マイクロソフト、ブラウザーに AI 機能追加へ 文章の変換、下書きできるように

AI の多様化と制御

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氾濫動画を「虚偽」と誤認定 福岡市が検証「原因は情報共有不足」

大雨による河川氾濫を伝えた SNS 動画をめぐり、福岡市の高島宗一郎市長が「偽情報」と指摘し、その後、投稿内容が事実だった問題について市は 2 日、役所内の情報共有が不十分だったことなどが原因とする検証結果を発表した。 動画は先月 10 日に投稿され、「香椎川氾濫! 気をつけて。」として、泥水が道路を覆い車が水没した様子が映っていた。 これに対し、高島市長は 11 日午後、「大変迷惑な事案がありました。 それは SNS の偽情報動画です。」 「このような虚偽情報への対応に追われることは、災害対応の大きな妨げになります」とインスタグラムなどに投稿。 だが、投稿は事実だと判明した。

市防災・危機管理部によると、先月 10 日午後 5 時 30 分ごろ、水位計で香椎川の水位上昇を覚知し、約 1 時間後に職員が現地確認した。 情報を共有するシステムに、「現在、冠水なし」と登録したが、氾濫の痕跡を撮影した写真を登録しなかったことなどから、大規模な氾濫はなかったという誤った判断をした。 高島市長は、一連の報告を受けて 11 日午後、自身のアカウントで「虚偽情報」と呼びかけた。 市は災害対応の業務マニュアルの見直しや災害対策本部の体制強化など再発防止策を講じるという。 (山本達洋、asahi = 9-2-25)


閉鎖の続くブログはオワコンなのか 惜しむ声、でも保存議論は進まず

SNS の普及などに伴い、ブログサイトの閉鎖が相次いでいる。 閉鎖されたブログの記事は消滅する。 一部で保存の動きもあるが、闘病記や被災体験など無数の私的な記録を後世に残すべきなのか、議論は深まっていない。 老舗ブログサイト「goo ブログ」は 4 月、サイトを 11 月で終了させると発表した。 21 年の歴史に幕を下ろす。 運営する NTT ドコモは取材に対し、「市場の動向の変化や昨今の状況を鑑みた結果、また当社として経営資源の集中を図るため、サービスを終了することとした」と答えた。

これまでも、2019 年に「Yahoo! ブログ」が、23 年には「LINEBLOG」がそれぞれサイトを閉じた。 ブログサイトが閉鎖されると、ユーザーが自ら他のサービスなどにデータを移す「引っ越し」をしない限り、記事は消える。 数年前にブログサイトを閉鎖した運営会社の元担当者は「ブログの時代は終わった」と話す。

全盛期は 2000 年代前半

広告収入でサイトの運営費をまかなう仕組みだが、「(運営していたサイトの)アクセス数は最盛期から 3 分の 1 程度になり、広告単価も激減していた」という。 一方で、記事の本数は増えても減ることはないため維持費はかかり続ける。 「そもそも 20 代、30 代はブログを新たに開設することはほとんどない。」

ブログの全盛期は 00 年代前半だ。 03 年に「はてなダイアリー(はてなブログに統合)」が開始。 「ライブドアブログ」などが相次いで参入した。 記事の内容も料理や育児、旅行、日記など多岐にわたった。 それまではインターネット上での情報発信は、一部の企業や技術者によるウェブサイトが主だった。 そこへ、HTML などの専門的なコンピューター言語を使わなくても簡単に投稿できるブログサイトが登場したことで、個人が気軽に情報発信ができるようになり、人気に火がついた。

だが、05 年ごろから mixi がネット空間を席巻。 さらに、Twitter (現 X)や Facebook といった SNS の台頭で、ブログの存在感は急速に薄れていった。 現在残るサービスは「はてなブログ」、「ライブドアブログ」のほか、「Ameba ブログ」、「FC2 ブログ」などだ。

「消えるの惜しい」闘病記が心の支えになった当事者も

ブログ記事が消えてしまうことを悲しむ人もいる。 京都府に住む自営業の男性 (53) は 15 年前の夏、妻が乳がんと診断された。 不安の中、検索の末にたどり着いたのが自分と同世代で妻ががんになった男性のブログだった。 医師との会話、抗がん剤の副作用、小学生の子どもとの距離感に悩む日々。 どれもが自分の置かれている状況と重なった。 前向きな言葉を、深夜の自室で何度も読み返した。

男性は「誰にも本当の不安を打ち明けられない中で、一緒に戦っている感覚があった」と、当時を振り返る。 読んでいたブログは 10 年前の投稿を最後に更新されていない。 妻は治療を経て今も元気に暮らしているが、「サイトの閉鎖とともに記事が消えてしまうのはあまりに惜しい。」 ブログの価値について、国内最大級の「Ameba ブログ」を担当するサイバーエージェントのブロガーリレーション局長の岡本あずさ氏は「その時しかできない体験や感情が書かれた貴重なものだ」と話す。

Ameba ブログの月間利用者数は 2,900 万人、累計記事数は 28 億に及ぶ。 岡本氏は「100 年続くサービスを目指して運営しているので、現時点で閉鎖する予定はない」と断言する。 一方で、「記事数の増加に伴って、セキュリティーやシステム維持の障壁も多々あり、乗り越えていかなければならない」と語った。 フランスやデンマークでは、法定納本の一環として、多くのサイトが自動的に保存されている。 ただし、権利上の問題などからアクセスできるのは研究者など一部の人間に限っている。 一方、日本ではそのような制度はなく、議論自体も進んでいない。

国立国会図書館が 04 年に取りまとめた答申では、ブログなどネット上の「ネットワーク系電子出版物」は納本制度に組み入れるべきではないと結論づけた。 その後、電子書籍や電子雑誌は対象となり、19 年からはサイバーエージェントと協力して、著名人のブログアーカイブも始めた。 だが、対象は選ばれたごく一部で、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんなど 42 組にとどまる。

識者「残すことに一定の価値はあるが …」 厳しい現実

デジタルアーカイブに詳しい聖学院大学の塩崎亮教授は「市井の人が何をどう考え、どう感じていたのかを後世に残すことは一定の価値がある」と話す。 「コストをかけて保存しても価値があるかどうかは 100 年後にしかわからない。 事業者に保存しろというのも負担が大きすぎるので、まずは議論するべきだ」と指摘する。 最近では AI (人工知能)によって生成されたコンテンツが増えている。 今後ますますその傾向は強まるとみられ、塩崎教授は「AI が作ったものも保存することが適切なのかは悩ましい」とも話す。 (東谷晃平、asahi = 8-17-25)


生成 AI を悪用するウイルス初確認、ウクライナ標的 攻撃検知回避か

インターネットの事故・犯罪

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DeepL 技術トップ「日本語翻訳は難しい」 利用者数では世界 2 位

互いに違う言語を話す人同士が同じ言語を話すようにやりとりできる、人工知能 (AI) を用いた翻訳サービスが増えてきた。 AI 翻訳は今後、どう進化するのか。 翻訳の仕事に取って代わるのか。 ドイツの AI 翻訳サービス「DeepL」のセバスチャン・エンダーライン CTO (最高技術責任者)に聞いた。

日本の DeepL 利用者数はドイツに次いで 2 番目に多いそうですね。 日本の利用者の特徴は。

「日本はとても重要な市場です。 6 月にベトナム語とタイ語を DeepL の対応言語に加えました。 これは海外に展開している日系企業の要望を受けたものでした。 日本の利用者は、翻訳の正確さや完璧さといった品質への要求がとても高いですね。」

昨秋、複数の異なる言語間での会話をリアルタイムに翻訳するサービス「DeepL Voice」を始めました。 技術的に難しかった点は。

「それまで取り組んできた文書翻訳と、リアルタイムの音声翻訳では状況が異なります。 音声翻訳では、不完全な言葉遣いや発音の違い、通信の遅延などの問題に対処する必要があります。」

「音声翻訳において難しい点の一つは、どの時点で何が言えるのか、瞬時に見極めることです。 自然な会話の流れに合わせた翻訳をするためには、素早く訳すだけでなく、信頼に足る内容であることが必要です。」

1 千人以上の言語の専門家が AI モデルを訓練・評価

「早く訳しすぎると、後から修正することになりかねません。 時間をかければ完璧に訳せますが、それではスムーズな対話はできません。 そうした中で、言葉の断片から、会話の内容が理解できる最も早い時点を見つけ出す仕組み作りに取り組みました。 この点で、日本語は他言語からの翻訳と、言語自体の難しさを併せ持っています。」

どういうことですか。

「例えば、日本語には 3 種類の敬語がありますよね。 また、英語と比べると、日本語は基本となる文の語順が異なります。 英語で『主語 + 動詞 + 目的語』の文は、日本語では『主語 + 目的語 + 動詞』の順になります。 こうした文の構造の違いによって、リアルタイム翻訳の難易度は上がります。」

AI による翻訳は、ChatGPT (チャット GPT)などでもできて、ライバルも多い。 どう違いを打ち出しますか。

「そうした AI は幅広い事象に対応できます。 ただ、専門的な領域に入っていけばいくほど、翻訳の質の違いが大きくなっていくと考えています。 多くの企業は米国中心で、言語といえば英語です。 それゆえに、ひとたび他の言語になると、ある程度の翻訳はできますが、本質的にグローバルなサービスとは言えないでしょう。」

「私たちは多言語を扱う欧州の企業として、特定の言語に重きを置かずにサービスを築いてきました。 1 千人以上の言語の専門家が AI モデルの訓練と評価に携わっており、サービスを提供する 36 言語で自然な表現や文化的なニュアンスを反映できます。 業界用語や企業による特有の表現を理解して翻訳に生かすパーソナライズ(個別最適化)にも力を入れています。 高い安全性を確保し、顧客のデータを学習に使うことは決してありません。」

米国の大手 IT 企業と比べて、AI の学習に使うデータ量が少ないことがサービスの質に影響しませんか。

「必ずしもデータが多ければ良いというわけではありません。 データが多くなればなるほど、質の低い情報も増えてくるからです。 多くの情報を学べば、AI がスラングなどを使えるようになるかもしれませんが、私たちはそこに注力はしておらず、あくまでも質の高さにこだわっています。」

「一方、インターネット上の情報量が少ない、特定の国の言葉や地方の方言などもあります。 学習データが少ないときに、いかにして AI モデルの訓練をするのかは、今まさに取り組んでいる課題です。」

AI 翻訳は、翻訳者に取って代わっていくのでしょうか。

「翻訳の仕事が時代遅れになるとは思いません。 例えば、ビジネス上の取引など、誤訳が損害につながるような場合に備えて、翻訳者への需要は常にあるでしょう。 ただし、会議の大半は翻訳されません。 私たちが取り組むのは、そうした翻訳が使われない、多くのやりとりです。」

「例えば、会議で CEO (最高経営責任者)が英語で何か間違ったことを言ったとします。 英語が母国語でない人は、間違いの指摘をためらうこともあるでしょう。 そんな日常的な場面で生じる『言語の壁』をなくしていきたいと考えています。」 (篠健一郎、asahi = 8-10-25)


時事通信記者への SNS 中傷、新聞労連「人権侵害」 知事会見で質問

SNS を使った犯罪行為など

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YouTube 巧者だった参政党 「勝ち組」に有利なアルゴリズム

ネットと選挙運動

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アップストアめぐる EU 制裁、アップル「法を逸脱した判断」と提訴

GAFA の独占・寡占

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TikTok 米事業売却、週明けにも米中が協議開始 … トランプ大統領「ほぼ合意できている」

TikTok の存続

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ロサンゼルス抗議デモの誤情報、SNS のアルゴリズムで増幅 危機煽る燃料に

オフライン、つまり現実世界のロサンゼルスでは、大半の市民が完全に普段通りの日常を過ごしている。 ところがオンラインでは、炎と暴徒が今なお猛威を振るっている。 ソーシャルメディアのプラットフォームを動かす強力なアルゴリズムが現在ユーザーに流しているのは、最近の同市の混乱に関する何日も前の、そして場合によっては全く捏造されたコンテンツだ。 こうしたコンテンツによって危機に終わりが来ないかのような感覚が広がっているが、広大なロサンゼルスのごく狭い部分を除いて、そのような危機はそもそも存在しない。

X (旧ツイッター)や TikTok (ティックトック) といったプラットフォームでは、真偽不明の複数のアカウントが、明らかにクリック数や影響力の獲得、混乱を引き起こす目的で、人々の不安を食い物にしている。 先週末に発生した衝突を巡ってはリベラル派も保守派もその行く末に懸念を抱いているが、そうした状況が利用されている。

人工知能 (AI) が生成したティックトック上のある偽動画は、ボブと称する州兵がデモ参加者に浴びせるガスを準備している様子を流す内容だ。 動画は 10 日午後の時点で 96 万回以上閲覧されている。 コメント欄の多くは動画をフェイクと断じているが、本物と信じているとみられる書き込みもある(英 BBC が偽物と暴いたこの動画は、その後削除されたようだ)。

米ジョージタウン大学マコート公共政策大学院の准研究教授で、ネットでの陰謀論拡散に関する専門家、ルネ・ディレスタ氏は「現在ソーシャルメディアで起きていることは、2020 年のジョージ・フロイドさん死亡事件を受けて発生した情報環境の混乱に似ている」と指摘。 「人々は現在起きている本物の動画なのか、過去の衝撃的な動画の再利用なのかを区別しようとしている。 後者の使用には政治的もしくは金銭上の目的がある」と説明する。

しかし 25 年の今回は AI の生成した画像が一段と増えた他、ユーザーも複数の異なるプラットフォームを利用している。 ディレスタ氏は CNN の取材に答え、そうしたプラットフォームでは「それぞれ違った物語が語られている」と述べた。

異なる現実

右派の見解で盛り上がる傾向のある X では、複数のインフルエンサーが移民税関捜査局 (ICE) に反対の声を上げるデモ参加者らを扇動者、テロリストなどと非難。 かたやより左派的な SNS ブルースカイの有力なユーザーらは、トランプ大統領の州兵派遣を糾弾している。 過度に党派的で活動的な複数の X アカウントは、南カリフォルニアでの騒動の規模を大いに誇張して伝え、オフラインでの状況に関するオンラインでの混乱を広げる形となっている。

X 上で広く拡散したある 8 日の投稿は、メキシコがロサンゼルスへの「軍事介入」を検討中との「ニュース速報」が流れたとする偽情報を取り上げた。 10 日午後の時点で、この投稿は 200 万人以上が閲覧している。 陰謀論を拡散する X の投稿は数十件存在し、デモ参加者について、政府の支援やさまざまな経路からの資金援助を受けているといった主張を展開する。 英シンクタンク、戦略対話研究所 (ISD) が明らかにした。 そうした投稿の多くは閲覧数が 100 万を超えているが、X のコミュニティーノート機能でファクトチェックされているものはごく一握りに限られる。

CNN は X と TikTok にコメントを求めている。 投稿の拡散がどれほど世論を歪曲し得るか、また暴力の悪化を招きかねないかを踏まえ、カリフォルニア州のニューサム知事のオフィスは 8 日夜、情報を共有する前に入手元を確認するよう、X への投稿で市民に懇願した。

同じく 8 日夜には、ロサンゼルス警察の車両が燃えている衝撃的な動画を最近のものであるかのように投稿した俳優のジェームズ・ウッズ氏に対し、ニューサム氏が「この動画は 2020 年のもの」と指摘する出来事もあった。 動画はこの年、人種に関わる正義を求める抗議行動が騒乱に発展した様子を捉えたものだが、直近のロサンゼルスの状況として拡散し、テッド・クルーズ上院議員も X でこれを共有。 「平和的ではない」とコメントしていた。

ただ混乱に拍車を掛けるように、今回の抗議行動でも、複数の警察車両や自動運転車を狙った破壊行為自体は起きている。 一方で連邦政府のアカウントもまた、誤解を招く情報をソーシャルメディアに流す役割を果たしている。 国防総省の「緊急対応」のアカウントは 9 日午前、「ロサンゼルスが燃えている。 現地の指導者らは対応を拒んでいる」と主張したが、この投稿の時点で同市に火災の報告は寄せられていなかった。

国営メディアの誤情報

ロシアと中国の国営メディアも、社会不安のイメージを増幅させている。 ここでは取り上げる内容が真実か虚偽かは問題にならない。 民主主義国に対する外国の情報操作、介入を研究するシンクタンク、アライアンス・フォー・セキュアリング・デモクラシーのブレット・シェーファー上級研究員によれば、中国のプロパガンダ機関は、20 年のブラック・ライブズ・マター (BLM = 黒人の命も大切だ)運動の報道と同様、米国での抗議デモを同国のイメージ低下に利用している。 その際米国政府について、他国で起きている抗議デモを支持するにもかかわらず、自国の抗議デモに対してはそうした姿勢が見られないことなどを強調するという。

一方、ロシアの国営スプートニク通信は、抗議デモでの破壊行為のため用意されたという大量の煉瓦(れんが)の画像を公開したが、X のコミュニティーノートによると前出のウッズ氏も共有したこの画像はニュージャージー州の建設現場のもので今回の抗議デモとは無関係だった。 ロシアの国営メディアはまた、事実と異なる、誤解を招く主張も振りまいている。 これはトランプ氏寄りのインフルエンサーが拡散しているもので、左派の個人や団体が抗議デモに資金を提供しているという内容だ。シェーファー氏が明らかにした。

ロシア政府は対外的なプロパガンダを仕掛けるよりも、一触即発となっている米国内の情報環境へ燃料を投下することの方に関心があるようだと、同氏は分析している。 (CNN = 6-12-25)


偽情報信じている人の誤り正す方法は?  正しい記事だけでは効果薄

ネット上の誤情報や偽情報を信じている人が、誤りを正すことにつながる方法を、名古屋工業大や理化学研究所、東北大などの研究チームが明らかにし、専門誌に発表した。 誤った情報を信じている人はその誤りを正す記事を避ける傾向がみられるが、そうした自分の傾向を振り返ってもらうような支援が効果的だという。

ネット上の誤情報・偽情報が SNS を介して急速に広がり、社会に深刻な影響を与える事例が増えている。 その対策の一つがファクトチェック (FC) 作業だ。 情報の真偽を検証し、正確な情報を共有する取り組みが進められている。 ただ、誤った情報を信じている人は、その誤情報を訂正した FC 記事も避ける傾向が確認されている。 そうした心理的な壁を克服するための有効な支援方法が求められている。

研究チームはまず、20 - 70 歳の人を対象に、新型コロナウイルスをめぐる複数の正誤情報についてクリックしてもらい、信じている誤情報に対する FC 記事をクリックする傾向が低いグループ(627 人)と高いグループ(610 人)の二つに分けた。 クリック傾向が低いグループの約半数は、信じている誤情報を訂正した FC 記事を 1 回もクリックしていなかった。

その後、それぞれのグループで、@ 自分が FC 記事を積極的にクリックするタイプか、避けるタイプかなど、二つの質問で自身を振り返ってもらう、A 信じている誤情報の FC 記事をクリックされやすいように記事リストの上位に置く、B 特に何もしない - - の三つにわけて取り組んでもらい、クリック回数や正しい情報に考えを変えるかなどを検証した。

その結果、信じている誤情報を訂正する FC 記事をクリックする傾向が低いグループでは取り組み後に、FC 記事へのクリック率が A で 33 ポイント増、@ は 14 ポイント増となり、B に比べて統計上、明確な差が出た。 一方、正しい情報に考えを改めたかについては、@ は効果が確認され、A、B に比べて明確な差があり、効果が 1 週間後も続いた。 だが、A はクリック数は最も増えたにもかかわらず、考えを改める効果は乏しかった。

研究チームの田中優子・名古屋工業大教授(認知科学)は「『クリックしましょう』とか『考え方を変えましょう』などと強制せず、自分のクリックの傾向はどうだったかなと自律的に振り返ってもらうことで、自分はどのように情報と向かい合いたいかを考え、その結果、自らクリックをして、読んだ訂正情報をもとに、誤情報を吟味するようになったのではないか」とみる。

研究チームは今後、訂正情報をより効果的に伝える方法の開発をめざす。 田中さんは「表面的なクリック数だけをみるのではなく、どのようにしてクリックを促すかの質を評価していく必要がある」と指摘する。 論文は こちら。 (桜井林太郎、asahi = 5-26-25)