中国のセキュリティーラボが、テスラ車を「ハッキング」した瞬間

中国企業のセキュリティー研究チームが、テスラ「Model S」を遠隔で急停車させるなど、同車両の脆弱性を示すデモ動画を公開した。 中国のインターネット企業テンセントの傘下にあるキーン・セキュリティー・ラボの研究チームが、テスラモーターズの電気自動車「Model S」の脆弱性を非公式に公表した。 この脆弱性を突けば、Model S のコントローラエリアネットワーク (CAN) にリモートでアクセスし、駐車中または走行中の車両の機能を乗っ取ることができるという。

研究チームは、無改造の Model S のドアやトランクを遠隔操作で開けたほか、ディスプレイを乗っ取ることにも成功。 おそらく最も注目すべきは、走行中の Model S のブレーキを遠隔操作により作動させたことだろう。 テスラ車両に対するこれまでのハッキングは、クルマに実際に近づく必要があった。 だが、キーン・セキュリティー・ラボによる攻撃は、Model S に組み込まれたウェブブラウザの脆弱性を突いたもので、Wi-Fi ホットスポットに車両を接続させれば作動させることができる。

冒頭のデモ動画では、研究チームは、最寄りの充電ステーションを検索する通信をハッキングすることにより、無改造車の車載ブラウザを悪用している。 研究チームはその後、Wi-Fi 経由でドアロックやシートの調整、ハザードランプ、車載ディスプレイなどの制御装置を遠隔操作した。 走行中も、車両のリアハッチを遠隔操作したり、約 19km 離れた場所にあるコンピューターによって車両を急停車させたりすることに成功している。

テスラはすでに、この問題を修正するファームウェアパッチを配信済みだ。 テスラの広報担当者はこの脆弱性に関する声明で、「現実的に考えると顧客に対するリスクはかなり低いものですが、迅速に対応しました」と述べている。 (Sean Gallagher、WIRED = 9-24-16)


米、自動運転車の指針公表 安全確保へシステム設計に政府関与

[ワシントン] 米運輸省の道路交通安全局 (NHTSA) は 20 日、自動運転車の開発・走行に関する包括的な指針を公表し、安全性確保に向けて自動運転システムの設計に政府がより深く関与することなどを提案した。 指針には、15 項目からなる安全性審査が盛り込まれ、自動車メーカーに対し、自動運転システムがどう作動するか、不具合が生じる理由などについての自主的な情報提供を呼び掛けている。

このほか、自動運転車が歩行者と衝突した場合の対応、自動運転車の制限速度など多岐にわたる項目が含まれている。 自動運転車の開発で各社がしのぎを削り、規制当局が対応に追われる中、連邦政府には規制の一本化が求められていた。 今回の方針で、メーカーの自主的な対応を重視した背景には、正式な規制強化には議会承認などで数年かかる可能性があるという現実がある。

フォックス運輸長官は 20 日の記者会見で、今回の指針を義務化することを目指すと表明。 「自動運転に関する方向性が示された」としつつも、現在の政策に多くの疑問が残されていることは認め、少なくとも年 1 回は見直しを行う方針を明らかにした。 運輸省当局者は会見で、アルファベット傘下のグーグル、ウーバー・テクノロジーズ、テスラ・モーターズなど自動運転車を開発する企業に対し、安全性審査に関する質問に 6 カ月以内に回答することを求めると語った。

当局はまた、米連邦航空局による航空機の承認手続きと同様、自動運転車の発売前に連邦当局による技術の検証と承認を義務付けるかどうかも検討したいとしている。 グーグルは先に、州ではなく連邦政府が自動運転車の規則を決めるべきだと訴えており、今回の指針はこれに沿った形となった。 (Reuters = 9-21-16)


ウーバー、ピッツバーグで自動運転車試験 将来運転手代替も

[ピッツバーグ] 米ウーバー・テクノロジーズは、ピッツバーグで自動運転車の配車サービスを試験的に始めた。 ウーバーは最終的に、運転手 150 万人の多くを自動運転車両で代替する計画だ。 自動運転車と配車サービスアプリの一体化で、ウーバーで初めて自動運転車に乗るという事例も多くなりそうだ。 フォード・モーターの「フュージョン」に 3 次元 (3D) カメラや、全地球測位システム (GPS) のほか、物体の形状や距離をレーザーで測定する技術を搭載した。

自動運転車 4 台で始め、不測の事態に備えて乗務員 2 人が前席に座る。 ボルボのスポーツ型多目的車 (SUV) にも装置を取りつけ、投入していく。 カーネギーメロン大学コンピューターサイエンス学部のアンドリュー・ムーア学部長は「ウーバーが今回大成功すれば、地球にとって素晴らしいことだ」と指摘。 「世界がかなり安全になるほか、少ないエネルギー消費で人が移動することで、効率が相当高まるからだ」と語った。

ただ、自動運転車の普及時期をめぐって、識者や業界幹部の見方は分かれたままだ。 ムーア氏は、真の自動運転車が数多く公道を走るようになるまで、研究・開発に最低 10 年間必要と予想。 完全自動運転車の普及まで、5 年以内との見方や、数十年かかるとの声も出ている。 (Reuters = 9-15-16)


アップル、自動運転車開発見直しか ニューヨーク・タイムズ信

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は 9 日、米 IT 大手アップルが自動運転車の開発事業を見直し、一部の計画終了と従業員解雇に踏み切ったと報じた。 関係者の話としている。 同紙によると、開発リーダーの交代に伴い、自動運転車そのものを設計・製造することから、自動運転に関わる根幹技術を開発することに、事業の軸足が移ったという。

自動運転の開発で車体製造を手掛けない方針の米グーグルと、似通った戦略になった可能性がある。 アップルは自動運転車の開発を公式に認めたことはないが、開発中だと米メディアが報じていた。 (kyodo = 9-10-16)


自動運転車が緊急走行中の緊急車両を検出する技術 Google の特許が公開に

自動車メーカーはもちろん、IT 企業などが、自動運転車の実用化を目指して研究開発や試験運行に取り組んでいる。 テーマパークや工場といった閉じられた空間ならば、走行環境は比較的単純だ。 しかし、歩行者やほかの自動車が行き交い、標識や信号であふれる公道の場合、自動車を自律走行させるには多種多様な技術が欠かせない。

そんな公道走行で必要にされる動作の1つに、緊急走行中の緊急車両に出会ったら道を譲る、というものがある。 Google が実現するための技術を考案し、米国特許商標庁 (USPTO) へ出願したところ、米国時間 2016 年 9 月 1 日に「Real-Time Active Emergency Vehicle Detection (公開特許番号 "US 2016/0252905 A1")」として公開された。 出願日は 2014 年 8 月 28 日。

この特許は、自動運転車がカメラで撮影した周囲の映像を解析し、パトカーや救急車、消防車といった緊急車両が緊急走行しているかどうか判断する技術を説明したもの。 請求項(クレーム)には、緊急走行と判断した場合に適切な動作をさせるとしか記載されていない。 現実的には、路肩に寄せて停車、中央分離帯に寄せて停車、交差点に進入しないなど、状況に応じてさまざまな対応が考えられる。

緊急走行中の緊急車両かどうかは、映像内で光っている部分を詳しく解析して判断する。 公道で撮影した映像には街灯や信号機、太陽など、さまざまな光源が映り込む。 そこで、光源の数、配置、点滅パターン、色などをあらかじめ登録されている回転灯テンプレートと照らし合わせ、判断することになる。 (佐藤信彦、Cnet = 9-9-16)


トヨタ、AI 研究へドリームチーム 創業の原点に回帰

「ドリームチーム。」 海外メディアはトヨタ自動車が米国シリコンバレーにもうけた研究所に対して、こんな言葉を使って紹介しました。 有名研究者を引き抜いて、AI (人工知能)やロボットの研究に乗り出したのです。 東大発のベンチャー企業とも手を組み、「自動運転」の研究も加速させています。 トヨタはどんな会社に進化しようとしているのでしょうか。

ひげ面で身長 2 メートル近い大男が鉄人 28 号のフィギュアを手に少年のように笑った。 「背中のジェット噴射機をつくるのは難しいよ。 ほかは今の技術でなんとかできるけどね。」 男の名前はギル・プラット (55)。 ロボット工学や AI (人工知能)の専門家で、「米国の至宝」と呼ばれる。 前職の米国防総省・国防高等研究計画局 (DARPA) 時代、福島第一原発事故をきっかけに、災害対策ロボットの開発を競う国際コンテストを立ち上げたことでも知られる。

トヨタ自動車は今年 1 月、子会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート (TRI)」を米国シリコンバレーに設立し、そのトップにプラット氏をすえた。 5 年間で 10 億ドル(約 1 千億円)をつぎ込み、AI などを研究する。 今、自動車産業は変化のうねりの中にある。 AI など IT の技術革新で、自動車の使い方を一変させうる「自動運転」の開発が急速に進展。 日米欧の自動車メーカーが主導してきた業界にグーグルなど IT 企業が割って入ろうとしている。 トヨタは TRI をその開発拠点と位置づけた。

TRI に期待される役割は自動運転だけではない。 TRI の玄関にはプラットが子供の頃から好きだった鉄人 28 号が飾ってある。 「高齢化社会で必要なのはテツジンのようにパワフルで、人々の生活を助けるロボットだ。」 介護などを担う家庭用ロボットの開発も進める。 自動運転もロボットも、センサーから得た情報を認識、判断し、的確に動かす頭脳が重要だ。 高度なソフトウェア技術の集積である AI はその中核。 ものづくりが得意なトヨタだが AI は不得意な分野だ。

この世界で有名なプラット氏を獲得し、彼の人脈で優秀な研究者を集めることもトヨタは期待した。 実際に多くの研究者が合流し、米メディアは彼らを「ドリームチーム」と評した。 IT 業界の雄、グーグルで自動運転プロジェクトを立ち上げ、ロボット部門長も務めたジェームス・カフナー氏 (45) もチームに加わった。 「私たちはトヨタの進化を助けたい。」 トヨタの原点は豊田自動織機製作所で 1933 年に生まれた社内ベンチャー組織の「自動車部」。 国産乗用車を夢見た豊田喜一郎が独立し、自動車メーカーに進化させた。 TRI Iはかつての自動車部の役割を演じようとしている。 (編集委員・安井孝之、井上亮、asahi = 9-4-16)


米フォード、21 年までに完全自動運転車 まず配車サービス向け

【シリコンバレー = 小川義也】 米フォード・モーターは 16 日、2021 年までにハンドルやアクセルのない完全自動運転車の量産を始めると発表した。 まずライドシェア(相乗り)などの配車サービス向けに供給する。 関連技術への投資を拡大し、研究拠点の人員を倍増することも明らかにした。 米 IT (情報技術)大手を含む自動運転車の開発競争がより激しくなってきた。

フォードは量産に向けて関連技術を取り込む。 自動運転車で対向車や歩行者、建物などの状況や距離を立体的に認識するレーザー光センサーの大手、米ベロダインに 7,500 万ドル(約 75 億円)出資したほか、画像認識技術に強みを持つ人工知能 (AI) ベンチャーのサイプス(イスラエル)を買収した。 ベロダインには中国のインターネット検索大手の百度(バイドゥ)も同額を出資した。

フォードは 15 年 1 月、シリコンバレーの中心地パロアルト市内に研究拠点を開設した。 現在は研究者や技術者などが 130 人いるが、17 年末までにデザイナーや新規事業開発の担当者を含め 260 人に倍増する。 シリコンバレーで会見したマーク・フィールズ最高経営責任者 (CEO) は自社で「無人タクシー」サービスを手がけるのか、米ウーバーテクノロジーズのような既存事業者に車両を供給するのかについては明言を避けた。 米ゼネラル・モーターズ (GM) はウーバーのライバルである米リフトに 5 億ドル出資。 同社と近く無人タクシーの実験を始める。

フィールズ CEO は「自動運転車のインパクトはフォードが 100 年前に始めたベルトコンベヤーによる自動車の大量生産に匹敵する。 この変化の一部は我々がリードする。」と語った。 米国では自動運転車の実用化に向けて、連邦政府や各州レベルで法的な枠組みをどうするのか議論が進んでいる。 自動運転車の開発を巡っては米グーグルが先行している。 自動車メーカーでは独 BMW が 7 月に 21 年までの完全自動運転技術導入に向けて米インテルなどと提携。 完成車メーカーの間でも開発競争が加速している。 (nikkei = 8-17-16)

完全自動運転車 ドライバーが運転に関与しない自動車。 ハンドルやアクセルを取り付けない車両も想定されている。 自動運転は技術のレベルに応じて 4 段階に分かれる。 最も高い完全自動運転のレベル 4 では坂道の勾配やカーブの正確な角度などの細かな情報を盛り込んだ立体地図が不可欠となる。 現在はハンドルを切ったり加速したりする複数の操作を同時にシステムが担うレベル 2 が一部実現している。 レベル 3 はすべての操作をシステムが行い、緊急時はドライバーが対応する。 日本政府は 2020 年をめどにレベル 3、25 年をめどにレベル 4 の実現を目指す目標を掲げる。


「ネットにつながる車」開発加速 自動車と通信連携強化

自動車業界と通信各社の連携が強まっている。 インターネットにつながる車「コネクテッドカー」の開発で、通信会社のノウハウが必要になるためだ。 コネクテッドカーの需要は急速な伸びがみこまれ、各社が研究を加速している。

ホンダは 21 日、ソフトバンクと人工知能 (AI) を積んだコネクテッドカーの研究で協力すると発表した。 AI がセンサーなどを使って、運転者の声や表情から感情を分析し、それにあわせた反応を音声で発する。 運転者と車が親しく会話できるようにしたいという。 AI はネットにつながっており、運転者が求めるものをネット上の情報から選んで提供する。 「春にぴったりの音楽が聞きたい」と言えば、AI がそれまでの会話で学んだ好みを加味して、最適と思われる曲をかける。 センサーを使い、駐車位置を助言することも可能になる。 (榊原謙、友田雄大、asahi = 7-24-16)


日産、高速道路の一車線で自動運転可能に 8 月発売「セレナ」で採用

[横浜市] 日産自動車は 13 日、8 月下旬に発売するミニバン「セレナ」に自動運転機能を搭載すると発表した。 高速道路の同一車線に限り、ハンドルやブレーキを操作しなくても走行ができる。 価格は現行車と同水準の 300 万円以下となる見込み。 ハンドル、アクセル、ブレーキ制御すべてを自動化するのは日本メーカーとしては初めて。海外では独メルセデス・ベンツや独 BMW、米テスラ・モーターズなどがすでに採用しているが、高級車が中心となっている。

日産の自動運転技術「プロパイロット」は、高速道路における渋滞時や一定速度で長時間走行する際の運転負荷を軽減するのが狙い。 日産は来年以降に欧米などでも同様の技術を搭載した車両を順次販売し、2018 年には高速道路で自動で車線変更し、複数車線でも走行できるようにする計画。 トヨタ自動車やホンダなどは 20 年に高速道路での自動運転の実用化を目標に掲げるが、日産は同年までに高速道路より難しい一般道路でも走行できる自動運転車の販売を目指す。

フロントガラスの中央上に設置した車載カメラで前を走る車と両側の白線を認識。 運転者が設定した車速(約 30 - 100km/h)を上限に、前方車両との車間距離を一定に保ち、自動でアクセルとブレーキをコントロールするほか、車両が道路中央を走るようハンドルを制御する。 渋滞中に止まってもブレーキを踏まずに自動停止してその状態を維持。 3 秒程度なら操作なしで、それ以上ならアクセルを踏むかボタン 1 つで再発進できる。

ただ、逆光になったり雪や土砂などが積もって白線が見えなくなると、車載カメラが白線を認知できなくなり、自動運転機能は使えない。 また、現在は法規制上、運転者はすぐ操作できるようハンドルに手を添えておくことが義務付けられている。 このため、プロパイロットでは運転者がハンドルから手を 4 秒ほど離すと前方の 7 インチ画面に警告が出て音が鳴り、10 秒後には自動運転機能が解除される仕組みになっている。 事故が起きた場合は運転者が責任を負う。

自動運転をめぐっては、今年 5 月にテスラのセダン「モデル S」の自動走行中に運転者の死亡事故が起きている。 日産の坂本秀行副社長は同日の発表会で、日産の自動運転技術はあくまでも「運転支援のシステム」と強調し、運転者が運転を主導することが前提にあるとの認識を示した。 (asahi = 7-13-16)


自動運転タクシーが公道を走る? 米 GM が 1 年内に実験へ

米自動車最大手ゼネラル・モーターズ (GM) はスマートフォンを利用した米国の配車サービス会社「リフト」と組み、GM の新型電気自動車 (EV) を使った自動運転タクシーの公道実験を 1 年以内に始める。 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が 5 日、リフト幹部の話として報じた。

自動運転技術は開発競争が激化しており、米 IT 大手グーグルは 3 日、欧州自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ (FCA) と自動運転車を共同開発すると発表している。 GM の具体的な実験場所は報じていないが、米国内の大都市圏などを検討するとみられる。 GM は今年 1 月にリフトへ 5 億ドル(約 540 億円)を出資して提携すると発表した際、自動運転技術の開発で協力するとも説明していた。 (kyodo = 5-6-16)


グーグル、自動運転でフィアット・クライスラーと提携か

自動運転車の開発を進める米検索最大手グーグルと、欧州に拠点を置くフィアット・クライスラー・オートモービルズが、自動運転車の技術提携を結ぶための最終交渉に入っていることが 28 日わかった。 AP 通信などが報じた。

報道によると、交渉はすでに数カ月にわたっており、提携に向けた最終段階にあるとしている。 グーグル幹部はこれまでも自社で自動車生産をするつもりはないと繰り返し発言しており、自動車メーカーとの何らかの提携を模索していると言われてきた。 グーグルは、09 年から自動運転車の開発を始めた。現在は約 50 台の自動運転車が一般道で試験走行しており、これまでに約 240 万キロ以上を自動運転で走行したという。 (サンフランシスコ = 宮地ゆう、asahi = 4-30-16)


バラ色の未来描く自動運転車、ビジネスに大打撃も

[デトロイト] 自動車メーカーやハイテク企業は、自動運転車が普及すれば交通事故が減ってバラ色の未来が訪れると夢見ているが、全員が勝ち組になるとは期待できない。 家計は楽になるが、メーカーの販売台数は激減し、保険会社にも悪影響が及ぶ可能性がある。 完全自動運転車が普及し、ウーバー・テクノロジーズのような配車サービスを使ってスマートフォンで呼び出せるようになれば、多くの消費者は自動車を所有しなくなるかもしれない。 1 家で 2 台所有している先進国では、その数が 1 台に減る可能性がある。

そうなれば家計は懐が潤う。 米国の家計では通常、自動車は 2 番目に大きな買い物だが、9 割の時間は稼動していない。 一方で自動車メーカーは苦境に陥る。 バークレイズのアナリスト、ブライアン・ジョンソン氏は昨年のリポートで、米国の自動車販売は向こう 25 年間で 40% 減少すると予想した。 それによると、米ゼネラル・モーターズ (GM) とフォード・モーターは、米国およびカナダの組み立て工場を合計で現在の 30 カ所から 17 カ所に減らす必要に迫られる。 約 2 万 5,000 人の労働者が失業する。

メーカーは現在、販売台数減少による減収を運送関連サービスの収入で補おうと動き出している。 フォードとジャガー・ランドローバーは、自動運転車ではないがカーシェアリングの実証実験に乗り出した。 自動運転車と組み合わせれば、こうしたアイデアに弾みがつくかもしれない。 GM は配車サービスの米リフトの株式 10% を取得した。

しかし米国で「L4」と呼ばれる完全自動運転車への移行に時間が掛かるようなら、メーカーにはその間、思いがけない利益が転がり込むかもしれない。 L4 の一段階手前である「L3」技術は人が運転に関わる必要があるが、交通渋滞への対処や事故回避のためのブレーキ、適切な車間距離維持、駐車などは自動で行う。 これらの機能を備えた自動車は値段設定が高くなり、特に高級モデルでは収益性が高まりそうだ。

電気自動車の米テスラ・モーターズは昨年、「モデル S」セダンでこうした「オートパイロット」機能が使えるようにした。 最低価格は 7 万 6,500 ドルだ。 独ダイムラーが新型「E クラス」その他の車種で提供を始めた L3 技術、「メルセデス・ベンツ・インテリジェント・ドライブ・システム」の場合、5 万 3,000 ドルの自動車に搭載すれば価格を 4,500 ドル上乗せできる。 フォルクスワーゲンのアウディや BMW も同様のシステムを提供。 GM も来年、そうした技術の提供を計画している。

こうしたシステムを自動車メーカーに販売する部品企業も勝ち組だ。 また、シリコンバレーの両雄、グーグル親会社のアルファベットとアップルも勝ち組に入るかもしれない。 グーグルは自社の自動運転ソフトウエアを世界中の自動車メーカーにライセンス提供する可能性がある。 アップルは口が堅いが、採用している人材から察するに、アップルブランド車の導入を計画している可能性がある。 「iPhone (アイフォーン)」や「iPPad (アイパッド)」のように、製造は外注するかもしれない。

タクシーやバス、ウーバー、配達トラックの運転手は負け組だ。 ミシガン大学のエコノミスト、マーティン・ツィマーマン氏の試算では、米国だけで労働人口の 2% 近くに上る 260 万人の職が失われる恐れがある。 自動運転車が広く普及して事故が防げるようになれば、自動車保険も悪影響を受けそうだ。 スイス再保険のシニア・バイス・プレジデント、ケート・ブラウン氏は最近、自動運転車に関する会合で、欧米で自動車保険の保険料が急減し、大打撃を被るとの見通しを示した。 (Joseph White and Paul Ingrassia、Reuters = 4-28-16)


トヨタ、米 MS と合弁新社 自動運転へビッグデータ分析

トヨタ自動車は 4 日、米マイクロソフト (MS) と合弁で、車から集めるビッグデータを分析する会社を米国に設けたと発表した。 車の IT 化を担う人材を確保し、分析の結果は自動運転に生かす。 先行するグーグルの背中を追い、車各社のIT人材争奪戦は熱を帯びる。 新会社は「トヨタ・コネクテッド」。 トヨタの新しい米国拠点となるテキサス州に構える。 資本金は約 6 億円で、トヨタ子会社が 95%、MS が 5% を出資。 2017 年までに約 40 人の技術者を集め、ビッグデータの分析にあたる。

トヨタは、通信専用機を使って、利用者が渋滞や路面のきめ細かい情報を入手できる「つながるクルマ」を増やす方針。 現在は高級ブランドのレクサスに限って標準装備しているが、米国では 17 年以降、大衆車にも広げていく考えだ。 車の位置や速さ、道路の状態など膨大なデータをトヨタが収集分析。 自動運転に欠かせない詳細な地図をつくったり、運転者の好みにあった広告を表示したりすることが考えられる。

トヨタと MS は 11 年に提携。 ビッグデータの活用方法などを共同で研究してきた。 新たな合弁会社を米国につくることで、日本では手薄な IT 人材の確保につなげる狙いがある。 (鈴木毅、友田雄大、asahi = 4-4-16)


「人工知能は運転手」 米当局、グーグル自動運転に見解

運転手なしで走る「完全自動運転車」では、人工知能 (AI) を運転手とみなす - -。 自動運転車の開発を進める米グーグルに、米当局がそんな見解を示していた。 自動運転普及のための大事な論点のひとつだけに、日本のメーカーも注目している。

米運輸省の高速道路交通安全局 (NHTSA) はグーグルに、開発している自動運転車に搭載された AI を「運転手とみなす」と伝えた。 米国では、自動運転のルールづくりが進められている。 無人運転技術で先行するグーグルにとっては、実用化への前進となりそうだ。 NHTSA が今月、グーグルの開発担当者に宛てた文書を公表した。 それによると NHTSA は自動運転車に搭載された AI は「従来の観点からすれば運転手とはいえない」としながらも、「人が乗らずに車が運転できるのであれば、実際に運転しているモノを運転手とみなすのが妥当だ」という見解を示した。 (ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 2-14-16)


トヨタの米新会社 TRI、人工知能開発へ技術チーム結成

トヨタ自動車が米カリフォルニア州シリコンバレーに設立した新会社トヨタ・リサーチ・インスティテュート (TRI) は、人工知能やロボット技術の研究開発に向け、科学者や技術者で構成するチームを結成したことを明らかにした。 トヨタは昨年 11 月、自動運転車など人工知能技術の開発を手掛ける TRI を今月設立すると発表していた。 5 年間で約 10 億ドルを投資する計画。

TRI は諮問委員会の委員長にジョン・ルース前駐日米国大使を起用。 副委員長には自動掃除機「ルンバ」で知られる米アイロボット創設者で、マサチューセッツ工科大 (MIT) コンピュータ科学・人工知能研究所の所長も務めていたロドニー・ブルックス氏を指名した。 最高執行責任者 (COO) には、米国防総省国防高等研究計画局の元プログラムマネジャー、エリック・クロトコフ氏が就く。 TRI は数年かけて段階的に社員数を増やし、200 人規模にする予定。 (Reeuters = 1-6-16)


自動運転、遠い道のり ブレーキ自在、右折はまだ苦手

未来の技術として東京モーターショーでも話題となった自動運転車。 事故減少や過疎地の交通手段への期待は高いが、実用化のめどとされる 2020 年の段階では究極の姿ではない。 人がハンドルをまったく握らない時代が来るまでには、技術的にも社会的にも課題がある。 「この左折中もハンドルは握っていません。 歩行者がいると、はい、自動でブレーキを踏みました。」

日産自動車は 10 月末、東京・台場の一般道で、カメラやレーダーを載せた自動運転実験車に報道関係者を同乗させて走った。 18 年に高速道、20 年に一般道で自動運転を導入する目標を掲げ、現時点では開発で先端的なメーカーだ。 実験では、前の車に合わせて減速し、交差点では歩行者を把握して止まった。 ドライバーの日産技術者は、今回走った約 17 キロのほとんどでハンドルに触れなかった。 自動運転の難易度では、すでに実用化されている自動ブレーキのような「レベル 1」より技術的に難しい「2」と「3」の中間にあたる。

ただ、まだ自動で右折はできない。 実験車は走っている景色から道路の白線や標識といった必要な情報を読み取りながら進む。 右折の際、人間なら対向車の運転手と身ぶり手ぶりで譲り合えるが、開発担当の飯島徹也部長によると「自動運転車だけでこなすのは難しい」という。 (田中美保、榊原謙、asahi = 11-24-15)


カーブも合流も滑らか ホンダ、高速での自動運転を公開

自動車大手各社が自動運転の技術を競っている。 日産自動車は 2018 年に、トヨタ自動車やホンダ、富士重工業、三菱自動車は 20 年までに高速道路での自動運転を実用化する計画だ。 ホンダが公開した試作車による高速道路での走行を取材した。 11 月 3 日朝。 東京・お台場の会場に行くと、ホンダの高級車「レジェンド」を改造した試作車が準備されていた。 助手席に乗り込んで車内を見回したところ、運転席やハンドルに大きな変更が施されているようには見えない。

ホンダの担当者がハンドルを握り、出発。 市街地は通常のハンドルやアクセル、ブレーキ操作で走っていく。 やがて、首都高速道の豊洲インターが見えてきた。 料金所を抜けたところで、担当者がハンドルの内側のボタンを押した。 「自動運転を開始します。」 車内に音声が響いた。 ドライバーがハンドルから手を離す。 車は高速道路へ合流するまでの左カーブを、車線からはみ出さずに走る。 ハンドルの中心にあるホンダの「H」マークが左側に傾いている。 カーブに沿って自動的にハンドルが操作されているのだ。 「すごい。」 思わずつぶやいた。

「本線に合流します。」 再び自動音声が流れる。 ほどなく車は自動的に右に車線変更する形で、高速道路に入った。 滑らかな進入だ。 目的地は約 10 キロ先の葛西インター。 法定速度なのでほかの車よりは遅めだが、高速の車の流れに乗って快走する。 車はその後も、ドライバーがハンドルやペダルの操作をしなくても、前の車について走ったり、混んでくると自動的にブレーキをかけて速度を落としたり。 走り方に不自然さはなく、助手席に座っていても違和感はない。 変わっているのは、ドライバーがハンドルに触れていないことだけだ。 (榊原謙、asahi = 11-22-15)


トヨタ、人工知能に 1,200 億円 シリコンバレーに新社

トヨタ自動車は 6 日、自動運転などに使う人工知能技術の開発拠点として、来年 1 月、米シリコンバレーに新会社を設けると発表した。 2020 年までに約 10 億ドル(約 1,200 億円)を投じる。 新しい会社は「トヨタ・リサーチ・インスティテュート」。 最高経営責任者 (CEO) に米国防総省の国防高等研究計画局でロボットコンテストなどに携わったギル・プラット氏を迎える。 社員は 200 人程度を予定する。

自動運転には、車載カメラなどで集めたデータの分析、判断を担う人工知能の技術が必要になる。 トヨタの豊田章男社長は「私たちが人工知能技術を追求するのは、より豊かな社会を実現するためだ」とのコメントを出した。 トヨタは人工知能の分野で米スタンフォード大、米マサチューセッツ工科大学と連携すると 9 月に発表している。 (高橋諒子、asahi = 11-6-15)


Apple、米西海岸で自動運転車の走行試験開始か

米 Apple が自動運転車を開発しており、走行試験のための施設を米サンフランシスコのベイエリアに探していると、英 Guardian が現地時間 2015 年 8 月 14 日に伝えた。

同紙が入手したとする文書によると、Apple が検討している施設はサンフランシスコ近郊の「GoMentum Station」と呼ばれる、米海軍の基地跡にある試験場。 試験エリアの面積は 2,100 エーカー(850 ヘクタール)で、舗装道路の延長は 20 マイル(32 キロメートル)あるという。 GoMentum Station は現在コントラコスタ交通局が管理しており、一般人の立ち入りが禁止されるなど厳重な警備に守られているため、Apple のような秘密主義の企業にとっては魅力的な施設だと米 CNET は伝えている。 すでに Mercedes-Benz やホンダがこの施設を使い自動運転車の試験走行を行っているという。

Apple の自動車開発計画についてはかねてから報じられていた。 米 Wall Street Journal や英 Financial Times などは 2 月中旬、Apple が「Titan」という秘密プロジェクトに取り組んでおり、第一段階としてミニバンに似た電気自動車 (EV) を設計していると伝えていた。

ただ、Financial Times によると、自動車の開発は初期の段階から広い試験場が必要となることから、Apple の計画がどこまで進んでいるかは分からないという。 Apple が米 Google や米 Uber Technologies のような自動運転車を開発しているのか、米 Tesla Motors のようなEVを開発しているのかといったことも今のところ不明だと、同紙は伝えている。 (小久保重信、ITpro = 8-17-15)


グーグル、自社開発の自動運転車、公道テストを開始

米 Google (グーグル)は現地時間 6 月 25 日、自動運転車開発プロジェクトの最新プロトタイプによる公道テストを開始したと発表した。 すでに数台が米カリフォルニア州マウンテンビューを走行しているという。 同プロジェクトでは、これまでトヨタ自動車の「Lexus」などに専用ソフトウエアやセンサーを搭載し、公道テストを行っていた。 自社開発のプロトタイプは 2014 年末からテストコース内での実験走行を実施し、2015 年 5 月に、公道の走行テストを夏ごろ開始すると発表していた。

最新プロトタイプは、Google が社内で一から手がけたもので、Lexus 改良車と同じソフトウエアを採用する。 速度は毎時 25 マイル(毎時約 40km)以下。 脱着式のハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルを備え、安全確保のためにドライバーが乗車して必要なときに操作する。 完全自動運転を目指しており、最終的にはハンドルやペダルを取り除いた形になる。 Lexus 改良車は過去 6 年間に自動運転モードで約 100 万マイル(約 161 万km)走行。 これまで 11 件の事故に遭遇したが「すべて軽度のものだった」としている。 (ITpro = 6-26-15)


Google 純正の自動運転カー、今夏公道デビュー

米 Google は 5 月 15 日(現地時間)、自社で開発した自動運転カーのプロトタイプの公道での走行テストを今夏に本社のあるカリフォルニア州マウンテンビューで開始すると発表した。 同社の自動運転カーの公道走行は 2010 年 10 月のプロジェクト発表段階から実施されているが、これまではトヨタのプリウスやレクサスを改造したものが使われており、Google 純正のプロトタイプが公道に出るのは初めてだ。

このプロトタイプに搭載するソフトウェアは、これまで公道での走行テストに使ってきたレクサスモデルに搭載しているものと同じ。 数十台のレクサスモデルでの累計走行距離は 100 万マイル(約 161 万キロ)におよび、現在は週当たり約 1 万マイル走行しているという。 Google は「従って、新プロトタイプは米国の平均的ドライバーの 75 年分の経験値がある」とその信頼性を強調する。

このテスト走行では、(他の車や人などの)コミュニティーがプロトタイプにどう対応するかや、例えば渋滞などのせいで停車すべき位置で停車できない場合など、コンピュータにとって判断の難しい問題の解決方法を研究していくという。 (佐藤由紀子、ITmedia = 5-16-15)


グーグルの自動運転車、6 年で事故 11 件 ケガ人なし

自動運転車の開発に取り組んでいる米検索大手グーグルは 11 日、同社の自動運転車が 6 年間の試験走行中に 11 件の事故にあったことを明らかにした。 いずれも軽微な事故でケガ人はなかった。 後続車からの追突などで、自動運転車の性能に問題はなかったとしている。 自動運転車の開発責任者が IT ニュースサイトへの投稿で明らかにしたところでは、グーグルはこれまでに 20 台あまりの自動運転車を計約 270 万キロ走らせた。 このうち自動で運転したのは約 160 万キロだった。 現在は町中の一般道で、週に約 1 万 6 千キロの自動運転をしているという。

11 件の事故のうち、8 件は一般道で起きた。 件は後続の車に後ろから追突される事故で、横からの接触事故もあったという。 追突事故の多くが交差点の信号付近で起きたが、高速道路での事故もあったという。 開発責任者は「追突事故は、前の車が事故を避けるのはほとんど不可能」とした上で、「自動運転車が起こした事故は 1 件もなかった」と強調した。

試験走行の過程では「運転しながら本を読んでいる人や、トランペットを吹いている人までいた」と、いかに多くの人が運転に注意を払っていないかを指摘。 「今後も走行テストを続け、数多く起きている事故の原因について理解を深めたい」としている。 (サンフランシスコ = 宮地ゆう、asahi = 5-12-15)


トヨタと MS が提携発表 次世代車向けソフト共同開発

トヨタ自動車と米マイクロソフト (MS) は 6 日、次世代車の IT 化で提携すると発表した。 車を中心にして情報をやりとりする仕組みを共同開発する。 さらに、IT を使って電力を効率よく供給する「スマートグリッド(次世代送電網)」でも協力する。 トヨタは 2012 年に販売予定の電気自動車 (EV) やプラグインハイブリッド自動車 (PHV) で、MS の「ウィンドウズ・アジュール」を採用する。 インターネットを使って情報拠点から多様なサービスを提供する「クラウドコンピューティング技術」だ。

利用者は車内で地図情報や交通情報などを随時細かく入手できるほか、自宅の暖房や照明など電化製品を遠隔操作することもできる。 車外からも、携帯電話を通じて自分の車の充電や故障の状態などを確認できるようになるという。 12 年に日米でサービスを始め、MS の世界の情報拠点を活用して 15 年までに世界 170 カ国に広げる方針。 また、ガソリン車など他の車種にも広げていく。 開発はトヨタの子会社「トヨタメディアサービス」が担い、トヨタと MS で計 10 億円を増資する。

両社はこのシステムを使い、スマートグリッドへの取り組みも強化する。 家庭などで充電して使う EV や PHV の普及には、充電する時間や場所を効率よく調整するシステムが必要だからだ。 米オバマ政権が多額の予算をかけてスマートグリッドを推進しており、自動車、IT それぞれの最大手が協力して世界標準作りを目指す。

トヨタの豊田章男社長は 7 日、米国でネットを通じた記者会見を開き、「今回の提携はトヨタの未来にとって極めて重要だ。 今後も必要な提携には常にオープンでいる。」と述べた。 MS は自動車の IT 技術を巡り、米フォード・モーターとすでに提携している。 米ネット検索大手グーグルも米ゼネラル・モーターズ (GM) と提携するなど自動車向けサービスに力を入れており、自動車大手と IT 大手の協力や競争が激しさを増しそうだ。 (ニューヨーク = 山川一基、asahi = 4-7-11)