日米関税交渉は立場に依然として隔たり、最優先で対応−石破首相
石破茂首相は 18 日、米国との関税交渉に関し、日米の立場には依然として隔たりがあり、引き続き政府一丸となって最優先で取り組む考えを示した。 参院本会議で答弁した。 石破首相は 16 日に行われた協議の詳細については「外交上のやり取りであり、言及を差し控える」と述べた。 当面は閣僚級で交渉を続けるが、最も適切な時期に自ら訪米し、トランプ氏と直接会談することも「当然考えている」とも語った。 米関税措置が日本経済に与える影響については十分に分析し、資金繰りなどの必要な対策を講じていく考えだと強調。 「新たな経済対策について検討しているという事実はない」とした。 赤沢亮正経済再生担当相は訪米中のトランプ大統領との面会で、日本との協議を最優先で進める意向を示された。 ベッセント財務長官らとは、可能な限り早期の合意を目指すことなどを確認。 今月中に再度の閣僚協議実施で調整を進めている。 主要国の中でも早いタイミングで始まった日米協議は他国にとって米側の出方を見定めるための試金石となり得る。 石破首相は 18 日夜、官邸で記者団に対し、次回協議で具体的な前進が得られるよう、政府部内の検討調整を加速するように指示を出したことを明らかにした。 トランプ政権は日本などへの上乗せ関税を 90 日間停止する方針を示したものの、10% の基本税率、鉄鋼・アルミニウム関税や自動車関税の 25% は維持している。 赤沢氏は同日夜の会見で、「既に課せられている関税でわが国の企業の利益が削られている状況のため、一刻も早く合意に至りたい」とした一方、「早ければいいというものではない」とも述べた。 為替については加藤勝信財務相とベッセント財務長官による協議の「おさまりを見ながら最終的にパッケージ全体を整える」と述べた。 次の交渉に向けては日米双方が宿題を持ち帰っているとした上で、協議に出席した米国側の閣僚が「何を重視し、話が全く出なかったものは何か精査する」と語った。 ベッセント氏は赤沢氏との会談について「貿易に関する議論が非常に満足のいく方向に進んでいることをうれしく思う」と X (旧ツイッター)に投稿した。 「近いうちに日本の友人たちとさらに前向きな対話ができることを楽しみにしている」とも指摘している。 在日米軍駐留経費負担 日米交渉では在日米軍の駐留経費負担など防衛・安全保障を巡る問題も取り上げられる可能性がある。 共同通信はトランプ大統領が赤沢氏との面会で、日米安全保障条約の在り方に不満を伝えたと日本政府筋の情報として報じた。 石破首相は1 18 日の参院本会議で、在日米軍駐留経費について「日米両政府の合意に基づいて適切に分担されている」とした上で、「わが国の防衛費の在り方についてはわが国が主体的に判断する」との見解を示した。 中谷元・防衛相も同日の閣議後会見で防衛面の負担の在り方と関税交渉は「別の問題だ」と述べた。 (広川高史、Bloomberg = 4-18-25) トランプ氏、赤沢大臣に改善「3 本柱」要求 在日米軍の駐留経費など トランプ米大統領と赤沢亮正経済再生相が 16 日午後(日本時間 17 日午前)、米ワシントンのホワイトハウスで会談した際、トランプ氏が赤沢氏に対して示した日本側への要求の全容が判明した。 複数の日本政府関係者によると、トランプ氏は、@ 在日米軍の駐留経費負担、A 米国製自動車の販売、B 貿易赤字 - - の三つの柱を具体的に示し、改善を要求したという。 トランプ氏は会談の中で、在日米軍の駐留経費について、日本側の負担が不足しているとの見解を示したという。 また、日本で米国製の自動車の販売台数が少ないことに不満を表明したほか、米国の貿易赤字の解消も要求したという。 会談は 30 分間の予定を大幅に超過して、約 50 分間にわたって行われた。 米国側の交渉役であるベッセント財務長官とグリア通商代表部 (USTR) 代表のほか、ラトニック商務長官も同席した。 在日米軍駐留経費負担のあり方をめぐっては、トランプ氏は 10 日の閣議でも「我々は彼らを守るために何千億ドルも払う。 他国のために全額を負担する。 日本は何も支払わない。 もし米国が攻撃されても、日本は我々を守るために何もする必要がない。」と持論を展開。 赤沢氏との会談前にも自らの SNS に投稿し、「軍事支援の費用」問題を今後の日米交渉の議題にする考えを示していた。 一方、赤沢氏はトランプ氏に対し、在日米軍駐留経費をめぐっては、日本側は 2022 - 26 年度に年度平均で約 2,110 億円を支払うことで合意していることなどを説明したという。 (小手川太朗、asahi = 4-17-25) 米国との関税交渉、先駆けた日本は「モルモット」 各国メディア報道 赤沢亮正経済再生相が世界に先駆けてトランプ米大統領と関税交渉に臨むと、各国のメディアは日米交渉について相次いで報じた。 日本を「(実験用の)モルモット」などと位置づけ、各国がトランプ氏の交渉姿勢を推し量る上での先行例になるとみる報道が目立った。 AP 通信は、トランプ氏が関税協議に自ら出席した理由について、「中国が(各国との間で)独自の合意を進めようとする中で、(日本などとの間で)多数の貿易協定を迅速に締結したいという彼の意欲の表れだ」と指摘。 今回の交渉が、トランプ氏の「ディールメーカー(交渉の達人)」としての評判を左右するテストになると伝えた。 AP はまた、日本が米国と長年の同盟関係にあるとも指摘。 今回の交渉について、トランプ政権が同盟国などを安心させられる合意を導けるかどうかの「重要な指標になる」とも論評している。 ロイター通信は日米の交渉について、米国が各国に譲歩する意思があるかどうかを測る「試金石」になると報じている。 英フィナンシャル・タイムズ紙も、日本が各国の関税交渉にとって「(実験用の)モルモット」になっていると例えた外交関係者の発言を紹介した。 また、AFP 通信は経済専門家の分析を引用し、日米の交渉について「(危険を事前に知らせる)炭鉱のカナリア」だと評した。 この専門家は「日本が合意を得られれば、たとえ不完全なものであってもそれがひな型になる。 何も得られないなら(各国は)覚悟が必要だ。 他の国々は(米国との)協調ではなく、対立を前提に(交渉の)値踏みを始めるだろう」と分析した。 AFP 通信によると、日本企業が米国に大規模な投資をしていることから、日米交渉の行方を市場も注目していたという。 今回、日米は早期に交渉をまとめることで一致。 17 日の日経平均の終値は節目の 3 万 4,000 円台を回復するなど、香港やシンガポールといったアジアの代表的な株価指数が軒並み上昇した。 トランプ政権の関税政策が緩和されるとの期待感が、市場の不安を和らげたと AFP は報じた。 一方、トランプ政権との間で、日本と同様に関税や米軍の駐留経費が懸案となっている韓国。 地元メディアは今回の日米交渉を速報で報じ、「韓国にとっても意味のある『参考資料』になるとして注目されていた」と伝えた。 韓国メディアによると、崔相穆(チェサンモク)経済副首相兼企画財政相が来週、主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議に出席するため訪米する予定で、韓国政府はその際に米側と関税問題についても協議することを目指しているという。 (田中瞳子、佐藤達弥、ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 4-17-25) 石破首相、トランプ関税の根拠「誤りは正す」 コメの 700% や自動車など米側の認識を修正へ 「ドイツ車は走っている」 石破首相は 7 日の参院決算委員会で、アメリカのトランプ政権が、「日本は輸入するコメに 700% の関税をかけている」などと誤った認識を根拠に相互関税を課している姿勢について問われ、「誤りは誤りとしてきちんと正しておかないと、これから先の議論にならない。そのことはきちんと求めがあれば政府からお話ししたい」と述べ、米側の認識を正していく意向を示した。 石破首相は立憲民主党の古賀之士議員の質問を受け、「おっしゃる通り、(コメに関税が) 700% なんぞかっていない。 ミニマムアクセスの部分も全くカウントされていないということだ。 あるいはアメリカの車が全然走っていないではないかということだが、ドイツの車はいっぱい走っとるのであり、どうしてこんなことになるんでしょうねということだ。 別に私どもはアメリカ、ドイツに差をつけておるわけではない」と述べた。 (FNN = 4-7-25) ◇ ◇ ◇ 日本が報復関税を課すことは自滅的行為 = 米有力紙が指摘 トランプ氏が再び "ホンダの新工場建設" に言及 トランプ政権は 4 月 5 日、「相互関税」の第 1 段階である、ほぼ全ての国・地域に対する一律 10% の関税を発動した。 9 日には、「相互関税」の第 2 段階である、貿易上、悪質な行為を行っていると同政権が判断した、日本を含む 60 カ国に対し、追加の関税を発動する。 日本には 24% の「相互関税」が課されることになる。 米国の貿易相手国は、想定外に高い相互関税への対応策が迫られている。 カナダのカーニー首相は、米国と同様、米国から輸入され、米国・メキシコ・カナダ協定の基準に適合しない全ての車に 25% の関税を課すと表明した。 オーストラリアのアルバニージー首相は、トランプ氏による関税賦課の決定は「友好国の行為ではない」と述べつつも、米国への報復措置は否定している。 EU のの行政を担う欧州委員会のフォン・デア・ライエン氏は、欧州は統一的なアプローチとして、交渉が失敗した場合に備えて対抗措置を準備していると警告している。 現在、課されている 20% の関税に加え、34% の関税が上乗せされて 54% の相互関税が課されることになった中国は、米国からの全輸入品に対し、米国と同じ 34% の報復関税を課すと発表した。 日本には報復という選択肢がない では、日本はどう対応するのか? 日本でも対抗措置を訴える声があがっている。 最新の JNN の世論調査によると、57% の人が「対抗措置を取るべきだ」と答えたという。 もっとも、石破首相はトランプ氏と電話会談を行う意向は述べてはいるものの、報復関税には否定的だと報じられている。 実際、日本は報復をするのが難しいのではないか。 米有力紙ニューヨーク・タイムズも「日本には、報復という選択肢がほとんどない」と指摘している。 背景には、ここ数年間、エネルギー価格と食品価格が上昇し、経済が圧迫されている日本が、米国から天然ガスや農産物などのコモディティーを輸入している状況がある。 そのため、東京のムーディーズ・アナリティクスのシニアエコノミスト、ステファン・アンリック氏は、日本が米国からの輸入品に報復関税を課すことは「自滅的」なことであり、「まったく実行可能な選択肢ではない」と同紙に対して述べている。 確かに、天然ガスや農産物に報復関税をかけたら、エネルギー価格や食品価格はいっそう上昇し、国民を苦しめることになるだろう。 また、報復ということ自体、トランプ氏は反旗を翻されたと感じて、さらなる報復関税を課して対抗するかもしれない。 「相互関税」の発表の場で、トランプ氏がは「シンゾーは理解した」と安倍元首相について言及したが、それにも意図があると思う。 日本の首相なら「相互関税」を理解して、米国に従ってほしいと言いたいのだろう。 "ホンダは新工場を建設" と再び誤った発言 では、報復が難しい日本はどう対応すればいいのか? アンリック氏は「残された唯一の戦略は、日本がより多くの商品を輸入する意欲があると強調することだ」と述べている。 しかし、意欲を示すことだけで、「私の政策は決して変わらない」と頑なに訴えているトランプ氏を説得できるとは思えない。 ディールを好む同氏に、同氏が受け入れそうな取引き材料を提示して交渉する必要があるのではないか。 それは、トランプ氏が求めている投資を米国にするということかもしれない。 もっとも、石破首相は 2 月、トランプ氏と会談した際に、日本の対米投資を 1 兆ドル(約 150 兆円)に引き上げると表明したのだが、トランプ氏はさらなる投資を求めているのだろう。 そこで思い出すのは、トランプ氏が 2 月に行われた施政方針演説で「ホンダはインディアナ州に世界最大級の新工場を建設すると発表した」という誤った発言をしたことだ。 単純な勘違いとも言われているが、そうとも思えない節がある。 というのは、同氏は、3 月 26 日、米国に輸入される車に 25% の関税を課すとする自動車関税について発表した際にもまた「インディアナ州に、ホンダは世界最大級の工場を建設中だ。 着工したばかりだ。」と発言したからである。 再び間違った発言をしたことに驚いた。 誤った発言であることが報じられていたのだが、ホワイトハウスは事実かどうか確認しなかったのだろうか? それとも、何かを意図した発言なのか? いずれにしても、2 度も言及するとは、海外からの対米投資が始まっている、トランプ政権の高関税政策は成功していると国内向けにアピールしたいのだろう。 同時に、日本の自動車メーカーに米国に新工場を建設させたいという意図を持った発言とも取れる。 とするなら、石破首相は、その実行可能性については分からないが、日本の自動車メーカーに米国に世界最大級の新工場を建設して、雇用創出するよう働きかけることをトランプ氏との交渉材料の一つにすることもできるのかもしれない。 石破首相が "国難" と呼ぶ状況に、どう対応するか注目される。 (飯塚真紀子、Yahoo! = 4-7-25) きょう日中韓外相会議 岩屋外相、中韓と個別会談も 岩屋外務大臣は 22 日、東京で日中韓 3 か国の外相会議に臨むとともに、中国、韓国と個別の外相会談なども行う予定です。 中国に対しては、経済面での協力の重要性を強調し、日本産水産物の輸入再開などを改めて求める方針です。 3 か国の外相会議は 22 日午前、東京都内で開かれ、岩屋外務大臣、中国の王毅外相、韓国のチョ・テヨル(趙兌烈)外相が出席します。 これを前に、石破総理大臣は 21 日、王外相、チョ外相と面会し、両国とは隣国ならではの難しい問題が生じることがあるものの、対話を通じて未来志向の協力関係を築いていきたいという考えを伝えました。 外相会議では、人的交流や経済協力を進めることに加え、気候変動や少子高齢化といった共通の課題に 3 か国で連携して対応していく方針を確認するものとみられます。 その上で、3 か国の首脳会議を、早期に日本で開催できるよう調整していくことを申し合わせる見通しです。 また、岩屋大臣は、中国、韓国と個別に外相会談を行うほか、日中両国の関係閣僚らが出席する「ハイレベル経済対話」を、およそ 6 年ぶりに開催することにしています。 このうち、中国との一連の会合では、建設的で安定的な関係の構築に向け、経済面での協力の重要性を強調するとともに、日本産水産物の輸入再開など、両国間の懸案の解決を改めて求める方針です。 (asahi = 3-22-25) 日米韓、対中・対北で結束を確認 米国産天然ガスでエネルギー安保も 2 期目のトランプ米政権下で初の日米韓外相会談が 15 日、ドイツ・ミュンヘンで開かれ、対中を念頭に「力または威圧による一方的な現状変更の試み」への反対や、北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり「北朝鮮の完全な非核化」で一致し、3 カ国の結束強化を確認した。 一方、米国産天然ガスの供給でエネルギー安全保障を強化する方針など、トランプ政権独自のカラーもあらわれた。 トランプ政権 2 期目、初の日米韓外相会談 連携強化の裏に不透明さ 会談はミュンヘン安全保障会議にあわせて開かれ、岩屋毅外相、ルビオ米国務長官、韓国の趙兌烈(チョテヨル)外相が出席した。 会談後の共同声明では、対中国では「自由で開かれたインド太平洋」の維持を確認。 台湾問題では「台湾海峡の平和と安定」の維持の重要性を強調するとともに、「適切な国際機関への台湾の意味のある参加」への支持を表明した。 また、「北朝鮮の完全な非核化」に向けた協力を確認し、ロ朝の軍事協力の拡大に「深刻な懸念」を表明。 3 カ国が「自国の国土に対する挑発や威嚇を許容しない」とする強い警告も発した。 前政権とは異なるトランプ政権の方針も反映された。 経済安全保障分野では、米国が「低廉で信頼できるエネルギー及び天然資源」を解き放つとし、とくに液化天然ガス供給でエネルギー安全保障を強化する方針を表明。 また、先進的な小型モジュール炉や革新炉など原子力をめぐる技術協力にも言及した。 一方、バイデン前政権下の日米韓首脳会談後の共同声明で明記されていたウクライナ支援には言及がなかった。 トランプ政権はかねてウクライナ支援に懐疑的で戦争の早期終結を目指している。 会談後、岩屋氏は記者団に対し「3 カ国が結束し、地域の平和と繁栄に向けて具体的な協力を進めることを確認した」と語った。 日米韓 3 カ国は首脳会談の開催を模索しているが、韓国内政の混乱が影響し、めどが立っていない。 岩屋氏は「韓国の国情がもう少し落ち着くのを待って検討していく」と述べた。 米国の関税措置への申し入れも 岩屋氏はまた、ルビオ氏と短時間意見交換し、米国政府による関税措置について申し入れたことを明らかにした。 岩屋氏によると、米国による鉄鋼・アルミニウム製品への関税について「措置の対象から我が国を除外してもらいたい」と伝えた。 政府による「相互関税」導入についても「我が国が対象となるべきではない」との考えを伝え、自動車関税についても問題提起を行ったという。 (里見稔、ワシントン・清宮涼、asahi = 2-16-25)
日米豪が「防衛協議体」設立で一致、トランプ氏見据え制度化図る 豪州を訪問中の中谷元・防衛相は 17 日、北部ダーウィンで米国のオースティン国防長官、豪州のマールズ国防相と日米豪防衛相会談を行い、3 カ国の新たな防衛協力の枠組み「日米豪防衛協議体」の設立で一致した。 「米国第一主義」を掲げるトランプ次期米大統領の就任を見据え、中国への対応を念頭に 3 カ国の防衛協力の制度化を図るものだ。 会談後、3 カ国は共同声明を発表。 協議体の新設について「平時から緊急事態に至るまで、自衛隊、豪軍及び米軍の政策上及び運用上の目標の整合を支援する」とした。 また、豪州北部やインド太平洋地域で、陸上自衛隊の水陸機動団と米海兵隊、豪軍による 3 カ国の共同水陸両用訓練を 2025 年以降毎年行うと打ち出した。 さらに、米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」のうち、先端技術分野の協力である「第二の柱」について、日本との協議が進展していることを歓迎。 「日本の海洋無人機システムとの相互運用性の向上に当初の重点を置く」とした。 3 カ国は近年、防衛協力を強化してきたが、米大統領選で、多国間協力の枠組みに否定的なトランプ氏が勝利。 防衛省幹部はこのタイミングでの会談について「3 カ国協力を引き続き進めるという意思を示す絶好の機会だ」と指摘。 「政権移行の微妙な時期だからこそ開催の意義がある」と強調した。 一方、中谷氏は、オースティン氏、マールズ氏とそれぞれ個別に会談。 日豪防衛相会談では、豪海軍の新型艦導入計画をめぐり、海自「もがみ」型護衛艦をベースにした共同開発計画について議論したとみられる。 日本はスペイン、韓国、ドイツと受注を競っている。 (田嶋慶彦、asahi = 11-17-24) 日米韓首脳、「調整事務局」設置で合意 安保・経済分野の協力強化 15 日に開幕したアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議に参加するため南米ペルーの首都リマを訪問中の石破茂首相は同日午後(日本時間 16 日午前)、バイデン米大統領と韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領との日米韓首脳会談を行った。 3 カ国の安全保障や経済分野での協力強化に向けた調整を担う「日米韓調整事務局」を設立することで一致した。 バイデン政権が進めてきた多国間協力の枠組みに否定的なトランプ次期大統領の来年 1 月の就任を前に、日米韓首脳が 3 カ国連携の「制度化」を図った格好だ。 会談の冒頭、石破氏は「調整事務局を活用しつつ、北朝鮮の対応はもちろん、様々な分野で連携を緊密にしたい」と語った。 尹氏は「発足する事務局はより大きな協力を導く堅固な基盤となる」と述べた。 バイデン氏は、トランプ氏の復権を念頭に「我々はいま、重要な政治的変化の時を迎えた」と指摘。 「(日米韓の)協力を築く一助となれたことを誇りに思う。 この協力が続くことが私の希望であり、期待だ。」と述べた。 約 40 分間の会談では、3 首脳は北朝鮮とロシアの軍事協力の進展などを踏まえ、日米韓の戦略的連携がこれまでになく重要になっていることを確認。 日米韓調整事務局を設立し、北朝鮮への対応を含む様々な分野で緊密に連携することで一致した。 対中国を念頭に、現状変更の試みに反対し、南シナ海での不法な海洋権益に関する主張に反対する重要性を認識していることも確認した。 一方、石破氏はバイデン氏と個別に約 10 分間会談し、強固な日米関係を強化するため、引き続き緊密に連携することで一致。 日米韓などの同志国のネットワークのさらなる発展に向け、今後も協力することを確認した。 (リマ・松山紫乃、清宮涼、asahi = 11-16-24) 「世界経済、下ぶれリスク高まり」 G20 財務相会合閉幕 米ワシントンで開かれていた、主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議が 24 日(日本時間 25 日午前)、共同声明を採択して閉幕した。 激化する紛争や経済的分断による世界経済の下ぶれリスクが高まっているとし、保護主義に抵抗する姿勢を改めて確認した。 共同声明は、世界経済が深刻な景気後退を回避する「ソフトランディング(軟着陸)」に落ち着くとの見通しを示す一方、「高い不確実性の中で、いくつかの下ぶれリスクが高まっている」と指摘。 11 月の米大統領選や、ロシアによるウクライナ侵攻の継続、緊張が高まる中東情勢などが世界経済に与える影響への懸念をにじませた。 加藤勝信財務相は会見で「経済的な分断が広がっていけば、(世界経済の)下ぶれリスクになりかねない。」と述べた。 為替相場をめぐっては「(為替の)過度な変動や無秩序な動きが経済及び金融の安全に対して悪影響を与え得る」との認識も再確認された。 (ワシントン・杉山歩、asahi = 10-25-24) 首相「戦略的互恵関係を推進」 中国の李首相と会談 石破茂首相は 10 日、東南アジア諸国連合 (ASEAN) 関連首脳会議に出席するため、ラオスを訪れた。 持論の「アジア版 NATO (北大西洋条約機構)」創設の訴えは、一連の会議では封印する考えだ。 外交デビューとなるこの日の動きを追った。 首相は、中国の李強(リーチアン)首相と会談した。 「ニーハオ」と小声であいさつして李氏に歩み寄り、握手した。 「日中両国は、戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的かつ、安定的な関係を構築するという大きな方向性を共有している」と述べた。 「日中両国には、協力の潜在性と、互いに懸案があるが、両政府の努力を通じて、両国民が、関係発展の果実を得られますよう、李総理と共に取り組んでいきたい」とも語った。 石破首相、韓国・尹大統領と会談 首相は、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談した。 「現下の戦略環境のもと、日本と韓国の緊密な連携は地域の平和と安定のためにも極めて重要だ。 尹大統領と岸田文雄前総理が大幅に改善をした日韓関係を引き継ぎ、さらに発展させたい。」と述べた。 尹氏は、来年が国交正常化 60 周年にあたることに触れ、「両国関係の希望にあふれた未来像を示し、両国の国民が、両国の関係が飛躍していることを実感できるよう緊密に協力をしていきたい」と語った。 日韓関係は元徴用工問題などで一時は「戦後最悪」と言われたが、岸田前首相と、対日関係を重視する尹氏のもとで大きく改善し、首脳が相手国を相互に訪問する「シャトル外交」も再開している。 首相、ASEAN プラス 3 に出席 「ダイナミックな世界経済の成長センターだ」 首相は、日中韓 3 カ国を交えた ASEAN プラス 3 の首脳会議に出席した。 中国の李強(リーチアン)首相や韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領とともにテーブルを囲んだ首相は「この地域は多様性に富むダイナミックな世界経済の成長センターだ。 日中韓と ASEAN の GDP (国内総生産)総額は世界全体の 25% を超えており、大きなポテンシャルがある」と述べ、さらに協力を深めたい考えを強調した。 また首相は「私は政治家として、防災を含む安全・安心の実現に取り組んできた」として、防災分野の日本人専門家を ASEAN 側に派遣する考えも示した。 三本柱を強調 ラオスを訪問中の石破茂首相は 10 日、日本と東南アジア諸国連合 (ASEAN) との首脳会議に出席した。 首相は、昨年 12 月の ASEAN 友好 50 周年特別首脳会議で打ち出した人材交流、経済協力、安全保障協力の三本柱の協力を進めていく方針を強調した。 中国が軍事・経済両面で影響力を強めるなか、東南アジアでは中国との間で摩擦を抱える国も少なくない。 首相は、こうした地域情勢を念頭に、「自由、民主主義、法の支配など諸原則を共有し、世界の成長センターである ASEAN と、共に未来をつくり、未来を守っていきたい」と述べた。 ☆ 首相の初外遊は、衆院解散後の 10 日午前 0 時すぎに政府専用機で羽田空港を出発するという異例の日程となった。 27 日投開票の衆院選を前に外交でアピールする機会だが、政権発足直後で準備期間も短い中での外交デビューとなり、今回の初外遊でどこまで「石破カラー」を出せるかは見通せない。 首相は、10 日に日 ASEAN 首脳会議と ASEAN プラス 3 (日中韓)首脳会議に出席。 11 日までの滞在中に、中国の李強(リーチアン)首相や韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領らとの首脳会談も予定している。 出発前の 9 日夜、首相は記者団に「これまで築いてきた日本と ASEAN との信頼関係を一層強化したい」と強調した。 持論であるアジア版 NATO 創設については「党内でも議論が煮詰まっていない段階だ。 そういう議論をこちらから提起するつもりはない。」と語った。 今回の一連の会議でアジア版 NATO 創設の訴えを封印することを決めたのは、中国との関係も重視する東南アジア諸国が否定的な反応を示す可能性が高いことを想定したからとみられる。 首相は 7 日の代表質問でも「一朝一夕で実現するとは思っていない」と説明していた。 首相は今回、ASEAN との連携を一層強化したい考えだ。 11 日にはアジアの脱炭素化を進めるために日本が提唱する「アジア・ゼロエミッション共同体 (AZEC)」首脳会合が予定されている。 脱炭素分野での ASEAN 側の日本への期待は高く、脱炭素に関するルール形成や、エネルギー開発などの個別のプロジェクトの促進で合意する見通しだ。 (ビエンチャン・松山紫乃、asahi = 10-10-24) |