の公式反応なし 中国側は今回の領空侵犯について公式に反応していない。 なぜこのタイミングで侵犯行為をしたのか意図は不明だ。 ただ中国外務省は 7 月、日本の艦船が中国の領海内を中国側の承認を得ずに航行したとして、日本側に再発防止を申し入れたと明らかにした。 関係者によると、海上自衛隊の艦艇だったという。 同省によると日本側は「技術的なミス」と説明したが、日中外交筋は「中国側は日本側に別の意図があるのではないかと勘ぐった可能性がある」とみる。 国際法上、軍艦にも無害通航権が認められる領海への進入とは異なり、領空侵犯は明らかに違法だが、今回の侵犯が日本側の行為に対する「意趣返し」だという見方が、中国の軍事ブロガーの SNS 投稿では出ている。 中国はこの間、岸田政権が防衛費を大幅に増額させつつ、在日米軍と自衛隊の間で進む指揮統制の連携強化や、南シナ海で中国と対立するフィリピンとの「準同盟」化など、米国を中心とした安全保障の枠組みを深化させていることに警戒感を強めていた。 議員交流などを通じて台湾の民進党政権と関わりを深めている状況にも不信感を抱き、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS (オーカス)」への協力を検討している日本の動向も注視する。 中国側はこうした動きを「対中包囲網づくり」ととらえ、「第三国の利益を損ねるものであってはならない」と批判。 時には先の大戦の歴史も持ち出しながら、日本への不快感を繰り返し表明してきた。 中国側がこうした行動をエスカレートさせれば、偶発的な衝突を引き起こしかねない。 27 日からは自民党の二階俊博元幹事長が会長を務める超党派の「日中友好議員連盟」が中国を訪問するなど、日中間の議員交流が活発化するなかで、双方の世論をさらに硬化させる恐れもある。(北京・畑宗太郎) 「威圧するメリット見当たらない」 中国の軍事情勢に詳しい笹川平和財団の小原凡司・上席フェローは、現時点では領空侵犯の理由はわからないとしつつ、「中国がこのタイミングで日本を軍事的に威圧するメリットは見当たらない」とする。 「領空侵犯は明らかな国際法違反で、撃墜される可能性もあるリスクの高い行為」と指摘。 「そのうえ、九州本土に近い場所だったため日本の対中感情が著しく悪化するのは避けられず、日米関係がより緊密になることにつながれば中国にとっては不都合だ」と話す。 公開された写真から、領空侵犯機は電波情報を収集する機体とみられるといい、小原氏は「同機は九州にある自衛隊や米軍の基地の電波情報やスクランブルに関する情報を収集しようとした可能性があるが、通常は領空手前で引き返す。 意図的なのかミスなのかで、重大性も違ってくる。」という。 (西山明宏、asahi = 8-26-24) 「自衛隊旧式装備、捨てたら勿体ない」 元陸将が語るウクライナの教訓 ウクライナ軍が最近、ロシア領を越境攻撃しています。 陸上総隊司令官を務めた高田克樹元陸将は、ウクライナ支援をする各国が自国兵器の開発に向けたデータの収集も行っているのに比べ、日本は取り組みに遅れが目立つと語ります。 自衛隊の旧式装備の廃棄見直しや退職自衛官の活用なども必要だと指摘します。 ウクライナ軍がロシア南西部クルスク州に越境攻撃を仕掛けています。
全体の戦況をどう見ていますか。
反転攻勢はF16 戦闘機の前線配備後ではないか ウクライナ軍の本格的な反転攻勢が始まったのでしょうか。
ウクライナでは、従来見られなかった「新しい戦闘」が繰り広げられています。
自衛隊の取り組みはどうでしょうか。
無人兵器、なぜ自衛隊の取り組みは遅れているのか なぜ、自衛隊の取り組みが遅れているのでしょうか。
ウクライナではAI(人工知能)も戦闘に導入されています。
自衛隊の現状はどうでしょうか。
AI と指揮統制システムの整備を急ぐべき 今後、自衛隊が力を入れるべき課題は何でしょうか。
在日米軍再編で「統合軍司令部」創設 日米 2 プラス 2 が共同発表 日米両政府は 28 日午後、東京都内で外務・防衛担当閣僚会合(2 プラス 2)を開き、共同発表を出した。 自衛隊と米軍の指揮統制の連携強化を進めるため、米側が在日米軍を再編し「統合軍司令部」を新設する方針を表明。 新司令部には陸海空などの米軍を束ねる作戦指揮権を持たせる予定で、今後日米間で指揮統制連携をめぐる作業部会を立ち上げ、具体的な調整を進めることを決めた。 日米 2 プラス 2 の開催は、昨年 1 月の米ワシントン以来、約 1 年 6 カ月ぶり。 日本側は上川陽子外相と木原稔防衛相、米側はブリンケン国務長官とオースティン国防長官が出席した。 共同発表は「日米両国の国家戦略文書がかつてないほど整合していることを踏まえ、同盟の抑止力・対処力を更に強化していく」と強調。 「演習及び協議を通じてあらゆるレベルでの同盟の政策及び運用に関する調整を強化する」とした上で、在日米軍について「インド太平洋軍司令官隷下の統合軍司令部として再編成する」とした。 陸海空の各部隊を一元的に指揮するために自衛隊が来春までに設立する「統合作戦司令部」と米側の統合軍司令部の関係について、共同声明は「一つの重要なカウンターパートとなる」と表明。 在日米軍が「自衛隊統合作戦司令部との運用面での協力を強化」するため、日米間で作業部会を設け、「日米間の指揮統制構造の関係を明確に定義する」ことなどの協議を進める方針を記した。 在日米軍司令部はこれまで作戦指揮権を持たず、基地や部隊の管理を主な業務としてきた。 一方、上位組織で作戦指揮権をもつインド太平洋軍司令部はハワイにあり担当領域も広く、自衛隊との連携が課題だった。 自衛隊の統合作戦司令部の創設を踏まえ、日米両首脳は 4 月の会談で指揮統制の連携強化で合意し、米側が具体的な体制の検討を進めてきた。 一方、共同声明は、核兵器を含む米国の戦力で日本への攻撃を思いとどまらせる「拡大抑止」の強化もうたった。 「日米同盟が厳しい戦略・核環境に直面する中、日本の防衛力によって強化される米国の拡大抑止を引き続き強化する」と明記し、拡大抑止をめぐる初の日米閣僚会合については「実質的な戦略レベルの議論を深めるとのコミットメントを示す」とした。 4 月の日米首脳会談で合意したミサイルなどの共同生産協力をめぐっては、共同声明では地対空ミサイル「パトリオット」などを示した。 「生産能力拡大のため、互恵的な共同生産の機会を追求する」とした。 中国の外交政策については「他者を犠牲にし、自らの利益のために国際秩序を作りかえようとしている」と指摘。 「国家や企業、市民社会に対し政治的、経済的、軍事的な威圧を用い、目的を達成するため技術の転用を通じ軍事上の近代化を促進している」と批判した。 (田嶋慶彦、清宮涼、asahi = 7-28-24) 中国海警局の船 2 隻、領海に侵入 … 砲のようなもの搭載 第 11 管区海上保安本部(那覇市)によると、16 日午前 4 時頃、沖縄県石垣市の尖閣諸島沖で、中国海警局の船2隻が相次いで領海に侵入した。 2 隻とも砲のようなものを搭載しており、同 6 時 15 分現在、領海内を航行している。 領海への侵入は 11 日以来。 付近では日本漁船(総トン数 9.7 トン) 1 隻が航行しており、海上保安庁の巡視船が海警船に対し、領海から退去するよう警告している。 (yomiuri = 7-16-24) ◇ ◇ ◇ 尖閣諸島沖の領海に中国海警局の船 3 隻相次いで侵入 … 3 日連続 第 11 管区海上保安本部(那覇市)によると、22 日午後 4 時 17 分頃から同 5 時 25 分頃にかけて、沖縄県石垣市の尖閣諸島沖の領海に中国海警局の船 3 隻が相次いで侵入した。 同局の船が領海に侵入するのは 3 日連続。 (yomiuri = 6-22-24) ◇ ◇ ◇ 尖閣諸島沖の領海に中国海警局の船 2 隻侵入… 海保巡視船が退去求める 第 11 管区海上保安本部(那覇市)によると、20 日午後 4 時 54 分頃から同 5 時 22 分頃にかけて、沖縄県石垣市の尖閣諸島沖の領海に中国海警局の船 2 隻が相次いで侵入した。 いずれも砲らしきものを搭載している。 付近では日本漁船 2 隻が航行しており、海上保安庁の巡視船が領海からの退去を求めている。 (yomiuri = 6-20-24) 射程 1,000 キロ超の新型対艦ミサイル、26 年度にも九州配備へ … 南西諸島の防衛を強化 防衛省は、現行の数倍となる射程 1,000 キロを超える改良型地対艦ミサイルと、開発中の「島嶼 防衛用高速滑空弾」を 2026 年度にも陸上自衛隊西部方面隊の「第 2 特科団(大分県由布市)」に配備する方向で調整に入った。 強引な海洋進出を続ける中国を念頭に、複数の種類のミサイルを置くことで南西諸島の防衛力を強化する狙いがある。 政府関係者によると、改良型の地対艦ミサイルは、現行の「12 式地対艦誘導弾(射程数百キロ)」を基に開発している。 有事などの際に、九州や沖縄地方に展開すれば、同誘導弾よりも遠方の艦艇に対応することができる。 敵の射程圏外から攻撃できるスタンド・オフ防衛能力」は、政府が 22 年に策定した国家防衛戦略の柱で、改良型ミサイルの導入前倒しも決まっている。 この攻撃を避けて南西諸島の島に上陸した敵部隊には、開発中の地対地ミサイル「島嶼防衛用高速滑空弾」で対処する。 滑空弾は、弾頭部分が高速で落下するため敵による迎撃がより困難になる。 射程は数百キロで、侵攻を受けた島に近い別の島から発射するケースを想定している。 同時に、あらかじめ近くの離島に配置した多連装ロケットシステム「MLRS」も、数十キロ離れた敵部隊に対して一斉にロケット弾を発射する。 これら長距離と中距離、短距離と射程が異なる「三段構え」の装備で離島を防衛する構想だ。 改良型地対艦ミサイルと新型滑空弾の開発は、国内の防衛産業が担当する。 陸自は滑空弾を離島防衛の切り札にしたい考えで、政府関係者は「領土への接近をためらわせる装備を持つことが、抑止力につながる」としている。 32 年度までに新設する滑空弾専門の部隊の配備先として同団も候補に上がっている。 (yomiuri = 7-13-24) 中国、海自護衛艦の領海航行で日本に抗議 [北京] 中国外務省の林剣報道官は 11 日の定例会見で、日本の海上自衛隊の護衛艦が中国領海を一時航行したとされる問題で、日本側に「違法かつ不適切」な行為について抗議し、再発防止を求めたと明らかにした。 林報道官は、日本からは技術的なミスとの説明があったとした上で、中国は、同意なく侵入した者を法に基づき対処すると述べた。 報道によると、海自の護衛艦「すずつき」が今月 4 日、中国浙江省沖の中国領海を一時航行し、中国側から退去勧告を受けた。 林芳正官房長官は 11 日午前の会見で、自衛隊は日本周辺の海空域で警戒監視などさまざまな活動を行っているとした上で、「自衛隊の運用に関する事柄のため、答えを差し控える」と述べていた。 (Reuters = 7-11-24) 日フィリピン「準同盟」へ 緊迫の南シナ海、比は日本の支援期待 日本とフィリピンが 8 日に「円滑化協定 (RAA)」に署名して安全保障面での結束を深めたのは、両国関係を「準同盟」級に格上げし、中国の海洋進出を押し返すためだ。 しかし、南シナ海では中比間の一触即発の激しい対立が続くさなか。 南シナ海問題に深く関与すれば、日本が中比間の係争に巻き込まれるリスクも高まる。 「フィリピンは戦略的要衝に位置する日本の戦略的パートナーだ。」 木原稔防衛相は日比の外務・防衛担当閣僚会合(2 プラス 2)の後の共同記者会見で強調した。 防衛政務官経験者もフィリピンを「代替不可欠な死活的に重要な存在」と語る。 フィリピンと台湾の間のバシー海峡はエネルギー輸送など日本にとって重要なシーレーン(海上交通路)だ。 日本は、南シナ海で中国と対峙する比海軍への警戒管制レーダーの供与などを進め、同国の海洋安全保障能力の強化の支援に力を入れてきた。 自衛隊幹部は「弱いフィリピンを中国は切り崩そうとしており、助けないといけない」と語る。 ただ、RAA 締結で自衛隊と比軍の関係が強化されれば、日本が中比間の対立に巻き込まれるリスクも同時に高まることになる。(マニラ・里見稔) フィリピンだけでは限界 「両国のパートナーシップは前例のないレベルに達した。」 フィリピンのマナロ外相は 8 日の外務・防衛担当閣僚会合の冒頭で、円滑化協定 (RAA) が署名されたことに満足感をにじませた。 専門家によれば、RAA はフィリピンにとって、訪問軍地位協定を結ぶ米国、豪州に続き三つ目の安全保障に関する協定だ。 「同じ海洋国家で、東シナ海で中国の脅威に直面する日本は米豪より条件が近く、距離も近い。 安全保障環境が大きく前進する(フィリピン外交筋)」と歓迎する。 フィリピンでは南シナ海の領有権を争う中国に対し、国民が危機感や反感を募らせている。 特に、比軍が駐留して実効支配するスプラトリー(南沙)諸島アユンギン礁への補給任務は、領土防衛の「とりで」で譲れない一線の一つだが、6 月にフィリピン海軍の補給船と中国船が衝突し、補給任務中の兵士が指を切断する重傷を負った。 自国だけで中国に対抗するのには限界がある。 デラサール大のレナート・デカストロ教授(安全保障・国際政治)は、RAA により補給任務に日本の支援を求めることができるようになるとし、比側が期待する点の一つに挙げた。 その上で、「フィリピンを囲むように、南北の日豪と東側のグアムなどを結ぶセキュリティートライアングルが完成する」とし、対中圧力が一段上がると指摘する。 フィリピン政府は 6 月、補給任務中の兵士が指を切断する重傷を負った事件を受け、補給日程の事前公表を検討したが、国内から「主権を譲歩するのか」と反発の声が上がり、直後に撤回した。 内外のバランス模索に頭を悩ませる比国防関係者らは、次の段階として軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) の締結も視野に入れる。 今後も安全保障面での日本への接近は続くとみられる。 中国は「軍事グループは不要」と不快感 一方、南シナ海でフィリピンと激しく対立する中国は、日比の防衛面での接近に警戒感を隠さない。 中国外務省の林剣副報道局長は 8 日の定例会見で「アジア太平洋地域に軍事グループは不要であり、陣営同士の対立も要らない」と不快感を示した。 中国は南シナ海問題をフィリピンとの二国間で収めたい考えで、「非当事者」とする日米の介入に神経をとがらせる。 「自由で開かれたインド太平洋」の名のもとで「対中包囲網」の動きを活発化させる日米に「巻き込まれるな」とフィリピンを牽制する論法が目立つ。 共産党機関紙・人民日報系「環球時報」は、日比の防衛協力が「南シナ海の情勢を考えれば、アジア太平洋地域の安全保障環境全体が壊滅的な打撃を受けかねない」とする専門家の論評を発表。 「中国の立場は一貫しており、いかなる外部環境要因によっても変更されたことはない」と述べ、引き続き自らの主張の「正当性」を訴え、一歩も引かない構えだ。 (マニラ・大部俊哉、北京・畑宗太郎、asahi = 7-9-24) |