韓国、日韓軍事情報協定を破棄 「輸出優遇国」除外受け 韓国大統領府は 22 日、関係閣僚らが出席する国家安全保障会議 (NSC) を開いて日韓の軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) の延長の可否を議論し、協定を終了させると決めた。 協定の有効期限は 1 年で、2016 年の締結以来、毎年自動延長されてきたが、日本が 7 月に対韓輸出規制を始めたことで、韓国で破棄を求める声が高まっていた。 大統領府の金有根・NSC 事務処長は同日夕の記者会見で、協定終了の理由として、日本政府が 2 日に輸出手続きを簡略化できる「輸出優遇国」のリストから韓国を外す決定したことをあげ、「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした。 このような状況で協定を続けることは、韓国の国益に合致しないと判断した。」と述べた。 GSOMIA は日韓が防衛に関する秘密情報を共有するルールを定めたもの。 期限最終日の 90 日前に協定を終了させる意思を通告をしない限り自動延長される。 今年の更新期限は 24 日に迫っていた。 日本は延長を決めていたが、韓国が破棄を決めたことで、協定の終了が確実になった。 協定が終了する場合、日韓関係のさらなる悪化に加え、北朝鮮の核・ミサイル開発問題などをめぐる日米韓の連携に悪影響を与えるおそれがあると、米国は延長を求めていた。 鄭景斗(チョンギョンドゥ)国防相は国会で「(GSOMIA の)戦略的価値は十分あると思う」と発言するなど、延長の必要性を訴えていたが、世論調査会社リアルメーターが 7 日付で発表した調査結果では、破棄賛成が 47.7%、破棄反対の 39.3% を上回っていた。 (ソウル = 武田肇、asahi = 8-22-19) 日韓外務次官協議、16・17 日に開催調整 マニラで 日韓両政府が 16 - 17 日に非公式の外務次官協議をフィリピンのマニラで開くことを調整している。 日韓政府筋が明らかにした。 元徴用工や輸出規制の問題などを話し合う方向で、今月下旬に北京で予定する日韓外相会談の地ならしをする狙いもある。 ただ、協議が実現するかは見通せない。 関係者によると、非公式協議には、外務省の秋葉剛男事務次官と韓国外交省の趙世暎(チョセヨン)・第 1 次官が出席する。 米国が、日韓関係の悪化がもたらす東アジアの安全保障体制への悪影響を憂慮していることを受け、日韓の外交当局は対話の機会を模索。 日韓で歴史問題に注目が集まる 15 日が終わった後、第三国で次官協議を行う方向で調整していた。 日本側は、文氏が植民地支配から解放された「光復節(15 日)」の式典でどんな演説をするかに注目する。 日本の世論の反発を招く内容になった場合、協議を延期する可能性もある。 (asahi = 8-14-19) 文大統領の発言、反日あおりすぎ? 韓国内でも批判の声 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の言葉が、国内外で波紋を呼んでいる。 豊臣秀吉の朝鮮半島侵略を挙げるなど日本にとっては刺激的だが、韓国では学校などで幼いころから学んできた「普通」の表現と受け取られることが多い。 ただ、発言に対する受け止め方が日韓で違うことから、関係悪化をさらに招きかねない状況だ。 文氏は 7 月 30 日、大統領の休養地の南部の島を訪れた際、「このあたりの海は壬辰倭乱で李舜臣将軍が緒戦で勝利を収めた場所だ」と語った。 壬辰倭乱は秀吉が朝鮮に出兵した文禄・慶長の役のこと。 文氏は、李将軍が考案して日本を撃退した亀甲船という名前を持つ食堂に行ったことも、側近が明らかにした。 8 月 7 日には、精密機器メーカーの工場を視察に訪れた際、「壬辰倭乱で日本が最も欲しがったのは陶工だった」と指摘。 文氏は日本の輸出規制を、韓国の未来の成長を妨げる意図があると批判しており、当時も今も日本は技術を狙っていると主張したようだ。 韓国の人々にとって、秀吉の侵略や李将軍は、幼いころから学校で学び、今でも身近な話。 文氏には「日本に勝つ」という分かりやすいイメージを国民に伝える意図があるようだ。 一方で一連の発言には野党を中心に、「反日」をあおりすぎだとの強い批判もある。 文氏の日本批判をめぐっては、2 日の臨時閣僚会議で行った「賊反荷杖」という四字熟語が日韓で問題になった。 泥棒が罪のない人にむちを振るうとの意だが、朝日新聞を含めて辞書にある「盗っ人たけだけしい」と訳したことで、日本側が無礼だと反発。 韓国側が無礼だと再び反論する悪循環に陥った。 ただ、実際には、盗っ人たけだけしいという日本語とは少しだけニュアンスが違い、過ちを犯した側が、むしろ過ちのない人を責めるといった意味があるという。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 8-13-19) 韓国への輸出、半導体材料の一部許可 規制強化から初 政府は 8 日、韓国向けの輸出手続きを厳しくした半導体材料 3 品目の一部について、輸出許可を出したと発表した。 7 月に規制強化を実施して以降で、初の輸出許可となる。 審査した結果、「軍事転用の恐れがない」と判断した。 輸出が認められたのは、半導体の基板に塗る感光材の「レジスト」。 国内の素材メーカーから申請が出ていた。 菅義偉官房長官は 8 日の閣議後会見で、「正当な取引については恣意的な運用をせず許可を出していることを示した。 輸出管理については、引き続き厳格な審査を行い、目的外使用がないよう厳正に対処していく。」と話した。 通常 90 日程度かかるとされる 3 品目の輸出手続きが、1 カ月余りで済んだが、政権幹部の 1 人は韓国への「配慮」は否定した。 一方、世耕弘成経済産業相は 8 日、3 品目以外でも「具体的な不適切事例が出てくれば、当該品目について個別許可の対象に追加することも含めて徹底的な再発防止策を講じる」と述べ、規制強化を広げる可能性を示唆した。 日本政府は 7 月 4 日からレジストに加え、半導体の洗浄に使う「フッ化水素」とテレビやスマートフォンのディスプレーパネルの製造に必要な「フッ化ポリイミド」の韓国向け輸出を、企業ごとに一定期間、包括的に許可する手法をやめ、契約ごとに個別審査して許可するかたちに変更。 輸出で「不適切な事案があった」ことを理由に挙げていた。 政府は 7 月の 3 品目の規制強化に続き、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国(輸出優遇国)」のリストから韓国を除外する政令を 8 月 7 日に公布した。 28 日に施行され、工作機械などの軍事転用が可能な製品や技術などの輸出には、1 件ごとに日本政府の個別審査が必要となる。 (asahi = 8-8-19) 「ホワイト国」除外、日本企業は影響注視 識者の見方は 韓国を「ホワイト国(輸出優遇国)」から外す輸出規制強化の「第 2 弾」が、28 日に発動されることが決まった。 日本政府は「日本企業に悪影響が出ることは基本的にない」としているが、韓国と取引関係の強い日本企業は今後の影響を注視している。 政府は、武器転用の恐れのある物品の輸出管理の国際的な枠組みに参加し、安全保障上信頼できると判断した国を、輸出優遇国に指定している。 これらの国向けの輸出には、最大 3 年間まとめて許可が取れる「包括許可」の優遇措置がある。 今は 27 カ国あり、ここから 28 日に韓国を外す。 武器に使われる懸念のある化学物質、炭素繊維などの先端素材、工作機械といった幅広い品目の輸出に原則、個別の許可が必要になる。 国内企業の手続きが煩雑になり、韓国企業にとっては日本からの輸入が滞りかねない。 管理がしっかりしている企業には優遇措置を与える仕組みもある。 食品と木材などをのぞくすべての輸出品を対象にした別の規制も、新たに受ける。 輸出先や用途に武器転用の懸念があると経済産業相が判断した場合、国内企業に輸出の許可を取るよう求めることができる。 政府は 7 月 4 日、韓国向けの輸出規制強化措置の「第 1 弾」として、「包括許可」の対象から半導体関連 3 品目を外した。 輸出契約 1 件ごとに政府の許可が必要になっている。 輸出優遇国からの除外は規制強化の「第 2 弾」となる。 経産省は 2 日から輸出管理区分を「ホワイト国」と「非ホワイト国」の二つから、「グループ A・B・C・D」の 4 区分に変えた。 ホワイト国はグループ A となり、韓国は 28 日にグループ B に「降格」される。 韓国企業と取引がある日本企業は 産業機械大手の安川電機(北九州市)は、韓国が輸出優遇国から外れれば韓国向けの出荷が 1 - 2 カ月遅れる可能性があると指摘する。 主力の産業用ロボットや制御機器の取引が減ることはないとみる一方、設備投資に慎重な企業が増えて受注が減ることを不安視しており、「状況を注視していく(広報)」という。 「第 2 弾」の対象になりうる炭素繊維を生産する化学最大手、三菱ケミカルホールディングスの伊達英文常務は 7 月下旬の決算会見で、「(韓国の需要家は)『心配している』と言っている」としつつ、まだ具体的なやりとりはしていないと説明した。 同じく炭素繊維を生産する繊維大手の帝人は、「炭素繊維はもともと戦略物資で厳格な審査を課されているので、現時点で大きな影響はない(園部芳久・取締役専務執行役員)」とみている。 一方、「第 1 弾」の対象になった半導体材料のフッ化水素を韓国に輸出する化学メーカーのステラケミファ(大阪市)は「個別許可のための手続きを進めている段階。 この 1 カ月は韓国向けの輸出はできておらず、売り上げも立っていない。 定められた手続きをすれば、輸出できるようになると考えている。」 半導体材料のレジストを生産する住友化学は「規制対象は全体の一部で、現段階では大きな影響はないと考えている。(佐々木啓吾執行役員)」 信越化学工業も売上高に占める韓国向けのレジストの割合がわずかなため、今年度の業績予想に影響を織り込んでいないが、「第 2 弾」の発動で影響が広がる恐れがあるとして、「対策を考え、顧客との連絡を密にする(同社幹部)」構えだ。 自社で扱うサーバーなどに使う半導体に韓国製が含まれる富士通は「半導体の供給が滞れば、多かれ少なかれ影響はある(磯部武司常務)」とみて、韓国以外からの調達を視野に検討している。 一般消費者向けの商品を扱うメーカーは日韓関係悪化の影響を懸念している。 主力のビール「スーパードライ」が韓国内で輸入ビールとして高いシェアを誇るアサヒグループホールディングスの勝木敦志常務は「(韓国の)一部の小売店が販売を控えている。 影響の程度を見守っている。」 韓国で 1 千店舗近くを展開し、売上高(2019 年 3 月期は 1,424 億円)の過半を韓国が占めるスポーツ用品大手のデサントは、関係悪化の「影響がないとは言えないが、具体的な数字を把握するのは難しい(広報)」としている。 吉崎達彦・双日総合研究所チーフエコノミスト 対韓輸出規制の強化は、外交にビジネスを絡ませて他国に圧力をかけるものだ。 自由貿易を志向し、国際社会に貿易ルールの多国間協調を呼びかけてきた日本がとるべき手段ではない。 国際社会からは日本の通商政策の転換点とみられ、「同じようなことを今後もやるのでは」という目で見られても仕方がない。 政府は、韓国人元徴用工問題への「対抗措置」を否定するが、現時点でそれが本当なのか判断できない。 理由にあげる「不適切な事案」が何か具体的に分からないからだ。 韓国の貿易管理に不満があるのなら、6 月の主要 20 カ国・地域首脳会議で安倍晋三首相が文在寅大統領に首脳会談で直接伝えるべきだった。 サムスン電子など韓国勢が得意とする半導体市場は、米中通商紛争の影響も重なって市況が悪化している。 日本のせいで、韓国製半導体の出荷が止まるようだと、部品供給網を通じて影響は世界に広がり、日本経済に跳ね返ってこないとも限らない。(聞き手・伊藤弘毅) 中央学院大の中川淳司教授(国際経済法) 韓国は「元徴用工問題の対抗措置」とするが、日本の一連の措置は、国内法に基づく輸出規制の運用見直しに過ぎない。 日本の企業からの韓国向け輸出に「不適切な事案」があったなら、日本が輸出管理の運用を改めるのは当然のことで、粛々と進めればいい。 韓国が日本の措置に問題があると考えるなら、世界貿易機関 (WTO) の紛争解決手続きに沿って日本に正式に二国間協議を要請すればいい。 韓国がまだ手続きに踏み込んでいないのは、争っても勝ち目がないと感じているからだろう。 その場合、日本は関税貿易一般協定 (GATT) 21 条が認める「安全保障のための例外」だと説明するだけだ。 安全保障上必要な措置かどうかは裁量が広く認められることになるだろう。 日本の立場は尊重されるだろう。 とはいえ、足元の対立激化は生産的ではない。 韓国が貿易管理の運用上の課題を改善するのが、関係回復の近道だ。(聞き手・金成隆一、asahi = 8-3-19) 経産相「日本企業に悪影響ない」 韓国のホワイト国除外 韓国向けの輸出規制をめぐり、安倍政権は 2 日午前の閣議で、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」のリストから韓国を外す政令改正を決めた。 韓国が除外方針の撤回を求め、米国が仲裁に乗り出す姿勢を示す中での、規制強化「第 2 弾」の発動決定となった。 日韓の対立は一段と深刻な事態に陥ることになる。 外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいてホワイト国を指定している政令を改正し、韓国を外した。 改正政令は 7 日に公布され、21 日間の準備期間を経て 28 日に実際に外れる。 ホワイト国は欧米諸国が中心で、韓国はアジア唯一の国で、2004 年に指定された。 指定された国が除外されるのは初めてで、これでホワイト国は 26 カ国となる。 世耕弘成経済産業相は閣議後の会見で「あくまでも韓国の輸出管理や運用が不十分なことを踏まえた運用見直しだ」とした上で、「もともと日韓関係に影響を与える意図はなく、何かへの対抗措置でもない」と述べた。 「韓国を他のアジア地域と同じ扱いに戻すだけ。 手続きや管理をしっかりやれば輸出できる。 日本企業に悪影響が出ることは基本的にない。」とも話した。 ホワイト国は、武器転用の恐れのある物品の輸出管理の国際的な枠組みに参加し、安全保障上信頼できると判断した国を、政府が指定している。 ホワイト国向けの輸出には、最大 3 年間まとめて許可が取れる「包括許可」の優遇措置がある。 政府は 7 月 4 日、韓国向けの輸出規制強化の「第 1 弾」として、半導体関連 3 品目を「包括許可」の対象から外した。 政府の個別の許可を必要にするようにして国内企業の手続きが煩雑になり、韓国企業にとっては日本からの輸入が滞る可能性が出ている。 ホワイト国から外れると、さらに武器転用の懸念がある化学物質、炭素繊維などの先端素材、工作機械といった幅広い品目の輸出に原則、個別の許可が必要になる。 ただ、非ホワイト国向けの輸出でも、管理がしっかりしている企業には優遇措置を与える仕組みもある。 また、食品と木材などをのぞくすべての輸出品を対象にした別の規制も新たに受ける。 輸出先や用途に武器転用の懸念があると経産相が判断した場合、輸出に許可を求めることができるようになる。 ある経産省幹部は「ホワイト国からの除外は、(規制)品目拡大の第一歩だ」とし、「第 3 弾」に当たる輸出規制のさらなる強化を示唆する。 半導体が主力輸出品の韓国は、ホワイト国からの除外で日本からの輸入が滞り、さらに産業への影響が広がるとみている。 一連の措置を韓国人元徴用工の損害賠償問題への「対抗措置」ととらえ、日本に撤回を求めているほか、世界貿易機関 (WTO) への提訴を視野に、国際社会に不当性を訴える姿勢を強めている。 だが、日本は一連の措置は、あくまでも国内の輸出管理制度の適切な運用に必要な見直しだとし、「自由貿易の原則に反するものではない(世耕氏)」と主張。 双方の議論は平行線をたどっている。 米国は日韓の仲裁に乗り出す姿勢を示している。 米政府関係者によると、安倍政権にはホワイト国から外す閣議決定をしないよう求めていた。 2 日夜にはバンコクで、河野太郎外相、韓国の康京和外相、ポンペオ米国務長官による日米韓の外相会談が開かれる予定だ。 (伊藤弘毅、久保智、asahi = 8-2-19) 米が日韓仲裁へ 日本に輸出規制第 2 弾の回避を要請 日本による対韓輸出規制や、元徴用工訴訟の判決などをめぐって対立が激化している日本と韓国に対し、トランプ米政権が事態の悪化を避けるため、自制案を示したことが朝日新聞の取材でわかった。 日本には輸出規制強化第 2 弾を進めないこと、韓国には差し押さえた日本企業の資産を売却しないことをそれぞれ求め、3 カ国で輸出規制に関する協議の枠組みをつくることも検討しているという。 朝日新聞の取材に応じた米政府関係者が明らかにした。 関係者によると、日本が半導体材料の輸出規制措置に続いて、安全保障上の問題がないとして輸出手続きを簡略化する「ホワイト国」リストから韓国を外そうとする動きをトランプ政権は憂慮し、排除を決める閣議決定を行わないよう安倍政権に求めたという。 一方、トランプ政権は韓国に対しては、韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた問題について、原告が差し押さえた韓国内の日本企業の資産を現金化することをとどまるように要請。 さらに日韓両国に対し、日米韓で輸出規制に関して協議する枠組みをつくり、問題解決に向けて協議することを提案したという。 米国には、アジア太平洋地域における重要な同盟国である日韓の対立激化は、同地域における国益に悪影響を与えかねないという懸念がある。 トランプ大統領は 19 日、記者団に対し、安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の「双方が望むのであれば、私は関与するだろう」と述べ、両国の関係改善に向けて何らかの手を打つ可能性を示唆した。 ポンペオ国務長官も 30 日、東南アジア諸国連合 (ASEAN) 地域フォーラム (ARF) に出席するため、バンコクに向かう機中で、記者団に、日米韓の外相会談を開くことを明らかにした上で「日韓が前進する道を見つけられるよう後押しする。 両国はともに我々の偉大なパートナーだ。」と述べた。 日韓関係の改善に向けて仲介役を果たす考えを明らかにした。 (ワシントン = 土佐茂生) 菅長官「事実ない」 菅義偉官房長官は 31 日午前の記者会見で、米国による仲介案提案の有無を問われ、「ご指摘のような事実はない。 引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていく考えに変わりはない。」と否定した。 米国に対しては「今後とも我が国の立場に対して、正しい理解が得られるよう努めていきたい」と述べた。 (asahi = 7-31-19) 薩長同盟と高杉晋作例に「対話を」 匿名取材に韓国高官 対韓輸出規制や元徴用工訴訟の判決などをめぐって悪化する対日関係について、韓国政府の高官が 17 日、韓国に駐在する国外メディアの取材に応じ、対立を乗り越えて明治維新に貢献した薩摩藩と長州藩の同盟を引きながら、日本政府に対話を呼びかけた。 高官は匿名を条件にした取材で、日本などの国外メディアに韓国政府の立場を説明。 「長州と薩摩が 19 世紀に成し遂げたように」などと述べ、日本側に問題解決への協力を求めた。 また、幕末に長州の志士として活躍した高杉晋作の名前を挙げ、安倍晋三首相と父親の安倍晋太郎・元外相が同じ「晋」の字を持っていると指摘。 高杉らが生きていれば「両国に未来志向の関係が必要だとの私の考えに同意するだろう」と語った。 元首相の中曽根康弘氏や福田康夫氏が日韓関係の発展に貢献したとして、「彼らも私に共感するだろう」とも述べた。 このほか、日本が輸出規制の対象とした半導体などの素材を念頭に、「科学とテクノロジーは戦争の道具ではない」とし、「世界が驚いたソニーの『ウォークマン』を生み出したような創造力が、政府による行動で失われてはいけない」と訴えた。 さらに、日本の規制がもたらす世界経済への影響も主張した。 半導体は、韓国の輸出全体の約 25% を占めるとし、規制によって生産が滞った場合、影響はアップルやアマゾン、デルやソニーといった多国籍企業や、世界の何十億人もの消費者に及ぶとした。 そのうえで、中国を含む東アジアでは、液化天然ガス (LNG) を共同で購入してコストを下げたり、域内を網羅する電力網を築いたりするなど、「協力できることは多い。 限りない潜在力がある。」と指摘。 「新たな令和時代に合わせ、未来志向の関係を築くために、日本と建設的な対話を通して問題が解決できると信じる」と語った。 一方で、日本の輸出規制は世界貿易機関 (WTO) の原則に反していると指摘。 日本が自ら 6 月末の主要 20 カ国・地域首脳会議(G20 サミット)で訴えた自由貿易を守る約束に照らし、「輸出規制を速やかに撤回することを求める」と述べた。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 7-17-19) ◇ ◇ ◇ 韓国向け輸出規制 「賛成」が 80% 越え、その理由は? - - アンケート結果発表 政府は 7 月 4 日から、韓国への輸出規制強化策を発動。 半導体の材料 3 品目を対象に、輸出手続きを厳密にした。 当初、この輸出規制の背景には元徴用工問題があると報じられたが、日本側は「韓国側に輸出管理を巡る不適切な事案もあった」と "安全保障上の脅威" を指摘している。 一方、韓国側は「グローバルな供給網を混乱させる」と反発。 この問題で米国の取り込みに向けた動きを見せるなど、日韓関係の緊張がますます高まっている。 そこで文春オンラインでは「韓国への輸出規制強化に賛成ですか? 反対ですか?」という緊急アンケートを実施。 7 月 5 日から 10 日の 6 日間で 964 の回答があり、10 代 - 80 代、幅広い年齢層の男女から意見が集まった。 早速回答を見ていこう。 ◆◆◆ 結果は、964 票中、「賛成」が 784 票 (81.3%)、「反対」が 180 票 (18.7%) と今回の措置に納得している人が圧倒的に多かった。 「少しの歩み寄りも見せない文在寅政権にはこれしかない」 では「賛成」した人たちの理由を紹介していく。 まずは韓国の最近の反日的な政策への強い対応を求める声。 「アジアの中で今まで特別待遇だった『友好国』だったのに、韓国のほうが危険な行動ばかりで友好に水を差したのだから当然の措置(59・女)」 文在寅大統領の名を挙げ批判する声も。 「文政権が反日的な行動を繰り返しているためやむをえない(37・男)」 また徴用工問題についても多数の意見が寄せられた。 「徴用工問題について、日本とまともに話し合いをしようとしない韓国政府に対して、今回の措置は揺さぶりをかける一つの選択肢(59・男)」 そして政府が指摘する「韓国の輸出管理の緩さ」を疑問視する意見も多かった。 「輸出した素材が全量韓国で使われているか怪しく、実際は北朝鮮やイランに流れているのでは(70・男)」 「半導体の材料メーカーが不利益を被る」 一方、少数派となった「反対」の理由も見ていく。 まずは両国間の関係のさらなる悪化を心配する声から。 「報復の連鎖で泥沼になるのでは(59・男)」 そして韓国へ半導体材料を輸出している日本企業への影響を懸念する声も。 「中国が日本へレアメタルの輸出禁止をした時の様に、韓国は別の国から輸入するのでは。 そうなると日本国内メーカーも悪影響を受ける。(47・女)」 また自由貿易という観点からの反対意見も。 「G20 で自由貿易を訴えていた議長国がやることとは思えない(51・男)」 日韓当局の事務レベルが 12 日、この問題で接触したものの、菅義偉官房長官は「あくまでも事実関係を確認したもの。 協議ではない」と説明。 今後日本からの輸出規制がさらに強化される可能性もある。 (週刊文春 = 7-13-19) (* アンケート募集時、一部 "禁輸措置" という表現を使用していましたが、現状を鑑みて「輸出規制強化」にしました) ◇ ◇ ◇ サムスン電子、SK ハイニックスの半導体工場が今月末にも停止か 半導体メーカーであるサムスン電子や SK ハイニックスの CEO が「日本による輸出規制を解かなければ今月末から工場の稼働が中断する可能性がある」と述べました。 また韓国の政府関係者も「一部の半導体メーカーはエッチングガスなどいくつかの素材の在庫が 2 - 4 週間分しか在庫がなく、それにより早ければ今月末にも工場が止まるだろう」と発言しています。 韓国の半導体メーカーは素材供給の多角化に奔走しているが、短期的に供給不足の事態を避けることはできないようです。 エッチングガスは毒性が強く変質する恐れがあり、在庫の積み増しが難しく 2 - 4 週間分しか在庫を置いておけない為です。 昨年 3 月にサムスン電子の半導体工場で起きた 30 分間の停電で 40 - 50 億円の損失が生じました。 今回の輸出規制が本格化すると DRAM、NAND 型フラッシュ、モバイルアプリケーションプロセッサ (AP) など主要な半導体製品の生産に全面的な支障が生じ、昨年の停電の影響を遙かに上回る被害が生じる可能性があります。 朴・ジェグン漢陽教授によると「サムスン電子の工場が止まれば、Apple やクアルコムなどの既存顧客が台湾の TSMC などの競合他社に乗り換えてしまうだろう。 政府は前向きに日本との問題解決に乗り出すべきだ。」と指摘しました。 一方、韓国政府は日本の輸出規制に対して、大きな打撃を受けるアメリカ企業 (Google、Apple、Amazon) と中国企業(シャオミ、OPPO)と共に規制解除を迫る考えを表明しています。 (カミアプ = 7-6-19) ◇ ◇ ◇ スマホ画面素材など韓国へ輸出規制 徴用工問題で対抗か 政府は 1 日、韓国への半導体製造などに使われる化学製品 3 品目の輸出管理を 4 日から強化すると発表した。 8 月 1 日をめどに韓国を輸出許可手続きが免除される対象国からも外す。 スマートフォン(スマホ)などの電子機器や半導体製造が盛んな韓国にとって日本からの 3 品目の輸入が制限される打撃は大きそうだ。 韓国人元徴用工らへの損害賠償判決問題への事実上の対抗措置となる。 輸出管理を強めるのは、スマホのディスプレーに使われるフッ化ポリイミド、半導体基板に塗る感光材のレジスト、半導体洗浄に使うフッ化水素の 3 品目。 いずれも日本が世界シェアの大半を占める。 軍用品に使えるため、政府が外為法に基づいて輸出を管理している。 韓国向けの場合は政府への輸出許可申請を免除していたが、この優遇措置を受けられる「ホワイト国」から除外する。 こうした措置を取る理由について、経済産業省の担当者は「(元徴用工問題の)対抗措置ではない」と説明する一方、「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」ためとした。 政府関係者によると、輸出が規制される 3 品目は、国内の中小企業の生産に影響が少なく、韓国経済に打撃を与えやすい品目を選んだという。 ホワイト国からの除外手続きとして、7 月 1 日から約 1 カ月間、パブリックコメントを実施する。 8 月 1 日をめどに韓国をホワイト国から外す方針だ。 (西山明宏、asahi = 7-1-19)
韓国で日本語学ぶ生徒増加 マリオや仮面ライダーに憧れ 韓国・ソウルの日本大使館・公報文化院で 22 日、全国高校生日本語スピーチ大会が開かれ、地方予選を勝ち抜いた高校生 25 人が日本の文化や自らの夢について熱く語った。 韓国の教育関係者によると、日韓関係の悪化にもかかわらず、韓国の高校ではここ数年、第 2 外国語で日本語を選択する生徒が増加傾向にあるという。 忠清南道の牙山高校 2 年生、金ハビンさん (18) は、「マリオの生みの親」として知られる宮本茂さんら 3 人の日本人のゲーム開発者について語り、「諦めない精神を見習いたい」と締めくくった。 日本語に関心を持ったのは 9 歳の時に「仮面ライダー」を見たことがきっかけ。将来は日本で就職し、ゲームクリエーターとして活躍したいという。 仁川市の新ヒョン高校 2 年生の金志英さん (17) は昨年夏、自宅に福岡大付属若葉高校の女子生徒がホームステイした思い出を語った。 最初はどんな話をしたらいいのかと心配していたが、互いに言葉を教えあいながら、自然と仲良くなったという。 「今まで成績のことばかりを考えていたが、もっと広い世界に目覚めた。」 将来は貿易会社での就職を目指している。 大会は 2012 年以降、日本語学習の成果を試す場として大使館と韓国日本語教育研究会などが共催し、今回で 8 回目。 審査委員を務めた金p嬪・同会学術部長は「日本語は一時期中国語におされていたが、数年前から再び人気が高まっている。 両国の外交関係が悪化しても、高校生の多くはアニメやゲームなどを通じて日本に好感を持ち、日本での就職をめざす生徒も増えている」と話した。 (ソウル = 武田肇、asahi = 6-23-19) 日本に「良い印象」韓国で 13 年以来最高 一方日本は … 日韓が互いの国に「良い印象」を抱く割合は、韓国では過去最高なのに日本では過去最低 - -。 2013 年から両国の民間機関が毎年実施してきた世論調査の結果から、そんな認識の違いが明らかになった。 徴用工問題や往来者数の増加が影響しているようだ。 日本の NPO 法人「言論 NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が 12 日、都内で記者会見して、調査結果を発表した。 5 月中旬 - 6 月初旬に調査を実施し、約 1 千人ずつ回答を得たという。 日本で韓国の印象が「良い」と答えた人は過去最低の 20.0%。 最も高かったのは 13 年の 31.1% だった。 一方、韓国では過去最高の 31.7% が日本の印象が「良い」と回答。 13 年の 12.2% が最低値だった。 相手にマイナスの印象を抱く理由は、日本では「歴史問題などで日本を批判し続けるから」が 52.1% で最多。 「韓国人の言動が感情的で激しいから」も 24.8% だった。 韓国も 76.1% が「(日本が)侵略の歴史を反省していないから」を挙げた。 元徴用工への賠償を命じた韓国大法院の判決について、韓国では 75.5% が「評価」、日本では 58.7% が「評価しない」とし、問題解決に向け韓国の 6 割近くが「日本企業が賠償すべきだ」と回答したが、日本では同様の考えは 1.2% に過ぎなかった。 歴史問題が大きく影響している一方、昨年は互いの年間往来者数が 1 千万人を超えており、言論 NPO の工藤泰志代表は「韓国では交流の深化が対日感情の悪化を吸収できた。 政治問題のクッション役を果たす交流を両国ともに進めていくべきだ。」と話した。 (清水大輔、asahi = 6-12-19) 第 3 次韓流ブーム、なぜハマる? 今までなかった新潮流 ![]() 歴史問題をめぐる確執などで冷え込みが目立つ日韓。 でも、政治の世界を離れると、実は熱い現象が起きています。 日本から韓国を訪れる月別の旅行客数は 3 月に過去最高を更新。 後押ししているのが、「第 3 次韓流ブーム」です。 世界で大人気の 7 人組男性グループ「BTS (防弾少年団)」などが火付け役となったこの新しいブーム。 たどっていくと、これまで見られなかった意外な側面が見えてきます。 日本のアイドルが参加 「私自身、2 度目のデビューです。」 1 月 20 日、東京都文京区にある東京ドームシティホール。 約 2 千人の観客を前にあいさつしたのは、宮脇咲良(さくら)さん。 人気アイドルグループ、HKT48 のメンバーです。 宮脇さんと同じく HKT の矢吹奈子さん、AKB48 の本田仁美さんは昨秋、韓国の女性グループ「IZ*ONE (アイズワン)」のメンバーとしてアルバムデビューを果たしました。 ほかに 9 人の韓国人からなるグループで、配信チャートでは世界 10 カ国で 1 位を獲得。 そして、今年 2 月には秋元康氏プロデュースによるシングル「好きと言わせたい」で日本での「凱旋」デビューを果たしたのです。 宮脇さんがあいさつしたのはその発売前イベントでのことでした。 アイズワンは韓国のオーディション番組を通じて結成されたグループです。 350 人以上いる国内の AKB グループからも 39 人がオーディションに挑みました。 厳しい競争を勝ち抜いたのがデビューを果たした 3 人だったのです。 それにしても、なぜ韓国のグループに日本のアイドルが参加することになったのでしょうか。 日本に最初に韓流ブームが訪れたのはドラマ「冬のソナタ」がブレークした 2003 年ごろです。 このときのブームは主に中高年層が支えたといわれています。 「少女時代」や「KARA」が人気を博した 10 年前後の第 2 次韓流ブームでは若い世代にも受け入れられるようになります。 コリアンタウンがある東京・新大久保はグッズなどを買い求める若者でごった返しました。 しかし、12 年に李明博(イミョンバク)大統領(当時)による竹島上陸などで日韓関係が極度に悪化すると、ブームはしぼみます。 それがここ数年で V 字回復を見せ、第 3 次ブームにいたるのです。 「ウィンウィン」の関係 そこまでブームが拡大した要因については昨年、米国のビルボード総合アルバムチャートで 1 位を達成した BTS の存在抜きには語れません。 圧倒的なパフォーマンス力で先月から今月初めにかけてはブラジルやイギリスでもライブを成功させ、話題となりました。 ただ、日本人を引きつける第 3 次ブームの陰にはもう一つの存在があるのです。それが「日本人」です。 2015 年に韓国デビューした「TWICE」は女性メンバー 9 人のうち、3 人が日本人です。 韓国の音楽、ドラマ、ゲームなどの普及をサポートするために設立された「韓国コンテンツ振興院」日本ビジネスセンター(東京)の黄仙惠(ファンソンヘ)センター長によると、TWICE は「小学生から中学生くらいの世代にとって、大人になりたいと思った時に、少し背伸びしてまねしたいと思える存在。」 優れたパフォーマンス力を備えながら、あこがれだけでなく親しみがもてる存在ということでしょうか。 そんな人気グループの中で日本人が活躍しているのです。 その成功が刺激になったのか、その後も日本人が加わるグループのデビューが続きました。 昨年は「NATURE (ネイチャー)」や「公園少女」、今年に入ると「Cherry Bullet (チェリーバレット)」も登場しました。 韓国発のブームから、「日韓共闘」での新潮流へ。 第 3 次韓流ブームにはそんな特徴が見いだせそうです。 同時にそれは日本と韓国にとって「ウィンウィン」の関係でもあるようです。 「素敵な歌」調べたら K-POP アイドル文化に詳しい朝日新聞社会部の小松隆次郎記者 (40) は「日韓共闘」のメリットを次のように解説します。 「韓国人だけのグループだと、どうしても言葉の問題があって日本のファンに届ききらないことがある。 日本のアイドル業界も飽和気味のところがあり、新たな市場を探し求めていた。 日本人にとっても親しみやすい日本人のいるユニットは日韓双方の業界、ファンにとって魅力的だったのだと思います。」 韓国コンテンツ振興院の黄さんはこうも話します。 「特に 2000 年以降に生まれた、デジタルネイティブ族とも言える日本の若い世代は、冬のソナタなど、様々なコンテンツを通じて韓国文化に接してきました。 いいものはいいという価値観もあって韓国への違和感があまりないのです。」 K-POP にはまる、というより、「素敵な歌だな」と思って、調べてみたらそれが K-POP だった、そしてその良さを素直に受け入れられる、ということでしょうか。 「日韓ユニットは、特別ではないと思います。 ヨーロッパや、北米などでは、国籍がそれほど大事ではありませんし、目指している音楽性が合えば、それが一番大事だと思います。 日本と韓国、それぞれの文化趣向は似ているし、普遍性やものに対する考え方、そして文化意識など共有、共存できる関係だと思います。」 今後も訪れるであろう、第 4 次、第 5 次ブームの波の中で日韓は果たして、どんな関係を形作ってゆくのでしょうか。 (清水大輔、asahi = 6-6-19) |