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「韓国は偏狭で無責任な国家」 在韓ロシア人学者が辛辣批判の理由

「韓国は偏狭で国際的な責任感に欠ける国だ。」 - - もし日本からこんな韓国批判が表明されたら、韓国側は猛反発し一切を否定するだろう。 だがこの評価は、韓国に長年住み大学で教えるロシア人の学者が、米国の雑誌に最近発表した論考の主旨である。 韓国に住むロシア人学者は、なぜそう考えるのか。 韓国についての客観的な考察として一聴に値するだろう。

韓国の国際的な活動は断片的で「見せかけ」が多い

この論考は米国の首都ワシントンで発行される外交専門誌「ナショナル・インタレスト (The National Interest)」の最新号(7 月末刊行)に掲載された。 「韓国・中級国家へ発展中?」と題され、筆者はソウルにある国民大学のアンドレイ・ランコフ教授だった。 ランコフ氏は旧ソ連生まれのロシア人である。 レニングラード国立大学卒、朝鮮半島を専門に研究し、1980 年代に北朝鮮の金日成総合大学にも留学した。 90 年代から韓国を訪れ、オーストラリア国立大学に所属した後、2004 年からソウルの国民大学で教えている。 北朝鮮、韓国の両方に詳しい専門家として、ロシア語や英語、朝鮮語での著作も多い。

そのランコフ氏が、韓国について率直な批判とも呼べる論文を米国の雑誌に発表した。 論文の冒頭には、総括として「韓国はいまや中級国家に必要な資産や手段を有するかもしれないが、韓国社会はグローバルな視野や責任感に欠けている」と記されていた。 ランコフ氏がナショナル・インタレストに寄せた論考の要旨は以下のとおりである。

  • 韓国民の多くは自国を中級国家、あるいはそれを越える存在だとみなすようになってきた。 中級国家という言葉の定義は曖昧だが、とくに最近、文在寅政権を支持する左傾の国民の間では、国内でベストセラーとなった『追い越しの時代』という本に象徴されるように、自国が成功し大国の水準に近づいてきたとする「勝利の意識」が強くなったようだ。
  • 韓国は確かに国内総生産 (GDP) ではロシアに近く、軍事力でも国際的に高い地位にあるので、中級国家と呼べるだろう。 だが国としては、きわめて偏狭な中級国家である。 なぜなら、まず自国から遠く離れた地域の出来事には関心を持たず、また、自国の周辺であっても直接的な利害関係がない問題に対しては責任感をみせようとしないからだ。
  • 韓国はオーストラリア、スウェーデンという他の中級国家とは異なり、周辺の国家との友好関係がない。 その現状は、韓国の国としてのあり方に多分に原因がある。 民主主義の隣人である日本、台湾とも距離があり、とくに過去の植民地統治に起因するとされる日本との際限のない争いは、外部から見るよりもはるかに感情的で激烈である。
  • 韓国は中国に対しては、貿易量の増大などから一時は愛憎相半ばする態度をとってきたが、ここ数年は敵対的な傾向が増している。 ロシアには、敵対でも友好でもない冷淡な態度を保っている。 唯一の同盟国である米国との特別な関係は韓国民の多数に支持されているが、要するに韓国にとって、自国の周辺には、堅実な絆で結ばれた頼れる相手はまったくいないということだ。
  • それでも韓国は、国際的な活動とみなされる動きをとることもある。 だが、そうした動きのほとんどは断片的で、見せかけだけだったりシンボリックにすぎない場合が多い。 実際には韓国政府の対外活動への財政支出は少なく、有権者や納税者が、自国に直接的に利益をもたらす課題以外に国の財源を回すことに難色を示す傾向が明白である。

グローバルな視野と責任感に欠ける

ランコフ氏は、以上のように韓国の国際社会に対する姿勢や距離の取り方を俯瞰しながら、韓国社会や国民に批判的な光をあてていた。 さらにランコフ氏は以下のようにも述べる。

  • 韓国の社会には偏狭な視野と価値観が深く浸透している。 その一例は、外国からの難民や移民の受け入れに対して激しい難色を示す傾向である。 現在、韓国には合計 250 万人の外国人が居住しているとされるが、韓国人一般はその種の外国人をやがては去っていく暫定的な労働力としかみていない。
  • 韓国人の多くは外来者に対して、高度の教育や技能を持つ人間でも、同じ朝鮮民族以外はやがては韓国を離れていく存在とみなしている。 東南アジアなどの開発途上国からの出稼ぎ的な外国人労働者は、韓国社会に同化させようとはしない。 単純労働だけに関与して短期で去ることを期待している。 韓国の出生率の低下や高齢化を考えると、この種の外国人忌避は非現実的である。 しかし、その根は深く、変わりそうにない。

ランコフ氏は以上のような考察を記したうえで、結論として、韓国の国家、社会、国民の 3 つのレベルを通じて「グローバルな視野と責任感に欠ける」と断じていた。 きわめて手厳しい韓国批判と言えそうだが、ランコフ氏は韓国と 30 年ほど関わりがあり、韓国に住み大学で教えてきた期間も 20 年近い。 こうした実績のある外国人学者の分析には一定の重みがあると言わざるを得ないだろう。 (古森 義久 : 産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授、JB Press = 8-11-21)


韓国慰安婦訴訟、日本政府に賠償命令 ソウル中央地裁

旧日本軍の慰安婦だった韓国人女性ら 12 人が日本政府に対し、1 人当たり 1 億ウォン(約 1 千万円)の慰謝料を求めた訴訟の判決が 8 日、ソウル中央地裁で言い渡された。 地裁は原告の訴え通り、日本政府に 1 人あたり 1 億ウォンの慰謝料を支払うよう命じた。 地裁は判決で、「被告により計画的、組織的に行われた犯罪行為だと判断できる」とした。 元慰安婦らが日本政府を相手取った損害賠償請求訴訟で、韓国の司法が判断を示すのは初めて。元徴用工への賠償を日本企業に命じた 2018 年の韓国大法院(最高裁)判決に続き、日本政府の賠償責任を認めた韓国の司法判断は、悪化している日韓関係の改善をさらに難しくすることになりそうだ。

日本外務省の秋葉剛男事務次官は 8 日午前、韓国の南官杓(ナムグァンピョ)駐日大使を呼び、「極めて遺憾であり、日本政府として判決は断じて受け入れられない」と抗議した。 判決後、元慰安婦の支援団体「正義記憶連帯(正義連)」の李娜栄(イナヨン)理事長は記者団に対し、「国際人権法の人権尊重原則を進んで確認した先駆的な判決だ。 日本政府は、歴史的な事実を歪曲し、『日本軍慰安婦』の被害自体を否定してきた。 速やかに、判決に従い、賠償しなければならない。」と述べた。

原告は、元慰安婦が共同生活を送る「ナヌムの家(韓国京畿道)」に暮らす女性ら。 13 年に地裁に民事調停を申し立てたが、日本政府が応じず、16 年に提訴した。 日本政府は、賠償問題は 1965 年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だ。 原告の訴えには、国家に対しては他国の裁判権が及ばないとする国際法上の原則「主権免除」などを理由に、訴状の受け取りを拒否していた。 地裁は昨年になって、裁判所に掲示することで被告に訴状が届いたとみなす「公示送達」の手続きを取り、審理を進めた。 判決で「主権免除は適用されない」とし、韓国の裁判所が裁判権を行使できるとの判断を示した。

日本政府は裁判を認めず、法廷に一度も出席しなかった。 「予期せぬ結果が出ても、基本的な立場は変わらない(日本政府関係者)」との方針で、控訴しない場合は判決が確定する。 その場合、日本政府は賠償に応じず、韓国内にある日本政府の資産が差し押さえられる事態も想定される。 裁判では、主権免除の適否に注目が集まった。  欧州では、戦争や統治で生じた被害への賠償をめぐり、裁判所が国家の主権免除を認めなかった判例もある。 第 2 次大戦末期にナチスドイツに強制労働を強いられたとするイタリア人男性が独政府に損害賠償を求めた訴訟で、04 年にイタリア最高裁は「訴えられた行為が国際犯罪である場合には、主権免除は適用されない」と判断。 独政府の主張を退け、賠償を命じた。

ただ、この判決をめぐっては 12 年に、国際司法裁判所 (ICJ) が「当時のナチスドイツの行為は国際法上の犯罪だが、主権免除がはく奪されることはない」と判断。 イタリア最高裁の判決は誤りと結論付けた。 韓国や日本には、ICJ 判決は武力紛争下で起きた人権侵害に限定した判断で、元慰安婦らが連れて行かれた当時の朝鮮半島は紛争地ではなかったと主張する法律専門家もいる。 今回の判決では、ICJ 判決について触れつつ、日本政府の主権免除について「当時は日本が不法占領中であった朝鮮半島内で原告に対して行われたことで、適用はできない」と認定した。

判決後、原告の弁護士は記者団に「感無量だ。 イタリアの事例があり、十分に(勝訴の)可能性があると見ていた。」と評価した。 同地裁では 13 日にも、元慰安婦 20 人が、日本政府に賠償を求めた訴訟の判決が予定されている。 慰安婦問題をめぐっては、日韓両政府が 15 年に「最終的かつ不可逆的」な解決をうたう合意をしたが、17 年に発足した文在寅(ムンジェイン)政権が前政権の業績を否定したことで空文化している。 (ソウル = 鈴木拓也、asahi = 1-8-21)

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