「北陸応援割」、能登地方では補助率 70% 検討 首相が表明 政府は 25 日、能登半島地震の被災者への支援パッケージをまとめ、なりわいの再建に向けた取り組みとして観光支援策を盛りこんだ。 1 泊あたり 2 万円を上限に宿泊費の 50% を支援する「北陸応援割」を 3 - 4 月に実施する。 被害が甚大な能登地方については、補助率を 70% に引き上げることを検討する。 岸田文雄首相が首相官邸で記者団に対して明らかにした。 観光需要を喚起する「北陸応援割」を 3 - 4 月に石川、福井、富山、新潟の 4 県を対象に実施する。 首相は「通常通りの営業が可能な地域でも、予約のキャンセルが相次いでいる宿泊施設が多数存在している。 北陸 4 県の 1 月中のキャンセル数は約 17 万件に上っている」と説明。 北陸新幹線の金沢 - 敦賀間の 3 月開業に向けて集中的な観光プロモーションを行うとした。 能登地方については、まずは復興・復旧に努めるとしたうえで、「観光客の受け入れが可能な状況になった段階で、より手厚い観光需要の喚起策、たとえば、割引率を 70% にするなどの喚起策を実施することを検討したい」と語った。 (佐藤瑞季、asahi = 1-25-24) 石川県輪島市でも震度 7、新たに判明 届かなかった震度情報を解析 気象庁は 25 日、能登半島地震によって石川県輪島市でも最大震度 7 を観測していたと発表した。 地震発生当初は、輪島を含む半島北部の 3 地点から震度の情報が届いておらず、現地の震度計のデータを解析して確認したという。 気象庁によると、新たに判明したのは輪島市門前町走出(はしりで)で震度 7、能登町松波で 6 強、同町柳田で 6 弱。 1 日午後 4 時 10 分に発生したマグニチュード 7.6 の地震では当初、同県志賀町香能(かのう)でのみ震度 7 を観測していた。 データが届かなかった 3 地点については推定で震度を発表し、輪島を 6 強としていたほかは、観測値と変わらなかった。 地震の揺れが機器に不具合をもたらしたとみられ、震度計は現在、正常に動いているという。 (大山稜、asahi = 1-25-24) 珠洲市・能登町の中学生 141 人、金沢市へ集団避難 … 「環境変わり不安だけど」受験のため決心 能登半島地震で被災した石川県珠洲市と能登町の中学生計 141 人が 21 日、金沢市の医王山スポーツセンターへ集団避難した。 期間は約 2 か月間を想定。 大型バスに乗り込んだ生徒たちは家族に見送られ、ふるさとを後にした。 珠洲市では多くの地域で電気や水道などが復旧しておらず、学習機会を確保するための措置。 市内 4 校 199 人のうち、保護者が同意した 102 人が避難した。 自宅が被災し、市内の祖父宅に身を寄せていた市立緑丘中 3 年の生徒 (15) は、高校受験の勉強に集中しようと避難を決めた。 「環境が変わるので不安だけど、風呂もトイレも整っていて安心」と話した。 能登町では 4 校 247 人のうち 40 人の保護者が同意し、21 日は 39 人が移動した。 17 日には、輪島市の中学生 258 人が白山市に集団避難している。 (yomiuri = 1-21-24) 「下を向いてもいられん」能登島で寒ブリ漁再開、大物が次々と水揚げ 能登半島地震で被災した石川県七尾市の能登島にあるF目(えのめ)漁港で、定置網漁が再開した。 いまは寒ブリの最盛期で、10 キロを超す大物が次々と水揚げされている。 道路の損傷や断水など課題は多く残っているが、地元の漁師は「ずっと下を向いてもいられん」と前に進み始めている。 18 日午前 4 時過ぎ、能登島沖の真っ暗な海から、3 隻の漁船が次々と帰ってきた。 小雨が降る中、漁師たちが水揚げされた魚を慣れた手つきで仕分けていく。 目にとまるのは一抱えもある寒ブリだ。 この日も白い腹が肥えたブリが、1 隻当たり数十本ずつ水揚げされ、金沢の市場などへ出荷されていった。 県によると、地震や津波で、県内 69 漁港のうち 58 港が地面の隆起などの被害を受けた。 船や定置網への被害も甚大で、再開のめどがついていない港が大半だ。 F目漁港も製氷機が使えなくなった影響などで漁を見合わせていた。 しかし、金沢の市場からトラックで氷を運ぶ手はずが整い、10 日に漁を再開した。 七尾市内の大部分では断水が 2 カ月以上続く見通しで、氷の確保にも苦労が続く。 それでも網元の坂本一之さん (40) は「漁に出られることがありがたい。 仕事を取り戻すことで、能登全体にも活気が戻れば。」と話した。 (若井琢水、asahi = 1-20-24) 住宅被害、石川県内で 3 万棟超える 輪島・珠洲市内はいまだ全容不明 最大震度 7 を観測した能登半島地震で、石川県は 20 日、住宅被害が 3 万棟を超えたと発表した。 被害が大きい輪島市と珠洲市は全容がわかっておらず、ほとんどが集計に含まれていないため、今後さらに増えることは確実だ。 被災地では応急仮設住宅の着工が進むものの、土地や業者の不足が課題となっている。 この日、馳浩知事は穴水町と能登町の被災地を視察。 記者団の取材に「(断水が続く)水と仮設住宅(の着工)を何としても急がないといけない」と述べた。 住宅被害については「数字の確定は、市町に急いでもらっている。 仮設がどれだけ必要になるのか、他のインフラ整備にも直結することだ」と語った。 県によると、20 日午後 2 時時点の住宅被害は 3 万 1,670 棟。 「多数」とされていた輪島市が 870 棟と初めて実数を出すなど、前日より 1,774 棟増えた。 珠洲市は「多数」のままだ。 応急仮設住宅については、輪島市(76 戸)、珠洲市(90 戸)、能登町(66 戸)、穴水町(15 戸)で計 247 戸が着工済み。 20 日には穴水町と七尾市で計 91 戸が着工した。 だが、仮設住宅の入居応募は多く、必要数に追いついていない。 馳知事は「土地が決まっても、業者が限られている」と説明する。 現在は奥能登まで数時間かかる金沢に宿泊している作業員が多く、移動時間を短縮するため、宿舎や物資輸送の中継点を設ける考えだ。 石川県の発表では 20 日午後 2 時現在、死者は前日と同じ 232 人。 地震のためとは断定できないが連絡がとれない安否不明者は、計 22 人となっている。 (朝倉義統、伊藤智章、asahi = 1-20-24) 能登町の孤立集落、2 週間ぶりに全て解消 高齢女性が感謝の言葉 能登半島地震で、道路が寸断され孤立状態が続いていた石川県能登町の集落から 17 日、住民らが救出された。 自衛隊員に担架で運び出された高齢女性は、感謝の言葉を繰り返していた。
17 日午後、巨石や倒木が覆う道路のすき間を抜け、隊員らが高齢者らを担架で慎重に運んでいた。 「もう車のところまでおりて来ましたよ。」 隊員は毛布にくるまった高齢者に声をかけ、1 人ずつ自衛隊車両に乗せていった。 能登町の柳田信部地区では、社会福祉法人「多花楽(たから)会」の高齢者施設が孤立した。 事務長の砺波守法さん (58) によると、施設につながる道が土砂崩れで不通となり、入居者 7 人が閉じ込められた。 それから 2 週間あまり、崩れた斜面にはしごをかけたり、木の枝を折って隙間を作ったりして職員らが施設に通い、水や生活物資、ストーブなどを運びこんで、生活をつないできたという。 17 日は、救出された 7 人全員が、顔なじみの施設職員が通えるよう、施設から 1.5 キロほどの避難所へ移送された。 石川県によると、16 日時点で、輪島市、珠洲市、能登町の 3 市町で 8 カ所 143 人が孤立していた。 町によると、水滝地区の 5 人と柳田信部地区の 7 人が町内の避難所に運ばれ、能登町内は全ての孤立集落が解消したという。 発災直後から施設を支えてきた砺波さんは「電気も水もあるし、これでより快適な生活ができると思う」と安心した様子だった。 (吉備彩日、asahi = 1-18-24) 携帯大手 4 社、応急復旧は完了 被災現場へのアクセス「一番苦労」 能登半島地震により発生している携帯大手 4 社の通信障害は、土砂崩れなどで立ち入りできない地域を除いて応急復旧が完了した。 立ち入り困難地域でも、通行止めが解除され次第、2 - 3 日で応急復旧を完了させるという。 ただ、設備被害の全容は把握しきれておらず、本復旧への対応は長期化する恐れもある。 NTT ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの 4 社は 18 日、共同で記者会見を開き、通信の復旧状況を説明した。 通信障害の原因は、光ケーブルなどの設備の損傷や電波を届ける基地局の停電だが、17 日までに移動基地局車や発電機の搬入により、立ち入り可能な地域は応急復旧が完了した。 一方、損傷した設備を修理や新設する本復旧には時間がかかりそうだ。 各社の技術担当者らによると、今回の復旧で特に苦労しているのが、道路の寸断や大雪の影響による現場へのアクセスだ。 「これだけ被災をした設備に行きづらいというのは、今回の地震の特徴であり、我々が一番苦労したところ(NTT ドコモの小林宏常務執行役員・ネットワーク本部長)」という。 立ち入り困難地域では被害が把握しきれていないことに加え、本復旧には道路や電力の復旧も欠かせず、どれだけ時間がかかるかは見通せない状況だ。 今回の震災では、ドコモと KDDI が船上から電波を飛ばす「船上基地局」を共同で運用し、陸路からの復旧が困難な沿岸エリアに電波を届けた。 また、KDDI は人工衛星による通信サービス「Starlink (スターリンク)」を活用したり、ソフトバンクもドローン基地局を運行したりと、地上以外から電波を届ける技術を用いて対応している。 平時にも活用するこうした技術開発は各社とも進めているが、今回のような災害時にも有効な技術だとして、開発や災害時の利用をさらに進めていく考えだ。 固定電話やインターネット、また携帯各社も使う光ケーブルなども担う NTT 西日本も 18 日、復旧状況を明らかにした。 通信サービスの起点となる通信ビル 20 カ所が破損などの影響を受けたが、17 カ所で応急的な復旧が完了。 ビル間をつなぐ中継ケーブルでも最大 16 区間で切断などの損傷があったが、13 区間で新設するなどして復旧したという。 現地では、NTTグループ各社や関連会社からの応援も受け、800 人が連日、復旧作業にあたっている。 今後は、住宅などに直接通信を届ける電線や電信柱などの被害状況の把握を進めていくという。 NTT 西日本の桂一詞常務はオンライン会見で「被害状況の把握に努め、復旧部隊を現地に投入し、なるべく早く復旧できるよう努めたい」と語った。 (鈴木友里子、柴田秀並、asahi = 1-18-24) 能登半島地震の死者 232 人に 災害関連死 14 人、安否不明 21 人 能登半島を襲った最大震度 7 の地震で、石川県は 17 日、死者が前日より 10 人増えて 232 人になったと発表した。 うち災害関連死は 14 人。 安否不明者は 1 人減って 21 人だった。 午前 9 時現在。 県によると、輪島市の死者が 10 人増えた。 市町別の死者数は、▽ 珠洲市 99 人、▽ 輪島市 98 人、▽ 穴水町 20 人、▽ 能登町 7 人、▽ 七尾市 5 人、▽ 志賀町 2 人、▽ 羽咋市 1 人 - - となっている。 倒壊するなどの住宅被害は 2 万 2,363 棟に上っている。 (深尾昭寛、maninichi = 1-17-24) 米軍ヘリが支援開始、能登空港に食料品 自衛隊の 2 次避難輸送増で 能登半島地震の被災者支援で、食料品などの物資を載せた在日米軍のヘリコプター「UH60」が 17 日午後、航空自衛隊の小松基地を出発し、能登空港に到着した。 今回の地震で他国軍による支援活動は初めて。 防衛省によると、米軍は 18 日も同様の活動を行うという。 米国を含め各国から支援の申し出があったが、日本政府は受け入れ態勢が整わないことなどから、一律に支援を受け入れてこなかった。 ただ、米軍はヘリを日本国内に保有し、他国軍に比べ受け入れ態勢を整備する負担が少ない。 自衛隊による 2 次避難を希望する被災者の輸送が増えていることなどを踏まえ、防衛省が米軍に物資輸送を要請した。 林芳正官房長官は 17 日午前の記者会見で「米国の支援に心より感謝申し上げるとともに、日米同盟の緊密な連携のもとで引き続き政府一体となって震災対応に全力で対応したい」と述べた。 (田嶋慶彦、asahi = 1-17-24) NHK、自衛隊ヘリで中継局に燃料運搬 停波回避図る 能登半島地震 能登半島地震の影響で放送が停止する事態を避けるため、NHK は自衛隊のヘリを通じて中継局に燃料を運搬した。 総務省によると、NHK が 4 日に文書で国に要請。 補給された燃料で放送が継続できた中継局があったという。 NHK の稲葉延雄会長は 17 日の定例会見で「応急措置を速やかにしなければならないことになっていた」、「総務省から各放送事業者に対して要望確認があったので、民放と一緒に燃料輸送を依頼した。 必要な輸送ができ、ありがたかった。」などと語った。 ただ、輪島市内の約 700 世帯は NHK の地上波放送は現在も停止している。 山上にある中継局に燃料補給をするための道路が土砂崩れで寸断された上、ヘリでの補給も難しい状態が続いているという。 また NHK は、昨年 11 月末まで「BS プレミアム (BSP)」として使われていた衛星放送の「BS 103 チャンネル」を使って、地上波の「ほぼ全て」の番組を伝える取り組みを開始。 衛星放送の番組が見られるようにするため、16 日時点で、輪島市、珠洲市、能登町の避難所 10 カ所にアンテナを設置したという。 NHK と民放各社が中継局の設備を共同利用するための議論が昨年末から本格化しているが、稲葉会長は「改めてインフラの重要性が認識できた。 ネットの活用も含めて、中継地自体のあり方をどうするのか、重要な検討課題だと思う。」などと述べた。 (asahi = 1-17-24) 2 次避難いまだ 7%、住宅被害 2 万棟超 首相「支援パッケージ」指示 最大震度 7 を観測した能登半島地震で、石川県は 16 日、ホテルや旅館などの 2 次避難所に移った人が 1,278 人になったと発表した。 1 万 7 千人を超える避難者全体の 7% にとどまる。 調査が進む住宅被害が 2 万棟を超えたことも明らかにした。 県によると、避難者の 9 割はいまも体育館や集会所などの 1 次避難所に身を寄せており、生活環境の悪化に伴う災害関連死が懸念されている。 県は 14 日からコールセンターを設けるなどして 2 次避難の受け入れを進めているが、環境の変化を心配する被災者も少なくない。 一方、住宅被害は前日より 2,228 棟増えて 2 万 1,411 棟となった。 ただ、被害の深刻な輪島、珠洲両市については「多数」とされたままで、被害の全容は把握できていない。 岸田文雄首相は 16 日の非常災害対策本部会議で、被災者の生活となりわいの再建に向けた支援パッケージについて、月内にとりまとめるように関係閣僚に指示した。 「被災地の声がしっかりと反映されたものとなるよう作業を進めてもらいたい」と述べた。 首相は災害関連死を防ぐため、2 次避難を促す考えを改めて強調。 「住み慣れた土地に戻ってこられるという安心がなければ、なかなか 2 次避難を決断することはできない」と語り、インフラの復旧や仮設住宅の建設時期の見通しを示すことも指示した。 石川県の発表では 16 日午後 2 時現在、死者は前日と同じ計 222 人。 このうち 14 人が災害関連死とみられる。 地震のためとは断定できないが連絡がとれない安否不明者は、計 22 人となっている。 (asahi = 1-16-24) 滑走路に小さな亀裂 能登空港 未だ再開の見通し立たず 能登半島地震で被害を受けた能登空港。 発災から 2 週間が経つが、いまだ本格的な再開の時期について、見通しが立っていないという。 同空港は滑走路に出来た大きな亀裂を、11 日に応急処置し仮復旧した。 自衛隊の輸送機などが離着陸できるようになった。 しかし、石川県空港企画課によると一般利用客の本格再開までにはまだ時間がかかりそうだという。 担当者によると「滑走路にはいまだに小さな亀裂などもあり、ターミナルビルの補修工事も進めなくてはいけない」と話す。 県によると、同空港での民間機利用は 1 月 25 日以降になると見通しているが、再開は更に延びる可能性もある。 (竹花徹朗、asahi = 1-16-24) 輪島市の中学生 250 人、17 日から集団避難 県、犠牲者の身元公表 能登半島地震で被害が深刻な石川県輪島市は 15 日、市内の全中学生 401 人のうち約 250 人の集団避難を 17 日から始めると発表した。 同じく被害が大きい珠洲市も、199 人の中学生のうち 102 人が集団避難を希望していると明らかにした。 県は 15 日、犠牲者 23 人の名前などを初めて公表した。 元日の地震発生から 2 週間。 馳浩知事は記者会見で「被災者が生活する場所の確保、ライフラインの復旧を優先させている」と強調した。 輪島市教育委員会によると、集団避難するのは家族らが同意した中学生。 保護者の元を離れ、約 100 キロ離れた県南部の白山市にある 2 カ所の体験学習施設で寝泊まりしながら授業を受ける。 3 校ある市立中はいずれも避難所になり、校舎などの損傷も激しい。 小川正教育長は、学ぶ機会を確保するため「可能な限り正規のカリキュラムに近いものを工夫したい」と述べた。 避難の期間については「2 カ月以内に戻るのが願い」とした。 珠洲市では、市立中 4 校のうち 15 日までに再開したのは 1 校にとどまる。 泉谷満寿裕(ますひろ)市長は集団での避難先について「未定」とした。 一方、県は 15 日から、遺族の同意を得られた場合に限って死者の名前、住所(市町まで)、性別、年齢、死亡の原因の公表を始めた。 この日は 23 人分が公表され、馳知事は「その人の人生の尊厳、関わった方々への報告などを考えると公益性がある」と説明した。 県によると 15 日午後 2 時現在、死者は前日から 1 人増え計 222 人。 うち 14 人が災害関連死とみられる。 地震のためとは断定できないが連絡がとれない安否不明者は前日から 2 人減り、計 22 人となっている。 馳知事は被害の全容がいまだ把握できていないとした上で、「通信が途絶し、道が壊れ、職員が被災している。 (被災者のニーズに)十分に対応できる状況ではない。」と述べた。 (asahi = 1-15-23) 海岸も隆起、孤立続く集落 「風呂にはいれず」 珠洲市・片岩 石川県北部の海岸沿いにある珠洲市片岩地区は、地震発生から 2 週間を迎えるが孤立状態が続く。 自衛隊や消防、自治体の支援物資は届くものの、「31 日から風呂に入れていない」と話し、長引く避難生活に疲れを見せる被災者もいた。 海岸沿いは地震のために隆起。 100 メートル以上海岸線が遠のいた部分もある。 避難生活を送る人たちはほとんどが高齢者で、電気や水道が断たれた場所で暮らしている。 携帯電話の電波も一つのキャリアのみ通じるだけで、他は圏外だ。 地震前はサザエの集荷場だった小屋の前には発電機が設置され、住民が携帯電話を充電していた。 片岩区長の男性は「インフラがだめになって、地区が孤立している感じがする」と話した。 住民によると、3 日には自衛隊から援助物資が届くようになった。 現在は、定期的に自衛隊や、地区の消防団、自治体が物資を運んでいる。 区長は「自衛隊や地区の消防団には、ひっどい(とても)世話になっている。 いま何とかなっているのもみんなのおかげ。 来てくれる度に不安が和らぐんだ。」と感謝を口にした。 一方、長引く避難生活について、区長は「とにかく電気だけでも復旧して欲しい」と話す。 「水はわき水で食器を洗ったりしてなんとかやりすごせている。 でも、この生活が続くと衛生面が心配。」 この日、地区外の旅館へ住民を避難させる準備の説明が、市からあったという。 区長が住民に意見を聞いて回ったところ、自宅で避難を続けたい意見と半々に分かれた。 住民からは、「ずっと暮らしている片岩を離れたくない」、「避難でこれ以上つらい思いをしたくない」、「電気がなくても暮らせている」という意見も出たという。 区長は「もっとひどい被害を受けた地区を知っている。 だから、家に居られるだけでも幸せだと思っている。」と話した。 (田辺拓也、asahi = 1-14-24) 防衛省チャーターの大型フェリーで避難者受け入れ開始、調理したての食事と大浴場を提供 能登半島地震の被災者が休養できるようにと、防衛省は 14 日、石川県七尾市の七尾港に停泊する大型フェリー「はくおう(約 1 万 7,000 総トン)」で避難者の受け入れを始めた。 船内に 1 泊して、調理したての夕食と朝食が提供されるほか、大浴場も利用できる。 当面は市内の避難所ごとに希望を募り、最大 200 人ずつに 1 泊 2 日を過ごしてもらう。 初日は約 60 人が乗船した。 東京都内から帰省中に被災した大学院生 (28) は母、祖母と乗船し、「今年初めてお風呂に入ることができた。 さっぱりした。」と話した。 フェリーは同省がチャーターした。 2016 年の熊本地震でも休養施設として使った実績がある。 (yyomiuri = 1-14-24) 能登半島 7 市町の建物、少なくとも約 5 千棟が被害か 衛星画像で判読 能登半島の 7 市町で、少なくとも約 5 千棟の建物が地震の被害を受けたと推計されることがわかった。 測量大手「パスコ」が、フランスの地球観測衛星の画像から判読した。 このうち、36% にあたる数の建物は全壊のような激しい被害を受けたとみられる。 判読できたエリアは一部だけで、被害数はさらに増える可能性がある。 パスコは、2 日に撮影された衛星画像から、建物が壊れていたり、瓦が落ちたりしている建物を目視で 1 棟ずつ判読。 被害があった建物を数えたところ、4,865 棟あった。 このうち 1,765 棟は、倒壊などの著しい被害だったという。 衛星画像が撮影できていないエリアもあることから、パスコは「すべての被害を抽出したものではない」としており、実際の被害数はさらに多いとみられる。 (asahi = 1-12-24) 石川知事、孤立集落の「丸ごと避難」求める意向を表明 石川県の馳浩知事は記者会見で、道路の復旧のめどが立たず、孤立状態の長期化が判明した集落について、住民全員の一時避難を求める意向を表明した。 対象となる人数は 11 日時点で、輪島市や珠洲市などの 22 地区 2,300 人程度とみられ、金沢市以南の 2 次避難所に移したいという。 馳知事は「2 次避難所に集落ごと移ってください、とにかく出て下さいと説得している」と述べた。 (asahi = 1-12-24) 輪島市で応急仮設住宅の建設工事が始まる 能登半島地震の被災者が入る応急仮設住宅の建設工事が始まった。 石川県によると、今回は輪島市と珠洲市の 4 カ所に 115 戸を建設する。 30 戸を建設する予定の輪島市の農村ふれあい広場には、県の職員と作業員あわせて 10 人ほどが集まり、午前 10 時ごろから測量用の機械を設置し、建設場所に杭を打ち込むなどの作業を始めた。 (asahi = 1-12-24) 石川県の死者は 213 人に 最大震度 7 を観測した能登半島地震は 11 日、発生から 10 日が経った。 石川県は 11 日午前、死者が前日から 7 人増えて 213 人になったと発表した。 珠洲市の死者数増加によるもの。 県によると、11 日午前 9 時現在で、死者は輪島市 83 人、珠洲市 98 人、穴水町 20 人、七尾市 5 人、能登町 4 人、志賀町 2 人、羽咋市 1 人。 行方不明者は、輪島市が確認中としている。 (asahi = 1-11-24) 輪島市、全 3 中学の生徒集団避難を検討 対象者 400 人に意向調査 最大震度 7 を観測した能登半島地震で、石川県輪島市教育委員会は 11 日午前に記者会見し、市内にある全ての市立中学校 3 校に通う生徒約 400 人について、別の自治体への集団避難を検討していることを明らかにした。 保護者の同意を得られた生徒を対象とし、保護者への意向調査を始めた。 市教委によると、対象の市立中学校は、輪島中と東陽中、門前中の計 3 校。 避難所などになっていることから、学校再開のめどが立たず集団避難させる方向で調整に入った。 避難に応じた生徒たちは、親と離れた生活を余儀なくされることになる。 特に輪島中学校の状況は深刻だ。 約 600 人の被災者が身を寄せ、大規模な避難所として活用されている。 学校の上下水道は不通になっているほか、校庭の陥没や通学路の寸断が確認されているため、生徒たちの安全を早急に確保できない状態だという。 市教委の小川正教育長は「輪島市内での学校再開の判断は現時点で全くついていないが、最大でも 2 カ月程度で生徒たちを戻せないかと考えている」と語った。 (安藤いく子、mainichi = 1-11-24) 能登空港が仮復旧、輸送機発着可能に 岸田首相は非常災害対策本部会議で、石川県輪島市の能登空港の仮復旧が完了し、自衛隊輸送機の発着が 11 日から可能になったと明らかにした。 (kyodo = 1-11-24) 海自輸送艦「おおすみ」、能登半島沖の海上拠点に … 陸自ヘリで物資をピストン輸送 自衛隊は 10 日現在、被災地に 6,300 人を派遣して支援を続けている。 道路が寸断され、陸上からの輸送が困難となる中で、艦艇 9 隻のほか、ヘリなど約 40 機を投入し、海と空からの輸送にも力を入れる。 6 日からは、金沢港(金沢市)で物資を積んだ海自輸送艦「おおすみ」を能登半島沖に派遣し、海上拠点として活用。 陸自の大型ヘリ「CH147」を使って珠洲市と輪島市を結び、物資をピストン輸送している。 おおすみは、搭載するエアクッション艇「LCAC」によって、輪島市の砂浜に道路を復旧させる重機や、被災者向けの携帯電話基地局の車両も陸揚げした。 自衛隊は 9 日までに 437 人を救助。 各地で給水や入浴支援などを続けている。 (yomiuri = 1-10-24) 能登半島地震、日本の異例の対応に海外メディア注目 「『準備の文化』持つ」 能登半島地震をめぐり、海外メディアは災害対応を相次ぎ速報するとともに、日本人の地震への備えに焦点を当てるなど、地震に見舞われる他国との対応の違いを強調している。 英 BBC 放送(電子版)は雪降る状況の中、北陸地方以外から応援に来た警察官らが人命救出を懸命に行っている写真を掲載。 また、家屋が崩壊し、避難を余儀なくされている被災者に対し、自衛隊員が食料や水、毛布などを手渡ししている様子を詳述した。 また、積雪の多さで知られる米中西部ウィスコンシン州拠点の「ウィスコンシン州ジャーナル(電子版)」も、輪島塗の漆器とみられる器やギターなどの日常品が、半壊した民家から庭に持ち出されている写真を掲載し、被害の大きさを伝えた。 一方、「『準備の文化』を持つ日本」との見出しで今回の地震を報じた米ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」は、「数々の自然災害に見舞われた歴史を持つ日本は緊急事態の準備を的確に行う国の 1 つ。 この対応が人々の避難を助け、命を救うことにつながっている。」と指摘した。 具体例の一つとして、関東大震災(1923 年)があった 9 月 1 日に毎年、日本で地震訓練が行われていることを紹介。 「生徒まで訓練に参加し、三角巾で腕を吊ったり、ホースを使って消火したりする」と伝え、「これは極めて重要なことだ。 というのは、能登半島でみられるように、緊急サービスが地震後数日間にわたり、遮断される恐れがあるからだ。」と強調した。 さらに、訓練は「実際に何をすべきかを教えてくれる。 人々への信頼の重要性も教えてくれる。」との外国人居住者のコメントも紹介し、訓練に伴う「社会交流」が生存に直結する、と力説している。 (sankei = 1-10-24) 週内に「2 次避難所」 1 万人分確保へ 政府、災害関連死の防止に向け 能登半島地震の被災者の避難先として、ホテルや旅館などを活用する「2 次避難所」について、政府が被災自治体などと調整を進め、週内に石川、富山、福井、新潟の4県で約 1 万人分を確保できる見通しとなったことが分かった。 政府関係者が明らかにした。 2 次避難所の確保により、生活環境の改善や、避難生活の負担で命を落とす「災害関連死」を防ぐ狙いがある。 2 次避難所までの移動手段も確保する。 発生直後の避難先となってきた体育館や集会所などの「1 次避難所」では、水道や電気などライフラインが復旧せず、衛生環境の悪化や寒さ対策が課題となっている。 岸田文雄首相は 9 日にあった政府の非常災害対策本部会議で、高齢者や妊婦といった配慮が必要な避難者を最優先に、より安全な 2 次避難所への移動を促進するよう指示した。 林芳正官房長官は 10 日午前の記者会見で 9 日現在、石川県内で 5 千人分の 2 次避難所が確保されていると説明。 政府は今後もさらなる確保に向けて調整を続ける考えだ。 2016 年の熊本地震では、地震による「直接死」は 50 人で、災害関連死は 218 人だった。 今回の能登半島地震でも、水道や電気が復旧しておらず、支援物資も十分に届いていない避難所も多く、石川県によるとすでに災害関連死が 6 人出ている。 官邸幹部は「災害関連死をなくすことが重要だ」と話す。 ただ、2 次避難所を利用するかどうかは避難者の自主判断になるため、利用がどの程度進むかは未知数だ。 首相周辺は「利用者が増えてよりよい環境であることが広まってくれれば」と話す。 (西村圭史、asahi = 1-10-24) 「災害関連死 6 人」石川県が発表 能登半島地震の 死者 200 人超す 最大震度 7 を観測した能登半島地震の死者が 9 日、200 人を超えた。 石川県が発表した。 発災直後に大規模火災が起きた輪島市の「輪島朝市」周辺の焼け跡では、警察や消防による行方不明者の大規模な捜索も行われた。 より安全な避難所に高齢者らを移す動きも本格化している。 県によると、9 日午後 2 時時点の死者は前日より 34 人増え、202 人に上った。 県は、珠洲市で発生した災害関連死 6 人も含まれるとしている。 災害関連死は地震や津波で亡くなる「直接死」とは別に、災害による負傷の悪化や、避難生活の負担による疾病で亡くなること。 今回の地震での災害関連死の発表は初めてとなるが、同市は死亡の原因について「地震なのか、ご本人の病気の関係なのかはっきりしない。 暫定的に発表した。」(金田直之・同市副市長)としている。 地震のためと断定できないが連絡が取れない安否不明者は 102 人となった。 15 市町に開設された 404 カ所の避難所には計 2 万 6 千人以上が身を寄せるが、断水や停電が広域で続き、環境悪化が懸念されている。 県は、旅館やホテルを「2 次避難所」として活用するまでの「1.5 次避難所」として、ライフラインに問題がない金沢市内の大型体育館を用意。 この日、一部の被災者が到着した。 自治体が借り上げたホテルや旅館などの「2 次避難所(9 日時点で 168 施設)」の受け入れも本格化している。 人や物資の輸送が難しい孤立集落は 2 市 1 町の計 22 地区で 3,123 人にのぼっている。 被災地への物資支援のため、政府は同日の閣議で、今年度予算の予備費から 47 億 4 千万円を支出することを決めた。 閣議後の非常災害対策本部会議で、岸田文雄首相は「(被災地の要請を待たない)プッシュ型支援を加速させるため迅速に執行し、被災地の状況改善に充ててほしい」と述べた。 政府は別途、復旧・復興対策に備えるため、新年度当初予算案に盛り込まれた予備費を今の 5 千億円から 1 兆円に倍増させる方針。 自治体による復旧事業に国庫補助率の引き上げなどの特例措置を適用するため、能登半島地震を「激甚災害」に指定する方針も示している。 (asahi = 1-9-24) 安否不明 323 人に急増、県職員派遣で作業進む 避難所に 2.8 万人 最大震度 7 を観測した能登半島地震は 8 日、発生から 1 週間を迎えた。 石川県によると、死者は 168 人で、約 2 万 8 千人が避難所に身を寄せている。 被災地では雪が降り続くなかで捜索が続く一方、生活の拠点を移すための動きも始まった。 県によると、8 日午後 2 時時点の死者は前日より 40 人増え、168 人に上った。 地震のためと断定できないが連絡が取れない安否不明者は、前日より 128 人多い 323 人となった。 輪島市で大幅に増え、市によると、県職員の派遣を受けて事務作業が進んだという。 人や物資の輸送が難しい孤立集落は 2 市 2 町の 24 地区に上り、取り残された人の数も前日より増えて、約 3,300 人となった。 15 市町に開設された約 390 カ所の避難所には計 2 万 8 千人以上が身を寄せている。 輪島や珠洲など 3 市 3 町では、ほぼ全域で断水が続く。 避難所ではノロウイルス感染なども報告されており、劣悪な環境を改善しようと新たな生活拠点の準備が進む。 県は 8 日、旅館やホテルを 2 次避難所として活用するまでの「1.5 次避難所」を金沢市内の大型体育館に開設し、受け入れが始まった。 自治体が旅館やホテルの空室を借り上げる 2 次避難所は 8 日時点で、県内 110 施設に最大約 3 千人分の部屋を確保したという。 要配慮者を優先し、9 日から受け付けを始める。 こうした 2 次避難所について、松村祥史防災担当相は 8 日、首相官邸で記者団の取材に応じ、利用額の基準を 1 泊 1 人 7 千円から 1 万円に引き上げると明らかにした。 松村氏は「被災者の方々が安心して避難生活を送れるよう、環境の整った避難先の確保は喫緊の課題だ」と述べた。 民間の賃貸住宅を最大 2 年間借り上げて提供する「みなし仮設住宅」の受け付けも、県内 8 市町で始まっている。 岸田文雄首相は 8 日、首相官邸で開いた非常災害対策本部会議で、能登半島地震を「激甚災害」に指定する方針を示した。 自治体が行う復旧事業については、国庫補助率の引き上げなどの特例措置が、地域を限定せずに適用される見通しだ。 首相は同会議で、「地域を限定しない激甚災害の指定の基準を超過する見込みが立った」と発言。 そのうえで、閣議決定に向けた準備を進めるよう関係閣僚に指示した。 (asahi = 1-8-24) 約 7 万戸が依然として断水 厚労相、給水車派遣「さらに増加」 最大震度7を観測した能登半島地震について、厚生労働省は 8 日、同省災害対策本部会議を開いた。 被災地の断水が続いていることから、給水車の派遣支援を増強する方針を明らかにした。 同日午後 4 時時点の被害状況まとめでは、石川県を中心に計 7 万 395 戸で断水中。 同県には日本水道協会が給水車 82 台を派遣している。 武見敬三厚労相は同日の対策本部会議で「さらに派遣数を増加させる」と表明した。 また、同省は避難生活の長期化を見据え、保健師らのチームを被災地に派遣して健康管理対策を強化するとした。 広域の自治体からの支援により、6 - 8 日の 3 連休までに保健師ら 14 チームを被災地に派遣。 石川県珠洲市、同県能登町、同県穴水町、同県七尾市や同県庁で被災者の健康管理などにあたる。 9 日以降、さらに 11 チームを同県輪島市、金沢市に派遣する方針。 一方、社会福祉施設の被害状況については、8 日午後 4 時時点で、高齢者施設は 141 施設が断水、19 施設で停電。 障害者関係施設は 26 施設で断水、3 施設で停電し、ほか救護施設の 1 施設が断水している。 (関根慎一、asahi = 1-8-24) 周期 3 秒の長く強い揺れ、木造の壊滅的被害招く? 珠洲で専門家調査 能登半島地震で震度 6 強を観測した石川県珠洲市に、金沢大の村田晶(あきら)助教(地震防災工学)と金沢工業大の須田達(たつる)教授(建築学)が 3 日、調査に入り記者も同行した。 村田さんは倒壊した建物を見て回り、「被害を受けていない家屋を見つけるのが難しいくらいだ」と話す。 大きな被害をもたらしたキーは地震波の周期と、建物の疲労だという。 村田さん、須田さんは金沢市から、普段なら車で 2 時間半の距離を 7 時間かけ現地に入った。 至る所で橋の取り付け部分に数十センチの段差があり、道路も陥没していた。 調査したのは珠洲市正院町正院・小路の地区。 神社や寺、古い家が多いエリアだ。 「建物の倒壊が他の地区と比べて明らかに多い。 壊滅的だ。」と村田さんがつぶやく。 倒壊で折れた木材が雨にぬれ、あたりは木の匂いが漂っていた。 住職「目の前で本堂が潰れた」 住宅街にある高福寺の本堂は、ぺしゃんこにつぶれていた。 大きな屋根が前方に折り重なるように倒れ、原形はわからない。 住職の波佐谷兼潤(はさたに・けんじゅん)さん (48) は 1 日夕、外出先から車で戻って来た時に激震に襲われた。 ゴゴゴーという轟音(ごうおん)と砂煙を残して、目の前で本堂が潰れ、鐘楼が倒れた。 見ているしかできなかったという。 車を止めようとした駐車場は 2 階部分の建物が崩れた。 「あと 1 秒遅かったら車を中に入れていた。 家族 6 人が全員無事で、とにかくよかった。」とやつれた様子で話す。 近所の人も 1 人亡くなったと聞いた。 周囲を調査した村田さんは「やはり被害は大きい。 特に寺院などの木造の建物が崩れている。 (震度 6 強を観測した)昨年 5 月の地震と比べものにならない被害だ。」と指摘する。 さらに「地震記録を見る限り、地震に耐える建物を設計する際の想定をはるかに超える揺れに襲われたようだ」と話し、建物の全壊率は昨年の地震よりもはるかに大きくなるとみている。 ここまで壊滅的な建物被害となったのはなぜなのか。 特徴的な地震波、群発地震 … 建物被害をもたらしたのは 一つは、地震波の特徴だ。 須田さんは「珠洲市は、建物に大きな影響を与える地震波の波形が出ている」と話す。 須田さんが 1 日の地震波を解析した結果、木造家屋などの中低層の建物が倒壊しやすい周期 1 - 2 秒の強い揺れが各地で観測された。 この周期の揺れは、阪神・淡路大震災(1995 年)や熊本地震(2016 年)でも観測され、多くの家屋が倒壊した。 今回の地震の周期 1 - 2 秒の揺れは、それらと同等かそれ以上の強さとなっている。 さらに、現地調査した近くの観測点では、周期 3 秒の強い揺れも起きていた。 建物をゆっくりと大きく揺らす周期だ。 現地で確認できた六つの神社や寺は、軒並み「全壊」していた。 屋根瓦のある木造家屋も多くが傾いたり、倒壊したりしていた。 須田さんは「神社や寺などの木造の建物は、屋根が比較的重いため、3 秒程度の長周期で揺れやすい。 建物が、周期 3 秒の揺れと合って共振し、被害が大きくなったのではないか。」と指摘する。 地盤の揺れは地層によって異なるが、この周辺は元々地盤がやわらかく、周期 3 秒の揺れが出やすいとみられている。 一方、最大震度 7 の志賀町では、周期 1 - 3 秒の揺れは比較的小さかったという。 村田さんは加えて、3 年前から能登半島で続いた群発地震で蓄積されたダメージの影響があったとみている。 珠洲市では、22 年 6 月に震度 6弱、23 年 5 月に震度6強の地震が発生。 「繰り返し大きく揺れると、柱と梁(はり)の接合部分や壁の強度が落ちてしまう。 建物に疲労が蓄積していたのだろう。」と説明する。 すでに傷んでいた家屋を今回の激震が再び襲った形だ。 珠洲市内には約 6 千世帯の住宅があるが、倒壊した家屋に人が閉じ込められているとみられ、消防や自衛隊などによる救助活動が続いている。 (石倉徹也、asahi = 1-8-24) |