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推定 880 トン、核燃料デブリ「どのくらいの量なのか正直わからない」 … 福島第一原発の廃炉は遠い道のり

東京電力が再稼働を目指す新潟県の柏崎刈羽原子力発電所は、技術的には近く運転可能な状態になる。 再稼働の是非を巡る議論では、福島第一原発事故を起こした東電が再び原発を運転することへの懸念の声もある。 東電はいま事故とどう向き合っているのか。 福島で廃炉作業の現場を取材した。

大量のがれき

5 月 4 日、新潟県柏崎市から車で福島第一原発を目指した。 集合場所の福島県富岡町までは約 300 キロ。 車を運転し、約 4 時間かけて着いた。 集合場所からはバスに乗り換え、約 20 分後に原発に入構した。 記者が同原発に足を踏み入れるのは初めてだ。 構内をバスで移動し、事故を起こした 1 - 4 号機を望むことができる高台に向かった。 事故から 13 年以上たつが、1 号機は原子炉建屋上部の鉄骨がむき出しになっている上、現在も大量のがれきが残る。

現場では、金属を削るような高い作業音が響いていた。 建屋を覆う大型カバーの設置に向けた工事が進められている最中だった。 カバーは、がれきを撤去する際に、放射性物質を含んだダストの飛散を防ぐ役割を果たすという。 建屋上部は放射線量が高く、「人が長時間作業することはできない」と同行した東電社員から説明を受けた。 作業は遠隔操作の重機で慎重に進めなければならず、通常の工事現場とは比べものにならないくらい時間がかかるという。

推定 880 トン

2011 年の事故では、1 - 3 号機で核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)が起きた。 その際にできた核燃料デブリは、計約 880 トンと推定されている。 東電は全量を取り出す計画で、ロボットなどを用いて調査を行っている。 だが、担当者は「実際どのくらいの量なのか、正直わからない」と明かした。 デブリの試験的な取り出しは、今年 8 - 10 月に着手する方針だ。 前例のない回収作業に向け、国内外の知見を集めながら試行錯誤し、取り出しを行う装置を開発しているという。 すべてのデブリを取り出した上で、2041 - 51 年に廃炉を完了させる。 東電はそうした道筋を描いている。

巨大タンク

構内の至るところで目についたのが数多くの巨大なタンクだ。 石油コンビナートを訪れているような感覚で、かつては発電所だったことが信じられなくなるほどだ。 タンクの数は 1,000 基以上に上り、核燃料デブリを冷やした後の汚染水を浄化処理した「処理水」が入っている。 多数のタンクが廃炉作業に必要な設備のスペース確保を妨げるとして、東電は昨年 8 月に処理水の海洋放出を始めた。 取材した時には、6 回目の放出が行われていた。 処理水海洋放出は、廃炉完了まで続く見通しだという。 事故の爪痕はいまも現場に生々しく残り、廃炉への道のりは長い - -。 福島で改めて現実を直視させられた。

事故対策、県民に説明を

原発でひとたび事故が起きれば、廃炉作業は長期にわたり、世界的にも経験がない困難な作業を強いられる。 今回の取材を通して、事故を防ぐ対策の重要性を改めて感じた。 柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、新潟県内では、東電が再び原発を運転することへの懸念の声が根強い。 だが、東電は原発事故の影響の大きさを痛感しているはずだ。 東電は福島の教訓をどう生かしているのか。 新潟県民にわかりやすく説明することが求められている。

教訓、柏崎刈羽に

東京電力は「事故を起こした原発の廃炉」と「再び原発を運転する」という二つの課題に同時に取り組んでいるが、福島第一と柏崎刈羽原発で進めている取り組みには深い関連がある。 柏崎刈羽原発では、福島第一原発事故の教訓を生かし、自然災害などの発生に備えた「多重」かつ「多様」な対策を施している。 電源対策を例に挙げると、外部からの電源供給が途絶えた場合に備えて、既存の非常用発電機に加え、構内の高台に電源車やガスタービン発電機車を配備する。

福島第一原発は 2011 年 3 月の東日本大震災時、地震で外部からの電力供給が絶たれた上、津波で非常用電源も使えなくなった。 電源を失ったことで核燃料を冷やせなくなり炉心溶融(メルトダウン)を招いた。 柏崎刈羽原発の電源対策はこうした事態への反省を踏まえたもので、事故を二度と起こさないために導入された新規制基準に沿っている。 (大竹弘晃、yomiuri = 6-3-24)

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燃料デブリ取り出しへ、装置挿入口の堆積物除去が完了 福島第一原発

東京電力は 13 日、福島第一原発 2 号機の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し装置を挿入する貫通口にたまっていた堆積物の除去を完了した。 今年 10 月までの取り出し開始をめざすという。 昨年 10 月に原子炉の格納容器の貫通口のフタを開けたところ、推計約 140 リットルもの堆積物が「壁」のようになってほぼ全体を覆っていた。 東電は今年 1 月から、高圧の水で押し流すなどして堆積物の除去作業を続けていた。

政府と東電は当初、2021 年中に 2 号機で燃料デブリ数グラムを試験的に取り出し始める方針だったが、ロボットアームの動作精度不足などで 3 回延期。 いまは今年 10 月までに簡易的な「釣りざお式装置」で取り出しに着手し、その後にロボットアームを使う方針としている。 東電は今後、釣りざお式装置の製作や訓練を進めるという。 (福地慶太郎、asahi = 5-14-24)

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トラブル相次ぐ福島第一原発 約 800 の全作業点検開始 東京電力

停電や汚染水漏れなど、福島第一原発でトラブルが相次いでいることを受け、東京電力はおよそ 800 ある構内の作業すべてを点検することを決めました。 床に座り、車座になって話をする作業員たち。 これは、7 日から始まった福島第一原発の作業点検の様子です。 福島第一原発では 4 月、掘削作業中に電源ケーブルを傷つけたことで停電が発生。 また、汚染水の漏えいや作業員の身体汚染など、人為的なミスが相次いでいます。

これを受け、東電は、原発で行われるすべての作業の点検を 7 日から始めました。 対象の作業はおよそ 800 あるといい、今後、新たに始まるものにも適用され、点検の間は、作業が中断されます。 廃炉作業への影響について、東電は「点検が遅れれば、出る可能性はある」としています。 東電は 5 月中をめどに、点検を終えたい考えです。 (テレビユー福島 = 5-8-24)


島根原発 2 号機「保安規定」認可、新規制基準への適合性に係る審査終了

中国電力は 31 日、島根県松江市にある島根原発 2 号機について、原子力規制委員会から原子炉施設保安規定変更認可を受けたことを明らかにしました。 島根原発 2 号機をめぐっては、中国電力が 2013 年に「原子炉設置変更許可」、「工事計画認可」、「原子炉施設保安規定変更認可」に係る申請を原子力規制委員会に提出していました。

「原子炉設置変更許可」については 2021 年 9 月に、「工事計画認可」については 2023 年 8 月に認可されていて、「原子炉施設保安規定変更認可」で新規制基準への適合性に係る審査は終了しました。 今後、規制委の使用前確認などに合格すれば再稼働できることになります。 これを受け中国電力は「島根 2 号機の再稼働に向けて一つひとつの準備を着実に進めてまいります。」とコメントを発表しています。 (BSS 山陰放送 = 5-31-24)

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松江 島根原発 2 号機 ブレーカーに焦げた跡 消防などが原因調査

4 月 30 日夕方、松江市にある島根原子力発電所 2 号機の放射線管理区域(タービン建屋)の中で、再稼働に向けた安全対策工事に使う仮設のブレーカーに焦げた跡があるのが見つかりました。 中国電力の社員が確認して消防に通報しました。 放射性物質の放出などはなかったものの、消防は火事が起きたと判断し、原因や詳しい状況を調べています。

 

中国電力によりますとこのブレーカーは、発電に使った水を加熱して原子炉に戻すための部屋に設置されている、再稼働に向けた安全対策工事に使う仮設のものだということです。 この場所は放射線管理区域の中ですが、放射性物質の放出や環境への影響はなく、けが人などはいなかったということです。 消防は、現地で調査を行った結果火事が起きたと判断し、中国電力とともに原因や詳しい状況を調べています。 島根原発 2 号機をめぐっては中国電力が 4 月 30 日、安全対策工事が長期化する見通しだとして、ことし 8 月に計画していた再稼働の時期を 12 月に延期すると発表していました。 (NHK = 4-30-24)

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島根原発、再稼働を 4 カ月延期 安全対策工事が長期化 - 中国電

中国電力は 30 日、今年 8 月の再稼働を予定していた島根原発 2 号機(松江市)について、4 カ月程度遅れると発表した。 再稼働の前提となる安全対策工事と設備点検が重なり、長期化する見通しとなったことが影響した。 12 月の再稼働、来年 1 月の営業運転再開を目指す。

島根原発 2 号機は、2021 年に原子力規制委員会の審査に合格、中国電が火山灰対策や燃料プール状態監視設備の設置などの工事を進めてきた。 しかし、昨年 12 月に発生した原発構内での作業員死亡事故で安全対策工事が一時中断したことや、設備点検と重なったことにより、工事完了時期を今年 55月から同 10 月に見直した。 これに伴い、中国電は 30 日、原子力規制委に再稼働に向けた検査の日程などの変更を届け出た。 (jiji = 4-30-24)


女川原発の安全対策が完了 9 月ごろの再稼働めざす 東北電

東北電力は 27 日、東日本大震災後、運転停止が続く東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市) 2 号機の再稼働に向けた安全対策工事が完了した、と発表した。 原子力規制委員会による確認などの後、9 月ごろに東日本で震災後初と見込まれる再稼働を目指している。

東京電力福島第一原発事故後に設けた新規制基準に基づき行った主な対策は、▽ 原子炉建屋の上部に鉄骨部材を追加するなどの耐震補強、▽ 防潮堤を高さ 29 メートル(総延長 800メートル)にかさ上げ、▽ 緊急時の電源確保で高台にガスタービン発電機を設置、▽ 原子炉の冷却水として 7 日間対応できる約 1 万立方メートルの淡水貯水槽を設置など。

東北電力はこれら対策に約 5,700 億円を投じ、さらに 2026 年 12 月までにテロ対策の「特定重大事故等対処施設」を約 1,400 億円かけて建設する。 同原発には13 メートルの津波が襲い、重油タンクが倒壊。 1 号機の高圧電源盤が焼損するなどの被害が出たが、福島のような深刻な事故は起こらなかった。 20 年には県や女川町、石巻市が再稼働に同意している。 (柳沼広幸、asahi = 5-27-24)


核ごみ文献調査、佐賀県玄海町長が受け入れ表明 原発立地自治体で初

原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定をめぐり、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は 10 日、選定プロセスの第 1 段階の「文献調査」について、国からの実施の申し入れを受諾すると表明した。 文献調査は北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村に次いで 3 例目となる。 玄海町には九州電力玄海原発があり、原発の立地自治体では初めて。

脇山町長はこの日午前、非公開で開かれた町議会全員協議会(全協)で文献調査を受諾する考えを伝えた。 記者会見で「(町)議会などでの議論、国からの要請を熟考した結果、受け入れる決断に至った」と述べた。 処分場の選定プロセスは 3 段階約 20 年に及び、文献調査はその入り口にあたる。 市町村が応募するか、国からの申し入れを受諾することで実施が決まり、原子力発電環境整備機構 (NUMO) が 2 年程度かけて地質などの資料を机上で調べる。 文献調査を受け入れると、自治体の申請にもとづいて最大 20 億円の交付金が支給される。

玄海町議会は 4 月 26 日、地元 3 団体から出された文献調査を求める請願を採択。 5 月 1 日には経済産業省幹部が町を訪れて調査を申し入れ、7 日には斎藤健経産相が町長と会談して協力を求めた。 脇山町長はこれまで、地理的な条件などから最終処分場に選ばれるのは困難として、「文献調査を受け入れる考えはない」と繰り返し表明してきた。 だが、10 日の会見では「住民代表が集う議会で請願が採択されたことは大変重い」と述べた。

国は 2002 年に文献調査を実施する自治体の公募を始め、15 年には国の方から申し入れる仕組みを導入。 20 年に寿都町と神恵内村が調査に応じた。 だが、昨年、長崎県対馬市議会が文献調査を求める請願を採択したが、市長が拒否し、後が続かない状況だった。 玄海町が文献調査を終えて 2 段階目の「概要調査」に進む場合、知事の同意も必要になる。 佐賀県の山口祥義知事は「最終処分場も含め、新たな負担を受け入れる考えはない」としている。 (渕沢貴子、asahi = 5-10-24)


「燃料装荷」が完了、今後は確認・検査の作業 新潟・柏崎刈羽原発

東京電力柏崎刈羽原発は 26 日、再稼働を目指す 7 号機の原子炉に核燃料を入れる「燃料装荷(そうか)」の作業が同日午前 3 時 35 分に完了したと発表した。 8 年ぶりに原子炉が 872 体の燃料集合体で充たされた。 7 号機は東日本大震災と福島第一原発事故後の 2011 年 8 月に運転を停止。 16 年 10 月に炉内のすべての燃料集合体が原子炉に隣接する使用済み燃料プールに移されていた。

同原発によると、872 体のうち、新規が 214 体で、残りの 658 体は過去の運転で使ったものを再利用する。 プールで保管されていた燃料集合体を 1 体ずつ原子炉に移す今回の作業は 15 日に始まった。 装置の不具合などで初日に約 3 時間、3 日目の 17 日に約 16 時間の中断があったものの、その後はおおむね順調に進み、12 日目で終了した。 東電は燃料集合体が予定された場所に正しく収められているかなどを確認した後、原子炉の密閉状態や、運転に必要な設備の健全性を調べる検査などを行うことにしている。 (戸松康雄、asahi = 4-27-24)

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柏崎刈羽原発、原子炉への燃料装荷中断 制御棒のブレーカー落ちる

東京電力は 17 日、柏崎刈羽原発 7 号機(新潟県)の原子炉に核燃料を入れる「燃料装荷」の作業中に設備の不具合があり、作業を中断したと発表した。 原因を調査中で、再開のめどは立っていない。 東電によると、装荷作業ではまず核分裂反応を抑える「制御棒」を原子炉に入れ、その後に核燃料を装荷する。 東電は計 872 体の核燃料を装荷する予定で、これまでに 41 体の装荷が完了した。

17 日午前 7 時過ぎ、42 体目の核燃料を入れるための準備として、制御棒を動かす設備のブレーカーを入れたが、すぐにブレーカーが落ちた。 ブレーカーは制御棒 1 本ごとに分かれていて、すでに核燃料を装荷している場所には制御棒があるため、安全上の問題はないという。 東電は今月 15 日から、核燃料の装荷作業を開始。 同日夜にも装置の不具合があり、装荷作業を約 3 時間中断していた。 (asahi = 4-17-24)

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柏崎刈羽原発に燃料装荷 地元同意待たず、前のめりの国・東電

東京電力ホールディングスが 15 日、柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の原子炉に核燃料を入れる「燃料装荷」を始めた。 再稼働に向けた準備が一歩進んだが、肝心の地元同意は見通しが立たない。 それでも前のめりになるのは、国の焦りがある。

東電、柏崎刈羽原発の燃料装荷を開始 再稼働へ準備、地元同意が焦点

原子力規制委員会がこの日午前、燃料装荷を承認。 東電は午後 5 時ごろから作業に取りかかった。 柏崎刈羽原発 7 号機の中心部には、大量の水で満たされた円形のプールがある。 真下に原子炉が沈んでいて、核燃料を保管する隣のプールとつながっている。 燃料を炉心に移すには、1 体あたり 10 分かかるという。 7 号機には 872 体の燃料を入れる。 過去の実績では 2週間ほどかかったという。 その後、圧力容器に漏れがないかや、核分裂反応を抑える役目を果たす制御棒が正常に動くかなどを点検する。

制御棒を引き抜くと核分裂が連続しておきる臨界に達し、いつでも発電できる状態になる。 再稼働に向けた準備にほかならないが、同原発の稲垣武之所長は「プラントの健全性を確かめるため」と説明。 あくまで安全確認の一環だとの姿勢を強調し、「制御棒を引き抜けるかは、地元の理解があってのこと。 時期は見通せていない。」とする。

ある大手電力幹部「急ぐ必要ないのに」

そもそも、地元の同意がそろう前に燃料を入れるのは異例だ。 東電は中越沖地震後の 2009 年の再稼働時も同意前に装荷したとするが、2013 年に新規制基準がつくられて以降に再稼働した他社の 12 基の原発はすべて、同意後に作業している。 年内の再稼働を予定する中国電力島根 2 号機と東北電力女川 2 号機も、同意は得られたが、まだ燃料は入れていない。 ある大手電力の幹部は言う。

「燃料装荷は我々の感覚からすると、再稼働まであと一歩のところ。 同意を待たずにやるなんて考えられない。 県民感情を逆なでするだけだ。 急ぐ必要はないのに …。」

それでも東電が作業を急ぐのはなぜか。 「同意後すみやかに動かして経営再建につなげたい(東電関係者)」との思惑もあるが、ほかの大手電力からは「少しでも早く作業を始めないと、またトラブルが起きるのを恐れているのではないか」と疑う声が出る。 7 号機は 11 年 8 月に運転を停止。 早くから再稼働をめざしてきたが、規制委の審査が長引き、16 年 10 月にいったん燃料を取り出した。 20 年 10 月に審査が終わり、地元同意に焦点が移っていた。

▽ 社員が同僚の ID カードで中央制御室に侵入、▽ 立ち入り制限区域の侵入検知設備の故障を長期間放置 …。 事態を重くみた規制委は 21 年 4 月、核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令を出した。 約 2 年半の追加検査を経て、昨年末にやっと解除された。

そもそも柏崎刈羽原発は不祥事が相次いでいた。 02 年には自主点検記録の偽装、07 年には定期検査に関するデータ改ざんといった問題が発覚。 一方、規制委からは 17 年に、原発を動かす適格性を示すため、安全最優先の経営や自主的な安全性向上など「七つの約束」をさせられた。 それだけに、地元に対してはより丁寧な説明が求められる。 東電はこの日、「課題が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じる。 一つひとつの工程を着実に進める。」とするコメントを出した。

「岸田政権のうちに再稼働しなければ」

7 号機の再稼働は国も前のめりになっている。 「需給構造の強靱化に向けても、柏崎刈羽の再稼働が非常に重要だ。」 3 月 21 日、新潟県を訪れた資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は、花角英世知事に、こう訴えた。 原発行政を担うエネ庁の長官が、新潟県庁を訪れて県知事に直接要請するのは約 6 年ぶりだ。 村瀬氏は報道陣の取材に「県民の懸念や不安が払拭されるよう一つ一つ丁寧に取り組みたい」と語り、地元の同意に向けて国が前面に出る姿勢を強調した。

その 1 週間後には、東電が規制庁に燃料装荷を申請した。 エネ庁幹部はいまも連日のように新潟入りし、同意のカギを握る県議らに再稼働について説明を繰り返している。 東電が再稼働をめざすのは、原発が動けば火力発電の燃料代が浮き、経営がよくなるとの理由からだ。 1 基動けば年 1,100 億円の収支が改善し、原発事故の賠償や廃炉費用にも充てられる。 「経営改善には柏崎刈羽の再稼働が最低条件だ。(東電関係者)」

ただ、再稼働しても電気代が安くなる可能性は低い。 同社の設定する電力料金には、すでに再稼働の効果が織り込まれているからだ。 国がこの原発にこだわるのは、ほかにも理由がある。 22 年 3 月に福島県沖で起きた地震で複数の火力発電所が止まり、東日本全域で需給が逼迫。 ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した燃料高で、昨冬の電気代が跳ね上がる事態もおきた。

経済産業省の幹部は「東日本でも原発が動いていないと大変なことになる」といい、需要が高まる夏場までの再稼働をもくろむ。 燃料装荷を前倒しで進めるのも、そんなスケジュール感が念頭にある。 過去の実績から逆算すると、柏崎刈羽では早ければ 6 月ごろには再稼働の準備が整う。 花角知事は慎重な姿勢を崩していないが、経産省内部では「6 月県議会で同意を取り付ける」とのシナリオもささやかれている。

脱炭素の切り札、生成 AI (人工知能)の普及で大量の電力が必要 …。 国が原発にかける期待は大きい。 ただ国民の不信感は根強く、歴代政権は原発政策を慎重に進めてきた。 潮目が変わったのは岸田文雄政権から。 23 年には脱炭素社会の実現に向けた基本方針を策定し、再生可能エネルギーとともに原発を「最大限活用する」とした。

ただ、思惑通りに進んでいるとは言いがたい。 政府は 30 年度の発電量に占める原発の比率を 20 - 22% にするとの目標を掲げているが、22 年度時点では 5.5%。 20% の達成には 25 基稼働する必要などがあるが、現時点で再稼働にこぎつけたのは 12 基のみ。 新設するにも 10 年超かかるため、動かせる原発は再稼働したい考えだ。

だが、未曽有の大事故を起こした会社が原発の運営に関われるのか。 地元ならずとも厳しい目が注がれる。 しかも原発政策の旗振り役となってきた岸田首相の支持率は低迷している。 いつでも、「岸田降ろし」が起きかねない状況だ。 ある経済官庁の幹部が打ち明ける。 「岸田政権のうちに再稼働しなければ、先行きは厳しい。」(三浦惇平、多鹿ちなみ)

「同意得るために慎重になったほうがいいのでは」

橘川武郎・国際大学学長(エネルギー産業論)の話 : 地元同意がないままでの燃料装荷のタイミングに、東京電力と政府の焦りを感じる。 強引に進めず、同意を得るために慎重になったほうがいいのではないか。 ただ、事故を起こした東電が原発事業を継続するのは難しい。 福島第一原発事故の処理費用には計 23.4 兆円が必要だ。 東電が大半を負担するが、払えないだろう。 東電は再生可能エネルギーや火力発電で利益を出していける。 柏崎刈羽原発を売却して、事故処理に回すべきだ。

能登半島地震によって原発事故時の避難の問題が顕在化し、住民の不信感が高まっている。 避難の際には自治体と東電が協力するが、新潟県に電気を供給しているのは東電ではなく東北電力だ。 東電は地域の理解が乏しいと感じる。 避難計画の整備には東北電も関与すべきだ。 (聞き手・長橋亮文、asahi = 4-15-24)


ビル・ゲイツのテラパワー社が「次世代型原発」の建設開始へ

ビル・ゲイツが設立した TerraPower (テラパワー)社の次世代原子力発電所の建設が、6 月にワイオミング州ケムメラーで始まると英フィナンシャル・タイムズ紙が 3 月 19 日に報じた。 同社はコストを抑えた効率的な原子炉で競争が激しい原子力発電分野に乗り込もうとしている。 この実証プラントには、水ではなく液体ナトリウムで冷却され、溶融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えたナトリウム冷却炉が設置される。 この原子炉は、従来の原子炉と比べて安全で高効率な原子炉だとされており、プラントの建設コストは水冷式の原子炉を持つ原子力発電所の半分程度だとされている。

この原子炉の出力は 345 メガワットで、必要に応じて 40 万世帯の電力需要を満たす 500 メガワットに増強して 5 時間半以上の運転が可能という。 テラパワーは、アラブ首長国連邦へのナトリウム冷却炉の輸出に向けてエミレーツ・ニュークリア・エナジー社との契約に合意した。 また、今回のプラント建設のために米政府から最大 20 億ドルと民間からの約 10 億ドルの出資の約束を取り付けた。 (Antonio Pequeno IV、Bloomberg = 3-21-24)


大手電力、プルトニウム 1.7 トン「交換」 原発燃料に、削減めざす

電気事業連合会は 16 日、大手電力会社が原発の燃料用に英仏で保管中のプルトニウム計 1.7 トンを各社間で「交換」する契約を結んだと発表した。 プルトニウムを使う「プルサーマル発電」を実施する九州、四国電力が、他社の保有分を消費することで、核兵器の材料にもなるプルトニウムを削減する狙いだ。 大手電力各社は、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理と「MOX 燃料」の製造を英仏に委託し、国内の原発で使ってきた。 だが、英国の燃料工場は閉鎖し、製造できなくなった。 一方、九電と四電がフランスで保管する分は少なくなり、MOX 燃料が尽きたため、2 社はプルサーマル発電を一時中断することになった。

そこで、2 社は英国で保管中のプルトニウム計 1.7 トン分と、東京電力や中部電力など 5 社がフランスで保管している計 1.7 トン分を帳簿上で「交換」する契約を 15 日付で結んだ。 実際の移動は伴わない。 九電と四電はフランスで 1.7 トン分を保有することになり、同国で MOX 燃料に加工して輸入できる。 九電は 2027 年度降、四電は 29 年度以降に 輸入分を利用する見通しだ。 (三浦惇平、asahi = 2-16-24)


志賀原発周辺のモニタリングポスト欠測 多重化した通信、機能せず

能登半島地震後に北陸電力志賀原発(石川県)の周囲で放射線量を測るモニタリングポストのデータの一部が把握できなくなった問題で、複数の通信回線が全て不通になったことが原因とみられることが分かった。 過去の災害を教訓に進めていた通信の多重化が機能しなかったことになる。 7 日の原子力規制委員会の定例会で、事務局の原子力規制庁が報告した。 規制庁によると、志賀原発周辺の 116 カ所のモニタリングポストのうち、原発から 15 キロ以上離れた18 カ所のデータが一時確認できなくなった。 徐々に確認できるようになり、1 月 31 日までにすべて復旧したという。

規制庁などが現場を確認したところ、モニタリングポスト自体には損傷は確認されず、測定もできていた。 地震によって通信ケーブルが断線したり、基地局の電源がなくなったりして、データが送れなくなったことが原因と考えられるという。 モニタリングポストの測定結果は、原発事故時に住民の避難が必要な地域を判断する際にも使われる。 2018 年の北海道胆振東部地震の際に北海道電力泊原発周辺で欠損が相次いだため、規制委は電源や通信の多重化を進めていた。

今回、欠測になったモニタリングポストについても、有線と携帯電話回線など複数の通信回線で通信できるようになっていた。 だが、その全てが不通になったとみられるという。 7 日の定例会では、今後の対応を議論した。 災害時にも不通になりにくいとして、省電力で広域の通信ができる無線技術「LPWA」の導入を検討するという。 それでも欠測が生じた場合は、必要に応じてドローンを使って測定する。

規制委の伴信彦委員は「通信を担う民間業者に『改善してください』と言うのも限界がある。 こうした状況になってしまった時に我々が何ができるかを考えるしかない。」 杉山智之委員は「共通原因の機能喪失を防ぐのが原子力の分野の災害対策の基本。 総倒れにならないよな工夫をしていく必要がある。」と述べた。 山中伸介委員長はこの日の記者会見で「通信のさらなる多重化、信頼性の向上をすすめ、それでも欠測が生じた場合の手段の多様化もすすめてまいりたい」と話した。 (佐々木凌、asahi = 2-7-24)

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志賀原発の変圧器、最も強い揺れに耐える「クラス C」でも壊れる … 修理見通し立たず

松田社長は「非常用の電源車やディーゼル発電機が備わっている」と述べ、発電所内への電力供給に支障はないとの見解を述べた。 ただ、元来これらの非常用電源は、鉄塔が倒れるなどして外から電気が受け取れなくなった状況を想定している。 変圧器は耐震クラス C の製品で、現状入手できるうち最も強い揺れに耐える仕様だという。 それが壊れたことは、原発が受けた揺れの大きさを示す。

元日の地震では、震度 7 を観測した志賀町の富来地区で加速度 2,800 ガルを記録している。 北陸電は、元日の地震で、原子炉直下で観測した加速度は 399 ガルだったことを挙げ、「安山岩を主体とする敷地の地下は富来地区と比べ強固なため、同じような大きな揺れが届かない」と強調する。 原子炉は 1,000 ガル程度に耐えれば十分との立場で原子力規制委員会の安全審査に臨んでいる。 しかし、北陸電によると、耐震クラス C の変圧器は 500 ガルまで耐えられる仕様で、変圧器のトラブルは北陸電の主張や立場を揺るがしかねない。

元日の地震は、海域のいくつもの断層が連動して動いたとされる。 その長さは 150km にわたり、これまで北陸電が想定していた規模を上回る。 松田社長は記者会見で「新しい知見に基づいて安全対策を講じる」と語った。 原子炉は、立地場所での「最大の揺れ」に対して安全が維持されなければならない。 原子力規制委による今後の審査でも、最大の揺れが焦点となる。 (yomiuri = 2-4-24)

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非常用発電機停止、回路変更が原因 志賀原発 1 号機巡り北陸電発表

北陸電力志賀原発 1 号機(石川県、停止中)で試運転中の非常用発電機が自動停止したトラブルについて、北陸電は 30 日、変圧器の故障に伴う回線の変更が原因だったと発表した。 発電機は 29 日に復旧した。 1 号機は能登半島地震の揺れで外部電源を受ける変圧器が破損し、別の回線から電源を確保していた。 発電機は 3 日の試運転では正常に動いた。 その後、送電線を補修するため、通常使っていない回線に変更して 17 日に再び試運転したところ、自動停止した。

北陸電によると、回線を変更したことで回線側の電圧が低くなり、発電機の出力を十分に上げられず、逆流を防ぐ安全装置が働いて停止したという。 北陸電は「運転員の手順にミスはなく、まれに起こる事象が重なった」と説明した。 北陸電はこの日、破損した 1、2 号機の変圧器について、外観点検の結果を原子力規制委と経済産業相に提出した。 地震の揺れで配管に亀裂が入って油が漏れており、今後、損傷した部品の取り換えや内部点検を実施し、復旧が可能か検討する。 時期は未定だが、半年以上かかる見通し。 (高橋由衣、mainichi = 1-30-24)

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能登地震で原発周辺 400 人 8 日間孤立 避難計画機能せぬおそれ

能登半島地震のあと、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の半径 30 キロ圏内で、最大 8 地区約 400 人が 8 日間孤立状態になっていたことがわかった。 原発事故時には 5 キロ圏の住民は 30 0キロ圏外に避難、5 - 30 キロ圏はまず屋内退避し、放射線量が上がった場合に圏外に避難するが、この避難計画が機能しないおそれがある。 内閣府などによると、地震を受け、志賀原発の 5 - 30 キロ圏の輪島市の 7 地区と穴水町の 1 地区が 8 日時点で、道路の寸断などで車での人や物資の移動ができない孤立状態だったという。 9 日以降順次解消されたが、最長で 2 週間程度かかった地区もあったとみられる。 5 キロ圏での孤立はなかった。

原子力規制委員会が定める「原子力災害対策指針」では、5 キロ圏は放射性物質の拡散前に避難する「予防的防護措置準備区域 (PAZ)」、5 - 30 キロ圏は屋内退避し、状況に応じて避難する「緊急時防護措置準備区域 (UPZ)」としている。 しかし、家屋倒壊が起きていたり、電気や水、食料などが不十分だったりすれば屋内にとどまることは難しい。 さらに道路が寸断されて地区が孤立状態になれば計画通り逃げることもままならない。

内閣府ではこれまで 5 キロ圏の施設に重点を置き、防護設備や非常用電源の整備を支援してきた。 能登半島地震を受け、5 - 30 キロ圏の住民が集まる避難所を中心に、機能強化を支援する。 原子力防災を担う伊藤信太郎環境相は 19 日の閣議後会見で「屋内へ退避が継続できる環境の整備をより推進するため、自治体に対する支援を強化したい」と説明。 今後内閣府で、関係自治体の意見を聞きながら支援内容を決めていくという。 (市野塊、1-23-24)

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志賀原発の外部電源、復旧に半年超 必要な電源は確保 北陸電

北陸電力は 12 日、志賀原発(石川県志賀町、停止中)で能登半島地震後から途絶えている外部電源 1 系統について、全面復旧まで半年を超えると明らかにした。 交換が必要な機器の一つを調達するのに半年かかる見通しだという。 この地震で、1、2 号機の変圧器と、中能登変電所(志賀町)の設備が破損。 3 系統ある外部電源のうち 1 系統が使えなくなっている。 必要な電源は残る 2 系統で確保できており、安全上問題はないという。 破損した設備のうち、中能登変電所の設備については、機器の納入に半年かかることがわかった。 一方、二つの変圧器を修理するめどは立っていない。 (土谷純一、mainichi = 1-12-24)

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志賀原発 2 号機の変圧器からの油漏れ、当初の 5 倍超 能登半島地震

北陸電力は 5 日、能登半島地震の影響で破損した、志賀原発 2 号機(石川県、停止中)の変圧器からの油漏れが、約 1 万 9,800 リットルに上ったと明らかにした。 約 3,500 リットルが漏えいしたと 2 日に発表していたが、実際はその 5 倍超だった。 北陸電によると、2 日の時点では油をためる容器(約 3, 500 リットル)が空になっていたことを確認したが、容器以外に変圧器本体などからも漏れていたことがわかった。 漏れた油はすべてせきの中にたまっており、全量を回収して漏えい量を確定した。

この変圧器は地震の影響で使用できなくなったが、別の回線から電源を確保している。 また、緊急時に高圧電源車を寄せる 1 号機付近の道路の一部に数センチの段差が見られることなど、点検で新たに発覚した敷地内の被害状況を発表した。 いずれも安全上問題はなく、今後修繕するとしている。 (高橋由衣、mainichi = 1-5-24)



東京電力柏崎刈羽原発への「運転禁止」命令、規制委が解除を決定

東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の不備が相次ぎ、事実上の運転禁止命令が出された問題で、原子力規制委員会は 27 日、命令の解除を決定した。 同日にも東電に通知文を手渡し、正式に解除される。 解除されれば、焦点は地元同意に移る。 規制委が命令解除を決めたのは、ほかの原発と同じ最低限の水準である「自律的な改善が見込める状態」になったと判断したためだ。 ただ、命令解除後も、改善を持続するための制度が機能しているかなどを重点的に確認する。

柏崎刈羽原発 6、7 号機は、再稼働に必要な主な審査を 2017 年 12 月に終えた。 だがその後、外部からの不正侵入を検知できない状態を放置していたり、社員が他人の ID カードで中央制御室に入ったりする問題が相次いで発覚した。 規制委は 21 年 4 月、原子炉等規制法に違反したとして核燃料の移動を禁止する是正措置命令を出していた。 事務局の原子力規制庁はのべ 4 千時間以上にわたって改善状況を確認する検査を実施し、今月6日には課題が改善されたとの報告書案を公表。規制委はこの報告書案に加え、11日に山中伸介委員長らによる現地調査を実施。20日には東電社長と面談していた。

再稼働には、新潟県などの「地元同意」が必要。 規制委の判断を受け、今後は花角英世・新潟県知事の同意が焦点となる。 ただ、花角氏は「県民の信を問う」と述べるにとどめ、態度を明らかにしておらず、信を問う手法も表明していない。 また、同意の前提となる避難計画の策定もできていない。 一方、原発再稼働を加速させる岸田政権は、年明けから地元自治体向けに説明会を開いて理解を求めていく。 最大 10 億円受け取れる交付金など、財政支援も含めて同意を取り付けたい考えだ。 (佐々木凌、福山亜希、asahi = 12-27-23)

柏崎刈羽原子力発電所 = 原子炉 7 基を持つ世界最大級(出力計 821 万 2,000kw)の原発。 このうち 6、7 号機は 2017 年 12 月、原子力規制委員会の安全審査に合格した。 11 年に起きた福島第一原発事故後、東電の原発の合格は初めてだった。


60 年超運転が可能な新制度で申請第 1 号 関西電力大飯原発

原発の 60 年超運転を可能にする新たな制度が始まることを受け、関西電力は 21 日、大飯原発(福井県)の 3、4 号機について、原子力規制委員会に対し、新たな制度移行後も運転を続けるために必要な申請をした。 新制度での申請第 1 号となる。 大飯原発 3 号機は運転開始から 32 年、4 号機は 30 年。 関電はこの日、運転開始から 30 年を超えて 40 年までの長期的な施設の管理方針や劣化状態の点検結果、保守に必要な部品の管理方法などをまとめた「長期施設管理計画」を規制委に提出した。

規制委は新たな制度による審査を実施する。 制度が施行される 2025 年 6 月までに規制委が認可しなければ、以降は運転できなくなるが、3、4 号機とも旧制度では 40 年までの運転が認められている。 規制委は「審査をすでにクリアしたものが(新制度で)認可されないという想定はしていない(山中伸介委員長)」との立場で、新制度でも認可される見通しだ。 関電によると、第 1 号の申請に大飯 3、4 号機を選んだのは、旧制度で 40 年目までの認可を受けたのが 21 年 11 月と 22 年 8 月で比較的、新しいためという。

高浜 2 号機は 24 年 1 月、美浜 3 号機は 24 年 4 月の申請を予定している。 高浜 1、3、4 号機については、現在続いている旧制度での審査が終わってから申請するという。 旧制度では運転期間は原則 40 年で、規制委が認めた場合は 60 年まで延長できるとされていた。 新制度では、規制委の審査などで停止していた期間を運転期間に数えないことで 60 年超の運転が可能になる。 規制委は、30 年を起点に、最長 10 年ごとに延長の可否を審査する。 (佐々木凌、asahi = 12-21-23)


鹿児島知事が 20 年運転延長を「了承」 川内原発の 60 年運転を容認

九州電力川内原子力発電所 1、2 号機(鹿児島県薩摩川内市)の 20 年運転延長をめぐり、塩田康一知事は 21 日、運転延長を「了承する」と容認する考えを表明した。 国の審査や専門家らの議論を通じて科学的・技術的な安全性は確認できたと評価した。 1 号機は 2024 年 7 月、2 号機は 25 年 11 月に運転開始 40 年の期限を迎える。 九電は昨年 10 月に運転期間の 20 年延長を申請し、原子力規制委員会が今年 11 月、九電の特別点検などは適切で、将来的にも設備機能は維持できると判断し、20 年延長を認めた。 国内での認可は 5、6 基目。

運転延長に関しては、地元同意は必須とされていないが、塩田知事が延長について考えを示したのは初めて。 塩田氏は記者団に「延長にあたっては安全性が一番重要」とした上で、「100% (の安全)は難しいが、専門家の意見を踏まえた上で判断した。 今後 20 年の安全性は評価された。」と話した。 塩田知事は 20 年知事選で初当選した際、運転延長について賛否に触れず、公約で「必要に応じて県民の意向を把握するため、県民投票を実施する」と掲げた。

しかし、原発に関する県の専門委員会が 23 年 5 月、運転延長のため九電が実施した特別点検などを「適正」と判断すると、塩田氏は県民投票を実施しないと表明した。 10 月には、県民投票の実施を求めた市民団体による直接請求が成立し、県民投票条例案を審査する県議会臨時会が開かれたが、最大会派の自民などが反対に回り否決された。 塩田氏は、11 月に規制委が延長を認可した後、「厳正な審査を踏まえた結果と考えている」と述べる一方、県議会、地元・薩摩川内市での議論などを見た上で「最終的に県の考え方を整理したい」とし、賛否には触れていなかった。

県議会は 12 月 19 日、地元経済団体などが提出した延長賛成の陳情を賛成多数で採択、反対や継続審議を訴える陳情 2 件を不採択。 野党系会派などが「老朽化する原発の安全性に疑問を持つ専門家もいた」などと運転延長に反対したが、県議会として容認した。 薩摩川内市議会でも賛成の陳情を採択。 田中良二市長は「市議会の意見、判断などを踏まえて総合的に判断した」と運転延長を容認した。 これを受け、塩田氏も運転延長を容認した形だ。 (加治隼人、asahi = 12-21-23)


次世代エネルギー「核融合発電」、実用化へ日欧が連携 … 脱炭素で高レベル放射性廃棄物もなし

次世代エネルギーとされる核融合発電の実用化に向けた日本政府と欧州連合 (EU) の共同声明案が、判明した。 発電時に二酸化炭素を排出しない脱炭素電源と位置づけ、日欧が共同運用する実験装置「JT-60SA(茨城県那珂市)」を活用した研究開発や人材育成を通じ、早期の実用化を目指すとした。 盛山文部科学相と EU の執行機関・欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)が 1 日午後に会談し、発表した。

核融合は、原子核同士の融合で膨大なエネルギーを生み出す。 日米欧などは国際熱核融合実験炉 (ITER) をフランスに建設中で、JT-60SA は、実験データの共有などで ITER を支援するため、日欧が共同で建設。 10 月には、核融合反応を起こすための条件となる「プラズマ」の生成に初めて成功した。 (yomiuri = 12-1-23)

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