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ユニクロ旗艦店ついに閉鎖へ 韓国、日本不買運動の今

カジュアル衣料店「ユニクロ」のソウルにある旗艦店が 2021 年 1 月末に閉店する。 2019 年夏に始まった韓国での日本製品の不買運動の象徴として集中砲火を浴びただけに、その撤退劇は韓国で話題になった。 不買運動の火は完全に消えてはいない。 だが、火勢はだいぶ弱まっている。

「これまでご利用いただき、ありがとうございました。」 ソウルきっての繁華街、明洞。 その入り口の一等地にある「ユニクロ明洞中央店」の壁には大きな張り紙があった。 4 つのフロアを使った韓国最大店舗で、2011 年の開店時には 1 日の売上高が 20 億ウォン(約 1 億 9,200 万円)を記録するなど、ユニクロの象徴だった。 閉店の理由は不買運動だけではない。 「新型コロナウイルスで外国人観光客がいなくなり、商圏全体が壊滅的な影響を受けている。」 店員は打ち明ける。 明洞は韓国を訪れる観光客なら誰もが一度は訪れる繁華街だ。 目抜き通りはくしの歯が欠けるように店舗が消えている。

営業赤字に転落

不買運動にコロナ禍が追い打ちをかけ、ユニクロを運営するファーストリテイリングの韓国現地法人の 2020 年 8 月期通期の業績は売上高が前の期比で半分以下に落ち込み、営業損益は 883 億ウォンの赤字(前の期は 1,994 億ウォンの黒字)に転落した。 不買運動は日本が 2019 年 7 月に韓国向け輸出管理を強化したことへの反発から始まった。 最近はあまり話題にならなくなったが、完全に消えたわけではない。 日本車の販売も不買運動前の水準にはまだ届かない。 日産自動車は韓国市場から撤退し、10 月以降、登録台数はゼロだ。 ユニクロに代表されるアパレルやビール、自動車など不買運動のシンボルにされた業種については不買の影響は残る。

「たまごっち」即完売

一方で、大人気の日本製品もある。 バンダイが 18 日に韓国で発売する「ジョルディ たまごっち」。 3 日に予約販売を始めたところ注文が殺到し、準備分が瞬く間に完売した。 韓国の対話アプリ「カカオトーク」のスタンプで人気のキャラクター、ジョルディが就職するまでの奮戦記をゲームにした。 たまごっちは 1990 年代後半、韓国でも一世を風靡した。 ブームが終わった後は韓国での販売を中止していたが、2019 年にハングル対応の新機種投入で再進出した。 韓国はいまレトロブームだ。 たまごっちの懐かしさと、人気キャラの就活というコラボが若い世代に刺さり「韓国での玩具の予約注文では過去最多(バンダイナムココリア)」の人気につながっている。

ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション 5 (PS5)」は韓国でも発売早々に完売した。 ソニーコリアの通販サイトでも品切れが続く。 今春には任天堂の「あつまれ どうぶつの森」のソフトを買い求めようと、量販店の前に長い行列ができた。 釣り具も日本のダイワ、シマノの人気が高い。 日本製品の不買に拍車をかけたのは、消費者の反応を気にする韓国の小売業が販売を自粛したことだ。 日本製ビールは一時、コンビニやスーパーの店頭に全く並ばなくなった。 その衝撃を緩和する一助となったのがネットだ。 ある日本メーカー関係者は「店頭で買えなくなった分、ネットでの販売が増えた」と語る。

「選択的不買」

不買運動に共感しながらも、欲しいものは買う - -。 日本人からみればご都合主義としかいえない消費行動について、韓国では「選択的不買運動」という言葉も登場した。 たまごっちや PS5 が典型だが、他に選択肢がないものは、それを買うのはしょうがないというわけだ。 ストイックに不買を貫く人々は選択的不買運動を批判する。 だが、日本でも嫌韓なのに韓流ドラマにはまってしまう人々がいるように、信条に反しても手を伸ばさずにはいられない。 不買運動下でも売れている日本製品は、それだけの価値を提供しているともいえる。

過去最悪といわれる日韓関係だが、つい 2 年前までは 1,000 万もの人々が両国を往来していた。 理念ではなく体験で日本を知る韓国人が増え、ソウルでは日本人もうならせるラーメンやとんかつ、天丼などの店が続々生まれている。 韓国人客が列をなしている店も多い。 日韓関係はなお改善の糸口が見えない。 歴史問題や東京電力福島第 1 原子力発電所事故の処理水放出問題などで世論が悪化すれば不買運動が再燃する恐れはある。 ただ、優れた製品・サービスは主義主張を超える。 韓国の消費者が人目を気にせず「メード・イン・ジャパン」を選択する日は必ずやってくるはずだ。 (鈴木壮太郎・ソウル支局長、nikkei = 12-11-20)

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韓国の日本製品不買運動は昔の話? 「ユニクロの言葉通り」と韓国メディア

5 月 1 日、韓国・マネー S は「日本製品不買運動は昔の話 … ユニクロの言葉通り」との見出しで、「今年に入って韓国の日本製品不買運動の熱が冷めつつある」と伝えた。 ユニクロは韓国で昨年夏に不買運動が始まった際、本社役員の「不買運動の影響は長く続かないだろう」との趣旨の発言が物議を醸していた。 記事によると、4 月初めに再販売された任天堂のゲーム「あつまれ どうぶつの森」は短時間で完売した。 人気絶頂の中で供給がストップし、限定版でないにもかかわらず転売価格が高騰しているという。 任天堂は追加の供給を予定しているが、需要激増に対する品薄状態は当分の間続くとみられている。

また、日本製品不買運動のメインターゲットとなったビールの輸入額も増加傾向にある。 今年 1 月は 12 万 6,000 ドル(約 1,340 万円)、2 月は 26 万 4,000 ドル、3 月は 64 万 8,000 ドルと、3 カ月連続で増加した。 自動車の輸入額も 1 月は前年同期比 69.8% 減の 2,129 万 8,000 ドルだったが、2 月(8,454 万 9,000 ドル)、3 月(7,288 万 7,000 ドル)は大幅に増加したという。

これに韓国のネットユーザーからは「不買運動を続けているのは私だけだったの?」、「日本のゲーム機に行列を作るのは本当に問題だ」、「1 年も続かなかったのか」、「恥ずかしい」、「プライドはないの?」など落胆の声が上がっている。 また、「これだから日本は韓国を見下し、過去を否定し、謝罪もしない」、「情けない。 学校の歴史の授業で子どもたちに日本の過去の蛮行をちゃんと教えるべきだ。」などと主張する声も。 一方で「不買しようがしまいが個人の自由」、「ゲームは許そうよ。 コロナ感染拡大防止で家にこもるために買うのだから。」との声も見られた。 (RecordChina = 5-1-20)


元慰安婦支援施設の運営法人、寄付金の大半を不正流用

韓国の元慰安婦の女性らが暮らす施設「ナヌムの家(京畿道広州市)」をめぐり、京畿道の官民調査団は 11 日、運営する社会福祉法人が 2015 年から 5 年間で集めた寄付金 88 億ウォン(約 7 億 9 千万円)の大半を不正流用していたとの中間報告を発表した。 施設の職員が今年 5 月、運営法人による寄付金の流用を内部告発していた。

調査団によると、実際に施設の運営に充てられたのは約 2 億ウォンにとどまった。 残りについては、運営法人による一般向けの療養施設の建設や土地の購入などのために蓄えられ、元慰安婦のために直接使われていなかったとみている。 京畿道は警察への告発や運営法人の行政処分を行う方針という。 ナヌムの家は 1992 年の設立。 現在は元慰安婦 5 人が暮らしている。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 8-13-20)


日本製鉄が即時抗告書提出 韓国、元徴用工問題で
日本企業資産の現金化

韓国の元徴用工問題で、日本製鉄(旧新日鉄住金)が 7 日、韓国裁判所の資産差し押さえ命令決定を差し止めるため、即時抗告書を提出したことが分かった。 裁判所が明らかにした。 今後、裁判所が即時抗告を認めるかどうか判断する。 原告の弁護側は、即時抗告には正当な理由がなく「遅延戦略だ」と批判している。

即時抗告が認められなかったとしても、原告側が差し押さえた日本製鉄の韓国内資産に対し、実際に売却命令が出て現金化され、原告に支払われるまでには、その後さらに数カ月以上かかる見通しだ。 韓国の裁判所は 6 月、日本製鉄の資産に対する差し押さえ命令の決定書などを同社が受け取ったと見なす「公示送達」の手続きを取り、4 日午前 0 時(日本時間同)に効力が生じた。 1 週間以内に即時抗告しなければ、差し押さえ命令の決定が確定していた。 (kyodo = 8-7-20)


ボルトン回顧録で韓国民の怒りが日本に向かう理由
「南北統一を邪魔して回る日本」、韓国高官が次々と批判の声

米国・国家安全保障問題担当補佐官として至近距離から見守ったトランプ大統領の首脳外交秘話を思いっきり暴露したジョン・ボルトン氏の回顧録『それが起きた部屋』に対する韓国社会からの糾弾が絶えない。 トランプ大統領とホワイトハウスの政策失敗を批判したのが回顧録の主な内容だが、その中に米朝首脳会談と米韓首脳会談など、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権にとって敏感な内容も多数含まれているためだ。 中央日報によると、本書には文在寅大統領を意味する「MOON」という単語が 153 回も登場しており、朝鮮半島関連の技術部分ではトランプ大統領に劣らず、韓国の文在寅大統領と鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府安保室長を辛らつに批判しているという。

ボルトン回顧録で韓国で高まる反日機運

だが韓国で同書が起こした波紋はそれだけではない。 回顧録の中身として、米朝首脳会談をめぐる日本の否定的な態度や、米朝間の終戦宣言を安倍晋三首相が引き止めたという内容があると報じられたことで、韓国の与党やメディアは連日、ボルトン氏はもちろん、日本に対する激しい糾弾が続いているのだ。

「ネオコン・ボルトンの手管や日本の妨害によって、70 年間の分断を終え、韓半島統一への歴史的転換となる千載一遇の機会が消えたという、実に嘆かわしい真実が残念だ。」 「米国のネオコンと日本の主張は一致する。 ネオコンや日本と手を組む(韓国内の)土着分断勢力が、韓半島の平和と繁栄を妨害する『三大分断勢力』であることが明らかになった。」

朝鮮戦争 70 周年を翌日に控えた 24 日、韓国与党の共に民主党の最高委員会議で、金泰年(キム・テニョン)院内代表はボルトン氏と日本をこのように非難した。

「文大統領の半島平和外交を執拗に妨害してきた日本」

さらに国会の外交統一委員長を務める宋永吉(ソン・ヨンギル)議員も 21 日、自身のフェイスブックで、こう怒りを爆発させた。

「日本は、韓半島の平和よりは政治的・軍事的対立と緊張が、韓国と北朝鮮の統一よりは分断が自分たちの利益と合致し、それのために初志一貫行動していることを、ボルトン元国家安全保障担当補佐官が書いた回顧録で改めて確認した。」 「第 2 次世界大戦の敗戦国である日本が、韓国戦争(朝鮮戦争)で国家再建の基礎を築いたことからも、韓半島の平和が日本の利益と衝突することがわかる。」 「ハノイでの北朝鮮と米国の会談の決裂を聞いて欣喜雀躍した日本、やはり韓半島の平和が不満なボルトンらの米国強硬派の画策が、ハノイ会談を破局に導いた。」

日本批判の声はまだある。 韓国外交通商部(外交部)付属の国策研究機関である「国立外交院」の金俊亨(キム・ジュンヒョン)院長は 23 日、あるラジオに出演し、「ボルトンもボルトンだが、(回顧録で)日本の実態がそのまま露呈された」と語った。 彼は「これだけではない。 私は過去 2 年間ずっと話を聞いてきた。 文在寅大統領が欧州を訪問したらすぐに日本がついてきては『親北朝鮮左派の話に気をつけよ』と言いまわるなど、(韓国に)付きまといながら仲違いしたほどだった。」と、日本が文大統領の朝鮮半島平和外交に対して執拗な妨害活動をしてきたと指摘した。

「日本は南北統一を恐れている」の思いに確信を与えたボルトン回顧録

ニュースエージェンシーの連合ニュース系列のケーブルテレビ局「YTN ニュース」は 23 日、「ソウルの幸福感を破りたかった? … 日本の組織的妨害」というリポートで、ボルトン氏の回顧録の内容を次のように分析している。

<今日は、ジョン・ボルトン氏の回顧録の中で、日本が韓半島和平体制の構築をどのように妨害したのかという部分を見てみたいと思います。>
<南北首脳会談、米朝首脳会談の推進で疎外されていた日本としては、北朝鮮と米国の交渉妥結内容に日本の要求をなんとか取り入れたり、交渉が決裂したりするように踏み込もうとしたのです。>
<ジョン・ボルトンは、韓半島の非核化を大韓民国の仲裁と外交で解きたくありませんでした。 北朝鮮のすべての力を奪って、悩みの種を事前に除去し、米国の影響圏に置くのが目標でした。>
<南北が平和体制に入り、北東アジアで巨大な力を育てることを阻止したかった日本と米国の覇権主義者のボルトンは、そのように意気投合したのです。>

多くの韓国人、特に文在寅政権支持勢力は、朝鮮半島の平和に最も邪魔になる存在が日本と考えている。 南北が統一を果たし、経済力や国際的地位の面で日本を超えることを日本が恐れ、南北の和解を妨害しているというのが彼らの主張だ。 今回のボルトンの回顧録の内容は、彼らに「自分たちの見解が決して間違っていない」という確信を与えただろう。 韓国の保守系マスコミからは、ボルトンの回顧録によって米韓同盟が揺さぶられることを憂慮する見解が多いが、悪化の一途をたどっている日韓関係も、ボルトンの回顧録に少なからぬ影響を受けるものと見られる。 (李正宣、JB Press = 6-25-20)

〈編者注〉 日本から見れば、にわかに信じられないような韓国与党 (?) の思考回路です。 今、世界の国々で、朝鮮半島が南北分断のままでよいと考えているのは、中国以外ありません。 何とか、南北分断を解消し統一朝鮮半島の発展を成し遂げて欲しいと心から願っています。 韓国が少しばかり GDP を増やしたからと言って、別に何とも感じない日本なのです。 ただ、現状を冷静に見ると、韓国首脳部が、北朝鮮の現体制にニコニコしていれば、南北統一が自動的、平和的に成し遂げられると考えるほど楽天的な人々は世界中に誰もいないのは明白です。 大変な誤解を少しでも和らげられるよう、日本の愚直な外交交渉を直ちに始めるべきでしょう。

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ボルトン氏「暴露本」に韓国政府高官が反発も … 「信義毀損」批判はブーメランに

トランプ政権で安全保障を担当してきたジョン・ボルトン前大統領補佐官の「暴露本(6 月 23 日発売)」が世界中で話題になっているが、ここ韓国でも大きな騒ぎになっている。 アメリカメディア等によると件の暴露本では、2018 年 6 月に行われたトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長による史上初の米朝首脳会談の裏側になどついて記述されているが、その「橋渡し役」を自任していた韓国政府や文在寅大統領を痛烈に批判しているからだ。

文大統領の構想は「統合失調症患者のようだ」

アメリカや韓国のメディアによると、ボルトン前補佐官は著書の中で、文在寅大統領の北朝鮮非核化に向けた構想を「統合失調症患者のような考え」と表現し、痛烈に批判した。(* ボルトン前補佐官は他の場面でも「統合失調症患者」という言葉を「二律背反する考えを持つ人」という意味で使っている。 しかし厚労省は HP で「普通の話も通じなくなるという統合失調症のイメージは誤りである」としている。)

米朝交渉自体が「韓国の創造物」とした上で、韓国主導の米朝非核化交渉をスペインの情熱的なダンスや歌である「ファンダンゴ」に例えたナンセンスだとし、「北朝鮮やアメリカに関する真剣な戦略よりも、南北統一に重きが置かれていた」と断じた。 米朝交渉によって南北統一を推進しようとする韓国の戦略にアメリカのみならず北朝鮮も「踊らされた」という趣旨だ。

こうした内容について、ボルトン前補佐官のカウンターパートだった韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が 6 月 22 日に批判声明を出した。 「ボルトン前補佐官は彼の回顧録で韓国とアメリカ、そして北朝鮮の首脳たちが交わした協議内容と関連した状況を、自身の観点で見たものを明らかにしたのです。 正確な事実を反映していません。  また、相当部分事実を大きく歪曲しています。」 ボルトン前補佐官の著書の内容は正確な事実ではなく、歪曲されているというのだ。 だが具体的にどこが不正確なのかは指摘しなかった。

また韓国大統領府の関係者は、文大統領の非核化構想を「統合失調症患者のような考え」と書いた事について、「ボルトン前補佐官本人がそのよう(統合失調症患者)である可能性がある」とまで言った。 こうした韓国政府高官の反発は、ボルトン前補佐官の著書の内容を考えれば予想出来たことだ。 「朝鮮半島の運転者」を自任し、南北融和こそが最大の目標であり、米朝首脳会談を実現させた事を最大の実績と考えている文在寅政権にとって、看過できないものであろう事は想像に難くない。

ちなみにこの著書では悪化する日韓関係についても触れていて、文大統領がトランプ大統領に「度々日本が歴史問題を論争にしてきた」と話したことについてボルトン前補佐官は「もちろん歴史問題を取り上げるのは日本ではなく、文大統領だ」と指摘している。 これも、大いに気に入らないだろう。 しかし、鄭室長の反論の中の次の一節を読んで、私は思わず仰け反ってしまった。

外交協議を一方的に公開したのは誰?

鄭室長はボルトン前補佐官の著書について「政府間の相互信頼に基づいて協議した内容を一方的に公開するのは外交の基本原則に違反しており、今後の交渉での信義を非常に深刻に毀損しうるものです」と批判した。 言っている事は正しい。 ただ、そう言う資格はあるだろうか? なぜなら、日本との外交において「協議した内容を一方的に公開」するという「外交の基本原則に違反」したのは、他ならぬ韓国政府だからだ。

2017 年 12 月、韓国政府は 2015 年に結ばれた慰安婦問題に関する日韓合意について、康京和(カン・ギョンファ)外相直属の調査チームが行った検証結果を発表した。 日韓合意では、安倍首相が元慰安婦に謝罪した上で、日本政府が元慰安婦のために 10 億円を拠出し、その資金を元に韓国政府が財団を作って元慰安婦に資金を支給することが決められ、「最終的かつ不可逆的」に慰安婦問題が解決したと日韓両政府が確認している。

しかし文在寅政権は、日韓合意は「被害者中心主義に反する」などとして「問題は解決しない」と立場を翻し、財団も一方的に解散した。 実は文在寅政権が立場を翻る根拠になっているこの報告書には、日韓合意の交渉過程や、非公開とすることで日韓両国が合意していた内容が記載されている。 河野外相(当時)は報告書発表直後の会見で「合意の交渉経過について一方的に明らかにされるべきではないということを申し上げております。 非公表を前提としているものが一方的に公表されたというのはいかがなものかと思いますし、極めて遺憾と言わざるを得ない。」と強く批判した。

一方調査チームは会見で「外交的な側面で少し損傷があったとしても、(国民に)知らせる必要があると判断した」と抗弁している。 確信犯的に「外交の基本原則を違反」したのだ。 ボルトン前補佐官の本は、トランプ大統領批判が主目的ではある。 そういう意味では、韓国政府や文大統領は「もらい事故」を受けたようで、気の毒な面はある。 ただ「外交交渉を一方的に公開するのは外交の基本原則違反で信義を毀損しうる」との声明がブーメランのように韓国政府に突き刺さっている事は自覚していただきたい。 今回「一方的に公開」される立場になった韓国政府ならば、2017 年当時に自分たちがいかに日本政府の「信義を毀損」したのかを、理解出来るだろう。 (ソウル支局長・渡邊康弘、FNN = 6-23-20)

〈編者注〉 文在寅氏が韓国の大統領である限り、他が何と言おうと「南北統一」が第一義であることは当然であり認めます。 しかし、現状の北朝鮮指導部の言動からみると、文在寅氏が理想とする「南北融和」の先にあるものは、南(韓国)の譲歩、更に続いて、中国への譲歩(朝鮮半島の一部割譲)に繋がるのは明白です。 もっと現実的な施策を示さない限り、米国との信頼関係も構築できないように思われます。


日韓友好の木、何度も折られる 「異論あるなら言論で」

京都府宇治市に植えられているムクゲが、何度も折られている。 戦時中、留学先の京都で治安維持法違反容疑で逮捕された韓国の国民的詩人・尹東柱(ユンドンジュ、1917 - 45)の記念碑前にあり、碑を建てた市民団体が 11 日に会見し「命を大事にする思いを込めた碑の前で、木の命を傷つけるのはやめてほしい」と訴えた。 尹は 43 年、同志社大の学友らと宇治川上流の天ケ瀬つり橋などを訪れ、その写真が残る。 43 年 7 月、朝鮮独立運動に関わったとして逮捕され、27 歳で福岡刑務所(福岡市)で獄死した。 その歴史を刻もうと、つり橋と天ケ瀬ダムの間の宇治川右岸に 2017 年 10 月、市民らが「詩人尹東柱 記憶と和解の碑」を建てた。

碑の建立委員会などによると、ムクゲは昨年 10 月、碑の建立 2 周年に合わせて宇治市と在日本大韓民国民団府地方本部が整地した際に韓国民団側が植えた。 韓国の国花で、両国友好を願い「尹の心が安らかになれば」と選んだという。 高さは 1 メートル以上あったが、年末から枝などが何度も折られ、低くなったという。 この日、建立委員会代表の安斎育郎・立命館大名誉教授と紺谷延子事務局長が市役所で会見した。 注意書きの掲示を検討しているといい、安斎代表は「もしも異論があるのなら、言論ですべきだ」と語った。 (小西良昭、asahi = 5-12-20)


韓国はなぜ日本の入国制限に猛反発したのか

<韓国で新型コロナウイルスの感染者が急増していることを思えば、入国制限を決めた日本政府の判断も合理的と思えるのに、それにもかかわらず韓国政府が激怒し、すぐさま対抗措置を取った深層の理由>

今更言うまでもないことであるが、新型コロナウイルスが猛威を振るっている。 周知の様に昨年 12 月、中国は武漢にはじまったこのウイルスの流行は、中国全土から東アジア各地に及び、現在では欧州諸国をはじめ世界各地にまで広がる勢いを見せている。 各国がこの流行に対して見せる対応は様々であり、その違いが更に論議を呼ぶ事になっている。

その中でもとりわけ対照的な動きを見せているのが、共に流行の発生源である中国に隣接する韓国と日本である。 そこでここでは、新型コロナウイルスの流行に対する韓国のこれまでの対応について、日本と比較しながら、主としてその政治現象に関わる部分に着目してまとめてみる事としたい。

「終息宣言」直前の状況から暗転

韓国において新型コロナウイルスの感染者がはじめて確認されたのは、今年 1 月 20 日、仁川国際空港から入国した武漢に住む中国人女性の例だった。 他方、日本ではじめての感染者が発見されたのは 1 月 16 日、武漢に滞在し帰国した神奈川県男性の例であったから、そもそもの発端の時期に大きな違いがあった訳ではない。 しかし、その後の日韓両国の状況はジェットコースターのように上下した。

2 月上旬、日本ではたまたま寄港した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内で集団感染が発生し、日本政府の対応に国際社会の大きな注目が向けられる事になった。 逆に同じ時期、韓国では 2 月 11 日に 28 人目の感染者が発見されてから 5 日間、新たな感染者が発見されない状況が続き、文在寅政権は同ウイルスの抑え込みに成功した旨の「終息宣言」を出し、混乱が続いていた日本を、中国、香港、マカオに続き新型コロナウイルスの感染地域に指定する事を検討するまでに至っている。 韓国では新型コロナウイルスへの日本政府の対応に疑念が広がり、逆に自らの措置に自信感を強めていた時期である。

しかしながら、韓国の状況もまたこの直後に暗転する。 2 月 18 日に新興宗教集団「新天地イエス教会」で集団感染が発覚し、韓国の感染者は急速に増加、約一週間後の 2 月 26 日には瞬く間に 1,000 人を超える事となったからである。 程度の差こそあれ、2 月後半になって事態が深刻化したのは日本も同じであった。 2 月 21 日に「ダイヤモンド・プリンセス」のそれを除く感染者が 100 名を超えると、25 日には政府が新型コロナウイルスへの基本対策方針を発表、27 日には安倍首相自らが、小中高校の休校を要請するに至っている。

さて、この様に同じく新型コロナウイルスの流行拡大の脅威に直面する日韓両国であるが、その対処の方法は大きく異なっている。 違いのポイントは大きく二つあり、それは感染の有無の「検査」と、検査の結果感染が確認された患者の「医療措置」の在り方である。 報道されている様に、この点で日本政府は、「検査」と「医療措置」の双方の拡大に消極的な姿勢を取っている、と言われている。

背景にあるのは、大量の人々が「検査」と「医療措置」を求めて医療機関に殺到する事で、その能力を超える事態、つまり「医療崩壊」がもたらされる事への懸念である。 同時に、感染者が医療機関に殺到する事で、逆に病院において感染が広がる可能性があり、PCR 検査では一定の確率でしか感染者を確定することができない事も指摘されている。 だからこそ、治療方法が存在しない現状では、感染の疑義がある人を含めて、自宅待機を有効に利用するのが賢明だ、というのがこの方針を支える理屈になっている。

戦略としての大量検査

これに対して、韓国政府は日本政府とは対照的な施策を取っている。 即ち、韓国政府が進めているのは積極的に「検査」を行い、集団感染をできるだけ早期に発見してその芽を摘むと同時に、患者を早期に社会から隔離して「医療措置」を進める事であった。 この為に韓国政府は当初、「検査」により感染が明らかになった人を可能な限り医療機関に入院させる方向で「医療措置」を行い、これを積極的に進める事になった。

背景にあったのは、韓国政府の「準備」と「自信」であった。 実際、韓国においては 2 月末には一日当たりの検査者数が 1 万人を突破するなど、膨大な数の検査が毎日行われており、この点が「検査難民」の存在が指摘される我が国との大きな違いとなっている。 そして当然の事ながら、この様な大規模「検査」を可能とする韓国の状況は、今回のウイルス流行後、直ちに作られた訳ではない。

韓国では 2015 年に MERS (中東呼吸器症候群)の流行が起こっており、186 人の感染者と 38 人の死亡者を出す事となっており、この時の教訓が今回の新型ウイルスへの対処の原型になっている。 とりわけこの時には、ウイルスが大型病院での院内感染を通じて広がり、多くの死者を出した事への批判は強く、時の朴槿恵政権には強い批判が向けられることになっている。

だからこそ韓国では、官民双方の病院にて、新たなる感染症の流行に備えて準備が整えられて来た。 そしてその答えこそが、大量「検査」と入院による早期の積極的「医療措置」はその答えだったのだ。 しかしながら結果から言えば、この措置は大きな誤算を生むことになった。 誤算の原因は「数」と「地域の集中」にあった。 つまり、この体制の下行われた大量「検査」の結果として発覚した感染者の数は韓国政府の当初の想定よりも遥かに多く、しかも大邱・慶尚北道という狭い地域に集中して出現した事である。

3 月 10 日夜現在で、韓国全体での感染者は 7,513 名、実にそのうち 75.4% に当たる 5,663 名が大邱市に集中、残る 14.9% も大邱市を取り囲む慶尚北道で発見される事になっている。 因みに大邱市の人口が約 250 万人、慶尚北道が約 270 万人。 流行のはじまりであった中国の武漢市、湖北省が各々、公式発表によれば感染者が 4 万 9,965 人、6 万 7,760 人、人口が約 1,080 万人と約 5,900 万人であるから、「検査」の結果見つかった「人口当たりの見かけ上の患者数」は大邱市が既に湖北省の 2 倍、武漢市と比べても 1/2 2に達している事がわかる。

医療崩壊でも支持率は上昇

当然の事ながら、僅か 1 カ月足らずの間に、突如として 5,000 人を超える感染者が発生し、彼らのその全てが入院を求めて医療機関に殺到すれば、一地方都市においてこれを処理できるはずが無い。 結果、大邱市を中心とする地域の医療機関は能力の限界を早々と超え、本来なら医療措置を受けるべき人々が適切な措置を受けられない「医療崩壊」の状況が生まれている。

だからこそ、結局、韓国政府は「医療措置」に関わる、感染者の全員入院という当初の方針の転換を余儀なくされ、軽症者への自宅待機を呼びかける事となっている。 急増する韓国の感染者数拡大に対する各国の警戒も高まっており、既に我が国を含む 100 以上の国や地域が韓国からの入国を制限する事になっている。

とはいえその事は、韓国政府が当初の「検査」と「医療措置」の積極的な姿勢を全面的に変えようとしている事を意味しない。 何故なら、混乱する医療現場の状況とは対照的に、韓国政府、より正確には新型コロナ対策の指揮を取る疾病管理本部への国民の支持は依然、極めて高い水準に留まっているからだ。

3 月 4 日に明らかにされた韓国リサーチの調査結果によれば、疾病管理本部を「信頼する」と答えた人は 2 月第 4 週で 81.1%。 この数字は事態が深刻ではなかった 2 月の第 1 週の 74.8% と比べてもむしろ大きく上昇することになっている。 政府全体の対策への支持も 57.0% と過半数を超えており、韓国の人々が積極的な「検査」と「医療措置」という文在寅政権の方針を支持していることがわかる。

それでは混乱する医療現場の状況とは対照的に、何故韓国の人々は政府の新型コロナウイルス対策を支持しているのだろうか。 結論から言えば、それはこの政策がとりわけ「検査」の面で、人々の素朴な期待に応えているからである。 流行が広がる中、韓国人の中での感染への恐れは確実に高まっており、豊富な「検査」の機会は - - それが必然的に一定の範囲での誤差を含むとしても - - 人々に心理的安定を与えるものとなっている。

そして、ちょうど今から 3 年前の 3 月に大規模デモを伴う朴槿惠前大統領弾劾運動の結果成立し、何よりも来月には政権の命運を握る国会議員選挙を控える文在寅政権にとって、この国民の強い不安とそれに応える措置への期待に抗う余裕は存在しない。 だからこそ韓国政府は「医療措置」に関わる部分の政策は変更しても、「検査」に関わる部分の政策の変更は依然として行っていない。

「正しい」選択の行きつく先

とはいえ同時に、この様な積極的な「検査」とその結果として発覚した感染者数の増加は、多くの国に対して韓国の衛生状況への不安をも与えており、結果、3 月 10 日現在の段階で既に我が国を含む 100 を超える国や地域が韓国からの入国制限を実施する事になっている。 周知の様に、とりわけ我が国がとった措置への韓国政府の反発は極めて強く、康京和外交部長官は「日本側の措置は真に非友好的だけでなく、非科学的だ」として、日本大使を呼びつけ抗議する事になっている。

そして、この様な韓国政府による日本の措置への強い反発の背景にもまた、彼ら固有の政治的事情がある。 何故なら、同じ新型コロナウイルスへの流行に対して、全く異なる措置を取る日本による入国制限開始の表明は、韓国の一部では、大量「検査」と積極的「医療措置」を軸とする韓国の方針への正面からの疑義表明だと受け止められているからである。 政権の命運を握る国会議員選挙を前にして、国民の負担と期待に応える責を負う韓国政府にとって、自らの新型コロナウイルス対策は「正しい」ものでならなければならないと考えられている。 何故ならそれは国民が支持するものであり、また政府自らそれが「正しい」事を幾度も強調して来たものだからである。

「韓国の先制的防疫対応、大規模な検診実施、透明な情報公開などは今後の感染病対策のための良い先導的モデルだ。」 韓国の政府関係者がこの様に自らの新型コロナウイルスへの対処に対する「国際社会からの称賛」の言葉を繰り返すのもその為である。 そして実際、今の所、この様な文在寅政権の施策は「政治的には」功を奏している様に見える。 何故なら深刻な危機の中にありながら、文在寅の支持率はむしろじりじりと上昇し、与党は野党に対するリードを少しずつ広げる事となっているからだ。

だからこそ、韓国の医療関係者は明日も、国民からの期待と政府からの指示に応える形で、疲労困憊する中、大量の「検査」希望者の要望に応え、病院に殺到する感染者への「措置」に追われる事となる。 こうなってしまえば、シナリオの行く先は幾つかしかない。 一つは、医療関係者が何とか持ちこたえている間に、積極的な「検査」と「措置」により韓国政府が集団感染を効率的に潰して行き、新型コロナウイルスの抑え込みに成功する事である。 この場合、人々は韓国政府と、何よりも膨大な労力を使って感染を抑え込んだ医療関係者に称賛の言葉を送る事になるだろう。

他方、もう一つのシナリオは医療関係者の懸命の努力にも拘わらずウイルスの抑え込みに失敗して流行が更に拡大し、遂には医療機関の能力を超える「医療崩壊」が、大邱のみならず全国に広がる悲劇的な結末を迎えるものである。 この場合、どこかの段階で韓国政府は、自ら進んで方針を転換し、国民を説得する事が必要になるが、「ろうそく革命」により成立し、市民の声に応える事を至上命題とする文在寅政権が、選挙を目前としてこのリスクを取る事ができるか否かは、極めて不透明と言う他はない。

国民の不安にどう向き合うか

そしてこの様な同じ問題に対して異なる姿勢を取る隣国の状況は、我が国にとっても大きな示唆を有している。 重要なのは、感染症の拡大という医療的問題が深刻化した時に、政府が如何に国民と対話し、導き、また試行錯誤していくか、という事だ。 未知のウイルスや地球環境問題等、我々の周囲には模範解答が何かが明確ではない深刻な問題は数多く存在する。

当然の事ながら、その中では時に、政府も世論も明確な答えを見つけられず間違いを冒す事になり、だからこそ時には大きなリスクを冒してでも、自らの過ちを認め進むべき方向を転換していく必要が生まれる事になる。 国民の意見に過剰に媚び、合理的な選択をする事を怠るなら、それは長い目で見れば政府にとっても自らの支持基盤を損なう事になる。

他方、国民の不満を放置して自らの施策を貫いても、政府はやがて国民からの深刻な批判に直面し、結果、自らが目指す合理的な政策を続ける事ができなくなるリスクを負う事になる。 勿論、政府が自身の立場に拘泥し、過ちを認めて方向転換をする事を怠るならその先にもやはり悲劇的な結末が待っている。 言うまでもなく自らの施策を定めるに当たっては専門家による判断に真摯に耳を傾け、必要なら自らの誤りを積極的に修正していく事もまた必要である。

だからこそ危機においては、政府は国民からの意見を積極的に汲み取ると同時に、自らの下した政策の意図を国民に丁寧に説明し、また、誤りがあれば柔軟に自らの姿勢を柔軟に修正していく事が重要になる。新型コロナウイルスを巡る状況は、こうした各国の民主主義のパフォーマンスをも試していると言えそうだ。 (木村幹、NewsWeek = 3-11-20)

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WHO、日韓に争い戒め 相互入国制限、有益でない

【ジュネーブ】 世界保健機関 (WHO) で緊急事態対応を統括するライアン氏は 6 日、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、日韓両国が相互に入国制限を打ち出したことについて「有益ではない」として「渡航制限を巡る政治的な争い」を戒めた上で、感染拡大防止に集中すべきだと訴えた。 日韓両国共に「新型コロナウイルス対策を大規模に行っており、人命を救うために素晴らしい対応をしてきた」と評価。 入国制限に過度に重点を置くことは、ウイルス封じ込めに向けた努力を阻害するものだとして、自制を促した。 ライアン氏は、渡航制限措置は「できるだけ短期間にとどめるべきだ」と指摘した。 (kyodo = 3-7-20)


日本製品の不買、韓国で続く 1 月の輸入消費財 36% 減

韓国が 1 月に輸入した日本製消費財は前年同月比で 36% 減り、昨年 7 月の日本の輸出規制強化を機に始まった不買運動が続いている実態が明らかになった。 韓国国会議員の金政祐氏が韓国関税庁から提出を受けた資料で明らかになった。 金氏によると、1 月の日本からの消費財の輸入は約 1 億 9 千万ドル(約 200 億円)で、消費財全体(約 9% 減)よりも減少幅が大きかった。 昨年 12 月には 23% 減と減少幅は前月に比べて縮小していたが、再び拡大した形だ。

品目別にみると、ビールとオートバイがともに 98% 減、自動車も 69% 減だった。 ほかにも、たばこ(72% 減)や日本酒(66% 減)などの減少幅が大きかった。 おもちゃや加工食品も 50% 台の減少だった。 一方、ゴルフ用品は 1・6% の微増を記録。 韓国の財界関係者は、ゴルフ用品は韓国製や他の外国製で代替しにくいためだと指摘。 「日本製以外を経験した消費者がそれでも大丈夫だと考え、今後も日本製の購入に戻らない可能性がある。 不買運動が日常化し、日本製品がなくても事足りるとみなす『ニューノーマル』(新しい常態)になりつつある」と分析している。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 2-18-20)

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「不買運動落ち着いて」嘆くメーカー、大幅減の対韓輸出

韓国での日本製品の販売不振が、深刻さを増している。 財務省が 21 日発表した 9 月の貿易統計で、韓国向けの輸出額の減少幅が前年同月比で 15% を超え、9.4% 減だった前月よりさらに広がった。 落ち込みが特に大きい食料品や自動車では、メーカー各社が韓国戦略の再考も迫られかねない事態だ。 世界全体への輸出も低調で、日韓関係の悪化が追い打ちをかけている。

9 月の韓国向け輸出は前年同月比 15.9% 減の 4,028 億円だった。 特に食料品が 62.1% 減の 17 億円、自動車が 48.9% 減の 39 億円と大幅に落ちこんだ。 自動車の台数は 48.4% 減の 1,407 台だった。 日本政府は 7 月、半導体製造などに使われる化学製品 3 品目をめぐり韓国への輸出規制を厳しくした。 韓国内で反発が広がり、不買運動が始まった。 中でも、日本企業のブランド名などが表示される消費者向け製品は影響が大きい。

サッポロビールは高価格帯のビール「エビスビール」を韓国に輸出している。 具体的な数字は明らかにしていないが影響は出ているといい、広報担当者は「不買運動が早く落ち着いてほしい」と話す。 日本製紙連合会の矢嶋進会長(王子ホールディングス会長)は 21 日の会見で、日本製ビールの韓国輸出の減少を踏まえ、「ビールの段ボール箱にも影響が多少ある」と述べた。

「Q・B・B」ブランドのチーズで知られる六甲バター(神戸市)では、韓国でのチーズ販売を拡大する計画が頓挫している。 昨年 11 月に現地企業と業務提携し、販路を強化する予定だった。 現在は韓国への輸出はすべて停止しており、「日韓関係の悪化や日本製品の不買運動の広がりが理由(広報)」という。 一方、韓国輸入自動車協会が今月 4 日に発表した 9 月の日本車の新規登録台数は、前年同月比 59.8% 減の 1,103 台だった。 輸出車全体の 9 月の新規登録台数は前年同月比 17.3% 増の 2 万 204 台で、日本車の減少ぶりが際立った。

9 月のドイツ車の新規登録台数は前年同月比 62.7% 増の 1 万 4,297 台、スウェーデン車は 66.6% 増の 996 台で、日本車の代わりに欧州勢が増えた。 日産自動車も韓国での販売が大きく減っているといい、幹部は「確かに(現場は)むちゃくちゃ。 このままやっていけるとはとても思えない」と顔を曇らせる。 ただ、「いま韓国から撤退するというのは政治的な影響も大きく、このタイミングではできない」と話す。 9 月には、韓国から撤退を検討しているという一部報道があり、同社が否定する場面があった。

日本の輸出全体も不振が続く。 9 月の日本から全世界への輸出額は 5.2% 減の 6 兆 3,685 億円と 10 カ月連続で前年割れした。 米中貿易摩擦の影響を受け、中国向けは 6.7% 減の 1 兆 1,771 億円で 7 カ月連続で減った。 自動車部品や半導体等製造装置などの落ち込みが激しかった。 全世界からの輸入額は 1.5% 減の 6 兆 4,915 億円。 輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は 1,230 億円の赤字だった。 2019 年度上期(4 - 9 月)の輸出額も前年比 5.3% 減となった。 米国向けは 2.3% 増えたが、中国向けが 9.1% 減ったことが響いた。 貿易収支も 8,480 億円の赤字で、半期では 2 期連続の赤字となった。 (長橋亮文、佐藤亜季、友田雄大、asahi = 10-21-19)

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