ロサンゼルス抗議デモの誤情報、SNS のアルゴリズムで増幅 危機煽る燃料に

オフライン、つまり現実世界のロサンゼルスでは、大半の市民が完全に普段通りの日常を過ごしている。 ところがオンラインでは、炎と暴徒が今なお猛威を振るっている。 ソーシャルメディアのプラットフォームを動かす強力なアルゴリズムが現在ユーザーに流しているのは、最近の同市の混乱に関する何日も前の、そして場合によっては全く捏造されたコンテンツだ。 こうしたコンテンツによって危機に終わりが来ないかのような感覚が広がっているが、広大なロサンゼルスのごく狭い部分を除いて、そのような危機はそもそも存在しない。

X (旧ツイッター)や TikTok (ティックトック) といったプラットフォームでは、真偽不明の複数のアカウントが、明らかにクリック数や影響力の獲得、混乱を引き起こす目的で、人々の不安を食い物にしている。 先週末に発生した衝突を巡ってはリベラル派も保守派もその行く末に懸念を抱いているが、そうした状況が利用されている。

人工知能 (AI) が生成したティックトック上のある偽動画は、ボブと称する州兵がデモ参加者に浴びせるガスを準備している様子を流す内容だ。 動画は 10 日午後の時点で 96 万回以上閲覧されている。 コメント欄の多くは動画をフェイクと断じているが、本物と信じているとみられる書き込みもある(英 BBC が偽物と暴いたこの動画は、その後削除されたようだ)。

米ジョージタウン大学マコート公共政策大学院の准研究教授で、ネットでの陰謀論拡散に関する専門家、ルネ・ディレスタ氏は「現在ソーシャルメディアで起きていることは、2020 年のジョージ・フロイドさん死亡事件を受けて発生した情報環境の混乱に似ている」と指摘。 「人々は現在起きている本物の動画なのか、過去の衝撃的な動画の再利用なのかを区別しようとしている。 後者の使用には政治的もしくは金銭上の目的がある」と説明する。

しかし 25 年の今回は AI の生成した画像が一段と増えた他、ユーザーも複数の異なるプラットフォームを利用している。 ディレスタ氏は CNN の取材に答え、そうしたプラットフォームでは「それぞれ違った物語が語られている」と述べた。

異なる現実

右派の見解で盛り上がる傾向のある X では、複数のインフルエンサーが移民税関捜査局 (ICE) に反対の声を上げるデモ参加者らを扇動者、テロリストなどと非難。 かたやより左派的な SNS ブルースカイの有力なユーザーらは、トランプ大統領の州兵派遣を糾弾している。 過度に党派的で活動的な複数の X アカウントは、南カリフォルニアでの騒動の規模を大いに誇張して伝え、オフラインでの状況に関するオンラインでの混乱を広げる形となっている。

X 上で広く拡散したある 8 日の投稿は、メキシコがロサンゼルスへの「軍事介入」を検討中との「ニュース速報」が流れたとする偽情報を取り上げた。 10 日午後の時点で、この投稿は 200 万人以上が閲覧している。 陰謀論を拡散する X の投稿は数十件存在し、デモ参加者について、政府の支援やさまざまな経路からの資金援助を受けているといった主張を展開する。 英シンクタンク、戦略対話研究所 (ISD) が明らかにした。 そうした投稿の多くは閲覧数が 100 万を超えているが、X のコミュニティーノート機能でファクトチェックされているものはごく一握りに限られる。

CNN は X と TikTok にコメントを求めている。 投稿の拡散がどれほど世論を歪曲し得るか、また暴力の悪化を招きかねないかを踏まえ、カリフォルニア州のニューサム知事のオフィスは 8 日夜、情報を共有する前に入手元を確認するよう、X への投稿で市民に懇願した。

同じく 8 日夜には、ロサンゼルス警察の車両が燃えている衝撃的な動画を最近のものであるかのように投稿した俳優のジェームズ・ウッズ氏に対し、ニューサム氏が「この動画は 2020 年のもの」と指摘する出来事もあった。 動画はこの年、人種に関わる正義を求める抗議行動が騒乱に発展した様子を捉えたものだが、直近のロサンゼルスの状況として拡散し、テッド・クルーズ上院議員も X でこれを共有。 「平和的ではない」とコメントしていた。

ただ混乱に拍車を掛けるように、今回の抗議行動でも、複数の警察車両や自動運転車を狙った破壊行為自体は起きている。 一方で連邦政府のアカウントもまた、誤解を招く情報をソーシャルメディアに流す役割を果たしている。 国防総省の「緊急対応」のアカウントは 9 日午前、「ロサンゼルスが燃えている。 現地の指導者らは対応を拒んでいる」と主張したが、この投稿の時点で同市に火災の報告は寄せられていなかった。

国営メディアの誤情報

ロシアと中国の国営メディアも、社会不安のイメージを増幅させている。 ここでは取り上げる内容が真実か虚偽かは問題にならない。 民主主義国に対する外国の情報操作、介入を研究するシンクタンク、アライアンス・フォー・セキュアリング・デモクラシーのブレット・シェーファー上級研究員によれば、中国のプロパガンダ機関は、20 年のブラック・ライブズ・マター (BLM = 黒人の命も大切だ)運動の報道と同様、米国での抗議デモを同国のイメージ低下に利用している。 その際米国政府について、他国で起きている抗議デモを支持するにもかかわらず、自国の抗議デモに対してはそうした姿勢が見られないことなどを強調するという。

一方、ロシアの国営スプートニク通信は、抗議デモでの破壊行為のため用意されたという大量の煉瓦(れんが)の画像を公開したが、X のコミュニティーノートによると前出のウッズ氏も共有したこの画像はニュージャージー州の建設現場のもので今回の抗議デモとは無関係だった。 ロシアの国営メディアはまた、事実と異なる、誤解を招く主張も振りまいている。 これはトランプ氏寄りのインフルエンサーが拡散しているもので、左派の個人や団体が抗議デモに資金を提供しているという内容だ。シェーファー氏が明らかにした。

ロシア政府は対外的なプロパガンダを仕掛けるよりも、一触即発となっている米国内の情報環境へ燃料を投下することの方に関心があるようだと、同氏は分析している。 (CNN = 6-12-25)


損保ジャパン、顧客情報 1,750 万件が漏洩か 4 月に不正アクセス

インターネットの事故・犯罪

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生成 AI 市場、日本でも巨大 IT 優位に警戒感 公取委が初の実態調査

AI の多様化と制御

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偽情報信じている人の誤り正す方法は?  正しい記事だけでは効果薄

ネット上の誤情報や偽情報を信じている人が、誤りを正すことにつながる方法を、名古屋工業大や理化学研究所、東北大などの研究チームが明らかにし、専門誌に発表した。 誤った情報を信じている人はその誤りを正す記事を避ける傾向がみられるが、そうした自分の傾向を振り返ってもらうような支援が効果的だという。

ネット上の誤情報・偽情報が SNS を介して急速に広がり、社会に深刻な影響を与える事例が増えている。 その対策の一つがファクトチェック (FC) 作業だ。 情報の真偽を検証し、正確な情報を共有する取り組みが進められている。 ただ、誤った情報を信じている人は、その誤情報を訂正した FC 記事も避ける傾向が確認されている。 そうした心理的な壁を克服するための有効な支援方法が求められている。

研究チームはまず、20 - 70 歳の人を対象に、新型コロナウイルスをめぐる複数の正誤情報についてクリックしてもらい、信じている誤情報に対する FC 記事をクリックする傾向が低いグループ(627 人)と高いグループ(610 人)の二つに分けた。 クリック傾向が低いグループの約半数は、信じている誤情報を訂正した FC 記事を 1 回もクリックしていなかった。

その後、それぞれのグループで、@ 自分が FC 記事を積極的にクリックするタイプか、避けるタイプかなど、二つの質問で自身を振り返ってもらう、A 信じている誤情報の FC 記事をクリックされやすいように記事リストの上位に置く、B 特に何もしない - - の三つにわけて取り組んでもらい、クリック回数や正しい情報に考えを変えるかなどを検証した。

その結果、信じている誤情報を訂正する FC 記事をクリックする傾向が低いグループでは取り組み後に、FC 記事へのクリック率が A で 33 ポイント増、@ は 14 ポイント増となり、B に比べて統計上、明確な差が出た。 一方、正しい情報に考えを改めたかについては、@ は効果が確認され、A、B に比べて明確な差があり、効果が 1 週間後も続いた。 だが、A はクリック数は最も増えたにもかかわらず、考えを改める効果は乏しかった。

研究チームの田中優子・名古屋工業大教授(認知科学)は「『クリックしましょう』とか『考え方を変えましょう』などと強制せず、自分のクリックの傾向はどうだったかなと自律的に振り返ってもらうことで、自分はどのように情報と向かい合いたいかを考え、その結果、自らクリックをして、読んだ訂正情報をもとに、誤情報を吟味するようになったのではないか」とみる。

研究チームは今後、訂正情報をより効果的に伝える方法の開発をめざす。 田中さんは「表面的なクリック数だけをみるのではなく、どのようにしてクリックを促すかの質を評価していく必要がある」と指摘する。 論文は こちら。 (桜井林太郎、asahi = 5-26-25)


コロナワクチン「誤情報が死者数に影響」 東大などがシミュレーション

「新型コロナのワクチンの有効性データは捏造されている」などといった情報の影響がなければ、死者数を減らすことができた - -。 ワクチンに関する誤情報について研究している東京大と東北大のチームが、こんな研究成果を国際科学誌に発表した。 東大新世代感染症センターの古瀬祐気教授(感染症学)と東北大の田淵貴大准教授(公衆衛生学)の研究チームが、新型コロナのワクチン接種が始まった 2021 年に約 3 万人を対象にオンラインで実施されたアンケートを元に、数理モデルを用いたシミュレーションで解析した。

「431 人の死」防げた計算

アンケートでは、「ワクチンの安全性のデータは捏造されている」、「製薬会社はワクチンの安全性についての懸念を隠蔽している」、「政府は予防接種と自閉症の因果関係を隠している」など、七つの誤情報について信じているかどうかを聞いた。 一つでも信じていると答えた人は、ワクチンを接種しないと決めた「忌避者」では 36.6% に上った。ワクチン接種済みや接種予定の「受容者」では8.5%だった。

研究チームの推定では、2021 年末時点で日本全体のワクチン接種率は 83.4% だった。 数理モデルを使い、ワクチン忌避者が誤情報を信じないで受容者と同じ割合でワクチンを打った場合を計算すると、接種率は 88.0% に上がった。 逆に、ワクチン受容者の中で誤情報を信じている人がワクチンを打たなかった場合、全体の接種率は 76.6% に下がった。 同年の新型コロナによる死者数約 1 万 4 千人をベースに、接種率やワクチンの有効性、感染者数、変異株の種類などから予測シミュレーションを行ったところ、実際より接種率を上げられた場合は 431 人の死亡を回避できたという。 一方、誤情報への対応に失敗して接種率が下がった場合、死者数は 1,020 人増えた。

ワクチン誤情報は急拡大 研究者懸念

研究結果は 21 日に国際科学誌「Vaccine(オンライン版)」で公表された。 古瀬教授によると、ワクチンの誤情報に関するアンケートは、21 年以降も毎年行っているという。 「詳細な数字の分析はまだだが、21 年当時に比べて誤情報を信じる人は急増傾向だ。 現状のまま次のパンデミックを迎えると、事態が深刻化する恐れがある」と懸念する。 (後藤遼太、asahi = 5-22-25)


メルカリ、トラブルに「直接関与」へ方針転換 不正利用の拡大で

フリマアプリ大手のメルカリは 21 日、客の間で発生したトラブルについて、同社が直接関与していく新たな方針を発表した。 不正利用者を排除する取り組みやトラブルの仲裁を進める。 不正利用が拡大し手口も多様化していることから、客同士での解決を基本とした従来の方針を転換する。

不正利用者については、AI (人工知能)に疑わしい行為を学習させて不正リスクをスコア化。 不正利用者を特定すれば、アカウント利用の制限や刑事事件化など対応を強化する。 また、9 月に「メルカリ鑑定センター」を稼働する。 購入者が届く前に鑑定を希望できるサービスを自社運営に切り替えることで、鑑定できる商品を拡大。 一部ブランド品では取引前の鑑定の義務化も進める。 トラブル時に、購入代金や販売利益を補償する「全額補償サポートプログラム」も 7 月に始める。 これまでも個別に補償するケースはあったが、基準を明確化する。

メルカリは国内の月間利用者が 2,300 万人、年間流通総額は 1 兆円にのぼる。 利用が広がる中、昨年 11 月には出品者が購入者からの返品要請に応じたところ、別物が返送されたトラブルが起きた。 同社は不十分な対応への謝罪とサポート体制強化の方針を発表していた。 迫俊亮執行役員はこの日の会見で「サービスの運営者として、もっとトラブル解決に直接的に関与していく姿勢に転換する必要がある」と強調した。 今後は不正利用の状況などを定量的に示す「透明性レポート」を定期的に開示し、外部機関との連携も強化していくという。 (井東礁、asahi = 5-21-25)


能動的サイバー防御法が成立 政府が情報収集、攻撃サーバー無害化

能動的サイバー防御 (ACD)

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TikTok に 870 億円の制裁金 欧州の利用者データ、中国に転送

TikTok の存続

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米アマゾン、関税の影響額表示を撤回 「敵対的行為」政権側の激怒受け

GAFA の独占・寡占

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公営ギャンブル、ネット購入が 8 - 9 割 賭け意識乏しく、依存の懸念

競輪や競馬など公営ギャンブルの投票券の購入はいまやオンラインが 8 - 9 割を占めることが、政府の調査で明らかになった。 コロナ禍で急増して以降、行動制限が緩和されたあとも高止まりしている。 オンライン購入はギャンブル依存症に陥りやすい懸念があるほか、違法なオンラインカジノの摘発も続いていることから、政府は対策を急いでいる。 内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局の調べでは、公営ギャンブルのオンライン購入の割合は 2023 年(中央競馬以外は年度)、地方競馬が 90.0%、中央競馬が 83.0%、競輪 81.4%、オートレース 80.9%、ボートレース 78.5% だった。

19 年は最も高い地方競馬でも 78.0%、最も低い競輪は 54.9% だったが、コロナ禍で外出が制限された 20 年に急増。 中央競馬は一時 92.7% まで上がった。 その後、中央競馬は下がったが、地方競馬は高いまま。オンライン率が他よりも低かった競輪も 8 割を超えるようになった。 オンライン購入が増えたことで、バブル崩壊後に下がった売り上げも伸びている。 23 年には中央競馬が約 3 兆 3 千億円、ボートレースが 2 兆 4 千億円となるなど、いずれも 19 年比で 13.7% - 80.0% 増。 規模が小さいオートレースは 1,091 億円だが、19 年の 739 億円から 47.6% 増と増え方は大きかった。

ただ、オンライン購入は依存症になりやすいという指摘がある。 時間や場所を選ばずアクセスでき、実際に金銭を賭けている感覚が乏しいためとされ、政府の有識者会議では「短期間に多額の借金を抱える傾向がある」といった意見が出た。 今月には、違法なオンラインカジノを利用していたとして、芸人 6 人が単純賭博容疑で書類送検された。 依存症を自覚していた芸人もいたとされる。

政府は 3 月、改定した「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」を閣議決定。 クレジットカードによる後払い決済を見直したり、依存症が疑われる人のアクセスを制限しやすくしたり、購入傾向を分析して効果的な依存症対策につなげたりするといった強化策を打ち出した。 内閣官房の岸本堅太郎参事官は「オンライン化によってギャンブルがどこでも利用できるようになっただけでなく、家族や知人が依存症に気づきにくくなっている」と話し、事業者に主体的な取り組みを求めていくとした。 (浜田知宏、asahi = 4-28-25)


1 分おきに中傷メール 3,190 通 兵庫の元百条委員が被害届を検討

SNS を使った犯罪行為など

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フジ問題に迫ったデジタル・フォレンジック 活用の契機はオウム事件

フジテレビの元アナウンサーが元タレントの中居正広氏から「性暴力を受けた」とフジ側の第三者委員会が認定した。 設置から調査報告書の公表まで約 2 カ月。 その裏側では 22 万件以上の電子データを分析する「デジタル・フォレンジック調査」が活用されていた。 同社と親会社のフジ・メディア・ホールディングス (FMH) が第三者委を設置したのは今年 1 月 23 日。 この日以降、第三者委の委託を受けた東京都千代田区にある会社の関係者が、ひそかに調査を始めた。

報告書によると、調査対象はフジの港浩一社長(当時)のほか同社社員や元社員ら 14 人。 同社が貸し出していたパソコンやスマートフォンなどのほか、同意を得た個人利用のスマートフォンについても、データ改変などされないよう「保全」した。

Teams、Outlook、SMS のチャットたどり

同社内では米マイクロソフトのオンライン会議ツール「Teams (チームズ)」やメールツール「Outlook」が使われ、データはサーバーに保管されており、このデータも保全された。 データはあわせて 22 万 5 千件以上。 ここから生成 AI などを使い、第三者委があらかじめ設定したキーワードなどをもとに「重要」と判断された計926件に絞り込んだ。 第三者委の調査過程では、聞き取りをした 14 人の一部から「データの一部を意図的に削除した」という供述も出ていた。

このため、削除の痕跡があるかどうかについても調査。 その結果、ショートメールのチャットデータ 437 件、LINE のチャットデータ 86 件、Teams のチャットデータ 1,427 件、合わせて 1,950 件のデータが削除されていたことが判明した。 14 人のうち編成部長(当時)については、2022 年 5 月 9 日から 25 年 1 月 10 日にかけて中居氏や弁護士らとの間でやりとりしたショートメールのデータ 325 件を削除していた。 時期は、第三者委の設置が決まる直前の同年 1 月 9 日から設置後の 2 月 1 日にかけてだった。

LINE のデータの一部は完全には復元できなかったが、Teams についてはマイクロソフト側が保存していたため復元できた。 第三者委は、こうして集まったデータをもとに関係者にヒアリングをしたり、電子データの追加調査をしたりして 3 月 31 日、290 ページ以上の報告書を公表した。

オウムの調査、きっかけの一つに

デジタル・フォレンジック調査は、いつから、どのように使われているのか。 NPO 法人「デジタル・フォレンジック研究会(東京)」で会長を務める立命館大の上原哲太郎教授(情報セキュリティー)によると、日本で調査が活発になったのは、1990 年代に相次いだオウム真理教による事件の捜査がきっかけの一つだった。  教団側への捜査でパソコンを解析する必要があり、警察に専門知識を持つ捜査員が配置され、技術は民間企業からも提供された。

調査結果「確固としたファクトとして示せる」

2000 年代にはそのような技術を民間での不正調査にも利用する動きが生まれ、今では、企業の不祥事でも使われることが一般的になった。 記録を復元分析する能力を持つことは犯罪抑止の効果もあり、「コンビニのレジを映す防犯カメラのようなもの」と話す。 「デジタルデータソリューション(東京)」には、デジタル・フォレンジック調査について、警察や企業、個人から年間約 8 千件の相談がある。 殺人事件の捜査で容疑者のスマートフォンから事件に関わる証拠を保全したり、ある企業の元社員による機密情報の持ち出し容疑を受けて消去された外部とのやり取り履歴を調査・解析したりしたこともあるという。

作業は関係者以外立ち入り禁止の場所で行う。 パソコンなどのあらゆる操作ログを抽出したり、モバイル端末から通話履歴やメッセージなどを取得したりする。 どれだけの情報が得られるかは、関わるエンジニアの人数や技術力による部分も大きいという。 費用は、調査期間などに応じて数十万 - 数百万円以上だ。 熊谷聖司社長 (48) は「今の時代、不正や犯罪などの痕跡はデジタル空間に残っていることも多い。 確固としたファクトとして調査結果を示せることは、非常に有用だ」と語る。 (真田嶺、御船紗子、小寺陽一郎、asahi = 4-2-25)


マスク氏、X 買収を表明 自身の AI 企業に統合、開発競争に注力

イーロン マスク氏の Twitter → X

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アップル、新型ノートパソコン発売 生成 AI 対応で最新半導体を搭載

米アップルは 5 日、ノートパソコン「マックブック・エア」の新型を発表した。 生成 AI (人工知能)に対応するため、最新の半導体を搭載した。 12 日に発売する。 自社の生成 AI 「アップルインテリジェンス」に対応し、AI で文章や画像を手軽に作成できる。 画面の大きさは 13 インチと 15 インチの 2 種類。 米国では 13 インチが 999 ドルから、15 インチが 1,199 ドルからと、これまでよりも 100 ドル引き下げた。

日本での価格は 13 インチが税込み 16 万 4,800 円から、15 インチが税込み 19 万 8,800 円からに据え置いた。 アップルはパソコンの頭脳となる半導体を自社で設計している。 最新の半導体「M4」を搭載したことで、メモリーの容量を増やし、より高速でスムーズな処理ができるようになったという。 通話やオンライン会議に使うカメラの性能も高めた。 電池の持続時間は最大 18 時間で変わらない。 (サンフランシスコ・奈良部健、asahi = 3-6-25)


電子処方箋、過半数の医療機関で「導入予定なし」 国は普及めざすも

医療 DX (デジタル化)の一環として国が普及をめざす電子処方箋について、厚生労働省は 3 日、半数以上の医療機関が「現時点で導入予定はない」と調査に回答したと公表した。 すでに導入した医療機関への質問では、メリットよりもデメリットに関する回答が多く集まった。 電子処方箋は 7 割近くの薬局で導入が進む一方、医療機関の導入率は 1 割に満たない。 調査は全国の医療機関、薬局を対象とし、2 月 10 - 19 日に実施。 電子処方箋を導入していない医療機関の 58.7% が「現時点で導入予定はない」と答えた。 病院に限れば 44.6% だったが、医科診療所は 53.8%、歯科診療所は 74.2% に上った。

導入していない理由として、病院からは「システム導入・改修費用が高額」、「導入する経済的メリットを感じない」といった回答が多かった。 電子処方箋を導入した医療機関にデメリットを複数回答可で尋ねたところ、病院からは「電子と紙が共存することにより業務が煩雑化する」、「電子処方箋を希望する患者さんが少ない」など計 1,033 件の回答が寄せられた。 一方、メリットに関しては「医療 DX 推進体制整備加算が算定できる」が最も多く、回答数は計 622 件にとどまった。

電子処方箋をめぐっては、医師が処方した薬とは別の薬が薬局に伝わるトラブルが 7 件報告された。 薬につける番号のひもづけに誤りがあったことが原因で、厚労省は 2024 年 12 月に一時、システムを停止した。 こうしたトラブルを受け、6.6% の病院が「導入を見送ることにした」と答えた。 電子処方箋は 23 年 1 月から運用が始まった。 国は 25 年 3 月末までにオンライン資格確認システムを導入しているすべての医療機関と薬局で運用をめざしていたが、導入率の低迷を受け、今年夏をめどに新たな目標を設定するとしている。 (藤谷和広、asahi = 3-3-25)


マイクロソフト、通話サービス「スカイプ」を 5 月で終了

米マイクロソフト (MS) は 2 月 28 日、通話サービス「スカイプ」のサービスを 5 月 5 日で終了すると発表した。 MS が提供する会議システム「チームズ」に一本化するとしている。

MS は 2011 年、スカイプを約 85 億ドル(約 1.3 兆円)で買収。当時の MS として最高額の買収となった。 ネット経由の無料通話サービスで人気を集めていたスカイプの買収で、スマートフォンで先行する米アップルに対抗する狙いがあった。 だが、米メタ傘下の通話アプリ「ワッツアップ」や会議システム「ズーム」など様々なコミュニケーションアプリが広がるなか、優位性を失っていた。 米メディアによると、16 年に 3 億人いた利用者は、23 年には 3,600 万人に減っていた。 (ロサンゼルス・五十嵐大介、asahi = 3-1-25)


全国初の共同輸配送デジタルマッチング、10 業者が 82 ルートで協議

荷物の共同輸配送を希望する会社どうしをネット上で結びつける「デジタルマッチング」が、業種や企業系列の壁を越えて北海道内企業の間で広がり始めた。 北海道経済産業局は 17 日、大手スーパーなど 10 業者が、それぞれ計 82 の輸配送ルートで協議に入ったことを明らかにした。 経産局が 1 月末までの約 1 カ月半、行政による仲介としては全国初の試みとして、無料でのマッチングシステム利用を呼びかけていた。 その結果、44 業者が共同輸配送の候補先として 1,743 ルートを登録した。 そのうち 2 割以上の 10 業者が 82 ルートで実現の可能性があるとみて、それぞれ個別の交渉を始めたという。

さらに、登録された 1,743 ルートを経産局が分析したところ、17% にあたる 295 ルートで、共同輸配送が成立する可能性があることがわかった。 いずれも道央地域と遠距離を結ぶルート同士で、発着地点がそれぞれ 50 キロ圏内にあるからだ。 経産局産業振興課の佐々木悠太総括係長は「予想通りデジタルマッチングを望む企業は多く、その効果も見込まれることが明確になった」とみている。 今後、来年度も取り組みを広げることを検討する見通しだ。 道内では、輸配送先で積み荷をおろした後、戻るときの荷物がない「片荷」が多く、非効率になっている。 各社が片荷の解消をめざしているが、共同輸配送は同業種や企業系列内にとどまり、浸透していない。

経産局が昨年 10 月、道東に事業所をもつ農漁協やメーカーなど計 500 の荷主にアンケートを実施(回答率約 40%)したところ、運転手不足の一因とされる「2024 年問題」の影響がある、または影響が見込まれると答えたのは全体の 70% にのぼった。 その中に「輸送料金が上がった」、「効率が悪い地域への配送は断っている」との回答があり、輸配送されない「空白地域」が広がりかねない現状が浮かんだ。 (丸石伸一、asahi = 2-17-25)


マスク氏らによる「政府効率化」のデータ閲覧を差し止め 米連邦地裁

米ニューヨーク州南部地区連邦地裁は 8 日、起業家イーロン・マスク氏らが「政府効率化」のためと称して進めようとしている米財務省などのデータ閲覧について、情報が漏れるリスクがあるとして一時的に差し止める命令を下した。 トランプ政権下でマスク氏が担う「政府効率化省 (DOGE)」に対しては、民主党を中心に強い批判が起きている。 民主党が主導権を握るニューヨークなど 19 州が原告となり、トランプ氏やマスク氏らが選んだ「政治任用職員」、「特別政府職員」が決済システムなどにアクセスできる状況について、違法だと訴えていた。

連邦地裁はこの主張を受け入れ「機密情報の開示につながりかねない」として差し止めを命じた。 第 2 次トランプ政権が発足した 1 月 20 日以降、米財務省から得たデータについては、直ちに破棄することも求めた。 マスク氏は、連邦政府との間で巨額の契約を交わす企業を経営し、SNS を通じた発信や巨額の資産を通じて大きな影響力を持つ。 トランプ氏を通じて政治的権力も握り、決済情報や個人情報を含む膨大な政府内のデータを閲覧できるようになることについて、米国内でも懸念の声が根強い。 (ニューヨーク・青山直篤、asahi = 2-9-25)


フランス検察、X を捜査 「アルゴリズムがデータ処理ゆがめた疑い」

米起業家イーロン・マスク氏の所有する X (旧ツイッター)について、フランスの検察当局が 7 日までに捜査を始めたことが明らかになった。 仏メディアが同日伝えた。 欧州ではマスク氏の主張が X で優先的に表示されているとの警戒が強まっており、仏検察当局は X のアルゴリズムがデータ処理をゆがめた可能性を調べているという。 仏メディアのフランスアンフォによると、捜査に着手したのはパリ検察のサイバー犯罪部門で、現段階では専門の担当者らが「初期の技術的な確認を実施している」という。 検察当局は同メディアに対して、X のアルゴリズムが「自動データ処理システムの機能をゆがめた可能性がある」と明らかにした。

マスク氏はトランプ米大統領の就任前から、今月のドイツの総選挙での右翼政党「ドイツのための選択肢 (AfD)」への投票を呼びかけるなど、X での政治的な発言を増やしてきた。 欧州連合 (EU) の行政機能を担う欧州委員会は 1 月、マスク氏の主張が X で優先的に表示されている可能性もあるとみて、X 側にアルゴリズムに関する社内文書の提出を求めた。

仏紙ルモンドによると、パリ検察の捜査は、マスク氏に買収された後のXのアルゴリズムの設定について、仏下院議員が懸念を示す書簡を送ったことがきっかけだった。 同紙は法律の専門家の話として、利用者に通知せずにアルゴリズムを変更することは、コンピューターのハッキングを処罰するための刑法に違反する可能性があるとしている。 (パリ・宋光祐、asahi = 2-8-25)