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泊原発 3 号機の再稼働、北海道知事が容認表明 国内で最も新しい原発

北海道の鈴木直道知事は 28 日、原子力規制委員会の安全性に関する審査を通った北海道電力泊(とまり)原発(北海道泊村) 3 号機について、道議会で「原発の活用は、当面取りうる現実的な選択と考えている」と述べ、再稼働を容認した。 理由として、再稼働することで、▽ 電気代が下がる、▽ 温室効果ガスが減ると見込まれる、▽ 地元自治体が再稼働に同意している - - ことなどを挙げた。

泊原発再稼働「容認」の理由 背景に「脱炭素」需要や火力リスク低減

今後、泊村や原発の視察、道議会での議論を経て、来月上旬にも正式に同意する見通し。 北電が「2027 年の早期」をめざす再稼働が、大きく進むことになる。 東日本の原発で知事が再稼働を容認したのは、東北電力の女川(宮城県)、東京電力の柏崎刈羽(新潟県)に続く。 国内の原発でもっとも新しい泊 3 号機は、09 年に営業運転を始め、定期検査で 12 年から停止中。 北電は 13 年に規制委に審査を申請し、今年 7 月にパスした。

原発の再稼働には「地元の同意」が必要とされ、国は 8 月、道と、立地・周辺の 4 町村に同意を要請。 今月に入り、泊村の高橋鉄徳村長を皮切りに神恵内(かもえない)村の高橋昌幸村長と共和町の成田慎一町長も、議会で相次ぎ同意を表明し、残る岩内町の木村清彦町長も近く同意する見通しだ。 一方で鈴木知事はこれまで、「道議会や道民のみなさんの意見をふまえて総合的に判断したい」と、態度を明らかにしていなかった。

北電は、新しい防潮堤が完成するなど必要な安全対策工事を終える 27 年中に再稼働させたい考えだ。 火力発電の燃料費が減ることで収支が年間 600 億円改善するうえ、最大震度 7 を観測した胆振(いぶり)東部地震(18 年)により道内全域で大規模な停電(ブラックアウト)を起こしたこともあり、発電所を多く確保したいからだ。 加えて次世代半導体メーカー「ラピダス」の北海道・千歳工場の本格稼働が 27 年内をめざしていることも念頭にある。

「平均的な使用量の家庭」だと 9,335 円(11 月分)と全国でもっとも高い水準になっている道内の家庭の電気代も、再稼働すれば月額で約 1 千円(約 11%)安くできると PR する。 一方で、22 年には札幌地裁が津波対策の不備を理由に運転差し止めを命じる判決を出し、訴訟は札幌高裁で審理が続いている。

「泊スペシャル」で進められた審査

北海道電力は、泊原発 3 号機の再稼働に向けた主要な審査に 12 年を要した。 他社の原発が次々と再稼働する中、審査が長引いた背景には、北電の度重なる誤算があった。 東京電力福島第一原発の事故をふまえた新規制基準が 2013 年 7 月に施行されると、北電はその日に、関西、九州、四国の各電力とともに原子力規制委員会に審査を申請した。 福島第一とは異なる炉型で、早期の再稼働を見込んだ。 同時期に申請した 3 社の 5 原発は数年で審査を終え、九電川内原発(鹿児島県)を皮切りに、18 年までにすべて再稼働した。 一方で、泊原発の審査は足踏みが続いた。

北電にとって、最大の誤算は敷地内を走る断層だった。 12 万 - 13 万年前以降に動いたことが否定できなければ、活断層とみなされる。 北電は断層の上に約 20 万年前に積もった火山灰の層があるとして活断層ではないと主張。 これに対し、規制委は立証方法が「科学的に到底認められない」として退けた。 その際、規制委は北電に専門性のある人材が足りないことを指摘した。 これを受けて北電は社外からの応援を得て追加の証拠を集め、規制委は 21 年 7 月にようやく主張を認めた。 規制委はその後、「泊スペシャル」と称して手取り足取りで審査を進める異例の対応をとった。

山中伸介委員長は 7 月の会見で、北電について「能力うんぬんと言われる方もいるが、むしろ会社の大きさやリソースの問題はあるが、必ずしも能力がない会社とは考えていない」と話した。 泊原発では今、防潮堤の建設工事が進む。 いちど東日本大震災後に建てたが、規制委から液状化で沈下の恐れがあると指摘され、建て直すことになった。 27 年 3 月までに高さ 19 メートル、長さ約 1.2 キロの防潮堤を完成させる計画だ。

旧防潮堤を含む津波対策について、22 年 5 月には札幌地裁が「安全性の基準を満たしていない」と判断し、運転の差し止めを命じる判決を言い渡した。 判決では、提訴から 10 年以上を経ても、防潮堤などの安全性の主張や立証を終えなかった北電側の対応を批判した。 審理は札幌高裁で続いている。 (上地兼太郎、大滝哲彰、小川裕介、asahi = 11-28-25)


新潟知事、柏崎刈羽原発の再稼働容認を表明 東電が事故後初の運転へ

東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)について、花角(はなずみ)英世知事は 21 日午後 4 時から県庁で記者会見し、再稼働を容認すると表明した。 知事は会見で「新潟県は了解することとする」と言及。 その前提として、原発の安全性を丁寧に説明することや、避難道路整備の方針を早期に決定するといった国の対応を確認する、とした。 この判断について、県議会で「今後知事の職務を続けることについて、県議会の信任または不信任の判断をいただきたい」と説明。 「信任できないと判断するなら辞めたい」と述べた。

次の定例会は 12 月 2 日に始まる。 議会では再稼働を推進する自民党が単独過半数を占め、信任される公算が大きい。 信任されれば、国に再稼働への理解を伝える。 柏崎刈羽原発が立地する柏崎市と刈羽村の首長は再稼働に理解を示しており、原発再稼働に必要とされる「地元同意」の手続きは年内にも終わる見通しだ。 2011 年の福島第一原発事故を起こした東電が、事故後初めての原発運転を、今年度中にも再開することになる。

再稼働は東電再建の核

東電にとって柏崎刈羽原発の再稼働は経営再建の核だ。 福島事故の賠償や廃炉にかかる費用は、現時点で計 23.4 兆円にのぼり、うち東電は 16 兆円超を負担する。 今後も膨らむ可能性が高いが、電力自由化による顧客の流出などで経営は下降線をたどる。 東電は原発が 1 基動けば火力発電の燃料費が浮くため年 1 千億円の収支改善効果があるとし、その分を事故処理費用に充てる算段だ。 東電は同原発 6 号機を再稼働させたのち、7 号機も動かす方針だ。 1、2 号機は廃炉を検討する。 東電幹部は「再稼働できなければ経営はやがて行き詰まる」と話す。

国も同原発の再稼働に向けて力を注いできた。 政府が 2 月に閣議決定したエネルギー基本計画(エネ基)で、原発を「最大限活用する」と明記。 「依存度を可能な限り低減する」とした東日本大震災後の政策を大きく転換した。 背景には、電源構成の 7 割を火力発電に頼ることへの危機感がある。 ロシアによるウクライナ侵攻後、化石燃料の世界的急騰を受けて国内で電気料金が高騰した。 AI (人工知能)などの普及に伴い、大量の電気を使う半導体工場やデータセンターの建設が相次ぎ、2050 年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標も掲げ、脱炭素社会の実現にも原発が欠かせないとする。

朝日新聞が 2023 年に実施した世論調査で、原発の再稼働への「賛成」が半数を超えるなど、世論の変化も後押しした。 エネ基では 40 年の電源構成に占める原発の割合を 2 割と、現状の約 2 倍にする目標を掲げた。 だが、震災前に 54 基あった原発は 21 基の廃炉が決まり、再稼働も 14 基にとどまる。 標達成には建設中も含めた 36 基のほぼ全てを動かす必要がある。

事故の当事者、問われる「適格性」/b>

東電が柏崎刈羽原発の再稼働の前提としてきたのが、事故を起こした福島第一原発の廃炉と福島の復興だった。 だが、廃炉は計画通り進んでいない。 1 - 3 号機には、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)が推計 880 トン残る。 昨年から試験的な取り出しが始まり、ようやく計 0.9 グラムを採取した。 目標とする 51 年までに廃炉を完了させる計画は達成が困難な状況にある。 事故では大量の放射性物質が拡散。 中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)では、汚染された土壌などを取り除いて出た約 1,420 万立方メートルの「除染土」が保管されている。

事故を起こした東電に対し、原子力規制委員会は柏崎刈羽 6、7 号機の再稼働に向けた審査で、東電に原発を動かす「適格性」があるのかを問うた。 「安全性より経済性を優先することはない」などと約束させ、法的拘束力のある保安規定に明記させる異例の対応をとった。

事故の当事者の運転を許す意味 編集委員・佐々木英輔の視点

東京電力による原発の運転が現実味を帯びてきた。 新潟県知事が同意の方針を表明したことで柏崎刈羽原発の再稼働は秒読み段階に入り、年明けにも原子炉が動き出す可能性が高まっている。 柏崎刈羽原発の再稼働は、地元の問題にとどまらない。 原発回帰の流れが強まるなか、原発の最大限活用にかじを切った政策転換とともに、福島第一原発事故を経験した日本社会にとって、歴史的な転換点になる。 何より東電は、事故を起こした一番の当事者だ。 トラブル隠しやデータ改ざんなど不祥事を繰り返したうえ、自然災害対策を軽視した末に最悪の事態を招いたのが、あの事故だった。

津波想定は過小で、浸水時や事故時の対応も整っていなかった。 多くの住民が避難を迫られ、一時は東日本壊滅の危機も想定された。 その状況でも、炉心溶融の公表が遅れるなど、情報を出し渋った。 汚染で使えない土地はいまだ広く存在し、壊された地域社会は元に戻らない。 事故炉は溶け落ちた核燃料の取り出しもままならず、負の遺産として残り続ける。 原発は、それだけ潜在的な危険を抱えているものだ。 だからこそ、安全に扱える組織なのかが問われる。 事故後の東電にその資格があるかは繰り返し議論になってきた。

しかし事故の 10 年後にテロ対策の不備が発覚したことをみても、事故の背景になった体質が根本から改まったとは言い難い。 地元の懸念も根強く、新潟県の意識調査では、東電による運転が心配との回答が 7 割を占めた。 花角英世知事も21日の記者会見で「現状でもなお県民の信頼性はなかなか回復していない」と述べた。事故時の避難をめぐる不安も尽きない。 適格性を認めた原子力規制委員会の審査には限界がある。 基準を満たせば再稼働を認める前提でつくられた国の組織。 技術面の審査と違って組織風土を評価するのは難しく、改善がみられて明らかな問題がないなら、止め続ける理由がなくなるからだ。

規制委は、特別な審査の末に、自主的な安全性向上などの「七つの約束」を取りつけ、東電の適格性を認めた。 その後にテロ対策の不備が発覚。 事実上の運転停止命令を出したものの、今後も確認を続ける前提で 2 年 8 カ月後には解除した。 審査を通っていても、事故のリスクはゼロにならない。 だからこそ、常に安全の向上を図る努力が求められる。 ただ、関係者が真面目に取り組んでいるように見えても、どこかに大きな落とし穴が潜んでいることがある。 これも事故の教訓だった。

そもそも、東電が再稼働をめざす枠組み自体、問題を抱える。 発電で利益を上げることで、事故の後始末の費用をまかなう。 そんな前提で東電は存続してきた。 「福島への責任貫徹と安定供給は使命。」 東電はこう繰り返している。 国策のもと、首都圏の電気のために原発立地地域に負担を強いる構図は、事故前と変わらない。 引き換えに、東電が 1 千億円の地元支援を打ち出すなど、着々と外堀が埋められていった。 事故から 15 年近くが経つ。 時の流れとともに、事故の記憶や原発への関心も薄れつつある。

あのとき、日本の誰もが当事者になり、被害の大きさを思い知った。 「安全最優先」、「生まれ変わった姿を示す」と東電は言うが、何度も安全と再生を誓いながら事故を起こした歴史が消えることはない。 このまま東電の運転を許すことになるのか。 もし事故が起きたら、東電や国、政治家のみならず、社会は再稼働を容認した責任を負えるだろうか。 事故を招いた経緯と、もたらされた結果を改めて直視し、厳しい目を注ぎたい。 (西村奈緒美、新田哲史、小川裕介、編集委員・佐々木英輔、asahi = 11-21-25)


九電川内原発、使用済み燃料の乾式貯蔵施設建設へ 29 年度運用開始

九州電力は 24 日、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の敷地内に、使用済み核燃料を一時保管する「乾式貯蔵施設」を建てると発表した。 2027 年度に着工、29 年度をめどに運用開始をめざす。 九電では玄海原発(佐賀県玄海町)に続く 2 カ所目になる。 同日、原子力規制委員会に設置許可を申請。 鹿児島県と薩摩川内市にも安全協定に基づき、事前協議書を出した。 貯蔵容量は使用済み核燃料 560 体分。 事業費は約 350 億円を見込む。

乾式貯蔵施設は、燃料プールで冷却後の使用済み核燃料を「キャスク」と呼ばれる金属製の容器に収納し、循環する空気で冷やして保管する。 九電によると、川内原発 1、2 号機のプールの貯蔵量は今年 9 月末時点でいずれも 7 割以上。 使用済み核燃料は青森県の再処理工場に運ぶ予定だが、工場は完成延期を重ねている。 今の状態が続けばプールが満杯になり、32 年には運転が出来なくなるという。 九電は今年 5 月に玄海原発で乾式貯蔵施設の建設を始めた。 四国電力の伊方原発などでは運用が始まっている。 (松本真弥、asahi = 10-24-25)


昨年再稼働の女川原発、来年 12 月から再び停止へ テロ対策工事遅れ

東北電力は 17 日、昨年 10 月に再稼働した女川原発(宮城県女川町、石巻市) 2 号機について、来年 12 月から運転を停止する見通しだと発表した。 東京電力福島第一原発事故後にできた新規制基準に基づき、テロ対策施設を同月 22 日までに完成させないと翌日以降は運転を続けられないが、工事が間に合わなくなったという。

規制委が定めた新規制基準は、原子炉建屋への航空機の衝突といったテロに備え、建屋のバックアップ施設にあたる「特定重大事故等対処施設(特重)」の設置を義務付けている。 2 号機は再稼働にあたり、2020 年 2 月に規制委の審査をパスした。 規制委のルールで特重はなくてもいったんは運転できるが、21 年 12 月 23 日に受けた原発本体の工事計画認可から 5 年後の来年 12 月 22 日までに設置する必要があった。 東北電は、建設業界の働き方改革で工事作業員の労働時間を十分に確保できなかった、としている。 見直した工事完了時期は 28 年 8 月とし、それまでの約 1 年 8 カ月間は運転を停止する。

2 号機の停止後は火力発電の出力を上げることで電力を補うとしており、その結果、ひと月あたり約 60 億円分の費用がかさむと試算している。 東北電の青木宏昭・原子力本部長は会見で、「経営面への影響は大きい。 地域からも安定的な運転を求められている中での計画外の停止となり、重く受け止めている。」と話した。 電気料金への影響については「変わらないよう努力する」と述べた。

工期長期化、各地の原発でも

一方で東北電力を含む原子力産業の業界団体は、テロ対策施設の設置期限による原発の運転停止を免れようと動いている。 業界団体は 9 日にあった原子力規制委員会の会合で、設置期限について、原発本体の工事計画認可後「5 年」から「8 年」に 3 年延ばすよう求めた。 工期が長期化しているためだという。 要望を受け、規制委は近く延長の必要性について議論を始める。 業界団体は、工事が長引く要因として建設業界の環境変化を挙げた。 就業者の減少や高齢化に加え、時間外労働の上限規制が設けられたことで、最大 2 年 9 カ月の工期延長が見込まれると説明した。

東北電の青木宏昭・原子力本部長は「人手不足、働き方改革は他律的な要因で、私どもの努力ではいかんともしがたい。 なんとか見直しをお願いしたい」と訴えた。 規制委の山中伸介委員長は 15 日の会見で「(期限を)延ばすほどの他律的要因かと言われると、私自身はそのように感じられなかった」と述べた。 業界側は、19 年にも工事が当初の想定より困難だとして期限の延長を求めたが、規制委は認めなかった経緯がある。

テロ対策施設は、大型航空機による衝突のような非常時にも遠隔で原子炉を冷やせる機能が求められている。 東京電力福島第一原発の事故後、新規制基準で設置が義務づけられた。 基準の導入から 5 年以内だった設置期限は、電力業界の要望を受けて審査終了から 5 年以内に先延ばしされた。

電力各社は 19 年、工事が間に合わないとして、さらなる期限延長を求めたが、規制委は認めなかった。 九州電力川内(せんだい) 1、2 号機(鹿児島県)や玄海 3、4 号機(佐賀県)、関西電力美浜 3 号機などが運転停止に追い込まれた。 東京電力も完成が期限に間に合わないため、柏崎刈羽 7 号機(新潟県)の再稼働を当面断念した。 (大山稜、小川裕介、asahi = 10-17-25)


東電、柏崎刈羽原発 1・2 号機の廃炉検討 社長が新潟県議会で説明

東京電力ホールディングスは 16 日、柏崎刈羽原発(新潟県、全 7 基)の 1、2 号機の廃炉を検討する方針を明らかにした。 東電は 6、7 号機の再稼働をめざしており、その条件として地元自治体が 1 - 5 号機のうち 1 基以上の廃炉を求めていた。 廃炉が正式に決まれば同原発では初めて。 小早川智明社長がこの日、同原発の再稼働について議論する新潟県議会に参考人として出席し、説明した。

東電は原子力規制委員会の審査を通過した 6、7 号機のうち、まずは 6 号機の再稼働をめざしている。 ただ、再稼働に必要な県の同意は得られておらず、同原発がある同県柏崎市からは、集中立地のリスクを軽減するため、規制委の審査を申請していない 1 - 5 号機のうち、1 基以上の廃炉計画を明確化するよう求められていた。 1 号機は営業運転の開始から 40 年が経過し、全 7 基で最も古い。 2 号機も 35 年が経つ。 東電はこれまで 1 - 5 号機について「廃炉を含む最適な電源構成の道筋を確実につける」としてきたが、今回、廃炉の検討方針を初めて具体的に示した。 (森下友貴、asahi = 10-16-25)

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東電、柏崎刈羽原発の一部廃炉検討を表明へ 再稼働に向け地元求める

東京電力ホールディングスが、柏崎刈羽原発(新潟県、全 7 基)のうち、1 - 5 号機の一部の廃炉を検討していることが分かった。 東電は 6、7 号機の再稼働をめざしているが、その条件として地元自治体が 1 基以上の廃炉を求めていた。 関係者が明らかにした。 同原発の再稼働には、県の同意が必要だが、花角英世知事は態度を明らかにしていない。 また、原発がある柏崎市の桜井雅浩市長は、集中立地のリスクを軽減するため 1 基以上の廃炉計画の明確化を求めていた。

東電は 1 - 5 号機について「廃炉を含む最適な電源構成の道筋を確実に付ける」としてきたが、一歩踏み込んだ形で廃炉の検討を進める。 小早川智明社長は 16 日に新潟県議会に参考人として出席する予定で、こうした考えを表明する見通しだ。 東電は原発が 1 基動くと年 1 千億円の収支改善効果があるとする。 福島第一原発事故の賠償や廃炉の費用を抱える東電は、柏崎刈羽原発の再稼働を経営再建の柱に位置づける。 ただ、今月初めに県が公表した県民意識調査の中間発表では、再稼働に対する意見が容認と反対で二分されている現状が浮き彫りになった。

こうしたことから、東電は地元の理解を得るための動きを加速。 廃炉検討の表明もその一環とみられる。 東電はさらに地域貢献策として計 1 千億円規模の資金を拠出する方針も表明する。 県がつくる基金に積み立て、県内での成長が期待される防災産業や脱炭素化事業などに使えるようにし、雇用創出のメリットなどを強調する。

一方、福島事故を起こした東電が原発を運転することに対する不安の声は根強く、こうした懸念をいかに払拭していくかも東電にとって大きな課題だ。 東電関係者は「信頼確保は地道に行うしかない。 原発が動かなければ会社としてはおわってしまう」と話した。 桜井市長は 9 日夕、朝日新聞などの取材に応じ、「東電からの連絡はない」としたうえで、「(報道が)事実であれば、6 号機の再稼働を前に、私との約束を誠実に履行していただけるということで評価をさせていただきたい」と語った。 (森下友貴、戸松康雄、asahi = 10-9-25)

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東電、新潟県の基金に 1 千億円拠出へ 柏崎刈羽原発の再稼働にらみ

東京電力ホールディングスは、再稼働をめざす柏崎刈羽原発が立地する新潟県に対し、地域貢献策として資金を拠出する方針を固めた。 計 1 千億円規模で調整しており、県がつくる基金に積み立てる。 お金は地域振興に充てられるようにし、再稼働への理解を求める。 関係者によると、東電は原発の稼働で得た利益を原資に、県の基金に積み立てる。 入金の頻度や使い道は今後、県と話し合う。 東電の小早川智明社長が 16 日に県議会に参考人として出席する予定で、こうした地域貢献策の説明を行うとみられる。

福島第一原発事故の賠償や廃炉の費用を抱える東電は、柏崎刈羽原発の再稼働を経営再建の柱に位置づける。 ただ、再稼働には地元の同意が欠かせず、花角英世知事の判断が「最後の関門」となっている。 そもそも柏崎刈羽原発が生み出す電力は首都圏に送られるだけで、地元では使われない。事故が起きた際のリスクを負う新潟県民にはメリットがないとの見方も根強い。

そのため県は、再稼働の是非を判断する材料として、地域への経済的なメリットがある貢献策を要望。 東電は屋内退避施設の整備への費用負担など安全面の貢献だけでなく、新たに資金的な貢献をすると 8 月末に示していた。 また、直近では政府も 8 月末には原子力関係閣僚会議を開き、原発の立地自治体への財政支援を手厚くする「原発立地特措法」の対象地域を、原発から 30 キロ圏内に広げることを決めた。 (森下友貴、asahi = 10-8-25)


高浜原発の乾式貯蔵施設、関電が着工・完成予定を 1 年後ろ倒しへ

関西電力は 10 日、使用済み核燃料を一時保管する「乾式貯蔵施設」について、2025 年に着工、27 年ごろに完成としていた高浜原発(福井県高浜町)の施設を 26 年着工、28 年ごろ完成へと 1 年後ろ倒しにしたことを明らかにした。 燃料の搬出先の一つである再処理工場(青森県六ケ所村)の審査状況の遅れを受け、関電がスケジュールを見直した。 県内の乾式貯蔵施設をめぐっては、福井県の杉本達治知事が、使用済み核燃料の主な搬出先として想定されている日本原燃の再処理工場について、日本原燃の原子力規制委員会への説明が終わるまで設置の是非に関する判断を先送りする方針を示している。

関電は 10 日、幹部が福井県を訪れ、再処理工場の審査状況を説明した。 地震の際の施設内での水漏れ対策などについて 11 月までの規制委への説明完了は難しいが、終了時期が大きくずれ込むことはないという。 説明終了後の検査体制や重大事故対応訓練などのやり方を工夫することで、26 年度中の完成目標に影響はないとした。 関電は日本原燃に追加で社員を派遣するなどして支援を行い、再処理工場の完成に全力を尽くす考えを示した。 (久保智祥、asahi = 10-10-25)


志賀原発運転差し止め訴訟 金沢で 3 次提訴へ「能登地震で危険大に」

石川、富山両県の住民が北陸電力に志賀原発 1、2 号機(石川県志賀町)の運転差し止めを求めている訴訟の口頭弁論が 22 日、金沢地裁(土屋毅裁判長)であった。 昨年の能登半島地震を受け、新たに 50 人超が 11 月ごろに提訴する方針という。 原告団が閉廷後の報告集会で明らかにした。 2012 年 6 月に提訴し、次は 3 次提訴となる。 昨年の地震で原発事故の危険性が高まったとして、福井県などから原告が集まる見込みという。

この日の口頭弁論では、原告側が重大事故時の避難計画には実効性がないと指摘。 昨年の地震で多くの道路が通行止めになり、原子力防災は破綻したと主張した。 北電は来年 1 月 19 日の次回期日までに反論を提出するとした。 また、原告の元中学校教師山本佳代子さん (62) が意見陳述に立ち、社会科教師として「日本のエネルギーと発電」について生徒らと考えた授業の経験を紹介。 「発電方法は環境への配慮と安全性を重視するべきだ」と訴えた。 志賀原発は 11 年から運転を停止している。 北電は 2 号機の再稼働をめざし、原子力規制委員会で審査を受けている。 (砂山風磨、asahi = 9-22-25)


女川原発 2 号機、機器交換で停止へ 不具合発見、昨年の営業運転後初

東北電力は 19 日、女川原発(宮城県女川町、石巻市) 2 号機について、原子炉を 21 日ごろから停止すると発表した。 原子炉格納容器内の水素濃度を検出する機器 2 台に不具合が見つかり、交換作業をするため。 原発を停止するのは昨年 12 月の営業運転再開以降で初めて。 東北電によると、同容器内の検出器 4 台のうち、5 月と 6 月に 1 台が異常値を示す不具合が起きた。 残る 2 台で監視ができたため、影響はないとして運転を続けた。

不具合の原因は不明で、2026 年 1 月の定期検査で点検する予定だったが、万全を期すため予定を前倒しして 4 台全てを交換する。 原子炉の停止から再起動までは 10 日ほどを見込むという。 検出器は新規制基準に基づき、安全工事の過程で 24 年 4 月に設置。 他の原発で同様の事象は把握していない。 交換する新しい 4 台は、不具合が起きたものと同じ設計のもので、東北電は「速やかに調達できることを重視した」と説明する。 (阿部育子、asahi = 8-19-25)


玄海原発で目撃のドローンのような光 初動対応で九州電力が改善策

九州電力玄海原発(佐賀県)でドローンのような光が目撃された問題で、九電は初動対応の改善策を原子力規制委員会に示した。 光の確認から規制委への通報まで時間を要したことから、通報までの時間の目安や緊急事態かどうかの判断基準を設ける。 九電などによると、7 月 26 日午後 9 時ごろ、玄海原発の正門付近で警備員 4 人が上空にドローンのような三つの光を見つけた。 光は約 2 時間にわたり断続的に確認されていたという。 ただ、敷地内や周辺からドローンは見つかっていない。

原発の運転に影響を及ぼすおそれがある「核物質防護情報」にあたるとして、九電が規制委に通報したのは光を確認してから約 45 分後だった。 規制委は、対応の迅速性や確実性の向上に向けた課題がないか九電に指摘していた。 これを受けて九電は、手順に課題があったとして今月 12 日、規制委に改善策を示した。 事案の覚知から通報までの対応時間に目安を設けることや、情報収集が必要な緊急事態かを判断するための基準を明確にすることなどを盛り込んだ。 (矢田文、asahi = 8-15-25)

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玄海原発構内にドローン 3 機飛行、「三つの光」に訂正 原子力規制委

原子力規制委員会は 27 日、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で 26 日夜、ドローンと思われる三つの光が確認されたと発表した。 規制委は「ドローン 3 機が飛行しているのが確認された」として九電から核物質防護情報の通報があったと発表したが、ドローンと断定できず、訂正した。 九電によると、26 日午後 9 時ごろ、原発の正門付近で警備員 4 人がドローンとみられる三つの光を目撃し、約 20 分後に原発に常駐する県警の特別警備隊に通報した。 県警も三つの光を確認したという。

その後、敷地内や周辺でドローンは発見されておらず、県警などが捜索を続けている。 玄海原発は 3 号機が運転中で、4 号機は予定通り 27 日未明から定期検査に入っており、正午に原子炉を停止した。 原発の設備に異常は確認されていないという。 (小川裕介、asahi = 7-27-25)


北海道 泊原発 3 号機 再稼働前提の審査正式に合格 地元判断焦点

北海道電力が再稼働を目指す泊原子力発電所 3 号機について、原子力規制委員会は、再稼働の前提となる審査に合格したことを示す審査書を正式にとりまとめました。 北海道電力は再来年のできるだけ早期に再稼働したいとしていて、今後は、再稼働への同意についての地元の判断が焦点となります。 泊原発 3 号機について、原子力規制委員会はことし 4 月、再稼働の前提となる新しい規制基準の審査に事実上合格したことを示す審査書の案をとりまとめ、一般から意見を募集していました。

7 月 30 日の会合では、「海底の活断層の調査が不十分なのではないか」といった意見など 143 件が寄せられたことが報告されましたが、原子力規制委員会は北海道電力の安全対策はいずれも妥当だとしました。 そのうえで、審査書を全会一致で正式に決定し、泊原発 3 号機は再稼働の前提となる審査に合格しました。 審査に合格した原発はこれで 18 基で、泊原発 3 号機は敷地内を通る断層の調査などに時間がかかり、申請から合格までおよそ 12 年とこれまでで最長となりました。

北海道電力は、新しい規制基準に合わせた防潮堤などの安全対策工事を進め、再来年のできるだけ早い時期に再稼働させたいとしています。 再稼働をめぐっては、地元の同意が前提で、今後は、地元の判断が焦点となります。

原子力規制委 山中委員長「丁寧に審査できた」

泊原発 3 号機について、原子力規制委員会の山中伸介委員長は 30 日の会見で、およそ 12 年となった再稼働の前提となる審査について「敷地内の断層に関して活動性がないという事業者の立証にかなり時間がかかったと考えているが、事業者は最新技術も使い、非常に丁寧に説明したため、丁寧に審査できた」と述べました。 また、現在建設中の防潮堤について「設計など非常に難しい部分がある。 事業者には安全第一で取り組んでほしい」と述べました。

北海道電力 再稼働に必要な許可書受け取る

泊原発 3 号機が審査に合格したことを受け、30 日午後、北海道電力の勝海和彦取締役常務執行役員が原子力規制庁を訪れ、再稼働に必要な「設置変更許可」の許可書を受け取りました。 勝海取締役常務執行役員は、審査がおよそ 12 年となったことについて「新規制基準に適合しているということを説明するためには、この期間は一定程度必要だったと受け止めている」と述べました。 そのうえで「再稼働に向けて安全第一で取り組みたい。 立地地域や道民の方々に、われわれの安全への取り組み、泊原発の必要性について、広く理解いただくことは非常に大切で、しっかり活動してまいりたい。」と述べました。

泊原発の早期の再稼働を目指す理由とその影響

北海道電力は、泊原発の早期の再稼働を目指す理由に、道内で想定されている電力需要の増加への対応をあげています。 北海道では、国の支援を受けて先端半導体の量産を目指すラピダスの製造拠点や大手通信会社のデータセンターが進出する計画が進むなどしていて国の認可法人「電力広域的運営推進機関」の想定では、2034 年度には道内のピーク時の需要が 538 万キロワットと、2024 年度と比べ、7% 余り増えるとしています。 泊原発 3 号機は、道内の発電所では最大となる 91 万キロワットの出力があり、再稼働した場合、2034 年度に想定される需要のおよそ 17% をまかなえることになります。

一方で、大規模な原発が再稼働すると影響が見込まれるのが再生可能エネルギーによる発電です。 北海道では、風力発電の設備容量が全国で最大となるなど、再生可能エネルギーによる発電の導入が進んでいますが、再生可能エネルギーは需要に関係なく発電するため、北海道で電力の供給量が需要量を上回ると、一時的に発電を停止させる出力制御が実施されることがあります。 これまでは火力発電による供給量を減らすことなどにより、再生可能エネルギーの発電停止を回避しようとしてきましたが、原発は出力の調整が難しく、泊原発 3 号機が再稼働すると、需給バランスの調節が難しくなると見込まれています。

送配電事業を担う北海道電力ネットワークは、「再稼働により供給力が増加すると、原子力発電よりも先に太陽光や風力の出力を抑制するため、再生可能エネルギーの出力制御量が増加する要因となる可能性がある」としています。 電力システムに詳しい東京電機大学の加藤政一 名誉教授は「原発は大きな電源で運転すれば安定した供給が見込める。 ただ、出力の調整が難しく、電力需要が少ないときなどに再生可能エネルギーの出力制御を行うことになる可能性がある。 海底ケーブルを利用して余った電気を本州に送電することも対策になる。」と話していました。

運転員の約半数が泊原発で実際の運転経験なし 施設で訓練

泊原子力発電所では、ことし 4 月の時点で、運転員のうちおよそ半数の 79 人が、泊原発での実際の運転を経験したことがなく、緊急時の対応など運転員の技術の向上が大きな課題になっています。 このため北海道電力は、3 号機の中央制御室を再現した施設で定期的に訓練を行っています。 訓練の想定は運転員には事前に知らされず、取材した日は、未経験の運転員 2 人が参加して、原子炉の冷却材を調整するポンプが非常停止したという想定で行われていました。

訓練に参加した 20 代の未経験の運転員は「事故は起こらないものではなく、起こりうるものという認識を持って、訓練にあたることが大事だと思う」と話していました。 原発の安全性に詳しい政策研究大学院大学の根井寿規名誉教授は「先に再稼働したほかの電力会社の原発では、トラブルが起きたときの初動対応で遅れが出たということも聞いている。 審査に合格したのは終わりではなく始まりであり、これを機により気を引き締めて運転再開に向けた体制の整備と教育訓練を行うことが必要だ。」と述べ、北海道電力には継続的な取り組みが求められると指摘しています。

新たな規制基準の審査と再稼働 各社の原発の状況は

東京電力福島第一原発の事故のあと新たに作られた規制基準の審査には、これまでに 10 原発 17 基が合格していて、泊原発 3 号機が 18 基目です。 泊原発 3 号機の審査は、2013 年 7 月に原子力規制委員会に申請されたあと、およそ 12 年にわたって行われ、北海道電力としては初めての合格です。

電力会社ごとでは、
▽ 関西電力は 3 原発 7 基
▽ 四国電力は 1 原発 1 基
▽ 九州電力は 2 原発 4 基と
すべての原発が審査に合格し、すでに再稼働したほか、
▽ 東北電力と、▽ 中国電力も、それぞれ 1 原発 1 基が再稼働していて、
全国で8原発 14 基が再稼働しています。

一方、▽ 東京電力は柏崎刈羽原発 6 号機と 7 号機、▽ 日本原子力発電は東海第二原発が、審査に合格しているものの、地元自治体の了解が得られていなかったり安全対策工事が終わっていなかったりして、再稼働していません。 また、▽ 中部電力は 1 原発 2 基、▽ 北陸電力と、▽ 電源開発は、1 原発 1 基ずつが現在審査を受けていて、合格した原発はありません。

林官房長官 "国も丁寧な説明や情報発信に取り組む"

林官房長官は午後の記者会見で「原発の設計や保安規定などについては、これから審査が行われるため予断を持って答えることは差し控えたいが、北海道電力には引き続き適切に審査に対応してもらいたい」と述べました。 その上で「政府としては、今後も自治体と連携しながら地域の不安を払拭できるように、原子力災害対応の実効性向上に取り組む。 また、地元の意見にしっかりと耳を傾けつつ、国も前面に立って、新規制基準の適合性審査の結果や、再稼働の必要性や意義、原子力防災対策などについて、分かりやすく丁寧な説明や情報発信に粘り強く取り組んでいくことが重要だ。」と述べました。 (NHK = 7-30-25)


関西電力、原発新設の方針を正式発表 美浜で「次世代革新炉」を念頭

関西電力は 22 日、美浜原発(福井県美浜町)の敷地内で新原発の建設に乗り出す方針を正式に発表した。 敷地内とその周辺で、原発建設に向けた第一歩となる地質調査を行うとした。 美浜原発がある福井県と美浜町にも 22 日、これらの方針を正式に伝えた。

2011 年 3 月の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の後、電力会社が原発の建設に具体的に動くのは初めて。 福島の事故後、脱原発を目指す機運が高まったが、岸田政権以降、原発の建設を条件つきで認める方針に転換。 今年 2 月に改定したエネルギー基本計画では、福島事故への反省から掲げた「可能な限り原発依存度を低減する」という表現を削った。 電力会社の求めに応じて、原発建設を下支えする支援策を国が用意したことなどもあり、関電は新原発に着手する。

新原発の建設には現在、事前の環境影響調査を含め、15 - 20 年ほどの時間と、1 基 1 兆円以上のお金がかかるとされる。 関電の森望社長は 22 日、大阪市の本社で開いた記者会見で、国がエネルギー政策の基本とする「S プラス 3E (安全性と安定供給、経済効率性、環境適合)」に触れ、「原子力は必要不可欠で、役割を果たすことが大事だ」と述べた。 その上で、新原発の事業が成り立つかどうかを検討するために「自主的な現地調査の再開が必要との判断に至った」と話した。

関電の説明によると、調査は福井県や美浜町などの地元の理解が得られたと判断したら始める。 数年程度かけて、美浜原発の敷地内外の地形や地質を調べ、活断層の有無や斜面の安定性などいまの原発の新規制基準に合うかどうかの検討を進める。 その後、環境影響評価や設計を通じ、事業として成り立つかを判断する。 建てる新原発はいまの時点では「革新軽水炉」を念頭に置くとした。

関電が新設する原発「革新軽水炉」とは 安全性の審査、基準も議論

美浜原発は関電が初めて建てた原発で、1970 年に 1 号機が運転を始め、この年の大阪万博に原発の電気を送ったことでも知られる。 関電は 2010 年にその 1 号機(15 年に廃炉決定)の建て替えに向けた調査を始めたが、東日本大震災後に中断した経緯があった。 森社長は、関電が同じ福井県内に持つ大飯、高浜 2 原発での新原発建設について問われると、「今の時点では検討していない」と述べた。 ただ、「今後、検討する可能性、余地はあると考えている」とも語った。 (福岡龍一郎、asaahi = 7-22-25)

美浜原発 とは : 福井県美浜町にある関西電力初の原子力発電所。 1960 年代初めに建設計画に着手し、1 号機 (34.0 万キロワット) は 1970 年 11 月 28 日に営業運転を始めた。 試運転中の 8 月 8 日に、つくった電気を大阪万博の会場に送り、「原子の灯」として知られた。 日本初の加圧水型軽水炉 (PWR) で、2 号機 (50.0 万キロワット) は 72 年 7 月に、3 機 (82.6 万キロワット)は 76 年 12 月に営業運転を始めた。 1、2 号機は東日本大震災後の 2015 年に廃炉が決まり、2045 年度までの計画で作業が進んでいる。

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関西電力、福井に原発新設の検討本格化へ 来週にも地元で説明開始

関西電力は、新しい原子力発電所の建設にむけた検討を本格化させる方針を固めた。 来週にも既存の原発がある福井県内の自治体で説明を始める。 2011 年 3 月の東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故後、大手電力が原発の新増設に具体的に動くのは初めて。 関電は 10 年、老朽化が進んでいた美浜原発 1 号機(福井県美浜町、15 年に廃炉決定)の建て替えに向けて調査を始め、震災後に中断した経緯がある。 美浜原発周辺の地質や地形の調査を再開することなどが想定されるが、関係者によると、美浜の敷地内外でゼロベースで検討するという。

関電は現在、福井県内に 7 基の原発を稼働させ、国内の電力会社で最多だ。 ただ、運転開始から 40 年超の原発が多く、老朽化が進む。 現在の国の新制度で、原発は 60 年を超えて運転できるようになったが、原発の新設置には事前の調査を含めて 20 年程度かかるとされる。 原発の新設・建て替えは、関電や電力業界の課題だった。 政府も、データセンターの増設に伴い電力需要の増大や、脱炭素の長期目標を達成する点などから、原発回帰の姿勢を鮮明化させ、地歩を固めてきた。 23 年 2 月の GX (グリーントランスフォーメーション)基本方針で、次世代革新炉への建て替えを容認した。

今年改定した「エネルギー基本計画」では、福島の事故の反省から生まれた「原発依存度を可能な限り低減する」という文言を削除した。 2040 年度の電源構成に占める原子力の割合を、いまの 2 倍の 2 割程度に増やす方針を掲げる。 関電の森望社長は、原発の新設の検討にあたっては採算性の論点が欠かせないとの見方を示し、政府に支援策を求めていた。 6 月になり、原発の建設費上ぶれ分を、電気代で回収可能にするとする支援策の大枠を経済産業省がまとめたことも、関電が新増設の検討を判断する追い風になっているとみられる。 (asahi = 7-18-25)

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