YouTube 巧者だった参政党 「勝ち組」に有利なアルゴリズム 「YouTube (ユーチューブ)をはじめとした動画メディアが、選挙戦のアクター(役者)としての地位を確立した。」 参院選の期間中、各政党などのチャンネルについて分析した立命館大学の谷原つかさ准教授(社会情報学)はそう語ります。 主要政党のユーチューブの動きから見えることとは。 ユーチューブの動向を分析していて目立った点はどこでしょうか
既存政党はどうでしょうか
今回議席を初めて獲得した「チームみらい」も、登録者数の伸長が目立ちます
伸びなかった政党と、伸ばした政党の違いは何なのでしょうか
そうした発信で注目されていくと、よりその党を知るきっかけが増えていく
先行する党に追いつくのは難しいように感じますが、動画メディアの存在をどう捉えていけばよいでしょうか
参院選のネット検索、参政が他を圧倒 YouTube 再生も 1 億回超 参院選をめぐり、インターネットで最も多く検索されたのは参政党で、他を圧倒していたことが LINE ヤフーの検索データから分かった。 ユーチューブの関連動画の視聴回数が 1 億回を超えたほか、X (旧ツイッター)や note への投稿も多かった。 LINE ヤフーの「ヤフー・データソリューション DS.INSIGHT」によると、東京都議選の投開票があった 6 月 22 日から 7 月 16 日までに政党名を検索した人の数は、参政党がトップで計 96 万 9,100 人、2 位が国民民主党で 20 万 0,200 人、3 位は日本保守党で 19 万 4,100 人だった。 4 位は再生の道で 12 万 0,500 人、5 位はれいわ新選組で 11 万 2,300 人。 6 - 10 位は、チームみらい 8 万 8,110 人、立憲民主党 7 万 9,540 人、自民党 7 万 5,930 人、公明党 6 万 0,730 人、日本誠真会 4 万 7,480 人だった。 参政はほぼ全期間で他を圧倒しており、2 位に 5 倍近い差をつけた。 参院選公示日の 3 日には、神谷宗幣代表が「高齢の女性は子どもは産めない」などと発言。 多くのメディアが批判したこともあって、検索は 4 万 7,800 人に跳ね上がった。 国民民主は終盤にかけて徐々に増やし、それまで 2 位だった保守を追い越したが、大きな波はつくれなかった。 保守は 6 月末に参政の 7 割を超す山があり、再生の道は、都議選の投開票日に参政に並んだが、いずれもその後は存在感を示せなかった。 都道府県別で見ても、47 都道府県すべてで参政が最も多く検索されていた。 ただ、過去 1 年間に期間を長くした分析では、唯一、香川県で国民民主が参政を上回っていた。 ユーチューブや X でも「参政」 ユーチューブで 6 月 1 - 30 日に投稿された関連動画の総視聴回数は、7 月 4 日時点で自民が 1 億 6,732 万回、参政が 1 億 4,323 万回だった。 1 億回を超えたのはこの 2 党だけで、国民民主 5,256 万回、れいわ新選組 5,183 万回、立憲 4,557 万回と続いた。 ただ、よく視聴された動画の内容には自民と参政で温度差があり、自民は「なぜ自民党は国民のために働かないのか」、「参政党が都議選で大躍進? 自民党が歴史的大敗?」といった批判的なタイトルが目立った一方、参政は肯定的な内容が多かった。 政党名を含む X の投稿の推移 X への投稿も参政が多かった。 6 月 10 日から 7 月 19 日までに投稿された約 179 万件を収集し、さらに無作為に約 3 万件を抽出して、AI (人工知能)に投稿内容が肯定的か否定的かを調べさせた。 その結果、参政についての投稿は、都議選告示から急速に増え、参院選の公示後は都議選中の約 19 倍になった。 ただ、当初は肯定的な投稿が 6 割に達することもあったのに、参院選の投開票が近づくにつれ否定的な投稿が増加。 7 月 18 日には「否定的」が 6 割、「肯定的」が 3 割になった。 国民民主は、投稿数は伸びなかったが、都議選の初めごろに 8 割ほどあった否定的な投稿は、7 月 18 日には半減した。 公認見送りの騒動が落ち着いたとみられる。 一貫して「否定的」が多かったのは自民で、終始、8 割ほどを占めた。 連立を組む公明党も 6 - 7 割が、野党第 1 党の立憲民主も 7 - 8 割ほどが「否定的」だった。 参政党を含む投稿の「肯定的」と「否定的」の割合 投稿サイト「note」には、「参院選」、「参議院選挙」が含まれる記事が 6 月 1 日 - 7 月 9 日に 3,685 件投稿された。 運営会社によると、最も多かったのは自民で 2,441 件だった。 2 位は参政で、6 月 1 日に 570 件だったのが 7 月 9 日には 2 倍超の 1,245 件に増えていた。 次いで国民民主 1,170 件、立憲 1,013 件と続いた。 また、運営会社が AI を使って内容を分析したところ、自民は肯定的な内容が一貫して 3 割ほどしかなかった。 参政は、5 - 6 割が肯定的という日が 6 月は多かったが、7 月に入ると 3 - 4 割に低迷。 増えた投稿の多くが批判的だったことがうかがえた。 (浜田知宏、山崎啓介、古賀大己、メディア研究開発センター・大津正一、東谷晃平、asahI = 7-20-25) 43 万件の投稿を独自に分析 参院選までの 1 カ月、SNS の傾向は? 参院選(20 日投開票)では、125 議席をめぐり 522 人の候補者が政策を訴えてきた。 SNS ではどんな投稿が目立ったのか。 過去 1 カ月の X (旧ツイッター)への投稿を分析して傾向を探った。 朝日新聞は SNS 分析ツール「Social Insight」を使い、6 月 17 日 - 7 月 17 日の X への投稿のうち、「選挙」、「参院」、「政治」、「政策」のいずれかを含むものを集めた。 リポスト(再投稿)されたものを除き、政策や関連した九つのテーマを含む延べ約 43 万件の投稿を分析した。 その結果、期間中の投稿数は「外国人政策」、「対トランプ」、「教育・子ども」、「コメ」、「物価高対策」、「安全保障」、「政治とカネ」、「地方創生」、「選択的夫婦別姓」の順に多かった。 「コメ」が減り 増えた「外国人政策」や「教育・子ども」 6 月 17 日時点では「対トランプ」や「コメ」が目立ったが、後半になるにつれて減っていき「外国人政策」の投稿が増えた。 「教育・子ども」も後半にかけて増加傾向で、7 月 2 日以降、1 日 2 千件を下回ることはなかった。 一方、7 月初旬まで 1 日平均約 1,200 件だった「物価高対策」は 7 月 3 日以降、1 日あたり 1 千件を下回っている。 分析にあたっては、各テーマごとに関連性の高い複数の単語を朝日新聞が設定し、一つ以上含む投稿を対象にした。 対象の投稿数は、分析ツールの設定で、リポスト数が多い順で 1 日最大 5 万件に絞られている。 こうした手法のため、選挙に関係のないものや事実に基づかない投稿が含まれている可能性もある。 分析結果も、そのテーマの重要度や有権者の関心の高さを示すものではない。 SNS 分析は朝日新聞社メディア研究開発センター・新妻巧朗が担当しました。 (小寺陽一郎、asahi = 7-20-25) |