鴻海・シャープ、中国政府と半導体工場 総額 1 兆円規模

台湾・鴻海精密工業と子会社のシャープは、中国に最新鋭の半導体工場を新設する方向で地元政府と最終調整に入った。 広東省の珠海市政府との共同事業で、総事業費は 1 兆円規模になる可能性がある。 米国との貿易戦争が過熱する中、中国は外資に頼る半導体の国産化を強力に進めており、新工場も多額の補助金などで誘致する。 中国の先端分野に圧力を加える米国が批判を強める可能性がある。

翌日の朝刊に掲載するホットな独自ニュースやコラムを平日の午後 6 時ごろに配信します。 鴻海とシャープは珠海市政府と組み、直径 300 ミリのシリコンウエハーを使う最新鋭の大型工場を建設する計画。 2020 年にも着工する。 総事業費は 1 兆円規模になる可能性があり、関係者によると補助金や税金の減免などを通じ、大半を珠海市政府などが負担する方向で協議している。

鴻海グループで唯一、半導体生産を手がけるシャープの技術を工場建設に活用する。 生産規模の拡大に合わせて段階的に複数棟の工場を建設する。 「我々は必ず半導体を生産する。」 郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は 5 月に北京の清華大学での講演でこう表明。 鴻海と珠海市政府は 8 月に半導体分野で戦略提携を結び、具体策の検討を進めていた。

珠海市政府の当局者は日本経済新聞の取材に「鴻海と半導体の設計と製造設備で提携しているが、それ以外の内容はコメントできない」としている。 鴻海は取材に対してコメントをしなかった。 「世界一の製造強国」を目指す習近平(シー・ジンピン)指導部は産業政策「中国製造 2025」の中で、半導体産業の育成を掲げている。 半導体の自給率を 20 年に 40%、25 年には 70% に引き上げる構想だ。 だが現状は 10% 台とされ、17 年には 2,600 億ドル(約 29 兆円)を輸入した。 目標との落差は大きい。

イラン問題の制裁で一時、米企業からの半導体調達を断たれた中国通信機器大手、中興通訊 (ZTE) は経営危機に直面、自国内の産業基盤の弱さを露呈した。 今月には通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の首脳がカナダで逮捕され、同社製品を排除する動きが日本やオーストラリアに広がる。 「保護主義が中国に自力更生の道を歩むよう迫っている。」 習国家主席は 9 月、自力で困難を克服すると強調した。

ただ半導体は米中のハイテク分野の覇権争いを左右する敏感な分野だけに、鴻海と珠海市の計画は波乱も予想される。 国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の調べでは、半導体の製造に必要な装置の中国市場の規模は82億ドルと日本を上回る世界3位。18年には台湾を抜き世界2位になる見通しだ。ただ同分野では日本や米国など海外メーカーが圧倒的に強く、中国の地場企業は育っていない。

世界最大手のアプライドマテリアルズ (AMAT) などの米装置大手が中国向けの販売に及び腰となれば、工場立ち上げに支障がでかねない。 台湾の半導体大手幹部は「日欧の装置メーカーは今は中国に協力的だが、米国から圧力がかからないか懸念している」と話す。 稼働にこぎ着けても米顧客が中国産の半導体の導入を拒む恐れもある。

今回の計画で製造品目については検討中だが、すべてのモノがネットにつながる「IoT」機器向けのロジック系半導体の生産が主体となるもようだ。 鴻海やシャープが外部委託している半導体の製造を新工場に移す。 シャープが 8K テレビに搭載した自社開発の画像処理用チップなども対象になる。 自社生産でグループ内に収益を囲い込むとともに、他社から半導体を受託生産するファウンドリー事業も展開する見通しだ。 (台北 = 伊原健作、中村元、nikkei = 12-21-18)


シャープ「世界の亀山」液晶工場が陥った窮状

液晶テレビ「アクオス」の生産拠点として 2004 年に稼働して以降、一時代を築いた "世界の亀山" ことシャープの亀山工場(三重県・亀山市)。 テレビ事業が大幅に縮小してからも、生産ラインを一部売却し、スマホやタブレット向け中小型パネルの生産に乗り出すなど、形を変えながら存続してきた。 だが昨今、シャープを買収した台湾・鴻海精密工業が進める " 分業体制" により、亀山工場の稼働率が大きく下がっていることがわかった。

12 月初旬、三重県の労働組合「ユニオンみえ」など計 4 団体が厚生労働省で記者会見を開いた。 ここで明らかになったのが、亀山工場に勤務していた外国人の派遣労働者約 3,000 人が、シャープの 3 次下請けにあたる人材派遣会社ヒューマンによって、昨年末から今年 10 月にかけての短期間で雇い止めされていたことだ。

大量採用直後に一転、雇い止めが続出

雇い止めの対象になった労働者が、米アップルの iPhone 向け部品の生産に従事していたことから、「新型 iPhone 減産の影響か」とする報道もあるが、実態はやや異なる。 ことの発端は、2017 年に鴻海が米アップルの「iPhoneX」向け 3D センシングモジュールの組み立てを受注し、傘下のシャープがそれを受託したことにある。 同年から、亀山工場内では iPhone などスマートフォン向けなどのカメラ部品を中心とした電子部品を開発・生産してきた。 その中で、新型 iPhone の目玉機能ともいえる顔認証システムのセンサー部品生産に参入したとみられる。

新しいラインの垂直立ち上げに向け、シャープの 2 次下請けにあたる派遣会社は、3 次下請け企業を通じ、2017 年の夏以降に日系外国人コミュニティーから大量に人員を採用。 昨年 10 - 11 月頃には「時給 1,300 円」、「月収 37 万円」といった好待遇を提示し、一時は 4,000 人近い労働者を集めて人海戦術を繰り広げた。

だが状況が一変したのは、労働者を大量採用してからわずか数カ月後の昨年 12 月ごろ。 「安定した職があると約束されて、友達と一緒に三重県に来たのに、12 月ごろ一気に 400 人がクビになった。(今年 9 月に雇い止めされ、会見に出席した元労働者のスズキ・ファビオラさん)」 そもそも 3D センターモジュールは製造工程が複雑で、歩留まりが低迷していた。 シャープ関係者によれば、鴻海と、傘下の台湾タッチパネルメーカー GIS (業成)の責任者が亀山工場に赴き、陣頭指揮にあたったという。

そんな中、鴻海が中国にある GIS の工場へ生産を移管すると決めたのだ。 その理由は不明だが、なかなか立ち上がらない生産を見かねた鴻海が、見切りをつけた可能性はある。 「(鴻海の)テリー・ゴウ会長が、亀山の歩留まりが上がっても日本国内では割に合わないと判断したのかもしれない。(みずほ証券の中根康夫シニアアナリスト)」

ヒューマンの説明によれば、最終的に今年 10 月までに 3,000 人弱が離職した。 ただ、三重県庁の雇用対策課担当者によれば、シャープ側は県庁に対して今年 3 月に 500 人、7 月に 250 人の計 750 人が離職したと説明しており、離職者数に大きな食い違いがある。 センサー部品の企画・開発は亀山で続いているというが、生産ラインはいまだ空いたまま。 同工場では iPhone 向けの液晶パネルも生産しているが、新モデルの減産により今期は苦戦する可能性が高い。 亀山工場の稼働率は激減するもようだ。

シャープ生産の海外移管が止まらない

鴻海がシャープの買収を決めた理由は、主力である EMS (電子受託製造)のパイ拡大と、同社が持つ技術力である。 コスト競争力のないシャープの国内生産を、鴻海グループの拠点も含めた海外工場へ移管することは買収時からの既定路線だった。 一部の液晶パネルの生産はすでに順次、鴻海や傘下のイノラックスの拠点へと移管が進んでいる。 さらに 2018 年末までに栃木・矢板工場がテレビ生産から、2019 年 9 月には大阪・八尾工場での冷蔵庫生産からの撤退も予定されている。

そのうえでシャープは、付加価値の高い技術の開発と、最終製品のブランド力向上に努めるというのが、鴻海傘下でのシャープ再生の筋書きである。 グループ内での生産最適化といえば聞こえはいいが、「何の生産をどこに移すかを決めるのは鴻海であり、シャープ側に拒否権はないのが実情だろう。(シャープに詳しい DSCC アジア代表の田村喜男氏)」

液晶に注力する戦略を打ち出した町田勝彦・シャープ元会長は、かつてこんな言葉を残している。 「生産技術はいわば老舗うなぎ屋の秘伝のタレみたいなものだ。 自前でコツコツ積み上げていくものである。 しかし、モノを作らなければ生産技術は進化しない。 せっかくつくりあげた秘伝のタレは本来、門外不出だからこそ商売になるはずだ。 安易な海外移転は秘伝のタレをやすやすと分け与えているようなものである。」 鴻海傘下でシャープが歩む道は、この教えの真逆を行くものだ。

シャープの雇い止め対応は「不十分」

工場が立地する地方自治体も悲痛な声を上げる。 亀山工場のおひざ元、三重県庁では、すでに人員削減が始まっていた今年 3 月と 7 月にシャープから事情説明を受け、雇い止め対象者に対して十分な説明をすること、再就職にあたって十分なフォローをするよう求めてきたが、「対応は十分ではなかったようだ。(三重県雇用対策課)」

大量の労働者が突如、職を失ったことで、地元のハローワーク鈴鹿には 2 月ごろから大量の求職者がなだれ込んだ。 日本語が話せない人が多く、ポルトガル語やスペイン語の通訳を用意して対応。 ピーク時には、1,000 人近くの対応に追われたという。 ハローワークのある職員は、「あくまでも私見だ」と前置きをしたうえでこう嘆く。 「日本企業だったときは地域の利益になることを、という思いがあったかもしれないが、鴻海が買収してからは変わってしまった。 外資系企業だから、契約第一、自社の利益第一主義なのでしょう。」

亀山工場は、地域経済の活性化と雇用創出効果を狙って、三重県と亀山市が合計 135 億円もの補助金を支給して誘致した。 だが、シャープが直接雇用する従業員数はここ数年は 2,000 人前後で安定しており、今回のような急な受注増減の調整弁を担うのは、県内への非定住者も多い外国人労働者というのが現実だ。 現在生産されている中小型液晶やテレビなども海外移管の対象となる可能性はあり、工場撤退の X デーにおびえる日々を送っている。

2017 年度には、前年度の 248 億円の最終赤字から一転、700 億円超の過去最高純益をたたき出したシャープ。 鴻海や、鴻海出身の戴正呉社長による改革の成果が出ていることは事実だ。 だが「秘伝のタレ」を分け与えた結果、鴻海への依存度は良くも悪くも高まる。 さらに、日本以外では知名度が高くないシャープをブランド化するハードルも高い。 「シャープ復活」を断言するのは、まだ早急だ。 (東洋経済 = 12-19-18)


シャープ、テレビ「爆安販売」で直面した誤算

中国でブランド価値低下、戦略転換迫られる

「60 インチで 6,688 元(約 10 万 7,000 円)? あれ、意外と高いですね。」 中国・上海に住むある 20 代男性は、買い物でよく利用する EC サイト「京東 (JD.com)」でシャープ製のテレビを商品検索して驚いた。 中国でシャープのテレビは、"日本製にしては格安のブランド" として認識されている。 だが、11 月下旬に久々に価格を調べたところ、数カ月前に見たときよりも数割高く感じたのだ。

これは男性の思い違いではない。 シャープは今、2017 年度から本格的に推し進めてきたテレビの価格戦略を抜本的に見直している。 シャープの中国テレビ事業といえば、2016 年度までマイナス成長だった同社のテレビ・パネル関連事業を一転、2017 年度に前期比約 3 割増の売上高 1 兆 865 億円にまで押し上げた立役者だ。 だが、今年 10 月 30 日には 2018 年度の売上高予想を約 2,000 億円も下方修正する事態に追い込まれた。 原因は複数あるが、1 つは中国テレビ事業だ。 シャープの成長ドライバーに、いったい何が起こっているのか。

「質より量」から「量より質」へ

「これからは、量だけでなく質も追う。 OK? 一生懸命に売れば売り上げは大きくなるけれど、利益がないと株主(の期待)に応えられない。 これが、私が幹部たちに要求することだ。」 今年 6 月中旬に開催された株主総会での質疑応答中、シャープの戴正呉会長兼社長は強い口調でこう断言し、社員たちを驚かせた。 中国市場でのテレビ格安販売を中止したシャープは、今後高付加価値路線に変更するという。

"投げ売り" のような販促の結果、2017 年度にはシャープから富連網への販売額が 585 億円(前期比 35% 増)と急成長。 300 万人を超える会員 ID も手に入れた。 鴻海グループ従業員の家族や知人、自社社員寮を含めた大規模集合住宅やホテルへの積極営業など、まさしく人海戦術による販売も効いた。 これだけ格安販売をしてもシャープが大赤字になるどころか、利益を上げられたのは、富連網が在庫管理を引き受け、値引きコストを負担していたからだ。

鴻海がコストを切り詰め始めた

だが、ここに来て鴻海側の姿勢に変化が生じた。 2017 年度の純利益は約 1,387 億台湾ドル(約 5,086 億円)で、前期比約 7% 減少。 今年に入ってからは、収益の柱である iPhone の製造受託事業の下振れや米中貿易摩擦などの影響で、大幅な経費削減に踏み切るとの報道もある。 天虎計画もその対象だとみられる。 電機業界に詳しいみずほ証券の中根康夫シニアアナリストは「鴻海精密工業の業績が伸び悩む理由の 1 つには、天虎計画への支援負担も含まれるだろう。 鴻海グループ全体では累積 1,000 億円を超える損失が出ている可能性もある。」と推測する。

さらに、格安販売を続けたことによるブランドの毀損も深刻だ。 戴社長が従業員向けに 10 月 30 日付で出したメッセージにはこう書かれていた。 「足元では(中国テレビの)この価格重視の事業展開が想定を超える事業イメージの低下を招き、結果的に白物家電事業をはじめとしたさまざまな事業を本格展開するうえで、大きなハードルとなっていることも事実です。」 実際、消費者からは「シャープは日本メーカーなので高品質というイメージはあるが、少しお金を持っている中産階級は、ソニーや松下(パナソニックのこと)のテレビを選ぶだろう(中国・武漢市在住の 20 代男性)」という声も聞こえる。

これを受け、9 月 22 日には戴社長自らが中国事業の CEO に就任にして陣頭指揮を取る態勢に変更。 同 27 日には、中国・深センでメディアやディーラーを集めた会を開き、高付加価値化による中国市場再構築の決意を表明。 同時に、高価格帯のテレビとして、8K 対応液晶テレビと、インターネットに接続できる AI スマートテレビという 2 種類の新シリーズを発表した。 その反面、格安販売してきた従来モデルは意図的に販売を抑制する。 これが、2018 年度の売上高下方修正の一因だ。

これまで派手なセールなどでテレビを全面的に押し出していた「富連網」のサイト上も大きく変化。 「ヘルシオ」ブランドの電子レンジや空気清浄機などの家電製品を中心とした売り出し方に変更し、液晶テレビのページにはわずか 11 製品しか掲載されておらず、寂しい印象だった。 今後は、「富連網を一代理店として、販売網を再構築していく(戴社長)」という。

安売りイメージをどう払拭するか

だが、一度安売りのイメージがついたブランドを磨き直すのは容易ではない。 シャープは 2017 年 10 月、どの市場よりも早く中国で、日本円にして 100 万円超の 8K 対応液晶テレビを発売したが、「売れ行きについては言及できない(会社側)」という。 ソニーは、かつて平面ブラウン管テレビで一世を風靡したものの、薄利多売路線に走り 2004 年以来テレビ事業の赤字が続いた。 2012 年に台数を追わない高付加価値戦略に切り替えたが、営業黒字化するのにさらに 2 年を費やした。

シャープの場合はソニーと異なり、海外ではブランドとしての認知が進んでいるとは言いがたい。 さらに同社は、今年栃木のテレビ組み立て工場や大阪の冷蔵庫工場を閉鎖し、海外に移管すると発表するなど、鴻海の海外拠点を利用した生産体制に移行している。 日本の家電に価値を置く中国の消費者が、シャープをどう評価するかも未知数だ。

9 月 27 日に中国・深センで開催された記者会見で、戴社長はシャープをゴルフ選手のタイガー・ウッズ氏になぞらえてこう語った。 「彼(ウッズ選手)はさまざまな失敗や挫折を経験し、刑務所にも行った。 しかし、苦しい時代を乗り越えて 5 年ぶりに全米プロゴルフ選手権で優勝した。 シャープも 5 年間苦しい時期があったが、2016 年度に営業黒字化し、2017 年には東証 2 部から 1 部に復帰した。 これは日本の奇跡だ。」

確かに、シャープの業績の急回復ぶりは目覚ましいものがあるが、「天虎計画」のほか、流通コストの削減や部材の共同調達など、鴻海のバックアップによるところが大きい。 ただ、ブランド価値を高めるにはシャープ自身の戦略が必要だ。 電機業界の "タイガー・ウッズ" になるためには、もう一段高いハードルを越えなければならない。 (印南 志帆、東洋経済 = 12-6-18)

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中国のテレビ販売、急ブレーキ シャープが戦略変更へ

シャープは 30 日、2019 年 3 月期の売り上げ目標が達成できない見込みだと発表した。 当初予想から 2,000 億円引き下げ、2 兆 6,900 億円になりそうだという。 業績を引っ張った中国のテレビ販売が不振となったのが主因で、戦略の見直しを余儀なくされた。 シャープは 18 年 3 月期からの 3 カ年計画で、19 年 3 月期に売上高 2 兆 8,900 億円を目標に掲げていた。 最終年度の 20 年 3 月期には 3 兆 2,500 億円をめざしていて、目標は「今のところ変えない(野村勝明副社長)」という。

中国のテレビ事業でシャープは、親会社・鴻海(ホンハイ)精密工業(台湾)の販売網を利用して販路を拡大。 だが、大量に売りさばこうとするあまり、価格下落を招いた。 テレビや液晶パネルの部門の売上高は 18 年度上半期に前年比 12.1% 減で、シャープ内の 4 部門のうち唯一のマイナスとなった。 下期は戦略を切り替え、中国市場で高価格帯のテレビを中心に展開していく。 (岩沢志気、asahi = 10-31-18)


シャープ、国内の白物家電生産ほぼ撤退へ 栃木や八尾も

シャープは、国内生産体制を見直す。年内に栃木工場(栃木県矢板市)のテレビ生産を、来年度中には八尾工場(大阪府八尾市)の冷蔵庫生産を打ち切る。 国内生産は、液晶パネルや半導体などの部品が大半になる。 栃木工場では、テレビの開発や試作、次世代テレビの「4K」、「8K」の組み立てを行っていた。 これらを中国やマレーシアなど海外か亀山工場(三重県亀山市)に移し、物流や保守サービスの拠点にする。

従業員約 660 人が勤務しているが、研究開発職は堺市や千葉県などの拠点に異動させる。 生産ラインで働く従業員は国内の別の工場に配置転換する。 亀山工場では、液晶パネル生産とテレビの組み立てを、当面維持する。 昨年 3 月には国内でのテレビの組み立てから撤退する方針を示していたが、コストの見直しなどで維持できるか、引き続き検討している。 国内では現在、2 工場で年間数十万台を生産している。

一方、八尾工場の冷蔵庫生産は、タイに移す。 現在は、国内販売分として、年 20 万 - 30 万台つくっている。 洗濯機やエアコン、電子レンジなどの生産はすでにやめており、今後は業務用照明の生産や、白物家電の研究開発拠点とする。 八尾工場で働く約 1,600 人の従業員の大半は、別の工場に配置転換する。

白物家電の生産は、人件費が安い海外に順次、移してきた。 ただ、冷蔵庫は重くかさばるため、物流コストを考慮して、国内生産を続けていた。 アジアに物流網を築いている鴻海精密工業(台湾)の傘下に入ったことで、物流コストを抑えるめどが立った。これにより、シャープの国内での白物家電の生産は、ほとんどなくなる。

シャープは鴻海の傘下入り後、国内工場の再編に取り組んできた。電子部品をつくる三原工場(広島県三原市)は近くの福山工場(同県福山市)に集約。 スマートフォンをつくっていた広島工場(同県東広島市)は縮小し、商品開発拠点となった。 家電生産は海外に移し、国内は研究開発や、液晶パネル、半導体など付加価値の高い部品生産に集中する。 (岩沢志気、asahi = 8-3-18)