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日本配備の米軍戦闘機、約 100 億ドルかけ最新鋭に更新 米国防総省

米国防総省は 3 日、日本に配備している米軍の戦闘機を最新鋭機に更新すると発表した。 約 100 億ドル(約 1 兆 6 千億円)を投じ、数年かけて実施する。 中国の覇権主義的な動きが強まる中、インド太平洋での抑止力を強化する狙いがある。 具体的には、嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)に現在配備されている 48 機の戦闘機 F15C/D を、36 機の同型の最新鋭機 F15EX に変更する。 移行期間中は嘉手納に第 4 世代と第 5 世代の戦闘機をローテーション配備し、有事への備えを維持する。

三沢基地(青森県三沢市)では、現在の 36 機の戦闘機 F16 を 48 機のステルス戦闘機 F35A に置き換える。 また、岩国基地(山口県岩国市)では、米海兵隊が保有するステルス戦闘機 F35B の数を増やす。 国防総省は、戦闘機の更新で日本政府と緊密に連携していると強調。 声明では「最新鋭機を日本に配備する計画は、日本の防衛に対する米国の確固たる責務と、自由で開かれたインド太平洋という両国共通のビジョンを示すものだ」と述べた。 (jiji/asahi = 7-4-24)


海自が英豪海軍と初訓練、南太平洋で 「同志国」との協力強化狙い

海上自衛隊は 3 日、南太平洋地域で英豪両国の海軍と共同訓練を 1、2 両日に行ったと発表した。 日本は同盟国・米国のほかに「同志国」との安全保障協力も進めており、英国と豪州を「準同盟国」と位置付けている。 海自が日英豪 3 カ国の枠組みの共同訓練に参加するのは初めて。 海上幕僚監部によると、訓練はフィジー沖からトンガ沖の海域で行われ、陣形を組む「戦術運動」などを確認した。 海自からはインド太平洋地域の海軍と連携強化を図る「インド太平洋方面派遣」でフィジーに寄港していた護衛艦「のしろ」が参加した。 (田嶋慶彦、asahi = 7-3-24)


進む「日米一体」 自衛隊、中国との有事想定した米軍訓練に初参加

三陸沖の太平洋を望む海上自衛隊八戸航空基地(青森県八戸市)に 13 日、米軍嘉手納基地(沖縄県)から米空軍 F16 戦闘機 3 機が爆音を立て飛来した。 着陸すると、海上自衛隊の給油車が横付けし、給油を開始した。 同基地に訓練で米軍機が降り立つのは、自衛隊創設 70 年間で初めてだ。 滑走路には米戦闘機のほか、海自 P3C 哨戒機も並び、海自無人偵察機シーガーディアンが離陸。 飛来した米軍機はこの後、航空自衛隊の戦闘機とも訓練し、「日米一体」を共演した。

沖縄から飛来し青森に展開した米軍機に関し、防衛省幹部は「米空軍の『ACE (エース)』の訓練だ」と明かす。 「ACE (Agile Combat Employment 迅速な戦闘展開)」とは、中国のミサイル攻撃を念頭に、有事の際に主要な空軍基地から部隊を分散させる米空軍の新構想だ。 同様の訓練は、空自松島基地(宮城県東松島市)でも同日行われた。 今回の日米共同訓練は、米軍が隔年に行う大規模統合演習「バリアント・シールド(勇敢な盾)」の一環で、今回は 7 日から 18 日までの日程で、米軍の陸海空、海兵隊のほか、宇宙軍やサイバー部隊まで 1 万人以上が参加。 米側の要請を受け、今回は自衛隊も初参加し、統合幕僚監部によれば、陸海空自衛隊の約 4 千人が訓練に臨んだ。

訓練区域も訓練内容も多様だ。 グアム近海では米軍が退役艦艇を使った撃沈訓練を行ったほか、台湾にも近い、フィリピンの東側沿岸近くでは、米空母「ロナルド・レーガン」と、「ヘリ空母」とも呼ばれる海自護衛艦「いずも」や潜水艦「じんげい」などが艦隊を組み、共同訓練を行った。 日本領土では、9 都道県の自衛隊基地で実施。 八戸、松島以外では、第 2 列島線上の硫黄島(東京都小笠原村)で、損傷した滑走路の復旧訓練、第 1 列島線上の奄美大島などでは地対艦ミサイルを交え、中国艦艇を念頭に置いた戦闘訓練を行い、北海道でも、島嶼(とうしょ)防衛を想定した空挺(くうてい)降下訓練が行われた。

バリアント・シールドとは別枠だが、同じ期間中の 16 日には、第 1 列島線内の南シナ海で、海自護衛艦「きりさめ」が参加し、米、フィリピン、カナダと 4 カ国の海上協同活動も実施した。 米政府関係者は「従来のバリアント・シールドは第 2 列島線付近で行っていたが、今回の特徴は日本を含む第 1 列島線防衛を念頭に置いたことだ。 安全保障環境が悪化するなかで、日本が初参加する意義は大きい。」と語る。 日米安保に詳しい小谷哲男・明海大教授は「この演習は元々、米軍が太平洋地域で行う統合演習としては実戦を意識したものだ。今回は過去最大規模で、そこに自衛隊も初参加をしたということは、中国との有事を想定した形で『日米一体化』が進む証しだ」と分析する。 (里見稔、編集委員・佐藤武嗣、asahi = 6-29-24)


ロ朝接近に対抗、NATO と連携強化 自衛隊が仏独スペインと訓練へ

航空自衛隊は 25 日、フランス、ドイツ、スペイン各国軍と 7 月に日本で共同訓練を行うと発表した。 ウクライナ侵攻をめぐりロシアと北朝鮮が接近する中、北大西洋条約機構 (NATO) との安全保障面での連携強化を図る。 空自は仏空軍と百里基地(茨城県)で、独・スペイン空軍と千歳基地(北海道)でともに 19、20 両日に、独空軍とはさらに同基地で 22 - 25 日に共同訓練を行う。 自衛隊が日本でスペイン空軍と共同訓練を行うのは初めて。 空自は F2 や F15 戦闘機、仏軍はラファール戦闘機、独軍とスペイン軍はユーロファイター戦闘機を参加させる。

日本は、この 3 カ国を含めた欧州諸国が加盟する NATO との協力を重視しており、今月は海自がオランダ、トルコの海軍とそれぞれ日本周辺で共同訓練を行った。 岸田文雄首相は 7 月 9 - 11 日に米ワシントンで開催される NATO 首脳会議に出席する方針だ。 ロシアと北朝鮮が有事の際の「軍事的援助」を明記した新条約を結んだ中、防衛省幹部は「欧州から見れば、今やロシアだけでなく北朝鮮も敵だ」と日本と NATO の連携強化の意義を指摘する。 木原稔防衛相は 25 日の記者会見で、仏独スペインとの共同訓練について「『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、各国との連携を深化する」と強調した。 (田嶋慶彦、asahi = 6-25-24)


砲らしきもの搭載の中国船領海侵入、受け入れられず = 官房長官

[東京] 林芳正官房長官は 7 日午後の記者会見で、いずれも砲らしきものを搭載した中国海警局所属の船舶 4 隻が同日午前に尖閣諸島(中国名 : 釣魚島)周辺の領海に侵入したことを受け、外交ルートで厳重に抗議し速やかに領海から退去するよう強く求めたとし、「誠に遺憾で受け入れられない」と述べた。 林官房長官は、4 隻すべてが砲らしきものを搭載して領海に侵入したことが確認されたのは今回が初めてのケースと説明。 「引き続き緊張感をもって尖閣諸島周辺の警戒監視に万全を尽くすとともに、中国側に対して冷静かつ毅然と対応していく」と語った。 尖閣諸島は日本が実効支配し、中国も領有権を主張している。 (内田慎一、Reuters = 6-7-24)


米国防長官、日本に米軍「大将」配置の検討を明らかに 連携強化図る

オースティン米国防長官が 3 日、訪問先のシンガポールで朝日新聞など一部メディアと会見した。 自衛隊との統合任務にあたる責任者として、大将の司令官を日本に駐在させる案を「詳細に検討している」と言明した。 現在、在日米軍の司令官は中将だ。 米側も自衛隊が設ける「統合作戦司令部」の司令官と同列に格上げする案で、在日米軍の権限を強め、日米の指揮統制の密接な連携を図る狙いがある。

日米は 4 月の首脳会談で、自衛隊と在日米軍の指揮統制の連携強化に合意した。 オースティン氏は、在日米軍司令部の機能を強化する具体策について「いま発表することはない」と述べる一方、米軍の大将が自衛隊と連携して指揮統制を担う案に自ら言及。 この案の「評価を進めている」と語り、有力な選択肢であることを明確にした。 米国が在日米軍司令部(東京・横田基地)の機能を強化する背景には、北朝鮮の核・ミサイル問題に加え、軍事力を増強する中国への危機感がある。 台湾をめぐる緊張も高まるなか、日米間で有事の対応も見据え、作戦立案や訓練などの連携を深める必要があるとの認識が高まっている。

現在、在日米軍は有事や訓練の際の作戦指揮権を持たず、司令官の階級も中将だ。 上位組織である米インド太平洋軍(米ハワイ)が作戦指揮権を持つが、担当する作戦領域は極東からインド洋まで幅広く、時差も伴う。 自衛隊との連携に限界があると指摘されてきた。 同じインド太平洋軍の指揮下でも、米韓連合軍の司令官を兼ねる在韓米軍の場合、司令官に大将が就いている。 自衛隊を一元的に指揮するため、日本が来春までに設ける統合作戦司令部にも、陸海空の幕僚長と同格である将官の司令官が充てられる。 日米の部隊運用をより円滑にする観点から、統合作戦司令官と同格の将官を在日米軍司令部に置くよう求める声が日米双方にあった。

日本における司令官が大将となれば、中国の台頭に直面する米国の軍事戦略上、日本の重みが増すことの象徴的な動きとなる。 米インド太平洋軍のパパロ司令官も 5 月 31 日、「現在の在日米軍司令官(の役割)は準・統合司令官だ」と述べ、日本の統合作戦司令官の設置に呼応する形で、司令官の権限を強化するとの考えを示していた。 また、オースティン氏は米国の中距離ミサイルシステムを日本に配備する可能性について問われると、直接の言及は避けた。 ただ、「我々は様々な能力を持つ装備を訓練の一環として配備している。 訓練を強化するため日本と協力していく」と述べた。 訓練を通じた一時的な配備の可能性に含みを持たせた。

米ロ間の中距離核戦力 (INF) 全廃条約の失効を受け、米国は 4 月、中距離ミサイルの発射装置を、共同軍事演習の一環としてフィリピンに初めて展開した。 中国が「地域の安全保障を深刻に危うくする」などと反発していることをめぐっては、オースティン氏は「我々が地域で行っていることはすべて、平和と安定を促進するためだ」と反論した。 日米は、7 月中にも予定されている外務・防衛担当閣僚会合(2 プラス 2)で、在日米軍司令官の階級格上げも含めた具体案を協議する見通しだ。 日米の部隊運用がより密接になるなか、日本がどのように独立した指揮権を維持するのかも今後の重要な課題となる。

オースティン氏はシンガポールで 2 日まで開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ、英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)」に出席。 5 月 31 日には中国の董軍国防相と対面で会談した。 (シンガポール・清宮涼、asahi = 6-3-24)


待望の新機材! 海自の国産哨戒機が千葉に初配備 「搭乗員の卵」育てる部隊に到着

下総教育航空群に P-1 哨戒機が到着

海上自衛隊は 2024 年 4 月 2 日、千葉県の下総教育航空群に P-1 哨戒機が到着したと発表しました。 P-1 は国産機として開発され、長らく運用されてきた P-3C 哨戒機の後継となる機体です。

下総教育航空群は、下総基地(千葉県柏市)を拠点としており、海上自衛隊の固定翼機の搭乗員教育を行っている部隊です。   P-1 は厚木基地(神奈川県厚木市)や鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市)などを拠点とする部隊に導入されていますが、下総基地に配備されるのは初となります。 (乗りものニュース = 4-5-24)

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「日本の切り札」 潜水艦じんげい就役 スマホ世代の乗り手確保急務

海上自衛隊の行進曲「軍艦」を音楽隊が奏でる中、真新しい潜水艦が、瀬戸内海に面する神戸市内の造船所から出航していった。 8 日、最新鋭の潜水艦「たいげい」型の 3 番目に当たる「じんげい」が就役した。 「潜水艦は日本の切り札です。」 この出航に立ち会った矢野一樹・元海自潜水艦隊司令官は現地でこう語った。 最新の潜水艦事情を探る。

政府は潜水艦の上部からミサイルを垂直に発射するシステムを搭載する新型艦の開発を目指しています。 すると原子力潜水艦が必要になると矢野・元司令官はみています。 記事の後半で紹介しています。

潜水艦の名称は、海象、水中の動物などに由来することが海自の標準とされており、「たいげい」型は「海の王者たる大きなクジラ (鯨)」を意味している。 同型艦の名称は「○○げい」のようにシリーズ化され、今回就役した 3 番艦の「じんげい」は、漢字で「迅鯨」と書き、「クジラが波をけたてて疾走するさま」を表現したという。 旧日本海軍でも潜水母艦などに同じ名称が使われていた。

2020 年に起工した「じんげい」は、全長は 84 メートル、深さ 10.4 メ ートルで排水量は 3 千トン。 三菱重工業神戸造船所で 8 日、同社から海自に引き渡す式典があった。 乗組員たちが「じんげい」の甲板へ行進し、艦の後部に自衛艦旗(旭日旗)を掲げた。 防衛省の増田和夫事務次官は、こう訓示した。 「四方を海に囲まれている我が国の防衛において、潜水艦部隊が果たすべき役割は一層大きくなっている。

最新新鋭潜水艦として能力をいかんなく発揮し、伝統ある我が国潜水艦部隊を力強く牽引してほしい。」 式典後、集まった人たちが手を振り、甲板上の乗組員らは帽子を振って応える。 「 んげい」はゆっくりと離岸し、母港となる神奈川県横須賀市の基地を目指した。 海自の潜水艦隊は 22 年以降、練習や装備開発に使われる艦を除くと 22 隻の潜水艦を保有する態勢をとっている。 「じんげい」を含む最新鋭艦「たいげい」型は今後、29 年度まで年に 1 隻ずつ就役する計画だ。 旧型艦と随時入れ替え、今後も 22 隻態勢を維持していく。

新造艦は三菱重工業(本社・東京)と川崎重工(同)が建造してきた。 今後も 2 社が隔年で担うという。 防衛省幹部は「いったん途切れると技術力を取り戻すのが難しい。 『継続は力なり』だ」と話す。 継続的な建造はノウハウの蓄積にもつながる。 世界的にも自国で潜水艦を建造できる国は多くなく、高い技術力の維持と産業基盤の強化を図る。

米中などが保有する原子力潜水艦に対して、日本の潜水艦は「通常動力型」に分類される。 スクリューを回す動力に電気を使うことから、潜航中の静音性が高いとされる。 たとえるなら、電気自動車 (EV) に似ている。 原潜に比べて小型なため、探知されにくい。 ただ、デメリットもある。 EV 同様、潜水艦も電池の残量が減ったら充電しなければならない。 潜水艦の場合、艦内に搭載したディーゼル発電機を回して充電するが、外気が必要となる。

その際、2 本の吸排気筒「シュノーケル」を水面に突き出すことになる。 これが敵に探知される恐れがあると、矢野氏は指摘する。 たった 2 本の筒でも危ないのか - -。 「いやいやいや、1本だって(位置が)ばれる時はばれるんですよ」と矢野氏は言う。 海の状況にもよるという。 荒れていればまだマシ。 波が穏やかなら、現代のレーダーは「空き缶」ですら探知してしまうという。

加えて、発電機を回せば大きな音が発生するため、探知されやすくなる。 一方、自ら大音量を発することになり、潜水艦の「目」であるソナー(音波探知機)の精度が大幅に鈍ってしまう。 就役した「じんげい」は、リチウムイオン電池を搭載している。 鉛蓄電池の旧型艦に比べて潜航時間や航続距離が伸びた。 船体構造の改良によりステルス性能が強化され、高性能ソナーで探知能力も向上しているという。

これに対し、原潜は水中で半永久的に原子炉により発電することができる。 発生する音が大きいことで知られてきたが、矢野氏は「米ロの最新鋭艦は、日本の潜水艦よりもはるかに静かだ」と見る。 電力消費に制約がないため、燃費を気にする必要がなく、大型化した艦体の内部で消音する仕組みを取り入れているのだという。

予算減のころに潜水艦は純増

もともと潜水艦隊は 16 隻態勢だった。 政府は 10 年に閣議決定した「防衛計画の大綱(現・国家防衛戦略)」で 22 隻への増強を決めた。 中国が軍事費を増大させる中、「非対称的な対応能力」の優先的な整備を掲げた。 日本の防衛費は限られている中、矢野氏は潜水艦の役割を「切り札」と表現した。 集団で運用されることが多い水上艦群に対して、潜水艦は単独で行動する。 水中ではレーダーによる探知が難しく、高い隠密性も持つ。 周辺国の海上戦力への対抗策として「圧倒的に有利で抑止効果がある(防衛省幹部)」として、潜水艦が重視されてきた。

省人化の利点もある。 イージス艦の乗組員が 200 人以上なのに対し、潜水艦の場合は 65 - 70 人前後となっている。 22 隻態勢への増強を決めた 10 年の判断をめぐり、当時、海上幕僚監部の装備部長だった矢野氏。 米国から日本政府に対し、海自の潜水艦部隊を増強するようにという要請があったのではないか、と考える。 当時は民主党政権下だった。 「防衛費なんて減る一方だったのに、潜水艦部隊の予算は純増。 はっきり言えば唐突に出てきた話だった。」と振り返る。

背景には「日本が 22 隻に増やせば、日米豪で中国に拮抗できた」との状況があったという。 台湾当局が発行する 09 年版の「国防報告書」によると、当時の中国海軍の潜水艦は約 60 隻。 矢野氏は「米国は 55 隻で、そのうち太平洋方面に展開しているのは 6 割で三十数隻」としたうえで、「豪州の 6 隻と日本の 16 隻」を足しても中国海軍に届かないことから、米国が日本に増強を求めてきたと分析する。

そもそも、なぜ 16 隻態勢が続いてきたのか。 矢野氏は「表向きには、国内の主要な海峡に張り付けるため」と話す。 国内には国際慣習法上、通過通航制度が適用される「国際海峡」が五つある。 宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、同海峡西水道、大隅海峡だ。 このうち、大隅海峡では当時、中国艦艇の航行が 03 年 11 月以降、確認されていなかった。 このため、ほかの四つの海峡の監視・情報収集任務に潜水艦を配置。 修理や訓練、基地からの往復などを加味すると、一つの海峡に 4 隻ずつ必要だったことから、16 隻態勢だったという。

ミサイル垂直発射型の開発の行方は

新たなシステムの開発も進む。 政府は 22 年末に国家防衛戦略を含む安全保障関連 3 文書を新たに閣議決定し、敵の射程圏外から攻撃する「スタンド・オフ防衛能力」を活用した敵基地攻撃能力の保有の必要性を明記した。 防衛装備庁は、ミサイルを艦上部から垂直に発射するシステム (VLS) を搭載する新型艦の開発に取り組んでいる。

現行の日本の潜水艦の「おやしお」、「そうりゅう」、「たいげい」型は、6 門ある魚雷発射管から魚雷や対艦ミサイル「ハープーン」などを発射できる。 だが、矢野氏は「相手が対処できない量のミサイルを撃つには、同時に多数を発射できる VLS が必要だ」と指摘する。 搭載するミサイルの長射程化、大型化に伴い、VLS 搭載型潜水艦は艦体が大型化すると予想されている。 ここで電気の問題が生じる。

大型化すれば、動力のために多くの電気が必要となる。 ミサイルの発射にも電気が必要で、発射が多くなればその分、より多く消費することになる。 そうなれば、高性能ソナーに回す分がなくなり、周囲を把握できなくなってしまう。 こうした問題に対応するため、矢野氏は原潜が必要になっているのではないかと考えていた。 ただ、日本は 1974 年、国内初の原子力船「むつ」が原子炉の出力試験中に放射能漏れを起こし、原子力船の研究開発計画が頓挫した経験を持つ。

「22 隻以上あっても、乗る人を確保できない。」

一方、足元では乗り手の確保が急務だ。 敵に艦の位置を特定されるのを避けるため、乗組員は潜水艦の外部との連絡を大幅に制限されている。 一度出港すれば任務は 1 カ月以上に及ぶこともある。 乗組員には、長期間の潜航にも耐えうる適性も必要だ。 「スマホ世代」の若い隊員を中心に集まりづらい状況にある。 矢野氏は「作戦的に見たら潜水艦は多い方がいい」としつつ、「22 隻以上あっても、乗る人を確保できない」と認めた。

防衛省は、今国会で審議中の新年度予算案に、艦内で外部との通信ができるような環境を整備する事業を盛り込んだ。 乗組員への手当も 10% 引き上げる。 海自のホームページでは「手当は航空機に比べて低いですが、階級などが上がるにつれて、数年後には航空機より確実に多くなります」とうたっている。 だが、矢野氏は不十分と訴える。 「基本給をまず上げなければ人材は民間企業に流れ、自衛隊の応募者は激減してしまう。これまで給料を上げる努力を全くしてこなかった影響が今、現れてしまった」という。 潜水艦に関するさまざまな知見を披露してくれた矢野氏だが、「今の自衛隊で最も欠けているのは人的側面だ」と言い切っていた。 (里見稔、asahi = 3-10-24)


日本 EEZ 内に中国ブイ漂流、中国大使館に抗議 … 回収して調査することも検討

東シナ海の日本の排他的経済水域 (EEZ) 内で漂流しているブイが見つかり、海上保安庁は 1 日、近くを航行する船舶から夜間も見えるように発光体を取り付けた。 ブイには「中国海洋監測 QF223」と記されており、外務省は 1 日、在日中国大使館などに抗議した。 政府関係者によると、海保の巡視船が 1 月 29 日、沖縄県・尖閣諸島の北方沖約 170 キロの海域で、直径約 5 メートルのブイが浮かんでいるのを発見した。上下逆さまにひっくり返った状態で、機能は停止していた。

鎖の付いた重りを海中に下ろして固定する「係留型ブイ」とみられるが、鎖の根元が破断して重りを失い、漂流した可能性が高い。 海保は「航行警報」を出して周辺の船舶に注意喚起。 政府はブイの分析を進めるとともに、回収して装置を調べることも検討している。 東シナ海では昨年 7 月、中国当局の調査船が、尖閣諸島の北西約 80 キロの日本 EEZ 内に、海洋調査用とみられるブイを設置した。 ブイの直径は約 10 メートルで「中国海洋」、「QF212」などと書かれていた。 日本政府は中国に抗議し、即時撤去を繰り返し求めたが、中国は応じていない。 (yomiuri = 2-1-24)


米空母 2 隻、海自艦と共同訓練 中国けん制、フィリピン海で

【ワシントン】 米海軍第 7 艦隊(神奈川県横須賀市)は 1 月 31 日、原子力空母カール・ビンソンとセオドア・ルーズベルトが同日、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」とフィリピン海で共同訓練を実施したと発表した。 海洋進出を強める中国をけん制する狙いがある。 海上通信や航空戦などの訓練を通じ、米軍と自衛隊の連携や即応性の強化を図った。 (kyodo = 2-1-24)


中国、東シナ海「防空識別圏」境界付近に常時 3 隻以上の軍艦 … 海自の新型護衛艦とにらみ合い

中国が、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に一方的に設定した「防空識別圏 (ADIZ)」の境界線付近に、複数の軍艦を常時展開させていることがわかった。 読売新聞記者が昨年 12 月 30 日、上空から中国海軍のジャンカイ 2 級ミサイルフリゲート艦を撮影した。 すでに中国の ADIZ 内を飛行する航空機に即時退去を呼びかけるなど、自らの空域だとして事実上の運用を進めている。 日本政府には、力による現状変更の試みへの対処が急務となっている。

中国は 2013 年 11 月、事前協議なしに日本の ADIZ に重なり、尖閣諸島を含む形で自らの ADIZ を設定。 国際慣行と異なり、中国当局の指示に従った飛行を航空機に一方的に求め、従わない場合は軍による「防御的緊急措置」をとるとしている。 国際法に基づかずに「管轄権」を主張する内容とされ、日本政府は「効力はない」と強く反発している。 米国、韓国なども懸念を表明している。

読売新聞記者は本社機から、中国が主張する ADIZ の境界線から内側約 20 キロ・メートルの海域で、ジャンカイ 2 級と海上自衛隊の新型護衛艦「みくま」がにらみ合う様子を撮影した。 飛行中には、中国海軍艦が、中国の ADIZ 内を飛行する別の航空機を追い払おうと、無線で呼びかける声も確認した。 複数の日本政府関係者によると、2020 年頃から中国 ADIZ の境界線付近では、中国海軍艦が少なくとも 3 隻態勢で常時展開するようになったという。

高性能レーダーを搭載し、航空機の撃墜能力が高い防空ミサイル駆逐艦(中国版イージス艦)や、フリゲート艦などの活動が恒常化している。 中国軍機は自衛隊機に緊急発進を繰り返しているという。 東シナ海で自衛隊や米軍の航空機や艦艇などの監視を強化しているとみられる。 一般的に ADIZ を有効に運用するには、接近してくる他国の航空機を早期に発見するレーダーの整備や、現場空域に即座に駆けつけることが可能な戦闘機部隊の練度向上が不可欠だ。

当初、中国側の監視能力は低く、ADIZ 設定は実効性を伴っていないとみられていた。 今後は常時展開する軍艦と戦闘機などが連動し、軍事的な動きを活発化させるとの見方もある。 自衛隊関係者も「台湾有事などの際には、自衛隊機や米軍機の進入を阻止する意図がある」と語る。 日本政府関係者は、常時展開が、尖閣諸島の領有権を主張する動きとも結びついていると分析する。 実際、尖閣諸島周辺で活動する中国海警局の公船が日本領海に侵入する際には、南下する動きを見せるなど、連携するケースがあるという。

防衛研究所中国研究室の杉浦康之主任研究官は「ADIZ を設定した 10 年前は、日米をけん制するためのメッセージの意味が強かった。 近年では中国空軍と海軍のデータリンクが進んでおり、実態が伴ってきたと見るべきだ。」と指摘する。 (yomiuiri = 1-28-24)

防空識別圏 (ADIZ = Air Dfence Identification Zone) = 領空侵犯を防ぐため、各国が自国の領空の外側に設定している空域。 領空侵犯の恐れがあるかを識別し、戦闘機が緊急発進(スクランブル)する必要性を判断する。 日本の場合、ADIZ を通過するだけの航空機はスクランブルの対象とはしていない。


空母になった巨艦「かが」海上試験を実施! あと少しで "特別改造" 完了へ 海自が写真公開

軽空母への改造工事を実施した「かが」が海上公試

海上自衛隊の第 4 護衛隊群は 2023 年 12 月 25 日(月)、軽空母への改造工事を実施した護衛艦「かが」が海上公試を行ったと発表。 公式 X (旧 Twitter)で、公試の様子を公開しました。 「かが」は、ヘリコプターを複数同時運用可能な、いずも型護衛艦の 2 番艦として進水し、2017 年に就役。 呉基地を拠点とする第 4 護衛隊に配備されています。 基準排水量は 1 万 9,500 トン、全長は 248m におよび、海上自衛隊では最大の戦闘艦艇です。

2022 年 3 月から JMU (ジャパンマリンユナイテッド)呉事業所のドックに入渠し、F-35B 戦闘機を運用可能にするための軽空母化改修が実施されました。 軽空母化改修では、艦首形状の変更や飛行甲板上の耐熱塗装、標識の塗り変えなどが実施されています。 2023 年 10 月には、艦名と艦番号の筆入れが行われ、11 月 17 日に呉基地の F バースに戻っています。 改修により、艦首付近がアメリカ海軍の強襲揚陸艦のような形状になっています。

搭載する F-35B 戦闘機は、2024 年度予算案に 7 機の取得が盛り込まれており、新田原基地に「臨時 F-35B 飛行隊(仮称)」が新設される予定です。 第 4 護衛隊群は公式 Xで、「『かが』の特別改造完了まであと少し! 待ち遠しいですね!」と投稿しています。 (乗りものニュース = 12-26-23)


海自の新型哨戒ヘリが開発完了! 対潜戦で優位確保を目指す 「SH-60K」の後継機

「SH-60L」は、ステルス性が向上した諸外国の潜水艦に対して対潜戦の優位を確保すべく、「SH-60K」をベースに開発された機体で す。 既存の「SH-60K」と外観が同じように見えますが、搭載システムや飛行性能などの能力向上が図られています。 開発は 20155 (平成 27)年から始まり、2021 年 5 月に初飛行に成功。 同年に三菱重工が試作機 2 機を防衛省に納入しています。 以後、各種の確認試験が重ねられてきました。 2024 年度予算案では 6 機(665 億円)の取得が盛り込まれています。 (乗りものニュース = 12-25-23)


国産の長距離ミサイル、配備 1 年前倒しで
反撃能力の柱に … 射程 1,000km 超

木原防衛相は 15 日の記者会見で、陸上自衛隊の「12 式地対艦誘導弾」の改良型について当初予定を 1 年前倒しし、2025 年度から配備を開始すると表明した。 改良型誘導弾は反撃能力の柱となる国産の長射程ミサイルで、対中国や対北朝鮮を念頭に抑止力と対処力の強化を急ぐ狙いがある。

政府は現在、「12 式地対艦誘導弾」の射程を現行の 100km 超から約 1,000km 超に伸ばす改良型の開発を進めている。 当初、開発が最も早い地上発射型を 26 年度から部隊配備する計画だったが、木原氏が前倒しの検討を防衛省内に指示していた。 木原氏は前倒しの理由について「実戦的なスタンド・オフ防衛能力を早期に獲得しなければならないとの切迫感を具現化した」と説明した。 政府は、米国製巡航ミサイル「トマホーク」についても、当初予定から 1 年前倒しして 25 年度から配備する計画だ。 (yomiuri = 12-16-23)


次期戦闘機開発、政府間機関設置へ日英伊署名 2035 年配備目指す

日英伊が共同開発している次期戦闘機の 2035 年の配備を目指し、3 カ国の防衛相は 14 日、防衛省内で会談し、政府間機関「GIGO (ジャイゴ)」を設立するための条約に署名した。 英国を本部とする GIGO は企業との契約や輸出管理を担い、日本人を初代トップに据えて 24 年度中に発足させる。 日本が戦闘機のような大型の防衛装備品を米国以外と共同開発するのは初めてとなる。

条約案は来年 1 月召集の通常国会に提出される。 次期戦闘機は、日本にとって 35 年ごろから退役する航空自衛隊 F2 戦闘機の後継となる。 開発の中核である三菱重工業、英国の「BAE システムズ」、イタリアの「レオナルド社」の 3 社は今後、英国に本社機能をもつ共同企業体 (JV) を組織する予定で、トップはイタリアから就任する。 GIGO は、この JV 側への発注などを管理する。 防衛省によると、GIGO には 3 カ国で計数百人規模の職員を派遣する。

ただし、次期戦闘機の開発は課題山積だ。 複数の関係者によると、イタリアの資金投入計画がはっきりせず、日本側は「いつどれだけの資金を投入するのか」を明確に示すようにイタリア側に強く求めているという。 一方、日本も「防衛装備移転三原則」の運用指針に基づき、日本で生産した次期戦闘機の完成品を英伊以外に輸出できない状況にある。 与党実務者が輸出解禁に向け調整を続けたが、公明党が慎重姿勢を示し、継続審議となった。 こうした一連の問題から、防衛省内では 35 年を目指す初号機の配備計画を危ぶむ声も出ている。 (田嶋慶彦、asahi = 12-14-23)


三菱やります!! 「極超音速ミサイル」開発本格化か? 宇宙ロケット技術も使ってオリジナル誘導弾を実現へ

12 対艦誘導弾技術を核に開発

三菱重工は 2023 年 11 月 2 2日に行われた「防衛事業説明会」で、スタンドオフ防衛事業として、自社の 12 2式地対艦誘導弾の技術を核に、宇宙ロケットなどで培った技術を融合させて国産の極超音速ミサイルを作り出す方針を明らかにしました。 極超音速ミサイルとは、音速の 5 倍(マッハ 5)以上の速度で推進するミサイルのこと。 これだけ速いスピードのため、探知・迎撃するのが難しいとされています。

2023 年現在、アメリカなどの西側諸国や中国、イランなどでも開発が進められています。 また、ロシアは Kh-47M2 「キンジャール」を極超音速ミサイルにあたると主張しており、同ミサイルは2022 年 2 月から開始されたウクライナ侵攻においても使われています。 三菱重工は同種のミサイル技術を、現在配備が進められている 12 式地対艦誘導弾と、同社が宇宙ロケット開発などで培った極超音速耐熱構造技術を融合させ、実用化を目指すとしています。 なお、ほかにも同社では、島嶼防衛用高速滑空弾についても、同じく宇宙ロケットなどで培ったノウハウなどを応用して開発を目指すという方針を打ち出しています。 (乗りものニュース = 11-22-23)


「鉄が鉄を鍛える」 喜んだ米海兵隊司令官 陸自元幹部に贈った勲章

離島防衛を想定した国内最大規模の日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン 23」が 14 日、九州・沖縄などで始まりました。 米海兵隊太平洋基地は 17 日、フェイスブックで「(沖縄に駐留する)第 12 海兵連隊を 11 月 15 日、第 12 海兵沿岸連隊 (MLR) に改編する」と発表しました。 海兵隊は 2 年前から陸上自衛隊の協力を得て、MLR などを研究する「シンカ演習」を始めていました。 当時、陸自の部隊訓練評価隊長としてこの演習の発足に携わった近藤力也元 1 佐は「海兵隊と同じように、自衛隊もスピード感をもって緊迫する情勢に対応しなければならない」と語ります。

米海兵隊がシンカ演習を希望したのは、陸自北富士駐屯地にある「富士トレーニングセンター (FTC)」の装備を高く評価したからだそうですね。

FTC は普通科に特科や機甲科、施設科などを組み合わせた 300 人規模のミニ戦闘団の実力を試すため、最も実戦的な環境を再現できる施設です。 システムが全てを測定するため、客観的な数値で実力を判定します。 FTC で、隊員は実弾の代わりに空包と共に発射されたレーザー光線などを受信する装備を着用します。 身体のどこを撃たれたのか明らかにし、「死亡」、「重傷」などと判定します。

海兵隊は「似た施設は米本土にもあるが、直射火器しか再現できない」と語っていました。 FTC では曲射砲も、事前に設定した火薬の量や角度などから、コンピューターがどこに着弾したのかを判定し、周囲にいた人間の姿勢や砲弾との距離から、具体的な被害を判定します。 海兵隊は「非常に実戦的な訓練ができる」と喜んでいました。

「敵はいつやってくるかわからない」 自衛隊を動かした米海兵隊の熱意

当時、沖縄の第 3 海兵遠征軍に所属していた米コロラド大学・海軍予備役将校訓練隊のボーディッシュ大佐は「提案から訓練実施まで 9 カ月しかかからなかった」と驚いていました。

通常、日米共同訓練を行う場合は、政府間の取り決めから始めるため、実施まで 3 - 4 年かかります。 でも、海兵隊のボーディッシュ大佐は「敵はいつやってくるかわからない。 のんびりした訓練はできない。」と語っていました。 海兵隊の熱意に動かされ、米軍の単独訓練とし、陸自が結果的に協力するという対応にしました。

シンカ演習の目的は何だったのですか。

米側は当初、敵による攻撃の兆候が表れた場合に緊急展開する米海兵隊の新たな構想「遠征前進基地作戦 (EABO)」や、実践する部隊である海兵沿岸連隊の編成を研究する演習として位置付けていました。 ただ、2021 年 6 月に行った最初の演習で海兵隊は陸自に敗れました。 海兵隊は「シンカ演習は部隊を鍛える絶好の訓練になる」と考えたようです。

第 3 海兵遠征軍司令官のビアマン中将は当時、海兵第 3 師団長として「この訓練は Iron sharpens iron (鉄が鉄を鍛える)。 最高の訓練であり、最高の同盟を構築できる」と語っていました。 レゾリュート・ドラゴンは日米共同で司令部の機能や火力運用などを調整し、お互いが補い合いながら共同で戦う訓練を行います。 シンカ演習は、その前提として新しい部隊編成を研究したり、部隊を強くしたりするのが目的です。

「陸自をなめていた」 負けるべくして負けた海兵隊

最初のシンカ演習で、海兵隊は陸自に惨敗し、2 度目では引き分けに持ち込んだそうですね。

米海兵隊は当初、陸自をなめていました。 十分な警戒もせず、陸自の偵察部隊に情報を取られました。 現代の戦いは情報戦です。 海兵隊は負けるべくして負けたのです。 海兵隊に陸自の強さを知らしめたのは、最大の成果でした。 お互いを認めることが、同盟の信頼関係につながります。 ただ、2 度目の演習では、海兵隊は最初の演習での教訓を即座に反映して臨みました。 これは、自衛隊も学ばなければいけない姿勢だと思います。

ボーディッシュ大佐は南西諸島を含む日本の国内や近くで、日米共同訓練をすべきだと語りました。

離島でいかに日米が共同して戦うのか、その作戦計画は当然ハイレベルで策定されていると想像しますが、早くそれを現場に落として、離島で日米がどうやって協力して戦うのかという訓練を実施すべきです。 一方、訓練には地元の皆さんの理解と協力が不可欠です。 地元の人には有事になったら具体的にどうなるのかというイメージを持ってもらうと同時に、日本政府が「責任をもって市民を守る」というメッセージの発信と準備を急ぐべきです。 国民保護は、国の避難措置の指示に基づき、県が具体的な避難の指示を行い、地元自治体が避難実施計画を作るという流れになります。 国と県が対立していては、いつまで経っても国民保護は実現しません。

米海兵隊は今年 1 月、近藤さんに勲章を授与したそうですね。

私は 21、22 両年のシンカ演習に立ち会い、22 年 8 月に退官しました。 通常、米軍の勲章授与には 3 - 4 年かかるそうです。 ところが、ビアマン中将が直接、米国防総省にかけ合ったそうです。 勲章は昨年 7 月 6 日付で、昨年 11 月に都内で一度表彰されました。 ところが、ビアマン中将が直接授与したいと希望し、1 月に沖縄県うるま市にある米軍基地、キャンプ・コートニーで受け取りました。 ビアマン中将は「この勲章には特別な意味があるんだ」と、わざわざ説明してくれました。

おそらく、米海兵隊は FTC を評価し、本格的な日米共同訓練としてのシンカ演習を行いたいのでしょう。 そうなれば、陸自も米海兵隊も共に成長できる機会が広がります。 地元自治体との調整が必要になりますが、近い将来、シンカ演習が正式な日米共同演習に発展してほしいと思います。 (牧野愛博、asahi = 10-18-23)

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