自動車関税 15% に引き下げ トランプ氏が大統領令署名、月内実現へ

日本の外交

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「安全の保証」有志連合 26 カ国が合意 「軍派遣か陸海空に展開」

ウクライナ危機

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ポルトガルのケーブルカー脱線、死者 16 人に 2018 年にも事故

ポルトガルの首都リスボン中心部で 3 日、観光客に人気のケーブルカー・グロリア線の車両が脱線して建物に衝突し、16 人が死亡した。 同国のモンテネグロ首相が 4 日発表した。 負傷者は 20 人以上に上るという。 地元テレビ局 SIC によると、事故は現地時間 3 日午後 6 時 5 分ごろに発生。 同局は目撃者の話として「ものすごい速さでケーブルカーが斜面を下り、建物にぶつかって大破した」と伝えた。 車両は約 40 人乗りで、事故当時は多数の乗客が乗っていた。

被害者にはドイツ人や韓国人など多くの外国人が含まれているが、在ポルトガル日本大使館によると、現地時間 4 日朝の時点で日本人が巻き込まれたという情報は入っていない。 地元観光協会のホームページなどによると、グロリア線は 1885 年に開業し、全長は約 300 メートルで、勾配は最大 17 度で、高台の観光名所「サン・ペドロ・デ・アルカンタラ展望台」と市中心部の広場を結ぶ。 2018 年にも脱線事故が起きたが、死者は出なかったという。

ポルトガル政府は事故を受け、4 日は国として喪に服すことを決定。 レベロデソウザ大統領は、「悲劇に見舞われたご遺族に哀悼の意を示すとともに、速やかな原因の解明を望む」と声明を発表した。 (パリ・坂本進、asahi = 9-4-25)


アフガニスタン地震の死者 2,205 人に タリバン公表

アフガニスタン東部で 8 月 31 日深夜に発生したマグニチュード (M) 6.0 の地震で、同国を支配するイスラム主義勢力タリバンの暫定政権の副報道官は4日、死者が 2,205 人に達したと、自身の SNS で明らかにした。 けが人は 3,640 人に上るという。 (鈴木暁子、asahi = 9-4-25)


「世界が米国に反旗」 関税戦争でトランプ孤立、ブラジルと EU が強硬姿勢を鮮明に

米トランプ政権

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進歩系の李在明大統領、日本重視の背景 トランプ政権みすえ実利優先

韓国、新政権始動

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首相、インド洋・アフリカ経済圏構想を発表 TICAD、横浜で開幕

アフリカ諸国の首脳らを日本に招き、開発について議論する第 9 回アフリカ開発会議 (TICAD 9) が 20 日、横浜市で開幕した。 石破茂首相は開会式で、インドからアフリカまでの一帯を一つの経済圏ととらえて発展に寄与する「インド洋・アフリカ経済圏イニシアチブ」を表明。 インド洋諸国と連携し、日本企業のアフリカ進出を支援する方針を示した。

アフリカ投資促したい政府、民間はリスク警戒 薄れる日本の存在感

同イニシアチブの目的は、インドや中東諸国といったインド洋諸国とアフリカ経済圏の連結性を強化することにある。 インドや中東の拠点からアフリカに輸出する日本企業が増えていることから、それら第三国の企業と連携したアフリカへの投資を後押しするのが狙いだ。 首相はアフリカ内陸の銅鉱石の産出国から東岸をつなぐ「ナカラ回廊」の整備に関する ODA (政府の途上国援助)も表明。 アフリカ域内外の連結性を高め、鉱物資源のサプライチェーン(供給網)を強化する。

首相は 25 年前にセネガルを訪問し、学生と交流した経験を振り返り「アフリカが成長センターとなる鍵は、若者と女性の能力強化と雇用確保を進めることだ」と説明。 AI (人工知能)分野で活躍する人材を 3 年間で 3 万人育成することを目指すほか、途上国などでワクチン普及を進める国際組織「Gavi ワクチンアライアンス」に今後 5 年間で最大 5.5 億ドル(約 800 億円)を支援する。 また、日本とアフリカ開発銀行が連携して民間セクター開発を支援する枠組みを強化し、最大 55 億ドル(約 8 千億円)の資金協力を行う方針だ。

一方、毎回恒例となっていた官民での投資総額の目標の公表を見送った。 前回の 2022 年開催の TICAD 8 では、岸田文雄首相(当時)が今後 3 年間で官民あわせて 300 億ドル(約 4.4 兆円)を投資すると表明していた。 TICAD にはアフリカ 54 カ国のうち 49 カ国が参加。 うち 33 カ国は首脳級が出席している。 (加藤あず佐、asahi = 8-20-24)

石破首相が TICAD 9 で表明した主な支援内容

  • 「インド洋・アフリカ経済圏イニシアチブ」により貿易・投資を促進
  • アフリカ内陸から東岸をつなぐ「ナカラ回廊」を ODA で整備
  • 日本とアフリカの経済連携を探る「産学官検討会」を設置
  • 3 年間で 30 万人の人材育成を実施。 AI (人工知能)分野では 3 年間で 3 万人を育成。
  • 教育分野で 1 千万人の子どもの学習環境を改善。 15 万人の高度人材を育成。
  • 日本とアフリカ開発銀行の協調枠組みで 55 億ドルの資金協力
  • アフリカのスタートアップ(新興企業)と日本企業の協業を促進
  • 国際組織「Gavi ワクチンアライアンス」へ 5 年間で最大 5.5 億ドルを支援

パキスタン山岳地帯で水害頻発、死者 300 人超 インドでは鉄砲水

パキスタンの山岳地域で豪雨による洪水や土砂崩れが頻発し、地元紙ドーンは 16 日、15 日からの 2 日間で死者が 300 人を超えたと報じた。 パキスタンでは 6 月下旬以降、モンスーン期の大雨による水害が各地で相次いでいる。 アフガニスタンと国境を接する北西部カイバル・パクトゥンクワ州では、少なくとも 307 人が死亡。 豪雨による鉄砲水で、家屋や学校が流されるなどの被害が各地で出た。 落雷による被害も報じられる。 また、当局は 15 日、救援活動中のヘリが悪天候で墜落し、搭乗者 5 人が死亡したと発表した。 付近では強い雨が 21 日まで続くと予想され、今後被害が拡大する可能性もある。

インドとの係争地を抱える北部カシミール地方でも被害が出ている。 ギルギットバルチスタン州では少なくとも 12 人が死亡。 鉄砲水や、氷河から流れ出した水でできた湖の決壊などが起きている。 都市部でも停電や断水が生じ、幹線道路や橋も寸断され、住民や観光客が孤立した状態となっている。 隣国インドでも、山岳地帯で鉄砲水の被害が相次ぐ。 北部ジャム・カシミールで 14 日に鉄砲水が発生。 現地報道によると、少なくとも 60 人が死亡した。 (バンコク・伊藤弘毅、asahi = 8-16-25)

◇ ◇ ◇

インド山岳地帯で鉄砲水相次ぐ 気候変動で「ホットスポット」化か

インド北部の山岳地帯で、大規模な鉄砲水が相次いでいる。 地元メディアは、ヒマラヤ山脈のふもとの同国北部で近年、水害の発生頻度や犠牲者数が増えていると報じている。 背景に気候変動の影響も指摘されている。 北部ジャム・カシミールで 14 日、鉄砲水が発生。 少なくとも 60 人が死亡した。 PTI 通信が伝えた。 行方不明者も多数いるとみられる。 現地報道によると、現場は山間部の村で、ヒンドゥー教寺院への巡礼ルートの拠点だ。 年に 1 度の巡礼期間中で、多数の巡礼者が滞在していた村の施設も流されたとみられる。 連邦政府は災害対応部隊を派遣した。

5 日には、北部ウッタラカンド州で鉄砲水が起きたばかりだった。 現地の人道支援団体などによると、少なくとも 6 人が死亡、68 人以上が行方不明だという。 地元紙インディアン・エクスプレスは、集落の上流部で、氷河から溶け出した水でできた湖が決壊した可能性があるとの専門家の見解を伝えた。

気象当局が原因究明を進めている。 地元紙タイムズ・オブ・インディアは、過去 10 年間に同州だけで、鉄砲水や地滑りにより 705 人が死亡したと報道。 この 15 年で水害の頻度が増え、規模も大きくなっているとの研究を引用し、気候変動により付近が水害の「ホットスポット」になりつつあるとした。 (バンコク・伊藤弘毅、asahi = 8-15-25)


オーストラリアもパレスチナを国家承認の意向 仏・英などに続き

ガザ住民の運命は

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インパール作戦の地で慰霊式 「戦争は全て奪う」 記憶の継承は課題

第 2 次世界大戦中に日本軍が占領をめざし、多くの兵士や住民が死傷したインド北東部インパールで 9 日、慰霊式が開かれた。 戦後 80 年を迎える今年、現地では次の世代に記憶をつなぐ模索も続いている。 式典には現地の日本大使館の職員や地元のマニプール州の政府職員、2019 年に開館したインパール平和資料館の関係者らが出席。 慰霊碑の前で黙?を捧げた小野啓一大使は、「戦争は全てを奪い、何も与えないということを、私たちは決して忘れてはならない」とあいさつ。 旧日本兵の遺骨収集や経済協力を続けると述べた。

日本軍は 1944 年、英領インド北東部の要衝に攻め込む「インパール作戦」を実施。 食料や武器弾薬の不備などで 3 万人超が命を落としたとされる。 飢えやマラリアに感染して死亡した人も相次いだ。 激戦地レッドヒル(赤い丘)のふもとに建設された平和資料館には、旧日本兵のヘルメットや銃弾など約 500 点の展示品が並ぶ。

「過去の過ち繰り返さないよう」

開館から 7 万 2 千人以上が訪問したというが、コロナ禍や現地の治安悪化によって想定を下回る。 生存者の証言を動画で記録する取り組みも進むが、ジョイレンバ館長は「記憶の真実性と感情的な力をどう保つかが大きな課題だ」と話す。 当時、現地で戦闘を目撃したタオレム・ゴウラムホンさん (95) は「英国側の防空壕の占領を狙っていた日本軍と、英軍の戦闘で大勢の兵士が亡くなった。 雨期の時期だったので、雨が流れる時に血が混ざっていた。」と振り返る。 「戦後、日印両国は良好な関係を続けてきた。 平和が続くことを願っている。」と語った。

現地で遺品の発掘に取り組んできた地元の会社員ユンナム・ラジェシュワルさんは、「これらの品がなければ、未来の世代がこの場所で戦争が行われたということを知ることもできない」と述べ、「誰もが歴史の教訓から学ぶ必要がある。 過去の過ちを繰り返さないように。」と話した。 (インパール・石原孝、asahi = 8-9-25)


子供ら 129 人が犠牲のテキサス洪水 発生 1 週間、政権方針に変化も

米南部テキサス州で甚大な被害を出している洪水の発生から 11 日で 1 週間が経った。 米 CNN によると、11 日現在、州内で子供を含む少なくとも 129 人が死亡し、150 人以上が行方不明とされる。 「トランプ政権が進める政府機関の人員・予算の削減が影響したのでは」との見方も伝えられる中、11 日に現地を視察したトランプ大統領は、問題はなかったと強調した。

水害の危険区域に施設を増設

被害が最も大きかったのは州内有数の都市サンアントニオから北西へ 100 キロのカー郡だ。 4 日に降った大雨で郡内を東西に流れるグアダルーペ川の水位が上昇。 11 日現在、郡内だけで子供 36 人を含む 103 人の死亡が確認された。 少女向け夏季キャンプ施設「キャンプ・ミスティック」では、増水した川の流れが宿泊施設などを直撃。 滞在中の少女やスタッフのうち少なくとも 27 人が死亡した。

施設のウェブサイトや米紙ニューヨーク・タイムズ (NYT) によると、キャンプは 1926 年設立のキリスト教系の民間教育施設で、少女らが 2 - 4 週間滞在してスポーツなどを楽しめるプログラムを提供。 被災当時は約 750 人が参加していた。 NYT は、6 年前の大規模拡張で水害危険区域に複数の宿泊施設を新設していたと伝えた。

気象局、政権の人員削減対象に

甚大な被害を生んだ背景として警報発出が夜間になったことも指摘され、トランプ政権による政府機関の縮小方針が改めて注目されている。 NYT によると、米国立気象局は大雨前日の 3 日午後にカー郡を含む州中南部を対象に洪水注意報を発出していたが、最も警戒度の高い「極めて危険な状況」の警告を出したのは、未明の 4 日午前 4 時過ぎだった。

米公共テレビ PBS によると、カー郡を管轄する気象局の地方事務所は定員 27 人中 6 人が欠員状態だった。 このうち、警報の発出や地元自治体との連絡を担う役職については、勤続 17 年のベテランが 4 月に退職していたという。 トランプ政権は発足後、気象局の地方事務所の半数で 2 割の人員を削減し、ベテラン職員の早期退職も促していた。

トランプ氏「そんな質問するのは悪人」

トランプ氏は 11 日の現地視察後、警報の遅れが多数の死者を生んだ可能性について記者団に問われ「皆が素晴らしい仕事をした。 500 年や 1 千年に一度の災害と聞いている。 そんな質問をするのはひどい悪人だけだ。」と述べた。 一方、米紙ワシントン・ポストは 11 日、災害対応を担う連邦緊急事態管理庁 (FEMA) の閉鎖方針が凍結されたと伝えた。 トランプ氏は大統領復帰前から「不法移民に金を使っている」などと根拠なく主張して閉鎖を訴えてきたが、今回の災害を受けて方針を変えたという。 (ニューヨーク・田中恭太、asahi = 7-12-25)

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テキサス洪水の死者 100 人超、キャンプの子どもら犠牲 政権批判も

米テキサス州で夏季キャンプに参加した少女らを巻き込んだ激甚な洪水の被害は、7 日時点の死者数が少なくとも 104 人に達した。 CNN が報じた。 少女向けの夏季キャンプとして長く運営してきた被災地の「キャンプ・ミスティック」は 7 日、参加者と指導員計 27 人が死亡したと明らかにした。 4 日未明の豪雨で激しい洪水が起きたグアダルーペ川流域では、悪天候のなか、行方不明者の捜索が続く。 死者 100 人を超える被害につながった背景にも関心が集まっている。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、被害の大きかったカー郡の関係者は「住民が公的支出に賛成せず、警報システムがなかった」と証言した。 7 日の記者会見で地元当局者は「携帯電話の通信状況や緊急警報など、あらゆる点について(適切だったか)検証したい」と述べた。 米メディアからは、トランプ政権が「政府効率化省 (DOGE)」を通じて国立気象局 (NWS) の人員削減を進めたことも影響したのではないかとの見方も出ている。 レビット大統領報道官は 7 日の記者会見で反論し、「(政権に敵対する)民主党が政治的ゲームとして利用している」と述べた。 (ニューヨーク・青山直篤、asahi =7-8-25)

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米テキサスの洪水、死者 51 人に キャンプ中の少女 27 人行方不明

米南部テキサス州で、4 日に発生した集中豪雨による洪水で、米メディアは 5 日、死者が子ども 15 人を含む 51 人になったと報じた。 サマーキャンプに参加していた 27 人の少女が行方不明になっている。 AP 通信によると、4 日の夜明け前の豪雨でグアダルーペ川の水位が 45 分間で 8 メートル上昇。 氾濫した川の水が家屋や車両を押し流し、キャンプ場が点在する丘陵地帯を襲った。 行方不明者の捜索活動がヘリコプターやボート、ドローンを使って続けられており、地元当局はこれまでに約 850 人を救助したと発表した。 (河崎優子 長島一浩、asahi 7-6-25)


トランプ氏に「あなたの勝利」 NATO の弱さ示した異例の首脳会議

オランダ・ハーグで 25 日に開かれた北大西洋条約機構 (NATO) の首脳会議は、トランプ米大統領に「勝利」を捧げるための儀式の様相を呈した。 米国の強い要求に応じ、加盟国が支出する防衛費を国内総生産 (GDP) 比で 5% に引き上げる新目標で合意。 争いのある議題を避け、会議時間も大幅に短縮する異例なものとなった。

NATO 防衛費 5% 採択 首脳宣言で新目標、多くの国に重い財政負担

会議は、ウクライナ支援や NATO の集団防衛条項にも疑問を呈すトランプ氏を引き留めるために入念に準備された。 首脳宣言も、バイデン前政権下で行われた昨年は 38 項目に及んだが、今年は防衛費増額を含むわずか 5 項目に絞られた。 NATO のルッテ事務総長は会議冒頭、加盟国の防衛費増額について「トランプ大統領、親愛なるドナルド、あなたがこの変化を可能にした」と持ち上げた。  トランプ氏は前日、ルッテ氏からのメッセージを SNS に公開。 そのへりくだった内容は、NATO が置かれている弱い立場を如実に示した。

ルッテ氏はまず、国際法違反も指摘される米軍のイランの核施設攻撃を称賛し、「あなたはハーグでもう一つの大きな成功に向かっています」とつづった。 防衛費増額について、「あなたは何十年もの間、どの米大統領も成し得なかったことを達成する」、「欧州は大きな額を払うことになるでしょう。 そうすべきであり、これはあなたの勝利です。」とした。

トランプ氏の機嫌を損なわないためにも、防衛費増額は加盟国間で、事前に同意しておく必要があった。 ただ、防衛費の新目標をめぐっては、ウクライナに侵攻するロシアとの地理的距離や安全保障環境の違いを背景に、加盟国の間で温度差が生じている。 GDP 比 2% にも満たない加盟国も多く、1.24% のスペインは 5% は「不合理」として、会議を前に反発。 5% への引き上げ対象から除外するように求めた。 新たな目標設定に合意しても、達成は容易ではない。 マクロン仏大統領は「数字だけを見る議論は好きではない」と警戒感をにじませる。

日本にも水面下で要求

さらに、トランプ政権が求める防衛費の増額は、NATO 加盟国に限らない。 日本も防衛費を GDP 比で 3.5% とするよう米側に非公式に打診されていたことが複数の日米関係筋への取材で分かっており、今後正式な要求をされる可能性もある。 豪州も米側から、防衛費を GDP 比で 3.5% に増やすよう迫られており、日本も同基準を水面下で要求されている形だ。 欧州の 5% より低い水準にとどまる理由について、日本政府関係者は「米国に頼りきりだった欧州に自立を促す一方、アジアには対中抑止の観点から関与を続けるという米国の意思の表れだろう」と話す。

日本政府は防衛費を 2027 年度に GDP 比 2% (約 11 兆円)にする方針を掲げているが、以降の数値目標は決定していない。 「日本の防衛費は日本で決めるものだ(石破茂首相)」との姿勢で、米国からの圧力によって防衛費を増やす格好を取りたくないのが実情だ。 首相が直前になって今回の首脳会議への出席を見送ったのも、NATO 加盟国が GDP 比で 5% に引き上げる新目標で合意することを念頭に、日本も引き上げを米国に迫られる可能性を懸念したことも大きい。

一方、米国が日本に非公式に求めている GDP 比 3.5% は、24 年度の名目 GDP を元に計算すると約 21 兆円となる。「大事なのは金額ではなく中身だ(岩屋毅外相)」としているが、増額した場合の防衛費の使い道は不透明だ。 財源確保や自衛隊の人員不足の観点からも「最終的には 3% に落ち着くのでは(日本政府関係者)」との見方もある。 (杉山正・ハーグ、加藤あず佐、asahi = 6-25-25)

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内部から壊れゆく欧州 勢いづく「自国第一」が握るウクライナの行方

第 2 次世界大戦後に「反ナチス」を国是とし、欧州で右翼政党の伸長を最も警戒してきた欧州連合 (EU) の盟主ドイツで、排外的な主張を掲げる右翼「ドイツのための選択肢 (AfD)」が第 2 党に躍進した。 衝撃は欧州全体に広がる。

CDU のメルツ党首は 1 月、移民規制の厳格化を求める決議案を AfD の協力を得る形で可決させた。 総選挙後、AfD は連立政権に加わらない公算だが、主流派の各政党が移民規制などで AfD の主張にすり寄れば、ドイツの右傾化は進み、その影響は EU 各国にも及ぶ。 EU 加盟の 27 カ国のうち、右翼勢力が閣外協力や連立などで政権に参加している国はイタリアやハンガリーなど 9 カ国に上り、反移民や EU に懐疑的な立場で共通している。 ロシアのプーチン大統領と関係が近く、ウクライナ支援に反対するハンガリーのオルバン首相は、欧州の右翼勢力の結集を訴えている。

AfD のワイデル共同党首は選挙直前の今月 12 日、ブダペストでオルバン氏に面会した際、「どんな犠牲を払ってもオルバン氏と協力して EU を改革するべきだ。 EU の権限を縮小し、官僚主義的で腐敗した構造全体を解体する」と語り、左右の中道勢力が進めてきた欧州統合の流れを否定した。

決定的となった米政権と EU 主流派の溝

欧州は今、ウクライナ侵攻の停戦交渉をめぐって正念場を迎えている。 ドイツはウクライナにとって欧州主要国の中で最大の支援国であると同時に、兵器支援などでブレーキ役にもなってきた。 停戦案の焦点になっている平和維持部隊の派遣案でも、ショルツ首相は「議論は時期尚早」と述べ、仏英の首脳とは異なる立場を取っている。

ロシアとの関係正常化を望む AfD の躍進で、右傾化の波にのみ込まれたドイツがウクライナ支援をめぐる欧州の結束にブレーキをかければ、EU がロシアと急接近するトランプ米政権に歯止めをかけることも困難になる。 ウクライナ支援や北大西洋条約機構 (NATO) への米国の関与が減るリスクをさらに高めかねない。

トランプ政権で要職にある米起業家イーロン・マスク氏は投票日前日の 22 日にも X (旧ツイッター)で AfD への支持を訴えるメッセージを投稿した。 政権運営で AfD との協力を排除するドイツの既存政党を批判したバンス米副大統領とともに、EU を主導する主流派との価値観の違いは決定的になっている。 トランプ政権は排外主義的な移民規制などで欧州の右翼と同調する。 EU の欧州議会で、中道の主流会派が、トランプ政権の後ろ盾を受ける右翼勢力との協働を余儀なくされれば「EU が内部から壊れていく」との指摘もある。 (ベルリン・牛尾梓 宋光祐、asahi = 2-24-25)


「えらいことに」イランがホルムズ封鎖なら … 世界経済への影響甚大か

米国によるイランの核施設攻撃を受けた中東情勢の緊迫化は、世界や日本のエネルギー供給に大きな影響を与える恐れがある。 特に懸念されるのが、イランが報復として、ホルムズ海峡の封鎖に踏み切ることだ。 同海峡は、中東の主要産油国がペルシャ湾から原油を輸出する際の出口にあたり、世界で輸出入される原油の約 3 割がここを通過。 特に日本は原油の 9 割超を中東から輸入しており、日本に原油を運ぶタンカーの 8 割はホルムズ海峡を通るとされる。

仮に海峡が封鎖されたとしても、日本には約 250 日分の石油の備蓄があるため、すぐに流通が途絶えることはない。 ただ、中東からの原油の供給が滞れば、原油価格は高騰する可能性が高い。

電気代・ガス代あがる可能性も

原油価格の指標となる「米国産 WTI 原油」の先物価格は 1 バレル = 70 ドル台と、イスラエルによるイランへの攻撃前に比べて、すでに 1 割程度上昇している。 中東からの原油供給が停滞するとの懸念が高まっているためで、今後、全面的な戦争に発展すれば、価格はさらに上がる可能性がある。 原油の高騰はガソリンをはじめ、国内でさまざまなモノやサービスの値上がりにつながる可能性がある。 足元のレギュラーガソリンの全国平均価格は 171.2 円(16 日時点)。政府が補助金を1リットル 10 円の「定額制」に切り替えた効果もあり、約 2 年ぶりの安値をつけているが、今後は再び上昇に転じそうだ。

このため、政府は 26 日以降、ガソリンの平均価格が 175 円を上回りそうな場合は、その分を上乗せして補助金を支給することを決めた。石破茂首相は 22 日、記者団に、「国民生活に影響が生ずることがないよう、予防的な激変緩和措置を開始する」と語った。 火力発電や都市ガスに使われる液化天然ガス (LNG) の多くは原油相場と輸入価格が連動しており、電気代やガス代も上がる可能性がある。 電気事業連合会の林欣吾会長(中部電力社長)は 20 日の会見で、「原油価格には LNJLNG も非常に大きな影響を受ける。 強い懸念を持っている」と語った。

原油価格の高騰は事業者への影響も大きい。 日本製紙連合会の野沢徹会長は 20 日の記者会見で、中東情勢について「非常に懸念している。 (原油の主要輸送ルートにある)ホルムズ海峡の閉鎖とか最悪の事態になれば、えらいことになる」と話していた。 ここ数日のドバイ原油価格の急騰に言及し、「日本経済全体に与える影響は当然大きい。 製紙業界にとっても、いろんなところに影響が出てくる。」 製紙原料の化学薬品や、繊維を乾かすのに使う重油、製品や原料を運ぶ輸送費などが上昇していく可能性に言及し、警戒心を示した。

タンカーなどを航行する海運大手はどう対応するのか。 日本郵船では、タンカーや自動車運搬船など十数隻がペルシャ湾を航行している。 22 日時点では同海域への入域を一律にストップはしていないが、「より一層入念に状況を注視し、都度判断する(同社広報)」という。 商船三井でも航行は続けているが、特にアラビア海やホルムズ海峡の状況を注視し、情報収集を進めているという。 周辺地域の状況については、本社の安全運航支援センターが 24 時間体制で監視し、関係船舶に注意喚起を行っている。 (新田哲史、中村建太、山本精作、asahi = 6-22-25)


レアアース「脱中国」工程表の策定、G7 合意案判明
… 各国の「溝」露呈回避へ首脳宣言は見送る方向

カナダで 15 - 17 日に開催される先進 7 か国首脳会議(G7 サミット)で採択が予定される合意文書のうち、重要鉱物分野の原案が判明した。 世界有数のレアアース(希土類)などの生産国である中国への輸入依存度を下げることを念頭に、調達先の分散化に向けて目標期限を示す工程表を年内に策定する。 米国のトランプ政権と欧州の結束が乱れる中、サプライチェーン(供給網)の安定化は優先事項と捉え、足並みをそろえる形だ。

今回のサミットで各国は首脳宣言の採択を見送り、個別のテーマごとに合意文書を発表する方向で調整している。 トランプ政権の高関税政策やロシアのウクライナ侵略への対応を巡る G7 内の溝を露呈させないためで、重要鉱物のほか、人工知能 (AI) や山火事対策など、合意形成が比較的容易とみられる 7 分野の文書が準備されている。

読売新聞が入手した重要鉱物分野の原案では、「我々は国家安全保障と経済安全保障で共通の利益を有している」と指摘し、名指しを避けつつも中国依存のリスクに言及。 「重要鉱物の調達基準に基づいた(新たな)市場を形成する工程表を策定する」と明記した。 日米欧で共通の基準とし、各国政府が、基準を満たす採掘業者や投資企業に補助金を優先して拠出する方針も盛り込んだ。 調達基準については、イタリアでの昨年のサミットで、価格だけに着目せず、調達元の透明性や信用性など「非価格基準」を考慮する原則を確認していた。

欧州の外交筋によると、工程表では、この原則を迅速に具体化させるため、▽ 国際機関や鉱物採掘国、企業との協議、▽ 詳細な調達基準の策定、▽ 企業などに対するガイドラインの策定 - - といった課題に期限を設けることが想定されている。 ガイドラインでは「調達基準に満たない特定の国から一定以上の割合を輸入しない」などとする目標が見込まれているという。 G7 はメンバー国以外にも、こうした取り組みへの賛同を呼びかける方針だ。

レアアースは、電気自動車やスマートフォンなどに使用され、中国が世界生産量の 7 割を占める。 中国はトランプ政権による高関税政策への対抗策として、レアアースの輸出規制を打ち出している。 (yomiuri = 6-11-25)


2024 年度のインド GDP 成長率は 6.5% 「世界 4 位」主張も

インド政府が 30 日発表した、2024 年度(24 年 4 月 - 25 年 3 月)の実質国内総生産 (GDP) の成長率は、6.5% だった。 21 年度以降で最も低かったが、14 億を超える世界最大の人口規模に支えられ、世界的に見てなお高い成長率を保っている。 粗付加価値(GVA)で見た 24 年度の産業部門ごとの成長率は、製造業が 4.5% (前年度 12.3%) と伸び悩んだものの、建設業は 9.4% (同 10.9%) と高水準を維持した。

国際通貨基金 (IMF) によると、24 年のインドの名目 GDP は日本に次ぐ世界 5 位。 ただ、世界銀行によれば、23 年の 1 人当たり国民所得は隣国バングラデシュより低い。 トランプ米政権の高関税政策で世界経済の不確実性が高まるなか、今も成長途上のインド市場は、日系など外資企業にとって引き続き魅力的な投資先となりそうだ。

IMF は今年 4 月、インドの GDP は 25 年に約 4 兆 1,900 億ドル(約 603 兆円)となり、日本を抜いて 4 位になると予測した。 新興大国として自信を深める同国からは、強気の発言が相次ぐ。 地元経済紙エコノミック・タイムズは 27 日、モディ首相が地元グジャラート州での演説で「今やインドは世界 4 位の経済規模だ」と発言したと報道。 政府系研究機関トップなどからも同様の発言が相次ぐが、いずれも IMF の予想を元にした「先走り」の発言とみられ、その通りになるかは現時点で不明だ。

焦点となる関税・通商交渉

インドの産業育成や経済成長に影響を与えそうなのが、トランプ政権の高関税政策と、同国との通商交渉だ。 インドは主要な貿易相手国の米国から、相互関税で 26% の関税をかけられた。 ただ、より高い税率が中国に課されたことで、米アップルが iPhone の米国向け生産をインドに移管すると発表するなど、製造業振興を図るモディ政権にとって思わぬ「利益」も転がり込んできた。 とはいえ、トランプ大統領はアップルの方針に苦言を呈し、iPhone を米国内で生産するよう求めるなど、先行きは見通せない。

インドメディアは、米印の関税引き下げ交渉が早ければ 6 月下旬に暫定合意する可能性があると報じる。 両国は今秋にも、二国間貿易協定の第一段階に合意したい構えも見せる。 現在インドが課している、工業製品や農畜産品に対する輸入関税の大幅引き下げや撤廃も見込まれ、それぞれの交渉の行方はインドの国内産業に影響を及ぼす可能性もある。 (バンコク・伊藤弘毅、asahi = 5-30-25)