中国の海軍艦艇と海警船が衝突 南シナ海で比警備船追跡中

フィリピン政府は 11 日、中国と領有権を争う南シナ海のスカボロー礁付近で、中国海軍の艦艇が中国沿岸警備隊の船と衝突したと発表した。 衝突は中国側がフィリピンの沿岸警備隊の船を追跡中に発生した。 フィリピン沿岸警備隊のジェイ・タリエラ報道官によると、係争中のスカボロー礁付近での衝突は、この海域の漁業従事者に物資を配布する漁業水産資源局の船を沿岸警備隊が護衛していた際に発生した。 フィリピン政府が公開した動画には、中国海警の船と、船体に「164」と記されたはるかに大きな船が大きな音を立てて衝突する様子が映っていた。

「当時、(フィリピン沿岸警備隊の船) BRP スルアンを(中国海警の船)CCG3104 が高速で追跡していた。 CCG3104 は BRP スルアンの右舷後方から危険な操縦を行い、そのまま中国人民解放軍海軍の軍艦と衝突した」とタリエラ氏は説明。 「衝突により、CCG 船の船首部に大きな損傷が生じ、航行不能となった」と続けた。 現時点で在フィリピン中国大使館はコメントの要請に応じていない。 死傷者の有無も不明だ。 タリエラ氏は AFP に対し「フィリピン側からの支援申し出に対し、中国側は一切応答しなかった」と語った。 (AFP/時事 = 8-11-25)


台湾有事描く異例ドラマ配信で賛否両論 制作者「危機向き合って」

中国の台湾侵攻や浸透工作が題材の台湾ドラマ「零日攻撃 ZERO DAY ATTACK」の放送や配信が 8 月から始まり、日本でも同月 15 日からアマゾンプライムビデオで配信される。 台湾有事を扱った映像作品が台湾で制作されるのは異例だ。 現実に迫る危機を取り上げているとして評価する声がある一方、台湾当局の補助金が出ていることから、「(中国と距離を置く)民進党のプロパガンダ」との批判もあり、議論になっている。

台湾東部沖で墜落した偵察機の救助を名目に中国軍が海空軍を派遣し、台湾を海上封鎖する - -。 ドラマはこうしたシナリオから始まり、サイバー攻撃やフェイクニュース、浸透工作によって台湾社会が混乱に陥るなか、様々な選択をする人々の姿を描いていく。 計 10 話を複数の監督が手がけている。 現実でも台湾に対する中国の軍事的圧力は強まっている。 プロデューサーの鄭心媚さんは、作品制作の背景に「侵略が近づいているという切迫感」があったと語る。

台湾の危機、「無関心ではなく語らないだけ」

「感覚がまひした台湾の人々への警告」の意図もあったというが、予告編を公開した後に巻き起こった議論を通じて、台湾の人々が危機に対して「無関心ではなく、語らないだけだということがわかった」という。 危機が迫っている現実に「向かい合って欲しい」とも語る。

総制作費の約 2 億 3 千万台湾ドル(11 億 6 千万円)のうち 4 割超は当局からの補助金や投資によるものだ。 台湾当局や軍から協力を受けて撮影した場面もある。 野党からは「民進党が(中国の危機を強調する)認知戦に利用している」と批判も受ける。 鄭さんは当局側から「内容を審査したいという要求はなかった」と明かした上で、「危機は現実だ」と批判に反論する。

中国からの「圧力」も

中台関係を正面から扱った作品が異例なのは、中国による圧力もあるからだという。 政治的に敏感な話題を扱うことによって中国市場を失うリスクから参加を断念した監督や俳優、匿名を求めたスタッフもいるという。 「中国は台湾(の映像界)にとって非常に大きな市場であるがゆえに影響力を持っている」と鄭さんは話す。 ただ、そうした障害が作品を手がける動機にもなったという。 「この作品をつくる理由の一つは、敏感な話題であっても台湾が自由に創作を出来る場所だということを示すためでもある」と話す。

日本からは、日台にルーツを持つ役柄を演じる高橋一生さんのほか、水川あさみさんも出演する。 (台北・高田正幸、asahi = 8-2-25)


中国の「グレーゾーン作戦」に危機感 台湾当局が高雄で海上演習公開

台湾の海巡署(海上保安庁に相当)は 8 日、南部・高雄の高雄港で海空軍などとの合同演習「海安 12 号」を公開で行った。 台湾が実効支配する離島周辺では、中国公船が台湾の定めた制限水域に侵入する事案が相次ぎ、台湾側は対応力強化が急務となっている。 演習は 2 年に 1 度行われていて、今年は海巡署の巡視船・巡視艇計 13 隻や海軍の対潜ヘリコプターなどが参加。 テロ組織のメンバーが台湾本島と離島を結ぶ客船を乗っ取り、近くの天然ガス備蓄基地を攻撃しようとしているとの想定で行われた。

高速ボートに乗った海巡署の特殊部隊は、ヘリコプターと連携しながら客船を追跡。 舷側にかけたロープを使って、客船に乗り込んで制圧した。 視察した頼清徳総統は、武力行使に至らない手段で脅威を与える中国の「グレーゾーン作戦」に直面しているとの認識を示し、第一線で対峙する海巡署員を激励。 「台湾人の安全と尊厳を守るために、海巡署には最新の装備と科学技術を備えさせなくてはならない」と訴えた。 少数与党の頼政権は予算審議で野党の反対にあっている。 今回の演習には、海巡署の役割を強調して、態勢強化への協力を野党側に呼びかける狙いもある。

海巡署が重視される背景には、中国・福建省の対岸にある金門島や南シナ海北部の東沙諸島周辺での中国船の動きへの警戒感がある。 金門島では 2024 年 2 月に海巡署公船の取り締まりから逃れようとした中国漁船が転覆し、中国人 2 人が死亡した事件をきっかけに、中国海警局がパトロールの常態化を宣言している。

高雄の南西約 450 キロにある東沙諸島では、今年に入り中国船の動きが活発化。 サンゴ礁が主体の島は台湾当局が公立公園として周辺での漁業を禁止しているが、海巡署によると絶滅危惧種のアオウミガメなどを狙った中国漁船が船団を組んで漁をするケースが増加している。 台湾が定めた制限水域に入った中国船は 23 年に 11 隻、24 年に 33 隻だったが、今年は 5 月上旬時点で 30 隻を数える。

3月には台湾の巡視船が中国漁船を制限水域から追い払おうとしていたところ、海警局の公船が水域に侵入して中国漁船に乗船検査を行おうとした。 漁船を伴って水域に現れ「法執行」を既成事実化して、対外的にアピールするのが目的とみられる。 中国海警局は、フィリピンと領有権を争うスカボロー礁など南シナ海でも活動を活発化させている。 海巡署関係者は「海警局の公船が南シナ海からの帰路に、わざと東沙諸島に近づいていやがらせしている可能性もある」と指摘。 「台湾の主権に対する脅威であるだけでなく、海洋生態系の保護という国際社会の理念にも反する」と訴えた。 (高雄・林哲平、mainichi = 6-8-25)


中国軍、台湾周辺で演習 「重大な警告」 実施当初の公表は今年初

中国軍東部戦区は 1 日朝、同日から台湾周辺で演習を始めると発表した。 陸海空、ロケットの各軍の兵力が参加する。 報道官は声明で、「『台湾独立』勢力に対する重大な警告」であり、「正当かつ必要な行動だ」としており、中国政府が敵視する台湾の頼清徳(ライチントー)政権に圧力をかける狙いとみられる。 台湾周辺の演習をめぐり、実施当初から公表するのは今年初めて。 昨年は「連合利剣」と称する演習を台湾周辺で 2 回展開した。

今回の発表では、演習は陸海空・ロケット軍の合同で、多方向から台湾島へ接近するほか、パトロールや関連の海域、陸への攻撃、主要な海域や航路の封鎖などを重点的に訓練し、実戦能力をテストするとしている。 台湾国防部(国防省に相当)によると、中国の空母「山東」の艦隊が 3 月 31 日、台湾周辺の海域に入った。 軍による監視を行っているという。 (北京・畑宗太郎、台北・高田正幸、asahi = 4-1-25)


中国が海底ケーブル切断装置開発 深海で作業可 香港紙「重要なネットワーク混乱させる」

中国船舶科学研究センター (CSSRC) が世界で最も強固な海底通信線や電力線を切断できる小型の海底ケーブル切断装置を開発した。 香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)が 22 日配信した。 同紙はケーブル切断装置について「重要な海底ネットワークを混乱させる可能性のある資産を公開した初のケースとなった」と指摘している。

中国の最新潜水艇と統合

CSSRC のケーブル切断装置は 2 月 24 日に中国の学術誌「メカニカル・エンジニア」で論文を公表した。 深さ 4 千メートルで切断作業が可能で、世界のデータ伝送の 95% を占めるという鋼鉄、ゴム、ポリマーで被覆された装甲ケーブルをターゲットにしている。 中国の有人無人の最先端の深海潜水艇と統合できるように設計されている。 水圧 400 気圧を超える中、切断装置の破裂を防止し、作業中の海洋堆積物の撹拌(かくはん)を最小限に抑えるなど技術的課題が克服されたという。 ダイヤモンドでコーティングされた直径 15 センチの研削砥石の刃が毎分 1,600 回転し、ロボットアームで操作される。

一方、台湾の沿岸警備当局が 2 月 25 日、中国人が乗った貨物船が海底ケーブルを損傷させた疑いで捜査していると発表するなど台湾周辺やバルト海では不審な海底ケーブル切断事案が相次いでいる。 武力行使に至らない「グレーゾーン」の攻撃の可能性がある。 同紙は米国の西太平洋のグアムなど戦略拠点付近でケーブルが切断されれば、地政学的危機の際、世界の通信が不安定化する可能性があるなどと懸念を伝える一方、CSSRC の開発チームは今回の切断装置の開発は海洋資源開発に役立つと主張している。 (sankei = 3-25-25)

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台湾当局、中国人乗組員の貨物船を捜査 海底ケーブル損傷の疑い

台湾の海巡署(海上保安庁に相当)は 6 日、カメルーン船籍の貨物船が台湾北部の海域で海底ケーブル 4 本を損傷させた疑いがあり、捜査していると発表した。 台湾の中央通信社によると、貨物船のオーナーは香港籍で、乗組員 7 人全員が中国籍。 海巡署は「真意は確認できない」としつつ、意図的な妨害行為である可能性も排除できないと指摘している。

海巡署などによると、3 日昼に通信会社からの通報を受けて現場に船を派遣。 台湾北部約 13 キロの海域で貨物船を確認したが、気象条件が悪く乗船できなかったという。 貨物船は韓国の釜山港に向かったことから、韓国側に協力を依頼した。 中央通信社によると、損傷したのは台湾と米国の西海岸をつなぐ海底ケーブル。 米国や日本の通信業者も利用しているという。 (台北・高田正幸、asahi = 1-7-25)