カイロス 2 号機、失敗原因はセンサー誤信号 次機「可能な限り早く」
記事コピー (6-12-18〜9-1-25) 中国の鉄鋼大手が束になっても日本製鉄にかなわない理由 - 中国メディア
記事コピー (12-18-23〜8-31-25) 「科学力を世界 3 位に」研究費 2 倍増を自民提言 安全保障連携も要望 自民党の調査会は 28 日、国の科学研究費助成事業(科研費)の額について、2035 年までに倍増を求める提言をまとめた。 日本の研究力の低下を課題に挙げ、増額に伴う成果として、注目度の高い論文ランキングで現状の世界 13 位から、過去最高タイの 3 位への返り咲きを求めている。 提言は、政府が策定作業を進める、26 年度から 5 カ年の科学技術に関する基本計画(第 7 期計画)に盛り込むべき内容をまとめた。 政府が今月発表した「注目度の高い論文数」の最新の世界ランクは、1993 年までの 3 位から下落の一途をたどり、3 年連続で過去最低の 13 位が続いている。 提言では、カナダ、韓国、イランなど日本より上位の国に「負けている厳しい現実を受け入れることが必要」と指摘。 10 年以内に、科学技術の「再興」をめざすべきだとした。 最もベーシックな公的研究資金である科研費は、年度当初額で 2,400 億円程度の横ばいが続いてきた。 この額を、基礎研究力を世界トップレベルに回復させるためとして、35 年までに倍増するよう提案した。 倍増を明記したのは初という。 科研費をめぐっては、物価高騰や円安の影響で実質額では目減りしているとして、主要な国内学会なども昨年、国に倍増を要望していた。 一方、提言では、安全保障研究に関して、政府と学術界に「緊張関係が依然として残存している」と指摘。 安全保障政策と科学技術政策の連携が必要だとして、首相をトップとする政府の「総合科学技術・イノベーション会議 (CSTI)」に、今はメンバーではない防衛相が参画できる機会を「十分に確保」するように求めた。 内閣府によると、参加の検討を始めるという。 (竹野内崇宏、asahi = 8-28-25) ◇ ◇ ◇ 科学力ランキング 13 位、過去最低 3 年連続 資材高騰も研究費増えず 文部科学省は 8 日、日本の研究力を示す「科学技術指標 2025」を公表した。 注目度の高い論文数の国別順位では、3 年連続の 13 位で過去最低が続いた。 世界的な物価高騰に対して国内の研究費の増額が追い付かず、研究環境の悪化が背景にあるとみられる。 文科省の科学技術・学術政策研究所の報告によると、科学論文の総数(21 - 23 年平均)は、昨年同様に 5 位だった。 一方、「注目度の高い論文」として、引用された回数が上位 10% に入る論文数(トップ 10% 論文)では 13 位だった。 研究の質の高さの指標とされるが、日本は 1993 年までの 3 位を過去最高に下落の一途をたどり、3 年連続で過去最低の 13 位が続いている。 総論文数、トップ 10% 論文とも、1 位は中国、2 位は米国。 トップ 10% 論文で見ると、日本の 13 位は主要 7 カ国 (G7) で最下位となった。 ほかでは、インド 4 位、豪州 7 位、韓国 9 位、イラン 12 位だった。 報告で、日本の研究力が上向かない理由としたのが研究資材の高騰だ。 今回初めて調べたところ、2010 年と 24 年の単価比で、低温をつくるのに使うヘリウムは 7.2 倍、診断用・研究用試薬は 4.6 倍に跳ね上がった。 ガラス器具なども 3 倍近くになり、世界的な物価上昇や円安の影響とみられる。 これに対し、研究開発費の総額は、日本は 23 年で 22 兆円。 世界 3 位を維持するものの、00 年比で 1.4 倍にとどまった。 日本の増額幅は突出して小さく、中国は 37.2 倍、韓国は 8.6 倍、米国は 3.6 倍だった。 研究所の担当者は「中国が存在感を増すなかでは、日本は何とか健闘している。 博士課程の入学者が増加に転じるなど明るい変化も出始めている」と話した。 (竹野内崇宏、asahi = 8-8-25) セメント需要も夏バテ? 8 月販売量が 7% 減 サマータイム待望論も セメントの需要も夏バテ気味のようだ。 業界団体のセメント協会は 27 日、8 月 1 - 25 日の国内販売量が前年同期に比べて 7.7% 少なかったと発表した。 同協会は需要低迷の一因は猛暑で建設現場の作業が停滞したためとみており、サマータイムの導入を期待する声も出ている。 7 月の販売量も前年同月比で 5.1% 減ったという。 同協会によると、建設や建築、土木などの現場で働く作業員が熱中症を防ぐために休憩を長めに取らざるを得なくなっており、建設資材の搬入など作業にあたれる時間が減少。 その影響はセメントの需要にも及んでいるという。 同協会の福嶋達雄・流通委員長は記者会見で「猛暑の影響は無視できなくなっているが、セメント業界だけでは対応が難しい」と発言。 「個人的な意見だが、現場が涼しい時間に近所迷惑にならず作業できるよう、サマータイムの導入を政府に要望していった方がいいのかもしれない」とも話した。 (山本精作、asahi = 8-27-25) スペース X の新型宇宙船、10 回目の試験 衛星放出や地球帰還に成功
記事コピー (3-5-19〜8-27-25) スパコン富岳 NEXT は世界 1 位を狙わない エヌビディアと追う能力 日本が世界 1 位を獲得できる数少ない分野であるスーパーコンピューター(スパコン)。 旗艦スパコン「富岳」の後継機となる「富岳 NEXT」は、従来の計算速度 1 位を狙わないという。 どんなスパコンをめざしているのか。 たし算やかけ算などの計算ができるコンピューターの中でも、桁違いに大規模な計算ができるのがスパコンだ。 計算機の頭脳にあたる CPU (中央演算処理装置)は、通常のコンピューターなら 1 個程度。 これに対してスパコンでは、CPU を数万個単位でつなぐことで高速な計算ができる。 富岳 NEXT とは 特に高速計算が求められるのは、複雑な水や風の流れを調べる「流体力学」や、自然現象を再現する「シミュレーション」など、自然科学の分野だ。 スパコンと科学計算は、互いに進歩を支え合ってきた。 2021 年にノーベル物理学賞を受けた米プリンストン大の真鍋淑郎さんは、米国の最先端の大型コンピューターを使い、地球の気候を計算。 1960 年代に大気中の二酸化炭素の濃度と気温上昇との関係について世界的な発見をした。 「世界で最もスパコンを使う男」とも呼ばれていた。 世界ランクを追い求めても その真鍋さんが開発準備に携わったのが、2002 年に日本で誕生したスパコン「地球シミュレータ」だ。 1993 年から発表が始まった計算速度の世界ランキング「TOP 500」で世界 1 位となった。 続く旗艦スパコン「京」も 2011 年に、「富岳」も 20 年に、それぞれ 1 位を獲得するなど日本は「スパコン大国」とも呼ばれる。 気象庁の気象予報にはスパコンが欠かせず、旗艦スパコン以外でも、大学や研究機関が自前で整備して研究に使っている。 一方で、特定の計算方法だけに着目した世界ランクを追い求めても、実世界の課題解決につながらないとの指摘もつきまとってきた。 そこで政府は、24 年にまとめた次期旗艦スパコンの整備方針で、「計算速度ランキングのみを追求しない」と明記。 この間に急速に進歩してきた生成 AI (人工知能)を含め、多様なプログラムに対応できるスパコンをめざすことになった。 AI 自身が科学的な仮説を 白羽の矢が立ったのが、AI 計算に特化していることで知られた高性能半導体「GPU (画像処理装置)」だ。 シミュレーション計算も、CPU と GPU を組み合わせることで高速化できる。 その GPU のトップ企業である米大手エヌビディアが 25 年 8 月、旗艦スパコン「富岳 NEXT」の開発に携わることになった。 スパコン富岳の後継機、エヌビディアが開発参画 AI 向け半導体採用 富岳を開発してきた理化学研究所、富士通とともに 25 年度内に基礎設計を終え、30 年ごろの稼働をめざす。 高度化する AI 自身が科学的な仮説を立てたり、実験を全自動化して高速に証明したりする「AI for Science」の強化のほか、同じく理研と富士通が手がける量子コンピューターとの融合も進めるとしている。 (竹野内崇宏、asahi = 8-22-25) 鹿児島の火球、大きさ数 m 級で秒速 21km 海に落下? 専門家が解析 19 日午後 11 時 8 分ごろ、九州各地を中心に火球が確認された。 鹿児島県の桜島を定点観測するカメラ映像では、一瞬、昼間のような明るさになった。 隕石や火球に詳しい神奈川県平塚市博物館の藤井大地学芸員によると、火球は秒速 21 キロで大気圏に突入し、九州の南の海に落下した可能性があるという。 藤井さんは、長崎県の 2 カ所の定点カメラの映像をもとに、火球とその背景に映る星の位置関係から、火球の軌道を解析した。 秒速 21 キロ、地球の突入角度 58 度は「一般的」と分析。 2020 年 7 月に千葉県習志野市に落下した隕石と同じく、火星と木星の間にある小惑星帯から来た隕石である可能性がある。 また、「火球自体は数日に一度のペースで観測されるが、一瞬昼間のような明るさになっており、数年に一度しか見られない大火球だった」と指摘した。 この明るさから、隕石の大きさについては「数十センチから数メートルの範囲と推測できる」とした。 地球に落ちる数メートル級の隕石を事前に把握する試みは世界の専門家の間で進んでおり、昨年も数例の把握に成功したという。 藤井さんは「それでも把握できずに落ちてくる隕石の方が圧倒的に多い」と話す。 国内では近年、火球の目撃が相次いでいるが、火球の発生頻度自体は例年と変わらないという。 「スマホやドライブレコーダーなどで撮影された火球の様子が、すぐに SNS で共有・拡散される。 そのため、以前よりも、火球の存在が世間的に可視化されるようになったのでは。」 今回のような火球が都市部に落ちた場合、「直接の衝突による被害はもちろん、火球の衝撃波によって、建物が壊れる、ガラスが割れるなどの被害が出るだろう」と話した。 (根元紀理子、asahi = 8-20-25) 暑くても育つホップ、キリンが栽培成功 温度ストレスで香味も維持 涼しい環境でよく育つビールの主原料ホップについて、キリンホールディングス (HD) が高温耐性を強めて育てることに成功した。 苗を育てる過程で耐性を付ける手法で、既存品種の香味も保つことができる。 ホップは地球の高温化など異常気象で収量が減り、品質低下が問題視されており、先例のない研究成果とみられる。 新たな栽培手法は特許を出願中で、6 月にドイツで開かれた国際ホップ生産者団体 (IHGC) の科学技術会議でも発表した。 研究は 3 年前に着手した。 植物は前もって軽度の温度ストレスにさらされると、致死に至らない程度の高温環境で生存できる「高温順化」という現象がみられる。 その点に着目し、ホップ栽培に適用した。 ビールによく使われるチェコ品種「ザーツ」と、ドイツ品種「ヘルスブルッカー」を扱った。 ホップの苗を 25 度で熱処理して育てたところ、30 度の高温環境でも生育不良が起きず、草丈が伸びた。 水やりを 10 日止める「乾燥」した状態でも、同様に伸びたという。 日中温度が約 2 度違う岩手県の 2 地点で屋外検証を続けてきたところ、温度が高い地点では、熱処理をしていない苗と比べて、生育不良がなく、草丈が伸び、葉も生い茂った。 一方、ホップの香味に変化は見られなかった。 高温化など異常気象はホップ生産への影響も大きい。 IHGC によると、2024 年の生産量は推計 11 万トンで 5 年前と比べて 13% 減った。 50 年までに欧州の主産地では収量が最大 18% 減る見通しを示す研究もある。 キリン HD の R & D 本部、今堀莉子さんは「高温でもホップの収量を維持できる可能性が高いことが分かった。 来年度からは海外で同様の実証研究をはじめたい」と話す。 キリンは 22 年に世界で初めてホップの苗を大量に増やす技術を開発した。 今回の成果を組み合わせて、高温耐性を強めたホップ栽培の実用化を目指す。 地球沸騰の時代、ホップ栽培の持続可能性に黄信号 キリン HD が高温でも香味を保ちながら、よく育つホップの栽培に成功した。 ビールの原料となるホップは地球の高温化や干ばつなどによって、持続可能な栽培に黄信号がともる。 国内では農家数が減少。 収量と品質の維持につながる研究の実用化が急がれる。 ホップは北緯 35 - 55 度、南緯 35 - 55 度の「ホップベルト」と呼ばれる涼しい地域で主に生産される。 日本では岩手県など東北や北海道が主な生産地になる。 異常気象によって生産量は減っている。 「Nature Communications」誌に掲載されたチェコ研究チームの論考によると、2050 年までに欧州の主産地(ドイツ、チェコ、スロベニア)で、ホップ収量は最大 18% 減る見通しだ。 ビールの特徴である苦み成分のアルファ酸も含有量が最大 31% 減ると見立てている。 日本も世界の主産地と同様に、異常気象の影響を受けている。 7 月末、一大産地の岩手県遠野市を訪ねると、日中の気温は 33 度に達していた。
国内は栽培農家が減少、担い手確保が急務 遠野ホップ農協の安部純平組合長は近年、異常気象を肌身で感じてきた。 「ゲリラ豪雨」の頻発も、その一つ。 栽培には十分な水が欠かせないが、ゲリラ豪雨に見舞われると水が一気に引き、土に雨水があまりしみ込まない。 栽培の「恵みの雨」とはならないという。 国内では担い手不足も課題だ。 気候や栽培条件に左右されやすく、ホップは栽培が難しい。 練達の技量が必要になる。 しかし、産地は高齢化と人口減少に直面し、生産は減少の一途だ。 全国ホップ農業協同組合連合会によると、1970 年の生産量は 2,513 トン、農家は 6,682 戸だったのが、2023 年は 123 トン、96 戸に急減。 生産者の確保が深刻さを増している。 苦みや香りを作るホップは「ビールの魂」といわれ、ビール製造に欠かせない。 キリンが高温耐性をつけるホップ栽培を研究しているのも、生産の持続可能性をふまえてのことだ。 キリンの R & D 本部の今堀莉子さんは「地球温暖化が深刻となっても、この研究によってホップの生産量と品質を保ち、おいしいビールを作り続けたい」と話す。 (橋田正城、asahi = 8-14-25) 自動車向けの磁石、重希土類を使わず生産 脱・中国依存へ取り組み 電気自動車 (EV) やハイブリッド車 (HV) に使うモーター用の磁石をつくるのに欠かせない重要鉱物のレアアース。 中でも、希少なうえに産出が中国に偏っている「重希土類」を用いずに強力な磁石をつくる技術の開発や設備投資を日本企業が進めている。 重希土類の供給が滞って自動車生産が打撃を受けるリスクを軽くしようとの狙いがある。 HV や EV の動力となるモーターには、磁力が強い「ネオジム磁石」が使われる。 高温になると磁力が落ちてしまうため、耐熱性を高める「ジスプロシウム」や「テルビウム」といった重希土類を添加することが多い。 しかし、重希土類の世界生産量の大半は中国が占めている。 中国と米国が対立する中で、重希土類は、米国との「交渉カード」になっている。 日本への供給も不安定になりがちで、今年 5 - 6 月にはスズキの一部車種の生産がとまる事態になった。 こうしたリスクを軽減するために、重希土類を使わずにネオジム磁石をつくる技術の開発や設備投資が進む。 プロテリアル(旧日立金属)は 7 月下旬、重希土類を使わない EV 用ネオジム磁石を開発したと発表した。 不純物を制御することで性能を高めており、HV にも使えるという。 埼玉県熊谷市や兵庫県養父市などでの量産を想定している。 大同特殊鋼は重希土類を使わないネオジム磁石をすでに HV 向けに実用化している。 結晶を細かくする独自の製法で熱に強くしてあり、2016 年にホンダが HV に初めて採用した。 直近では日米の自動車メーカーから HV や EV 向けに引き合いが増えているという。 出力を高めた新製品の開発も進めている。 岐阜県中津川市にある製造子会社ダイドー電子の工場に 50 億円を投じ、月間の生産能力を 26 年春に 45 トン、30 年度には 150 トン程度まで引き上げる計画だ。 自動車メーカーや部品メーカーが使う磁石を切り替えるには、性能や調達価格の吟味が必要になる。 切り替えを判断してから実行に移すまでには設計変更などに手間と時間もかかりそうだ。 (高橋豪、山本精作、asahi = 8-7-25) 日本の半導体産業、国力挙げても中国に太刀打ち困難 - 中国メディア 中国メディアの観察者網はこのほど、日本政策投資銀行 (DBJ) などが出資して 2022 年 12 月に設立された JS ファンダリが 7 月に破産を申請した件を取り上げ、「日本の半導体はナショナルチームが破産、中国から顧客を奪うのはあまりにも困難」と題する記事を発表した。 JS ファンダリの前身は三洋電機系の半導体製造会社だった。 三洋電機の経営不振などにより紆余曲折はあったが、最終的に DBJ などが出資して JS ファンダリとして再出発することになった。 JS ファンダリ設立は老舗半導体メーカーの転換の模範とされた。 JS ファンダリが製造したパワー半導体は、電子産業チェーンで最も重要な部品の一つであり、主に電力変換や回路制御に用いられ、電気自動車、家電、列車など大型電力機器での用途がある。 しかし、期待された JS ファンダリだが、結局は負債総額 161 億円で倒産することになった。 多くの関係者や専門家は、販売戦略、市場環境、中国の競合相手に対する三重の誤判断があったと指摘した。 まず、JS ファンダリは設立以来、収益面で苦戦した。 23 年下半期には日本国内の電気自動車向けパワー半導体の需要が期待を下回り、経営は厳しい状況に追い込まれた。 さらに、JS ファンダリは米国のオン・セミコンダクタ―と生産提携を解消したことで、売上高は設立初年度の 100 億円から 24 年には 26 億円に急減した。 JS ファンダリは社内統治も混乱していたとされる。 例えば、「24 年に他の半導体企業から転職した営業担当者が、オン・セミコンダクタ―からの 550 人の移籍社員の多くは生産管理や資材調達など工場内部業務担当で、営業経験がほとんどなく顧客対応ができず、さらに設立 1 年後になっても顧客訪問したことがない営業担当も存在したことで驚いた」との話も伝えられている。 JS ファンダリが苦戦したもう一つの要因が、中国の同業企業の台頭だった。 同社の酒井明彦社長は「日本はロジックチップの小型化競争に遅れましたが、パワー半導体分野では世界をリードしていると信じていました。 中国の技術がこれほど追い上げるとは想像しませんでした」と語った。 JS ファンダリの唯一の生産拠点だった新潟工場には 40 年以上の歴史があり、JS ファンダリによる経営は老朽化した工場の復活のモデルになると期待された。 しかし、国外の競合他社が一般に 8 インチウエハ生産を採用する中にあって、新潟工場は 6 インチウエハを使う状況で、生産効率が低く顧客を引きつけられなかった。 酒井社長は 24 年 10 月、中国の家電メーカーの地元サプライヤーと契約を試みたが、新型エアコン用の受託製造チップの見積もりが驚くほど低かった。 多くの中国企業が同等の品質の製品を生産可能で、しかもウエハ 1 枚あたりの価格は 1 万 8,000 円であり、JS ファンダリの 4 万円を大きく下回っていた。 JS ファンダリは起死回生策として、日本政府と新潟県からの十億円規模の設備投資補助金という「輸血」を得ることと、台湾の無名の半導体企業との資本提携による「延命」を図った。 しかし政府による補助金は実現せず、台湾企業との資本提携の交渉は 25 年 4 月に決裂した。 これらの結果、JS ファンダリは破産を申請せざるをえなくなった。 日本は伝統的チップ、すなわち成熟した技術による集積回路では、全世界の 40% 以上を製造している。 しかし JS ファンダリの破産は、成熟した技術だけで企業が生き延びることが難しいことを浮き彫りにした。 日本の電子産業はかつて液晶パネルや電池分野で新興勢力を過小評価し苦境に陥った。 今では半導体業界も同様の課題に直面している。 JS ファンダリの元幹部は、「このままでは、日本に残る老舗半導体メーカーの倒産が、さらに相次ぐだろう」と懸念を示したという。 (如月隼人、Record China = 8-4-25) ◇ ◇ ◇ 半導体生産の JS ファンダリが破産 政投銀系ファンドなどが設立支援 パワー半導体の製造などを手掛ける受託生産メーカーの JS ファンダリ(東京都港区)が 14 日、東京地裁に破産を申し立て、破産手続きの開始決定を受けた。 同社は日本政策投資銀行系のファンドなどが出資して 2022 年に設立。 半導体産業の復活をめざす国の動きを受けて注目されたが、資金難によって経営が行き詰まった。 民間信用調査会社の帝国データバンクなどによると、負債総額は約 161 億円。 米半導体大手オン・セミコンダクターから取得した新潟工場(新潟県小千谷市)でパワー半導体向けのウェハー(基板)の製造などを手がけていた。 だが、設立当初から不採算が続いて販売不振に陥っていたという。 増資などで資金調達し、スポンサー候補として海外企業と交渉していたが破談となり、事業継続を断念したという。 (篠健一郎、asahi = 7-14-25) 「15% でも大幅なコスト増」 米の相互関税、日本企業は値上げ探る 米トランプ政権が、ほぼ全ての国・地域にかける「相互関税」の税率を改定し、日本には 7 日から 15% がかかることになった。 15% の相互関税はトランプ大統領が予告していた 25% より低いが、輸出で稼ぐ企業からは「大幅なコストアップ」との声が上がる。 今後、米国内での販売価格に関税分を上乗せする動きが広がりそうだ。 伊藤忠商事の鉢村剛・副社長は 1 日の会見で、15% の関税率について「世界に先駆けて日本がこのレンジ(幅)に抑えることができたのは、極めて大きな進捗と思う」と述べた。 同社では東南アジアから米国に果物などの加工品を輸出する事業などが関税の影響を受ける。 同日発表した 2025 年 4 - 6 月期決算は、関税の影響によって利益が約 10 億円下押しされた。 米国での売上高が全体の 3 割弱を占めるキヤノンの田中稔三副社長は、7 月 24 日の会見で「15% でも大幅なコストアップだ。 個別の会社が努力できる、ぎりぎりの線ではないか。」 同社は日本やベトナムなどからカメラやプリンターを米国に輸出している。 関税によるコスト増は今年、最大 150 億 - 160 億円ほどと見込む。 関税負担分は商品の値上げによって一部を吸収する考えだが、田中氏は「10% の場合は一律の値上げを考えた。 今度 (15%) は一律にというのはなかなか難しい。」 製品ごとに値上げできるか見極める意向だ。 他国への生産移管含め「あらゆるメニューの検討加速」 米国に複合機や産業用印刷機などを輸出するコニカミノルタは、6 月末までに 10% の相互関税分を価格に上乗せした。 関税率が 15% に上がったら再び値上げする。 大幸利充社長は 7 月 31 日の決算会見で、「関税影響は今年度限りではなく来年度以降も継続する。 低関税率国への生産シフトなどあらゆるメニューを並べて、その具現化、タイミングの検討を加速している。」と話した。 建設機械大手のコマツは、関税によって今年度の利益が 750 億円減ると試算。 堀越健最高財務責任者 (CFO) は 29 日の決算説明会で、「(関税がかかっていない)在庫がない来年は、もっと損益へのインパクトが大きいだろう」と話す。 今月から値上げに踏み切る方針だ。 パナソニックホールディングスの今年 4 - 6 月期決算は、関税が 58 億円の営業減益要因となった。 和仁古明 CFO は 30 日の会見で、産業・民生用の蓄電システムなどに影響が出ていると説明。 「お客様にも負担をお願いして影響を最小化していく」と述べ、販売価格への転嫁を進める考えを示した。 (篠健一郎、岩沢志気、asahi = 8-1-25) ルネサス、中間決算で 1,700 億円の赤字 協業先の経営破綻で損失 半導体大手ルネサスエレクトロニクスが 25 日発表した 2025 年 6 月中間決算(国際会計基準)は、純損益が 1,753 億円の赤字(前年同期は 1,395 億円の黒字)だった。 協業している米半導体会社ウルフスピードの経営破綻に伴って 2,350 億円の損失を計上したことが響いた。 売上高は前年同期比 10.7% 減の 6,343 億円、営業利益は同 58.4% 減の 613 億円だった。 ルネサスは 23 年、消費電力が少ない、炭化ケイ素を使った次世代のパワー半導体の量産に向け、ウルフスピードとウェハー(基板)の供給契約を結び、子会社を通じて同社に約 3 千億円の預託金を提供していた。 しかし、パワー半導体が使われる電気自動車 (EV) 市場の低迷や中国勢の台頭などにより、ウルフスピードの業績が悪化。 同社は今年 6 月、米連邦破産法 11 条(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請していた。 ルネサスは、今年、炭化ケイ素を使った次世代パワー半導体の量産を予定していたが、EV 市況の悪化などを受け、開発を中断した。 (篠健一郎、asahi = 7-25-25) ラピダス、基本部品の試作に成功 資金・顧客 … 量産へ課題は山積み
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