天安門の楼上に見た「世界の分断」 もう一つの「極」、うかがう中国

10 年前の 9 月 3 日。 中国軍のパレードを見下ろす天安門の楼上で、正装の「中山服」姿の習近平(シーチンピン)国家主席のそばに立ったのは、ロシアのプーチン大統領と韓国の朴槿恵(パククネ)大統領(当時)だった。 そして今年。 習氏の両脇に、プーチン氏と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記が連れ添って天安門に上った。 顔ぶれが1人変わっただけだが、その意味の違いは大きい。 ロシアは武力で隣国ウクライナを侵略し、北朝鮮はロシアに兵士と弾薬を送って支えた。 国連憲章に背く戦争を続ける 2 人を、習氏が主賓として特別にもてなす光景は、法に基づく国際秩序と対極にある「枢軸」のようにも映る。

「世界の分断を象徴しているような式典だった。」

慶応大学の細谷雄一教授(国際政治)は、今回の式典をこうみる。 「10 年前は、イタリアやフランスの外相、国連事務総長も出席し、経済的にも中国は重要なパートナーとして国際社会に統合されていた。」 しかし今回、西側諸国からの参加がほとんどなく、この間、中国と欧米との関係改善が進まず、グローバルサウス(新興・途上国)や権威主義的傾向の強い国との関係を強め、分断が広まった。 習氏、プーチン氏、金氏の 3 人を結束させているものは何か。 最も際立っているのが、「米国への抵抗の結束」だろう。 3 カ国とも米国や西側の国際社会から経済制裁や輸出規制を受けており、そろって抵抗している。

また、いずれも米国を中心に戦後築いてきた自由や民主主義といった国際秩序に反発し、自分たちに有利となる新たな秩序に上書きしようという野心を隠さない。 さらに 3 人とも、トランプ米大統領との「交渉」を控えている。 米国にとって頭痛の種である 3 カ国が強い結束を維持しているように見せることで、米国の交渉戦術を複雑にし、自らに有利になるよう図っているようにも見える。

3 人の関係、対等とは言えない

ただ、3 人の立場や力関係が対等かと言えば、そうではない。 米欧から石油の禁輸措置を受けているロシアは、中国に多くの石油や天然ガスを買ってもらっている。 国際社会における中国の支持は欠かせない。 かつての中ロ関係は、ロシアが兄貴分だった。 しかし、経済規模は約 9 倍にまで開いており、国力でいえば中国にとってロシアは「ジュニアパートナー」のような存在だ。

北朝鮮は、ロシアと事実上の軍事同盟関係を結び、新たな後ろ盾をみつけた。 それでも対外貿易の 90% 以上を中国に頼っており、ロシアと比べものにならないほど中国依存が高い。 トランプ氏は年内にも金氏との首脳会談に意欲を示しており、世界でほぼ唯一、米国に対して引き下がらない中国との良い関係を保っておきたい。 その一方の中国。 本来の立場は圧倒的に強いが、ロシア、北朝鮮とは、陰に陽に支援して良好な関係を保ち、中国に有利になるようかじ取りしようとしている。

プーチン氏は訪中にあたり、中国共産党が自らの正統性として掲げる「80 年前の抗日・反ファシズム戦争への勝利」のスローガンをなぞるように唱え、習氏の威信を高める演出をしてみせた。 さらに細谷氏は、台湾有事も見すえる。 国連安保理が中国への制裁を審議しても、「(拒否権を持つロシアの)プーチン氏が中国を支持するとの計算がある。」

中国を軸に強まる結束

中ロ朝は同床異夢だが、それぞれの利益のために、中国を中心に都合良く結びついている。 日本や米欧から見ると、こうした陣営につく国は少ないと思うかもしれない。 しかし、東京大の佐橋亮教授(国際政治)は「甘く見ない方がいい」という。 中ロは上海協力機構 (SCO) や新興国グループ「BRICS」の拡大にも力を入れており、米欧を中心とした国際秩序とは異なる中国を軸にしたグループの結束を強めている。 それが、今回の天安門で垣間見えた。 中国は、米国の「影響力の空白」をうまくつき、米国は信じられるのかという迷いをうまくついていると佐橋氏は語る。

戦後、米国を中心に築いてきた自由貿易や多国間主義といった価値観を、いま米国自らが壊している。 トランプ大統領が各国を高関税で脅し、米国に都合のいいディール(取引)を強要するなかで、中国は「責任ある大国として自由貿易を守る」、「国連を中心とした秩序が重要」と主張している。 かねて知的財産権の侵害や人権、海洋進出などで批判を浴びた中国の言葉が、説得力をもって響くのは皮肉なことだ。 戦後は、米国を中心とした国際秩序が築かれ、ソ連が崩壊した冷戦の終結によって、米国の「一極化」が定まったように見えた。

しかし、オバマ政権で欧州政策の大統領特別補佐官を務めたジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン教授は、こういう。 「世界はいま、多極化の世界へと向かっている。 それは、自由主義的なルールに基づく秩序は一つの形態に過ぎないという世界だ。」 米国が自国第一主義を掲げ、世界で「影響力の空白」が生じるなか、中国はもう一つの「極」をつくる機会をうかがい続けている。 (集委員・奥寺淳、asahi = 9-3-35)


「血の海」の中国 EV 市場にまた新規参入、勝算はどこに? - 中国メディア

中国の自動車産業

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中国、社会保険料の回避が違法に 雇用と中小企業を直撃

[北京] 中国政府は長年約束してきた福祉制度改革のリスクに向き合わざるを得なくなった。 最高人民法院(最高裁)が企業と従業員が社会保険料の支払いを回避することを違法とすると判決し、雇用や中小企業の存続を巡る懸念が高まっているからだ。 アナリストやある政府顧問によると、この判決は高齢化が進む地域で枯渇しつつある年金基金を補充し、より手厚い福祉制度の基盤を築くことを目的としており、中国が債務依存型のインフラ・産業投資から消費者需要主導型の成長モデルに移行する流れを促すだろうという。

最高人民法院は今月、社会保険料の徴収が常に義務付けられていたとしつつ取り締まりが不十分だったと認めた。 労働者が工場、建設業、宅配業、飲食店やその他の中小企業と非公式に合意し、現金を手元に残すために社会保険料を支払わないことが多い。 一部の工場は今年になって米関税引き上げで打撃を受けたため、社会保険、失業保険、医療保険やその他の保険料を支払わなくて済むように、正社員を解雇し日雇い労働者として雇用し直した。

アナリストらによると、今回の判決は 9 月 1 日に施行され、中国政府が世界第 2 位の経済大国である自国のセーフティーネットを強化するという長年の公約実現に近づく一方で、企業や労働者の可処分所得が減れば経済成長に差し迫ったリスクをもたらすため、政府のより広範な改革意欲に対して困難な厳しい試練を引き起こすという。 中国新供給サイド経済学会を設立した賈康会長はロイターに、今回の判決が「多くの零細企業にとって死活問題」になり得るだろうと語った。 ソシエテ・ジェネラルは、判決結果が施行されれば企業と消費者が負担するコストが国内総生産 (GDP) の約 1% に相当すると試算している。

調査会社トリビウムのアナリスト、ジョー・ペイセル氏は「中国は改革のコストを誰が負担するのかという核心的な問いに直面している」と述べた。 ペイセル氏によると、現状では労働者と企業が改革のコストを負担しており、こうした状況は雇用と消費を損ない持続可能ではないかもしれないという。 「改革が長期的に成功するかどうかは、政府がどれだけコストを負担する意思があるかどうかにかかっている」と語った。 ロイターは中国人事社会保障部と国務院新聞弁公室にコメントを求めてたが、現時点で回答を得られていない。

切迫した影響

社会保険料の負担率は都市によって異なるが、一般的に従業員は総収入の約 10%、雇用主側は約 25% に相当する。 エコノミストらによると、これは世界的にみて高水準で支払いを非公式に回避する動きを促進しているという。 中国全国人民代表大会の 2024 年報告書によれば、複雑な給与体系も社会保険料の支払額の逆進性を高めており、所得の低い労働者が所得の高い労働者以上に負担が重く社会保険料の支払い意欲を損なう一因となっている。

人材サービス会社の中和集団が 6,000 社以上を対象に昨年実施した企業調査で、社会保険の規則を完全に順守している企業はわずか 28.4% だった。 公式データによると、中国の都市年金制度に加入している労働者は 3 億 8,700 万人で労働人口の約半数に相当する。 交流サイト (SNS) の利用者たちもまた、自分たちが納めた保険料がどのように運用されているかについて信頼できないと述べている。 24 年の国務院報告書によると、13 省が年金基金から 406 億元を他の支出に流用していた。

米国に拠点を置く検閲監視サイト「チャイナ・デジタル・タイムズ」の創設者である蕭強氏によれば、この話題に関する投稿が一部削除されており、特に判決が最も弱い立場の人々に偏って悪影響を及ぼしているという意見が対象になっているという。

労働コストの抑制

社会保険料の負担回避は中国国内外の経済バランスのゆがみを助長してきた。 回避によって工場の労働コストが下がり中国の輸出競争力が高まる。 公共インフラ事業のコストを下げ、さらに製造業の物流コストを削減しサプライチェーンを密接に結び付けた。 しかし、中国の高齢化が進む状況で未払いの保険料は年金制度にリスクをもたらす。 年金基金は 35 年までに枯渇すると予測されているのだ。 また、工場を拡張するために資源を自由に活用することで産業の過剰設備問題を悪化させている。 さらに労働者は自力で万一の時に備えて貯蓄しなければならず、消費支出の大きな足かせとなっている。

ある政策顧問は匿名を条件に「中国の全体的な経済発展の根本的な欠陥は、抑制された労働コストに依存して競争力をつけ、とりわけ米国や欧州に対して大きな貿易黒字を生み出してきたことだ」と述べた。 ソシエテ・ジェネラルのアナリストたちは中国政府が判決施行を遅らせるか、あるいは影響を相殺するための景気刺激策を打ち出す可能性があると予測する。 報告書で「労働市場に新たな悪影響を与えるのは政策担当者として最も避けたい事態だろう」と記した。 (Reuters = 8-23-25)


中国の宴会禁止令「消費への影響大きい」 伊藤忠総研の玉井芳野氏

中国経済の不振が一段と際立ってきました。 特にさえないのが国内総生産 (GDP) の4割を占める消費です。 7 月の小売売上高は 2 カ月連続で前の月に比べて減りました。 背景にはいったい何があるのでしょうか。 専門家の間で注目を集めているのが、小売売上高の 1 割を占める飲食店収入の伸びの急激な鈍化です。 5 月までは 5% を超える伸びを示していましたが、6 月以降は 1% 前後にとどまっています。 伊藤忠総研で上席主任研究員を務める玉井芳野氏は、ラジオ NIKKEI のポッドキャスト番組「NIKKEI で深読み 中国経済の真相」に出演し「公務員倹約令の影響が大きい」との見解を示しました。

中国当局は 5 月に「倹約と浪費反対に関する条例」を改定しました。 共産党の関係者や公務員が接待の会食で高級料理や酒、たばこを提供するのを禁じる内容です。 これに過剰反応し、宴会そのものを自粛する空気が中国全土で広がっているといいます。 ただでさえ、年後半にかけては耐久消費財の買い替えを喚起する政府補助金の効果がはげ落ち、その反動で消費は急減速しかねない状況です。 玉井氏は「このままだと(中国の景気は)想定より下振れする懸念がある」とみています。 (nikkei = 8-22-25)


トランプ氏、対中国関税の一部停止を 11 月 10 日まで延長 大統領令

米中の経済安保

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中国の海軍艦艇と海警船が衝突 南シナ海で比警備船追跡中

波高き台湾海峡 & 南シナ海

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中国が劉建超氏を拘束、対米関係改善に尽力の外交官

中国の上級外交官で、外相候補との呼び声も高い劉建超氏 (61) が、当局による事情聴取のため拘束された。 事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 ベテラン外交官で、共産党の腐敗取り締まりにも携わった劉氏は、最近は共産党中央対外連絡部長として、外国の政党や社会主義国との関係を監督する立場にあった。 関係者によると、劉氏は 7 月下旬、国外出張から北京に戻った後に拘束された。 拘束理由は不明。

劉氏からコメントは得られなかった。 中国外務省は今のところコメント要請に応じていない。 中央対外連絡部、共産党の最高監察機関である中央規律検査委員会からもコメントは得られなかった。 公式発表によると、劉氏の最近の公務は、7 月下旬に対外連絡部長としてシンガポール、南アフリカ、アルジェリアを訪問したことだった。 対外連絡部のウェブサイトでは、引き続き劉氏が部長として掲載されている。 中国の外交政策の中枢に詳しい関係者らによると、劉氏の不在により、中国政府の外交的専門性は低下する可能性がある。 習近平国家主席は人事で政治的忠誠を一段と重視している。

劉氏の拘束は中国の外交官に関する既知の調査としては、秦剛氏が外相就任からわずか 7 カ月で解任された 2023 年以降で最高レベルの調査だ。 ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) の報道によると、党の内部調査で、秦氏が駐米大使在任中に婚外関係を持っていたことが判明した。 秦氏の後任には前任の王毅氏が就任した。 王氏は共産党の外交政策トップで、24 人の政治局員の 1 人でもある。 秦氏は昨年、党中央委員を辞任したが、党員資格は維持している。

習氏の徹底的な規律引き締めの一環として、党の取り締まり担当者は多くの高官を摘発してきた。 国家安全保障上の懸念から、党員と公務員に対する監視が強化されている。 習氏が 2012 年に政権を掌握して以来、党の監察官は汚職、官僚的怠慢、国家機密漏洩などの違反で 620 万人以上を処分している。 秦氏の解任後、劉氏は中国の外交機関での経験と地位の高さから、外相の有力候補とみられていた。

2024 年初めに米首都ワシントンとニューヨークを訪問した際、劉氏は米中関係安定の必要性について魅力的なメッセージを発し、称賛を得た。 当時、劉氏と共に会合に出席した関係者らが明らかにした。 米国側の参加者の中には、中国への投資リスク評価を行う欧米企業への締め付けといった中国の政策への懸念について、劉氏が耳を傾け、対応する姿勢を示したことを評価する声もあった。

この訪問中に劉氏は、アジア・ソサエティーなどの米シンクタンク、大手投資会社ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者 (CEO) やヘッジファンド大手ブリッジウォーターの創業者レイ・ダリオ氏などの投資家、そして当時のアントニー・ブリンケン国務長官をはじめとするバイデン政権の当局者らと面会した。 ある米当局者は当時、「中国側は基本的に、劉氏が次期外相になると伝えてきた」と語っていた。 「『彼はもっと大きな役割を担うことになる』と話していた。」 しかし、この訪問が中国指導部の眉をひそめさせることになった。

正式発表の前に外相就任が決まったかのように振る舞うことは、政治的に不適切とみなされたためだ。 劉氏は外交官としてキャリアの大半を過ごし、習氏の腐敗取り締まりを主導した党と国家機関で重要な役職を務めた。 劉氏と面会したことのある人々によると、同氏はかつてゴルフに情熱を注ぎ、頻繁にプレーしていたが、習氏がぜいたく行為を取り締まる中で党が役人のゴルフを快く思わなくなったため、やめたようだ。 劉氏の息子は一時期、米国の金融業界で働いていたが、現在は中国を拠点としているという。 (Chun Han Wong、The Wall Street Journal = 8-10-25)


中国高速鉄道の総延長は間もなく 5 万キロに、累積債務は約 125 兆円 - 台湾メディア

8 月 6 日、台湾メディア・自由時報は、中国高速鉄道の総延長が間もなく 5 万キロを突破する一方で、累積債務が 6 兆元(約 120 兆円)を超えていると報じた。 記事は、世界で最も長い高速鉄道ネットワークである中国高速鉄道の総延長が昨年末で 4 万 8,000 キロを超え、ドイツや日本、英国の鉄道の合計を上回ったと紹介。 今年もさらに建設を進め、年末までに 5 万キロに到達させる目標を立てていると伝えた。

一方で、高速鉄道網は巨額の債務を抱えており、主要運営事業者である国家鉄路集団の負債額が昨年末時点で 6 兆 2,000 億元(約 124 兆円)に上ると指摘。 同時期の利益額は 39 億元(約 780 億円)で、収益性の低い状態が続いているとした上で、中国のシンクタンク安邦諮詢の趙至江(ジャオ・ジージアン)研究員が「これほどの規模の債務リスクは無視できず、巨額の維持管理費も将来の負担になる」と警告していることを紹介した。

また、北京交通大学経済管理学院の趙堅(ジャオ・ジエン)教授も「中央政府が定めた基準に照らせば、そもそも建設すべきでない高速鉄道路線がたくさんある。 製造大国として中国は貨物輸送能力、特にコモディティー商品の輸送能力を高める必要があるのに、時速 300 キロの高速鉄道は貨物の輸送に適さず、人しか乗せることができない」と指摘したことを伝えた。 記事は、膨大な債務や専門家からの指摘が出ている状況でも、国家鉄路集団が 2035 年までに高速鉄道の総延長を 7 万キロにまで拡大し、人口 50 万人以上の都市をすべてカバーする目標を立てていることを紹介した。 (川尻、Reocrd China = 8-8-25)


巨大ダムがチベットで着工 3 億人分の電力供給、下流のインドは懸念

中国チベット自治区で世界最大規模の水力発電ダムの建設が始まった。 発電量は世界最大級の三峡ダムの約 3 倍にあたり、チベットなどへの電力供給を担う。 発電所の操業は 2030 年代になると見込まれている。 ダムはヒマラヤ山脈の北側を源流とするヤルツァンポ川に建設する。 国営新華社通信などによると、総建設費は約 1 兆 2 千億元(約 25 兆円)。発電量は年間 3 千億キロワット時で、2009 年にできた世界最大級の湖北省にある三峡ダムの約 3 倍にあたる。 およそ 3 億人の年間使用量に相当し、チベット自治区での需要だけでなく、他の地域での消費を主に想定しているという。

19 日に同自治区ニンティであった着工式には李強(リーチアン)首相が参加。 現場を視察した際に「高度な使命感と歴史、国民に対する責任感を持ち、水力発電プロジェクトを新時代の重要な象徴的事業として完成させなければならない」と強調した。

インドは懸念、中国外務省の回答は

同通信は、プロジェクトは、現地の建設業や運輸業などの振興や雇用促進につながり、「チベットの各民族により多くの達成感、幸福感、安全感をもたらす」などとも伝えている。 一方でロイター通信は、豊かな生態系のある高原がリスクにさらされるとの指摘を伝えた。 ダム建設を巡っては、下流国のインドが、ダム建設によって下流域に住む数百万人の生活に悪影響が及ぶと危惧。 放水量の増減を握られることに懸念の声が上がる。 同国外務省は 1 月、外交ルートなどを通じて中国に「事業に対するインドの見解と懸念を一貫して表明してきた」と主張した。

一方、中国外務省の郭嘉昆副報道局長は23日の定例会見で、ダム建設は「中国の業界最高基準に厳格に従い、工事の全段階で生態環境保護を徹底的に実施する」と強調。重要な生態系環境のある地域を避けるなどの措置をとるとした。 また下流国に不利な影響を与えることを否定。 「流域全体の防災減災に有益」とも主張し、「下流諸国との協力を強化していく」とした。 (瀋陽・岩田恵実、asahi = 7-27-25)


中国の 4 - 6 月 GDP 5.2% 増、減速も堅調さ維持 内需は低迷続く

中国国家統計局が 15 日発表した今年 4 - 6 月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価の変動を除く実質で前年同期比 5.2% 増だった。 1 - 3 月期の 5.4% からは減速したが、トランプ米政権による対中追加関税の中でも米国以外への輸出が堅調で、政府の年間目標の「5% 前後」を上回る水準を維持している。 前日に発表になった 6 月の貿易統計では、対米輸出額が前年同月に比べ 16.1% 減る一方、輸出総額は 5.8% 増加した。 米国以外の地域への輸出を増やしている。

ただ国内に目を向けると、個人消費は弱く、デフレ圧力も強まっている。 今年 1 - 6 月の消費者物価指数 (CPI) は前年同期比 0.1% 下落した。 上半期の CPI が前年同期比でマイナスに転じるのはリーマン・ショック後の 2009 年以来だ。 内需不足の元凶である不動産不況からも抜け出せずにいる。 同日発表になった 1 - 6 月の不動産開発投資額は 11.2% 減と、今年に入り再び減少幅を拡大し始めている。 同期間の新築住宅販売面積は 3.7% 減っているのに対し、住宅在庫面積は 6.5% 増と増え続けている。 (北京・鈴木友里子、asahi = 7-15-25)


中国、6 月対米輸出は 16.1% 減 超高関税引き下げ後も貿易細る

中国輸出の現状と今後

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