女川原発 2 号機、機器交換で停止へ 不具合発見、昨年の営業運転後初 東北電力は 19 日、女川原発(宮城県女川町、石巻市) 2 号機について、原子炉を 21 日ごろから停止すると発表した。 原子炉格納容器内の水素濃度を検出する機器 2 台に不具合が見つかり、交換作業をするため。 原発を停止するのは昨年 12 月の営業運転再開以降で初めて。 東北電によると、同容器内の検出器 4 台のうち、5 月と 6 月に 1 台が異常値を示す不具合が起きた。 残る 2 台で監視ができたため、影響はないとして運転を続けた。 不具合の原因は不明で、2026 年 1 月の定期検査で点検する予定だったが、万全を期すため予定を前倒しして 4 台全てを交換する。 原子炉の停止から再起動までは 10 日ほどを見込むという。 検出器は新規制基準に基づき、安全工事の過程で 24 年 4 月に設置。 他の原発で同様の事象は把握していない。 交換する新しい 4 台は、不具合が起きたものと同じ設計のもので、東北電は「速やかに調達できることを重視した」と説明する。 (阿部育子、asahi = 8-19-25) 玄海原発で目撃のドローンのような光 初動対応で九州電力が改善策 九州電力玄海原発(佐賀県)でドローンのような光が目撃された問題で、九電は初動対応の改善策を原子力規制委員会に示した。 光の確認から規制委への通報まで時間を要したことから、通報までの時間の目安や緊急事態かどうかの判断基準を設ける。 九電などによると、7 月 26 日午後 9 時ごろ、玄海原発の正門付近で警備員 4 人が上空にドローンのような三つの光を見つけた。 光は約 2 時間にわたり断続的に確認されていたという。 ただ、敷地内や周辺からドローンは見つかっていない。 原発の運転に影響を及ぼすおそれがある「核物質防護情報」にあたるとして、九電が規制委に通報したのは光を確認してから約 45 分後だった。 規制委は、対応の迅速性や確実性の向上に向けた課題がないか九電に指摘していた。 これを受けて九電は、手順に課題があったとして今月 12 日、規制委に改善策を示した。 事案の覚知から通報までの対応時間に目安を設けることや、情報収集が必要な緊急事態かを判断するための基準を明確にすることなどを盛り込んだ。 (矢田文、asahi = 8-15-25) ◇ ◇ ◇ 玄海原発構内にドローン 3 機飛行、「三つの光」に訂正 原子力規制委 原子力規制委員会は 27 日、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で 26 日夜、ドローンと思われる三つの光が確認されたと発表した。 規制委は「ドローン 3 機が飛行しているのが確認された」として九電から核物質防護情報の通報があったと発表したが、ドローンと断定できず、訂正した。 九電によると、26 日午後 9 時ごろ、原発の正門付近で警備員 4 人がドローンとみられる三つの光を目撃し、約 20 分後に原発に常駐する県警の特別警備隊に通報した。 県警も三つの光を確認したという。 その後、敷地内や周辺でドローンは発見されておらず、県警などが捜索を続けている。 玄海原発は 3 号機が運転中で、4 号機は予定通り 27 日未明から定期検査に入っており、正午に原子炉を停止した。 原発の設備に異常は確認されていないという。 (小川裕介、asahi = 7-27-25) 北海道 泊原発 3 号機 再稼働前提の審査正式に合格 地元判断焦点 北海道電力が再稼働を目指す泊原子力発電所 3 号機について、原子力規制委員会は、再稼働の前提となる審査に合格したことを示す審査書を正式にとりまとめました。 北海道電力は再来年のできるだけ早期に再稼働したいとしていて、今後は、再稼働への同意についての地元の判断が焦点となります。 泊原発 3 号機について、原子力規制委員会はことし 4 月、再稼働の前提となる新しい規制基準の審査に事実上合格したことを示す審査書の案をとりまとめ、一般から意見を募集していました。 7 月 30 日の会合では、「海底の活断層の調査が不十分なのではないか」といった意見など 143 件が寄せられたことが報告されましたが、原子力規制委員会は北海道電力の安全対策はいずれも妥当だとしました。 そのうえで、審査書を全会一致で正式に決定し、泊原発 3 号機は再稼働の前提となる審査に合格しました。 審査に合格した原発はこれで 18 基で、泊原発 3 号機は敷地内を通る断層の調査などに時間がかかり、申請から合格までおよそ 12 年とこれまでで最長となりました。 北海道電力は、新しい規制基準に合わせた防潮堤などの安全対策工事を進め、再来年のできるだけ早い時期に再稼働させたいとしています。 再稼働をめぐっては、地元の同意が前提で、今後は、地元の判断が焦点となります。 原子力規制委 山中委員長「丁寧に審査できた」 泊原発 3 号機について、原子力規制委員会の山中伸介委員長は 30 日の会見で、およそ 12 年となった再稼働の前提となる審査について「敷地内の断層に関して活動性がないという事業者の立証にかなり時間がかかったと考えているが、事業者は最新技術も使い、非常に丁寧に説明したため、丁寧に審査できた」と述べました。 また、現在建設中の防潮堤について「設計など非常に難しい部分がある。 事業者には安全第一で取り組んでほしい」と述べました。 北海道電力 再稼働に必要な許可書受け取る 泊原発 3 号機が審査に合格したことを受け、30 日午後、北海道電力の勝海和彦取締役常務執行役員が原子力規制庁を訪れ、再稼働に必要な「設置変更許可」の許可書を受け取りました。 勝海取締役常務執行役員は、審査がおよそ 12 年となったことについて「新規制基準に適合しているということを説明するためには、この期間は一定程度必要だったと受け止めている」と述べました。 そのうえで「再稼働に向けて安全第一で取り組みたい。 立地地域や道民の方々に、われわれの安全への取り組み、泊原発の必要性について、広く理解いただくことは非常に大切で、しっかり活動してまいりたい。」と述べました。 泊原発の早期の再稼働を目指す理由とその影響 北海道電力は、泊原発の早期の再稼働を目指す理由に、道内で想定されている電力需要の増加への対応をあげています。 北海道では、国の支援を受けて先端半導体の量産を目指すラピダスの製造拠点や大手通信会社のデータセンターが進出する計画が進むなどしていて国の認可法人「電力広域的運営推進機関」の想定では、2034 年度には道内のピーク時の需要が 538 万キロワットと、2024 年度と比べ、7% 余り増えるとしています。 泊原発 3 号機は、道内の発電所では最大となる 91 万キロワットの出力があり、再稼働した場合、2034 年度に想定される需要のおよそ 17% をまかなえることになります。 一方で、大規模な原発が再稼働すると影響が見込まれるのが再生可能エネルギーによる発電です。 北海道では、風力発電の設備容量が全国で最大となるなど、再生可能エネルギーによる発電の導入が進んでいますが、再生可能エネルギーは需要に関係なく発電するため、北海道で電力の供給量が需要量を上回ると、一時的に発電を停止させる出力制御が実施されることがあります。 これまでは火力発電による供給量を減らすことなどにより、再生可能エネルギーの発電停止を回避しようとしてきましたが、原発は出力の調整が難しく、泊原発 3 号機が再稼働すると、需給バランスの調節が難しくなると見込まれています。 送配電事業を担う北海道電力ネットワークは、「再稼働により供給力が増加すると、原子力発電よりも先に太陽光や風力の出力を抑制するため、再生可能エネルギーの出力制御量が増加する要因となる可能性がある」としています。 電力システムに詳しい東京電機大学の加藤政一 名誉教授は「原発は大きな電源で運転すれば安定した供給が見込める。 ただ、出力の調整が難しく、電力需要が少ないときなどに再生可能エネルギーの出力制御を行うことになる可能性がある。 海底ケーブルを利用して余った電気を本州に送電することも対策になる。」と話していました。 運転員の約半数が泊原発で実際の運転経験なし 施設で訓練 泊原子力発電所では、ことし 4 月の時点で、運転員のうちおよそ半数の 79 人が、泊原発での実際の運転を経験したことがなく、緊急時の対応など運転員の技術の向上が大きな課題になっています。 このため北海道電力は、3 号機の中央制御室を再現した施設で定期的に訓練を行っています。 訓練の想定は運転員には事前に知らされず、取材した日は、未経験の運転員 2 人が参加して、原子炉の冷却材を調整するポンプが非常停止したという想定で行われていました。 訓練に参加した 20 代の未経験の運転員は「事故は起こらないものではなく、起こりうるものという認識を持って、訓練にあたることが大事だと思う」と話していました。 原発の安全性に詳しい政策研究大学院大学の根井寿規名誉教授は「先に再稼働したほかの電力会社の原発では、トラブルが起きたときの初動対応で遅れが出たということも聞いている。 審査に合格したのは終わりではなく始まりであり、これを機により気を引き締めて運転再開に向けた体制の整備と教育訓練を行うことが必要だ。」と述べ、北海道電力には継続的な取り組みが求められると指摘しています。 新たな規制基準の審査と再稼働 各社の原発の状況は 東京電力福島第一原発の事故のあと新たに作られた規制基準の審査には、これまでに 10 原発 17 基が合格していて、泊原発 3 号機が 18 基目です。 泊原発 3 号機の審査は、2013 年 7 月に原子力規制委員会に申請されたあと、およそ 12 年にわたって行われ、北海道電力としては初めての合格です。 電力会社ごとでは、 一方、▽ 東京電力は柏崎刈羽原発 6 号機と 7 号機、▽ 日本原子力発電は東海第二原発が、審査に合格しているものの、地元自治体の了解が得られていなかったり安全対策工事が終わっていなかったりして、再稼働していません。 また、▽ 中部電力は 1 原発 2 基、▽ 北陸電力と、▽ 電源開発は、1 原発 1 基ずつが現在審査を受けていて、合格した原発はありません。 林官房長官 "国も丁寧な説明や情報発信に取り組む" 林官房長官は午後の記者会見で「原発の設計や保安規定などについては、これから審査が行われるため予断を持って答えることは差し控えたいが、北海道電力には引き続き適切に審査に対応してもらいたい」と述べました。 その上で「政府としては、今後も自治体と連携しながら地域の不安を払拭できるように、原子力災害対応の実効性向上に取り組む。 また、地元の意見にしっかりと耳を傾けつつ、国も前面に立って、新規制基準の適合性審査の結果や、再稼働の必要性や意義、原子力防災対策などについて、分かりやすく丁寧な説明や情報発信に粘り強く取り組んでいくことが重要だ。」と述べました。 (NHK = 7-30-25) 関西電力、原発新設の方針を正式発表 美浜で「次世代革新炉」を念頭 関西電力は 22 日、美浜原発(福井県美浜町)の敷地内で新原発の建設に乗り出す方針を正式に発表した。 敷地内とその周辺で、原発建設に向けた第一歩となる地質調査を行うとした。 美浜原発がある福井県と美浜町にも 22 日、これらの方針を正式に伝えた。 2011 年 3 月の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の後、電力会社が原発の建設に具体的に動くのは初めて。 福島の事故後、脱原発を目指す機運が高まったが、岸田政権以降、原発の建設を条件つきで認める方針に転換。 今年 2 月に改定したエネルギー基本計画では、福島事故への反省から掲げた「可能な限り原発依存度を低減する」という表現を削った。 電力会社の求めに応じて、原発建設を下支えする支援策を国が用意したことなどもあり、関電は新原発に着手する。 新原発の建設には現在、事前の環境影響調査を含め、15 - 20 年ほどの時間と、1 基 1 兆円以上のお金がかかるとされる。 関電の森望社長は 22 日、大阪市の本社で開いた記者会見で、国がエネルギー政策の基本とする「S プラス 3E (安全性と安定供給、経済効率性、環境適合)」に触れ、「原子力は必要不可欠で、役割を果たすことが大事だ」と述べた。 その上で、新原発の事業が成り立つかどうかを検討するために「自主的な現地調査の再開が必要との判断に至った」と話した。 関電の説明によると、調査は福井県や美浜町などの地元の理解が得られたと判断したら始める。 数年程度かけて、美浜原発の敷地内外の地形や地質を調べ、活断層の有無や斜面の安定性などいまの原発の新規制基準に合うかどうかの検討を進める。 その後、環境影響評価や設計を通じ、事業として成り立つかを判断する。 建てる新原発はいまの時点では「革新軽水炉」を念頭に置くとした。 関電が新設する原発「革新軽水炉」とは 安全性の審査、基準も議論 美浜原発は関電が初めて建てた原発で、1970 年に 1 号機が運転を始め、この年の大阪万博に原発の電気を送ったことでも知られる。 関電は 2010 年にその 1 号機(15 年に廃炉決定)の建て替えに向けた調査を始めたが、東日本大震災後に中断した経緯があった。 森社長は、関電が同じ福井県内に持つ大飯、高浜 2 原発での新原発建設について問われると、「今の時点では検討していない」と述べた。 ただ、「今後、検討する可能性、余地はあると考えている」とも語った。 (福岡龍一郎、asaahi = 7-22-25)
◇ ◇ ◇ 関西電力、福井に原発新設の検討本格化へ 来週にも地元で説明開始 関西電力は、新しい原子力発電所の建設にむけた検討を本格化させる方針を固めた。 来週にも既存の原発がある福井県内の自治体で説明を始める。 2011 年 3 月の東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故後、大手電力が原発の新増設に具体的に動くのは初めて。 関電は 10 年、老朽化が進んでいた美浜原発 1 号機(福井県美浜町、15 年に廃炉決定)の建て替えに向けて調査を始め、震災後に中断した経緯がある。 美浜原発周辺の地質や地形の調査を再開することなどが想定されるが、関係者によると、美浜の敷地内外でゼロベースで検討するという。 関電は現在、福井県内に 7 基の原発を稼働させ、国内の電力会社で最多だ。 ただ、運転開始から 40 年超の原発が多く、老朽化が進む。 現在の国の新制度で、原発は 60 年を超えて運転できるようになったが、原発の新設置には事前の調査を含めて 20 年程度かかるとされる。 原発の新設・建て替えは、関電や電力業界の課題だった。 政府も、データセンターの増設に伴い電力需要の増大や、脱炭素の長期目標を達成する点などから、原発回帰の姿勢を鮮明化させ、地歩を固めてきた。 23 年 2 月の GX (グリーントランスフォーメーション)基本方針で、次世代革新炉への建て替えを容認した。 今年改定した「エネルギー基本計画」では、福島の事故の反省から生まれた「原発依存度を可能な限り低減する」という文言を削除した。 2040 年度の電源構成に占める原子力の割合を、いまの 2 倍の 2 割程度に増やす方針を掲げる。 関電の森望社長は、原発の新設の検討にあたっては採算性の論点が欠かせないとの見方を示し、政府に支援策を求めていた。 6 月になり、原発の建設費上ぶれ分を、電気代で回収可能にするとする支援策の大枠を経済産業省がまとめたことも、関電が新増設の検討を判断する追い風になっているとみられる。 (asahi = 7-18-25) |