備蓄米の入札中止へ 検討中の随意契約、問われる不正防止の仕組み 農林水産省は 21 日夜、備蓄米の放出に向けて 28 - 30 日に予定していた 4 回目の入札を中止すると正式に発表した。 小泉進次郎農水相の指示を受け、任意の業者との「随意契約」による放出に切り替える検討に入ったため。 急な方針の変更に、流通の現場などでは戸惑いも広がっている。 「国民に最も求められているのは、コメの問題をスピード感をもって結果を出せるかどうかだ。」 小泉氏は 22 日、農水省での職員への訓示ではっぱをかけた。 備蓄米の放出では、多くの業者に購入価格を競わせる入札方式を採用し、高い価格を示した業者に売り渡してきた。 税金で買い入れた備蓄米は「国民の財産(江藤拓前農水相)」で、不当に安くは売れない。 会計法などの原則にもとづく入札にこだわっていた。 しかし、入札による競争で落札価格が高まり、スーパーなど小売店での値段が下がらない一因になっているとの指摘も出ていた。 農水省によると、全国のスーパー約 1 千店でのコメの平均販売価格は 5 キロ 4,200 円を超え、前年水準の 2 倍以上の高値になっている。 石破茂首相は 21 日、米価について「(5 キロ) 3 千円台でなければならない」と発言。 農水相に起用した小泉氏に、備蓄米の入札で随意契約の活用を検討するよう指示したことも明らかにした。 随意契約なら、農水省が価格などの条件を定めて業者を選べるため、売り渡し時の価格を抑えやすい。 小泉氏は 22 日に出演したテレビ番組で、農水省側で価格を決めて契約する考えを示した。 JA 全農などの集荷業者を通さず、スーパーやネット通販などの小売会社に直接渡すことも検討している。 22 日中に農水省と財務省で具体策を固めるよう指示したという。 小売店からは、急な展開に戸惑いも漏れる。 東京都内のコメ店の経営者は、4 回目の入札で出る備蓄米の仕入れを見込んでいたといい、「ショックだ。 なぜ最初の放出から随意契約にしなかったのか。」と憤る。 与党の自民党にも波紋が広がる。 閣僚経験者は「どうやって契約先を選ぶのか。 転売してもうけを狙う業者と契約してしまうのでは」と懸念する。 随意契約では、農水省側の裁量が大きくなる。 不当に安い価格で契約するなどの不正を防ぐ仕組みづくりも課題になる。 また、すでに入札を通して高値で売り渡した業者との公平性も問われる。 公共契約に詳しい筑波大の楠茂樹教授は「これまでの入札との整合性や、なぜ随意契約が必要かをきちんと説明する必要がある」と指摘する。 一方、小泉氏は備蓄米の放出量について、需要がある限り「無制限に出す」との方針も示している。 3 回の入札で約 31 万トンを出し、残るのは 60 万トンほど。災害や凶作に備えるという本来の役割を果たせるのかも問われる。 (内藤尚志、山田暢史、asahi = 5-22-25) コメ価格、2 週ぶり再び値上がり 4,268 円 2 倍超の高水準続く 5 - 11 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 4,268 円で、前の週より 54 円 (1.3%) 高かった。 値上がりは 2 週ぶりで、前年同期の価格(2,108 円)と比べると、2 倍超の高値が続いている。農林水産省が調査会社のデータをもとに算出し、19 日に公表した。 前の週の平均価格は、昨年末以来 18 週ぶりに下落。 農水省が備蓄米の放出を進める方針を 2 月上旬に表明してから、値下がりしたのは初めてだった。 割安な備蓄米の販売量が増えた影響とみられるが、産地や品種を明示した銘柄米の需要が底堅く、米価全体では再び上昇に転じた。 江藤拓農水相は 18 週ぶりの値下がりが判明した後の記者会見で、「消費者の方々が大いに評価するような水準ではない」と指摘。 今月 16 日には、米価の抑制に向けて、備蓄米放出の入札条件の緩和などの新たな対策を発表した。 備蓄米の流通を改善して、店頭に届きやすくするとしている。 (内藤尚志、asahi = 5-19-25) 今後のコメ価格、割れる識者の見方 18 週ぶり値下がりで 4,214 円 4 月 28 日 - 5 月 4 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 4,214 円で、前の週より 19 円 (0.4%) 安かった。 値下がりは昨年末以来 18 週ぶりで、政府が備蓄米を放出してから初めて。 下げ幅は小さく、値下がりが続くかは不透明だ。 農林水産省が調査会社のデータをもとに算出し、12 日に公表した。 前年同期の価格 (2,106 円) と比べると、約 2 倍の高値になっている。 昨夏から加速した米価の高騰が収まらないことから、農水省は備蓄米の活用を 2 月上旬に表明。 入札を通して放出した備蓄米は、3 月下旬から一部の店舗では 5 キロ 3,500 円前後で売られていた。 しかしコメ全体の平均価格は、ゆるやかな上昇が続いた。 農水省の調査では、3 月の入札で放出した約 21 万トンのうち、4 月 13 日までにスーパーなどの小売店に届いたのは 1.4% の 3,018 トンしかなかった。 放出した当初は流通業者間で精米や輸送などの計画の調整に時間がかかり、各地に行き渡るのが遅れていた。 備蓄米の流通量がある程度増えたため、ここに来て価格が下落に転じた可能性がある。 ただ、江藤拓農水相は今月 9 日の会見で、まだ流通先に偏りがあり、店頭での販売量も不足していると指摘。 「期待された結果が出ていない」とし、さらなる改善策にとりくむ意向を示した。 備蓄米の流通が遅れたままだと、主要な銘柄米が高値でも売れる状態が続き、平均価格が高止まりする可能性もある。 全国のスーパー約 1 千店でのコメの平均販売価格が、昨年末以来 18 週ぶりに値下がりした。 政府が放出した備蓄米の効果とみられるが、下げ幅は小さい。 今後、大幅な値下がりには至らないとの見方がある一方で、価格の急落を懸念する識者もいる。 米価はこのまま下落に向かうのか。 東北大大学院の冬木勝仁教授(農業市場学)は「極端な値下がりはなく、ほぼ横ばいの価格が続く可能性がある」とみる。 備蓄米放出の効果は出ているものの、流通関係者らのコメの不足感は解消されていないからだ。 主食用米をつくる農家の作付け状況と、それにもとづく収穫量の予測が、価格に影響するとも指摘する。 「コメの増産は簡単ではない。 コメ業界全体で実際に収穫が大幅に増えるという判断にならないと、価格は下がらないのではないか。」 茨城大学の西川邦夫教授(農業経済学)も、今年の新米の収穫量の見込みが価格に影響すると指摘する。 そのうえで、収穫量が安定しそうだとわかれば、価格は下落に向かうとみる。 政府が目標の価格を示さないまま備蓄米の放出を続ける方針のため、「価格が大きく下がることも考えられる。 目標を設定して達成したら放出をやめるといった『出口』も考える必要がある」と警鐘も鳴らす。 (内藤尚志、asahi = 5-12-25) 「米の購入量減らした」世帯は 35.8% 地銀系シンクタンク調査 米の販売価格が高止まりし続ける中、群馬銀行系のシンクタンク群馬経済研究所が、群馬県内の世帯に米の購入状況について初めて調査した。 米の購入量を減らした世帯が約 3 分の 1 に上り、今後の価格や供給への不安を感じる世帯は 8 割に上ることが分かった。 調査は 3 月 6 - 11 日、県内在住の 20 歳以上で「世帯全体の食事の献立を決める立場の人」を対象に、インターネットで実施。 1,069 世帯から回答があった。 米を自宅で「ほぼ毎日炊いている」と答えた割合は 45.4% と半数近くを占め、「よく炊いている」、「たまに炊くことがある」を含めると 90.4% に上った。 同研究所は「食の多様化が進んでいると言われているが、依然として食生活の中心は米だと分かる」とする。 米の入手方法は、「店舗での購入」が 64.3% と最も多かった。 店舗の選択基準としては、74.3% (複数回答)が「価格の安さ」を選んだ。 米の購入量は「変えていない」が 63.4% と過半数を占めたが、35.8% が「以前より減らした」と答えた。 米の代わりに購入量を増やした食品(複数回答)は、「麺」が 64.7%、「パン」が 46.9% だった。 米を以前よりも「安価な銘柄に変更した」も 53.9% と半数を超えた。 今後の価格や供給の状況について、「不安がある」と回答した世帯は 79.8% に上った。 不安を感じる理由については、「ほぼ毎日家で炊いていたが、ここ数カ月高すぎて買えていない」、「子どもが食べ盛りなので制限させるのは難しい」、「耕作放棄地や農地の転用が増えて、国産の米が食べられない状況になるのではないかと不安を感じる」といった回答があった。 同研究所は「主食の米が不測の事態になると大きな不満につながる。 米作の衰退に不安を感じる人も多い。 安定した生産・供給体制づくりが望まれる。」としている。 (中村真理、asahi = 5-10-25) タイより高価なイカ 10 年で 3 倍値上がり 「もはや高級魚」の異変 大衆魚として知られるスルメイカの高騰に拍車がかかっている。 市場での取引価格は 10 年ほど前の 3 倍近くに上がり、天然マダイを追い抜いた。 もはや高級魚となったイカの異変を受け、見た目や食感を再現した「そっくり食材」も生まれている。 東京都品川区の鮮魚店「魚河岸 中與商店武蔵小山店」の担当者は「スルメイカは高すぎて、今は仕入れていません」と話す。 3 月中旬に店に並んだ青森産のスルメイカ(解凍)の価格は数年前の 5 倍近い、1 杯 518 円(税込み)だった。 生のスルメイカは 1 杯で 1 千円を超え、高級イカの代表「ヤリイカ」よりも高い。 10 年前は 1 キロ 483 円 → 今は 1,417 円 焼きイカや天ぷら、煮物として人気の食材で、イワシなどと並び「大衆魚」の代表格だったが、鮮魚店の担当者は「スルメイカはもう大衆魚とは言えない」と断言する。 かつて年間数十万トンあった漁獲量も、2023 年には約 2 万トンに減った。 東京都中央卸売市場での 14 年の平均取引価格(鮮魚、1 キログラム)は 483 円だったが、今年 3 月の平均は 1,417 円と、高級魚として知られる天然マダイ(1,185 円)を上回った。 漁獲量が減った最大の要因は、そもそもスルメイカが少ないことだ。 水産研究・教育機構(横浜市)によると、スルメイカには二つの群れがある。 秋に山陰沖から対馬海峡で卵からかえり、日本海を回遊する秋季発生系群と、冬に東シナ海で孵化し、太平洋を北上して津軽海峡などを通って日本海に回る冬季発生系群だ。 いずれも減少傾向で、2024 年の資源量は、秋季が 10 年前から 9 割減り、14 万 5 千トンと過去最低で、冬季も同 8 割減の 13 万 5 千トンだった。 特に、秋季はこの 5 年の減り幅が激しい。 水産研究・教育機構の調べでは、水温の低下や、海流の変化で生き残った稚イカの数が少なかったことが考えられるが、はっきりした原因は分からない。 漁師や専門家の中には、海の環境変化のほか、周辺国を含めた乱獲の影響を指摘する声もある。 資源量の回復のため、水産庁は今年度、漁獲可能量制度 (TAC) でスルメイカの漁獲量の上限を 1 万 9,200 トンに設定し、昨年度の 7 万 9,200 トンから 7 割以上減らした。 今回、初めて水揚げ量の上限が 700 トンと設定された富山県の担当者は「ブリやホタルイカなどの漁期とも重なっており、漁を止めるわけにはいかない。 漁業者が困らないように対応していく。」と話す。 各地のイカ釣り漁船が所属する「全国いか釣り漁業協会」の担当者は「国が決めた枠は守る。 ただ、国内だけの対応で、本当に資源が回復するのか。 具体的な策を示してほしい。」と話す。 食感や見た目はまるでイカ JAL ラウンジでも提供 スルメイカなどの高騰を受け、つやつやな見た目や食感がまるでイカなのに、コンニャクや魚肉を使った「代替シーフード」が登場している。 大手水産練り製品メーカーの一正蒲鉾(新潟市)は 2017 年から開発に着手し、「イカ風かまぼこ」を販売する。 主には業務用だが、オンラインショップでも税込み 920 円(700 グラム)で購入できる。 同社は「直近でのイカの高騰・入手困難な状況で、代わりにイカ風かまぼこを検討いただくケースが増えている」とする。 三重県の食品メーカー「あづまフーズ」は 21 年からコンニャク粉でイカの刺し身を再現した「まるでイカ(230 グラム、同 990 円)」を販売している。 イカの不漁などが続き、代替食品を模索。 元々台湾の企業が取り扱っていた商品を、国内向けに味や食感などを改良した。 原料はコンニャク粉のため、ビーガン(完全菜食主義者)やベジタリアン(菜食主義者)のほか、魚アレルギーを持つ人にも需要がある。 羽田空港と成田空港の国際線「JAL ファーストクラスラウンジ」では寿司のネタとして使われているという。 東京都中央卸売市場のスルメイカ(鮮魚、1 キログラム)の年間の平均取引価格は 14 年は 483 円だったが、24 年は 1,310 円。 今年 3 月の平均価格は 1,417 円と、この数年の値上がりは特に顕著で、記録的な高騰が続いている。 (山田暢史、渡辺洋介、asahi = 5-10-25) 備蓄米「流通しない。 たいへんな問題。」 農水相、停滞認め見直し策検討 政府が米価の高騰を抑えようと放出した備蓄米について、江藤拓農林水産相は 8 日、「30 万トン出したが、流通しない。 相変わらずスタック(停滞)している。 たいへんな問題だ。」と述べ、流通の手法を見直す考えを示した。 今月中に実施する備蓄米放出の 4 回目の入札で、「いろいろ工夫もしていきたい」とした。 東京都内で開かれた日本農業新聞全国大会の懇親会のあいさつで述べた。 農水省による備蓄米の流通先調査では、3 月の 2 回の入札で放出した約 21 万トンのうち、4 月 13 日までにスーパーなどの小売店に届いたのは 1.4% の 3,018 トンだった。 4 月後半から備蓄米の流通が本格化したとの見通しも示していたが、全国のスーパー約 1 千店でのコメの平均販売価格は高止まりしている。 備蓄米の放出は今夏まで毎月実施する予定で、4 月下旬の 3 回目の入札では 10 万トンが落札された。 農水省が放出分を原則 1 年以内に買い戻すルールが流通の遅れにつながっているとの指摘もあり、見直しの対象になる可能性がある。 (内藤尚志、asahi = 5-8-25) コメ価格 5 キロ 4,233 円、備蓄米効果現れず 17 週連続で値上がり 4 月 21 - 27 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 4,233 円で、前の週より 12 円 (0.3%) 高く、17 週連続で上昇した。 農林水産省は備蓄米の流通が 4 月後半から本格化したとみているが、米価の下落にはつながっていない。 農水省が調査会社のデータをもとに平均価格を算出し、今月 7 日に公表した。 上昇率は前の週の 0.1% より拡大した。 前年同期の価格(2,088 円)と比べると、2 倍超の水準が続いている。 農水省は米価高騰の背景に流通の目詰まりがあるとみて、備蓄米の放出を進める方針を 2 月 7 日に表明。 安価なコメが大量に出回るとの見方が広がれば、流通業者が多めに持っている在庫を手放すようになり、価格が下がると期待した。 だが、逆に価格は上昇した。 農水省は 3 月に 2 回の入札で約 21 万トンを放出したのに続き、4 月上旬には 10 万トンの追加放出と、今夏まで毎月出す方針も打ち出した。 それでも価格は下がらず、流通業者の間では「どこかにコメの在庫がたまっているのではなく、そもそも供給量が不足している(卸売会社)」との見方も出ている。 放出された備蓄米は、3 月下旬から一部の店舗では 5 キロ 3,500 円前後で売られていたものの、各地に行き渡るのが遅れていた。 農水省の調査では、3 月の入札で放出した備蓄米のうち、4 月 13 日までにスーパーなどの小売店に届いたのは 1.4% の 3,018 トンにとどまっていた。 農水省は、業者間で精米や輸送の計画を固める調整に時間がかかっていたと分析。 4 月後半にこの状態が解消され、流通が本格化したとの見通しを示していた。 それにもかかわらず、今回もまた平均価格は下がらなかった。 備蓄米の店頭での販売量がまだ不十分なのに加え、主要銘柄米が高値でも売れている影響もあるとみられる。 (内藤尚志、asahi = 5-7-25) サンマ漁獲枠、初の 10 万トン割れ 昨年実績は 4 万トン未満 水産庁は 2 日、今年のサンマの漁獲可能量を前年より約 14% 少ない 9 万 5,623 トンにする計画を決めた。 1997 年から毎年設定してきた漁獲枠が 10 万トンを切るのは初めて。 ここ数年は不漁続きで昨年の実績も 4 万トンに満たなかっただけに、影響は限定的とみられる。 不漁が目立つ太平洋側のサバ類については、2025 年漁期(7 月〜翌年 6 月)の漁獲可能量を前年より約 6 割減らして 13 万 9 千トンとする。 23 年の漁期の漁獲量は約 10 万 8 千トンだった。 いずれの計画も、この日の水産政策審議会の分科会で了承を得た。 今月中にも正式に確定して適用する。 (内藤尚志、asahi = 5-4-25) 備蓄米、店頭へは 1.4% 分の 3,018 トン 農水省「ペース遅い」 政府が 3 月に放出を決めた備蓄米約 21 万トンのうち、4 月 13 日までにスーパーなどの小売店に届いたのは 1.4% の 3,018 トンだった。 農林水産省が 30 日にまとめた 2 度目の流通先調査でわかった。 農水省は通常より流通のペースが遅いとみている。 店頭に並ぶ備蓄米が不足し、米価の高騰が収まらない状態が続いている。 農水省は備蓄米を入札によって放出している。 落札した集荷業者はおもに卸売業者に配送し、それから精米されて小売店や飲食店に届く。 1 度目の調査では、集荷業者への引き渡しが始まった時期の 3 月 17 - 30 日の流通先を追跡した。 3 月 10 - 12 日の初回の入札で出した約 14.2 万トンのうち小売店に届いたのは 0.3% の 426 トンと判明して、流通の遅さが浮き彫りになっていた。 2 度目の調査はその後 2 週間が対象。 落札した集荷業者が引き取ったのは約 13.4 万トンだった。 3 月 26 - 28 日にあった 2 回目の入札分の引き渡しが始まったのは 4 月 11 日からで、約 13.4 万トンの大半が初回入札分だという。 集荷業者から卸売業者に出荷されたのは 1 万 7,312 トンで、その先の小売店には 2,579 トンが届いた。 1 度目の調査で把握した 426 トンなどとあわせると、小売店に流通したのは計 3,018 トンになる。 また、飲食店など業務用に流れたのは、1 度目の分も含めると計 1,174 トンだった。 いずれも 1 度目より大幅に増えたが、農水省は通常より流通のペースが遅いと分析。 「初動に伴う調整が続いていた(農産局企画課)」ためで、トラック輸送や精米などをするための業者間の調整に時間がかかったという。 流通が本格化したのは 4 月後半からだとみている。 販売の現場では「これまで備蓄米を本格的に扱った経験がなく、混乱は当然(全国の米穀店でつくる日本米穀商連合会)」との見方も出ている。 3 月の 2 回の入札で 9 割超を落札した集荷業者の JA 全農は「円滑な流通をめざして取り組む」とする。 60 キロあたりの取引価格は、集荷業者から卸売業者で 2 万 2,176 円、その先の卸売業者から小売業者で 3 万 3,755 円だった。 1 度目の調査より数百円ほど安いが、「差は小さく、水準としては変わっていない(農水省農産局企画課)」という。 農水省は今後も 2 週間ごとに同様の調査結果を公表する。 備蓄米は流通先が都市圏などに偏っている疑いも指摘されているが、店舗別の追跡はしておらず、詳細は把握できない見通しだ。 一方で農水省は、備蓄米放出の入札の参加条件を見直し、集荷業者を通さずに卸売業者や小売店に直接引き渡すことには否定的だ。卸売業者だけで約 600 社あり、入札の参加業者数が増えて審査が長期化したり、競争の激化で落札価格が上がったりするおそれがあるためだと説明している。 農水省によると、4 月 14 - 20 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 4,220 円。 前の週より 3 円 (0.1%) 高く、16 週連続で上昇した。 (内藤尚志、山田暢史、asahi = 4-30-25) コメ価格 4,220 円、値上がり止まらず 備蓄米放出でも品薄感続く 14 - 20 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 4,220 円で、前の週より 3 円 (0.1%) 高く、16 週連続で上昇した。 政府が備蓄米の放出を表明してから 2 カ月超たっても、米価は高止まりが続く。 流通の現場では、さらに高くなる可能性も取りざたされている。 農林水産省が 28 日、調査会社のデータをもとに平均価格を算出して公表した。 上昇率は前の週も 0.1% だった。 値上がりの勢いは弱くなってはいるものの、値下がりに転じる兆しは出ていない。 1 年前の同じ時期は 2,088 円で、半額以下だった。 農水省は米価高騰の背景に流通の目詰まりがあると分析し、2 月 7 日に備蓄米の放出を打ち出した。 安価なコメがこれから大量に出回ると印象づければ、流通業者が多めに持っていた在庫を手放し、品薄感がやわらいで価格が下がると期待した。 3 月には 2 回の入札で主食用コメの年間需要量の 3% に相当する備蓄米約 21 万トンを放出。 さらに今月 9 日に 10 万トンを追加で出すと決め、7 月まで毎月放出することも表明したが、米価は上がり続けている。 備蓄米は 3 月下旬からスーパーなどの店頭に並び、5 キロ 3,500 円前後で売られている。 それでも平均価格が下がらないのは、流通に時間がかかり、コメの品薄感が解消されないためだとみられる。 農水省の調査によると、1 回目の入札で出した 14.2 万トンのうち、3 月 30 日までにスーパーなどの小売店に届いたのは 0.3% の 426 トンだけだった。 農水省は調査を続けていて、今月中旬までの結果を 30 日に公表する。 流通のペースが上がっているかが焦点になる。 ただ、備蓄米が流通しても米価の高止まりは続き、さらに上がる可能性もあるとの見方も出ている。 山形県鶴岡市でコメを生産し、集荷・販売なども手がける「庄内こめ工房」の齋藤一志代表取締役は、コメの集荷業者が農家に前払いする概算金で、今年は高めの金額が示されている地域が出ていることに注目し、「集荷業者から卸売業者が買う価格も上がり、スーパーなどでの小売価格は下がらない。 今後、上昇する可能性もある」と指摘する。 (内藤尚志、asahi = 4-28-25) 魚の養殖がどこでも可能に 川崎重工が神戸工場でサーモン水揚げ 魚の養殖をどこでも可能にする技術に川崎重工業が取り組んでいる。 これまでは海流などの条件で場所が限られていたが、本業で磨いた技術をいかした新手法を開発。 消費地に近い場所で養殖を行えば輸送コストが抑えられるなどの利点があり、数年内の実用化を目指している。 新システムは、ビニール製で外から水が入ってこない直径約 5 メートルの円筒型いけすを海に浮かべて使う。 くみ上げた海水を濾過・殺菌し、酸素を加えていけすに掛け流しにしながら魚を育てる。 無菌状態で育てられるので寄生虫の心配がなく、餌に薬を混ぜる必要もなくなるという。 2022 年からマルハニチロと協力して実証実験を始め、今年 1 月からは神戸工場(神戸市中央区)の岸壁のそばでトラウトサーモンを使った本試験に入った。 4 月 24 日には平均 2 キロまで育った約 200 尾を岸壁のクレーンなどを使って水揚げした。 川重が下水プラントなどで培った水処理の技術を活用し、濃度の変化に応じて自動で酸素の供給量を調節。 LNG の運搬船で培った液体の揺れを抑える技術も使い、魚のストレスをなくして生育をよくしている。 船舶などの開発技術を応用 また、海水の流れの分析には航空・船舶などの開発で培った流体の解析技術を応用。 海水の流れを高い精度でシミュレーションし、注水装置などの配置を最適化しているという。 網を使った開放型のいけすを使う従来の海面養殖は、一般的にきれいな水質と適度な海流がある沖合が適地とされ、必要となる海面の面積も大きかった。 一方、川重の手法は同じ水の量なら従来の 4 倍の密度で魚を養殖でき、占有海面が小さい。 船が頻繁に行き交う都市部の港湾内や漁港の近くなど、従来は難しかった場所でも養殖ができるという。 近年では陸上養殖も増えているが、コスト面で比べると濾過装置などが小規模で済み、初期投資の負担が軽い。 岸から近い場所なら働く人も通いやすく、出荷の際の輸送コストも抑えられる。 機器の自動制御で少ない人数でも管理ができ、ある程度の規模が確保できれば従来の海面養殖に比べても収益が増える可能性もある。 新システムの名称は「minatomae (ミナトマエ)」。 「港の近く」と「みんなと前に進む」の二つの意味をこめているという。 今後は魚種を拡大しつつ、システムの外部販売も視野に 27 年度にはビジネス化し、10 年後には年商 100 億円規模、営業利益率 20% を目指しているという。 こうした技術開発に取り組む背景には、2050 年には 100 億人近くに達するとされる世界の人口増加によるたんぱく質の不足に加え、国内では 1 次産業の担い手不足や海洋資源の枯渇が深刻化していく状況がある。 24 日に記者会見した川重の担当者は「赤潮にも強く、安定したシステムで消費地の近くから鮮度よい魚を提供できる。 水産業の持続的発展に貢献できれば。」と語った。 (清井聡、asahi = 4-27-25) コメ 5 キロ 4,217 円、15 週連続値上がり 備蓄米の流通停滞も響く 7 - 13 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 4,217 円で、前の週より 3 円 (0.1%) 上がった。 値上がりは 15 週連続。 農林水産省は 10 日ごろに備蓄米の販売が本格化したとみているが、米価の下落にはつながっていない。 流通の停滞により、備蓄米が各地に行き渡っていないことも響いたとみられる。 農水省が調査会社のデータをもとに平均価格を算出し、21 日に公表した。 上昇率は前の週 (0.2%) より縮んだ。 前年同期の価格(2,078 円)と比べると、2 倍超の高値が続いている。 備蓄米の初回の入札による放出分は、3 月下旬から一部の店舗で 3,500 円前後で売られている。 江藤拓農水相は今月 8 日の記者会見で、スーパーなどの店頭に本格的に並ぶのは「4 月 10 日ぐらい」との見通しを示していた。 だが、農水省が 14 日に開いた卸売りや小売業者との意見交換会では、備蓄米が一部の地域や小規模店に届いていないとの不満が出た。 また、農水省が 18 日に初めてまとめた備蓄米の流通先調査では、3 月 30 日までにスーパーなどの小売店に届いたのは、初回放出分の 0.3% の 426 トンだったことも判明した。 農水省は流通の改善のために、卸売業者間での転売を原則禁止するルールを緩和した。 ただ、運送業界の人手不足や流通ルートの多様化もあって、思惑どおりの効果が出るかは不透明だ。 西日本の卸売業者は、備蓄米を小売店に配送する時期について「早くて今月末で、翌月になるかもしれない」とみる。 仕入れ先の業者がトラックを 1 日数台しか手配できず、入荷までに時間がかかりそうだからだ。 日本米穀商連合会に加盟する米穀店の多くにも、備蓄米は届いていないという。 連合会の相川英一専務理事は「コメの流通は末端にいくほど複雑になる。 集荷業者に頼らずに農家から直接仕入れたり、店舗同士で融通したりするケースが増えた。 大手の集荷業者を使う農水省の手法では、隅々まで行き渡らせるのは難しいのではないか」と指摘する。 一方、コメの業者間取引価格には、下落の兆しも出ている。 農水省によると、2024 年産の玄米 60 キロあたりの今年 3 月の価格は税込み 2 万 5,876 円で、前月より 2% 安かった。 ただ、この価格は取引成立時のもので、いつ小売店に届き、店頭に低価格で並ぶか見通しづらい状況だ。 (内藤尚志、asahi = 4-21-25) 主食用のコメ、輸入枠を拡大すれば不足解消? 財務省が提言 高値が続くコメの安定供給に向け、無関税で輸入できる主食用米の枠を増やすべきだ - -。 財務省は 15 日に開いた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で、こんな提言を出した。 日本は年 80 万トン近くのコメを無関税で輸入しているが、主食用は 10 万トンまで。 その上限を増やすことで、コメ不足に備えるねらいだ。 日本はガット・ウルグアイ・ラウンド交渉に基づき、1995 年から毎年決まった量のコメを輸入する「ミニマム・アクセス (MA)」の制度を受け入れた。 いまは年約 77 万トンの無関税枠があり、その半分近くが米国産だ。 ただ、国産米を守るため主食用は 10 万トンを上限としており、大半は加工用・飼料用として利用されている。 「令和の米騒動」が起きた 2024 年度は、主食用の輸入量も上限に達した。 今年に入って政府は備蓄米を放出したものの、高値が続く。 財務省は 10 万トンの枠を拡大することで、供給の安定化につなげられるとみる。 また、加工用や飼料用として販売した分は、輸入時より価格が下がるため、23 年度には 684 億円の財政負担が生じている。 高値で売れる主食用の割合が増えることで、財政負担も軽くできるとしている。 財政審の増田寛也・分科会長代理は 15 日の記者会見で、コメの生産量が天候などで変動することから、「国内需給の調整弁としていくつか手法を持っておくというのは有用だと思う」と述べた。 (真海喬生、asahi = 4-15-25) コメ輸出 8 倍増を目標に「米国によって方向変えず」農業計画閣議決定 政府は 11 日、今後 5 年間の農業政策の方針を示す「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。 コメの全世界への輸出量を 2030 年に現状の 8 倍近い 35 万トンに増やす目標を予定どおり盛りこんだ。 江藤拓農林水産相はこの日の閣議後の記者会見で「われわれは世界のマーケットを相手にしているわけで、(関税引き上げを進めている)米国一国によって方向を変えることはない」と説明した。 農水省は、国内でコメの不足感が強まったときに輸出分の一部を国内に回す方針で、米価高騰の防止策の一つと位置づけている。 (内藤尚志、asahi = 4-11-25) 備蓄米、夏まで毎月放出へ 価格高止まり受け、江藤農水相が正式表明 江藤拓農林水産相は 9 日、高騰するコメの価格を抑えるため、備蓄米を追加で放出すると正式に表明した。 新米が本格的に出回る前の時期である夏まで、毎月備蓄米を放出していく。 まず今月 21 日の週に、3 回目となる 10 万トンの入札を行う。 江藤氏が 9 日午前、首相官邸で石破茂首相と面会後、指示を受けたことを報道陣に明らかにした。 江藤氏は「安定的な供給を通じて、上昇したコメの価格を落ち着かせるため、この夏の端境期まで、毎月、備蓄米の売り渡しを実施する」と説明。 「可能な限り早く消費者の皆様方の手に渡るよう、対応策を検討する」と述べた。 米価の高騰を受け、政府はすでに備蓄米 21 万トンを放出し、2 度の入札ですべて落札された。 だが農水省によると、3 月下旬に全国のスーパーで売られたコメの平均価格は高止まりが続いていた。 江藤氏は「端境期を越えるまで定期的に放出することで、流通の世界でコメが足りない状況を解消する」と述べた。 必要であれば、さらなる対策を講じる考えも示した。 また江藤氏は、流通関係者に、米価の高止まり解消に向けた取り組みを要請すると説明。 来週早々に、卸売業者や小売業者と意見交換を行う考えを示した。 (asahi = 4-9-24) 備蓄米の 2 回目入札、全 7 万トン落札 平均価格は 1 回目を下回る 農林水産省は 1 日、備蓄米放出の 2 回目の入札について、対象の約 7 万トンがすべて落札されたと発表した。 60 キロあたりの平均落札価格は 2 万 722 円で、1 回目(2 万 1,217 円)をやや下回った。 2024 年産の新しい米の割合が 1 回目より小さかったことが影響したとみられる。 これで放出が決まった備蓄米 21 万トンは、すべて落札された。 2 回目(24 年産 4 万トン、23 年産 3 万トン)の入札は 3 月 26 - 28 日にあり、4 事業者が参加した。 1 回目の入札(24 年産 10 万トン、23 年産 5 万トン)では 14.2 万トンが落札されており、2 回分あわせた平均落札価格は税込みで 2 万 2,737 円で、直近の 1 月の業者間取引価格(2 万 4,383 円)を下回った。 2 回目の落札分は今月半ばから事業者に引き渡され、約 1 - 2 週間後にスーパーなどの店頭に並ぶ見込み。 江藤拓農林水産相はこの日の記者会見で「不足分については十分に埋まったのではないかと判断できる数量」としつつも、米価の高騰が収まらなければ、備蓄米を追加放出する考えも改めて示した。 総務省の小売物価統計(東京都区部)によると、3 月中旬のコシヒカリ 5 キログラムの販売価格は前月より 316 円 (7%) 高い 4,679 円。 昨年 5 月から 11 カ月連続で上昇している。 3 月下旬から 1 回目の入札による備蓄米が店頭に並び始めており、価格が下落に向かうかが今後の焦点になる。 (内藤尚志、asahi = 4-1-25) ついにスーパーに並んだ備蓄米 表示なし、銘柄米より 1 千円ほど安く 米価の高騰を受け、初めて放出された政府備蓄米の店頭販売が始まった。 29 日朝、横浜市の大手スーパーには、5 キロ入りのブレンド米が 10 袋ほど積まれた。 袋の表には銘柄名が書かれていない。 スーパーによると、備蓄米が含まれた商品だという。 「コシヒカリ」や「あきたこまち」など銘柄米は税込みで 4 千円を超える中、価格は同 3,542 円と、1 千円ほど安い。 銘柄米の袋には産地が具体的に記載されているが、備蓄米の産地や品種は「複数原料米 国内産」となっている。 法令上の問題は無く、精米時期は放出後の 3 月下旬、販売者は東京の大手卸会社だった。 備蓄米表示のルールはないが、JA 全農は「混乱を避けるため」として、非表示で店頭販売することを求めている。 九州、中部でも販売へ スーパーによると、需要に対し十分な量の米を確保できないことなどを理由に備蓄米を仕入れ、店舗や数量なども限定して販売を始めた。 福岡県などで総合スーパーを運営するトライアルも、米不足を理由に備蓄米を取り扱うという。 3 月末から 4 月中旬にかけて順次、鹿児島以外の九州、中部の店舗で備蓄米を使ったブレンド米の販売を予定している。 今回、農林水産省は 2023 年産、24 年産で複数品種の備蓄米を放出。 それらを混ぜたブレンド米として販売されるケースが多いと見られている。 備蓄米をめぐっては、スーパー各社は取材に対し、「決定していることはない」、「お答えできることはない」などと、取り扱いの有無を明らかにしないケースが多い。 「客の集中、避けたいのでは」 全農グループでスーパーなどを運営するJA全農Aコープは全農を通じ、「特定のお取引先に取材や問い合わせが集中してしまうことを避けるため、回答を差し控えたい」とした。 首都圏のあるスーパーは「取り扱いたいが、実際に仕入れられるかが未定。 だから、なにも説明が出来ない。」と説明する。 ある米卸会社は「他の米よりも安い備蓄米だけが売れたり、備蓄米がある店にだけ客が集中したりして棚から商品が消えるのを避けたいのでは」と話す。 (山田暢史、asahi = 3-29-25) 24 年産のコメ、適正価格は「2,265 円」 朝日新聞が試算 3 月上旬のコメの店頭価格は、1 年前のほぼ倍になった。 米価の低迷を抜け出した農家は胸をなで下ろす一方で、消費者からは悲鳴があがる。 適正な価格はいくらなのか。 その参考として、農家から店頭までにかかるコストを、農林水産省の調査をもとに朝日新聞が試算した。 農家などが生産したコメは一般的に、農協などが集荷し、さらに卸売業者を経て、スーパーなどで売られる。 農水省は食品にかかるコストの価格転嫁を後押しするため、食品等流通法などの改正法案を 7 日に閣議決定した。 これに伴い、農水省はコメの価格交渉の参考となるよう、2022 年産米について、生産から小売店まで各段階の事業者へアンケートや聞き取りを行い、それぞれのコスト(玄米 1 キロあたり)を試算し、2 月上旬に示した。 精米 5 キロあたりに換算すると、生産から消費者に渡るまでのコストは全国平均 2,007 円。 内訳は生産(労働費、肥料費、農機具費など) 1,292 円、集荷(保管料、運賃など) 260 円、卸売り(包装容器代、運送費など) 176 円、小売り(人件費、水道光熱費など) 279 円だった。 農水省は、これらのコストについて、「22 年産の数値なので、足元で流通している 24 年産には直接適用できない(担当者)」としている。 そこで朝日新聞は、22 - 24 年産にかけてのコスト上昇分を農業生産資材価格指数と企業向けサービス価格指数、毎月勤労統計調査をもとに推計。 これを農水省の調査に上乗せして、24 年産米のコストを独自試算した。 その結果、店頭で販売される 24 年産米のコストは 2,118 円で、22 年産より 5.5% 上がった。 内訳は生産 1,361 円、集荷 275 円、卸売り 187 円、小売り 295 円だった。 利益はどのくらい? 農水省の調査では、22 年産米の店頭価格は 1,730 円。 各段階のコストの合計(2,007 円)を 277 円下回っていた。 コスト全体の 6 割を占める生産で 171 円の赤字が生じていた。 24 年産ではどうか。 農水省が 3 月 3 - 9 日における全国約 1 千のスーパーを調べたところ、販売価格は 4,077 円だった。 朝日新聞が試算したコスト(2,118 円)のほぼ 1.9 倍だった。 23 年度の法人企業統計調査によると、経常利益が売上高に占める比率の平均(金融保険業除く)は 6.5%。 この比率をもとに計算した利益を 24 年産のコストに加えると、2,265 円になる。 直近の販売価格との差は大きい。 試算の元になる農水省の調査対象となった事業者は限られており、小売り用か業務用かといった用途の違いも考慮されていない。 そのため、コストは必ずしも朝日新聞の試算通りに上昇しているわけではない。 ただ、足元の米価をめぐっては生産者も違和感を抱いている。 先月末に開かれた農水省と業界関係者との意見交換会で、「生産者から見ても異常だ。 今回の相場の恩恵に農家はあずかっておらず、ここまで高騰して消費者から強い不信感を持たれているのは、我々にマイナスしかない。」との声もあがっていた。 西川邦夫・茨城大准教授(農業経済学)は「手法と結果ともに、違和感はない。 試算のベースとなる農水省調査のコストには、農家自らが保有する土地に支払うべき地代が含まれていない。 農家の賃金も大企業を含めた全体の水準よりも低い。 ただ、こうした点を調整しても、上積みされるのは 5 キログラムあたりで 180 円程度にとどまる。 適正な米価は 3 千円にも届かないとみられ、ましていまの 4 千円は高すぎる。」と指摘する。 コメのコスト上昇についての試算方法 農水省が示す 2022 年産の生産、集荷、卸売り、小売りの各コストに、22 - 24 年の 2 年間の政府による各種統計の伸び率をかけて、コスト上昇分を算出した。 具体的には、人件費は毎月勤労統計調査の「食料品製造業」、「飲食料品卸売業」、「同小売業」の現金給与総額で補正。 人件費を除くコストは、生産費については農業生産資材価格指数(総合)、集荷、卸売り、小売りについては、企業向けサービス価格指数で補正した。 (大日向寛文、asahi = 3-17-25) 備蓄米、14.2 万トン落札 平均 2 万 1,217 円で業者間価格下回る 農林水産省は 14 日、流通の目詰まりを理由とする備蓄米放出の入札で、予定していた 15 万トンのうちの 14.2 万トンが落札されたと発表した。 平均落札額は 2 万 1,217 円だった。 落札した事業者への引き渡しは来週以降に本格化する見通しで、高騰した米価が反転するかが今後の焦点になる。 流通するコメが不足するなか、今回の入札でおおむね予定していた数量を放出できたことになり、江藤拓農林水産相は「ほっとした」と話した。 平均価格は、直近 1 月の業者間取引価格(60 キログラムあたり 2 万 5,927 円)をやや下回った。 備蓄米は凶作に備えたもので、流通の目詰まりを理由に放出されるのは初めて。 農水省は備蓄米を 21 万トン放出する方針で、月内に今回の落札分を除いた 7 万トンの入札を追加で行う。 入札は、対象を JA 全農など大手集荷業者に限定して行われた。 落札した業者は契約後に倉庫から備蓄米を搬出する。 早ければ月末ごろにスーパーなどの店頭に並ぶ見通しだ。 (大日向寛文、asahi = 3-14-25) |