スペース X の新型宇宙船、10 回目の試験 衛星放出や地球帰還に成功 起業家イーロン・マスク氏が創業した米宇宙企業スペース X は 26 日、史上最大のロケット「スーパーヘビー」と宇宙船「スターシップ」の 10 回目の打ち上げ試験を行った。 模擬衛星の放出や、地球に戻った宇宙船の着水など予定した内容に成功し、開発における大きな節目となった。 6 回目試験以来の宇宙船帰還 ロケットと宇宙船は、月探査などを目指して開発中。 米中部時間 26 日午後 6 時半(日本時間 27 日午前 8 時半)ごろ、米南部テキサス州にある同社拠点の「スターベース」から打ち上げられた。 同社の中継映像によると、ロケットから切り離された宇宙船は軌道に到達した後、模擬の人工衛星を放出。 その後、地球に戻り大気圏に突入しても分解せず、インド洋に着水した。 宇宙船のエンジンを宇宙空間で再点火することもできた。 民間ロケット開発の先頭を走る同社は、コスト抑制を念頭に、ロケットと宇宙船の両方の再使用に向けた試験を重ねてきた。 これまでの試験で、宇宙船から切り離したロケットを発射地点に戻し「箸」のようなアームでつかまえることには成功していたが、宇宙船については 2024 年 11 月の 6 回目試験を最後に、地球に戻る際に分解するなど失敗が続いていた。 スターシップは、日本も参加する米主導の月面有人探査「アルテミス計画」で使うことが想定されている。 (サンフランシスコ・市野塊、asahi = 8-27-25) ◇ ◇ ◇ スペース X の宇宙船が地上で爆発 マスク氏創業、今後の開発に暗雲か イーロン・マスク氏が創業した米宇宙企業スペース X が開発中の宇宙船「スターシップ」が 18 日深夜、米テキサス州の打ち上げ拠点「スターベース」でエンジンの燃焼試験中に地上で爆発した。 同社が X (旧ツイッター)で発表した。 スペース X や地元警察によると、現時点で従業員や周辺住民にけが人は確認されていないという。 事故の瞬間をとらえた映像によると、ロケットが突然巨大な火の玉のようになり爆発した。 スペース X は原因について「重大な異常があった」と述べただけで、詳細は明らかにしていない。 スターシップは月や火星の探査に使うことを目指して開発している。 10 回目の打ち上げ試験に向けて準備する中での爆発で、今後の開発への影響も懸念される。 (サンフランシスコ・市野塊、asahi = 6-19-25) JAXA の大西卓哉飛行士、国際宇宙ステーションから地球に帰還 今年 3 月から国際宇宙ステーション (ISS) に滞在していた宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の大西卓哉飛行士 (49) ら 4 人が乗った米スペース X 社の宇宙船ドラゴンが、米東部時間 9 日昼(日本時間 10 日夜)に地球に帰還した。 大西さんらが乗った宇宙船は 8 日に ISS から分離。 大気圏に突入後、パラシュートを開きながら降下し、米西部カリフォルニア沖に着水した。 NASA (米航空宇宙局)の中継映像では、5 カ月ぶりに地球に戻った大西さんが宇宙船から出てカメラに手を振る様子が映された。 大西さんは、2 日に ISS に到着した JAXA の油井亀美也さん (55) と交代した。 2 度目となった ISS 滞在中には、船長としての務めを果たしたほか、日本の実験棟「きぼう」での科学実験などに取り組んだ。 (サンフランシスコ・市野塊、asahi = 8-10-25) ◇ ◇ ◇ 「行ってきます」 油井飛行士乗せた宇宙船、ISS に向けて打ち上げ 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の油井亀美也飛行士 (55) ら4人が乗る米スペースXの宇宙船「ドラゴン」が8月1日(日本時間8月2日)、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。予定の軌道に入り、成功した。 2 日明け方に国際宇宙ステーション (ISS) へ到着し、今年 3 月から滞在している大西卓哉飛行士 (49) と交代する。 宇宙船は米東部時間 1 日午前 11 時 43 分(日本時間 2 日午前 0 時 43 分)ごろにスペース X のロケット「ファルコン 9」に搭載されて打ち上げられた。当初は 7 月 31 日の予定だったが、悪天候を理由に打ち上げ直前で延期していた。 ファルコン 9 の 2 段構造のロケットのうち、1段目は打ち上げから約 2 分半後に切り離し。 1 段目は再利用のため、その後、地上に降下して着陸した。 さらに、約 9 分半後に 2 段目を切り離して宇宙船が軌道上に入ると、船内からの中継で油井さんは「日本の皆さん、私も 10 年ぶりに宇宙に帰ってきました。 ISS でしっかりと任務を果たし、一等星のように輝いて、日本の素晴らしいところを世界中の人に知っていただきたいと思います。」と話した。 打ち上げ後の会見で米航空宇宙局 (NASA) 幹部は、1 日も一時は雲が確認されたが、打ち上げ時間には許容される程度になり、「本当に幸運だった」と説明。 「ファルコン 9 は上昇段階を通じて素晴らしい性能を発揮した」と評価した。 油井さんの ISS 滞在は 10 年ぶり 2 回目。 打ち上げ直前、家族や報道陣に向けて油井さんは「行ってきます」と声をかけて飛び立った。 油井さんは、ISS にある日本の実験棟「きぼう」で二酸化炭素を除去する装置の実験をしたり、微小重力の環境が植物の細胞分裂に与える影響を調べたりする。 ほかに NASA のジーナ・カードマン氏、マイケル・フィンク氏、ロシアの宇宙機関ロスコスモスのオレグ・プラトノフ氏の 3 人が搭乗。 カードマン氏とプラトノフ氏は初飛行、フィンク氏は 4 回目の飛行となった。 NASA の宇宙船「スペースシャトル」の引退後、ISS への移動手段としてドラゴンの本格運用が 2020 年に始まってから 11 回目になる。 (ケネディ宇宙センター、フロリダ州 = 市野塊、asahi = 8-2-25) ◇ ◇ ◇ 油井飛行士 8 月 1 日に打ち上げ 10 年ぶりに再び宇宙ステーションへ 米航空宇宙局 (NASA) は 10 日、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の油井亀美也飛行士 (55) が搭乗する米スペース X 社の宇宙船ドラゴンを、早ければ 31 日昼(日本時間 8 月 1 日未明)に、国際宇宙ステーション (ISS) に向け打ち上げると発表した。 油井さんの ISS 滞在は 10 年ぶり 2 回目で、会見で「ISS という我が家に戻れることを本当に楽しみにしている」と話した。 NASA によると、予定通り打ち上げられれば 2 日未明(日本時間 2 日夕)に ISS に到着する。 油井さんは約半年間滞在する予定。 今年 3 月から滞在する大西卓哉飛行士 (49) とは、時期が重なり交代することになる。 油井さんは会見で、最近は分断や紛争に関する報道が多く見られる中、ISS では国籍や文化の異なる飛行士たちがお互いを尊重し合っていると説明。 「私にとって、ISS は団結や協力といった人間性の象徴のようなものだ」と話した。 今回の打ち上げは米国の 2 人、ロシアの 1 人との計 4 人で臨む。 (サンフランシスコ・市野塊、asahi = 7-11-25) 宇宙ステーション廃止、米政府が提案 日本も関わる「ゲートウェー」 日本も参加する米主導の月面有人探査「アルテミス計画」で、月への中継基地として建設する宇宙ステーション「ゲートウェー」について、米政府は 2 日、廃止を提案した。 ゲートウェーには日本人飛行士も滞在が見込まれており、廃止になれば日本の宇宙政策への影響が懸念される。 米政府が 2 日に公表した 2026 会計年度(25 年 10 月 - 26 年 9 月)の予算の要望をまとめた「予算教書」の中で明らかになった。 廃止の方針は提案段階で、今後の議会で修正される可能性がある。 ゲートウェーは月の周回軌道上につくり、月探査においては宇宙飛行士の滞在や物資の補給拠点などとして使うことが想定されている。 22 年には宇宙航空研究開発機構 (JAXA) )が生命維持装置などを提供する代わりに、日本人飛行士が搭乗することを約束する合意を日米間で交わしていた。 米航空宇宙局 (NASA) 全体の予算は前会計年度から約 25% 減額の 188 億ドル(約 2 兆 7 千億円)。 一方、米宇宙企業スペース X の創業者イーロン・マスク氏らが訴えてきた火星探査には予算をつける提案となった。 (サンフランシスコ・市野塊、asahi = 5-3-25) 宇宙ステーションが生み出す新たな経済圏 次世代 ISS かけ民間に熱 2030 年ごろに運用を終える国際宇宙ステーション (ISS) の後継を見据え、米国では民間企業主導で宇宙ステーションの開発が進む。 年内には米航空宇宙局 (NASA) による公募が始まる見込みで、本格化する宇宙空間の商業利用に向けて各社がしのぎを削っている。 丸みを帯びた真っ白な空間は、5 人ほどが入っても十分に広く、まるでホテルの一室のような高級感が漂う。 訪れた人は順番待ちの列をつくり、足を踏み入れる度に驚きの声を上げていた。 4 月中旬、米コロラドスプリングズで開かれたシンポジウムの会場に直径 4.4 メートル、長さ 10.1 メートルの円筒形のカプセルがあった。 初めて一般向けに展示された米宇宙企業バストが開発中の宇宙ステーション「ヘイブン 1」の実物大模型だ。 「ビジネスや科学研究の場」 廊下と共用部からなる約 45 立方メートルの居住空間には、宇宙空間仕様のベッドやテーブルを設置。 太陽光パネルで電力を供給し、米宇宙企業スペース X の「スターリンク」と接続することでインターネットも完備する。 4 人 1 組が一度に約 2 週間滞在することを想定しているという。 バスト社広報のエバ・ベーレンドさんは、「有人滞在だけでなく、ビジネスや科学研究ができる場所だと考えている」と胸を張った。 ヘイブン 1 は、スペース X の宇宙船で 26 年に打ち上げる計画だ。 ISS をはじめとする宇宙ステーションは、地球からの高度数百キロの低軌道と呼ばれる領域を使う。 地球と異なる微小重力の環境を生かし、創薬といった科学実験や人間が宇宙で活動するための訓練の場として重宝されている。 しかし、ISS は本格利用開始から 20 年以上が過ぎ、老朽化と維持費増などから 30 年ごろに退役する。 新たな市場に NASA は、ISS 退役後も低軌道で有人活動できる環境を維持するため、民間主導の宇宙ステーションを後押しすることにした。 企業にとってもこの領域の価値は高く、実験場などだけでなく、将来的にホテルをつくって一般客が宇宙空間に滞在できるようにする構想を持つ社もある。 こうした経済活動は「低軌道経済圏」などとも呼ばれ、新たな市場ができつつある。 市場への参入には NASA との連携も重要で、各社が競い合っている。 初期設計などを NASA が公募したフェーズ 1 では、米宇宙企業ブルーオリジンなどが契約を勝ち取った。 宇宙へ打ち上げた後に、宇宙飛行士の滞在や実験施設利用の契約を NASA と結ぶことになるフェーズ 2 の公募は今年始まり、1 社以上がパートナーとして選ばれる見込みだ。 バストもフェーズ 2 に向けて開発を急ぐ企業の一つ。 マックス・ハウト最高経営責任者 (CEO) は講演で「ISS を私たちの民間宇宙ステーションに置き換えてみせる」と意気込んだ。 低軌道の民間利用については、日本も米国と同じ方向を向く。 文部科学省の専門家委員会で今年 2 月、ISS 後継のステーションの運営を民間に任せていく方針を決めた。 宇宙ステーション本体の開発で有力視される日本国内の企業はないものの、商社を中心に米宇宙企業への出資が進む。 宇宙で組み立て 日本のスタートアップも 宇宙ステーションのような施設は、地上でつくったものをロケットで運ぶのが一般的だ。 ただ、ロケットが一度に運ぶことができる重量には限界があり、巨大な建造物はつくりづらい。 この課題の克服に挑み、民間による開発の流れに乗ろうとしている日本のスタートアップ企業がある。 東北大学発のスタートアップ「スペース・クォーターズ(東京都)」は宇宙空間で建造物をつくる技術を開発している。 パーツとなる全長約 6 メートルのアルミ製の薄いパネルを大量に打ち上げ、遠隔ロボットで溶接しながら組み立てる。 パネルは六角形と五角形からなり、サッカーボールのように組み合わせ次第で様々な形にできるという。 軌道上や月面での作業を想定する。 前例が少なく、投資家にイメージを持ってもらうのに苦労しているというが、溶接のためのロボットの試作機などはできていて、資金調達は進んできた。 同社の大西正悟代表取締役 CEO は「宇宙で滞在するための空間が大きくなればインフラやアクティビティー(活動)が生まれ、初めて生活になっていく。(宇宙空間で建設する)私たちの方法なら、宇宙開発の世界が広がる」と話した。 (米コロラドスプリングズ・市野塊、asahi = 4-27-25) 生命は存在する? 英チーム、太陽系外の惑星に「最も強い証拠」検出 英ケンブリッジ大の研究チームは、地球から 124 光年の距離にある惑星の大気中に生命の痕跡を検出したと発表した。 太陽系の外に生命が存在する「最も強力な証拠」としている。 論文によると、今回観測したのは、地球の 2.6 倍の大きさを持つ「K2-18b」という惑星。 研究チームは惑星が恒星の前を通過する様子を、米航空宇宙局 (NASA) のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って観測した。 惑星の大気を通ってきた恒星の光を分析すると、大気中から硫黄化合物「ジメチルスルフィド」と「ジメチルジスルフィド」という化学物質を検出した。 二つの物質は、地球上では海洋植物プランクトンなどの微生物によってのみ生成されるといい、太陽系の外にある惑星に生命が存在する可能性を示す強い証拠となるという。 この惑星は、恒星からの距離が近すぎず遠すぎず、液体の水が存在できる「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」にあることがわかっていて、大気中にメタンと二酸化炭素が確認されている。 地球のように、大気と海が存在する可能性があるという。 ただ、検出された物質が非生物学的につくられた可能性もあり、生命の存在が確定したわけではない。より多くのデータを得るため、研究を続けるという。研究チームのニク・マドゥスダン教授は「今回の結果が転換点となり、宇宙で人類は私たちだけなのかどうかという根本的な疑問に答えられるようになるかもしれない」とコメントしている。 研究成果は専門誌 アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ に掲載された。 (小川詩織、asahi = 4-22-25) |