韓国大統領に李在明氏が就任 「憎悪ではなく認め合う世の中を作る」 韓国の大統領に 4 日、進歩(革新)系・共に民主党の李在明(イジェミョン)氏 (60) が就任した。 3 日に投開票された大統領選の結果を中央選挙管理委員会が 4 日午前に確定させ、李氏を当選者に決定した。 非常戒厳を出した尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の罷免に伴い実施された大統領選は、尹氏の弾劾訴追を主導した野党指導者の勝利によって幕を閉じ、約 3 年ぶりに進歩系の政権が始動することになった。 李氏は未明に国会周辺の広場に集まった支持者らを前に演説。 「大統領の責任は国民を統合させることだ」、「憎しみや嫌悪ではなく、認め合い、協力しながら共に生きていくような世の中を作る」などと述べ、韓国で深まる政治や社会の分断の克服に向けて決意を示した。 演説後には涙を流す聴衆の姿もあった。 李氏は 4 日午前、ソウルの国会議事堂で「憲法を順守し、国家を守り、祖国の平和的統一と国民の自由と福祉の増進に努め、大統領としての職責を誠実に遂行する」と就任の宣誓をした。 尹政権を支えた保守系与党・国民の力から立候補した金文洙(キムムンス)前雇用労働相 (73) も 4 日未明に記者会見し、「国民の選択を謙虚に受け入れる」と述べ、李氏に祝意を示した。 中央選管によると、李氏の得票率は 49.42%、金氏は 41.15%、保守系野党・改革新党の李俊錫(イジュンソク)氏 (40) は 8.34% だった。 世論調査での高い支持率を受け、選挙戦でリードを保ち続けた李在明氏だったが、得票率は過半数には届かなかった。 中道層への支持拡大を目指したものの、一定の有権者は進歩系政権の誕生に警戒感を示したものと見られる。 一方、投票率は 79.4% で、金大中(キムデジュン)氏が当選を決めた 1997 年の大統領選以来の高水準だった。 非常戒厳の宣布を経て、民主主義のあり方が問われた中での大統領選だっただけに、有権者の関心の高さを物語る結果となった。 今後、李氏は政権の要となる、大統領府の秘書室長などの人事に着手する。 関税の引き上げなど予測困難なトランプ米政権の動きや米中対立、北朝鮮の核の脅威への対処も喫緊の課題だ。 日本との関係について李氏は選挙戦で「堅固な韓日関係の土台を築く」、「歴史・領土問題は原則的に、社会、文化、経済分野では前向きかつ未来志向的に対応していく」などと述べていた。 国交正常化から 60 年を迎えるなか、日本に対する姿勢も注目される。 (ソウル・河野光汰、清水大輔、asahi = 6-4-25) 保守系一本化、強まる与党側の期待 世論調査結果受け 韓国大統領選 6 月 3 日の韓国大統領選に向け、保守系与党・国民の力の金文洙(キムムンス)前雇用労働相側が、保守系野党・改革新党の李俊錫(イジュンソク)氏との候補一本化への期待を強めている。 最近の世論調査で 2 人の支持率の合計が、トップを走る進歩(革新)系最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)前代表の支持率をわずかに上回ったためだ。 金氏は 25 日、遊説先で保守系候補の一本化について「努力を続けていく」と述べた。 李俊錫氏は一本化を繰り返し否定しているが、実現すれば選挙戦への影響が大きいだけに注目が集まっている。 李俊錫氏はかつて国民の力の代表を務め、尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の側近らと対立してたもとをわかった経緯がある。 与党側はこの間、一本化を期待する発言を公に繰り返してきた。 23 日に世論調査機関・ギャラップが発表した調査結果では、李在明氏が 45%、金氏が 36%、李俊錫氏が 10% だった。 独走状態だった李在明氏の支持率が落ちた一方、金氏と李俊錫氏の支持率は上向き、2 人の合計が李在明氏を 1 ポイント上回った。 これを受けて、金氏側の李俊錫氏への働きかけがさらに強まりそうだ。 一方、李在明氏は「李俊錫氏は結局、内乱勢力との一本化に乗り出すだろう」、「当然、備えている」などと述べ、警戒と牽制を強めている。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 5-25-25) 韓国大統領選構図固まる 保守系与党候補が登録 12 日から選挙運動 6 月 3 日の韓国大統領選に向けた候補者登録最終日の 11 日、保守系与党・国民の力の金文洙(キムムンス)前雇用労働相が立候補を届け出た。 金氏の公認は曲折をたどったが、これで進歩(革新)系最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)前代表と金氏を軸とする選挙戦の構図が固まった。 12 日から選挙運動がスタートする。 金氏は 11 日、候補者登録を済ませた後、10 日に入党した韓悳洙(ハンドクス)前首相と会い、大統領選の勝利に向けて協力していくことで一致した。 国民の力の執行部は、党の公認候補の金氏と無所属で立候補を表明していた韓氏の保守系候補一本化の交渉が決裂したことを受け、10 日に金氏の公認を取り消し、より幅広い支持が得られるとみた韓氏に公認候補を差し替えようとした。 だが、党員投票でこの案が否決されて金氏が公認候補に復帰し、党内の分裂と混乱ぶりを露呈した。 金氏や韓氏、党執行部は 11 日、大統領選に向けて党内の和解を演出することに腐心。 金氏は議員総会で「和合し、未来に向けて一緒に進むべきときだ」と呼びかけた。 だが、公認候補選出をめぐる異例の混乱の傷は浅くないとみられる。 そもそも保守系候補の一本化は、世論調査で他の候補に大きくリードしている最大野党の李氏に対抗するためだったが、その失敗は逆に保守層の分裂や失望を招き、李氏により有利な状況を招いたと指摘されている。 与党側は、国会の多数を占める共に民主党が政府高官らへの弾劾訴追を繰り返したことなどを「議会独裁」と批判し、政権交代すれば自由民主主義が危険に陥ると訴えているが、保守層を含めどこまで支持を集められるかが課題だ。 一方の李氏は 11 日、「内乱をかばう候補がどうしたら国民の選択を受けられるというのか」と述べた。 非常戒厳を出した尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の弾劾・罷免に金氏が一貫して反対したことを念頭に置いた発言とみられる。 共に民主党は、金氏や与党を「内乱同調勢力」として批判し、追及していく構えだ。 大統領選には保守系野党・改革新党の李俊錫(イジュンソク)氏も立候補を届け出た。 李俊錫氏はかつて国民の力の代表を務め、主に 20 - 30 代の男性の支持を集めて 2022 年の尹氏の大統領当選に貢献したが、尹氏の側近らと対立して離党した。 与党は李俊錫氏を最終的に味方につけ、金氏と「反李在明」で一本化を図りたい考えだが、李俊錫氏が応じない場合、国民の力に失望した保守層や中道層などから一定の票を集めるのではないかとの指摘が出ている。 大統領選には 10 - 11 日の登録期間に計 7 人が立候補を届け出た。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 5-11-25) |