宮城ササニシキ 2 万 9,300 円 25 年産米の概算金、前年の 1.7 倍 JA 全農みやぎは、2025 年産の宮城県内主力銘柄について、契約先の生産者に前払いする「概算金」の基準額を決めた。 いずれも前年の 1.7 倍程度で、大幅な引き上げとなった。 担い手が先細る農家を後押しする半面、新米の小売価格が高めに推移する可能性がある。 生産者への概算金、「2 万円割ればやめる人増える」 JA 全農みやぎによると、1 俵 60 キロあたりで、▽ 「ひとめぼれ」が前年比 1 万 1,500 円増の 2 万 8 千円、▽ 「ササニシキ」が同 1 万 2,500 円増の 2 万 9,300円、▽ 「だて正夢」が同 1 万 1,600 円増の 2 万 9,300 円。 農家の減少や高齢化が進む中、肥料や燃料、機械など生産コストが上昇していることを踏まえた。 20 日にあった会議で決定。 県内の各 JA は概算金を元に、手数料などを差し引いた上で、実際に生産者に前払いする「生産者概算金」を決める。 24 年産は集荷競争の激化が影響し、概算金が 2 度にわたって引き上げられており、25 年産も今後変動する可能性がある。 (大山稜、asahi = 8-21-25) 随意契約の備蓄米 10 万トン、販売延長を正式発表 9 月以降も店頭に 政府が随意契約で放出した備蓄米について、小泉進次郎農林水産相は 20 日、8 月末としていた販売期限を延長すると正式に発表した。 契約済みの 28 万トンのうち、業者に引き渡しを終えていない 10 万トンなどは、9 月以降も販売を認める。 農水省は高騰する米価を抑えるため、5 月下旬からスーパーなどの小売業者らと随意契約を結び、備蓄米を出し始めた。 新米が本格的に出回る前の 8 月末までに売り切ることが契約の条件で、今月 20 日までに契約先に引き渡すとしていた。 主食用の放出枠は 50 万トン。 農水省によると、うち 28 万トンの契約先が確定した。 ただ、保管倉庫からの搬出作業や品質のチェック、トラックの手配などに時間がかかり、20 日までに引き渡せたのは 18 万トンにとどまった。 残りの 10 万トンについては、業者が引き渡しを希望する場合は、9 月以降も販売を認める。 新たな期限は設けないが、「引き渡し後 1 カ月以内」に売り切るよう要請する。 今月 20 日までに届いたコメについても、月内か、引き渡しから 1 カ月以内の販売を求めるという。 小泉氏は「契約した数量を約束通り流通させることが農水省としての責任」と説明した。 期限内に売ることが難しいと判断した業者などからの契約キャンセルは 4 万トンに達した。 延長は決めたが、これらの業者へ改めて引き渡すことは考えていないという。 農水省は引き渡しの遅れについて、見通しの甘さを認めている。 備蓄米の流通を含めた一連の対応について、課題などを洗い出す有識者らの検討会を設ける方針だ。 備蓄米の効果、尻すぼみに 農水省は 20 日、主食用枠での備蓄米の随意契約の受け付けをこの日で終えたことも発表した。 新手の米価抑制策として始めたが、効果は尻すぼみになっていた。 備蓄米はもともと、農協などの集荷業者を対象に入札をして引き渡し先を決め、卸売業者を介してスーパーなどの小売店に届けていた。 この仕組みでは流通に時間がかかり、入札や卸売りを挟むことで小売価格が高くなるといった批判が出た。 このため任意の小売業者などと随意契約を結び、直接放出する手法に切り替えた経緯がある。 当初は、全国に店舗網を持つような大手に契約先を絞り、5 キロで税込み 2 千円程度の価格で店頭にすばやく並べた。 産地や品種が明示された銘柄米が 4 千円超で売られ、入札で出した備置米を使うブレンド米も 3,500 円前後のなか、効果はてきめん。 平均価格を押し下げ、6 月には石破茂首相が目標に掲げた「3 千円台」を実現した。 だが、契約先が中小業者にも広がって作業量が増え、流通のペースが上がらなくなった。 7 月には平均価格の下げ止まり感も強まった。 銘柄米に限った平均価格は、6 月下旬から 4,200 円台で高止まりしている。 農水省は長く、米価高騰の背景に、卸売業者などが通常より在庫を多めに持つ「流通の目詰まり」があると説明してきた。 格安備蓄米に人気が集まれば、業者が銘柄米も在庫の売れ残りを防ぐために値下げするようになると期待した。 だが、値下げは進まず、8 月になって見解を改め、コメの生産量がそもそも不足していたとする検証結果を公表した。 店頭に並び始めた今年の早場米も高値が目立ち、供給不足を背景にした米価高騰が長引く可能性もある。 それでも農水省が随意契約による放出継続を見送ったのは、コメの値崩れを心配する農家と、自民党「農林族」議員への配慮があるとみられる。 農家側には、今秋にとれる新米が豊作でコメの余剰感が強まった場合に、備蓄米の放出量の増加が重なって米価が急落することへの懸念も強い。 小泉氏は 20 日、記者団に「今後、新米が入ってきたなかで、価格の動向など見なければいけないことがある。 対応のなかで、可能性の一つとしては、備蓄米の扱いをどうするかというのはもちろんある」と述べ、再放出に含みを持たせた。 (山田暢史、内藤尚志、asahi = 8-21-25) 今年の新潟産コシ、過去最高の 3 万円超 JA 概算金、前年 1.8 倍も JA 全農にいがた(新潟市)は 19 日、今年産米について農家に支払う前払い金(概算金)の額を決めたと発表した。 ブランド米として知られる魚沼コシヒカリ(1 等米)は 60 キロ 3 万 2,500 円と昨年産を 67% 上回った。 新潟県内のほかの産地のコシヒカリも 3 万円を超え、いずれも過去最高だった。 新潟県は作付面積と収穫量(いずれも 2024 年時点)で全国トップ。 魚沼産のほか、岩船産と佐渡産は 3 万 0,300 円(昨年度比 75% 増)、一般は 3 万円(同 76% 増)。 これまでの最高額は 1996 年魚沼産の 2 万 8 千円だった。 背景に生産コスト上昇など 高値の背景には、農薬や物流費が高止まりして生産コストが上昇していることや、高値をつけている他県産米の動向などがあるという。 JA 全農にいがたの担当者は、生産者が十分な利益を確保できなければ規模拡大ができないとして「生産者が減る中で農業を魅力的な産業にするための経営強化の観点も踏まえた」と話す。 JA 全農にいがたはこれまで概算金を発表してこなかったが、米価が高騰する中、消費者に背景も含めて正確に知ってもらう必要があると考え、公表に踏み切った。 (西村奈緒美、asahi = 8-19-25) 有機栽培の米作り、収量のポイント「地形」にあり 三重大などが解明 化学肥料を極力使わない有機栽培で米作をする場合、その収量は水田がある場所の地形に左右されることが、三重大学などの国内外の研究グループの調査で分かった。 成果は 7 月 10 日付の国際学術雑誌「Scientific Reports」に掲載された。 調査したのは、三重大学大学院生物資源学研究科の関谷信人教授(作物学)をリーダーに、タンザニアのダルエスサラーム大学などが加わった研究グループ。 京都府与謝野町の水田をフィールドに、2018 年度に調査に着手した。 きっかけは、同町の農家が「有機肥料を与えても収量が上がらない。 どうすればよいのか。」と関谷教授に助言を求めたことだった。 関谷教授によると、有機農法は、枯れた植物や生物の死骸などをベースにした有機肥料を、土中にすむ微生物が分解。 そこで生じた窒素を作物が吸い上げることで成長につなげる方法だ。 平野部と傾斜地で明らかな差 関谷教授は同町の水田が、比較的平らな地形をした平野部と、川沿いの傾斜地にあったことに注目。 土中にすむ微生物の種類を調べたところ、平野部には、水稲が吸い込みやすいような窒素を供給する微生物が多くすんでいたという。 一方で、傾斜地には、有機物を分解して生成した窒素の多くを大気中に放出してしまう微生物の割合が多かったという。 結果的に平野部のほうが水稲に窒素が効果的に供給されていた。 関谷教授は「与謝野町という狭い地域であっても、土中にすむ有機物は場所によって異なっている。 今回の調査結果は、水稲の立地と収量の関係を考えるヒントになるだろう。」と話す。 収量が多い水田にするために重要な要素は、「水持ちがよく、それでいて水はけがよい」と相反する条件が物を言うという。 水持ちを良くするためには代かきが欠かせず、水はけを良くするためには地下排水路の整備が重要だという。 関谷教授は「窒素を大気中に排出してしまう微生物は、水がたまる場所にすんでいることが多い。 農業土木技術を有効に活用することも、有機栽培で米の収量を上げるためには欠かせない」と話す。 近年、化学肥料の原料となる天然ガスなどの価格が高騰しており、有機栽培は改めて脚光を浴びている。 研究グループでは、今回の調査結果を国内外で活用できるよう、学会などで提言していくつもりだ。 (安田琢典、asahi = 8-19-25) サンマの棒受け網漁がスタート 今年も早めに公海へ 北海道・花咲港 秋の味覚・サンマの「棒受け網漁」が 10 日、始まった。 北海道根室市の花咲港では、集魚灯を輝かせた漁船が、午前 0 時ごろに相次いで出港。 岸壁に集まった家族らが手を振って見送る中、深い霧に包まれた沖合へと向かった。 サンマ棒受け網漁船には、大型船(100 トン以上)、中型船(20 トン以上 100 トン未満)、小型船(10 トン以上 20 トン未満)の 3 ランクがある。 以前は中型船は 15 日、大型船は 20 日にそれぞれ漁が解禁されていた。 しかし、近年の極端な不漁を受けて、全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)は昨年、公海への出漁日を早めた。 今年も昨年と同様、船の大きさにかかわらず、公海への出漁が 10 日に解禁された。 大型船「第 81 北星丸(199トン)」の船主で、根室市在住の飯作鶴幸さん (82) は「最低でも去年並みの漁になればと期待している。 今年もサンマの漁場は遠い海域にあり、操業中に事故がないように祈っています。」と話した。 今季のサンマ棒受け網漁は、大型船 46 隻、中型船 20 隻、小型船 29 隻の計 95 隻が出漁を予定している。 (山本智之、asahi = 8-10-25) コメ失政を認めた石破首相 「減反」から増産へ、歴史的転換に高い壁 歴史的なコメ価格の高騰を受け、石破茂首相が政策の失敗を認めた。 実質的に続いてきた「減反」に終止符を打つべく、コメの増産にかじを切る意向も改めて示したが、課題は多い。 政府は 1970 年代からコメの生産量を調整する減反を本格化させた。 2018 年に廃止したが、その後も補助金を出すなどして転作を促し、事実上の減反政策を維持してきたとされる。 首相はコメの増産がもともと持論だ。 半世紀にわたるコメ政策の転換ができれば、歴史的な成果だと誇ることもできる。 首相は 7 月 28 日、退陣論が渦巻く自民党の両院議員懇談会で「コメの増産や農家の所得がどうなっていくのか、私どもは責任を持たねばならない」と述べ、続投の理由の一つに挙げていた。 首相は今月 5 日にあったコメの関係閣僚会議で、増産に向けた具体策にも触れた。 農業経営の大規模化の推進に加え、そうした生産性の向上や、環境への配慮に取り組む農家への支援などだ。 コメ余りによる値崩れで農家の収入が下がった場合の対応も念頭にありそうだ。 ただ、幅広い農家を一律に支えることは否定的とみられる。 「農林族」との調整も 国会で少数与党の石破政権は、政策を実現させるには、野党の協力が欠かせない。 先の参院選では、主要な野党もコメの増産につながる政策を訴えていたが、手法には隔たりがある。 小規模の兼業農家にも生産を続けてもらうことを視野に、支援の対象を広げようとするところもある。 自民党内でも、コメの生産量の抑制に理解を示してきた「農林族」が一定の影響力を持ちつづけている。 各方面と調整を重ねたうえで、増産に向けた具体策を固められるのか。 実現への道筋は、まだ描き切れてない。 小泉農水相、分析の甘さ認める この日の関係閣僚会議では、コメの値段が跳ね上がった要因も検証した。 「コメの需要は減る。 こういった認識を固定化したまま、需給の見通しを続けてしまった。」 小泉進次郎農林水産相は会議後、記者団にそう述べ、これまでの政策の誤りを認めた。 小泉氏は、約 2 カ月前に首相からコメ高騰の要因と対応策を検証するよう指示を受けた。 その結果を会議で報告。 農水省の情報収集力や分析の甘さを認め、改善にとりくむ意向を表明していた。 ただ、この検証は民間企業でよく見られる第三者委員会の調査のように、外部の有識者が担ったものではない。 当事者の農水省自身で進めただけに、備蓄米の放出の判断が遅れたこれまでの農水相らの責任には踏みこんでいない。 コメの取り扱いを届け出ている全業者の調査にも踏み切り、6 月末時点で「流通の目詰まり」はなかったとした。 だが、流通の実態を解明できたとは言いがたい。 初めて調べた約 7 万の中小業者のうち、事業の状況を把握できたのは 2 割弱にとどまった。 首相もこの日の会議で「さらなる検証が必要な部分は残る」と認めた。 それでも小泉氏の報告を受け入れたのは、首相が政権維持を図るにあたって、コメ政策はうってつけのテーマだからでもある。 備蓄米の随意契約による放出で、目標に掲げた水準まで米価を押し下げた実績は、世論にアピールできる。 一方、小泉氏はこの日の閣議後会見で、備蓄米のうち、これまでに計約 2 万 9 千トンのキャンセルがあったと明らかにした。 契約申し込み済みの約 30 万トンの 1 割ほどに相当する。 備蓄米が届くのに時間がかかり、期限の 8 月末までに販売しきれないと判断した業者がキャンセルしたとみられる。 (内藤尚志、鈴木峻、山田暢史、asahi = 8-5-25)
「コメ政策転換」へ地ならしも 流通状況調査で供給不足の疑い強まる コメ価格の高騰の理由を解明しようと、農林水産省が新たに始めた調査の結果がまとまった。 これまで主因とみていた「流通の目詰まり」は 6 月末時点では確認されず、コメの供給量が不足していた疑いが深まった。 石破茂首相が掲げる「コメ政策の転換」に向けて地ならしを進めるねらいもありそうだ。 コメの流通、目詰まり確認されず 量が足りず値上がり? 農水省調査 調査のきっかけは、首相が 6 月上旬に小泉進次郎農水相に対し、米価高騰の要因と対応を検証するよう指示したことだった。 これを受けて小泉氏は、コメの取り扱いを届け出ている全業者の出荷・販売・在庫量の調査に着手。 小売りや食品製造、外食といった業界団体などへの聞き取り調査も進めた。 農水省はこれらの結果を 30 日の有識者会議で報告した。 農水省は調査の結果をもとに、6 月末時点のコメの流通の状況を示した。 浮かびあがったのは流通ルートの多様化と、それでも幅広く在庫が滞留していない現状だった。 2024 年産のコメの生産量は 679 万トンで、前年より 18 万トン多かった。 農協など旧来型の集荷業者を通さず、新手の業者に流れたり、卸売業者や外食・小売業者、消費者などに農家から直接出荷されたりしていたのは計 295 万トンで、前年より 49 万トン増えていた。 農水省はこれまで、流通ルートが複雑化し、各方面でコメの在庫が少しずつ積み増されたことで市場での不足感が強まり、価格の高騰につながった可能性があると指摘。 コメの生産量は前年より増えているため、供給量は不足していないはずだとみていた。 だが、初めて調査の対象に加えた中小規模業者の在庫量は、合計で前年より 0.1 万トンしか増えていなかった。 農水省の見立てが揺らぐ結果となった。 精米した業者への調査では、2023 - 24 年産のコメは 20 - 22 年産に比べて品質の低下がみられ、白米として出せる割合が下がっていたことも判明。 農水省が見込んでいた白米の流通量が、実際よりも過大だった疑いが浮上した。 こうした結果を踏まえ、農水省は今後 1 年間のコメの需要量の見通しを示すのを、正式に先送りした。 直近 1 年間の需要量は「参考値」として 711 万トンと公表したが、5 月時点の見通しより 37 万トン上ぶれた。 ずれが大きいため、算出の手法を見直して出し直す方針だ。 関東地方の卸売業者は「需要量の見通しは今年のコメの相場を判断する指標。 前代未聞で不安感しかない。」と憤る。 小泉進次郎農水相は 30 日、記者団に「一番大事なのは、(需要量の見通しの)前提として米価高騰の要因をしっかりと報告できる環境を実現すること。 最終的な詰めをやっている」と述べた。 首相はコメの需要が減るとみて生産量を抑える現在の政策を疑問視し、増産にかじを切る意向を表明している。 農水省がまとめる検証結果をもとに、政策転換にはずみをつける考えだとみられる。 備蓄米、適正水準の 1 割未満に 農水省は 30 日、酒や米菓、みそといった加工品の原材料用として、新たに 20 年産の政府備蓄米 7.5 万トンを放出する方針を明らかにした。 主食用の米価が高騰し、加工用の作付け意欲が減少。 加工用米も価格高騰などが続くと想定したためという。 8 月 1 日から随意契約の受け付けを始める。 3 月末時点では、備蓄米は全国で約 96 万トンあった。 米価の高騰を背景に 3 月から放出を開始。 大手集荷業者を対象にした入札と、小売業者などとの随意契約で計 81 万トンを放出する方針だ。 今回の加工用も含めて全ての備蓄米が計画どおりに売り渡されると、残る備蓄米は 7.5 万トンほど。 備蓄の適正水準とされる 100 万トンの 1 割未満になる。 農水省は 25 年産の備蓄米の買い入れなどは中止している。 需給の変化で条件が整ったら、買い入れなどを計画的に行うとしている。 これからの運営は今後の検証を踏まえて検討するという。 この日の農水省での会議で、日本生協連専務理事の二村睦子委員は「政策判断をした時の根拠などを改めて整理して公開するべきだ」と指摘。 「今後、(備蓄米を)どう積み増していくのかという計画を早急に明らかにしていただきたい」と述べた。 (内藤尚志、山田暢史、asahi = 7-30-15) スーパーのコメ価格に下げ止まり感、前週比 4 円安 銘柄米は値上がり 14 - 20 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 3,585 円で、前の週より 4 円 (0.1%) 安かった。 9 週連続で値下がりしたが、下げ幅はこれまでより小さく、下げ止まり感も出ている。 農林水産省が調査会社のデータをもとに算出し、28 日に公表した。 下げ幅は 6 月 23 - 29 日まで 3 週連続で 3 ケタ(100 円以上)だったが、その後は 70 円、13 円と縮小。 今回は 1 ケタ(10 円未満)にとどまった。 産地や品種が単一の「銘柄米」に限った平均価格は 4,264 円で、前の週より 3 円 (0.1%) 高く、4 週ぶりに上昇に転じた。 全体の平均価格は、1 月 6 - 12 日 (3,583 円) と同水準。 前年の同じ時期 (2,391 円) と比べると、約 1.5 倍になっている。 値下がりの勢いが弱まったのは、全体の販売量のうち、割安な政府備蓄米を含む「ブレンド米など」が占める割合が頭打ちになっているからだ。 3 月まで 2 割を切る水準だったが、備蓄米が出回るようになって割合が拡大するとともに、平均価格も押し下げられてきた。 だが、その割合が 6 月下旬以降は 6 割弱でほぼ横ばいとなっている。 一方、銘柄米は、5 月 12 - 18 日の 4,469 円をピークにゆるやかな値下がり傾向に転じたものの、今回まで 4,200 円台が 4 週続いた。 高止まりの兆しも出ている。 (内藤尚志、asahi = 7-28-25) 「どこよりも鮮度のいい魚」届けます クリアな味のトラフグは陸育ち どこよりも鮮度の良い魚を届けたい! 「圧倒的鮮度」を売りに、大阪で魚の養殖に取り組む会社があります。 それも、海ではなく、陸上のいけすで。 魚を管理しやすく、大消費地の近くで養殖することで、運送費を抑えられる利点があります。 カンサイのカイシャ ここがオモロイ! 大阪府の最南端に位置し、大阪湾に面した岬町。 海沿いの陸上に直径 10 メートル、高さ 2 メートルのいけすが並ぶ。 泳いでいるのは、高級魚のトラフグ。 ここは「陸水(堺市)」の養殖場だ。 病気を防ぐため水を殺菌し、エサにはユズ粉末を混ぜた配合飼料をつかっている。 「うちのフグは、雑味がなくクリアな味。 雑炊にしてもあくがでない。」と、社長の奈須悠記さん (32) が胸を張る。 奈須さんは高校生の頃、「近大マグロ」のことを知って養殖に興味を持ち、近畿大学に進学。 マグロの養殖を学んだ。 卒業後は大手水産会社に就職し、マグロ養殖などに携わった。 描いていた夢を実現したが、一方で、天候や環境の変化などに左右される海面養殖の将来性への不安も感じたという。 持続可能な養殖のかたちとは何か。 コロナ禍のころで、いろいろ考える時期でもあった。 その結果、魚の管理がしやすく、比較的小規模からでも始められる陸上養殖に着目。 大学時代にマグロの稚魚の陸上養殖を経験し、基礎知識があったことも後押しとなり、2021 年に起業した。 陸上養殖は天候に左右されず、海が荒れてもエサやりができ、魚の様子も間近に見やすい。 だが、ポンプなど設備が必要で、生産コストは押し上げられる。 そこで、消費地に近い場所で養殖すれば運送費を抑えられると、大阪市内から車で 1 時間ほどで、きれいな水が確保できる岬町に養殖場を設けた。 養殖する魚は、単価が高くないと利益が出ない。 選んだのが、大阪が最も消費量が多いとされるトラフグだ。 養殖が盛んな九州などからトラックで長時間かけて運んでくるよりも、鮮度が良い。 朝に締めた魚を昼には届けられる。 「どこよりも鮮度のいい魚を持ってきますよ」と、魚をメニューに載せている居酒屋などへの飛び込み営業を重ねて、販路を開拓。 大阪で養殖という珍しさもあって、興味を持ってもらいやすかったという。 フグに加えて始めたのが、サーモンだ。 フグは寒いと成長しにくいが、サーモンは寒くても育つという。 鍋物商材のフグを冬に売り切る。そして、冬から春に向けて、サーモンを育てて出荷する。 その後、また、フグを育てる。 このサイクルによって、設備の有効利用にもつながる。 同社のサーモンは、輸入品に比べて歯ごたえがあり、さっぱりして上品な味が特徴だという。 運送費の高騰などもあり、消費地の近くで生産することが、今後、より強みになると考えている。 ほかには、ヒラメなども養殖している。 「お客さんがほしいと思う魚を育てていきたい」と奈須さん。 海水温の上昇などで、魚種によっては海面での養殖が難しくなるなかで、この養殖に取り組む人を増やし、生産力を上げていきたい、という。 会社メモ : 陸水 堺市内に自社加工場があり、育てた魚を加工し、飲食店やスーパーなどへ販売している。 電話 072・225・1017。 ホームページ https://www.rikusui.com/。 大阪市内で、自社養殖の魚や独自ルートで仕入れた魚介類などを提供する海鮮居酒屋「Rikusui」も運営している。 ひとこと : いけすで魚の管理を担当する古川健太さん (47) エサの食べ方はその日によってがらっと変わります。 いつもと違うと、何が原因かを考え、対応します。 全ては魚ファーストの仕事です。 よくえさを食べてくれるとうれしいし、成長を見るのが楽しいですね。 (西江拓矢、asahi = 7-21-25) コメ 5 キロ 3,602 円、7 週連続↓ 備蓄米と銘柄米の価格差広がる 6 月 30 日 - 7 月 6 日に全国のスーパー約 1 千店で売られたコメ 5 キロの平均価格は税込み 3,602 円で、前の週より 70 円 (1.9%) 安く、7 週連続で下がった。 政府が随意契約によって放出した「格安備蓄米」の流通量が増え、米価全体の下落が続くものの、値下がりの勢いは鈍った。 農林水産省が調査会社のデータをもとに算出し、14 日に公表した。 下げ幅は前の週の 129 円より小さく、4 週ぶりに 2 ケタ(100 円未満)になった。 平均価格は前年同時期(2,327 円)と比べると、54.8% 高い。 前年の 2 倍を超える高値圏は脱したが、比較対象となる前年のこの時期は価格の上昇局面だったため、今年との差が縮まった面もある。 産地や品種が明示された「銘柄米」だけの平均価格は 4,273 円で、前の週からの下げ幅は 17 円にとどまった。 そのほかの備蓄米も含む「ブレンド米など」は 3,119 円で、下げ幅は 93 円。 銘柄米の値下がりのペースが鈍く、備蓄米との価格差が広がりつつある。 農水省は 11 日に、同じ期間に全国約 6 千の小売店(スーパー、ドラッグストア、ホームセンター)で売られたコメ 5 キロの平均価格について、民間調査会社による全国 9 地域別の推計値も公表した。 最も高い近畿が 3,980 0円で、安い九州・沖縄が 3,033 円。全地域で 3 千円台となったのは、データのある 2 月以降では初めてだという。 一方、小泉進次郎農水相は 14 日、SNS への投稿で、2025 年産の主食用のコメの生産量が前年実績より 56 万トン増える見込みになったと明らかにした。4月末時点の作付け意向調査では40万トン増としていたが、6月末時点の調査の速報値がまとまり、上方修正したという。コメの需給がゆるむ可能性を示し、流通業者に値下げを促すねらいもあるとみられる。 (内藤尚志、asahi = 7-14-25) ロボット田植え機、ドローン施肥 … 効率的で持続可能な農業を次世代へ ロボット田植え機の導入や無人航空機ドローンによる施肥など、最先端の技術で飼料用米の単位収量を増やす取り組みが評価され、茨城県下妻市の農業、鈴木秀史さん (42) がこのほど関東農政局長賞を受賞した。 就農から 5 年、コンテスト初出場での快挙で、本人以上に周囲が驚く。 同県龍ケ崎市出身で、ガス会社に長年勤めた。 下妻市出身の妻と結ばれ、東日本大震災後、米農家の義父母と同居を始めた。 しかし、義父が 2020 年 2 月に急逝したことで、跡を継ぐことになった。 30 代での就農は想定していなかった。 翌月にはガス会社を退職して脱サラしたものの、「何から始めたらいいのか」と視界は晴れなかった。 「いつか継いでくれたら」との義父の思いを生前からくみ取っていたが、代々受け継がれてきた米づくりのノウハウを教わる機会もなかった。 田植えの季節を前に、途方に暮れる暇もなく、義父が管理していた農地の所在確認から取りかかった。 周囲の支えでゼロから就農 会社員時代は無縁だった市役所に向かった。 「一目でわかるように」と地区内で分散していた義父の農地を色付けした資料を手渡されるなど、親切に対応された。 「機械的な対応をされるだろう」と想像していたのは杞憂だった。 「いつか役に立つかも」と大型特殊免許を取得していたが、農業機械の操作は不慣れで、地区の生産者の助けを借りた。 わらにもすがる思いでネット空間に答えを探し求める毎日でもあった。 田植えや収穫だけでなく、除草や追肥など米づくりに必要な水田管理のスケジュールについては義母に教わり、頭にたたき込んだ。 県内では早い段階の 22 年に自動運転のロボット田植え機の導入に踏み切った。 ドローンを使った「空散追肥」で雑草の繁茂や施肥の偏りを防ぎ、衛星画像で生育状況を診断する。 地区の生産者と協力しながら、最新技術の採用に積極投資を惜しまず効率化を図る姿勢が周囲に認められた。 生産者の高齢化や後継難も背景に、管理を任される農地が相次いだ。 義父から引き継いだ約 20 ヘクタールの管理農地は年々拡大した。 「評価も責任も返ってくる」 「農業はすべて自分に評価も責任も返ってくる。 誰かに怒られるわけでもなく、会社員時代よりもストレスを感じなくなった。」と振り返る。 主力の主食用米以外に飼料用米を多収化する取り組みは、就農時期と重なったコロナ禍に伴う米価低迷が理由の一つだ。 「消費者に自慢のお米を届けたい」と心血を注ぐ主食用米の作付面積を抑え、転作支援の交付金を受けられる飼料用米「夢あおば」の本格作付けに踏み切った。 24 年産米の 10 アールあたりの収量(単収)は 715 キロで、地域の基準単収より 170 キロも多くなり、いまでは「スマート農業の先駆者」として、生産者の目標になっている。 「令和の米騒動」で主食用米増産へ 「令和の米騒動」に揺れる今年は、初めて従業員を 1 人採用したほか、作付面積を約 45 ヘクタールへ拡大し、飼料用米の減産と「コシヒカリ」や「にじのきらめき」など主食用米の増産にかじを切った。 また、「耕作放棄地も手がけてみたい。」 経営規模の拡大だけでなく、生産者から一度見放された農地の再生にも意欲を見せる。 政府が備蓄米の放出に乗り出したことで、高止まりした米価が再び下がる兆しを見せている。 高校生の長男を筆頭に食べ盛りの 3 人の子どもを育てる父親や消費者の一人として、5 キロ 4 千円を超える現状の店頭価格は高いと感じているが、生産者の一人としては、かつてのような3千円を割り込む価格が適正とは考えていない。 「生産者と消費者が納得して歩み寄ることができる適正価格を導くべきではないか。」 小泉進次郎農林水産相に同世代として注目するが、現状では、生産者よりも消費者重視に映る。 政策論争の高まりに期待 間もなく始まる参院選では、農業政策が大きな争点になる。 生産現場をほんろうしてきた生産調整からの転換で与野党は一致しているようだが、「収入保険か戸別所得補償かわからないが、(前倒しで)最低保証価格を定めるなどしないと、予算も計画も立てられない。」 政策論争の高まりに期待する生産者の声を代弁する。 義父から受け継いだ農業経営の安定化にこれからも労を惜しまない。 自信と誇りをもって次世代へ継承できる持続可能な農業の実現を、切に願う。 (床並浩一、asahi = 7-2-25) |